JP2015191721A - 二次電池および電池モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】放電容量を増加させても、電池性能を低下させることなく、電池の温度上昇を抑制することができる二次電池およびそれを用いた電池モジュールを提供する。【解決手段】難燃剤と電解質溶媒を含む電解液を用いた二次電池であって、前記難燃剤は、TMPI、DMMPおよびMDMPから選択される1種以上を含み、前記電解質溶媒は、EC、DMC、EMC、およびDECから選択される2種以上を含み、前記電解液の体積を100%として、前記難燃剤の体積比が5%以上かつ51%以下、かつ前記DMCの体積比が15%以上かつ60%以下、かつ前記難燃剤と前記DMCの合計の体積比が45%以上であるか、または前記難燃剤の体積比が30%以上かつ51%以下、かつ前記DMCの体積比が15%より小である。【選択図】図3
Description
本発明は、二次電池およびそれを備えた電池モジュールに関する。
リチウムイオン二次電池は、その他の二次電池と比較して高いエネルギー密度を有し、電気自動車用や電力貯蔵用の電池として注目されている。例えば、エンジンを搭載しないゼロエミッション電気自動車、エンジンと二次電池の両方を搭載したハイブリッド電気自動車、さらには電力系統から直接充電させるプラグイン・ハイブリッド電気自動車などの各種の電気自動車にリチウムイオン二次電池が採用されている。また、リチウムイオン二次電池は、電力を貯蔵し、電力系統が遮断された非常時に電力を供給する定置式電力貯蔵システムへの適用も期待されている。
このような広範な用途でより高いエネルギー密度のリチウムイオン二次電池が要求され、より高いエネルギー密度のリチウムイオン二次電池の開発が進められている。しかし、エネルギー密度を増大させることで安全設計の困難性も高くなり、リチウムイオン二次電池の安全性を確保するためのより高度な技術が求められている。そのような技術のひとつとして、電解液の燃焼抑制技術が知られている。リチウムイオン二次電池の安全性を向上させる技術は電解液の燃焼抑制技術に限られないが、可燃性の電解液の燃焼を抑制することでリチウムイオン二次電池の安全性をより向上させることができる。なお、電解液の燃焼とは、電池からの発煙はあるが、火炎を生じない電解液の酸化発熱反応を含むものとする。
電解液の燃焼を抑制する技術として、電解質溶媒としてホスホン酸エステルを含有する二次電池用非水電解液、ならびにこの電解液を用いた二次電池が開示されている(下記特許文献1を参照)。また、電解質塩を有機溶媒に溶解した電解液において、該有機溶媒がジメチルホスフィン酸メチル等のリン化合物を含む難燃性電解液および該難燃性電解液を用いた二次電池が開示されている(下記特許文献2を参照)。
また、フルオロリン酸塩とリン酸エステル類が混合され、サイクル特性、保存特性、連続充電時のガス発生抑制などに優れた二次電池用非水系電解液および非水電解液二次電池が開示されている(下記特許文献3を参照)。また、亜リン酸エステル5〜50質量%を添加した電解液によってリチウムイオン二次電池の安全性とサイクル特性との両方を良好にする技術が開示されている(下記特許文献4および5を参照)。
前記特許文献1から5に記載の技術によって、リチウムイオン二次電池の安全性を向上させることができる。しかし、二次電池の放電容量を増加させると、リチウムイオン二次電池内部での短絡の場所や状態によって、電解液が酸化または燃焼する場合がある。電解液の酸化等の程度は、電池温度の上昇からわかる。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、放電容量を増加させても、電池性能を低下させることなく、電池の温度上昇を抑制した二次電池およびそれを用いた電池モジュールを提供することにある。
前記目的を達成すべく、本発明の二次電池は、難燃剤と電解質溶媒を含む電解液を用いた二次電池であって、前記難燃剤は、亜リン酸トリメチル(TMPI)、メチルホスホン酸ジメチル(DMMP)およびメチルジメチルホスフィナート(MDMP)から選択される1種以上を含み、前記電解質溶媒は、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(EMC)、およびジエチルカーボネート(DEC)から選択される2種以上を含み、前記電解液の体積を100%として、前記難燃剤の体積比が5%以上かつ51%以下、かつ前記DMCの体積比が15%以上かつ60%以下、かつ前記難燃剤と前記DMCの合計の体積比が45%以上であるか、または、前記難燃剤の体積比が30%以上かつ51%以下、かつ前記DMCの体積比が15%より小であることを特徴とする。
本発明の二次電池によれば、電解液の難燃剤として亜リン酸トリメチル等のリン化合物を用い、電池性能を低下させることなく、電池の温度上昇を抑制することができる。
(二次電池)
以下、図面を参照しながら本発明の二次電池について詳細に説明する。ここで、二次電池は、非水電解質中における電極へのイオンの吸蔵、放出により、電気エネルギーを貯蔵、利用可能にする電気化学デバイスの総称である。イオンとは、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛などであり、非水電解液を用いる二次電池に対して本発明を適用することが可能である。以下では、二次電池の代表例としてリチウムイオン二次電池を説明する。
以下、図面を参照しながら本発明の二次電池について詳細に説明する。ここで、二次電池は、非水電解質中における電極へのイオンの吸蔵、放出により、電気エネルギーを貯蔵、利用可能にする電気化学デバイスの総称である。イオンとは、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛などであり、非水電解液を用いる二次電池に対して本発明を適用することが可能である。以下では、二次電池の代表例としてリチウムイオン二次電池を説明する。
図1は、本実施形態のリチウムイオン二次電池100の概略構成を模式的に示す断面図である。
リチウムイオン二次電池100は、電極群101を電池容器102に密閉状態で収納した構成を有している。電極群101とは、正極107、負極108およびセパレータ109から構成される集合物である。電極群101は、短冊状の電極を積層させた構成、帯状の電極を捲回して円筒状、扁平状に成形した構成など、種々の構成を採用することができる。電池容器102は、電極群101の形状に対応して、円筒型、偏平長円形状、角型など、任意の形状を選択することができる。電池容器102は、上部に設けられた開口から電極群101を収容した後、開口が蓋103によって塞がれて密閉されている。
蓋103は、外縁が全周に亘って、例えば、溶接、かしめ、接着などによって電池容器102の開口に接合され、電池容器102を密閉状態で封止している。蓋103は、電池容器102の開口を封止した後に、電池容器102内に電解液Lを注入する注液口を有している。注液口は、電池容器102内に電解液Lを注入した後に、注液栓106によって密閉されている。注液栓106に安全機構を付与することも可能である。その安全機構として、電池容器102内部の圧力を解放するための圧力弁を設けても良い。
蓋103には、絶縁シール部材112を介して正極外部端子104および負極外部端子105が固定され、両端子104、105の短絡が絶縁シール部材112によって防止されている。正極外部端子104は正極リード線110を介して正極107へ、負極外部端子105は負極リード線111を介して負極108へ、それぞれ連結されている。リード線絶縁性シール部材112の材料は、フッ素樹脂、熱硬化性樹脂、ガラスハーメチックシールなどから選択することができ、電解液Lと反応せず、かつ気密性に優れた任意の絶縁材料を使用することができる。
電極群101は、正極107と負極108とをセパレータ109を介して積層させることによって構成されている。セパレータ109は、正極107と負極108との間に配置されてこれらの短絡を防止するだけでなく、電極群101と電池容器102の間にも挿入され、正極107と負極108が電池容器102を通じて短絡しないようにしている。セパレータ109と各電極107、108の表面および細孔内部に、電解液Lが保持されている。
図2(a)および(b)は、電極群101の形状の一例を示す模式的な斜視図である。
電極群101は、電池容器102の形状に対応した形状に形成される。例えば、電池容器102が円筒形である場合には、帯状のセパレータ109を介して積層させた帯状の正極107と負極108と捲回して、図2(a)に示すように、電極群101を円筒形に成形する。また、電池容器102が直方体形状の角形である場合には、例えば、矩形のシート状の正極107と負極108とをセパレータ109を介して積層させ、図2(b)に示すように、電極群101を直方体形状の角形に成形する。なお、電池容器102が直方体形状の角形である場合には、帯状のセパレータ109を介して積層させた帯状の正極107と負極108と捲回して、扁平に成形した電極群101を用いることもできる。
電極群101は、正極107、負極108およびセパレータ109の端縁が露出された開口面101aを有している。例えば、図2(a)に示す捲回された円筒形の電極群101の場合、電極群101は直径Dに垂直な長さL方向の両端に開口面101aを有する。また、角形の電極群101の場合は、6面の少なくとも1面、最大4面に開口面101aを有する。電極群101の外表面の表面積に対する開口面101aの面積の比率は、5%以上であることが好ましい。
