JP2004268470A - インクジェット記録シート - Google Patents
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Abstract
【課題】水性インクを用いるインクジェット記録方式において、画像の発色性、鮮明性に優れた高品質インクジェット画像が得られ、画像記録後シートの波打ちが少なく、高平滑感のあるインクジェット記録シートを提供すること。
【解決手段】天然パルプを主成分とする紙を支持体として、少なくとも片面にインク受理層を塗設してなるインクジェット記録シートにおいて、該支持体の超音波伝達速度縦横比が1.4以下で、該インクジェット記録シートがJ.TAPPI紙パルプ試験方法No.27 B法に基づく紙横目方向のフェンチェル伸縮試験機による1分後の浸水伸度が1.7%以下であることを特徴とするインクジェット記録シート。
【選択図】 なし
【解決手段】天然パルプを主成分とする紙を支持体として、少なくとも片面にインク受理層を塗設してなるインクジェット記録シートにおいて、該支持体の超音波伝達速度縦横比が1.4以下で、該インクジェット記録シートがJ.TAPPI紙パルプ試験方法No.27 B法に基づく紙横目方向のフェンチェル伸縮試験機による1分後の浸水伸度が1.7%以下であることを特徴とするインクジェット記録シート。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録シートに関するものであり、更に詳しくは、天然パルプを主成分とする紙を支持体として、その上にインク受理層を設けることにより、インクジェット記録方式で高品質な画像の形成を可能にし、記録後のシートの波打ちが少なく、高平滑感のあるインクジェット記録シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、種々の作動原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙等の被記録材に付着させ、画像や文字等を記録を行うものであるが、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きい、現像及び定着が不要等の特徴があり、漢字を含めた各種図形及びカラー画像等の記録装置として種々の用途において急速に普及している。また、多色インクジェット方式により形成される画像は、製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画に比較して、遜色のない記録を得ることが可能である。更に作成部数が少なくて済む用途に於ては、写真技術によるよりも安価であることからフルカラー画像記録分野にまで広く応用されつつある。
【0003】
更に、用途の多様化に伴って、ポスターやPOPアートに使用されたり、裏面に粘着剤層を設けて、価格表示用ラベル、商品表示(バーコード)用ラベル、品質表示用ラベル、計量表示用ラベル、広告宣伝用ラベル(ステッカー)等のラベル用途、広い範囲の被着体に良く接着し、貼り付け作業が簡単な為、他面に粘着層を介して感熱特性、磁気特性、オフセット印刷特性を有するシート等と貼り合わせて複合した機能を付加させることも可能となることから、切符、定期券、各種カード等への応用も広がりつつある。
【0004】
インクは、溶剤タイプと水性タイプに分類されるが、価格、安全性、取り扱いの容易性等から水性インクが多く、特にこのような用途の多様化により、水性インクが抱える問題である印字面に水が付着した際に発生するインクの滲み出しの防止が重要な課題となっている。しかし、この課題に対する取り組みは充分に行われていないのが現状であり、インク吸収体としての機能を有する木材パルプを主体成分とする支持体をインクジェット記録シートの媒体とする該記録シートにおいては、更に重要且つ早期に解決しなければならない課題となっている。
【0005】
インクジェット記録方式で使用される記録シートとしては、通常の印刷や筆記に使われる上質紙やコーテッド紙を使うべく、装置やインク組成の面から努力がなされてきた。しかし、装置の高速化・高精細化或いはフルカラー化等インクジェット記録装置の性能の向上や用途の拡大に伴い、記録シートに対してもより高度な特性が要求されるようになった。即ち、当該記録シートとしては、印字ドットの濃度が高く、色調が明るく鮮やかであること、インクの吸収が早くて印字ドットが重なった場合においてもインクが流れ出したり滲んだりしないこと、印字ドットの横方向への拡散が均一で必要以上に大きくなく、且つ、周辺が滑らかでぼやけないこと、経時や環境で画質の変化がないこと、例えば、耐光性、耐水性、耐オゾン性に優れていること等が要求される。
