JP2020164782A - 筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた筆記具 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、滑らかな書き味を奏しつつ、書き出し性能にも優れる筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた筆記具を提供すること。【解決手段】着色剤と、有機溶剤と、ライスオイルと、を含んでなることを特徴とする、筆記具用油性インキ組成物とすること。【選択図】なし

Description

本発明は筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた筆記具に関するものである。
ボールペンやマーキングペン等の筆記具は、筆記時に筆記先端部と被筆記面との間に生じる筆記抵抗の影響を受け、書き味が損なわれてしまうことがある。中でも、ボールペンは、ステンレス鋼などからなるチップ本体と、該チップ本体のボール座に抱持される超鋼などの金属からなるボールと、からなるボールペンチップをインキ収容筒に装着した構成を有していることから、他の種類の筆記具と異なり、ボールとボール座との間の潤滑性が不足すると、筆記時のボールの円滑な回転が妨げられ、書き味が損なわれてしまうという問題も有している。よって、筆記具、特にボールペンにおいて、書き味を向上させることは、解決すべき大きな課題である。
こうした課題を解決するため、筆記先端部と被筆記面との間、さらには、ボールとボール座との間の潤滑性を向上させることを目的として、様々な添加剤を用いた筆記具用油性インキ組成物が多数提案されている。(特許文献1〜4)
しかし、特許文献1〜4のような添加剤を用いた場合、筆記先端部と被筆記面との間、さらには、ボールとボール座との間に生じる抵抗をある程度低減することはできるが、十分に満足できるものではなく、書き味の更なる向上は改良の余地があった。
また、筆記具用油性インキ組成物を用いた筆記具では、筆記先端部が大気中に暫く晒された状態にあると、インキ中の溶媒などが蒸発し、着色剤や樹脂などが乾燥固化してしまい、書き出し時にボールの回転が阻害され、筆跡カスレが発生してしまうという問題も有しており、このような問題を解決し、書き出し性能を向上させることも望まれている。
中でも、軸筒内に筆記先端を収容可能な出没式筆記具は、常に筆記先端部が大気に晒されているため、上述のような書き出し性能に影響が出やすく、特に考慮する必要がある。
このため、ノック式ボールペンや回転繰り出し式ボールペン等の出没式ボールペンにおいては、潤滑性の向上による書き味の向上とともに、書き出し性能をも向上させることが、特に求められている。
特開平5−331403号公報 特開平7−196971号公報 特開2007−176995号公報 特開2008−88264号公報
本発明の目的は、滑らかな書き味を奏しつつ、さらに、書き出し性能にも優れる筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた筆記具を提供することである。
本発明は、上記課題を解決するために、
「1.着色剤と、有機溶剤と、ライスオイルと、を含んでなることを特徴とする、筆記具用油性インキ組成物。
2.前記ライスオイルの脂質が、炭素数16以上の脂肪酸を含んでなる、第1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
3.前記ライスオイルの含有率が、前記筆記具用油性インキ組成物の総質量を基準として、0.05質量%〜10質量%である、第1項または第2項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
4.ポリビニルブチラール樹脂を更に含んでなる、第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
5.無機球状粒子を更に含んでなる、第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
6.第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容してなることを特徴とする、筆記具。
7.インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したチップ本体を有し、前記インキ収容筒内に第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容してなることを特徴とする、油性ボールペン。」とする。
本発明によれば、筆記先端部と被筆記面との間(ボールペンの場合には、ボールとボール座との間も含む)の潤滑性を向上させ、滑らかな書き味を奏しつつ、筆記先端部が大気中に暫く放置された場合でも良好な筆跡を形成可能な、書き味、書き出し性能に優れた筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた筆記具を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り質量基準であり、含有率とは、インキ組成物の質量を基準としたときの構成成分の質量%である。
<筆記具用油性インキ組成物>
本発明による筆記具用油性インキ組成物(以下、場合により、「インキ組成物」とも表す)は、着色剤と、有機溶剤と、ライスオイルと、を含んでなることを特徴とする。
以下、本発明のインキ組成物における構成成分について、詳細に説明する。
<ライスオイル>
本発明で用いられるライスオイルは、米に由来する植物油である。米糠または米胚芽などから抽出されるもので、米油とも呼ばれる。ライスオイルは、脂肪酸などの脂質を主成分とするものであるが、脂質以外にも、例えば、トコフェロール、トコトリエノール、γ−オリザノールやステロール等の成分を含んでいても良い。
ライスオイルは、優れた潤滑剤として効果的に働く。このため、ライスオイルを用いることで、筆記先端部と被筆記面との間、さらには、ボールとボール座との間の潤滑性を向上させることができ、滑らかな書き味を奏することができる。
これは、ライスオイルが、筆記先端(ボールペンの場合には、ボールとボール座)に吸着して、潤滑膜を形成し、筆記先端部と被筆記面との間に生じる筆記抵抗の上昇を抑えることができ、さらに、ボールペンに用いた場合、形成される潤滑膜によりボールがボール座上で円滑に回転することが可能となるためである。
また、ボールペンの場合、加工直後のボールペンチップは、ボールとチップ本体との馴染みが悪く、いわゆる「あたり」がある。このため、ガリガリとした筆記感が生じ、書き味に悪影響を及ぼしてしまうことがあった。しかし、ライスオイルを用いたインキ組成物は、ライスオイルにより、ボールとチップ本体とのなじみを良化し、これを維持することができ、ボールはがたつくことなく、良好に回転することができる。よって、ライスオイルを用いることで、このガリガリとした書き味不良がなくなり、優れた書き味を安定して得ることができる。
また、ライスオイルを用いると、筆記先端部が大気中に暫く放置された場合に形成される筆記先端の乾燥被膜を、容易に破壊できるようになる。これは、上述の通り、ライスオイルにより、筆記先端部の滑り性(ボールペンの場合は、ボールの回転性を含む)を向上できるためであり、さらに、ライスオイルにより、筆記先端に形成される乾燥皮膜を軟化させることができるためである。よって、筆記先端部が大気中に暫く放置されても、書き出し時の筆跡カスレは改善され、優れた書き出し性能を奏することができる。
以上より、ライスオイルを用いた本発明のインキ組成物は、滑らかな書き味を奏し、書き出し性能にも優れたものとなる。