セパレータ109としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどからなるポリオレフィン系高分子シート、または、ポリオレフィン系高分子と4フッ化ポリエチレンを代表とするフッ素系高分子シートを溶着させた多層構造のシートなどを用いることができる。また、セパレータ109が電池温度の上昇時に収縮しないように、セパレータ109の表面にセラミックスとバインダの混合物を薄層状に形成しても良い。セパレータ109は、リチウムイオン二次電池100の充放電時にリチウムイオンを透過させるために、例えば、細孔径が0.01μm以上かつ10μm以下であり、気孔率が20%以上かつ90%以下であることが好ましい。
正極107は、例えばアルミニウム箔である正極集電体と、正極集電体の表面に形成された正極合剤層によって構成されている。正極集電体としては、厚さが10μm以上かつ100μm以下のアルミニウム箔、厚さが10μm以上かつ100μm以下、孔径0.1mm以上かつ10mm以下のアルミニウム製穿孔箔、エキスパンドメタル、発泡金属板などが用いられる。正極集電体の材料としては、アルミニウムの他に、ステンレス鋼、チタンなどを用いることができる。なお、本実施形態において、正極集電体の材質、形状、製造方法などに特に制限はない。
正極合剤層は、正極活物質とバインダによって構成され、必要に応じて導電剤が添加される場合がある。正極合剤層を構成する正極活物質の代表例として、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4を例示することができる。また、正極活物質の他の例として、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2、Li4Mn5O12、LiMn2−xMxO2(ただし、M=Co、Ni、Fe、Cr、Zn、Taであって、x=0.01〜0.2)、Li2Mn3MO8(ただし、M=Fe、Co、Ni、Cu、Zn)、Li1−xAxMn2O4(ただし、A=Mg、Ba、B、Al、Fe、Co、Ni、Cr、Zn、Caであって、x=0.01〜0.1)、LiNi1−xMxO2(ただし、M=Co、Fe、Ga、x=0.01〜0.2)、LiFeO2、Fe2(SO4)3、LiCo1−xMxO2(ただし、M=Ni、Fe、Mnであって、x=0.01〜0.2)、LiNi1−xMxO2(ただし、M=Mn、Fe、Co、Al、Ga、Ca、Mgであって、x=0.01〜0.2)、Fe(MoO4)3、FeF3、LiFePO4、LiMnPO4などを列挙することができる。ただし、本発明は正極材料に何ら制約を受けないので、正極107に用いられる正極活物質は、これらの材料に限定されない。
正極活物質の粒径は、正極集電体の表面に形成される合剤層の厚さ以下になるように規定される。正極活物質粉末中に合剤層の厚さ以上の粒径を有する粗粒がある場合、予めふるい分級、風流分級などにより粗粒を除去し、平均粒径が合剤層の厚さ以下の粒子を選別する。正極活物質は粉体であるので、合剤層を形成するために粉体の粒子同士を結合させるためのバインダが必要である。また、正極活物質が酸化物であるとき、一般に、酸化物は導電性が低い(すなわち、電気抵抗が高い)ので、導電剤として炭素粉末を加えて酸化物粒子間の導電性を向上させる。バインダとして、例えば、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと表記する。)を用いることができる。バインダは、予め1−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと表記する。)に溶解されているものを用いることができる。
正極集電体の表面に合剤層を形成する際には、まず、正極活物質、導電剤およびバインダの混合比(重量百分率表示)を、例えば、正極活物質を80重量%以上かつ95重量%以下、導電剤を3重量%以上15重量%以下、バインダを1重量%以上10重量%以下として、これらを配合する。導電剤の混合比は、導電性を十分に発揮させて大電流の充放電を可能にするために、5重量%以上にすることが望ましい。これにより、正極107全体の抵抗が小さくなり、大電流が流れる際のオーム損失を小さくすることができる。また、リチウムイオン二次電池100のエネルギー密度を向上させる場合は、正極活物質の混合比を85重量%以上かつ95重量%以下の高い範囲にすることが望ましい。
導電剤としては、例えば、黒鉛、非晶質炭素、易黒鉛化炭素、カーボンブラック、活性炭、導電性繊維、カーボンナノチューブなどの公知の材料を用いることができる。導電性繊維としては、気相成長炭素、またはピッチ(石油、石炭、コールタールなどの副生成物)を原料に高温で炭化して製造した繊維、アクリル繊維(Polyacrylonitrile)から製造した炭素繊維などがある。また、導電剤の材料は、正極の充放電電位(通常は2.5V以上かつ2.8V以下である。)にて酸化溶解しない材料であり、正極活物質よりも電気抵抗の低い金属材料、例えばチタン、金等の耐食性金属、SiCやWCなどのカーバイド、Si3N4、BNなどの窒化物からなる繊維を用いても良い。導電剤は、例えば溶融法、化学気相成長法など既存の製造方法によって製造することができる。
次に、正極活物質、バインダのNMP溶液、および導電剤を攪拌、混合しながら、NMPを添加し、なめらかな流動性を有するスラリを調製して正極集電体に塗布し、溶媒を蒸発させて乾燥させる。正極集電体にスラリを塗布する方法は特に限定されず、例えばドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法などの既知の方法を採用することができる。また、スラリを集電体へ付着させた後、有機溶媒を蒸発させて乾燥させ、正極集電体の表面に形成された正極合剤層をロールプレスによって加圧成形することにより、正極107を作製することができる。また、スラリの塗布から乾燥までを複数回おこなうことにより、複数の正極合剤層を正極集電体に積層化させることも可能である。
負極108は、例えば銅箔である負極集電体と、負極集電体の表面に形成された負極合剤層とによって構成されている。負極集電体としては、例えば、厚さが10μm以上かつ100μm以下の銅箔、厚さが10μm以上かつ100μm以下、孔径0.1mm以上かつ10mmの銅製穿孔箔、エキスパンドメタル、発泡金属板などが用いられる。負極集電体の材料としては、銅の他に、ステンレス鋼、チタンなどの金属または合金を用いることができる。なお、本実施形態において、負極集電体の材質、形状、製造方法などに特に制限はない。
負極合剤層は、負極活物質とバインダから構成され、必要に応じて導電剤が添加される場合がある。負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵、放出する材料である。リチウムイオンを電気化学的に吸蔵、放出可能な材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズ炭素、膨張黒鉛、炭素繊維、気相成長法炭素繊維、ピッチ系炭素質材料、ニードルコークス、石油コークス、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、カーボンブラックのなどの炭素質材料、あるいは5員環または6員環の環式炭化水素または環式含酸素有機化合物を熱分解によって合成した非晶質炭素材料、などを用いることができる。負極活物質として、例えば(002)面のX線回折ピークから求めたグラファイト層間隔d002が、0.35nm以上かつ0.36nm以下の範囲にある黒鉛粉末を用いることができる。
負極活物質は、黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素等の材料の混合、または前記炭素材料と前記金属もしくは前記合金の混合または複合であってもよい。また、負極活物質としてポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリアセチレンからなる導電性高分子材料を用いることができる。さらに、これらの材料と黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素等のグラフェン構造を有する炭素材料と組み合わせることができる。本実施形態で使用可能な負極活物質としては、リチウムと合金化するアルミニウム、シリコン、スズなどがあり、さらにリチウムイオンを電気化学的に吸蔵、放出可能な黒鉛や非晶質炭素からなる炭素質材料などもある。チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)を負極活物質に用いることも可能である。本実施形態において、負極活物質に特に制限はなく、上述した材料以外の材料も用いることができる。
負極集電体の表面に合剤層を形成する際には、負極活物質とバインダとの混合比(重量百分率表示)を、例えば、負極活物質が80重量%以上かつ99重量%以下、バインダが1重量%以上かつ20重量%以下として、これらを配合する。バインダとしては、PVDFのNMP溶液を用いることができる。バインダの溶媒は、有機溶媒、水などであって、本発明のバインダを変質させないものであれば、任意に選択することができる。
負極108の導電性を十分に確保し、大電流の充放電を可能にする観点から、負極活物質の重量比は99重量%よりも小さいことが好ましい。また、リチウムイオン二次電池100のエネルギー密度を向上させる場合は、負極活物質の重量比は90重量%よりも大きいことが好ましい。負極活物質とバインダの他に、必要に応じて正極合剤層と同様の導電剤を添加することができる。例えば、大電流の充電または放電を行う場合には、少量の導電剤を添加して、負極108の抵抗を下げることが望ましい。
