JP5955639B2 - 油性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペンレフィル - Google Patents

油性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペンレフィル Download PDF

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Description

本発明は油性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペンレフィルに関し、さらに詳細としては、インキ経時安定性と、書き味に優れ、筆跡が濃く、耐光性が良好で、高筆圧下(筆記荷重400gf)においても潤滑性に優れる油性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペンレフィルに関するものである。
従来より、油性ボールペン用インキ組成物において、着色剤として、ニグロシン系染料や、塩基性染料、酸性染料など様々な染料やそれを加工したタイプの染料を用いた油性ボールペン用インキ組成物が多数提案されている。
このような油性ボールペン用インキ組成物としては、様々な着色剤を用いているが、ニグロシン系染料を用いたものとしては、特開平5−320558号公報「油性黒色インキ」、トリアリルメタン系塩基性染料とアゾ系黄色酸性染料の造塩染料を用いたものとしては、特開平9−165542号公報「油性黒色インキ」、特開平9−71745号公報「油性黒色インキ」、塩基性染料を母体とした造塩染料を用いたものとしては、特開平8−134393号公報「油性ボールペン用黒インキ組成物」等に、開示されている。
「特開平5−320558号公報」 「特開平9−165542号公報」 「特開平9−71745号公報」 「特開平8−134393号公報」
しかし、特許文献1では、着色剤として、ニグロシン系染料を用いた場合、濃度が濃く、コストが安く、従来用いられているが、有機溶剤への溶解性が悪いため、インキ経時安定性に問題があった。
また、特許文献2、3では、着色剤として、トリアリルメタン系塩基性染料とアゾ系黄色酸性染料の造塩染料を用いた場合、長期間の経時によって造塩染料の一部が崩れ、析出物の発生や、書き味が劣ってしまう問題があった。
また、特許文献4では、着色剤として、塩基性染料を母体とした造塩染料では、インキ経時安定性は良好であるが、書き味を良好とするために、新たに界面活性剤などを含有することで、書き味を向上することができるが、界面活性剤と染料が反応し析出物が発生することもあり、懸念される問題があった。
さらに、特許文献1〜4では、耐光性の向上や、より濃い筆跡が、現在では一層求められている。
本発明の目的は、インキ経時安定性と、書き味に優れ、筆跡が濃く、耐光性が良好で、 高筆圧下(筆記荷重400gf)においても潤滑性に優れる油性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペンレフィルを提供することである。
本発明は、上記課題を解決するために、
「1.少なくとも、酸性染料と芳香族アミンとの造塩染料、顔料、有機溶剤からなり、前記芳香環族アミンが、ベンゾキソニウム化合物であることを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
2.前記酸性染料が、スルホ基を有することを特徴とする第項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
3.前記酸性染料が、トリアリルメタン系酸性染料、または、アゾ系酸性染料であることを特徴とする第1項または第2項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
4.前記油性ボールペン用インキ組成物に、ポリビニルブチラール樹脂を含有することを特徴とする第1項ないし第項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
5.前記油性ボールペン用インキ組成物に、リン酸エステル系界面活性剤を含有することを特徴とする第1項ないし第項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
6.前記油性ボールペン用インキ組成物に、微粒子を含有することを特徴とする第1項ないし第項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
7.前記油性ボールペン用インキ組成物に、エチレンオキサイド (CH 2 CH 2 O)を有する有機アミンを含有することを特徴とする第1項ないし第項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
8.前記油性ボールペン用インキ組成物の pHが4〜10であることを特徴とする第1項ないし第項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
9.20℃、剪断速度500sec−1におけるインキ粘度が、10〜5000mPa・sであることを特徴とする第1項ないし第項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