また、ライスオイルは、上述の通り、ボールとボール座との間の潤滑性を向上させることができるため、ボール座の局部的な摩耗を抑えられる傾向にある。このため、筆記開始からインキ終了まで安定したインキ消費量が維持されやすく、筆跡濃淡の発生が抑制され、優れた筆記性をもたらすことができる。
ライスオイルは、米に由来する植物油であれば、特に限定されないが、米糠または米胚芽から抽出されるライスオイル(コメヌカ油、コメ胚芽油)であることが好ましく、特に優れた書き味と書き出し性能が得られやすいことから、コメヌカ油であることがより好ましい。
前述の通り、ライスオイルは脂質を主成分とするものであるが、本発明においては、ライスオイル全質量中の脂質の含有率が、60質量%以上であるものが好ましく、70質量%以上であるものがより好ましく、80質量%以上であるものが更に好ましい。これは、ライスオイル全質量中の脂質の含有率が、60質量%以上であれば、ライスオイルの純度が一定以上に保たれ、ライスオイルの潤滑効果を十分に得やすいためである。
前記脂質としては、例えば、炭素数6以上の脂肪酸が挙げられるが、本発明において、書き味、書き出し性能の向上を考慮すると、炭素数16以上の脂肪酸が脂質として含んでなるライスオイルを用いることが好ましい。炭素数16以上の脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸等が挙げられる。
また、ライスオイルを構成する脂肪酸は、不飽和脂肪酸を含んでなることがさらに好ましい。これは、不飽和脂肪酸を含んでなることで、嵩高く、厚みのある安定的で効果的な潤滑膜を筆記先端(ボールペンの場合には、ボールとボール座)に形成しやすく、優れた潤滑性を安定的に得られやすいためと考える。
さらに、ライスオイルの潤滑効果を十分に得て、書き味の向上、書き出し性能の向上を考慮すると、ライスオイルの構成脂肪酸全質量中の炭素数18の不飽和脂肪酸の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70%質量%以上であることがさらに好ましい。これは、炭素数18の不飽和脂肪酸が、一定値以上含んでなることで、より嵩高く、厚みのある安定的で効果的な潤滑膜を筆記先端(ボールペンの場合には、ボールとボール座)に形成しやすく、優れた潤滑性を安定的に得られやすいためである。
また、ライスオイルの油性インキ組成物中における安定性を考慮すると、ライスオイルの構成脂肪酸全質量中における炭素数18の不飽和脂肪酸の含有率は、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。
前記炭素数18の不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸を含んでなることが好ましい。
ライスオイルの構成脂肪酸全質量中におけるオレイン酸の含有率は、35質量%〜55質量%であることが好ましく、40質量%〜50質量%であることがより好ましい。これは、オレイン酸の含有率が上記数値範囲内であると、ライスオイルにより得られる潤滑膜が好適となり、より優れた書き味と、書き出し性能が得られるためである。
また、ライスオイルの構成脂肪酸全質量中におけるリノール酸の含有率は、25質量%〜45質量%であることが好ましく、30質量%〜40質量%であることがより好ましい。これは、リノール酸の含有率が上記数値範囲内であると、ライスオイルにより得られる潤滑膜が好適となり、より優れた書き味と、書き出し性能が得られるためである。
さらに、インキ経時安定性、書き味と書き出し性能の向上を考慮すると、ライスオイルの構成脂肪酸全質量中におけるオレイン酸とリノール酸の含有比(オレイン酸の含有量/リノール酸の含有量)は、質量基準で、1.0〜1.5であることが好ましく、1.1〜1.3であることがより好ましい。
また、ライスオイルの構成脂肪酸全質量中におけるパルミチン酸の含有率は、5質量%〜20質量%であることが好ましく、10質量%〜18質量%であることがより好ましい。パルミチン酸の含有率が上記数値範囲内であると、ライスオイルがもたらす潤滑効果や筆記先端に形成される乾燥被膜の軟化効果がバランス良く得られやすい。
また、本発明において、ライスオイルは、γ−オリザノール、トコトリエノール、トコフェロールの少なくとも一つを更に含んで構成されてなることが好ましく、トコトリエノール、トコフェロールの少なくとも一つを更に含んで構成されてなることがより好ましい。これは、ライスオイルの潤滑性向上効果を経時的に安定して得ることが可能となるためである。
また、本発明においては、ライスオイル全質量中における不けん化物の含有率が、1質量%〜10質量%であるライスオイルを用いることが好ましい。これは、不けん化物の含有率が上記数値範囲内であるライスオイルを用いることで、ライスオイルの潤滑性向上効果が経時的に安定して得られやすく、また、インキ経時安定性をより向上できるためであり、さらに上記効果の向上を考慮すると、2質量%〜5質量%であることがより好ましい。
尚、不けん化物とは、通常、ステロール、トコフェロール、炭水化物、グリセリン、高級アルコール等のアルカリでけん化されない物質のことであり、不けん化物の含有量は、例えば、日本油化学協会の基準油脂分析試験法の不けん化物測定法(2.4.8−1996)に準じて測定することができる。
また、本発明に用いられるライスオイルのけん化価は、100〜250であることが好ましく、150〜220であることがより好ましく、160〜210であることが特に好ましい。ライスオイルのけん化価が上記数値範囲内であれば、ライスオイルがもたらす潤滑効果および、筆記先端に形成される乾燥被膜の軟化効果を十分に得て、書き味、書き出し性能が更に向上しやすいためである。
また、ライスオイルの酸価は、0〜1であることが好ましく、0〜0.5であることがより好ましい。これは、酸価が上記数値範囲内であるライスオイルを用いることは、インキ成分との影響が生じにくく、インキの経時安定性が得られやすいためである。尚、本発明における酸価は、試料1g中に含まれる酸性成分(遊離脂肪酸)を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表すものとする。
また、ライスオイルのヨウ素価は、50〜200であることが好ましく、80〜150であることがより好ましい。これは、ヨウ素価が上記数値範囲内であるライスオイルを用いることは、ライスオイルの潤滑効果が得られやすく、書き味、書き出し性能が向上しやすいためである。
本発明における、ライスオイルの含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.05〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。ライスオイルの含有率が上記数値範囲内であれば、インキの経時安定性に影響を与えることなく、ライスオイルの潤滑効果や筆記先端に形成される乾燥被膜の軟化効果を十分に得て、優れた書き味と、優れた書き出し性能を得ることができる。さらに、上記効果の向上を考慮すると、0.2〜2質量%であることが好ましい。
尚、ライスオイルは、1種または2種以上の混合物として使用することが可能である。
ライスオイルの市販品の一例としては、例えば、ボーソー油脂(株)製のライスオイルB−1、築野食品工業(株)製の米油(コメサラダ油)、米胚芽油(PRO−15)などが挙げられる。
<着色剤>
本発明に用いる着色剤は、染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができ、染料と顔料を併用しても良い。