次に、負極活物質およびバインダのNMP溶液を攪拌、混合しながら、NMPを添加し、なめらかな流動性を有するスラリを調製して負極集電体に塗布し、溶媒を蒸発させて乾燥させる。その後、前記した正極活物質を形成する手順と同様の手順を経て、負極集電体の表面に負極合剤層が形成された負極108を作製することができる。前記した正極合剤層と同様に、スラリの塗布から乾燥までを複数回おこなうことにより、複数の負極合剤層を負極集電体に積層化させることも可能である。
電極群101は、リード線110、111を介して外部端子104、105に接続されている。具体的には、正極107が正極リード線110を介して正極外部端子104に接続され、負極108が負極リード線111を介して負極外部端子105に接続されている。なお、リード線110、111の形状は、電流を流したときにオーム損失が極端に増大しない形状であれば、ワイヤ状、板状、箔状などの任意の形状を採用することができる。また、リード線110、111の材質は、電解液と反応しない材質であれば任意である。
正極リード線110または負極リード線111の途中、正極リード線110と正極外部端子104との接続部、または負極リード線111と負極外部端子105との接続部に、正温度係数(PTC; Positive temperature coefficient)抵抗素子を利用した電流遮断機構を設けてもよい。電流遮断機構を設けることで、リチウムイオン二次電池100の内部の温度が高くなったときに、リチウムイオン二次電池100の充放電を停止させ、電池を保護することが可能となる。
電池容器102の材料は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼製など、非水電解質に対し耐食性のある材料から選択される。また、電池容器102を正極リード線110または負極リード線111に電気的に接続する場合は、非水電解質と接触している部分において、電池容器102の腐食やリチウムイオンとの合金化による材料の変質が起こらないように、リード線110、111の材料を選定する。
本実施形態のリチウムイオン二次電池100は、電池容器102の寸法が、例えば、幅100mm、高さ70mm、奥行20mmとされ、蓋103の面積が、例えば20cm2とされ、放電容量が、例えば5Ah以上とされている。電池容器102内の電解液Lの体積は、例えば30ml以上かつ40ml以下とされている。
電解液Lの体積は、正極107、負極108、セパレータ109の各細孔容積を十分に満たす量以上の体積が必要である。本実施形態では、電解液Lの体積を、細孔容積の150%±10%とした。細孔容積は、構成材料の真密度(空隙ゼロとしたときの密度)と、幾何学的に測定可能な体積から求められるみかけの密度の関係から、計算される。その計算式を以下の式(a)、(b)に示す。電解液Lの体積の計算式は、細孔容積の150%を添加したときの例である。
細孔容積=電極またはセパレータの重量(1/見かけの密度−1/真密度)…(a)
電解液Lの注入量=細孔容積×150(%)÷100(%) …(b)
電解液Lの注入量=細孔容積×150(%)÷100(%) …(b)
電解液Lの体積は、細孔容積の120%以上かつ200%以下であることが望ましい。電解液Lの体積が細孔容積の120%未満となると、電池容器102の内壁等に付着する電解液Lにより、空隙または細孔に保持される電解液Lが不足し、充放電容量が低下する。電解液Lの体積を細孔容積の200%以上にすると、電池内部の端子の腐食等の故障の問題が生じる。また、電解液Lの体積を細孔容積の130%以上かつ170%以下にすれば、電極群101に大半の電解液Lが保持され、保持されない電解液Lが少なくなる。リチウムイオン二次電池が、電解液Lを必要量のみ備えるので、液不足の問題と端子の故障等の問題を回避することができる。以上の観点から、最も好適な電解液Lの体積は、細孔容積の140%以上かつ160%以下である。
(電解液)
次に、本実施形態のリチウムイオン二次電池100の特徴的な構成である電解液Lについて詳細に説明する。
次に、本実施形態のリチウムイオン二次電池100の特徴的な構成である電解液Lについて詳細に説明する。
本実施形態のリチウムイオン二次電池100は、難燃剤と電解質溶媒と電解質(リチウム塩)を含む電解液Lを用いている。
難燃剤は、亜リン酸トリメチル(CAS No.121−45−9)、メチルホスホン酸ジメチル(CAS No.756‐79‐6)およびメチルジメチルホスフィナート(CAS No.14337‐77‐0)から選択される1種以上を含む。以下、亜リン酸トリメチルを「TMPI」、メチルホスホン酸ジメチルを「DMMP」、メチルジメチルホスフィナートを「MDMP」と表記する。
電解質溶媒は、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、およびジエチルカーボネートから選択される2種以上を含む。以下、炭酸エチレンを「EC」、炭酸ジメチルを「DMC」、炭酸エチルメチルを「EMC」、ジエチルカーボネートを「DEC」と表記する。電解質溶媒に溶解させる電解質は、例えば六フッ化リン酸リチウム(以下「LiPF6」と表記)であり、その濃度は、例えば1モル/リットルである。
図3は、本実施形態のリチウムイオン二次電池100に用いられる電解液Lの組成を示すグラフである。図3において、横軸は電解液L中のDMCの体積比を示し、縦軸は電解液L中の難燃剤の体積比を示している。各体積は、電解液調製時の混合前の体積(純物質の体積)である。電解液Lの体積は、難燃剤体積と溶媒体積の合計を100%とし、電解液成分の混合による体積変化を無視した。
本実施形態の電解液Lは、以下の第1の条件または第2の条件を満たす。
第1の条件は、電解液Lの体積を100%として、難燃剤の体積比が5%以上かつ51%以下であり、かつDMCの体積比が15%以上かつ60%以下であり、かつ難燃剤とDMCの合計の体積比が45%以上である。第1の条件は、図3において直線N1、N3、D1、D2およびL1によって囲まれた領域A1で表される。第1の条件は、難燃剤の体積比をN(%)、DMCの体積比をD(%)として、以下の式(1)から(3)を同時に満たしている。
5≦N≦51 …(1)
45≦N+D …(2)
15≦D≦60 …(3)
45≦N+D …(2)
15≦D≦60 …(3)
第1の条件のより好ましい範囲は、電解液Lの体積を100%として、難燃剤の体積比が5%以上かつ50%以下、かつDMCの体積比が15%以上かつ60%以下、かつ難燃剤とDMCの合計の体積比が45%以上かつ65%以下である。第1の条件のより好ましい範囲は、図3において直線L1、L2、D1およびN1によって囲まれた領域A1aで表される。第1の条件のより好ましい範囲は、難燃剤の体積比をN(%)、DMCの体積比をD(%)として、下記の式(1a)から(3a)を同時に満たしている。
5≦N …(1a)
45≦N+D≦65 …(2a)
15≦D …(3a)
45≦N+D≦65 …(2a)
15≦D …(3a)
第2の条件は、電解液Lの体積を100%として、難燃剤の体積比が30%以上かつ51%以下であり、かつDMCの体積比が15%より小である。第2の条件は、図3において直線N2、N3、D0、D1によって囲まれた領域A2で表される。第2の条件は、難燃剤の体積比をN(%)、DMCの体積比をD(%)として、以下の式(4)および(5)を同時に満たしている。
30≦N≦51 …(4)
D<15 …(5)
D<15 …(5)
第2の条件においては、DMCを含まない電解液組成を含む。この場合、電解液Lの体積を100%として、難燃剤の体積比が30%以上かつ51%以下、かつEC、EMCおよびDECの合計の体積比が49%以上かつ70%以下であることが好ましい。
リチウムイオン二次電池100は、放電容量が大きくなり、電解液Lの体積に比べて電池容器102の比表面積が小さくなると、電池容器102表面からの放熱量が減少する。その結果、電解液Lが第1の条件または第二の条件を満たさず、電解液Lの組成が、図3に示す従来の電解液の組成の領域X1に含まれる場合、電池容器102内部の発熱を外部に速やかに放出しにくくなり、リチウムイオン二次電池100の温度が上昇して安全性が損なわれる虞がある。なお、図3に示す領域X1は、難燃剤の体積比が0%以上かつ25%以下、かつDMCの体積比が5%以上、かつ難燃剤とDMCの合計の体積比が40%以下である領域である。
そこで、発明者らは、電解液Lを構成する溶媒の種類と組成、ならびに難燃剤の種類と添加量を選択することにより、放電容量が5Ahを超える比較的大きいリチウムイオン二次電池100の発熱を抑制することに成功した。
第1の条件または第2の条件において、電解液Lに含まれる難燃剤中のTMPI、DMMP、MDMPは、分子内に1個のリンを有する化合物であり、炭酸エステル等の可燃性溶媒の燃焼を抑制する効果を有する。リンは、酸素分子または酸素を有する活性なラジカルと結合し、燃焼反応を抑止する。
第1の条件または第2の条件において、電解液Lに含まれる電解質溶媒中のDMCの体積比を規定した理由は、DMCの燃焼熱が最も小さく、DMMP等の難燃剤が自己消火性を発現しやすいからである。そのメカニズムの詳細は判っていないが、DMCの反応熱が小さいので、DMMP等の難燃剤による少量の酸素の捕捉により、燃焼火炎が維持されないためと推定される。
すなわち、電解液Lが前記の第1の条件または第2の条件を満たすことで、電解液Lの温度上昇が抑制され、リチウムイオン二次電池100の安全性を向上させることができる。また、リチウムイオン二次電池100のその他の構成に変更を加える必要がないため、電池性能の低下を抑制できる。したがって、本実施形態のリチウムイオン二次電池100によれば、電解液Lの難燃剤として亜リン酸トリメチル等のリン化合物を用い、電池性能を低下させることなく安全性を向上させることができる。