10.前記インキ収容筒内に、第1項ないし第項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物を直に収容してなる油性ボールペンレフィルであって、前記ボール抱持室の底壁には、前記ボールの曲率とは異なる曲率の曲面状の当接面が設けられており、前記ボールは当該当接面の一部である当接部に対して当接するようになっており、前記ボールと前記当接面との間に、インキ流通孔側から前記当接部までインキ流通孔側から除々に小さくなる第1の隙間が形成されていると共に、インキ流通溝の先端側から前記当接部までインキ流通溝の先端側から除々に小さくなる第2の隙間が形成してあることを特徴とする油性ボールペンレフィル。
11.第10項に記載の油性ボールペンレフィルのインキ収容筒の先端部に、ボールの一部をチップ先端部より突出させて回転自在に抱持し、コイルスプリングにより前方に押圧し、前記ボールとチップ先端部の内壁にて弁機構を具備してなるボールペンチップを直接、またはチップホルダーを介して装着することを特徴とする油性ボールペンレフィル。
12.前記ボールの表面に、及び/又は、前記当接面の表面に、潤滑被膜層が設けられていることを特徴とする第10項または第11項に記載の油性ボールペンレフィル。 」とする。

本発明は、染料、顔料がインキ中で安定し、書き味に優れ、筆跡が濃く、耐光性が良好で、 高筆圧下(筆記荷重400gf)においても潤滑性を保ち、ボール座の摩耗を抑制する油性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペンレフィルを提供することができた。
実施例1のボールペンチップを示す縦断面図である。 実施例1のボールペンチップを示す一部省略した要部拡大縦断面図である。 実施例1のボールペンチップを用いたボールペンレフィルを示す図である。
本発明の特徴は、油性ボールペン用インキ組成物中に、酸性染料と芳香族アミンとの造塩染料と、顔料を併用することである。これは、酸性染料を芳香族アミンで中和反応させて造塩染料とすることで、酸性染料と芳香族アミン間のイオン結合力が強くなると、油性インキ中において、長期間インキ経時安定性が保てると推測できるためである。
本発明で用いる芳香族アミンは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などの芳香環を有するアミンであり、芳香環を有することで、書き味が良好とすることが可能となる。これは、芳香環が、金属チップに吸着し易い潤滑膜を形成することで、ボールとチップ本体間の金属接触を抑制する効果があり、潤滑性を向上して、書き味が良好となると推測する。そのため、本発明では、酸性染料と芳香族アミンとの造塩染料を用いることで、インキ経時安定性と、書き味を向上することが可能となるため、必須とする。そのため、前記造塩染料は、従来とは異なり、着色剤と潤滑剤との効果を併せ持つことが可能となる。
しかし、前記造塩染料を単独で用いるだけでは、筆跡が薄くなってしまうため、顔料を併用する必要がある。これは、顔料を併用することで、前記造塩染料だけでは得られづらかった濃い筆跡が得られ、同時に、耐光性も向上することが可能となる。また、顔料を用いることで、ボールとボール座の隙間に顔料粒子が入り込むことで、金属接触を抑制することで、潤滑性を向上することが可能である。さらに、上述のように、前記芳香族アミンによって潤滑層を形成するが、前記芳香族アミンの潤滑層と顔料粒子との相互作用で、より金属接触を抑制することで、潤滑性を向上し、書き味を向上することが可能となる。
また、芳香族アミンとしては、1級アミン、2級アミン、3級アミンや4級アミンなどが挙げられるが、酸性染料を十分に中和反応させるため、より安定した造塩染料を作成するためには、芳香族4級アミンを用いる方が好ましい。
芳香族4級アミンは、ベンゾキソニウム化合物(Benzoxonium)、アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物、アルキルジエチルベンジルアンモニウム化合物などが挙げられ、酸性染料との中和反応性の相性によるインキ経時安定性、書き味を考慮すれば、ベンゾキソニウム化合物(Benzoxonium)が好ましい。具体的には、ベンゾキソニウム化合物(Benzoxonium)として、ベンジルビステトラデシルアンモニウム化合物(Benzylbis(2-hydroxypropyl)tetradecylammonium)、ベンジルドデシルビスアンモニウム化合物(Benzyldodecylbis(2-hydroxypropyl)ammonium)、ベンジルデシルビスアンモニウム化合物(Benzyldecylbis(2-hydroxypropyl)ammonium)などが挙げられ、アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物として、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム化合物、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウム化合物、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム化合物、ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物などが挙げられ、アルキルジエチルベンジルアンモニウム化合物としては、ドデシルジエチルベンジルアンモニウム化合物などが挙げられる。これらは、単独または2種以上混合して使用してもよい。
