JP2014019703A - 油性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペン - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、従来では解決できなかった、書き味が良好で、かつ、高筆圧筆記(500g)においても潤滑性を保ち、ボール座の摩耗を抑制し、筆跡が良好である油性ボールペン用インキ組成物を提供することである。
【解決手段】少なくとも着色剤、有機溶剤、チオアミド化合物からなる油性ボールペン用インキ組成物であって、チオアミド化合物が一般式(化1)で表される構造であることを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
【選択図】 なし
Description
本発明は油性ボールペン用インキ組成物に関し、さらに詳細としてはインキ組成物中に、(化1)を含有する油性ボールペン用インキ組成物に関するものである。
従来より、ボールペンは他の種類の筆記具と異なり、先端にステンレス鋼などからなる金属チップと、該金属チップのボール受け座に抱持される超鋼などの金属からなる転写ボールと、からなるボールペンチップをインキ収容筒に装着した構成を有するが、筆記時にボールの回転によって、ボール座に摩耗が発生し、筆跡に線飛び、カスレなどが生じたり、書き味が悪くなるという問題があった。
こうした問題を解決するため、ボールペンチップのボールとボール座との潤滑性向上を目的として、様々な潤滑剤を用いた油性ボールペン用インキ組成物が多数提案されている。
このような潤滑剤を用いた油性ボールペン用インキ組成物としては、アルキルβ−D−グルコシドを用いたものとしては、特開平5−331403号公報「油性ボールペンインキ」、平均分子量が200〜4000000であるポリエチレングリコールを用いたものとしては、特開平7−196971号公報「油性ボールペン用インキ組成物」、N−アシルアミノ酸、N−アシルメチルタウリン酸、N−アシルメチルアラニンを用いたものとしては、特開2007−176995号公報「油性ボールペン用インキ」等に、開示されている。
しかし、特許文献1〜3のような各種潤滑剤を用いた場合、ある程度書き味を向上しつつ、ボール座の摩耗を抑制することはできるが、高筆圧筆記(500
g)では、潤滑性が満足できるものではなく、筆跡に線飛び、かすれ等が発生してしまう問題を抱えていた。
g)では、潤滑性が満足できるものではなく、筆跡に線飛び、かすれ等が発生してしまう問題を抱えていた。
本発明の目的は、書き味が良好で、かつ、高筆圧筆記(500g)においてもボールの潤滑性を保ち、ボール座の摩耗を抑制し、筆跡が良好である油性ボールペン用インキ組成物を提供することである。
本発明は、上記課題を解決するために
「1. 少なくとも着色剤、有機溶剤、チオアミド化合物からなる油性ボールペン用インキ組成物であって、チオアミド化合物が一般式(化1)で表される構造であることを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
(式中、Rは、アルキル基、アミノ基、アリル基、水素のうち何れかを示す。)
2.前記チオアミド化合物のRが、アルキル基であることを特徴とする第1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
3.前記チオアミド化合物が、チオアセトアミドであることを特徴とする第1項または第2項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
4.前記チオアミド化合物の含有量が、0.1〜10.0質量%であることを特徴とする第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
5.前記着色剤が、顔料であることを特徴とする第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
6.前記着色剤が、顔料と染料を併用し、前記染料がアルキルベンゼンスルホン酸と塩基性染料の造塩染料であることを特徴とする第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
7.前記有機溶剤が、芳香族アルコール系溶剤を含有することを特徴とする第1項ないし第6項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
8.20℃、剪断速度500sec−1におけるインキ粘度が、10〜5000mPa・sであることを特徴とする第1項ないし第7項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
9.インキ収容筒の先端部に、ステンレス綱材からなる チップ本体のボール抱持室にボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又はチップホルダーを介して具備し、前記インキ収容筒内に、第1項ないし第8項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物を直に収容することを特徴とする油性ボールペン。」とする。