特に、電解液Lに含まれる電解質溶媒に燃焼発熱の小さなDMCを選択し、難燃剤としてTMPI、DMMP、MDMPから選択される1種以上を電解液Lに添加することで、電池の発熱を効果的に抑制することが可能になった。これらのリン化合物は、酸素捕捉能力の高いため、電池内部が高温になっても、電解質溶媒の酸化反応を抑制する。
また、リチウムイオン二次電池100の放電容量が比較的大きい5Ah以上とされている場合には、例えば40g以上の電解液Lが必要とされ、電解液Lの体積が比較的大きくなることで、電池容器102表面からの放熱量の減少が顕著になる。そのため、第1の条件または第2の条件を満たす電解液Lによって温度上昇を抑制することで、リチウムイオン二次電池100の安全性をより顕著に向上させることができる。また、第1の条件または第2の条件を満たす電解液Lによって、充電時に5Ah以上の容量を有し、かつ、充電時のエネルギー密度が100Wh/kg以上となる大容量リチウムイオン二次電池100の発熱をより効果的に抑制することができる。また、充電時の容量に上限値はないが、充電時のエネルギー密度は、例えばリチウムイオン電池の場合、それが達成可能な500Wh/kgを上限値とすることができる。
特に、電解液LのDMC組成に応じて、リン化合物の添加量を最適な値に制御する点に、本実施形態のリチウムイオン二次電池100の主な特徴がある。リチウムイオン二次電池100の電池容量が5Ah以上になると、電解質溶媒の酸化が起こりやすくなるところを、難燃剤を用いることによって、電解液Lの酸化反応を効果的に抑制し、リチウムイオン二次電池100の発熱量を低減することが可能になる。
前記の第1の条件または第2の条件を満たせば、電解質溶媒としてDMC以外の他の溶媒を用いても良い。なお、電解液Lに使用可能な他の溶媒は、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1、2-ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、1、3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、テトラヒドロフラン、1、2−ジエトキシエタン、クロルエチレンカーボネート、クロルプロピレンカーボネートなどの非水溶媒がある。本実施形態のリチウムイオン二次電池100の正極107、負極108上で分解しなければ、これ以外の溶媒を用いても良い。
本実施形態では、電解液Lの電解質としてLiPF6を用いたが、他の公知の化合物を任意に用いることができる。例えば、LiBF4、LiClO4、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6あるいはリチウムトリフルオロメタンスルホンイミドで代表されるリチウムのイミド塩、LiNSO2F、Li(NSO2)2などの多種類のリチウム塩がある。さらに、LiB(CN)4を使用することも可能である。これらの塩を、上述の溶媒に溶解してできた非水電解液を電池用の電解液Lとして使用することができる。本実施形態のリチウムイオン二次電池100の正極107、負極108上で分解しなければ、これ以外の電解質を用いても良い。
また、電極群101の外表面の表面積に対する開口面101aの面積の比率が5%以上である場合には、正極107から発生した酸素を電極群101から排出しやすくなり、電解質溶媒の酸化反応の進行を抑制して温度上昇を抑制することができる。
以上説明したように、本実施形態のリチウムイオン二次電池100において、電解液Lに本発明の難燃剤を用いれば、電池性能を低下させることなく、過充電時に電池の温度上昇を効果的に抑制することができる。
(電池モジュール)
次に、本実施形態のリチウムイオン二次電池100を備えた電池モジュールについて説明する。
次に、本実施形態のリチウムイオン二次電池100を備えた電池モジュールについて説明する。
図4は、本実施形態のリチウムイオン二次電池100を備えた電池モジュール200の概略構成を示すブロック図である。
電池モジュール200は、前記したリチウムイオン二次電池100と同一の構成を有する複数のリチウムイオン二次電池100A、100Bを備えている。
リチウムイオン二次電池100Aの負極外部端子105は、電力ケーブル201を介して充電制御器210の負極入力ターミナルに接続されている。リチウムイオン二次電池100Aの正極外部端子104は、電力ケーブル202を介してリチウムイオン二次電池100Bの負極外部端子105に連結されている。リチウムイオン二次電池100Bの正極外部端子104は、電力ケーブル203を介して充電制御器210の正極入力ターミナルに接続されている。このような配線構成によって、2個のリチウムイオン二次電池100A、100Bを充電または放電させることができる。
充放電制御器210は、電力ケーブル204、205を介して、外部に設置した機器(以下では外部機器300と称する。)との間で電力の授受を行う。外部機器300は、充放電制御器210に給電するための外部電源や回生モータ等の各種電気機器、ならびに電池モジュール200が電力を供給するインバータ、コンバータおよび負荷が含まれている。外部機器300が対応する交流、直流の種類に応じて、インバータ等を設ければ良い。これらの機器類は、公知のものを任意に適用することができる。
また、充放電制御器210は、電力ケーブル206、207を介して再生可能エネルギーを生み出す機器として風力発電機の動作条件を模擬して設置された発電装置400に接続されている。発電装置400が発電するときには、充放電制御器210が充電モードに移行し、外部機器300に給電するとともに、余剰電力をリチウムイオン二次電池100A、100Bに充電する。また、発電装置400の発電量が外部機器300の要求電力よりも少ないときには、リチウムイオン二次電池100A、100Bを放電させるように充放電制御器210が動作する。
なお、発電装置400は他の発電装置、すなわち太陽電池、地熱発電装置、燃料電池、ガスタービン発電機などの任意の装置に置換することができる。充放電制御器210は上述の動作をするように自動運転可能なプログラムを記憶させておく。
電池モジュール200は、リチウムイオン二次電池100A、100Bに対して定格容量が得られる通常の充電を行う。例えば、1時間率の充電電流にて、2.8Vの定電圧充電を0.5時間、実行することができる。充電条件は、リチウムイオン二次電池100A、100Bの材料の種類、使用量などの設計で決まるので、電池の仕様ごとに最適な条件とする。電池モジュール200は、リチウムイオン二次電池100A、100Bを充電した後には、充放電制御器210を放電モードに切り替えて、各電池を放電させる。電池モジュール200は、通常、リチウムイオン二次電池100A、100Bが一定の下限電圧に到達したときに放電を停止させる。
以上のように、充放電制御器210はリチウムイオン二次電池100A、100Bの充放電範囲を制御する制御部として機能する。充放電制御器210は、リチウムイオン二次電池100A、100Bの充電深度を基準として充放電範囲を10%以上かつ90%以下の範囲に制御することが好ましい。これにより、リチウムイオン二次電池100の温度上昇をより効果的に抑制し、電池性能を低下させることなく安全性を向上させることができる。
また、充放電制御器210は、リチウムイオン二次電池100A、100Bの充電深度を基準として充放電のレートを0.2時間率以上かつ5.0時間率以下の範囲に制御することが好ましい。これにより、リチウムイオン二次電池100の温度上昇をより効果的に抑制し、電池性能を低下させることなく安全性を向上させることができる。
以上説明したように、本実施形態の電池モジュール200によれば、リチウムイオン二次電池100A、100Bの電解液Lに本発明の難燃剤を用いることで、電池性能を低下させることなく、リチウムイオン二次電池100A、100Bが過充電されても、電池の温度上昇が効果的に抑制される。したがって、電池モジュール200の安全性を向上させることが可能になる。
以上、図面を用いて本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
[実施例]
次に、本発明のリチウムイオン二次電池およびそれを備えた電池モジュールの実施例について説明する。
次に、本発明のリチウムイオン二次電池およびそれを備えた電池モジュールの実施例について説明する。
(電池の製作)
まず、前述の実施の形態において説明した構成を有する複数のリチウムイオン二次電池を製作した。電池容器の形状は、円筒形と角形を用いた。
まず、前述の実施の形態において説明した構成を有する複数のリチウムイオン二次電池を製作した。電池容器の形状は、円筒形と角形を用いた。
正極に用いられる正極活物質として、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2を選択した。正極活物質の平均粒径は5μmであった。また、正極活物質の重量組成を85%、バインダの重量組成を8%とした。導電材としてカーボンブラックを導電剤に用いた。その重量組成は7%とした。カーボンブラックとして電気化学工業株式会社製のデンカブラック(登録商標)を用いた。正極集電体として10μmの厚さのアルミニウム箔を用い、正極活物質、バインダおよび導電剤からなるスラリをブレードコーターによって塗布して正極を製作した。
負極に用いられる負極活物質として、クレハ・バッテリ・マテリアル・ジャパン社製のカーボトロンP(登録商標)を用いた。負極活物質の重量組成を94%、バインダの重量組成を6%とした。負極活物質およびバインダ導電剤からなるスラリをブレードコーターによって塗布して負極を作製した。