染料としては、油溶性染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料などや、それらの各種造塩タイプの染料等として、酸性染料と塩基性染料との造塩染料、塩基性染料と有機酸との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料などの種類が挙げられる。これらの染料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
染料について、具体的には、バリファーストブラック1802、バリファーストブラック1805、バリファーストブラック1807、バリファーストバイオレット1701、バリファーストバイオレット1704、バリファーストバイオレット1705、バリファーストブルー1601、バリファーストブルー1605、バリファーストブルー1613、バリファーストブルー1621、バリファーストブルー1631、バリファーストレッド1320、バリファーストレッド1355、バリファーストレッド1360、バリファーストイエロー1101、バリファーストイエロー1151、ニグロシンベースEXBP、ニグロシンベースEX、BASE OF BASIC DYES ROB−B、BASE OF BASIC DYES RO6G−B、BASE OF BASIC DYES VPB−B、BASE OF BASIC DYES VB−B、BASE OF BASIC DYES MVB−3(以上、オリヱント化学工業(株)製)、アイゼンスピロンブラック GMH−スペシャル、アイゼンスピロンバイオレット C−RH、アイゼンスピロンブルー GNH、アイゼンスピロンブルー 2BNH、アイゼンスピロンブルー C−RH、アイゼンスピロンレッド C−GH、アイゼンスピロンレッド C−BH、アイゼンスピロンイエロー C−GNH、アイゼンスピロンイエロー C−2GH、S.P.T.ブルー111、S.P.T.ブルーGLSH−スペシャル、S.P.T.レッド533、S.P.T.オレンジ6、S.B.N.バイオレット510、S.B.N.イエロー530、S.R.C−BH(以上、保土谷化学工業(株)製)等が挙げられる。
また、顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、メタリック顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、コレステリック液晶顔料等が挙げられる。
本発明において、着色剤として染料を用いる場合、潤滑性の向上とライスオイルとの相性によるインキ経時安定性を考慮すると、少なくとも造塩染料を用いることが好ましい。さらに造塩結合が安定していることで経時安定性を保てることを考慮すれば、塩基性染料と有機酸との造塩染料、酸性染料と塩基性染料との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料の中から用いることが好ましい。
前記造塩染料の中でも、ライスオイルによる潤滑性の向上を考慮すれば、塩基性染料と有機酸との造塩染料が好ましい。さらには、造塩染料を構成する有機酸については、フェニルスルホン基を有する有機酸であれば、金属に吸着し易い潤滑膜を形成しやすいことから、ボールペンに用いた場合、特に潤滑性が向上しやすく、ボール座の摩耗抑制や書き味を良好とするため好ましい。具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸が挙げられる。また、インキ中での長期安定性を考慮すれば、有機酸として、アルキルベンゼンスルホン酸を用いることが好ましい。
また、本発明において、書き味の更なる向上を考慮すれば、顔料を用いることが好ましい。これは、ボールとボール座の隙間に顔料粒子が入り込むことで、ベアリングのような作用が働きやすく、また、ボールとボール座との接触を抑制しやすく、ボールとボール座との間の潤滑性が向上して、書き味の向上効果が得られやすいためである。よって、本発明において、顔料を用いることは、顔料とライスオイルとの相乗効果により、潤滑性がより一層、高められるため、効果的である。また、顔料を用いることで、耐水性、耐光性に優れ、良好な発色を有する筆跡を得ることができるため、この点からも、効果的である。
着色剤の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、1〜45質量%であることが好ましい。これは、1質量%以上であれば、濃く、発色良好な筆跡が得られすい傾向にあり、45質量%以下であれば、インキ中での溶解性や分散性に影響を与え難い傾向にあるためであり、これらの傾向をより考慮すれば、3〜35質量%であることがより好ましい。
<有機溶剤>
本発明に用いる有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール等のグリコールエーテル溶剤、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール等のグリコール溶剤、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール溶剤など、筆記具用インキ組成物として一般的に用いられる有機溶剤が例示できる。
これらの有機溶剤の中でも、ライスオイルの溶解性を考慮すると、非水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。ライスオイルは、非水溶性有機溶剤に対する溶解性に優れていることから、ライスオイルの潤滑効果や筆記先端に形成される乾燥被膜の軟化効果を、長期に安定的に得やすいためである。特に、ライスオイルは、非水溶性有機溶剤に十分に溶解することで、筆記先端(ボールペンの場合には、ボールとボール座)全体にライスオイルが十分なじみ、潤滑膜を形成しやすくなるため、筆記先端部の滑り性(ボールペンの場合は、ボールの回転性を含む)がより向上して、滑らかな書き味と、優れた書き出し性能をもたらすことができる。
また、本発明においては、有機溶剤の中でも、アルコール溶剤を用いることが好ましい。これは、アルコール溶剤はライスオイルを溶解安定化しやすく、長期間、優れたインキ経時安定性が得られやすく、さらに、長期に亘って、滑らかな書き味と、優れた書き出し性能をもたらすことができるためである。また、アルコ−ル溶剤は揮発して、筆記先端での乾燥を促進しやすくし、筆記先端部内(チップ先端部内)をより早く増粘させることで、筆記先端部の間隙からインキが漏れ出すことを抑制できることからも、好適に用いられる。さらに、芳香環を有すると、潤滑性も向上しやすいため、ライスオイルの潤滑効果との相乗的な潤滑性の向上を考慮すると、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコール溶剤を用いることが好ましい。
また、アルコール溶剤以外の有機溶剤としては、グリコールエーテル溶剤を用いることが好ましい。これは、グリコールエーテル溶剤は吸湿性能を有することから、筆記先端部が乾燥したときに形成する被膜の強度を軟化させる効果も有しており、ライスオイルとの相乗効果により、書き出し性能がより向上しやすいためである。ライスオイルの溶解性、インキの経時安定性を考慮すれば、芳香族グリコールエーテル溶剤を用いることがさらに好ましい。
よって、本発明において、グリコールエーテル溶剤とアルコ−ル溶剤を併用することが特に好ましく、芳香族グリコールエーテル溶剤と、芳香族アルコール溶剤を併用することが、最も好ましい。
有機溶剤の含有率は、ライスオイルの溶解性、また、得られる筆跡の乾燥性やにじみ抑制等の向上を考慮すると、インキ組成物の総質量を基準として、10〜90質量%であることが好ましく、さらに、筆記先端での乾燥性を考慮すれば、20〜90質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましい。