「1. 少なくとも着色剤、有機溶剤、チオアミド化合物からなる油性ボールペン用インキ組成物であって、チオアミド化合物が一般式(化1)で表される構造であることを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
(式中、Rは、アルキル基、アミノ基、アリル基、水素のうち何れかを示す。)
2.前記チオアミド化合物のRが、アルキル基であることを特徴とする第1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
3.前記チオアミド化合物が、チオアセトアミドであることを特徴とする第1項または第2項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
4.前記チオアミド化合物の含有量が、0.1〜10.0質量%であることを特徴とする第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
5.前記着色剤が、顔料であることを特徴とする第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
6.前記着色剤が、顔料と染料を併用し、前記染料がアルキルベンゼンスルホン酸と塩基性染料の造塩染料であることを特徴とする第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
7.前記有機溶剤が、芳香族アルコール系溶剤を含有することを特徴とする第1項ないし第6項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
8.20℃、剪断速度500sec−1におけるインキ粘度が、10〜5000mPa・sであることを特徴とする第1項ないし第7項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
9.インキ収容筒の先端部に、ステンレス綱材からなる チップ本体のボール抱持室にボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又はチップホルダーを介して具備し、前記インキ収容筒内に、第1項ないし第8項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物を直に収容することを特徴とする油性ボールペン。」とする。
本発明は、書き味が良好で、かつ、高筆圧筆記(500g)においてもボールの潤滑性を保ち、ボール座の摩耗を抑制し、筆跡に線飛び、かすれがなく筆跡が良好である油性ボールペン用インキ組成物を提供することができた。
本発明の第一の特徴は、一般式(化1)で表される構造であるチオアミド化合物を含有することである。
本発明に用いるチオアミド化合物は、チオアミド基(−C(=S)−NH2)を有する有機化合物を意味し、カルボン酸アミドのカルボニル酸素を同族原子の硫黄原子に置き換えたものであり、同じ二重結合を持つチオケトンやチオアルデヒドが一般的に不安定なのに対し、一般式(化1)で表される構造であるチオアミド化合物は安定的な化合物である。
(式中、Rは、アルキル基、アミノ基、アリル基、水素のうち何れかを示す。)
油性ボールペン用インキ組成物中に一般式(化1)のようなチオアミド化合物を含有することで、書き味が良好で、かつ、高筆圧筆記(500g)においてもボールの潤滑性を保ち、ボール座の摩耗を抑制することが可能となることが解った。これは、チオアミド基(−C(=S)−NH2)が、金属材質であるボールやチップ本体に吸着することで潤滑膜を形成することで、ボールとチップ本体間の金属接触を抑制する効果があり、潤滑性を向上することで、書き味が良好で、かつ、ボール座の摩耗を抑制するものと推測する。特に、チオアミド基が強固に吸着し、ボールの剪断力でも剥がれにくいため、高筆圧筆記(500g)において、潤滑性を保つことが可能になるものと推測する。
一般式(化1)で表される構造であるチオアミド化合物は、具体的には、チオアセトアミド、チオプロピオンアミド、チオベンズアミド、チオホルムアミドなどが挙げられる。また、高筆圧筆記における潤滑性を考慮すれば、一般式(化1)で表されるチオアセトアミド化合物のRが、アルキル基である方が好ましい。 これは、金属吸着したS部位にアルキル基が配向することで、より金属接触を抑制する効果が得られやすいためである。さらに、インキ経時安定性やチオアミド化合物のS同士の距離を考慮すれば、一般式(化2)で表されるチオアセトアミド(R:メチル基)が最も好ましい、これは、アルキル基の直鎖が長いとインキ経時安定性に影響しやすくなり、また、アルキル基の直鎖が長いと、チオアミド化合物同士において、S同士の距離が長くなることで、高筆圧筆記が劣りやすくなるためである。これらは、単独または2種以上混合して使用してもよい。
また、前記チオアミド化合物の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1質量%より少ないと、潤滑効果が得られないおそれがあり、10.0質量%を越えると、インキ経時安定性に影響するおそれがあるため、インキ組成物全量に対し、0.1〜10.0質量%が好ましく、より潤滑性を考慮すれば、1.0〜10.0質量%が好ましく、さらに、インキ経時安定性などを考慮すれば、1.0〜5.0質量%が最も好ましい。