表1から表4に、製作したリチウムイオン二次電池が備える電解液の重量(g)、混合条件、電解液中の電解質溶媒に含まれるEC、DMC、EMC、DECの体積比(体積%)、および電解液中の難燃剤に含まれるTMPI、DMMP、MDMPの体積比(体積%)を示す。なお、混合条件は、電解液が前述の実施の形態において説明した第1の条件を満たす場合は「1」、第2の条件を満たす場合は「2」、いずれの条件も満たさない場合は「非該当」としている。
製作したリチウムイオン二次電池の形状を、表5から表8の「形状」に示す。また、円筒形の電池容器に収容される円筒形の電極群の直径をD(mm)、径方向に垂直な長さをL(mm)で示し、角形の電池容器に収容される角形の電極群の幅方向の長さをL(mm)、高さをH(mm)、厚さ方向の幅をW(mm)で示す。これらの電極群の外形寸法から求めた電極群の表面積(cm2)を表5から表8に示す。電池容器が円筒形の場合の電極群の表面積はπ×D2/2+π×D×Lで求められ、電池容器が角形の場合の電極群の表面積は2×(L×H+H×W+W×L)で求められる。
表5から表8に示す開口面積の比率(%)は、電極群の表面積に対する開口面積の比率である。開口面積とは、図2(a)、(b)に示すように、電極群101において正極、負極およびセパレータの端縁が露出している面101aの面積である。したがって、図2(a)に示すように電極群が円筒形の場合、開口面積の比率(%)は、長さL方向の両端の2つの開口面101aの面積π×D2/2を円筒形の電極群101の外表面の表面積で割った値となる。また、図2(b)に示すように、角形の電極群101の場合は、6面の少なくとも1面が開口面101aとなるので、その面積を電極群101の外表面の表面積で割った値となる。
電解液は、電池容器の蓋に設けられた注液口から電池容器に所定量を注入した。実施例8の電池を除く他の電池の電解液の重量は、80±8gであった。表1から表4には、中心値の80gのみを記した。なお、実施例8では、電極群の表面積が他の実施例と異なるため、電極群の表面積に応じて電解液の液量を調整した。注液口を注液栓106によって封止した後に、電池の重量を測定した。その結果を表5から表8の電池重量(kg)の欄に示す。
(電池の初期エージング)
実施例8の電池を除き、電池の定格容量は10Ahである。定格容量を得るために、初期エージングを行った。その条件は、まず5Aの充電電流にて電池電圧が4.2Vに達するまで充電を行い、4.2Vに達した後には4.2Vを維持しながら電流が0.1Aに減少するまで充電を継続した。次いで30分の休止を経た後、5Aの放電電流にて電池電圧が2.8Vに達するまで放電を行った。
実施例8の電池を除き、電池の定格容量は10Ahである。定格容量を得るために、初期エージングを行った。その条件は、まず5Aの充電電流にて電池電圧が4.2Vに達するまで充電を行い、4.2Vに達した後には4.2Vを維持しながら電流が0.1Aに減少するまで充電を継続した。次いで30分の休止を経た後、5Aの放電電流にて電池電圧が2.8Vに達するまで放電を行った。
実施例8の電池については、各定格容量に対して、2時間率の電流にて電池電圧が4.2Vに達するまで充電を行い、4.2Vに達した後には4.2Vを維持しながら、電流が前記電流の1/100に減少するまで、充電を継続した。次いで30分の休止を経た後、2時間率の放電電流にて電池電圧が2.8Vに達するまで放電を行った。例えば、実施例8の電池B81の場合、2時間率の電流とは、2.5Aである。
(放電容量測定試験)
上述の初期エージング条件にて、各電池の充放電サイクルを5回行い、5回目の放電容量を測定した。その結果を、表5から表8の放電容量(Ah)の欄に示す。ここでは、定格容量の90%以上の容量が得られたときを合格と判断した。例えば、定格容量10Ahの電池では、9Ah以上の容量が必要である。
上述の初期エージング条件にて、各電池の充放電サイクルを5回行い、5回目の放電容量を測定した。その結果を、表5から表8の放電容量(Ah)の欄に示す。ここでは、定格容量の90%以上の容量が得られたときを合格と判断した。例えば、定格容量10Ahの電池では、9Ah以上の容量が必要である。
(電池の安全性試験)
初期容量を得た後、それと同じ容量まで各電池を再充電し、充電深度を100%にした。その状態から、電池の側面にφ3mmの鉄釘を突き刺した。釘の移動速度は1mm/秒とした。電池の側面に貼り付けた熱電対を用いて、電池容器に釘が刺さり始めて電池の側面温度の時間変化を計測した。本試験の過程での各電池の電池温度の最高値を、表5から表8の最高温度(℃)の欄に示す。なお、本実施例では、最高温度が300℃以下になったときを合格とした。最高温度の上限値を300℃に設定した理由は、正極から酸素が脱離し、その酸素によって電解液の酸化反応が十分に起こり得る温度が、300℃だからである。
初期容量を得た後、それと同じ容量まで各電池を再充電し、充電深度を100%にした。その状態から、電池の側面にφ3mmの鉄釘を突き刺した。釘の移動速度は1mm/秒とした。電池の側面に貼り付けた熱電対を用いて、電池容器に釘が刺さり始めて電池の側面温度の時間変化を計測した。本試験の過程での各電池の電池温度の最高値を、表5から表8の最高温度(℃)の欄に示す。なお、本実施例では、最高温度が300℃以下になったときを合格とした。最高温度の上限値を300℃に設定した理由は、正極から酸素が脱離し、その酸素によって電解液の酸化反応が十分に起こり得る温度が、300℃だからである。
以下、表1から表8を参照しながら実施例1から10および比較例1から5の各電池の結果を説明する。
(実施例1)
表1に示す実施例1の電池B11からB16が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第1の条件を満たし、図3に示す領域A1またはA1aに含まれている。また電池B17およびB18が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第2の条件を満たし、図3に示す領域A2に含まれている。
表1に示す実施例1の電池B11からB16が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第1の条件を満たし、図3に示す領域A1またはA1aに含まれている。また電池B17およびB18が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第2の条件を満たし、図3に示す領域A2に含まれている。
電池B11からB16は、TMPIの添加量の増加に伴って、表5に示す放電容量が低下する傾向が見られたが、ほぼ定格容量が得られ、合格レベルにあった。逆に、TMPIの添加量の増加に伴って電池B11からB16の最高温度は低下する傾向が見られ、難燃剤であるTMPIが電解質溶媒、特にDMCの燃焼反応を抑制していることがわかる。B11からB16の安全性は全て合格であった。
TMPIが正極の表面において分解し、高抵抗なリン酸化物を形成するために、正極での電解液の分解反応を抑制し、その結果として正極での発熱量が減少したと考えられる。TMPIは、正極上でメチル(CH3)またはメトキシ(CH3O)とリン酸化物(PO、PO2、PO3、PO(OH)、PO2(OH)、PO(OH)2など)を生成し、リン酸化物は正極の表面を被覆して、正極の表面を安定にする。リン酸化物が電解液と正極との直接的な接触を抑制するので、電解液の酸化反応が阻害される。その結果、正極での発熱量が小さくなる。
TMPIの作用に加え、DMCの燃焼熱が小さいことが加わり、本実施例で用いた電解液の第1の条件に従うと、電池の最高温度を低下させる効果が得られる。
電池B15とB16の比較から、DMC濃度が15体積%から40体積%の範囲において、TMPIの組成比が比較的高い例えば50体積%であるときに、電池B15とB16の放電容量と最高温度がほぼ同等になることがわかった。
また、電池B17とB18は、電解液が電解質溶媒としてDMCを含まず、電解液が第2の条件を満たすように製作した電池である。電池B17とB18は、電解液中の難燃剤であるTMPIの組成を30体積%以上かつ50体積%以下の高い範囲にすることにより、表5に示すように、最高温度を300℃以下にすることができた。また、電池B17とB18の放電容量も9Ah以上となり、良好な性能を得た。
(実施例2)
表1に示す実施例2の電池B21からB26が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第1の条件を満たし、図3に示す領域A1またはA1aに含まれている。また、電池B27およびB28が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第2の条件を満たし、図3に示す領域A2に含まれている。
表1に示す実施例2の電池B21からB26が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第1の条件を満たし、図3に示す領域A1またはA1aに含まれている。また、電池B27およびB28が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第2の条件を満たし、図3に示す領域A2に含まれている。
電池B21からB26は、DMMPの添加量の増加に伴って、表5に示す放電容量が低下する傾向が見られたが、ほぼ定格容量が得られている。また、DMMPの添加量の増加に伴って電池の最高温度は低下する傾向が見られ、難燃剤であるDMMPが電解液溶媒、特にDMCの燃焼反応を抑制していることがわかる。第2の条件を満たす電解液を用いた電池B27、B28についても、同様の結果を得た。
本実施例を実施例1と比較すると、DMMPの添加量が比較的多い電池B26、B28の放電容量は、対応する電池B16、B18の放電容量よりもわずかに減少したが、合格レベルにあった。電池の安全性試験による最高温度も、実施例1に比べて、わずかに高くなっているが、合格レベルにあった。