また、本発明で用いる酸性染料については、スルホ基 (-SOH)やカルボキシル基 (-COOH)などを有するものが挙げられるが、より潤滑性の向上を考慮すれば、スルホ基(-SOH)を有する酸性染料が好ましい。これは、スルホ基(-SOH)を有すると、ボールとボール座間に強固な潤滑層を形成しやすいため、潤滑性が向上しやすいと考えられ、芳香族アミンと併用することで相乗的な潤滑効果も得られるためである。
さらに、酸性染料としては、トリアリルメタン系酸性染料、アゾ系酸性染料、アントラキノン系酸性染料、オキサジン系酸性染料などがあるが、芳香族アミンと安定した造塩染料として、長期間インキ経時安定性を保つことを考慮すれば、トリアリルメタン系酸性染料、または、アゾ系酸性染料を用いる方が好ましく、最も好ましくは、アゾ系酸性染料を用いる方が好ましい。
酸性染料として、具体的には、C.I.アシッドブラック1,2,7,16,17,24,26,28,31,41,48,52,58,60,63,94,107,109,112,118,119,121,122,131,155,156;C.I.アシッドイエロー1,3,4,7,11,12,13,14,17,18,19,23,25,29,34,36,38,40,41,42,44,49,53,55,59,61,71,72,76,78,79,99,111,114,116,122,135,142,161,172;C.I.アシッドオレンジ7,8,10,19,20,24,28,33,41,45,51,56,64;C.I.アシッドレッド1,4,6,8,13,14,15,18,19,21,26,27,30,32,34,35,37,40,42,51,52,54,57,80,82,83,85,87,88,89,92,94,97,106,108,110,111,114,115,119,129,131,133,134,135,143,144,152,154,155,172,176,180,184,186,187,249,254,256,289,317,318;C.I.アシッドバイオレット7,11,15,17,34,35,41,43,49,51,75;C.I.アシッドブルー1,7,9,15,22,23,25,27,29,40,41,43,45,49,51,53,55,56,59,62,78,80,81,83,90,92,93,102,104,111,113,117,120,124,126,138,145,167,171,175,183,229,234,236,249;C.I.アシッドグリーン3,9,12,16,19,20,25,27,41,44;C.I.アシッドブラウン4,14等が挙げられるなどが挙げられる。また、トリアリルメタン系酸性染料、アゾ系酸性染料としては、C.I.アシッドバイオレット17、C.I.アシッドブルー90、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドイエロー36、C.I.アシッドイエロー42、C.I.アシッドレッド97等が挙げられる。
また、前記酸性染料と芳香族アミンとの造塩染料の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1質量%より少ないと、所望の潤滑性が得られづらく、40.0質量%を越えると、インキ経時が不安定性になりやすいため、インキ組成物全量に対し、0.1〜40.0質量%が好ましい。より好ましくは、インキ組成物全量に対し、1.0〜30.0質量%であり、最も好ましくは、5.0〜20.0質量%である。
また、顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、DPP系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ギオキサジン系、メタリック顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。これら顔料は、ボールとボール座の隙間に入り込むことで、金属接触を抑制し、潤滑性を向上しやすい。また、チップ内部の隙間関係を考慮し、平均粒子径は、300 nm以下が好ましい。より好ましくは、150 nm以下である。ここで、平均粒子径とは、粒度分布計による平均粒子径d
50のことである。これらの顔料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。着色剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、1.0〜15.0質量%が好ましい。これは1.0質量%未満だと、濃い筆跡が得られにくい傾向があり、15.0質量%を越えると、インキ中で凝集しやすい傾向があるためであり、よりその傾向を考慮すれば、3.0〜10.0質量%が最も好ましい。
また、顔料分散剤については、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルピロリドン等が例示でき、これらを1種又は2種以上用いることができる。その中でも、ポリビニルブチラール樹脂が好ましいが、これは、有機溶剤中に速やかに微細に分散しやすく、さらにポリビニルブチラール樹脂が、顔料に吸着することで、長期間の顔料の分散を維持しやすいためである。特に、顔料の中でも、ポリビニルブチラール樹脂との顔料分散性を考慮すれば、塩基性カーボンブラックが好ましい。ここで、塩基性カーボンブラックとは、カーボンブラック粒子をpH7のイオン交換水に分散し、pHメーターにて25℃のpHを測定したpH値が7以上を塩基性カーボンブラックと定義する。