本発明の第二の特徴は、着色剤として、少なくとも顔料を含有することである。顔料を用いることで、ボールとチップ本体の隙間に顔料粒子が入り込むことで、金属接触を抑制することで、潤滑性を向上することが可能である。さらに、上述のように、一般式(化1)のようなチオアミド基を有することで、よって潤滑層を形成するが、前記チオアミド化合物による潤滑層と顔料粒子との相互作用で、より金属接触を抑制する潤滑膜を形成しやすくすることで、より高筆圧筆記においても潤滑性を向上し、チップ本体の摩耗を抑制しやすくすることが可能となる。
また、顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、DPP系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ギオキサジン系、メタリック顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。これら顔料は、チップ本体の隙間に入り込むことで、金属接触を抑制し、潤滑性を向上しやすい。特に、潤滑性の向上を考慮すれば、カーボンブラックを用いる方が好ましい。また、チップ内部の隙間関係を考慮し、平均粒子径は、300nm以下が好ましい。より好ましくは、150nm以下である。ここで、平均粒子径とは、粒度分布計による平均粒子径d50のことである。これらの顔料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。顔料の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.5〜15.0質量%が好ましい。これは0.5質量%未満だと、潤滑効果が得られにくい傾向があり、15.0質量%を越えると、インキ中で凝集しやすい傾向があるためであり、よりその傾向を考慮すれば、2.0〜10.0質量%が好ましく、最も好ましくは、3.0〜7.0質量%である。
また、染料としては、油溶性染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料などや、それらの各種造塩タイプの染料等が採用するが、潤滑性の向上とインキ経時安定性を考慮すれば、有機酸と塩基性染料との造塩染料を用いる方が好ましく、その中でも、アルキルベンゼンスルホン酸と塩基性染料との造塩染料を用いる方が好ましい。これは、芳香環を有し、スルホ基(-SO3H)を有することで、フェニルスルホン基が、金属に吸着し易い潤滑膜を形成することで、より潤滑性を向上する効果が得られるためである。また、塩基性染料は、アルキルベンゼンスルホン酸と塩基性染料間のイオン結合力が強い造塩染料とすることで、油性インキ中において、様々な環境下や長期間インキ経時安定性が保つことが可能であるため好ましい。
また、アルキルベンゼンスルホン酸としては、ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などが挙げられるが、潤滑性を向上することを考慮すれば、スルホ基(-SO3 H)が多いドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸が好ましい。
また、前記染料の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1質量%より少ないと、所望の潤滑性が得られづらく、40.0質量%を越えると、インキ経時が不安定性になりやすいため、インキ組成物全量に対し、0.1〜40.0質量%が好ましい。より好ましくは、インキ組成物全量に対し、3.0〜30.0質量%であり、最も好ましくは、10.0〜30.0質量%である。
また、顔料分散剤については、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルピロリドン等が例示でき、これらを1種又は2種以上用いることができる。その中でも、ポリビニルブチラール樹脂が好ましいが、これは、有機溶剤中に速やかに微細に分散しやすく、さらにポリビニルブチラール樹脂が、顔料に吸着することで、長期間の顔料の分散を維持しやすいためである。特に、顔料の中でも、ポリビニルブチラール樹脂との顔料分散性を考慮すれば、塩基性カーボンブラックが好ましい。ここで、塩基性カーボンブラックとは、カーボンブラック粒子をpH7のイオン交換水に分散し、pHメーターにて25℃のpHを測定したpH値が7以上を塩基性カーボンブラックと定義する。より顔料分散性を考慮すれば、pH値が7〜10の塩基性カーボンブラックが最も好ましい。
また、ポリブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA) をブチルアルデヒド(BA)と反応させたものであり、ポリビニルブチラール樹脂は、分子中の 水酸基が、20〜40mol%が好ましい。これは、20mol%未満だと、アルコール系の有機溶剤に溶解しづらい傾向があり、40mol%を越えると耐水性が劣りやすい傾向があるためであり、さらに、より好ましくは、30〜40mol%が好ましい。また、有機溶剤に溶解性を考慮すれば、分子量が100000以下である方が好ましく、より考慮すれば、30000以下である方がより好ましい。
前記顔料分散剤の含有量は、0.1質量%より少ないと、顔料分散性が劣りやすく、20.0質量%を越えると、インキ中で溶解性が劣りやすく、インキ粘度も高くなりやすいため、インキ組成物全量に対し、1.0〜20.0質量%が好ましく、より考慮すれば、3.0〜10.0質量%が好ましい。