本実施例で難燃剤として用いたDMMPも、TMPIと同様に、正極の表面において分解して、高抵抗なリン酸化物を形成し、電池の安全性を高めていると理解される。DMMPの作用に加え、DMCの燃焼熱が小さいことが加わり、本実施例で用いた電池B21からB28の電池が備える電解液が前述の第1の条件または第2の条件を満たすと、電池の最高温度を低下させる効果が得られる。
(実施例3)
表1に示す実施例3の電池B31からB36が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第1の条件を満たし、図3に示す領域A1またはA1aに含まれている。また、電池B37およびB38が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第2の条件を満たし、図3に示す領域A2に含まれている。
表1に示す実施例3の電池B31からB36が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第1の条件を満たし、図3に示す領域A1またはA1aに含まれている。また、電池B37およびB38が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第2の条件を満たし、図3に示す領域A2に含まれている。
電池B31からB36の放電容量は、MDMPの添加量の増加に伴って、表5に示す放電容量が低下する傾向が見られたが、ほぼ定格容量が得られている。また、MDMPの添加量の増加に伴って電池B31からB36の最高温度は低下する傾向が見られ、難燃剤であるMDMPが電解質溶媒、特にDMCの燃焼反応を抑制していることがわかる。第2の条件を満たす電解液を用いた電池B37、B38についても、同様の結果を得た。
本実施例を実施例1および実施例2と比較すると、MDMPの添加量が比較的多い電池B36、B38の放電容量は、対応する電池B16、B18、B26、B28の放電容量を上回ることはなかったが、合格レベルにあった。電池の安全性試験による最高温度も、実施例1および実施例2に比べて、わずかに高くなっているが、合格レベルにあった。
本実施例で難燃剤として用いたMDMPも、TMPIおよびDMMPと同様に、正極の表面において分解して、高抵抗なリン酸化物を形成し、電池の安全性を向上させていると理解される。MDMPの作用に加え、DMCの燃焼熱が小さいことが加わり、本実施例で用いた電池B31からB38の電池が備える電解液が前述の第1の条件または第2の条件を満たすと、電池の最高温度を低下させる効果が得られる。
(実施例4)
本実施例では、難燃剤としてTMPIとDMMPの混合物を用いた。表2に示す実施例4の電池B41からB46が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第1の条件を満たし、図3に示す領域A1またはA1aに含まれている。また、電池B47およびB48が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第2の条件を満たし、図3に示す領域A2に含まれている。
本実施例では、難燃剤としてTMPIとDMMPの混合物を用いた。表2に示す実施例4の電池B41からB46が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第1の条件を満たし、図3に示す領域A1またはA1aに含まれている。また、電池B47およびB48が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第2の条件を満たし、図3に示す領域A2に含まれている。
電池B41からB46は、TMPIとDMMPの合計の添加量の増加に伴って、表6に示す放電容量が低下する傾向が見られたが、ほぼ定格容量が得られている。また、TMPIとDMMPの合計の添加量の増加に伴って電池の最高温度は低下する傾向が見られ、難燃剤であるTMPIとDMMPが電解液溶媒、特にDMCの燃焼反応を抑制していることがわかる。放電容量と電池温度はともに合格レベルにあった。第2の条件を満たす電解液を用いた電池B47、B48についても、同様の結果を得た。
本実施例を実施例1および実施例2と比較すると、本実施例の電池B41からB48の放電容量と最高温度は、実施例1の電池B11からB18と実施例2の電池B21からB28の結果の範囲に含まれている。放電容量の大きい順に、実施例1、実施例4、実施例2となる傾向があった。逆に、電池の最高温度は、高い順に、実施例2、実施例4、実施例1の順になる傾向があった。
(実施例5)
本実施例では、難燃剤としてDMMPとMDMPの混合物を用いた。表2に示す実施例5の電池B51からB56が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第1の条件を満たし、図3に示す領域A1またはA1aに含まれている。また、電池B57とB58が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第2の条件を満たし、図3に示す領域A2に含まれている。
本実施例では、難燃剤としてDMMPとMDMPの混合物を用いた。表2に示す実施例5の電池B51からB56が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第1の条件を満たし、図3に示す領域A1またはA1aに含まれている。また、電池B57とB58が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第2の条件を満たし、図3に示す領域A2に含まれている。
電池B51からB56は、DMMPとMDMPの合計の添加量の増加に伴って、表6に示す放電容量が低下する傾向が見られたが、ほぼ定格容量が得られている。逆に、DMMPとMDMPの合計の添加量の増加に伴って電池の最高温度は低下する傾向が見られ、難燃剤であるDMMPとMDMPが電解液溶媒、特にDMCの燃焼反応を抑制していることがわかる。放電容量と電池温度はともに合格レベルにあった。
本実施例を実施例2および実施例3と比較すると、本実施例の電池B51からB56の放電容量と最高温度は、実施例2の電池B21からB28と実施例3の電池B31からB38の結果の範囲に含まれている。放電容量の大きい順に、実施例2、実施例5、実施例3となる傾向があった。逆に、電池の最高温度は、高い順に、実施例3、実施例5、実施例2の順になる傾向があった。
(実施例6)
本実施例では、TMPIとMDMPの混合物を難燃剤に用いた。表2に示す実施例6の電池B61からB66が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第1の条件を満たし、図3に示す領域A1またはA1aに含まれている。また、電池B67とB68が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第2の条件を満たし、図3に示す領域A2に含まれている。
本実施例では、TMPIとMDMPの混合物を難燃剤に用いた。表2に示す実施例6の電池B61からB66が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第1の条件を満たし、図3に示す領域A1またはA1aに含まれている。また、電池B67とB68が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第2の条件を満たし、図3に示す領域A2に含まれている。
電池B61からB66の放電容量は、TMPIとMDMPの合計の添加量の増加に伴って、表6に示す放電容量が低下する傾向が見られたが、ほぼ定格容量が得られている。また、TMPIとMDMPの合計の添加量の増加に伴って電池の最高温度は低下する傾向が見られ、難燃剤であるTMPIとMDMPが電解液溶媒、特にDMCの燃焼反応を抑制していることがわかる。放電容量と電池温度はともに合格レベルにあった。
本実施例を実施例1および実施例3と比較すると、本実施例の電池B61からB66の放電容量と最高温度は、実施例1の電池B11からB18と実施例3の電池B31からB38の結果の範囲に含まれている。容量の大きい順に、実施例1、実施例6、実施例3となる傾向があった。逆に、電池の最高温度は、高い順に、実施例3、実施例6、実施例1の順になる傾向があった。
(実施例7)
本実施例では、TMPI、DMMPおよびMDMPの混合物を難燃剤に用いた。表3に示す実施例7の電池B71からB76が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第1の条件を満たし、図3に示す領域A1またはA1aに含まれている。また、電池B77とB78が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第2の条件を満たし、図3に示す領域A2に含まれている。
本実施例では、TMPI、DMMPおよびMDMPの混合物を難燃剤に用いた。表3に示す実施例7の電池B71からB76が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第1の条件を満たし、図3に示す領域A1またはA1aに含まれている。また、電池B77とB78が備える電解液は、前述の実施の形態で説明した第2の条件を満たし、図3に示す領域A2に含まれている。
電池B71からB76は、TMPI、DMMPおよびMDMPの合計の添加量の増加に伴って、表7に示す放電容量が低下する傾向が見られたが、ほぼ定格容量が得られている。逆に、TMPI、DMMPおよびMDMPの合計の添加量の増加に伴って電池の最高温度は低下する傾向が見られ、難燃剤であるTMPI、DMMPおよびMDMPが電解液溶媒、特にDMCの燃焼反応を抑制していることがわかる。放電容量と電池温度はともに合格レベルにあった。