<樹脂>
また、本発明において、樹脂をインキ粘度調整剤などとして、更に含んでなることが好ましい。本発明において、好ましく用いられる樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などが挙げられるが、その中でも、ポリビニルブチラール樹脂またはケトン樹脂を用いることが好ましい。
中でも、本発明においては、ポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。
これは、ポリビニルブチラ−ル樹脂も、高い潤滑効果が得られる潤滑層を形成しやすいもので、ライスオイルが形成する潤滑膜との相乗効果により、さらに高い潤滑効果が得られ、書き味をより一層向上できるためである。
特に、ボールペンに用いる場合に効果的で、ボールとボール座との間に、弾力を有するインキ層を形成してボールとボール座との間の直接接触を抑制して、書き味をより一層向上できる。
さらに、ポリビニルブチラール樹脂を用いることは、筆記先端に形成される被膜により、筆記先端からのインキ漏れを抑制しやすく、この点からも効果的である。
また、前述の通り、ライスオイルは筆記先端に形成される乾燥被膜を軟化させ、書き出し性能を向上させることができるが、この被膜の軟化効果は、ポリビニルブチラール樹脂を用いた場合、特に効果的に得られる。よって、本発明において、ポリビニルブチラール樹脂を用いることは、書き出し性能をも、より一層向上できるため、効果的である。
以上より、本発明において、ポリビニルブチラール樹脂は、書き味、書き出し性能を向上させ、さらにインキ漏れも抑制できるため、好適に用いられる。また、着色剤として顔料を用いる場合、ポリビニルブチラール樹脂は、顔料分散効果も得られるため、この点からもポリビニルブチラール樹脂は好適に用いられる。
なお、ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)をブチルアルデヒド(BA)と反応させたものであり、ブチラール基、アセチル基、水酸基を有した構造である。
また、ポリビニルブチラール樹脂は、水酸基量25mol%以上とすることが好ましい。これは、水酸基量25mol%以上のポリビニルブチラール樹脂であれば、有機溶剤への溶解性が良好で、十分な潤滑効果やインキ漏れ抑制効果が得られやすいためである。また、吸湿性による被膜の軟化効果による書き出し性能の向上という点からも、水酸基量25mol%以上のポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。
さらに、水酸基量30mol%以上のポリビニルブチラール樹脂を用いることは、書き味が向上しやすくなるため、好ましく、特に、ボールペンに用いる場合、効果的である。これは、筆記時において、ボールの回転により摩擦熱が発生することで、ボールペンチップ先端部のインキが温められて、該インキの温度が高くなるが、ポリビニルブチラール樹脂を用いた場合、他の樹脂に比べ、インキ温度が上昇しても、インキ粘度が下がりづらい傾向にあることから、ボールとボール座との間に常に弾力のあるインキ層が形成され、ボールとボール座の直接接触が抑制され、書き味が向上しやすい傾向があるためである。また、水酸基量40mol%を越えるポリビニルブチラール樹脂を用いると、吸湿量が多くなりやすく、インキ成分との経時安定性に影響が出やすいため、水酸基量40mol%以下のポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。よって、本発明において、水酸基量30〜40mol%のポリビニルブチラール樹脂を用いることがより好ましく、さらには、水酸基量30〜36mol%であるポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。
なお、ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量(mol%)とは、ブチラール基(mol%)、アセチル基(mol%)、水酸基(mol%)の全mol量に対して、水酸基(mol%)の含有率を示すものである。
また、ポリビニルブチラール樹脂の平均重合度は、200〜2500であることが好ましい。これは、平均重合度が200以上であると、インキ漏れ抑制性能が向上しやすく、また、平均重合度が2500以下であれば、インキ粘度の上昇を抑え、良好な書き味が得られやすい傾向にあるためである。さらに、上記効果の向上を考慮すれば、ポリビニルブチラール樹脂の平均重合度は1500以下であることがより好ましく、ライスオイルとの相乗効果による潤滑性の向上を考慮すれば、平均重合度は、200〜1000であることが特に好ましい。ここで、平均重合度とは、ポリビニルブチラール樹脂の1分子を構成している基本単位の数をいい、JISK6728(2001年度版)に規定された方法に基づいて測定された値を採用可能である。
ポリビニルブチラール樹脂の含有率は、インキ組成物中の樹脂の総質量に対して70%以上とし、主たる樹脂として用いることが好ましい。これは、ポリビニルブチラール樹脂の含有率がインキ組成物中の樹脂の総質量に対し、70%未満となると、その他の樹脂によって、弾力のある潤滑層をボールとボール座の間に形成することが阻害されやすく、書き味の向上効果が得られ難くなり、さらに、筆記先端部の樹脂被膜形成も阻害されやすくなって、インキ漏れを抑制し難くなるためである。また、書き味やインキ漏れ抑制効果の更なる向上を考慮すれば、ポリビニルブチラール樹脂の含有率は、インキ組成物中の樹脂の総質量に対して90%以上となることが好ましい。
ポリビニルブチラール樹脂の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、1〜40質量%であることが好ましい。1質量%以上であれば、所望の潤滑効果およびインキ漏れ抑制効果が十分に得られやすく、40質量%以下であればインキ中での溶解性が安定しているため、ポリビニルブチラール樹脂がもたらす効果を得やすいためである。さらに、上記効果の向上を考慮すれば、3質量%以上であることが好ましく、また、30質量%を越えると、インキ粘度が高くなりすぎて書き味に影響を及ぼす傾向にあるため、3〜30質量%であることが好ましく、より考慮すれば、3〜25質量%が好ましく、3〜15質量%であることがより好ましく、3〜10質量%であることがさらに好ましい。
ポリビニルブチラール樹脂については、具体的には、積水化学工業(株)製のエスレックシリーズなどが挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
ポリビニルブチラール樹脂以外の樹脂として、曳糸性付与剤を適宜用いてもよい。特に、ポリビニルピロリドン樹脂を配合することで、インキの結着性を高め、筆記先端における余剰インキの発生を抑制しやすいため、ポリビニルピロリドン樹脂を含有することが好ましい。
ポリビニルピロリドン樹脂の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.01質量%より少ないと、余剰インキの発生を抑制しにくい傾向があり、3質量%を越えると、インキ中で溶解性が劣りやすい傾向があるため、0.01〜3質量%が好ましい。より上記理由を考慮すれば、0.1〜2質量%がより好ましい。
ポリビニルピロリドン樹脂としては、具体的には、アイエスピー・ジャパン(株)製のPVP K−15、PVP K−30、PVP K−90、PVP K−120などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
<界面活性剤>