本発明に用いる有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3―メトキシブタノール、3―メトキシー3―メチルブタノール等のグリコールエーテル系、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール等のグリコール系、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール系など、油性ボールペン用インキとして一般的に用いられる溶剤が例示できる。これらの中でも、前記チオアミド化合物、アルキルベンゼンスルホン酸と塩基性染料との造塩染料との溶解安定性や、顔料とのインキ経時安定性を考慮すれば、少なくともアルコール系溶剤を用いる方が好ましい。さらに、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコ−ルは、潤滑性を向上する効果もあるため、少なくとも用いる方が最も好ましい。これらの有機溶剤は、を1種又は2種以上用いることができる。溶剤の含有量は、チオアミド化合物、着色剤の溶解性、筆跡乾燥性、にじみ等を考慮すると、インキ組成物全量に対し、10.0〜70.0質量%が好ましく、よりその傾向を考慮すれば、30.0〜65.0質量%が好ましく、最も好ましくは、45.0〜65.0質量%である。
さらに、高筆圧筆記(筆記荷重500gf)においても潤滑性を保ち、ボール座の摩耗を抑制するには、リン酸エステル系界面活性剤を用いる方が好ましい。リン酸基によって、より強固な潤滑層を形成しやすく、前記チオアミド化合物との相互作用で、より金属接触を抑制することで、高筆圧下(筆記荷重500gf)においても潤滑性を保ちやすくなる。
リン酸エステル系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸トリエステル、アルキルリン酸エステル、アルキルエーテルリン酸エステル或いはその誘導体等が挙げられ、これらのリン酸エステル系界面活性剤は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。その中でも、炭素数が5〜18であるアルキル基を少なくとも有する方が好ましく、炭素数が5未満であると、高筆圧下(筆記荷重500gf)においての潤滑性が不足しやすい傾向があり、炭素数が18を超えると、インキ経時安定性に影響が出やすい傾向があるためであり、よりその傾向を考慮すれば、炭素数が8〜15が最も好ましい。
また、リン酸エステル系界面活性剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1質量%より少ないと、所望の潤滑性が得られにくい傾向があり、5.0質量%を越えると、インキ経時が不安定性になりやすい傾向があるため、インキ組成物全量に対し、0.1〜5.0質量%がより好ましい。最も好ましくは、インキ組成物全量に対し、0.5〜3.0質量%である。
本発明の油性ボールペン用インキ組成物のインキ粘度は、特に限定されるものではないが、20℃、剪断速度500sec−1におけるインキ粘度が10mPa・s未満の場合には、筆跡に滲みやインキ垂れ下がりの影響が出やすいため、また、20℃、剪断速度500sec−1におけるインキ粘度が30000mPa・sを超えると、筆記時のボール回転抵抗が大きくなり、書き味が重くなる傾向がある。そのため、20℃、剪断速度500sec−1におけるインキ粘度は、10〜30000mPa・sが好ましい。より書き味の向上を考慮すれば、10〜5000mPa・sが好ましく、最も好ましくは、よりインキ垂れ下がりや書き味を考慮すれば、100〜3000mPa・sである。
また、本発明のように、潤滑性をより向上させるために、微粒子を用いてもよい。これは、微粒子は、顔料と同様に、チップ本体の隙間に微粒子が入り込むことで、金属接触を抑制することで、潤滑性を向上することが可能であるためである。微粒子は具体的には、アクリル系、シリコーン系、ポリエチレン系等の樹脂微粒子やアルミナ微粒子、シリカ微粒子などが挙げられる。その中でも、球状のシリカ微粒子が好ましい。また、微粒子は、潤滑性を考慮すれば、平均粒子径が5〜100nmの微粒子が好ましく、平均粒子径はメジアン径であり、遠心沈降式やレーザー回折式、BET法等によって求めるこができる。
また、その他として、潤滑性やインキ経時安定性を向上させるために、界面活性剤として、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、脂肪酸アルカノールアミド、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンや、陰イオン性界面活性剤および/または陽イオン性界面活性剤の造塩体を、粘度調整剤として、ケトン樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル等の樹脂や脂肪酸アマイド、水添ヒマシ油などの擬塑性付与剤を、また、着色剤、安定剤、可塑剤、キレート剤、水などを適宜用いても良い。これらは、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
次に、実施例を示して本発明を説明する。