本実施例を実施例1および実施例3と比較すると、本実施例の電池B71からB76の放電容量と最高温度は、実施例1の電池B11からB18と実施例3の電池B31からB38の結果の範囲に含まれている。放電容量の大きい順に、実施例1、実施例7、実施例3となる傾向があった。逆に、電池の最高温度は、高い順に、実施例3、実施例7、実施例1の順になる傾向があった。
(実施例8)
正極および負極を、面積が実施例1の電池B11の正極および負極の面積の5/9になるように切断して電極群を製作し、電池B81を製作した。また、正極および負極を、面積が実施例1の電池B11の正極および負極の面積の20/9倍、30/9倍、50/9倍になるように拡大して電極群を製作し、電池B82からB84を製作した。表3に示すように、各電池が備える電解液の組成は、実施例4の電池B43が備える電解液と同一の組成とした。各電池が備える電解液の重量は、定格容量に比例するように調整した。電池B81からB84の定格容量は、それぞれ5Ah、20Ah、30Ah、50Ahであった。
正極および負極を、面積が実施例1の電池B11の正極および負極の面積の5/9になるように切断して電極群を製作し、電池B81を製作した。また、正極および負極を、面積が実施例1の電池B11の正極および負極の面積の20/9倍、30/9倍、50/9倍になるように拡大して電極群を製作し、電池B82からB84を製作した。表3に示すように、各電池が備える電解液の組成は、実施例4の電池B43が備える電解液と同一の組成とした。各電池が備える電解液の重量は、定格容量に比例するように調整した。電池B81からB84の定格容量は、それぞれ5Ah、20Ah、30Ah、50Ahであった。
表7に示すように、電池B81からB84のいずれの放電容量も定格容量の90%以上となり、合格レベルであった。電池B81からB84の最高温度は、放電容量の増加に伴って上昇する傾向が見られた。実施例4の電池B43を含めて比較すると、電池温度は電池B81、B43、B82、B83、B84の順に高くなったが、電池の最高温度は300℃以下になり、いずれの電池も合格レベルであった。
(実施例9)
実施例4の電池B43と同様の正極および負極を用いて、各電極を切断して表7に記載した寸法D、Lになるように電極群を製作し、電池B91からB95を製作した。表3に示すように、電池B91からB95は、電池B43が備える電解液と同一組成の電解液を、電池B43と同一の重量で用いた。
実施例4の電池B43と同様の正極および負極を用いて、各電極を切断して表7に記載した寸法D、Lになるように電極群を製作し、電池B91からB95を製作した。表3に示すように、電池B91からB95は、電池B43が備える電解液と同一組成の電解液を、電池B43と同一の重量で用いた。
製作した電池B91からB95の電極群の開口面積の比率を、前述の方法によって求めて表7に示した。各電池の電極群の開口面積の比率は、円筒形の電極群の円形の上面と底面の面積を、円筒形状で近似した電極群の表面積で割った値である。
電池B91からB95の定格容量はいずれも一定なので、電池B91からB95の電解液の重量は、電池B43の電解液の重量と同一とした。電池B91からB95の放電容量は、電池B43とほぼ同一で、合格レベルにあった。
本実施例の電池B91からB95の最高温度を電池B43の最高温度を含めて比較する。電池B43、B91からB95の最高温度は、電極群の開口面積の比率が大きくなるほど、低下する傾向が見られた。電池B43、B91からB95の最高温度は、高い順に、電池B91、B92、B43、B93、B94、B95であった。この結果から、電極群の開口面積の比率を増加させることにより、DMC等の炭酸エステルの蒸気を電極群から速やかに排出することができ、炭酸エステルの燃焼量が低減されることがわかった。また、局所的に正極の一部が高温になり、正極活物質から酸素が脱離しても、電極群の開口面積が大きいほど、酸素が電極群から放出されやすく、電解液の燃焼を効果的に抑制することができる。
(実施例10)
実施例4のB43で用いた正極および負極と同様の正極および負極を短冊状に切断し、セパレータを介して積層させ、表7に示す寸法L、H、Wになるように角形の電極群を製作し、角形の電池容器に収容して電池B101からB105を製作した。表3に示すように、電池B101からB105は、電池B43が備える電解液と同一組成の電解液を、電池B43と同一の重量で用いた。
実施例4のB43で用いた正極および負極と同様の正極および負極を短冊状に切断し、セパレータを介して積層させ、表7に示す寸法L、H、Wになるように角形の電極群を製作し、角形の電池容器に収容して電池B101からB105を製作した。表3に示すように、電池B101からB105は、電池B43が備える電解液と同一組成の電解液を、電池B43と同一の重量で用いた。
電池B101、B102、B103、B104では、一枚の帯状セパレータを折り畳みながら、正極と負極を交互に挿入して、電極群を製作した。電極群の形状は直方体であり、電極群の開口面の数は2である。電池B105では、電極の縦横の寸法よりも縦横の寸法を1mmずつ大きくした複数枚の短冊状のセパレータを用意し、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に交互に積層し、最後の負極の上にセパレータを載せて、電極群を製作した。この場合の開口面の数は4である。
製作した電池B101からB105の電極群の開口面積の比率を、前述の方法によって求めて表7に示した。各電池の電極群の開口面積の比率は、角形の電極群の2または4の開口面の面積の合計を、直方体で近似した電極群の表面積で割った値である。
電池B101からB105の定格容量はいずれも一定なので、電池B101からB105の電解液の重量は、電池B43の電解液の重量と同一とした。電池B101からB105の放電容量は、電池B43とほぼ同一で、合格レベルにあった。
本実施例の電池B101からB105を比較すると、各電池の最高温度は、電極群の開口面積が大きくなるほど、低下する傾向があった。すなわち、最高温度は、高い順に、電池B101、B102、B103、B104、B105であった。特に、電極群の開口面の数の多い電池B105では、電池の最高温度が最も低くなっており、電極群の開口面積の比率が高いほど、最高温度が低下することがわかった。
(比較例1)
実施例1、実施例2、実施例3の各電池と同様の構成を備え、電解液が前述の第1の条件または第2の条件を満たさない電池B211からB213を作製した。表4に示すように、電池B211からB213が備える電解液は、難燃剤であるTMPI、DMMP、MDMPの体積比が3%以下であった。
実施例1、実施例2、実施例3の各電池と同様の構成を備え、電解液が前述の第1の条件または第2の条件を満たさない電池B211からB213を作製した。表4に示すように、電池B211からB213が備える電解液は、難燃剤であるTMPI、DMMP、MDMPの体積比が3%以下であった。
表8に示すように、電池B211からB213の放電容量は合格レベルにあった。しかし、電池B211からB213の最高温度は、各実施例の電池の最高温度よりも高くなった。例えば、電池B211の最高温度は電池B11の最高温度より高く、電池B212の最高温度は電池B21の最高温度よりも高く、電池B213の最高温度は電池B31の最高温度よりも高く、いずれも合格レベルの300℃よりも高かった。
(比較例2)
実施例1、実施例2、実施例3の各電池と同様の構成を備え、電解液が前述の第1の条件または第2の条件を満たさない電池B221からB223を作製した。表4に示すように、電池B221からB223が備える電解液は、難燃剤であるTMPI、DMMP、MDMPの体積比が60%であった。
実施例1、実施例2、実施例3の各電池と同様の構成を備え、電解液が前述の第1の条件または第2の条件を満たさない電池B221からB223を作製した。表4に示すように、電池B221からB223が備える電解液は、難燃剤であるTMPI、DMMP、MDMPの体積比が60%であった。
表8に示すように、電池B221からB223が備える電解液は、難燃剤の添加量が多いため、放電容量が低下して不合格になった。実施例1の電池B15、B16およびB18の結果、実施例2の電池B25、B26およびB28の結果、ならびに実施例3の電池B35、B36およびB38の結果と、本比較例の電池の結果を比較すると、難燃剤添加量の上限値は、電解液の体積を100%として、体積比で50%以上かつ60%以下の範囲にあることがわかった。なお、難燃剤の量が十分なので、電池B221からB223の最高温度は合格レベルにあった。
(比較例3)
実施例1、実施例2、実施例3の各電池と同様の構成を備え、電解液が前述の第1の条件または第2の条件を満たさない電池B231およびB232を作製した。
実施例1、実施例2、実施例3の各電池と同様の構成を備え、電解液が前述の第1の条件または第2の条件を満たさない電池B231およびB232を作製した。
表4に示すように、電池B231が備える電解液は、難燃剤であるTMPIの体積比が10%であり、DMCの体積比が30%であるが、難燃剤とDMCの合計の体積比が40%であり、前述の第1の条件を満たしていない。また、電池B231が備える電解液は、難燃剤であるTMPIの体積比が10%であり、前述の第2の条件を満たしていない。そのため、表8に示す電池B231の最高温度が300℃を超えて不合格となった。
同様に、表4に示すように、電池B232が備える電解液は、難燃剤であるTMPIの体積比が25%であるが、DMCの体積比が10%であり、難燃剤とDMCの合計の体積比が35%であり、前述の第1の条件を満たしていない。また、電池B232が備える電解液は、難燃剤であるTMPIの体積比が25%であり、前述の第2の条件を満たしていない。電池B232の電解液はTMPIの添加量が少ないので、表8に示す放電容量は合格レベルにあるが、最高温度は310℃に達し、不合格であった。