本発明において、潤滑性の向上や、筆記先端部を大気中に放置し、筆記先端部が乾燥したときの書き出し性能の更なる向上を考慮すると、界面活性剤を更に含んでなることが好ましい。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤などが挙げられる。その中でも、潤滑性の向上および書き出し性能の向上を考慮すれば、シリコーン系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤の中から1種以上を用いることが好ましい。
さらに、筆記先端(ボールペンの場合には、ボールとボール座も含む)の潤滑性を向上し、書き味の更なる向上を考慮すれば、リン酸エステル系界面活性剤を更に用いることが好ましい。これは、リン酸エステル系界面活性剤の潤滑効果とライスオイルとの潤滑効果の相互作用により、書き味をより一層向上させることができるためである。
また、リン酸エステル系界面活性剤は、リン酸基を有することから、特に金属表面に吸着しやすく、よって、特に、ボールとボール座との間に潤滑膜を形成して潤滑性を向上し、書き味を良化させることができる。また、ライスオイルも、多くの脂肪酸により構成されているため、脂肪酸のカルボキシル基が金属表面に吸着しやすく、潤滑性を向上させやすい。よって、リン酸エステル系界面活性剤とライスオイルを用いることは、両者が形成する潤滑膜により、相乗的に、ボールとボール座の間の潤滑性をより一層向上させることができ、滑らかな書き味をもたらす。このため、本発明において、リン酸エステル系界面活性剤とライスオイルを併用することは効果的で、特に、本発明のインキ組成物をボールペンに用いた場合、特に有効である。
さらに、本発明において、ポリビニルブチラール樹脂を用いる場合、リン酸エステル系界面活性剤を用いることは、ポリビニルブチラール樹脂による潤滑層と、リン酸エステステル系界面活性剤による潤滑膜により、より一層、潤滑性を向上しやすく、効果的である。
また、前述の通り、顔料を用いることで、ボールとボール座との接触を抑制し、ボールとボール座との間の潤滑性を向上できる。このため、ライスオイルを含んでなる本発明において、顔料と、ポリビニルブチラール樹脂と、リン酸エステル系界面活性剤と、を用いることは、特段の優れた潤滑効果が得られやすく、よって、更に優れた書き味と、書き出し性能が得られるため、より効果的である。
リン酸エステル系界面活性剤において、書き味と書き出し性能との両方をより向上させることを考慮すれば、HLB値が6〜14であることが好ましい。これは、HLB値が14を越えると親水性が強くなるため、油性インキ中での溶解性が劣りやすくなり、リン酸エステル系界面活性剤の効果が得られにくく、特に、潤滑効果が得られにくいためである。また、HLB値が6未満だと、親油性が強くなり過ぎて、有機溶剤との相溶性に影響が出やすく、インキ経時安定性が得られにくく、さらに書き出し性能が向上しにくいためである。さらに、潤滑性を向上させ、より優れた書き味を得ることを考慮れば、HLB値が12以下にすることが好ましく、HLB値が6〜12であることが好ましく、書き出し性能の更なる向上を考慮すれば、HLB値が7〜12が好ましい。
尚、HLBは、グリフィン法、川上法などから求めることができる。特に、ノック式筆
記具や回転繰り出し式筆記具等の出没式筆記具においては、キャップ式筆記具とは異なり、常時、筆記先端部が外部に露出した状態となるため、筆記先端部の乾燥時における書き出し性能が影響を受けやすいことから、上記HLB値としたリン酸エステル系界面活性剤を用いることはより好ましい。
リン酸エステル系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸トリエステル、アルキルリン酸エステル、アルキルエーテルリン酸エステル或いはその誘導体等が挙げられる。
<無機球状粒子>
また、本発明のインキ組成物をボールペンに用いる場合、無機球状粒子をさらに含んでなることが好ましい。ここで、無機球状粒子とは、無機化合物の球状粒子であり、球状とは、球状に近い形状の略球状も含むものとする。
前記無機球状粒子は、潤滑剤として効果的に働き、ボールとボール座との摩擦を緩和させ、潤滑性を向上して滑らかな書き味を奏することができる。また、前述の通り、ボールペンの場合には、加工直後のボールペンチップには、ボールとチップ本体とのなじみが悪く、いわゆる「あたり」があり、ガリガリとした筆記感が生じて、筆記抵抗(摩擦抵抗)が大きくなり、書き味に悪影響を及ぼしてしまうことがある。しかし、球状で、かつ、適度な硬度を有する無機球状粒子を用いると、ボールとボール座との接触面のなじみを良化することができ、ボールがボール座との接触する際に、接触面がほぼ同一曲面状に接するようになって、筆記抵抗(摩擦抵抗)が低減し、この状態を維持し続けることができるようになる。このため、ボールはがたつくことなく良好に回転し続けられ、さらに、無機球状粒子は、ベアリング剤としても効果的に働くことができるため、無機球状粒子を用いることで、上述のようなガリガリとした書き味不良をなくすとともに、優れた書き味を安定して得ることができる。
よって、ライスオイルを含んでなる本発明において、更に無機球状粒子を添加することは、ライスオイルとの併用による潤滑剤としての相乗効果が得られ、より一層の滑らかな書き味が得られるとともに、ボールとチップ本体とのなじみ良化とその維持が可能となって、ガリガリとした書き味不良もなくなり、さらに、より優れた書き味を維持できるため、効果的である。
また、無機球状粒子は、略真球状であるものがより好ましい。
略真球状であると、ボールとボール座の間をインキが通過する際に列をなすように隙間に並び、ベアリング効果を生じやすくなる。このため、ボールとチップ本体が馴染んだ後、すなわちボールとボール座の隙間が一定になった後は、急激に筆記抵抗(動摩擦係数)を低減させ、かつ安定的な潤滑性を示すようになる。
さらに、ボールとボール座の隙間が一定の等間隔に近くなると接触面積が増大するなどして、ボール受け座が摩耗しやすくなることがあり、通常のインキを使用した場合には、耐摩耗性が悪化することがある。しかし、ボールとボール座の隙間に球状粒子を介在させると、ボールとボール座が直接的に接触することが抑制されるため、良好なボール座の耐摩耗性を示すようになるのだが、この効果は、略真球状であることで、より一層、得られやすい。つまり、略真球状の無機球状粒子は、研磨剤としてボールとボール座の隙間を一定にし、筆記抵抗(動摩擦係数)を低下させやすい上、ボールとボール座の隙間を一定にした後は、研磨剤とは全く逆の効果であるベアリング剤(潤滑効果)としても作用しやすく、抵抗(動摩擦係数)を低下させるとともに、ボール座の耐摩耗性をより一層、向上できるのである。さらに、この効果は、ライスオイルが共存すると、効率的に得ることができる。このため、本発明のインキにおいて、略真球状の無機球状粒子を更に含んでなることは好適であり、効果的であるといえる。
なお、略真球状とは、真球あるいは真球に近い球状とする。
本発明における無機球状粒子は、無機化合物の球状粒子であり、例えば、シリカ、ジルコニア、アルミナ、フェライト、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、チタン酸バリウムなどの球状粒子が挙げられる。
本発明においては、無機化合物の球状粒子であれば特に限定されないが、ライスオイルとの併用による潤滑剤としての相乗効果によっておこる書き味の向上と、その安定性を考慮すると、シリカの球状粒子、フェライトの球状粒子を用いることが好ましい。さらに上記効果の向上を考慮すると、フェライトの球状粒子(フェライト球状粒子)を用いることがより好ましい。