実施例1の油性ボールペン用インキ組成物は、有機溶剤、顔料分散剤を50℃にて混合攪拌機を用い顔料分散樹脂を溶解させて溶液Aを製造した。得られた溶液Aに顔料を添加し、三本ロールを用いて分散ベースを作成する。この分散ベースに残りの成分を、50℃にて混合攪拌機を用いて攪拌して油性ボールペン用インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。尚、ティー・エイ・インスツルメント株式会社製AR-G2(ステンレス製 40mm2°ローター)を用いて20℃の環境下で、剪断速度500sec−1にてインキ粘度を測定したところ、1200mPa・sであった。
実施例1の油性ボールペン用インキ組成物は、有機溶剤、顔料分散剤を50℃にて混合攪拌機を用い顔料分散樹脂を溶解させて溶液Aを製造した。得られた溶液Aに顔料を添加し、三本ロールを用いて分散ベースを作成する。この分散ベースに残りの成分を、50℃にて混合攪拌機を用いて攪拌して油性ボールペン用インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。尚、ティー・エイ・インスツルメント株式会社製AR-G2(ステンレス製 40mm2°ローター)を用いて20℃の環境下で、剪断速度500sec−1にてインキ粘度を測定したところ、1200mPa・sであった。
実施例1
染料(アルキルベンゼンスルホン酸とキサンテン系塩基性染料との造塩染料)
15.0質量%
染料(アルキルベンゼンスルホン酸とトリアリルメタン系塩基性染料との造塩染料)
10.0質量%
顔料(塩基性カーボンブラック) 5.0質量%
顔料分散剤(ポリビニルブチラール) 3.0質量%
有機溶剤(ベンジルアルコール) 54.0質量%
チオアミド化合物(チオアセトアミド) 2.0質量%
安定剤(オレイン酸) 1.0質量%
樹脂(ケトン樹脂) 10.0質量%
染料(アルキルベンゼンスルホン酸とキサンテン系塩基性染料との造塩染料)
15.0質量%
染料(アルキルベンゼンスルホン酸とトリアリルメタン系塩基性染料との造塩染料)
10.0質量%
顔料(塩基性カーボンブラック) 5.0質量%
顔料分散剤(ポリビニルブチラール) 3.0質量%
有機溶剤(ベンジルアルコール) 54.0質量%
チオアミド化合物(チオアセトアミド) 2.0質量%
安定剤(オレイン酸) 1.0質量%
樹脂(ケトン樹脂) 10.0質量%
実施例2〜6
表1に示すように、各成分を変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2〜6の油性ボールペン用インキ組成物を得た。
実施例7
表1に示すように、各成分を変更した以外は、水以外の各成分を実施例1と同様な手順で行い、室温冷却後水を添加しディスパー攪拌にて油性ボールペン用インキ組成物を得た。
表1に示すように、各成分を変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2〜6の油性ボールペン用インキ組成物を得た。
実施例7
表1に示すように、各成分を変更した以外は、水以外の各成分を実施例1と同様な手順で行い、室温冷却後水を添加しディスパー攪拌にて油性ボールペン用インキ組成物を得た。
試験及び評価
実施例1〜7及び比較例1〜4で作製した油性ボールペン用インキ組成物(0.4g)及びグリース状のインキ追従体を、インキ収容筒(ポリプロピレン)に、ボール径が
φ0.7mmのボールを回転自在に抱持したボールペン用チップ(ステンレス綱線)を装着したボールペン用レフィルに充填し、油性ボールペンを作製した。筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験及び評価を行った。
実施例1〜7及び比較例1〜4で作製した油性ボールペン用インキ組成物(0.4g)及びグリース状のインキ追従体を、インキ収容筒(ポリプロピレン)に、ボール径が
φ0.7mmのボールを回転自在に抱持したボールペン用チップ(ステンレス綱線)を装着したボールペン用レフィルに充填し、油性ボールペンを作製した。筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験及び評価を行った。
書き味:手書きによる官能試験を行い評価した。
非常に滑らかなもの ・・・◎
滑らかなもの ・・・○
やや重いもの ・・・△
重いもの ・・・×
非常に滑らかなもの ・・・◎
滑らかなもの ・・・○
やや重いもの ・・・△
重いもの ・・・×
高筆圧筆記試験:荷重500gf、筆記角度70°、4m/minの走行試験機にて筆記試験後のボール座の摩耗を測定した。
ボール座の摩耗が5μm未満のもの ・・・◎
ボール座の摩耗が5μm以上、10μm未満であるもの ・・・○
ボール座の摩耗が10μm以上、20μm未満であるが、筆記可能であるもの ・・・△
ボール座の摩耗がひどく、筆記不良になってしまうのもの ・・・×
ボール座の摩耗が5μm未満のもの ・・・◎
ボール座の摩耗が5μm以上、10μm未満であるもの ・・・○
ボール座の摩耗が10μm以上、20μm未満であるが、筆記可能であるもの ・・・△
ボール座の摩耗がひどく、筆記不良になってしまうのもの ・・・×
実施例1〜7では、書き味、高筆圧筆記試験ともに良好な性能が得られた。
比較例1〜4では、チオアミド化合物を含有していないため、高筆圧筆記試験ではボール座の摩耗がひどく、筆跡にカスレが発生してしまった。
