JP5954217B2 - リチウムイオン電池 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウムイオン電池、及びその電池を利用した電池システムに関する。
リチウムイオン電池(又はリチウム二次電池と呼ばれる)は、高いエネルギー密度を有し、電気自動車用や電力貯蔵用の電池として注目されている。特に、電気自動車としては、エンジンを搭載しないゼロエミッション電気自動車、エンジンと二次電池の両方を搭載したハイブリッド電気自動車、さらには系統電源から直接充電するプラグインハイブリッド電気自動車がある。また、電力を貯蔵し、電力系統が遮断された非常時に電力を供給する定置式電力貯蔵システムとしての用途も期待されている。
このような多様な用途に対し、高いエネルギー密度を有するリチウムイオン電池が期待されている。その半面、エネルギー密度の増大によって、電池の安全設計がますます難しくなり、より高度な技術が要求されている。その一つが、電解液の燃焼抑制技術である。リチウムイオン電池に用いられている電解液が、電池の安全性をすべて決定付けている訳でないが、それが可燃性であるがゆえに、電解液の燃焼反応を抑制して、電池の安全性を高めたいという要望がある。
電解液の分解を抑制するために、リンを含む化合物を電解液へ添加する方法が知られている。(特許文献1)は、環状ホスホン酸エステルを含む溶媒を用いることによって、電解液の分解反応を抑制し、高温状況下に放置しても、優れた特性が得られるとしている。(特許文献2)は、テトラフルオロ[オキソラト−O,O’]リン酸リチウム等を電解液に添加した発明を開示している。
特開2007−250191号公報 特開2008−288214号公報
上記従来の技術は、なお改良の余地があった。そこで本発明は、電解液又は固体電解質を、より燃えにくくすることを目的とする。
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討し、リチウムイオン電池における電解液又は固体電解質に、リンの環状化合物を添加することによって、上述の課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明のリチウムイオン電池は、正極と、負極と、電解液又は固体電解質とを有するリチウムイオン電池であって、前記電解液又は固体電解質に、リンを含む5員環又は6員環の構造を有する添加剤を含有させたことを特徴とする。
なお、ここでいう電解質又は固体電解質には、非水溶媒に電解質を溶解させた電解液、及び有機高分子又は無機化合物のリチウムイオン伝導体を含むものとする。
本発明によれば、電解液又は固体電解質に対し難燃性が付与される。したがって、過充電に対して安全なリチウムイオン電池を提供することが可能となる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明のリチウムイオン電池の内部構造を模式的に示す図である。 本発明の電池システムを示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明のリチウムイオン電池の一実施形態の内部構造を模式的に示している。リチウムイオン電池とは、非水電解質中における電極へのイオンの吸蔵・放出により、電気エネルギーを貯蔵・利用可能とする電気化学デバイスである。
図1のリチウムイオン電池101においては、正極107、負極108、及び両電極の間に挿入されたセパレータ109からなる電極群が、電池容器102内に密閉状態にて収納されている。電池容器102の上部には蓋103があり、その蓋103に正極外部端子104、負極外部端子105、注液口106を有する。電池容器102に電極群を収納した後に、蓋103を電池容器102に被せ、蓋103の外周を溶接して電池容器102と一体にすることによりリチウムイオン電池が得られる。電池容器102への蓋103の取り付けには、溶接の他に、かしめ、接着等の他の方法を採ることができる。
正極107は、正極活物質、バインダ及び集電体から構成される。正極活物質を例示すると、LiCoO、LiNiO、LiMn等が挙げられる。その他、LiMnO、LiMn、LiMnO、LiMn12、LiMn2−x(ただし、M=Co、Ni、Fe、Cr、Zn及びTaから選択される一種以上であって、x=0.01〜0.2)、LiMnMO(ただし、M=Fe、Co、Ni、Cu及びZnから選択される一種以上)、Li1−xMn(ただし、A=Mg、Ba、B、Al、Fe、Co、Ni、Cr、Zn及びCaから選択される一種以上であって、x=0.01〜0.1)、LiNi1−x(ただし、M=Co、Fe及びGaから選択される一種以上、x=0.01〜0.2)、LiFeO、Fe(SO、LiCo1−x(ただし、M=Ni、Fe及びMnから選択される一種以上であって、x=0.01〜0.2)、LiNi1−x(ただし、M=Mn、Fe、Co、Al、Ga、Ca及びMgから選択される一種以上であって、x=0.01〜0.2)、Fe(MoO、FeF、LiFePO、LiMnPO等を列挙することができるが、これらに限定されるものではない。
