JP5941730B2 - 感圧複写用顕色シート及び感圧複写紙 - Google Patents

感圧複写用顕色シート及び感圧複写紙 Download PDF

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Description

本発明は、感圧複写用顕色シート及び感圧複写紙に関する。
ノーカーボン紙とも呼称される感圧複写紙は、一般に、電子供与性有機発色剤等を内包するマイクロカプセルを主成分とした発色層を支持体の裏面に積層した上用紙と、上記発色剤との接触により顕色する電子受容性顕色剤を主成分とした顕色層を表面に積層した下用紙とを有する。この感圧複写紙は、筆記用具やプリンタ等の圧力により上用紙の発色層内のマイクロカプセルが破壊され、マイクロカプセルに内包されていた発色剤が顕色剤層に転移し、下用紙の顕色層内の顕色剤と反応することによって、上用紙に筆記、印刷等された文字等が下用紙に複写される仕組みになっている。また、この感圧複写紙としては、表面に顕色層、裏面に発色層が積層された中用紙を上用紙と下用紙との間に1枚以上備えるものも用いられる。
上記感圧複写紙は各種伝票類に多用され、感圧複写紙を構成する各シートには、伝票の用途ごとにフォームが印刷される。この各シートへの図柄等のフォーム印刷は、従来はオフセット印刷、活版印刷等が使用されていたが、近年、インクジェット印字の技術発展に伴って、インクジェット印字が感圧複写紙へのフォーム印刷に適用されつつある。インクジェット印字は、製版が不要であり、フォーマットの変更が簡単にできるため、小ロットの印刷や可変情報の印刷に適している。そのため、感圧複写紙において、宛名、宛先やバーコード等の情報をインクジェット印字で行う手法が普及してきている。
しかしながら、従来の感圧複写紙において下用紙又は中用紙として用いられる顕色シートは、表面に顕色層を有するため、インクジェット印字によって画像を印刷すると、インクの滲みが発生し、鮮明な画像が得られない。また、インクの裏抜けが発生しやすく、インクの乾燥性も低いため、他の部位にインクが転移して画像が不鮮明になると共に、印刷機器等を汚損しやすいという不都合がある。
このような不都合を改善するため、例えば、顕色層に変性澱粉やスチレンブタジエンゴム等を含有させた感圧複写用顕色シートが開発されている(特許第4634274号等参照)。
上記特許に開示される感圧複写用顕色シートは、インクジェット印字におけるインクの滲みがある程度改善されている。しかしながら、インクの裏抜けに対する改善は図られておらず、依然として感圧複写用顕色シートのインクジェット印字の適性には改善すべき点がある。
特許第4634274号
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、インクジェット印字のインクの滲みが抑えられ、インクの裏抜けが生じにくい感圧複写用顕色シートを提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、
基紙と、この基紙の表面側に形成され、顔料、顕色剤及びバインダーを主成分とする顕色層とを備える感圧複写用顕色シートであって、
表面における蒸留水の静的接触角が50度以上90度以下であることを特徴とする。
当該感圧複写用顕色シートは、表面の接触角を上記範囲とすることによって、顕色層の水分吸収性を一定範囲に制御することが可能である。これにより、当該感圧複写用顕色シートにおいて、インクジェット印字のインクが過度に吸収されることが抑制されるため、インクの滲み及び裏抜けの発生を防止することができる。
上記顕色層がサイズ剤を含有し、顕色層におけるサイズ剤の含有量が固形分換算で0.1質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。このように、顕色層がサイズ剤を上記範囲で含有することによって、インクの滲みを抑えることができる。また、サイズ剤のブリードアウト現象によって、サイズ剤とともに顕色剤の一部が顕色層の表層に移動するため、顕色剤と発色剤との反応が表層で発生しやすくなり、当該感圧複写用顕色シートにおいて、発色剤の滲みを抑制するとともに感圧による呈色速度及び濃度を向上させることができる。
上記サイズ剤がブリードアウトするタイプであることが好ましい。このように、ブリードアウトするタイプのサイズ剤を用いることによって、顕色層において上記ブリードアウト現象が発現しやすくなるため、当該感圧複写用顕色シートにおいて、発色剤の滲み抑制効果と、感圧による呈色速度及び濃度とをさらに向上させることができる。
上記サイズ剤がアルキルケテンダイマーであることが好ましい。このようにサイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)は弱カチオン性を有するため、当該感圧複写用顕色シートにおいて、インクジェット印字のインクの定着性を向上させることができる。
上記顔料が紡錘形状を有する顔料を含み、この顔料の平均短径が0.1μm以上3.0μm以下、平均長径が0.5μm以上7.0μm以下であることが好ましい。このような顔料を顕色剤に含有させることによって、顕色層をポーラス形状にすることができ、当該感圧複写用顕色シートにおいて、インクジェット印字のインクの滲み抑制機能をさらに向上させるとともに、印字濃度を向上させることができる。
また、当該感圧複写用顕色シートを備える感圧複写紙は、インクジェット印字で高品質な画像を印刷することができる。