また、フェライト球状粒子は磁性を示す性質を有しており、金属材料に対して吸着性を示すため、ボールペンチップを金属材料とした場合には、ボールとボール座の隙間に吸着しやすい傾向にある。このため、フェライトの球状粒子は、該隙間に列をなすように並んで残存しやすく、ベアリング効果が得られやすい。よって、フェライト球状粒子を用いることは、筆記抵抗(動摩擦係数)を低減させ、かつ安定的な潤滑性が得られやすいため、この点からも、より好適であるといえる。
また、前述のとおり、フェライト球状粒子は磁性を有していることから、金属材料であるボールとボール座の隙間に吸着し、該隙間にフェライト球状粒子が残存しやすい傾向にある。このため、ボールとボール座の金属摩擦が緩和されやすく、よって、書き味を良好すると同時に、高い筆圧下(筆記荷重300gf〜500gf)においてもボール座の摩耗を抑制する効果(高筆圧下耐摩耗性能)が得られやすい。特に、近年のボールペン用油性インキは、書き味を良好とするため、インキの低粘度化が進んでおり、高筆圧下で筆記する場合、ボール座の摩耗が進みやすく、高筆圧下耐摩耗性能に影響が出やすいため、フェライト球状粒子は、好適に用いることができる。以上より、本発明において、磁性を示さない他の材料と比べると、磁性を有するフェライト球状粒子を用いることは、特に効果的であり、さらに、フェライト球状粒子は略真球状あることで、より優れた高筆圧下耐摩耗性能が得られやすいため、より一層、効果的である。
フェライトとは、酸化鉄(Fe)を主成分とする磁性を示すセラミックスの総称であるが、本発明においては、フェライト球状粒子のフェライトの成分としては、酸化鉄(Fe)以外の金属酸化物を含んでなることが好ましく、遷移金属、アルカリ土類金属、希土類の中から1種以上含有する金属酸化物を含んでなることが好ましい。これは、フェライトの成分が、遷移金属、アルカリ土類金属、希土類の中から1種以上含有する金属酸化物を含んでなることで、適度の硬さを有するフェライト球状粒子となるため、ボールとボール座との接触面のなじみを良化しやすく、また、ベアリング効果が得られやすく、優れた書き味、さらにはボール座の摩耗抑制効果が得られやすいためである。さらに、ライスオイルとの相乗効果による上記効果の向上を考慮すれば、遷移金属、アルカリ土類の中から1種以上含有する金属酸化物を含んでなることが好ましく、遷移金属を少なくとも含んでなる金属酸化物を含んでなるフェライトを用いることが特に好ましい。
遷移金属、アルカリ土類金属、希土類の中から1種以上含有する金属酸化物を含んでなるフェライトとしては、例えば、スピネル型フェライト(遷移金属含有)としては、MeO・Fe、Me・Feの化学式(Me:遷移金属)で示されるものとして、MnO・Fe、Mn・Fe、MgO・Fe、Mg・Fe、ZnO・Fe、Zn・Fe、NiO・Fe、Ni・Fe、CuO・Fe、Cu・Fe、CoO・Fe、Co・Feなどが挙げられ、マグネトプランバイト型フェライト(アルカリ土類金属含有)としては、MO・6Fe、M・Fe1219の化学式(M:アルカリ土類金属)で示されるものとして、SrO・6Fe、Sr・Fe1219、BaO・6Fe、Ba・Fe1219などが挙げられ、ガーネット型フェライト(希土類含有)としては、3R・5Fe、RFe12の化学式(R:希土類)で示されるものとして、3Y・5Fe、YFe12、3SmO・5Fe、SmFe12、3GdO・5Fe、GdFe12などが挙げられる。
これらのフェライトの中でも、適度の硬さを有することで、ベアリング効果が得られやすく、優れた書き味や、高筆圧下(筆記荷重300gf〜500gf)においてもボール座の摩耗を抑制する効果(高筆圧下耐摩耗性能)を考慮すれば、少なくともスピネル型フェライト(遷移金属含有)を含んでなることが好ましい
さらに、スピネル型フェライト(遷移金属含有)の中でも、適度の硬さを有することで、よりベアリング効果が得られやすくするため、MnまたはMgを含有したスピネル型フェライト(遷移金属含有)を用いることが好ましい。
また、フェライトの成分は、前記金属酸化物の中から2種以上選択して複合化合物とした複合フェライトとすることが好ましく、さらに、スピネル型フェライト、マグネトプランバイト型フェライト、ガーネット型フェライトの中から2種以上選択して複合化合物とした複合フェライトとすることが好ましい。
さらに、ベアリング効果を得られやすくして、より優れた書き味や、高筆圧下(筆記荷重300gf〜500gf)における潤滑性を保ち、ボール座の摩耗を抑制(高筆圧下耐摩耗性能)することを考慮すれば、前記フェライト成分中のスピネル型フェライト(遷移金属含有)は、フェライト成分全量に対して、50%以上含有して、主要フェライト成分とすることが好ましく、より考慮すれば、フェライト成分全量に対して、70%以上含有することが好ましく、さらに80%以上含有することが好ましい。
さらに、フェライトの硬さを考慮すると、マグネトプランバイト型フェライト(アルカリ土類金属含有)を、フェライト成分全量に対して、1〜15%含有することが好ましく、より考慮すれば、2〜8%が好ましく、スピネル型フェライトと、マグネトプランバイト型フェライトとの複合フェライトとすることが好ましい。
無機球状粒子の平均粒子径は、1nm〜200nmとすることが好ましい。より好ましくは、10nm〜100nmであり、さらに好ましくは、20nm〜80nmである。これは、無機球状粒子の平均粒子径が上記数値範囲内であると、ボールとボール座の隙間に入り込み、ベアリング効果が得られやすく、また、無機球状粒子の介在により、ボールとボール座が直接的に接触するのを抑制しやすいためであり、優れた書き味と、耐摩耗性の効果を得やすい。
平均粒子径については、FE−SEM(日立ハイテクノロジーズ社製SU−8020)にて、倍率200000倍にて総計100粒子以上カウント出来るように視野を変えて撮影する。その後、撮影したSEM画像をスキャナーで読み込み、メディアサイバネティクス(MEDIA CYBERNETICS)社画像解析ソフト「Image−Pro PLUS」を用いて画像解析を行い、マニュアル測定によって、水平フェレ径を計測し、平均したものを平均粒子径とした。
また、無機球状粒子の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜10質量%であることが好ましい。これは、0.1質量%以上であれば、所望の潤滑性が得られやすく、10質量%以下であれば、インキ中での分散安定性が得られ、優れたインキ経時安定性を奏しやすい。これらの傾向を考慮すれば、0.1〜5質量%が好ましく、より考慮すれば、0.3〜3質量%が好ましい。
<有機アミン>
また、本発明では、インキ中でのインキ成分の安定性を考慮すれば、有機アミンを用いることが好ましい。オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のエチレンオキシドを有するアミンや、ラウリルアミン、ステアリルアミン等のアルキルアミンや、ジステアリルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン等のジメチルアルキルアミン等の脂肪族アミンが挙げられ、その中でも、インキ中での安定性を考慮すれば、エチレンオキシドを有するアミン、ジメチルアルキルアミンが好ましく、さらに考慮すれば、エチレオキシドを有するアミンが好ましい。
また、その他添加剤として、脂肪酸アマイド、水添ヒマシ油などの擬塑性付与剤を、また、着色剤安定剤、可塑剤、キレート剤、水などを適宜用いても良い。これらは、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