また、ポリブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA) をブチルアルデヒド(BA)と反応させたものであり、ポリビニルブチラール樹脂は、分子中の 水酸基が、20〜40mol%が好ましい。これは、20mol%未満だと、アルコール系の有機溶剤に溶解しづらい傾向があり、40mol%を越えると耐水性が劣りやすい傾向があるためであり、さらに、より好ましくは、30〜40mol%が好ましい。また、有機溶剤に溶解性を考慮すれば、分子量が100000以下である方が好ましい、さらに、30000以下である方がより好ましい。
前記顔料分散剤の含有量は、0.1質量%より少ないと、顔料分散性が劣りやすく、20.0質量%を越えると、インキ中で溶解性が劣りやすく、インキ粘度も高くなりやすいため、インキ組成物全量に対し、1.0〜20.0質量%が好ましく、より考慮すれば、3.0〜10.0質量%が好ましい。
さらに、高筆圧下(筆記荷重400gf)においても潤滑性を保ち、ボール座の摩耗を抑制するには、リン酸エステル系界面活性剤を用いる方が好ましい。これは、リン酸基が、金属チップに吸着しやすいため、潤滑性を向上しやすいためである。特に、本発明のように、酸性染料と芳香族アミンとの造塩染料と、顔料を併用する場合では、上述のように、前記芳香族アミンによって潤滑層を形成するが、リン酸基によって、より強固な潤滑層を形成しやすく、顔料粒子との相互作用で、より金属接触を抑制することで、高筆圧下(筆記荷重400gf)においても潤滑性を保ちやすくなる。
リン酸エステル系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸トリエステル、アルキルリン酸エステル、アルキルエーテルリン酸エステル或いはその誘導体等が挙げられ、これらのリン酸エステル系界面活性剤は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。その中でも、炭素数が5〜18であるアルキル基を少なくとも有する方が好ましく、炭素数が5未満であると、高筆圧下(筆記荷重400gf)においての潤滑性が不足しやすい傾向があり、炭素数が18を超えると、インキ経時安定性に影響が出やすい傾向があるためであり、よりその傾向を考慮すれば、炭素数が8〜15が最も好ましい。
また、リン酸エステル系界面活性剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1質量%より少ないと、所望の潤滑性が得られにくい傾向があり、5.0質量%を越えると、インキ経時が不安定性になりやすい傾向があるため、インキ組成物全量に対し、0.1〜5.0質量%がより好ましい。最も好ましくは、インキ組成物全量に対し、0.5〜3.0質量%である。
本発明に用いる有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3―メトキシブタノール、3―メトキシー3―メチルブタノール等のグリコールエーテル系、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール等のグリコール系、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール系など、油性ボールペン用インキとして一般的に用いられる溶剤が例示できる。これらの中でも、酸性染料と芳香族アミンとの造塩染料との溶解安定性や、顔料とのインキ経時安定性を考慮すれば、少なくともアルコール系溶剤を用いる方が好ましい。さらに、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコ−ルは、潤滑性を向上する効果もあるため、少なくとも用いる方が最も好ましい。これらの有機溶剤は、を1種又は2種以上用いることができる。溶剤の含有量は、着色剤の溶解性、筆跡乾燥性、にじみ等を考慮すると、インキ組成物全量に対し、10.0〜65.0質量%が好ましい。
また、本発明のように、酸性染料と芳香族アミンとの造塩染料と顔料を併用する油性ボールペン用インキ組成物では、潤滑性をより向上させるために、微粒子を用いてもよい。これは、微粒子は、顔料と同様に、ボールとボール座の隙間に微粒子が入り込むことで、金属接触を抑制することで、潤滑性を向上することが可能であるためである。微粒子は具体的には、アクリル系、シリコーン系、ポリエチレン系等の樹脂微粒子やアルミナ微粒子、シリカ微粒子などが挙げられる。その中でも、球状のシリカ微粒子が好ましい。また、微粒子は、潤滑性を考慮すれば、平均粒子径が5〜100nmの微粒子が好ましく、平均粒子径はメジアン径であり、遠心沈降式やレーザー回折式、BET法等によって求めるこができる。
さらに、本発明の油性ボールペン用インキに、芳香族アミンとは、別にエチレンオキサイド (CH2CH2O)を有する有機アミンをさらに併用すると、より潤滑効果が得られ易い。そのため、エチレンオキサイド (CH2CH2O)を有するオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンを用いる方が好ましい。これ等は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンとしては、具体的には、ナイミーンL−201、ナイミーンL−202、同L−207、同S−202、同S−204、同S−210、同T2 -206、同S−210、同DT−203、同DT−208、ナイミーンL−207、同T2 -206、同DT−208(日本油脂(株)社製)等が挙げられる。前記オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンの含有量は、潤滑性や経時安定性を考慮すると、インキ組成物全量に対し、0.1〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは、1.0〜5.0質量%である。