【0006】
このような要求に対して、インク吸収性向上や印字ドットの拡散防止に対しては支持体上にインク受理層を設ける方法、インク受理層中におけるインク中の染料成分の分布状態が色彩性や鮮鋭性に影響することに着目して、染料成分を吸着する特定の剤を用いる方法、耐光性、耐水性、耐オゾン性を向上させるために、塩基性オリゴマーを含有させること、基材中又は基材上の塗工層のポリビニルアミン共重合物を用いること等、従来からいくつかの提案が行われてきた。
【0007】
また、インクジェット記録装置が安価でしかも鮮鋭性や色彩性といった画像再現性や色再現性に優れた画像をパーソナルコンピューターレベルで簡単に得られることができるようになったことから、インクジェット記録装置は、特定の人に使用される特殊な記録装置から汎用の記録装置に変遷してきており、画像も印刷物や写真に匹敵するような品質のものが得られることから、自作の絵葉書やデジタル写真のプリンタとしての用途にも使われるようになっている。この場合は絵葉書や写真プリントのもつ質感や触感が要求されるようにもなった。更に、このような用途においては打ち込むインク量が多く、支持体に達するインク溶媒によって記録後のシートが波打ちを生じ、見栄えが悪くなるという問題も発生している。従って、これらの特性を確保することがインクジェット記録装置やインクジェット記録シートの必要条件となっているのが現状である。
【0008】
この波打ち現象を回避する手段として、支持体を充分厚くして支持体の伸縮を抑える方法などが一般的に行われる。また、支持体の伸縮を抑える為に、支持体を介して両面インク受理層を設ける方法、基紙を二層化する方法が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかしこれらの手法は、最近のインク吐出量が増大している記録装置に対しては完全に波打ちを回避することは難しい。又、支持体を厚くし、支持体の剛性で対応するには、かなりの厚さが必要となり、通常使用する記録シートの厚さである70〜300μmの範囲を大きく上回ることになる。その結果、支持体の剛性が高くなり該記録シートの柔軟性が欠如することと、支持体が厚いことからインクジェット記録装置内での搬送性が低下することになる。
【0009】
また、インク受理層の吸収容量を増加し、インクが支持体に達しないようにする方法が考えられる。しかし、インク受理層の吸収容量を高めるためには、該受理層のバインダー成分を減少させるか、該受理層の塗設量を増やす必要があり、これによりインク受理層と支持体の間の接着強度低下や画像を形成するドットの細りによる画像再現性の低下が発生するため良好な方法とはいえない。
【0010】
更に、印字されたインクが支持体に浸透しないように支持体表面にバリア層を設けたり、支持体表面にインクが浸透しないように耐水化する方法(例えば、特許文献3参照)が考えられる。しかし、これらの手法では該記録シートのインク吸収容量が低下し、インクの溢れや滲みが発生してしまい、良好な画質を得ることは難しい。
【0011】
【特許文献1】
特開平2−270588号公報
【特許文献2】
特開平6−155893号公報
【特許文献3】
特開平10−46498号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、水性インクを用いるインクジェット記録方式において、画像の発色性、鮮明性に優れた高品質のインクジェット画像が得られ、画像記録後のシートの波打ちが少なく、高平滑感のある見栄えの良いインクジェット記録シートを提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前述のような印字特性が良好で画像記録後の記録シートの波打ちを低減した性能を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、天然パルプを主成分とする支持体の超音波伝達速度縦横比が1.4以下で、インクジェット記録シートがJ.TAPPI紙パルプ試験方法No.27 B法に基づくフェンチェル伸縮試験機による紙横目方向の1分後の浸水伸度が1.7%以下であることで上記課題が解決された。
【0014】
該天然パルプがカッティング叩解によって、濾水度が200mlCSF以上500mlCSF以下であることが好ましい様態である。
【0015】
該支持体がポリビニルアルコール系サイズ剤、ポリアクリルアミド系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、スチレン・アクリル系サイズ剤の少なくとも一つを用いて表面サイズしてなることが好ましい様態である。