正極活物質の粒径は、合剤層の厚さ以下になるように規定される。正極活物質粉末中に合剤層の厚さ以上のサイズを有する粗粒がある場合、予めふるい分級、風流分級等により粗粒を除去し、合剤層の厚さ以下の粒子を作製する。
正極活物質は粉体であるので、正極にするために粉体の粒子同士を結合させるためのバインダが必要である。また、正極活物質が酸化物であるとき、一般に酸化物の導電性が低いので、炭素粉末を加えて酸化物粒子間の導電性を高める。
正極活物質とバインダの混合比は、重量比率で80:20〜99:1の範囲になるようにする。導電性を十分に発揮させ、大電流の充放電を可能にするために、上記重量組成は95:5に対し正極活物質比率の小さい値になるようにすることが望ましい。逆に、電池のエネルギー密度を高めるために、85:5よりも正極活物質比率が大きくなるように配合することが好適である。
導電剤には、黒鉛、非晶質炭素、易黒鉛化炭素、デンカブラック等のカーボンブラック、活性炭、炭素繊維、カーボンナノチューブ等の公知の材料を用いることができる。導電性繊維には、気相成長炭素、又はピッチ(石油、石炭、コールタール等の副生成物)を原料として高温で炭化して製造した繊維、アクリル繊維(ポリアクリロニトリル)から製造した炭素繊維等がある。また、正極の充放電電位(通常は2.5〜5V)にて酸化溶解しない材料であり、正極活物質よりも電気抵抗の低い金属材料、例えばチタン、金等の耐食性金属、SiCやWC等のカーバイド、Si、BN等の窒化物からなる繊維を用いても良い。製造方法は溶融法、化学気相成長法等の既存の製法を利用することができる。
正極活物質、バインダ、及び導電剤の混合物を攪拌、混合しながら、溶媒を添加してスラリを調製し、そのスラリを正極集電体に塗布し、溶媒を蒸発させて乾燥することによって正極107を製造することができる。正極集電体には、厚さが10〜100μmのアルミニウム箔、厚さが10〜100μm、孔径0.1〜10mmのアルミニウム製穿孔箔、エキスパンドメタル、発泡金属板等が用いられ、材質もアルミニウムの他に、ステンレス鋼、チタン等が適用可能である。本発明では、材質、形状、製造方法等に制限されることなく、任意の集電体を使用することができる。
スラリの塗布には、ドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法等の既知の製法を採ることができ、手段に制限はない。また、スラリを集電体へ付着させた後、有機溶媒を乾燥し、ロールプレスによって正極を加圧成形することにより、正極107を作製することができる。塗布から乾燥までを複数回行うことにより、複数の合剤層を集電体に積層させることも可能である。
負極108は、負極活物質とバインダから構成され、必要に応じて導電剤が添加される場合がある。
負極活物質としては、リチウムと合金化するアルミニウム、シリコン、スズ等が挙げられ、さらにリチウムイオンを電気化学的に吸蔵・放出可能な黒鉛や非晶質炭素からなる炭素質材料等も用いることができる。具体的には、グラフェン構造を有する炭素材料が好適に用いられる。すなわち、リチウムイオンを電気化学的に吸蔵・放出可能な天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェ−ズ炭素、膨張黒鉛、炭素繊維、気相成長法炭素繊維、ピッチ系炭素質材料、ニードルコークス、石油コークス、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、カーボンブラック等の炭素質材料、あるいは5員環又は6員環の環式炭化水素又は環式含酸素有機化合物の熱分解によって合成した非晶質炭素材料、等が利用可能である。黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素等の材料を混合したもの、あるいは前記炭素材料に金属又は合金を混合又は複合化した負極等も用いることができる。本発明では負極活物質に特に制限がなく、上述の材料以外でも利用可能である。
また、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリアセチレンからなる導電性高分子材料も用いることができる。これらの材料と黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素等のグラフェン構造を有する炭素材料とを組み合わせて、負極を構成することができる。