ここで、「静的接触角」とは、1.4μlの蒸留水の液滴を表面に着滴させ、着滴10秒後の接触角を計測したものをいう。「ブリードアウトするタイプ」とは、塗工後に表層に移行する性質を有するタイプをいう。「平均長径」とは、電子顕微鏡写真において電子ノギスを用いて測定した粒子の最も長い弦の長さの平均値をいい、「平均短径」とは、同じく最も短い弦の長さの平均値をいう。
以上説明したように、本発明の感圧複写用顕色シートによれば、インクジェット印字のインクの滲みが抑えられ、インクの裏抜けが生じにくいため、インクジェット印字で高品質な画像を印刷することができる。
以下、本発明の実施形態を詳説する。
本発明の感圧複写用顕色シートは、基紙と、この基紙の表面側に形成され、顔料、顕色剤及びバインダーを主成分とする顕色層とを備える感圧複写用顕色シートであって、表面の蒸留水の静的接触角が50度以上90度以下であることを特徴とするものである。
当該感圧複写用顕色シートは、表面の静的接触角を上記範囲とすることによって、発色剤及びインクジェットインクの浸透速度が一定範囲内にコントロールされる。この浸透速度によれば、発色剤及びインクが滲みや裏抜けを起こすことを防止できる。
以下、当該感圧複写用顕色シートの基紙及び顕色層を構成する必須及び好適な具体的成分(原料パルプ、填料、顔料、顕色剤、バインダー等)、並びに当該感圧複写用顕色シートの製造方法について説明する。
<基紙>
当該感圧複写顕色シートの基紙は、原料パルプを抄紙して得られる。
(原料パルプ)
当該感圧複写用顕色シートの基紙に用いられる原料パルプとしては、特に限定されるものではなく、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)などの機械パルプ;茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ又は離解・脱墨・漂白古紙パルプ;ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的又は機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプを使用することができる。
これらの原料パルプの中でも、基紙としての各種品質特性等をバランスよく効率的に達成するために、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)等のバージンパルプ、または、上白古紙、ケント古紙、茶古紙、クラフト封筒古紙から製造された古紙パルプが好ましい。なお、原料パルプを選択する際には、古紙パルプを可能な限り多く配合することが、エネルギー原単位や環境に与える負荷の軽減から好ましい。
(内添サイズ剤)
当該感圧複写用顕色シートの基紙には、サイズ性を向上させるために内添サイズ剤が含有されることが好ましい。この内添サイズ剤としては、特に限定されるものではなく、ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸、アルキルケテンダイマー、スチレンアクリル系サイズ剤、各種エマルジョンサイズ剤等の公知の種々の内添サイズ剤を使用することができる。これらの中でも、印刷時の波打ちを防止する効果が高いアルキルケテンダイマーが特に好ましい。
基紙に対する上記内添サイズ剤の含有率としては、0.01質量%以上1.0質量%以下が好ましく、0.02質量%以上0.5質量%以下がより好ましく、0.04質量%以上0.3質量%以下が特に好ましい。内添サイズ剤の添加量が上記範囲未満の場合、インクジェットインクを基紙が吸収し易くなってインクの裏抜け等が発生するおそれがある。逆に、内添サイズ剤の添加量が上記範囲を超える場合、抄紙工程において、サイズ剤内の油脂成分がドライヤー表面に付着して被膜することにより、基紙表面の光沢度及び平滑度が低下するおそれがある。また、抄紙工程内におけるスケール発生の原因となり、異物欠陥が発生するおそれがある。
(外添サイズ剤)
当該感圧複写用顕色シートの基紙の表面には、サイズ性を向上させるために外添サイズ剤が塗布されることが好ましい。外添サイズ剤を塗布した上に顕色層を形成することによって、インクの裏抜け効果をさらに向上させることができる。この外添サイズ剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、アクリル酸エステル、オレフィン系重合体、スチレン系重合体、アクリレート系重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、アルキルケテンダイマー、スチレン−アクリル系共重合体、アニオン系共重合体とカチオン系共重合体の複合材料、オレフィン−マレイン酸共重合体、澱粉等の公知の種々の外添サイズ剤を使用することができる。これらの中でも、印刷時の波打ちを防止する効果が高いオレフィン系重合体が特に好ましい。
上記外添サイズ剤の塗工量としては、絶乾パルプに対して、0.10質量%以上1.0質量%以下が好ましく、0.20質量%以上0.50質量%以下がより好ましい。外添サイズ剤の塗工量が上記範囲未満の場合、インクジェットインクを基紙が吸収し易くなってインクの裏抜け等が発生するおそれがある。逆に、外添サイズ剤の塗工量が上記範囲を超える場合、均一に顕色層を形成することができず、文字等が鮮明に複写されないおそれがある。
本発明においては、上述のとおり、顕色層の裏側にバインダーが沈み込んでバリア性が高くなるが、このバインダーが基紙にまで浸透してバリア性が低下しないよう、原紙には上述の種類及び量の内添サイズ剤及び外添サイズ剤を添加することが好ましい。