(比較例4)
実施例9の電池B91に対して、電極群の外表面の表面積に対する開口面積の比率を小さくした電池B241を製作した。同様に、実施例10の電池B101に対して、電極群の外表面の表面積に対する開口面積の比率を小さくした電池B242を製作した。
実施例9の電池B91に対して、電極群の外表面の表面積に対する開口面積の比率を小さくした電池B241を製作した。同様に、実施例10の電池B101に対して、電極群の外表面の表面積に対する開口面積の比率を小さくした電池B242を製作した。
電池B241とB242は、表8に示すように、ともに放電容量試験の結果である放電容量の値は合格値であったが、最高温度は500℃前後まで上昇した。電極群の開口面積の比率が小さくなったため、釘先端部分の短絡部分が高温になり、可燃性の電解液溶媒(炭酸エステル)が釘の近傍から速やかに除去されない上に、正極から発生した酸素が電極群から抜けにくくなり、溶媒の酸化反応が進行したためと考えられる。したがって、電極群の外表面の表面積に対する開口面の面積の比率は、5%以上であることが好ましい。
(比較例5)
実施例8の電池B81に比べて放電容量が低い電池B251とB252を製作した。表4に示すように、電池B251は、難燃剤であるTMPIおよびDMMPを添加した電解液を用い、電池B252には、難燃剤を添加しない電解液を用いた。電池B251とB252の最高温度を比較すると、有意な差は認められず、放電容量が5Ahよりも低くなれば、電解液への難燃剤の添加は必須でないことがわかった。
実施例8の電池B81に比べて放電容量が低い電池B251とB252を製作した。表4に示すように、電池B251は、難燃剤であるTMPIおよびDMMPを添加した電解液を用い、電池B252には、難燃剤を添加しない電解液を用いた。電池B251とB252の最高温度を比較すると、有意な差は認められず、放電容量が5Ahよりも低くなれば、電解液への難燃剤の添加は必須でないことがわかった。
(電池モジュールの実施例)
前述の実施の形態で説明した、図4に示す電池モジュール200と同様の構成を有する電池モジュールを製作した。電池モジュールには、前述の第1の条件または第2の条件を満たす電解液を備えたリチウムイオン二次電池100A、100Bを用いた。
前述の実施の形態で説明した、図4に示す電池モジュール200と同様の構成を有する電池モジュールを製作した。電池モジュールには、前述の第1の条件または第2の条件を満たす電解液を備えたリチウムイオン二次電池100A、100Bを用いた。
この電池モジュール200において、発電装置400から供給された電力を二次電池100A、100Bに充電し、リチウムイオン二次電池100A、100Bを放電させて外部機器300に電力を供給した。本実施例では、2時間率の充電を行い、1時間率の放電を行い、電池100A、100Bの初期の放電容量を求めた。充放電条件は実施例1の初期エージング条件に準じた。その結果、各電池100A、100Bの設計容量10Ahの99.5〜100%の容量を得た。
その後、環境温度20〜30℃の条件で、以下で述べる充放電サイクル試験を行った。まず、2時間率の電流(5A)でリチウムイオン二次電池100A、100Bを充電し、充電深度が50%(5Ah充電した状態)に達した時点で、充電方向に5秒のパルスと、放電方向に5秒のパルスを電池100A、100Bに与え、発電装置400からの電力の受け入れと外部機器300への電力供給を模擬するパルス試験を行った。なお、電流パルスの大きさは、ともに50Aとした。この電流は0.2時間率の大きな電流である。
続けて、残りの容量25Ahを2時間率の電流(5A)で各電池の電圧が2.8Vに達するまで充電し、その電圧で1時間の定電圧充電を継続した後に、充電を終了させた。その後、1時間率の電流(10A)にて各電池の電圧が2.8Vまで放電した。このような一連の充放電サイクル試験を500回繰り返したところ、初期の放電容量に対し、97〜98%の容量を得た。電力受け入れと電力供給の電流パルスを電池に与えても、システムの性能はほとんど低下しないことがわかった。
次に、電池100A、100Bの作動容量を、電池100A、100Bの充電深度を基準として充放電範囲が10%以上かつ90%以下の範囲になるように、充放電制御器210の充電電圧と放電電圧を設定し、0.2時間率の定電流(2A)で充放電のサイクルを実施した。放電容量は7.8Ah〜8Ahに小さくなったが、放電容量は充電深度0〜100%の作動容量に対して、作動範囲80%に相応の放電容量が得られており、正常な性能が得られた。
また、電池100A、100Bの充電と放電を0.2時間率でサイクル試験を行い、1000サイクル経過時点で充電深度0〜100%の範囲で容量測定を行った。容量測定条件は、前述の実施例で説明した初期エージングの条件とした。1000サイクル経過時の電池100A、100Bの容量維持率は、初期容量に対して95%の高い値になった。なお、比較として、全ての充放電サイクルを充電深度0〜100%の範囲で実施した場合は、初期容量に対して、91%の容量維持率を得た。
電解液が前述の第1の条件または第2の条件を満たす別の電池100A、100Bを用意して、図4に示す電池モジュール200を製作し、安全性試験を実施した。一方の電池100Aのみを予め定格容量まで充電し、他方の電池100Bは放電した状態で、システムを組み立てた。この状態で、他方の電池100Bを定格容量まで充電したところ、一方の電池100Aは過充電状態になったが、電池温度は140℃以下のままで、セパレータのシャットダウン機構が働いて、充電が停止した。この過程で、電池に破裂、発火はなかった。これにより、電池モジュール200の安全性が確認された。
100…リチウムイオン二次電池(二次電池)、101…電極群、107…正極(電極)、108…負極(電極)、109…セパレータ、L…電解液、200…電池モジュール、210…充放電制御器(制御部)
Claims (9)
- 難燃剤と電解質溶媒を含む電解液を用いた二次電池であって、
前記難燃剤は、亜リン酸トリメチル(TMPI)、メチルホスホン酸ジメチル(DMMP)およびメチルジメチルホスフィナート(MDMP)から選択される1種以上を含み、
前記電解質溶媒は、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(EMC)、およびジエチルカーボネート(DEC)から選択される2種以上を含み、
前記電解液の体積を100%として、前記難燃剤の体積比が5%以上かつ51%以下、かつ前記DMCの体積比が15%以上かつ60%以下、かつ前記難燃剤と前記DMCの合計の体積比が45%以上であるか、または、前記難燃剤の体積比が30%以上かつ51%以下、かつ前記DMCの体積比が15%より小であることを特徴とする二次電池。 - 前記電解液の体積を100%として、前記難燃剤の体積比が5%以上かつ50%以下、かつ前記DMCの体積比が15%以上かつ60%以下、かつ前記難燃剤と前記DMCの合計の体積比が45%以上かつ65%以下であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
- 前記電解液の体積を100%として、前記難燃剤の体積比が30%以上かつ51%以下、かつ前記EC、前記EMCおよび前記DECの合計の体積比が49%以上かつ70%以下、かつ前記DMCを含まないことを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
- 放電容量が5Ah以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の二次電池。
- セパレータを介して積層された複数の電極からなる電極群を備え、
前記電解液は、体積が前記セパレータおよび前記電極の細孔容積の120%以上かつ200%以下であり、重量が40g以上であることを特徴とする請求項4に記載の二次電池。 - 前記電極群は、積層された前記電極の端縁が露出した開口面を有し、
前記電極群の外表面の面積に対する前記開口面の面積の比率が5%以上であることを特徴とする請求項4に記載の二次電池。 - 請求項1から6のいずれか一項に記載の二次電池と、該二次電池の充放電範囲を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする電池モジュール。
- 前記制御部は、前記二次電池の充電深度を基準として充放電範囲を10%以上かつ90%以下の範囲に制御することを特徴とする請求項7に記載の電池モジュール。
- 前記制御部は、前記二次電池の充電深度を基準として充放電のレートを0.2時間率以上かつ5.0時間率以下の範囲に制御することを特徴とする請求項8に記載の電池モジュール。
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JP2018147594A (ja) * | 2017-03-01 | 2018-09-20 | 株式会社東芝 | 非水電解質電池 |
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JP2020149920A (ja) * | 2019-03-15 | 2020-09-17 | Tdk株式会社 | リチウム二次電池 |
-
2014
- 2014-03-27 JP JP2014066580A patent/JP2015191721A/ja active Pending
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