また、本発明のように前記酸性染料と芳香族アミンとの造塩染料との造塩染料と、顔料を併用する場合、ペン先が乾燥することで、書き出し性能が劣化しやすい。そこで、脂肪酸を用いることで、柔らかい皮膜を形成することが可能となり、書き出し性能を向上しやすいため、好ましく、さらに、その中でも、オレイン酸を用いる方が好ましい。
さらに、本発明のように油性ボールペン用インキ組成物に新たに酸性染料と芳香族アミンとの造塩染料を含有する場合に、インキ経時安定性を保つには、製造時や経時による吸湿等によって、油性インキ中に水を含有するため、pH値についても着目する方が好ましい。尚、本発明において、pH値が3.9以下を強酸性領域、pH値が10.1以上を強アルカリ領域、pH4.0〜10.0を強酸性領域と強アルカリ領域の中間領域(弱酸性、中性、弱アルカリ性)とする。
前記油性ボールペン用インキ組成物のインキ経時安定性を保つには、pH値が4.0〜10.0の中性領域とする方が好ましい。これは、pH値が3.9以下だと、チップ本体内の金属イオンが溶出し易いため、前記造塩染料とで金属塩析出物が発生し易く、pH値が10.1以上だと、前記造塩染料のイオン結合が離れやすくなるため、インキ経時安定性や、色調に影響が出やすい傾向があり、さらに顔料分散安定性が得られなくなってしまうためである。さらに、よりインキ経時安定性を考慮すれば、pH値が5.0〜9.0が好ましい。
尚、本発明におけるpH値は、油性ボールペン用インキ組成物の測定方法においては、油性インキを容器に採取し、イオン交換水を加えて、攪拌しながら加温し、加温後放冷し、蒸発した水分量を補充後、濾紙を用いて濾過する。その濾過したろ液の上層を用いて、pH測定は東亜ディーケーケー社製IM−40S型pHメーターを用いて、20℃にて測定した値を示すものである。
本発明の油性ボールペン用インキ組成物のインキ粘度は、特に限定されるものではないが、20℃、剪断速度500sec−1におけるインキ粘度が10mPa・s未満の場合には、筆跡に滲みやインキ垂れ下がりの影響が出やすいため、また、20℃、剪断速度500sec−1におけるインキ粘度が5000mPa・sを超えると、筆記時のボール回転抵抗が大きくなり、書き味が重くなる傾向がある。そのため、20℃、剪断速度500sec−1におけるインキ粘度は、10〜5000mPa・sが好ましい。より好ましくは、50〜3、000mPa・sであり、最も好ましくは、書き味を向上しやすい100〜1500mPa・sである。
また、着色剤としては、前述した酸性染料と芳香族アミンとの造塩染料や、顔料以外に、油溶性染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料などや、それらの各種造塩タイプの染料等が採用しても良い。具体的には、バリファーストブラック1802、バリファーストブラック1805、バリファーストブラック1807、バリファーストバイオレット1701、バリファーストブルー1601、バリファーストブルー1605、バリファーストブルー1621、バリファーストレッド1320、バリファーストレッド1355、バリファーストレッド1360、バリファーストイエロー1101、バリファーストイエロー1151、ニグロシンベースEXBP、ニグロシンベースEX、BASE OF BASIC DYES ROB−B、BASE OF BASIC DYES RO6G−B、BASE OF BASIC DYES VPB−B、BASE OF BASIC DYES VB−B、BASEOF BASIC DYES MVB−3(以上、オリエント化学工業(株)製)、アイゼンスピロンブラック GMH−スペシャル、アイゼンスピロンバイオレット C−RH、アイゼンスピロンブルー GNH、アイゼンスピロンブルー 2BNH、アイゼンスピロンブルー C−RH、アイゼンスピロンレッド C−GH、アイゼンスピロンレッド C−BH、アイゼンスピロンイエロー C−GNH、アイゼンスピロンイエロー C−2GH、S.P.T.ブルー111、S.P.T.ブルーGLSH−スペシャル、S.P.T.レッド533、S.P.T.オレンジ6、S.B.N.バイオレット510、S.B.N.イエロー510、S.B.N.イエロー530、S.R.C−BH(以上、保土谷化学工業(株)製)等が挙げられる。
また、その他として、潤滑性を向上させるために、界面活性剤として、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、脂肪酸アルカノールアミドや、陰イオン性界面活性剤および/または陽イオン性界面活性剤の造塩体を、粘度調整剤として、ケトン樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル等の樹脂や脂肪酸アマイド、水添ヒマシ油などの擬塑性付与剤を、また、着色剤安定剤、可塑剤、キレート剤、水などを適宜用いても良い。これらは、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