上述の負極活物質とバインダからなる混合物に溶媒を添加し、十分に混練又は分散させて、スラリを調製する。溶媒は、有機溶媒、水等であって、バインダを変質させないものであれば任意に選択することができる。
負極活物質とバインダの混合比は、重量比率で80:20〜99:1の範囲が好適である。導電性を十分に発揮させ、大電流の充放電を可能にするために、重量組成は99:1に対し負極活物質比率が小さい値になるようにすることが望ましい。逆に、電池のエネルギー密度を高めるために、90:10よりも負極活物質比率が大きくなるように配合することが好ましい。
導電剤は必要に応じて負極に添加される。例えば、大電流の充電又は放電を行う場合に、少量の導電剤を添加して、負極の抵抗を下げることが望ましい。導電剤としては、黒鉛、非晶質炭素、易黒鉛化炭素、カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、カーボンナノチューブ等の公知の材料を用いることができる。また、気相成長炭素又はピッチ(石油、石炭、コールタール等の副生成物)を原料として高温で炭化して製造した繊維、アクリル繊維(ポリアクリロニトリル)から製造した炭素繊維等の導電性繊維も用いることができる。
上述のスラリを、負極集電体に塗布し、溶媒を蒸発させ乾燥することによって、負極108を製造することができる。負極集電体としては、厚さが10〜100μmの銅箔、厚さが10〜100μm、孔径0.1〜10mmの銅製穿孔箔、エキスパンドメタル、発泡金属板等が用いられ、材質は銅の他に、ステンレス鋼、チタン等も適用可能である。本発明では、材質、形状、製造方法等に制限されることなく、任意の集電体を使用することができる。
スラリを塗布する際には、ドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法等の既知の製法を採ることができ、手段に制限はない。また、負極スラリを集電体へ付着させた後、溶媒を乾燥し、ロールプレスによって負極を加圧成形することにより、負極108を作製することができる。また、塗布から乾燥までを複数回行うことにより、複数の合剤層を集電体に積層させることも可能である。
正極107と負極108の間にセパレータ109を挿入し、正極107と負極108の短絡を防止する。セパレータ109としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなるポリオレフィン系高分子シート、あるいはポリオレフィン系高分子シートと4フッ化ポリエチレンに代表されるフッ素系高分子シートとを溶着させた多層構造のセパレータ、アラミド繊維やセルロース繊維を含むセパレータ等を使用することが可能である。電池温度が高くなったときにセパレータ109が収縮しないように、セパレータ109の表面にセラミックスとバインダの混合物を薄層状に形成しても良い。これらのセパレータ109は、電池の充放電時にリチウムイオンを透過させる必要があるため、一般に細孔径が0.01〜10μm、気孔率が20〜90%であれば、リチウムイオン電池101に使用可能である。
セパレータ109は、電極群の末端に配置されている電極と電池容器102との間にも挿入し、正極107と負極108が電池容器102を通じて短絡しないようにしている。セパレータ109と正極107及び負極108の表面及び細孔内部に、電解質と非水溶媒と本発明の添加剤とを含む電解液が保持されている。
本発明で使用可能な電解液の代表例として、エチレンカーボネートにジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等を混合した溶媒に、電解質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、あるいはホウフッ化リチウム(LiBF)を溶解させた溶液がある。本発明は、溶媒や電解質の種類、溶媒の混合比に制限されることなく、他の電解液も利用可能である。電解質は、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド等のイオン伝導性高分子に含有させた状態で使用することも可能である。この場合は前記セパレータが不要となる。
電解液に使用可能な溶媒としては、上記の他、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレルラクトン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、トリメチルホスフェート等のリン酸エステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、テトラヒドロフラン、1,2−ジエトキシエタン、クロルエチレンカーボネート、クロルプロピレンカーボネート等の非水溶媒が挙げられる。本発明のリチウムイオン電池に内蔵される正極あるいは負極上で分解しなければ、これ以外の溶媒を用いても良い。