本発明の筆記具用油性インキ組成物のインキ粘度は、特に限定されるものではないが、20℃、剪断速度5sec−1(静止時)におけるインキ粘度が50000mPa・sを越えると、書き出し性能や書き味が劣りやすいため、20℃、剪断速度5sec−1(静止時)におけるインキ粘度は、50000mPa・s以下であることが好ましい。また、20℃、剪断速度5sec−1(静止時)におけるインキ粘度が2000mPa・s未満だと、インキ漏れを抑制しにくいため、2000mPa・s以上とすることが好ましい。インキ漏れ抑制、書き味、インキ追従性能、書き出し性能をより向上することを考慮すれば、インキ粘度は2000〜35000mPa・sがより好ましく、さらに、書き味、書き出し性能の向上をより考慮すれば、3000〜20000mPa・sが好ましい。
更に、本発明において、インキ収容筒内に着色剤と、有機溶剤と、ライスオイルと、を含んでなる筆記具用油性インキ組成物を収容した油性ボールペンとした場合、筆記距離が0〜100m時点のインキ消費量を(Y1)mgとし、インキ終了前100mのインキ消費量を(Y2)mgとしたとき、1.2≧Y1/Y2≧0.8とすることが好ましい。インキ消費量Y1、Y2の関係性が上記数値の範囲内であれば、筆記開始から、インキ終了時まで、安定して滑らかな書き味が得られつつ、さらに、インキの吐出安定性が維持されるため、筆跡濃淡などのない、優れた筆記性能を得ることができる。上記効果の向上を考慮すると、1.15≧Y1/Y2≧0.9とすることがより好ましい。
本発明のように、ライスオイルを含んでなることは、上述の通り、ボールとボール座との間の潤滑性が向上して、筆記開始からインキ終了まで安定したインキ消費量が維持されやすいため、Y1/Y2の関係を上記範囲内としやすく、効果的である。
<筆記具>
本発明による筆記具用油性インキ組成物は、各種筆記具に適用することができるが、特にボールペンに用いることが好ましい。ライスオイルの潤滑効果を効果的に得やすく、優れた書き味が得られるためである。
さらには、ノック式や回転繰り出し式などの出没式ボールペンに好適に用いられる。一般的に、このような、筆記先端部が密閉されない出没式ボールペンは、チップ先端部が定常的に大気中に放置されるため、チップ先端部が乾燥し、書き出し時に筆跡カスレなどが生じやすいという課題を有している。しかし、ライスオイルを用いた本発明のインキ組成物を用いることで、上述のような問題は改善され、優れた書き出し性能を奏する。よって、本発明のインキ組成物を、出没式ボールペンに用いることは効果的である。
<ボールペンチップ>
本発明で用いられるボールペンチップのボール表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.1〜12nmとすることが好ましい。これは、ボール表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1nm未満だと、ボール表面に十分にインキが載りづらいため、筆記時に濃い筆跡が得られづらく、さらに、筆跡に線とび、カスレが発生しやすくなるためであり、算術平均粗さ(Ra)が12nmを越えると、ボール表面が粗すぎて、ボールとボール座の回転抵抗が大きいため、書き味が劣りやすく、さらに、筆跡にカスレ、線とびなどの筆記性能に影響が出やすくなるためである。また、ボール表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1〜10nmであると、本発明のようなインキ組成物を用いた場合、ボール表面にインキが載りやすいためより好ましく、より書き味を考慮すれば、2〜8nmであることが好ましい。
なお、ボールの表面粗さの測定は、セイコーエプソン社製のSPI3800Nで求めることができる。
また、本発明で用いられるボールペンチップのボールの直径(ボール径)は、特に限定されない。一般的には、ボール径は、φ0.2mm〜φ2.0mm程度であるが、一般に、ボール径が大きくなるほど、ボールとボール座の接触面積が大きくなることから、優れた書き味を得るためには、ボールとボール座の間の潤滑性を考慮する必要がある。前述の通り、ライスオイルは、ボールとボール座の間の潤滑性を向上できることから、本発明のインキ組成物は、ボール径が大きいものほど、ライスオイルの潤滑効果が発揮されやすく、滑らかな書き味が得られやすい傾向にある。よって、本発明に用いられる、ボールペンチップのボール径としては、φ0.6mm以上であることが好ましく、φ0.9mm以上であることがより好ましい。
また、ボールに用いる材料は、特に限定されるものではない。例えば、タングステンカーバイドを主成分とする超硬合金ボール、ステンレス鋼などの金属ボール、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ、シリカ、ジルコニアなどのセラミックスボール、ルビーボールなどが挙げられる。
また、チップ本体の材料は、ステンレス鋼、洋白、ブラス(黄銅)、アルミニウム青銅、アルミニウムなどの金属材、ポリカーボネート、ポリアセタール、ABSなどの樹脂材が挙げられるが、ライスオイルの潤滑効果を効果的に得て、書き味と書き出し性能を向上させることを考慮すると、金属製のチップ本体を用いることが好ましく、ボール座の摩耗抑制、経時安定性を考慮するとステンレス製のチップ本体とすることが好ましい。
(実施例)
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
着色剤、有機溶剤、ライスオイル、リン酸エステル系界面活性剤、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、有機アミンを採用し、これを所定量秤量して、60℃に加温した後、ディスパー攪拌機を用いて完全溶解させて筆記具油性インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。
尚、ブルックフィールド(株)製粘度計 ビスコメーターRVDVII+Pro CP−52スピンドルを使用して20℃の環境下で剪断速度5sec−1(回転数2.5rpm)にて実施例1のインキ粘度を測定したところ、3200mPa・sであった。
・着色剤(赤色造塩染料:塩基性染料とアルキルベンゼンスルホン酸との造塩染料)
8.0質量%
・着色剤(青色造塩染料:塩基性染料とアルキルベンゼンスルホン酸との造塩染料)
8.0質量%
・着色剤(黄色造塩染料:有機アミンと酸性染料との造塩染料) 8.0質量%
・着色剤(顔料分散体(カーボンブラック、顔料分20%)) 15.0質量%
・アルコール溶剤(ベンジルアルコール) 49.5質量%
・ライスオイル 1.0質量%
・リン酸エステル系界面活性剤A(HLB:8.7) 2.0質量%
・ポリビニルブチラール樹脂A(水酸基量36mol%、平均重合度300)
6.0質量%
・ポリビニルピロリドン樹脂 0.5質量%
・有機アミン(オキシエチレンアルキルアミン) 2.0質量%
<実施例2〜9、10、11、比較例1〜3>
実施例1に対して、配合する成分の種類や添加量を表に示した通りに変更した以外は、実施例1と同じ方法で、実施例2〜9、10、11、比較例1〜3の筆記具用油性インキ組成物を得た。
Figure 2020164782
Figure 2020164782
<試験および評価>
得られたインキ組成物を以下の通りの方法で、試験および評価した。得られた結果は、表1および表2の通りである。
実施例1〜9、10、11および比較例1〜3で作製した筆記具用油性インキ組成物(0.2g)を、超硬合金製ボール(φ0.5mm、ボール表面の算術平均粗さ(Ra):7nm)を回転自在に抱時したチップ本体(ステンレス製)を先端に有するインキ収容筒の内部に充填させたレフィルを作製し、このレフィルを、(株)パイロットコーポレーション製の油性ボールペン(スーパーグリップ(登録商標))に配設して、ボールペンを得た。得られたボールペンを試験用ボールペン(φ0.5)とし、筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験および評価を行った。