(その他の填料)
当該感圧複写用顕色シートの基紙には、上記原料パルプに、上記サイズ剤以外の内添の填料として従来製紙用途で用いられている填料を適宜添加することができる。この填料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、クレー、焼成クレー、合成ゼオライト、シリカ等の無機填料や、ポリスチレンラテックス、尿素ホルマリン樹脂等が挙げられる。
基紙に対する上記填料の含有率は特に限定されるものではないが、2質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。填料の含有率が上記範囲未満の場合、毛羽立ちやラフニングが発生するおそれや、吸水性が高くなってインクの裏抜け等が発生するおそれがある。逆に、填料の含有率が上記範囲を超える場合、パルプ繊維同士の結合が阻害されて剛度、引張強度、引裂強度等が低下するおそれがあり、特にブレード塗工のような押圧下で塗工する場合は、断紙が多発する可能性がある。なお、填料の含有率は、JIS−P8251「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に準じて測定した灰分含有量から算出される値である。
また、上記原料パルプには、本発明の効果を損なわない範囲で、サイズ剤及び填料以外で、従来製紙用途で用いられている各種のアニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤等の各種抄紙用内添助剤、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤を適宜添加することができる。
<顕色層>
当該感圧複写用顕色シートにおいては、基紙の表面側に、顔料、顕色剤及びバインダーを主成分とする塗工液を塗工して顕色層が形成される。なお、顕色層はその一部が基紙に含浸されていてもよい。
(顔料)
上記顕色層に用いる顔料としては、従来製紙用途で用いられている無機顔料及び有機顔料を使用することができる。具体的には、例えば、クレー(カオリン、ろう石)、炭酸カルシウム、タルク、サチンホワイト、亜硫酸カルシウム、石膏、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、焼成カオリン、構造化カオリン、珪藻土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ベントナイト、セリサイト、ポリスチレン系樹脂微粒子、尿素ホルマリン系樹脂微粒子、微小中空粒子、多孔質微粒子、シリカ複合無機粒子等を挙げることができ、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して配合することができる。これらの中でも、多孔性の高い、炭酸カルシウム、クレー及びシリカ複合無機粒子を顕色層に含有させることが特に好ましい。
上記炭酸カルシウムとしては、軽質炭酸カルシウム及び重質炭酸カルシウムのいずれをも用いることができるが、後述する紡錘形状を有する軽質炭酸カルシウムが好ましい。また、上記シリカ複合無機粒子としては、シリカとシリカ以外の無機粒子とを複合させたものであれば特に限定されるものではなく、例えば、シリカ−炭酸カルシウム複合粒子、シリカ−二酸化チタン複合粒子、シリカと再生粒子とを複合させたシリカ複合再生粒子等を用いることができる。このシリカ複合再生粒子としては、製紙スラッジや脱墨フロスを脱水、乾燥、焼成、粉砕等して得られたカルシウム、シリカ、アルミナ等を主成分とする再生粒子にシリカを複合させたものを用いることができる。
本発明で顕色層に用いる顔料の形状は、針状、柱状、立方状よりも、紡錘形状であると顕色層のポーラス性を向上しやすいため好ましく、顕色層の顔料全量に対する紡錘形状の顔料の割合が60質量%以上であることが好ましい。また、顔料の平均短径としては、0.1μm以上3.0μm以下が好ましく、0.1μm以上0.5μm以下がより好ましい。さらに平均長径としては、0.5μm以上7.0μm以下が好ましく、1.5μm以上2.5μm以下がより好ましい。平均短径が上記範囲未満の場合、顕色層の高密度化によって印字濃度が低下しやすくなるだけでなく、バインダーの浸透性が低下して顕色層の裏側にバインダーが浸透しにくくなり、バリア性が低下するおそれがある。逆に、平均短径が上記範囲を超える場合、顔料の形状が球状になってポーラス構造が十分得られず、インク吸収性が低下して滲みが発生しやすくなるだけでなく、上述のとおりバインダーの浸透性が低下して顕色層の裏側にバインダーが浸透しにくくなり、バリア性が低下するおそれがある。一方で、平均長径が上記範囲未満の場合も、顕色層の高密度化によって印字濃度が低下しやすくなるだけでなく、上述のとおりバインダーの浸透性が低下して顕色層の裏側にバインダーが浸透しにくくなり、バリア性が低下するおそれがある。逆に、平均長径が上記範囲を超える場合、顔料の形状が柱状になってポーラス構造が十分得られず、インク吸収性が低下して滲みが発生しやすくなるだけでなく、顕色層の表面粗さが大きくなって、印刷及び複写される画像の鮮明性が低下するおそれがある。なお、平均長径とは、電子顕微鏡写真において電子ノギスを用いて測定した粒子の最も長い弦の長さの平均値であり、平均短径とは、同じく最も短い弦の長さの平均値である。
(顕色剤)