また、電解質としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF等の化学式で表される化合物、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミドに代表されるリチウムのイミド塩、あるいはLiNSOF、Li(NSO等の多種類のリチウム塩が挙げられる。さらに、LiB(CN)を使用することも可能である。これらの塩を、上述の溶媒に溶解して得られた非水電解液を電池用の電解液として使用することができる。本発明のリチウムイオン電池に内蔵される正極あるいは負極上で分解しなければ、これ以外の電解質を用いても良い。
また、亜リン酸トリメチルと亜リン酸ジメチルが分解しないことを条件に、イオン性液体を選定し、それを電解液の代わりに用いることができる。例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(EMI−BF)、リチウム塩LiN(SOCF(LiTFSI)とトリグライムとテトラグライムの混合錯体、環状四級アンモニウム系陽イオン(N−メチル−N−プロピルピロリジニウムが例示される)、イミド系陰イオン(ビス(フルオロスルホニル)イミドが例示される)の中から正極と負極にて分解しない組み合わせを選択して、本発明のリチウムイオン電池に用いることができる。これらのイオン性液体に、本発明のリンを含む5員環又は6員環の構造を有する添加剤(難燃剤)を溶解させる。
固体高分子電解質(ポリマー電解質)を用いる場合には、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリメタクリル酸メチル、ヘキサフルオロプロピレンを含む共重合体等のイオン導電性ポリマーを電解質に用いることができる。これらの固体高分子電解質を用いた場合、前記セパレータ109を省略することができる利点がある。
さらには、6LiI−4LiPO−P、Li10GeP12等の硫化物系の固体電解質を用いることも可能である。これらの電解質に細孔を形成し、本発明におけるリンを含む5員環又は6員環の構造を有する添加剤を含浸させる。
リンを含む5員環又は6員環の構造を有する添加剤は、好ましくは以下の基本構造(I〜VII)を有する。
Figure 0005954217
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式I〜IIIは、5員環構造を有するリン化合物であり、式IV〜VIIは、6員環構造を有するリン化合物である。X(ただし、nは1a、1b、1c、2a、2b、2c、3a、3b、3c、4a、4b、4c、5a、5b、5c、6a、6b、6c)は、ハロゲン、アルキル基、アリール基、又はアルコキシ基もしくは芳香族アルコキシ基等の含酸素官能基である。
また、環構造中のPは、一部(例えば1〜3個)を他の元素で置換しても良い。具体的には、−O−や−CH−で置換する場合が挙げられる。
リン化合物を構成するリン元素は、電解液の溶媒とともに気化し、気相中の酸素と速やかに反応し、リン酸化物を形成する。これによって、電解液の燃焼反応を抑止することができる。
さらに、リンが正極上で酸化され、過充電時に高抵抗なリン酸化物膜を生成するので、過充電が抑制される。正極から放出される酸素を捕捉し、電解液の燃焼を抑制する効果も得られる。
置換基Xは、好ましくはハロゲンから主に構成される。このハロゲンが気相中の水素ラジカルを捕捉するので、電解液の燃焼反応が抑制される。なお、水素ラジカルは、電解液の溶媒の酸化過程で発生し、それが燃焼の連鎖反応を持続させる。この水素ラジカルを捕捉、消滅させることにより電解液の燃焼反応が停止する。ハロゲンが正極上でハロゲン化物層を形成し、それが過充電を抑制する効果もある。
上記リン化合物からなる添加剤は、環状にすることによって、末端の原子を省略することが可能となり、添加剤の揮発性を高めて、気相中の反応性を向上させる。末端原子の酸化による燃焼熱が発生しないため、添加剤自身の反応熱を低減する効果も得られる。特に、鎖状にした場合には末端に水素やアルキル基が結合するが、本発明では環状構造を採用することによって末端の水素等を省略することができる。
置換基Xはハロゲンを多く含むことが好ましい。ハロゲンとしてはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素があり、特にフッ素が良い。電気陰性度が高くなるほど、リンとハロゲンとの結合力が強まり、化学的に安定になるからである。ハロゲンは、リンが正極上で分解して、高抵抗な皮膜を形成する際に、同時に取り込まれて、皮膜の耐熱性を向上させる作用がある。