尚、書き出し性能試験においては、超硬合金製ボール(φ1.0mm)を回転自在に抱持したチップ本体(ステンレス製)を用いた以外は、上記同様にボールペンを得て、この得られたボールペンを試験用ボールペン(φ1.0)とし、試験および評価を行った。
(書き味試験)
試験用ボールペン(φ0.5)を用いて、手書きによる書き味(筆感)を、官能試験により下記基準に従って評価した。
◎:非常に滑らかであるもの
○:滑らかであるもの
△:やや重さを感じる部分もあるが、実用上問題のない滑らかさであるもの
×:重いもの
(書き出し性能試験)
試験用ボールペン(φ1.0)のチップ先端部を出したまま20℃、65%RHの環境下に30分放置し、その後、走行試験で下記筆記条件にて筆記し、書き出しにおける筆跡カスレの長さを測定し、下記基準に従って評価した。
<筆記条件>筆記荷重70gf、筆記角度70°、筆記速度4m/minの条件で、走行試験機にて直線書きを行い評価した。
○:筆跡カスレの長さが、5mm未満であるもの
△:筆跡カスレの長さが、5mm以上、30mm未満であるもの
×:筆跡カスレの長さが、30mm以上であるもの
尚、書き味試験を行った、実施例1のインキ組成物を用いた試験用ボールペン(φ0.5)にて、20℃、65%RHの環境下、荷重500gf、筆記角度70°、4m/minの走行試験機にて筆記試験を行い、筆記距離が0〜100m時点のインキ消費量((Y1)mg)と、インキ終了前100mのインキ消費量((Y2)mg)を測定したところ、Y1/Y2=1.08であった。
また、書き出し性能試験を行った、実施例1と比較例1のインキ組成物を用いた試験用ボールペン(φ1.0)にて、上記書き味試験と同様にして評価したところ、ライスオイルを含んでなる実施例1のインキ組成物を用いたものは、ライスオイルを含まない比較例1のインキ組成物を用いたものと比較して、極めて滑らかな書き味であった。
実施例1〜9、10、11のインキ組成物は、書き味、書き出し性能ともに良好レベルのものであった。特に、ライスオイルと無機球状粒子を用いた実施例10、実施例11のインキ組成物は、他の実施例よりも書き味に優れていた。
また、実施例1〜9、10、11のインキ組成物は、筆記開始からインキ終了時まで、安定して滑らかな書き味が得られ、さらに筆跡濃淡などのない優れた筆跡を得ることができた。
また、比較例1〜3のインキ組成物は、ライスオイルを用いなかったため、書き味と書き出し性能の両方を満足するものではなかった。
また、上記で得られた実施例1、実施例10および比較例1の筆記具用油性インキ組成物(0.2g)を、超硬合金製ボール(φ0.7mm、ボール表面の算術平均粗さ(Ra):7nm)を回転自在に抱時したチップ本体(ステンレス製)を先端に有するインキ収容筒の内部に充填させたレフィルを作製し、このレフィルを、(株)パイロットコーポレーション製の油性ボールペン(スーパーグリップ(登録商標))に配設して、ボールペンを得た。得られたボールペンを試験用ボールペン(φ0.7)とし、JIS S6039(ISO12757−1)に記載の筆記試験機により、筆記角度70°、筆記荷重200g、筆記速度4m/minにて100m筆記した後、表面性測定機(商品名:HEIDON−14D、新東科学株式会社製)を用いて、筆記角度70°、4mm/min、筆記荷重200gの条件下で、上質紙(旧JIS P3201に規定される筆記用紙Aに相当するもの。化学パルプ100%を原料に抄造され、秤量範囲40〜157g/m2、白色度75.0%以上)上で、直線筆記した際の筆記抵抗(動摩擦係数)を測定したところ、結果は以下のようになった。なお、結果の値は、各試験用ボールペン4本に対し、それぞれ4回測定した合計16回の測定値の平均値である。
動摩擦係数は、低い順に、実施例10、実施例1、比較例1であり、ライスオイルを含んだ実施例1、実施例10のインキ組成物を用いたものの方が、比較例1のインキ組成物を用いたものと比較して、動摩擦係数が低く、書き味も滑らかであった。また、ライスオイルと無機球状粒子を含んでなる実施例10のインキ組成物を用いたものの方が、実施例1のインキ組成物を用いたものと比較して、動摩擦係数は低く、書き味はより一層、滑らかであった。
実施例1の動摩擦係数:0.106
実施例10の動摩擦係数:0.103
比較例1の動摩擦係数:0.109
また、ライスオイルと無機球状粒子を含んでなる実施例10のインキ組成物を用いたものの方が、比較例1や実施例1のインキ組成物を用いたものに比べて、得られた動摩擦係数の値のばらつきが小さく、安定的に、筆記抵抗の低減効果が得られることがわかった。
また、書き味試験で用いた試験用ボールペン(φ0.5)を用いて、荷重500gf、筆記角度70°、4m/minの走行試験機にて筆記試験後のボール座の摩耗を測定したところ、フェライトを含んでなる実施例10のインキ組成物を用いたものの方が、シリカを含んでなる実施例11のインキ組成物を用いたものに比べて、ボール座の摩耗量は少なく、高筆圧下耐摩耗性に優れていた。
以上より、着色剤と、有機溶剤と、ライスオイルと、を含んでなる筆記具用油性インキ組成物は、滑らかな書き味を奏しつつ、筆記先端部が大気中に暫く放置された場合でも良好な筆跡を形成可能であり、書き味、書き出し性能に優れたものであること、前記筆記具用油性インキ組成物を用いた筆記具は、筆記具として優れたものであることがわかった。
また、ノック式油性ボールペンや回転繰り出し式油性ボールペン等の出没式油性ボールペンを用いた場合では、書き出し性能は重要な性能の1つであるが、このような筆記具において、本発明のようなインキ組成物を用いることは、効果的であることが確認できた。
尚、本実施例では、インキ収容筒内に筆記具用油性インキ組成物を収容したレフィルを軸筒内に配設した油性ボールペンを例示したが、本発明の油性ボールペンは、軸筒自体をインキ収容筒とし、軸筒内に、インキ組成物を直に収容した直詰め式のボールペンとした筆記具であっても良く、インキ収容筒内に筆記具用油性インキ組成物を収容したもの(ボールペンレフィル)をそのままボールペンとして使用した構造であっても良い。
本発明は、筆記具用油性インキ組成物として利用でき、さらに詳細としては、該筆記具用油性インキ組成物を充填した、キャップ式、ノック式等の出没式筆記具としても広く利用することができる。

Claims (7)

  1. 着色剤と、有機溶剤と、ライスオイルと、を含んでなることを特徴とする、筆記具用油性インキ組成物。
  2. 前記ライスオイルの脂質が、炭素数16以上の脂肪酸を含んでなる、請求項1に記載の筆記具用油性インキ組成物。
  3. 前記ライスオイルの含有率が、前記筆記具用油性インキ組成物の総質量を基準として、0.05質量%〜10質量%である、請求項1または請求項2に記載の筆記具用油性インキ組成物。
  4. ポリビニルブチラール樹脂を更に含んでなる、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
  5. 無機球状粒子を更に含んでなる、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容してなることを特徴とする、筆記具。
  7. インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したチップ本体を有し、前記インキ収容筒内に請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容してなることを特徴とする、油性ボールペン。







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