上記顕色層に用いる顕色剤としては、感圧複写紙の分野で通常使用される顕色剤を適宜選択することができる。具体的には、例えば、活性白土、酸性白土、アタパルジャイト等の無機顕色剤や、フェノール樹脂(フェノールホルムアルデヒド樹脂、フェノールアセトアルデヒド樹脂、フェノールアセチレン樹脂、テルペンフェノール樹脂等)及びその多価金属塩、サリチル酸、サリチル酸誘導体、サリチル酸含有共重合体及びこれらの多価金属塩等の有機顕色剤を挙げることができ、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して配合することができる。また、これらの中でも、発色濃度が高く、耐水性、耐光性及び経時安定性が良好であることから、特にサリチル酸誘導体及びその多価金属塩が特に好ましい。
サリチル酸誘導体、サリチル酸含有共重合体及びこれらの多価金属塩としては、例えば、サリチル酸塩、3−メチルサリチル酸、6−エチルサリチル酸塩、5−イソプロピルブチルサリチル酸塩、5−sec−ブチルサリチル酸、5−tert−ブチルサリチル酸、5−tert−アミルサリチル酸、5−シクロヘキシルサリチル酸、5−n−オクチルサリチル酸、5−tert−シクロヘキシルサリチル酸、5−tert−オクチルサリチル酸、5−イソノニルサリチル酸、3−イソドデシルサリチル酸、5−イソドデシルサリチル酸、5−イソペンタデシルサリチル酸、4−メトキシサルチル酸、6−メトキシサルチル酸、5−エトキシサルチル酸、6−イソプロポキシサルチル酸、4−n−ヘキシルオキシサルチル酸、4−n−デシルオキシサルチル酸、5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3,5−ジイソドデシルサリチル酸、3−メチル−5−tert−ノニルサリチル酸、3−tert−ブチルー5−イソノニルサリチル酸、3−イソノニル−5−tert−ブチルサリチル酸、3−イソドシル−5−tert−ブチルサリチル酸、ノニルサリチル酸、3−イソドデシル−6−メチルサリチル酸、3−sec−オクチル−5−メチルサリチル酸、3−イソノニル−5−フェニルサリチル酸、3−フェニル−5−イソノニルサリチル酸、3−メチル−5−(α−メチルベンジル)−サリチル酸、3−メチル−5(α,α−ジメチルベンジル)−サリチル酸、3−イソノニル−5−(α−メチルベンジル)−サリチル酸、3−(α−メチルベンジル)−5−tert−ブチルサリチル酸、3−ベンジルサリチル酸、3−(α−メチルベンジル)サリチル酸、5−(α−メチルベンジル)サリチル酸、3−(α,α−ジメチルベンジル)−サリチル酸、4−(α,α−ジメチルベンジル)−サリチル酸、5−(α,α−ジメチルベンジル)−サリチル酸、3,5−ジ(α−メチルベンジル)−サリチル酸、3,5−(α,α−ジメチルベンジル)−サリチル酸、3−(α−メチルベンジル)−5−(α,α−ジメチルベンジル)サリチル酸、3−(1’,3’−ジフェニルブチル)サリチル酸、5−(1’,3’−ジフェニルブチル)サリチル酸、3−〔α−メチル−4’−(α’−メチルベンジル)ベンジル〕サリチル酸、5−〔α−メチル−4’−(α’−メチルベンジル)ベンジル〕サリチル酸、3−(α−メチルベンジル)−5−(1’,3’−ビフェニルブチル)サリチル酸、3−(1’,3’−ビフェニルブチル)−5−(α−メチルベンジル)、3−フェニルサリチル酸、5−フェニルサリチル酸、3−(α,α−ジメチルベンジル)−5−フェニルサリチル酸、3−フェニル−5−(α−メチルベンジル)サリチル酸、5−(4’−メチルフェニル)サリチル酸、5−(4’−メトキシフェニル)サリチル酸、5−フルオロサリチル酸、3−クロロサリチル酸、4−クロロサリチル酸、5−クロロサリチル酸、5−ブロモサリチル酸、3−クロロ−5−(α−メチルベンジル)サリチル酸、3−(α−メチルベンジル)−5−クロロサリチル酸、2−ヒドロキシ−1−ベンジル−3−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−(α−メチルベンジル)−1−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−7−(α,α−ジメチルベンジル)−2−ナフトエ酸等を挙げることができる。
顕色剤の含有量としては、顔料100質量部に対して10質量部以上25質量部以下が好ましく、12質量部以上23質量部以下がより好ましい。顕色剤の含有量が上記範囲未満の場合、当該感圧複写用顕色シートが十分な複写機能を有さないおそれがある。逆に、顕色剤の含有量が上記範囲を超える場合、コストが上昇するばかりで呈色性能が向上しないほか、顕色層の強度等が低下するおそれがある。
(サイズ剤)
本発明では、発色剤やインクジェットインクの滲みを抑える目的で、サイズ剤を顕色層に含有させることが好ましい。このサイズ剤としては、特に限定されるものではなく、ロジン系サイズ剤、ワックス系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸、アルキルケテンダイマー(AKD)、スチレンアクリル系サイズ剤、脂肪酸エステル系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、各種エマルジョンサイズ剤等の公知の種々のサイズ剤を用いることができる。これらの中でも、顕色層を乾燥した際にサイズ剤が顕色層表面にブリードアウトするタイプであるワックス系サイズ剤、AKD、オレフィン系サイズ剤が好ましい。サイズ剤がブリードアウトするタイプであることによって、サイズ剤のブリードアウトに伴い、顕色剤の一部が顕色層の表層に移動するため、顕色剤と発色剤との反応が表層で発生しやすくなり、より発色性に優れた感圧複写用顕色シートが得られる。また、上記ブリードアウトするタイプのサイズ剤の中でも、弱カチオン性を有しインクジェット印字のインクの定着性を向上させることができるAKDが特に好ましい。