本発明では、ボールの表面及び/又は当接面の表面に潤滑被膜層(図示せず)を設けることで、潤滑被膜層と前記したインキ層による流体潤滑又は混合潤滑との相乗効果によって、ボールとチップ内壁との接触抵抗を著しく軽減しやすく、当接面の耐摩耗性及び筆感を著しく向上しやすくなるため、好ましい。
尚、本発明に用いる潤滑被膜層としては、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、二硫化タングステン(WS2)、二硫化モリブデン(MoS2)やグラファイト、四フッ化エチレン(PTFE)等の含フッ素高分子、シリコーン樹脂等、従来から知られている固体潤滑剤などを適宜用いることができる。また、潤滑被膜層を被覆する方法は、特に制限されず、真空蒸着、イオン蒸着、物理的蒸着、化学的蒸着、真空アーク蒸着などが挙げられ、直接又は前記した潤滑剤を含有した被膜層であってもよい。特に前記した潤滑剤の中でも、耐摩耗性及び潤滑性を考慮してダイヤモンドライクカーボン(DLC)を用いることが最も好ましい。
本発明のように、書き味を向上するために、20℃、剪断速度500sec−1におけるインキ粘度を、10〜5000mPa・sの範囲に設定する場合には、インキの垂れ下がりを防止するため、ボールペンチップ先端に回転自在に抱持したボールを、コイルスプリングにより直接又は押圧体を介してチップ先端縁の内壁に押圧して、筆記時の押圧力によりチップ先端縁の内壁とボールに間隙を与えインキを流出させる弁機構を具備し、チップ先端の微少な間隙も非使用時に閉鎖することが好ましい。
本発明は油性ボールペンとして利用でき、さらに詳細としては、該油性ボールペン用インキ組成物を充填した、キャップ式、ノック式等の水性ボールペンとして広く利用することができる。
Claims (9)
- 前記チオアミド化合物のRが、アルキル基であることを特徴とする請求項1に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記チオアミド化合物が、チオアセトアミドであることを特徴とする請求項1または2に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記チオアミド化合物の含有量が、0.1〜10.0質量%であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記着色剤が、顔料であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記着色剤が、顔料と染料を併用し、前記染料がアルキルベンゼンスルホン酸と塩基性染料の造塩染料であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記有機溶剤が、芳香族アルコール系溶剤を含有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 20℃、剪断速度500sec−1におけるインキ粘度が、10〜5000mPa・sであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- インキ収容筒の先端部に、ステンレス綱材からなる チップ本体のボール抱持室にボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又はチップホルダーを介して具備し、前記インキ収容筒内に、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物を直に収容することを特徴とする油性ボールペン。
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---|---|---|---|
JP2012156154A JP2014019703A (ja) | 2012-07-12 | 2012-07-12 | 油性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペン |
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JP2012156154A JP2014019703A (ja) | 2012-07-12 | 2012-07-12 | 油性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペン |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2016023296A (ja) * | 2014-07-24 | 2016-02-08 | 株式会社パイロットコーポレーション | 筆記具用油性インキ組成物及びそれを用いた筆記具 |
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2012
- 2012-07-12 JP JP2012156154A patent/JP2014019703A/ja active Pending
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JP2016023296A (ja) * | 2014-07-24 | 2016-02-08 | 株式会社パイロットコーポレーション | 筆記具用油性インキ組成物及びそれを用いた筆記具 |
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