本発明の油性ボールペン用インキ組成物をボールペンレフィルで用いる場合、その構造は、特に限定されないが、チップ本体に、ボール抱持室と、該ボール抱持室の底壁の中央に形成したインキ流通孔と、該インキ流通孔から放射状に延びる複数本のインキ流通溝とを有し、チップ先端部を内側にかしめることにより、ボールの一部をチップ先端縁より突出させて回転自在に抱持してなるボールペンチップを、インキ収容筒の先端に直接、またはチップホルダーを介して装着し、前記インキ収容筒内に、前記酸性染料と芳香族アミンとの造塩染料、顔料を併用する油性ボールペン用インキ組成物を直に収容してなる油性ボールペンレフィルとして用いることができる。前記ボールペンチップの構造も特に限定されるものではないが、より書き味やチップ本体の摩耗を抑制することを考慮すれば、前記ボール抱持室の底壁に、前記ボールと異なる曲率の略円弧面状の当接面を設け、前記ボールが当接面に当接するとともに、前記ボールと当接面間に、インキ流通孔側から前記ボールと当接面との当接部まで、インキ流通孔側から除々に小さくなる第1の隙間及びボール抱持室側から前記ボールと当接面との当接部まで、インキ流通孔側から除々に小さくなる第2の隙間を形成することが好ましい。
これは、前記ボールと当接面間に、インキ流通孔側から前記ボールと当接面との当接部まで、インキ流通孔側から除々に小さくなる第1の隙間及びボール抱持室側から前記ボールと当接面との当接部まで、インキ流通孔側から除々に小さくなる第2の隙間を形成することで、ボールと当接面間を流体潤滑又は混合潤滑にしやすく、当接面の摩耗を抑制し、書き味を向上しやすいためである。
さらに、ボールと当接面の関係について詳述すると、ボールの回転による本発明の油性ボールペン用インキ組成物の潤滑状態は、ボールが回転すると、それにつられて油性ボールペン用インキ組成物が、インキ流通孔から前記ボールと当接面との狭い隙間へと引きずり込まれ、ボールと当接面間にボールペン用インキの層を形成し、このインキの層によって、圧力が発生しボールを浮かせる力が発生するくさび効果が得られるため底壁の摩耗を抑制しやすいと推測する。特に、本発明のように前記酸性染料と芳香族アミンとの造塩染料、顔料を併用する油性インキ組成物では、前記造塩染料のフェニルスルホン基やフェニル基と顔料粒子との相互作用で形成する弾力性のある潤滑膜層によって、よりくさび効果が得られやすいため底壁の摩耗を抑制には、効果的であると推測する。
また、ボールの回転による、インキ流通孔からの油性ボールペン用インキ組成物の潤滑状態は前述の通りであり、ボールが回転すると、それにつられて油性ボールペン用インキ組成物がボールと当接面との狭い隙間へと引きずり込まれるが、筆記時には、インキ流通孔側からの当接面に供給される油性ボールペン用インキ組成物と、紙面に突出できなかった油性ボールペン用インキ組成物が、ボール抱持室から当接面に戻される傾向がある。そのため、前記第1の隙間及び前記第2の隙間を形成することで、相乗効果的に、書き味や及び耐摩耗性が向上しやすくすることができる。
前記当接面の形状は、前記ボールと当接面間に、前記第1の隙間及び第2の隙間を形成するために、ボールの曲率と異なる曲率を有する曲面状とすることが重要である。また、第1の隙間は、インキ流通孔側の距離が小さい程、前述したくさび効果が高まる傾向があるので、インキ流通孔側の隙間を小さくすることが好ましい。具体的には、軸心方向の長さで、インキ流通孔側の距離が5μmを超えると、くさび効果が得られ難いため、5μm以下が好ましく、さらに好ましくは、0.001μm〜3μm、0.001μm〜1μmとすることが最も好ましい。また、当接面を予め略円弧面状とし、前記第1の隙間が、インキ流通孔側から前記当接部まで、除々に小さくすることで、前記したボールの当接部近傍で、高いくさび効果、ボールを浮かせる力が大きくなり、当接面の摩耗を効果的に抑制することができ、当接面が摩耗しても急激な摩耗を抑制し、隙間関係を維持し易くすることができる。
次に酸性染料と芳香族アミンとの造塩染料の作成方法を説明する。
配合例1
まず、ビーカーに水を1000g、 Acid Violet17(トリフェニルメタン系酸性染料)を30g秤量し、加温した後、ディスパー攪拌機を用いて溶解させた後、ベンゾキソニウム化合物60gを秤量し、攪拌後、濾紙を用い濾過を行って、濾紙上の残渣を乾燥させ造塩染料を得た。
次に、実施例を示して本発明を説明する。
実施例1の油性ボールペン用インキ組成物は、有機溶剤、顔料分散剤を50℃にて混合攪拌機を用い顔料分散樹脂を溶解させて溶液Aを製造した。得られた溶液Aに顔料を添加し、三本ロールを用いて分散ベースを作成する。この分散ベースに残りの成分を、50℃にて混合攪拌機を用いて攪拌して油性ボールペン用インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。尚、ティー・エイ・インスツルメント株式会社製AR-G2(ステンレス製 40mm 2°ローター)を用いて20℃の環境下で、剪断速度500sec−1にてインキ粘度を測定したところ、650mPa・sであった。また、pH値を測定したところ、pH=7.5であった。
実施例1
配合例 1の造塩染料 6.0質量%
配合例 2の造塩染料 6.0質量%
配合例 3の造塩染料 6.0質量%
顔料(カーボンブラック) 5.0質量%
顔料分散剤(ポリビニルブチラール) 2.0質量%
有機溶剤(ベンジルアルコール) 57.8質量%
安定剤(オレイン酸) 1.0質量%
潤滑剤(ポリオキシエチレンアルキルアミン)1.0質量%
樹脂(ポリビニルピロリドン) 0.2質量%
樹脂(ケトン樹脂) 5.0質量%
配合例2〜8
表1に示すように、各成分を変更した以外は、配合例1と同様な方法で配合例2〜8の造塩染料を作成し、実施例と比較例に用いた。
Figure 0005955639
実施例2〜7、9、10