顕色層におけるサイズ剤の含有量としては、固形分換算で0.1質量%以上1.0質量%以下が好ましく、0.2質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。サイズ剤の含有量が上記範囲未満の場合、滲み防止効果及びサイズ剤のブリードアウトによる顕色剤の移動効果が十分に得られないおそれがある。逆に、サイズ剤の含有量が上記範囲を超える場合、コストが上昇するばかりでなく滲み防止効果が向上しないほか、インクの乾燥性が低下するおそれがある。
特に本発明においては、上述の紡錘形状の顔料を用い、かつAKDを顕色層に含有させることによって、よりポーラスな顕色層表面に、AKDのブリードアウトに伴う顕色剤が集まるため、発色剤との反応が表層で速やかに進み、より発色性に優れた感圧複写用顕色シートを得ることができる。加えて、塗料に配合するカチオン成分及び顕色剤の使用量を最小限に抑制でき、これらの成分を塗料に含有することで塗料の増粘を抑え、塗料のチキソ性をさらに向上させることができるため、インクジェットインクの滲み・乾燥性及び発色性を特に向上させることができる。加えて、塗料のチキソ性を向上することで異物の発生を抑制でき、生産性をも向上することができる。
(バインダー)
上記顕色層に用いるバインダーとしては、従来製紙用途で用いられているバインダーを使用することができる。具体的には、例えば、蛋白質類(カゼイン、大豆蛋白等)、ラテックス類(メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン−メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス等の共役ジエン系ラテックス、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体ラテックス若しくは共重合体ラテックス等のアクリル系ラテックス、エチレン−酢酸ビニル重合体ラテックス等のビニル系ラテックス、これらの各種共重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性したアルカリ部分溶解性又は非溶解性のラテックス等)、合成樹脂系バインダー(ポリビニルアルコール、オレフィン−無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂等)等を挙げることができ、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
バインダーの含有量としては、顔料100質量部に対して4質量部以上30質量部以下が好ましく、5質量部以上25質量部以下がより好ましい。バインダーの含有量が上記範囲未満の場合、顕色剤を基紙上に結着させることが困難になるおそれや、インク滲みの抑制効果等が発揮されにくくなるおそれがある。逆に、バインダーの含有量が上記範囲を超える場合、顕色層を形成する塗工液の粘性が高くなって基紙への塗工が困難になるおそれがある。
(チキソ性付与剤)
本発明では、顕色層を形成する塗工液(上記顔料、顕色剤、サイズ剤及びバインダーを含む組成物)にチキソ性を付与する目的で、顕色層がチキソ性付与剤を含有することが好ましい。顕色層を形成する塗工液にチキソ性を付与する目的は、次の通りである。顕色層がチキソ性を有する場合、塗工時にブレード・ロッド等からせん断力を受けることによって顕色層表面側の粘度が低下し、顔料を残して高分子成分であるバインダーが基紙側に沈降した後に不動化する。これにより、顕色層の裏面側(基紙側)においては高分子濃度が高くなってバリア性が強くなるため、基紙側へのインクの浸透が防止される。一方で、表面側では高分子が少なくなるため顔料によるポーラス形状が形成される。その結果、当該感圧複写用顕色シートは、インクジェットインクの滲みを抑制できるとともに、インクジェット印字のインクの裏抜けを防止でき、また、高いインクの乾燥性を有する。さらに、上記バリア性によって顕色層の強度、印刷光沢、発色濃度及びセット性が向上するほか、ポーラス構造によって発色剤の顕色層への浸透性が高くなるため、当該感圧複写用顕色シートの感圧による呈色速度を向上させることができる。なお、「チキソ性」とは、一定の力を加えると粘度が低下し、静置すると元の粘度に回復する性質をいう。
上記チキソ性付与剤としては、例えば、澱粉類やセルロース誘導体等を挙げることができる。これらのチキソ性付与剤の中でも、チキソ性が高いタピオカ澱粉が特に好ましい。なお、チキソ性付与剤は、上記バインダーと兼用して配合させてもよい。
上記タピオカ澱粉が含有するアミロペクチンとアミロースとの質量比としては、10:90以上20:80以下が好ましく、15:85以上19:81以下がより好ましい。質量比が10:90未満の場合、十分なチキソ性が得られにくく、バインダーの浸透性が不足しバリア性が弱くなり、インクジェット印字における滲みや乾燥性が低下するおそれがある。逆に、質量比が20:80を超える場合、チキソ性は十分であるが、過度に塗料粘度が上昇し塗工性の問題が発生するおそれがある。なお、アミロペクチンおよびアミロースは、ヨウ素親和力測定法(電圧滴定法)により含有質量を測定することができる。