置換基Xの少なくとも一つは、アルキル基、アリール基、又はアルコキシ基もしくは芳香族アルコキシ基等の含酸素官能基であり、特にアルコキシ基であることが好ましい。本発明の添加剤を電解液に溶解させるためである。また、それらの官能基が結合するリン以外のリンにはハロゲンが結合していることが好ましい。さらに、上記アルキル基、アリール基、又はアルコキシ基もしくは芳香族アルコキシ基等の含酸素官能基の水素の一部又は全部をハロゲンに置換しても良い。ハロゲン化することによって、化学的に安定となり、燃焼しにくくなる。また、置換基Xとして、酸素又は窒素を含む極性官能基(エーテル結合、カルボニル結合、カルボン酸結合、アミド結合等)を保持させると、電解液への添加剤の溶解性を高めることができるので、好適である。
本発明の添加剤の添加量は、電解液の重量を基準として、0.1重量%〜5重量%とすることが好ましい。この範囲内であれば、電解液の燃焼を抑制し、あるいは過充電を抑止する効果が特に優れる。また、0.5重量%〜2重量%とすると、電解液の導電性を低下させず、電池の容量を高くすることが可能となる。
以上のような添加剤を含有させた電解液を、図1に示す電池容器102内に注入し、リチウムイオン電池を得ることができる。
図1に示すように、正極107は、正極リード線110を介して正極外部端子104に接続されている。負極108は、負極リード線111を介して負極外部端子105に接続されている。なお、正極リード線110及び負極リード線111は、ワイヤ状、板状、箔状等の任意の形状を採ることができる。電流を流したときにオーム損失を小さくすることのできる構造であり、かつ電解液と反応しない材質であれば、正極リード線110及び負極リード線111の形状、材質は任意である。
また、正極外部端子104又は負極外部端子105と、電池容器102の間には絶縁性シール材料112を挿入し、両端子が短絡しないようにしている。絶縁性シール材料112にはフッ素樹脂、熱硬化性樹脂、ガラスハーメチックシール等から選択することができ、電解液と反応せず、かつ気密性に優れた任意の材質を使用することができる。
正極リード線110又は負極リード線111の途中、あるいは正極リード線110と正極外部端子104の接続部、又は負極リード線111と負極外部端子105の接続部に、正温度係数(PTC;Positive temperature coefficient)抵抗素子を利用した電流遮断機構を設けると、電池内部の温度が高くなったときに、リチウムイオン電池101の充放電を停止させ、電池を保護することが可能となる。
電極群の構造は、図1に示すような短冊状電極を積層させたもの、あるいは円筒状、扁平状等の任意の形状に捲回したもの等、種々の形状にすることができる。電池容器の形状は、電極群の形状に合わせ、円筒型、偏平長円形状、角型等の形状から適宜選択することができる。
電池容器102の材質は、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等、非水電解質に対し耐食性のある材料から選択される。また、電池容器102を正極リード線110又は負極リード線111に電気的に接続する場合は、非水電解質と接触している部分において、電池容器の腐食やリチウムイオンとの合金化による材料の変質が起こらないように、リード線の材料を選定する。
その後、蓋103を電池容器102に密着させ、電池全体を密閉する。電池の密閉は、溶接、かしめ等の公知の技術により行うことができる。
電解液の注入方法は、蓋103を電池容器102から取り外して電極群に直接、注入する方法、あるいは蓋102に設置した注液口106から注入する方法がある。図1に示したリチウムイオン電池の注液口106は、電池容器102の上面に設置している。電極群を電池容器102に収納し密閉した後に、電解質と非水溶媒からなる電解液を注液口106より滴下し、所定量の電解液を充填した後に、注液口106を密封する。なお、注液口106には安全機構を付与することも可能である。その安全機構として、電池容器内部の圧力を解放するための圧力弁を設けても良い。
次に、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
(実施例1)
以下の手順に従い、リチウムイオン電池を作製した。
まず、正極については、正極活物質としてLiNi1/3Mn1/3Co1/3を選択し、バインダとしてはポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いた。このバインダは、予め1−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと記す)に溶解されているものを用いた。正極活物質の重量組成を85%、バインダの重量組成を8%とした。残りの7%は、導電剤としてカーボンブラックを配合した。