表2、3に示すように、各成分を変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2〜10の油性ボールペン用インキ組成物を得た。
実施例8
表3に示すように、各成分を変更した以外は、水以外の各成分を実施例1と同様な手順で行い、室温冷却後水を添加しディスパー攪拌にて油性ボールペン用インキ組成物を得た。
Figure 0005955639
Figure 0005955639
比較例1〜6
表4に示すように、各成分を変更した以外は、実施例1と同様の手順で、配合し、比較例1〜6の油性ボールペン用インキ組成物を得た。表3に測定、評価結果を示す。
Figure 0005955639
試験及び評価
実施例1〜 10及び比較例1〜6で作製した油性ボールペン用インキ組成物24(0.4g)及びグリース状のインキ追従体25を、インキ収容筒22(ポリプロピレン)に、ボール径がφ0.7mmのボール9を回転自在に抱持したボールペン用チップ1(ステンレス綱線)を装着したボールペン用レフィル21に充填し、油性ボールペンを作製した。筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験及び評価を行った。
本発明においてボールペンチップ1は図1、2に示したような構成のものを用いることができる。図1、2のボールペンチップは、ステンレス鋼線材からなるチップ本体2のボール抱持室3の中央にインキ流通孔7と、このインキ流通孔7から放射状に延び、チップ後部孔8に達しないインキ流通溝6を形成した底壁4に、ボール9と異なる曲率の略円弧面状の当接面5を設け、この当接面5にφ0.5mmのタングステンカーバイド製のボール9を載置し、チップ先端部2aを内側にかしめることにより、ボール9の一部がチップ先端縁より突出するように回転自在に抱持したものである。
このようなボールペンチップ1は、以下のように製造される。すなわち、例えばφ2.3mmで硬度が230Hv〜280Hvのステンレス鋼線材が所望の長さに切断され、ボール抱持室3、インキ流通孔7、及び、当該インキ流通孔7から放射状に伸びるインキ流通溝6、が作製される。その後、ボール抱持室3の底壁4にボール9を載置した状態でチップ先端部2a側からハンマーリングが行われ、スプリングバック性によってボール9より曲率半径の大きい曲面が形成された後、チップ先端部2aが内側へかしめられる。これにより、ボール9と異なる曲率の曲面状の当接面5が形成され、ボール9は当接面5の軸心方向の中央位置よりもチップ先端部2a側で軸心回りの周回線上の当接部5aにおいて当接する。これにより、ボール9と当接面5との間に、第1の隙間S1及び第2の隙間S2が形成される。
この第1の隙間S1と第2の隙間S2とが形成されていることにより、ボール9と当接面5(当接部5a)との間を流体潤滑又は混合潤滑の状態に維持しやすい。このため、当接面(当接部)の摩耗が抑制される。なお、本実施例においては、第1の隙間S1のインキ流通孔7側の軸心方向における開口の長さHは、0.9μmである(図2参照)。
インキ経時試験:チップ本体内のインキを顕微鏡観察した。
析出物がなく、良好のもの ・・・◎
析出物が微少に発生したもの ・・・○
析出物が発生したが、実用上問題のないもの ・・・△
析出物が発生し、カスレや筆記不良などの原因になるもの ・・・×
書き味:手書きによる官能試験を行い評価した。
非常に滑らかなもの ・・・◎
滑らかなもの ・・・○
やや重いもの ・・・△
重いもの ・・・×
顔料分散性試験:50℃、湿度80%、2ヶ月経過後に光学顕微鏡(オリンパス社製)倍率100倍にてインキ組成物の顔料分散性を観察した。
均一に顔料分散していたもの ・・・◎
ほぼ均一に顔料分散していたもの ・・・○
顔料凝集が、みられたが実用上問題のないもの ・・・△
顔料凝集していたもの ・・・×
筆跡の濃さ:手書きによる筆記した筆跡を 観察した。
濃く鮮明な筆跡であるもの ・・・◎
濃い筆跡であるもの ・・・○
実用上問題ない濃さの筆跡であるもの ・・・△
薄い筆跡のもの ・・・×
耐光性試験:JIS P3201筆記用紙Aに筆記角度70°、筆記荷重150gの条件にて、筆記速度4.5m/minの速度で、らせん筆記試験を行い、1時間放置した後、キセノンフェードメーター X15F(スガ試験機株式会社製)を用いて、ブルースケールが3級退色するまで照射し、筆跡を観察した。
退色しない若しくは若干退色する ・・・◎
退色するが、実用上問題ないレベルのもの ・・・○
退色が目立ち、実用上問題になるレベルのもの ・・・×
高筆圧筆記試験:荷重400gf、筆記角度70°、4m/minの走行試験機にて筆記試験後のボール座の摩耗を測定した。
ボール座の摩耗が5μm未満のもの ・・・◎
ボール座の摩耗が5μm以上、10μm未満であるもの ・・・○
ボール座の摩耗が10μm以上、20μm未満であるが、筆記可能であるもの ・・・△
ボール座の摩耗がひどく、筆記不良になってしまうのもの ・・・×
実施例1〜10では、インキ経時試験、書き味、顔料分散性、筆跡の濃さ、 耐水性、耐光性ともに良好な性能が得られた。
比較例1〜3では、顔料を用いないため、退色が目立ち、耐光性は、実用上問題になるレベルで、筆跡の濃さも、劣ってしまった。さらに、比較例2、3酸性染料とアルキルアミンとの造塩染料を用いたため、書き味も重かった。
比較例4、5では、酸性染料とアルキルアミンとの造塩染料を用いたため、インキ経時が安定せず、書き味も重かった。
比較例6では、酸性染料を単独で用いため、インキ経時安定性が悪かったため、インキ化できなかった。