上記顕色層を形成する塗工液の濃度40質量%、温度25℃、せん断速度5×10−1におけるハイシェア粘度としては、25mPa・s以上200mPa・s以下が好ましく、50mPa・s以上100mPa・s以下がより好ましい。塗工液のハイシェア粘度が上記範囲未満の場合、塗工液のチキソ性が十分得られないおそれがある。逆に、ハイシェア粘度が上記範囲を超える場合、粘度が高すぎて、塗工時に顕色層内における高分子の移動が不十分となるおそれや、塗工液の塗工が困難になるおそれがある。なお、ハイシェア粘度はハーキュレス型粘度計を用いて計測される。
またタピオカ澱粉のカチオン化度としては、0.001〜0.004が好ましい。カチオン化度を上記範囲とすることによって、タピオカ澱粉が基紙表面に留まりやすくなるため、嵩高効果を高めることができる。なお、カチオン化度とは、ケルダール分析法に従って澱粉1分子中の窒素原子の含有量から窒素含有量を算出し、この窒素含有量及び重量平均分子量からグルコース残基1つあたりのカチオン基導入量を算出したものである。
チキソ性付与剤の含有量としては、顔料100質量部に対して10質量部以上20質量部以下が好ましく、12質量部以上18質量部以下がより好ましい。チキソ性付与剤の含有量が上記範囲未満の場合、顕色層を形成する塗工液に十分なチキソ性を付与できないおそれがある。逆に、チキソ性付与剤の含有量が上記範囲を超える場合、顕色層を形成する塗工液の粘性が高くなって基紙への塗工が困難になるおそれがある。
顕色層を形成する塗工液のチキソ性係数としては、2以上7以下が好ましく、3以上5以下がより好ましい。塗工液のチキソ性係数が上記範囲未満の場合、上述したバリア性向上効果及びポーラス構造形成効果が十分得られないおそれがある。逆に、塗工液のチキソ性係数が上記範囲を超える場合、塗工液の調製が困難になるおそれがある。なお、チキソ性係数とは、50℃において、せん断速度を徐々に上昇させた場合のせん断速度5×10−1における粘度を、せん断速度10×10−1における粘度で除した値であり、数値が大きいほどチキソ性が高いことを意味する。
(インク定着剤)
顕色層には、インクジェット印字のインクを定着させるためのインク定着剤を含有させることができるが、塗工液のゲル化や凝集化を防ぐ観点から、インク定着剤は含有させないことが好ましい。
(撥水剤)
顕色層にはさらに、ワックスエマルジョン、石油樹脂系エマルジョン、シリコーン系エマルジョン等の撥水剤を添加することで、顕色層の強度を向上させて、発色濃度等の印刷適性を向上させることができる。
(耐水化剤)
顕色層にはまた、ホルマリン、グリオキザール、クロム明バン、メラミン、メラミンホルマリン、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、尿素化合物等の各種公知の耐水化剤を配合することもできる。
顕色層には上述の成分の他に、その特性を損なわない範囲で従来公知の助剤を適宜添加してもよい。この助剤としては、例えば、顔料分散剤、pH調整剤、保水剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、着色剤、湿潤剤、蛍光染料、紫外線吸収剤等を挙げることができる。
(塗工量)
顕色層を形成する塗工液の塗工量は、基紙に対して固形分換算で、5.0質量%以上15.0質量%以下が好ましく、6.0質量%以上8.0質量%以下がより好ましい。塗工量が上記範囲未満の場合、当該感圧複写用顕色シートが十分な複写機能を有さないおそれがあるほか、塗工液がチキソ性を有しても高分子の流動が発生しないおそれがある。逆に、塗工量が上記範囲を超える場合、当該感圧複写用顕色シートの剛度、引張強度、引裂強度等が低下するおそれがある。
(細孔比率)
顕色層の直径1μm以下の細孔比率としては、5%以上50%以下が好ましく、10%以上18%以下がより好ましい。顕色層の直径1μm以下の細孔比率が上記範囲未満の場合、発色剤及びインクの吸収性が低下し、当該感圧複写用顕色シートの呈色速度やインクジェットインクの乾燥性、印刷適性等が低下するおそれがある。逆に、顕色層の直径1μm以下の細孔比率が上記範囲を超える場合、発色剤及びインクの吸収性が高くなって、発色剤及びインクの滲みや裏抜けが生じやすくなるおそれがある。なお、細孔の直径は、水銀圧入方式によって測定される。
(比表面積)
顕色層の比表面積としては、10m/g以上25m/g以下が好ましく、15m/g以上20m/g以下がより好ましい。顕色層の比表面積が上記範囲未満の場合、発色剤及びインクの吸収性が低下し、当該感圧複写用顕色シートの呈色速度やインクジェットインクの乾燥性、印刷適性等が低下するおそれがある。逆に、顕色層の比表面積が上記範囲を超える場合、発色剤及びインクの吸収性が高くなって、発色剤及びインクの滲みや裏抜けが生じやすくなるおそれがある。なお、比表面積は、水銀圧入方式によって測定される。
(静的接触角)
当該感圧複写用顕色シートの表面における蒸留水の静的接触角は、50度以上90度以下であるが、60度以上80度以下とすることがより好ましい。静的接触角が上記範囲未満の場合、発色剤及びインクの吸収性が高くなって、発色剤及びインクの滲みや裏抜けが生じやすくなるおそれがある。逆に、静的接触角が上記範囲を超える場合、発色剤及びインクの吸収性が低下し、当該感圧複写用顕色シートの呈色速度やインクジェットインクの乾燥性、印刷適性等が低下するおそれがある。なお、静的接触角とは、1.4μlの蒸留水の液滴を表面に着滴させ、着滴10秒後の接触角を計測したものである。