正極活物質、バインダのNMP溶液、及び導電剤の混合物を攪拌、混合しながら、NMPを添加し、なめらかな流動性を有するスラリを調製した。このスラリを、正極集電体に塗布し、溶媒を蒸発させて乾燥することによって、正極を製造した。本実施例では、正極集電体として10μmの厚さを有するアルミニウム箔を用いた。また、スラリを塗布する際にはブレードコーターを用いて行った。
負極活物質としては、(002)面のX線回折ピークから求めたグラファイト層間隔d002が0.35〜0.36nmの範囲にある黒鉛粉末の表面を低結晶炭素で被覆した低結晶炭素被覆黒鉛(平均粒径15μm)を用いた。この低結晶炭素被覆黒鉛(97重量%)に、スチレン−ブタジエンゴム(バインダA)とカルボキシメチルセルロース(バインダB)を1.5重量%ずつ添加して、水を溶媒としたスラリを調製した。このスラリを、厚さ10μmの圧延銅箔の集電体に塗布、乾燥し、さらにロールプレス装置により合剤層を成形して負極を作製した。スラリの塗布にはブレードコーターを用いた。
電解液は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートを1:1:1の体積比率で混合した溶媒に、1モル濃度(1mol/dm)のLiPFを溶解させたものを用いた。
そして、表1に示した添加剤A1を電解液に添加した。A1の添加量を変化させて、表2に示す5種類の電池B1、B2、B3、B4、B5を作製した。
Figure 0005954217
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本実施例の定格容量は10Ahである。定格容量を得るために、初期エージングを行った。その条件は、まず、5Aの充電電流にて電池電圧が4.2Vに達するまで充電を行い、4.2Vに達した後には4.2Vを維持しながら電流が0.1Aに減少するまで充電を継続した。次いで30分の休止を経た後、5Aの放電電流にて電池電圧が3.0Vに達するまで放電を行った。これを3回繰り返して、最後に得られた放電容量を初期容量とした。結果を表2に示した実施例1の「初期容量」の欄に記載した。いずれの電池の容量もほぼ定格容量の値に一致した。
次に、4.2Vまで充電した電池について、10Aの一定電流にて過充電を1時間実施した。過充電後の電池の温度は、電池の温度は、添加剤A1の添加量が多くなるほど低温になる傾向があった。リンが正極表面の酸素と結合し、高抵抗な皮膜を形成したためと考えられる。フッ素は、その高抵抗皮膜の中に入り、リンと酸素とフッ素の複合物が形成されているものと推定される。
(実施例2)
実施例1の添加剤と添加量のみを変更し、他の仕様を同一とした電池B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12、B13、B14を作製した。添加剤は表1に示したA2〜A10を用い、それぞれの添加量は表2の実施例2の欄に記した。
作製したリチウムイオン電池について、実施例1と同一条件にて充放電試験を行い、いずれの電池においても定格容量にほぼ等しい初期容量を得た。
また、実施例1と同一の条件にて過充電試験を実施し、電池の表面温度を計測した結果、いずれも150±10℃以下の低い値であった。電池温度は、添加剤の二重結合の数が増えるほど、低くなる傾向があった。添加剤の添加量は同じ値としたが、電解液の使用量が等しいので、添加量の重量%は実際に添加した重量に等しい。添加剤がA5、A6、A7、A8の順にフッ素が少なくなり、1モル当りの重量が減少するので、この順序で電解液中に含まれるリンの量は相対的に増大する。A2、A3、A4についても同様の傾向が見られた。したがって、上述の温度の変化は、リンの重量増加に依存している。リンは、正極の表面酸素に結合し、リン酸化物になって、高抵抗な皮膜を形成するためと考えられる。
(実施例3)
実施例2の電池B8において、正極の表面に、添加剤A11をヘキサンに溶解させた溶液(濃度1重量%)を塗布し、60℃の真空下にて正極を乾燥した。その後、正極重量の増量分から添加剤A11の量を計算した。その添加量は、電解液重量に対して1重量%になるようにした。また、電解液には添加剤A4を添加して、リチウムイオン電池を作製した。添加剤A4の添加量は1重量%とした。その他の仕様は、実施例2の電池B8と同一とした。本実施例のリチウムイオン電池は、B15とした。
実施例1と同一条件にて充放電試験を行い、定格容量にほぼ等しい初期容量を得た。また、実施例1と同一の条件にて過充電試験を実施し、電池の表面温度を計測した結果、120±10℃の以下の低い値が得られた。正極に添加剤A11を付着させたため、より速やかにPを主成分とする酸化皮膜が形成されたためと解される。
(実施例4)