本発明のように、書き味を向上するために、20℃、剪断速度500sec−1におけるインキ粘度を、10〜5000mPa・sの範囲に設定する場合には、インキの垂れ下がりを防止するため、ボールペンチップ先端に回転自在に抱持したボールを、コイルスプリングにより直接又は押圧体を介してチップ先端縁の内壁に押圧して、筆記時の押圧力によりチップ先端縁の内壁とボールに間隙を与えインキを流出させる弁機構を具備し、チップ先端の微少な間隙も非使用時に閉鎖することが好ましい。
本発明では、ボールの表面及び/又は当接面の表面に潤滑被膜層を設けることで、潤滑被膜層と前記したインキ層による流体潤滑又は混合潤滑との相乗効果によって、ボールとチップ内壁との接触抵抗を著しく軽減しやすく、当接面の耐摩耗性及び筆感を著しく向上しやすくなるため、好ましい。
尚、本発明に用いる潤滑被膜層としては、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、二硫化タングステン(WS2)、二硫化モリブデン(MoS2)やグラファイト、四フッ化エチレン(PTFE)等の含フッ素高分子、シリコーン樹脂等、従来から知られている固体潤滑剤などを適宜用いることができる。また、潤滑被膜層を被覆する方法は、特に制限されず、真空蒸着、イオン蒸着、物理的蒸着、化学的蒸着、真空アーク蒸着などが挙げれ、直接又は前記した潤滑剤を含有した被膜層であってもよい。特に前記した潤滑剤の中でも、耐摩耗性及び潤滑性を考慮してダイヤモンドライクカーボン(DLC)を用いることが最も好ましい。
本発明は油性ボールペンとして利用でき、さらに詳細としては、該油性ボールペン用インキ組成物を充填した、キャップ式、ノック式等の水性ボールペンとして広く利用することができる。
1 ボールペンチップ
2 チップ本体
2a 先端部
2b シール面
3 ボール抱持室
4 底壁
5 当接面
5a 当接部
6 インキ流通溝
7 インキ流通孔
8 後部孔
9 ボール
21 ボールペンレフィル
22 インキ収容筒
23 コイルスプリング
24 ボールペン用インキ
25 インキ追従体
S1、S2 隙間

Claims (12)

  1. 少なくとも、酸性染料と芳香族アミンとの造塩染料、顔料、有機溶剤からなり、前記芳香環族アミンが、ベンゾキソニウム化合物であることを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
  2. 前記酸性染料が、スルホ基を有することを特徴とする請求項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
  3. 前記酸性染料が、トリアリルメタン系酸性染料、または、アゾ系酸性染料であることを特徴とする請求項1または2に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
  4. 前記油性ボールペン用インキ組成物に、ポリビニルブチラール樹脂を含有することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
  5. 前記油性ボールペン用インキ組成物に、リン酸エステル系界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
  6. 前記油性ボールペン用インキ組成物に、微粒子を含有することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
  7. 前記油性ボールペン用インキ組成物に、エチレンオキサイド (CH 2 CH 2 O)を有する有機アミンを含有することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
  8. 前記油性ボールペン用インキ組成物の pHが4〜10であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
  9. 20℃、剪断速度500sec−1におけるインキ粘度が、10〜5000mPa・sであることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
  10. 前記インキ収容筒内に、請求項1ないしのいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物を直に収容してなる油性ボールペンレフィルであって、前記ボール抱持室の底壁には、前記ボールの曲率とは異なる曲率の曲面状の当接面が設けられており、前記ボールは当該当接面の一部である当接部に対して当接するようになっており、前記ボールと前記当接面との間に、インキ流通孔側から前記当接部までインキ流通孔側から除々に小さくなる第1の隙間が形成されていると共に、インキ流通溝の先端側から前記当接部までインキ流通溝の先端側から除々に小さくなる第2の隙間が形成してあることを特徴とする油性ボールペンレフィル。
  11. 請求項10に記載の油性ボールペンレフィルのインキ収容筒の先端部に、ボールの一部をチップ先端部より突出させて回転自在に抱持し、コイルスプリングにより前方に押圧し、前記ボールとチップ先端部の内壁にて弁機構を具備してなるボールペンチップを直接、またはチップホルダーを介して装着することを特徴とする油性ボールペンレフィル。
  12. 前記ボールの表面に、及び/又は、前記当接面の表面に、潤滑被膜層が設けられていることを特徴とする請求項10または11に記載の油性ボールペンレフィル。
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