(表面粗さ)
当該感圧複写用顕色シートの表面の表面粗さとしては、0.5μm以上2.0μm以下が好ましく、0.8μm以上1.5μm以下がより好ましい。表面粗さが上記範囲を超える場合、印刷及び複写される画像の鮮明性が低下するおそれがある。逆に、表面粗さが上記範囲未満の場合、当該感圧複写用顕色シートの製造が困難になるおそれがある。表面粗さとは、レーザー顕微鏡により測定される算術平均粗さである。
<感圧複写用顕色シートの製造方法>
当該感圧複写用顕色シートの基紙は、通常の製紙に用いられる抄紙方法によって製造することができる。この抄紙方法としては、特に限定されるものではなく、公知のワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート及びコーターパートを有する抄紙工程を用いることができる。
上記ワイヤーパートで用いられるフォーマーとしては、例えば、長網フォーマー、長網フォーマーとオントップフォーマーとを組み合わせたもの、ツインワイヤーフォーマー等を用いることができる。これらの中でも、ヘッドボックスから噴出された紙料を2枚のワイヤーで挟み込んで両面から脱水するギャップフォーマーが特に好ましい。このギャップフォーマーを用いることによって、湿紙に表裏差が生じることを防止することができる。
上記プレスパートに用いられるプレス機としては、例えば、ストレートスルー型、インバー型、リバース型等を挙げることができ、これらの中から1種又は2種以上の組合せを適宜用いることができる。これらの中でも、紙を保持しやすく断紙が生じにくいオープンドロー部を有さないストレートスルー型が特に好ましい。また、上記プレスパートに用いられる脱水方式としては、例えば、サクションロール方式、グルーブドプレス方式、シュープレス方式等を用いることができる。これらの中でも、脱水性及び平滑性を向上することができるシュープレス方式が特に好ましい。
上記ドライヤーパートに用いられるドライヤーとしては、例えばシングルデッキドライヤー、ダブルデッキドライヤー等を用いることができる。これらの中でも、断紙が生じにくく乾燥の効率が高いオープンドロー部を有さないシングルデッキドライヤーが特に好ましい。
上記コーターパートにおいて、基紙に顕色層を形成する塗工液を塗工する方法としては、塗工液にブレード・ロッド等によってせん断力が加わるブレードコーター又はショートドウェルコーターを用いることができる。なお、外添サイズ剤を基紙表面に塗布する場合は、外添サイズ剤を塗布した上から顕色層を塗工することができる。
また、上記顕色層を形成する塗工液の塗工速度としては、300m/min以上1,000m/min以下であることが好ましい。塗工速度が上記範囲未満の場合、塗工液に十分なせん断力が加わらず、塗工液がチキソ性を有しても高分子の流動が発生しないおそれがある。逆に、塗工速度が上記範囲を超える場合、均質な顕色層が形成できないおそれがある。
なお、当該感圧複写用顕色シートは、上記基紙の裏面側に積層され、発色剤及びバインダーを主成分とする発色層をさらに有してもよい。このように裏面側に発色層を有する当該感圧複写用顕色シートは、感圧複写紙の中用紙として好適に用いることができる。
<感圧複写紙>
このように当該感圧複写用顕色シートは、インクジェット印字のインクの滲みが抑えられ、インクの裏抜けが生じにくい。そのため、当該感圧複写用顕色シートを下用紙又は中用紙として備える感圧複写紙は、インクジェット印字で高品質な画像を下用紙又は中用紙に印刷することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例で行った品質及び性能の評価方法は以下のとおりである。
[静的接触角(単位:度)]
1.4μlの蒸留水の液滴をシート表面に着滴させ、着滴10秒後の接触角を接触角測定装置(型番:DCA‐VZ 協和界面科学株式会社製)を用いて測定した。
[滲み]
複写用顕色シート表面にインクジェットインク(サイテックス1040)及びプリンタ(型番:MP520 キャノン株式会社製)を用いてインクジェット印字を行った場合の滲みを以下の基準で目視評価した。
(評価基準)
◎:滲みが発生しない。
○:若干滲みが発生する。
△:多少滲みが発生する。
×:大きな滲みが発生し、実使用に適さない。
[裏抜け]
複写用顕色シート表面に上記条件でインクジェット印字を行った場合のインク裏抜けを以下の基準で目視評価した。
(評価基準)
◎:インクの裏抜けがなく、裏面から印字が見えない。
○:インクの裏抜けはあるが、裏面からでは印字内容が分からない。
△:インクの裏抜けがあり、裏面から印字内容が分かる。
×:インクの裏抜けがあり、裏面からも印字内容がはっきりと分かり、実使用に適さない。
[乾燥性]
複写用顕色シート表面に上記条件のインクジェット印字でベタ部印字を行った直後に印字面をテッシュペーパーで擦り、紙面上のインクの伸びを以下の基準で目視評価した。
(評価基準)
◎:拭取りした紙面にインクの伸びがない。
○:拭取りした紙面にインクの伸びが殆どない。
△:拭取りした紙面にインクの伸びが少しある。
×:拭取りした紙面にインクの伸びがあり、実使用に適さない。
[印字濃度]
複写用顕色シート表面に上記条件のインクジェット印字を行った場合の印字濃度を濃度計(型番:DM−620 大日本スクリーン製造株式会社製)を用いて測定し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