実施例2の電池B8において、正極の表面に、添加剤A12をヘキサンに溶解させた溶液(濃度1重量%)を塗布し、60℃の真空下にて正極を乾燥した。その後、正極重量の増量分から添加剤A12の量を計算した。その添加量は、電解液重量に対して1重量%になるようにした。また、電解液には添加剤A4を添加して、リチウムイオン電池を作製した。添加剤A4の添加量は1重量%とした。その他の仕様は、実施例2の電池B8と同一とした。本実施例のリチウムイオン電池は、B16とした。
実施例1と同一条件にて充放電試験を行い、定格容量にほぼ等しい初期容量を得た。また、実施例1と同一の条件にて過充電試験を実施し、電池の表面温度を計測した結果、140±10℃の以下の低い値が得られた。正極に添加剤A12を付着させたため、より速やかにPを主成分とする酸化皮膜が形成されたためと解される。実施例3の電池よりも、電池表面温度が上昇した理由は、本実施例の添加剤A12が置換基CFを有するために、添加剤A12の分解速度が、A11よりも遅いためと推定される。
(比較例1)
実施例1で作製した正極及び負極と、添加剤を用いない電解液とを用いて、リチウムイオン電池B21を製作した。初期容量は定格容量に等しかったが、過充電終了時の到達温度が高くなった。
(実施例5)
実施例1で用いた添加剤A1の量を10重量%に増加させ、他の仕様を変更しないで、リチウムイオン電池B22を作製した。電池を評価した結果、過充電終了時の電池表面温度は低くなり、添加剤による過充電抑止効果が得られた。一方で、初期容量は若干低下した。電解液の抵抗が増大したためと考えられる。
(実施例6)
実施例3の電池B15のサイズを増大させ、50Ahの角型リチウムイオン電池2個を作製し、図2に示すような電池システムを構築した。図2の電池システムでは、リチウムイオン電池201a、201bを直列に接続している。
各リチウムイオン電池201a、201bは、正極207、負極208、セパレータ209からなる同一仕様の電極群を有し、上部に正極外部端子204、負極外部端子205を設けている。各外部端子と電池容器の間には絶縁性シール材料212を挿入し、外部端子同士が短絡しないようにしている。なお、図2では、図1における正極リード線110と負極リード線111に相当する部品が省略されているが、リチウムイオン電池201a、201bの内部の構造は図1と同様である。
リチウムイオン電池201aの負極外部端子205は、電力ケーブル213により充放電制御器216の負極入力ターミナルに接続されている。リチウムイオン電池201aの正極外部端子204は、電力ケーブル214を介して、リチウムイオン電池201bの負極外部端子205に連結されている。リチウムイオン電池201bの正極外部端子204は、電力ケーブル215により充放電制御器216の正極入力ターミナルに接続されている。このような配線構成によって、2個のリチウムイオン電池201a、201bを充電又は放電させることができる。
充放電制御器216は、電力ケーブル217、218を介して、外部に設置した機器(以下では外部機器と称する)219との間で電力の授受を行う。充放電制御器216は、外部機器219又は発電装置222と連携し、本電池システムを運転させるための制御回路を設けた。外部機器219は照明器具とし、充放電制御器216から電力を供給できるようにした。なお、外部機器219の種類は任意であって、モータ、電気自動車、エアコン等の家庭用電気製品等が例示される。外部機器219に対応する交流、直流の種類に応じて、充放電制御器216にインバータ又はコンバータを設ければ良い。これらの機器類は、公知のものを任意に適用することができる。
また、再生可能エネルギーを生み出す機器として風力発電機の動作条件を模擬した発電装置222を設置し、電力ケーブル220、221を介して充放電制御器216に接続した。発電装置222が発電するときには、充放電制御器216が充電モードに移行し、外部機器219に給電するとともに、余剰電力をリチウムイオン電池201aと201bに充電する。また、風力発電機を模擬した発電量が外部機器219の要求電力よりも少ないときには、リチウムイオン電池201aと201bを放電させるように充放電制御器216が動作する。なお、発電装置222は他の発電装置、すなわち太陽電池、地熱発電装置、燃料電池、ガスタービン発電機等の任意の装置に置換することができる。充放電制御器216は上述の動作をするように自動運転可能なプログラムを記憶させておく。
リチウムイオン電池201a、201bを定格容量が得られる通常の充電を行う。例えば、1時間率の充電電流にて、4.2Vの定電圧充電を0.5時間、実行することができる。充電条件は、リチウムイオン電池の材料の種類、使用量等の設計で決まるので、電池の仕様ごとに最適な条件とする。
リチウムイオン電池201a、201bを充電した後には、充放電制御器216を放電モードに切り替えて、各電池を放電させる。通常は、一定の下限電圧に到達したときに放電を停止させる。