◎:濃度が2.6以上であり、濃度が高い。
○:濃度が2.4以上2.6未満であり、実使用できるレベル。
△:濃度が2.2以上2.4未満であり、実使用できる下限レベル。
[発色濃度]
複写用顕色シートの表面側に上用紙及び中用紙を重ね、ドットプリンタ(型番:PC−PR−201/65 日本電気株式会社製)で上用紙に印字した場合の印字濃度を濃度計(型番:DM−620 大日本スクリーン製造株式会社製)を用いて測定し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
◎:濃度が0.68以上であり、濃度が高い。
○:濃度が0.63以上0.68未満であり、実使用できるレベル。
[実施例1]
原料パルプとして、LBKP90質量%、古紙パルプ10質量%を混合した原料パルプスラリーを用いて、坪量40g/mの基紙を抄紙した。
次に、顔料として紡錘形状を有する軽質炭酸カルシウム、顕色剤(LR−190 三光株式会社製)、バインダーとしてスチレン−ブタジエンラテックス(S6 日本ゼオン株式会社製)、チキソ性付与剤としてタピオカ澱粉(フィルムコート370 日本エヌネスシー株式会社製、アミロペクチンとアミロースとの質量比は17:83)、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(SE2380 星光PMC株式会社製)を混合させた塗工液を調製した。塗工液のチキソ性係数は4.1であった。
上記軽質炭酸カルシウム粒子の平均短径は0.2μm、平均長径は2.0μmであった。また、上記顕色剤、スチレン−ブタジエンラテックス及びタピオカ澱粉は、軽質炭酸カルシウム粒子100質量部に対して、それぞれ18質量部、10質量部及び15質量部配合し、アルキルケテンダイマーは上記塗工液に固形分換算で0.25質量%配合した。
上記基紙の表面にブレードコーターを用いて基紙に対して固形分換算で8.0質量%の量の塗工液を塗工して顕色層を形成し、実施例1の複写用顕色シートを得た。なお、表面(顕色層側の面)における静的接触角は70度であった。
[実施例2]
顕色層にAKDの代わりにワックス系サイズ剤(サイズパインW 116H 荒川化学工業株式会社製)を添加した点以外の条件は実施例1と同様にして、実施例2の複写用顕色シートを得た。
[実施例3]
顕色層にAKDの代わりにオレフィン系サイズ剤(ポリマロン482S 荒川化学工業株式会社製)を添加した点以外の条件は実施例1と同様にして、実施例3の複写用顕色シートを得た。
[実施例4、5及び比較例2]
顕色層におけるAKDの含有率をそれぞれ表1に示す値とし、それ以外の条件は実施例1と同様にして、実施例4、5及び比較例2の複写用顕色シートを得た。
[実施例6]
顕色層にAKDの代わりに合成高分子系サイズ剤(ハーサイズKN−500 ハリマ化成株式会社製)を添加した点以外の条件は実施例1と同様にして、実施例3の複写用顕色シートを得た。なお、合成高分子系サイズ剤はブリードアウトしないタイプのサイズ剤である。
[実施例7〜9]
実施例7では軽質炭酸カルシウムの代わりに針状顔料としてタマパールTP−123CS(奥多摩工業株式会社製)を、実施例8では軽質炭酸カルシウムの代わりに柱状顔料としてタマパールTP−123(奥多摩工業株式会社製)を、実施例9では軽質炭酸カルシウムの代わりに立方状顔料としてBrilliant−15(白石カルシウム株式会社製)を用い、それ以外の条件は実施例1と同様にして、実施例7〜9の複写用顕色シートを得た。
[実施例10〜13]
軽質炭酸カルシウムの形状をそれぞれ表1に示す通りとし、それ以外の条件は実施例1と同様にして、実施例10〜13の複写用顕色シートを得た。
[比較例1]
顕色層にサイズ剤を含有させない以外の条件は実施例1と同様にして、比較例1の複写用顕色シートを得た。
上述した方法にて得られた各複写用顕色シートの品質及び性能を評価した。評価結果を表1に示す。
Figure 0005941730
表1に示されるように、実施例1〜13の複写用顕色シートは、インクジェットインクの滲みが抑えられるとともに、インクの裏抜けが生じにくく、一定のインクの乾燥性も有することがわかる。
以上のように、本発明の感圧複写用顕色シートは、インクジェット印字のインクの滲みが抑えられ、インクの裏抜けが生じにくい。そのため、インクジェット印字によって画像を鮮明に印刷することができる。

Claims (4)

  1. 基紙と、この基紙の表面側に形成され、顔料、顕色剤及びバインダーを主成分とする顕色層とを備える感圧複写用顕色シートであって、
    表面における蒸留水の静的接触角が50度以上90度以下であり、
    上記顕色層がサイズ剤を含有し、このサイズ剤がアルキルケテンダイマーであり、顕色層におけるサイズ剤の含有量が固形分換算で0.1質量%以上0.5質量%以下であり、
    上記顕色層がチキソ性付与剤としてタピオカ澱粉をさらに含有することを特徴とする感圧複写用顕色シート。
  2. 上記サイズ剤がブリードアウトするタイプである請求項1に記載の感圧複写用顕色シート。
  3. 上記顔料が紡錘形状を有する顔料を含み、この顔料の平均短径が0.1μm以上3.0μm以下、平均長径が0.5μm以上7.0μm以下である請求項1又は請求項2に記載の感圧複写用顕色シート。
  4. 請求項1、請求項2又は請求項3に記載の感圧複写用顕色シートを備える感圧複写紙。
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