以上で説明した電池システムを作動させた。外部機器219は充電時に電力を供給し、放電時に電力を消費させた。本実施例では、実施例1の充放電条件に準じて、2時間率の充電(セル電圧が4.2Vに達するまでは25Aの定電流充電、4.2Vに達した後は4.2Vにて定電圧充電)を行った。次いで、1時間率の放電(セル電圧が3.0Vに達するまでの50Aの定電流放電)を行い、初期の放電容量を求めた。その結果、各リチウムイオン電池201a、201bの設計容量50Ahの99.1〜99.6%の容量を得た。
その後、環境温度20〜30℃の条件で、以下で述べる充放電サイクル試験を行った。まず、2時間率の電流(25A)にて充電を行い、充電深度50%(25Ah充電した状態)になった時点で、充電方向に5秒のパルスを、放電方向に5秒のパルスをリチウムイオン電池201a、201bに与え、発電装置222からの電力の受け入れと外部機器219への電力供給を模擬するパルス試験を行った。なお、電流パルスの大きさは、ともに150Aとした。続いて、残りの容量25Ahを2時間率の電流(25A)で各電池の電圧が4.2Vに達するまで充電し、その電圧で1時間の定電圧充電を継続した後に、充電を終了させた。その後、1時間率の電流(50A)にて各電池の電圧が3.0Vに達するまで放電した。このような一連の充放電サイクル試験を500回繰り返したところ、初期の放電容量に対し、88〜89%の容量を得た。電力受け入れと電力供給の電流パルスを電池に与えても、システムの性能はほとんど低下しないことがわかった。
次に、リチウムイオン電池201aのみを予め定格容量まで充電し、リチウムイオン電池201bは放電した状態で、電池システムを組み立てた。この状態で、リチウムイオン電池201bを定格容量(充電容量として50Ah)まで充電したところ、リチウムイオン電池201aは過充電状態になったが、本発明の添加剤が反応して、充電が停止した。この過程で、リチウムイオン電池201aに破裂、発火はなかった。
なお、図2のリチウムイオン電池の本数、直列数、並列数は、本実施例に限定されず、需要者側に必要な電力量に応じて、直列数や並列数を増減することが可能である。
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
101 リチウムイオン電池
102 電池容器
103 蓋
104 正極外部端子
105 負極外部端子
106 注液口
107 正極
108 負極
109 セパレータ
110 正極リード線
111 負極リード線
112 絶縁性シール材料
201a リチウムイオン電池
201b リチウムイオン電池
202 電池容器
204 正極外部端子
205 負極外部端子
206 注液口
207 正極
208 負極
209 セパレータ
212 絶縁性シール材料
213 電力ケーブル
214 電力ケーブル
215 電力ケーブル
216 充放電制御器
217 電力ケーブル
218 電力ケーブル
219 外部機器
220 電力ケーブル
221 電力ケーブル
222 発電装置

Claims (6)

  1. 正極と、負極と、電解液又は固体電解質とを有するリチウムイオン電池であって、前記電解液又は固体電解質に、式I〜VII
    Figure 0005954217

    Figure 0005954217

    Figure 0005954217

    Figure 0005954217

    Figure 0005954217

    Figure 0005954217

    Figure 0005954217

    (式I〜VII中、Xn(ただし、nは1a、1b、1c、2a、2b、2c、3a、3b、3c、4a、4b、4c、5a、5b、5c、6a、6b又は6c)は、ハロゲン、アルキル基、アリール基又は含酸素官能基である)のいずれかで表される、リンを含む5員環又は6員環の構造を有する添加剤を含有させた前記リチウムイオン電池。
  2. 添加剤の少なくとも一つのリンに含酸素官能基が結合し、前記含酸素官能基が結合するリン以外のリンにハロゲンが結合している請求項1に記載のリチウムイオン電池。
  3. 含酸素官能基がアルコキシ基である請求項2に記載のリチウムイオン電池。
  4. アルコキシ基の水素の一部又は全部がハロゲンに置換されている請求項3に記載のリチウムイオン電池。
  5. 正極と、負極と、電解液とを有し、添加剤の添加量が、電解液に対して0.1重量%〜5重量%である請求項1に記載のリチウムイオン電池。
  6. 一以上の請求項1に記載のリチウムイオン電池と、外部機器とを接続してなる電池システム。
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