【0016】
該インク受理層に用いられる顔料が非晶質シリカ、アルミナ水和物、コロイダルシリカ、気相法シリカの少なくとも一つからなることが好ましい様態である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のインクジェット被記録材について、詳細に説明する。本発明に使用する天然パルプは、主に木材パルプである。木材パルプとしては、塩素、次亜塩素酸、二酸化塩素漂白の通常の漂白処理並びにアルカリ抽出もしくはアルカリ処理および必要に応じて過酸化水素、酸素などによる酸化漂白処理など、およびそれらの組み合わせ処理を施した針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、針葉樹広葉樹混合パルプの木材パルプが用いられ、クラフトパルプ、サルファイトパルプ、ソーダパルプなどの各種のもの、更には古紙パルプ等を用いることができる。これらのパルプのうち短繊維で平滑性の出やすいサルファイトパルプ、好ましくはサルファイト広葉樹パルプを多く用いる。具体的には、特開昭60−67940号記載もしくは例示の広葉樹パルプを60質量%以上、好ましくは75質量%以上用いることが好ましい。
【0018】
パルプの叩解条件としては、叩解機により長繊維分がなるべく少なくなるように叩解する。具体的には、例えばパルプの叩解は、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.52−89「紙及びパルプ繊維長試験方法」に準拠して測定される長さ加重平均繊維長を0.35mm〜0.90mm、好ましくは0.45mm〜0.80mm、更に好ましくは0.45mm〜0.70mm、繊維長1mm以下の累積重量が70%以上とする。
【0019】
パルプの叩解方法としては、コニカルタイプ、ドラムタイプ、ディスクタイプ等が挙げられるが、ディスクタイプリファイナーとしてダブルディスクリファイナーを用いたカッティング叩解が好ましい。ダブルディスクリファイナーを用いると繊維を粘状叩解(すりつぶし)からカッティング叩解(切断)まで支持体の要求品質に合ったプレートが選択できる。カッティング叩解によって粘状紙料とはならず遊離状紙料ができ易くなり、地合いの良い支持体を得ることができる。濾水度200mlCSF以上500mlCSF以下、好ましくは200mlCSF以上330mlCSF以下にする。
【0020】
本発明に用いられる支持体中に含有する乾燥紙力増強剤としてカチオン化澱粉、ポリアクリルアミド、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー乳化物、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロルヒドリン樹脂等は、紙料スラリー調整時に添加する。
【0021】
本発明に用いられるアルキルケテンダイマー乳化物は、パルプ100質量部に対して、ケテンダイマー分として0.1〜0.8質量部含有していることが好ましく、これより少ないと波打ち現象に効果がなくなることがあり、0.8質量%を越えると支持体とインク受理層との接着性が悪くなることがある。また、内添サイズ剤として、脂肪酸金属塩あるいは脂肪酸、エポキシ化高級脂肪酸アミド、アルケニルまたはアルキルコハク酸無水物乳化物、ロジン誘導体等を併用して用いることができる。
【0022】
本発明に用いられるポリアクリルアミドは、アニオン性、カチオン性あるいは両性のいずれも用いることができる。また、乾燥紙力増強剤として、カチオン化澱粉の他、ポリビニルアルコールや植物性ガラクトマンナン等を併用して用いることができる。
【0023】
本発明に用いられる支持体に含有できる成分は、填料として、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン等、定着剤として、塩化アルミニウム、硫酸バンド等の水溶性アルミニウム塩等、pH調整剤として、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、硫酸等を、その他特開昭63−204251号、特開平1−266537号等に記載もしくは例示の着色顔料、着色染料、蛍光増白剤などを適宜組み合わせられる。
【0024】
本発明に用いられる支持体は、ポリビニルアルコール系サイズ、ポリアクリルアミド系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、スチレン・アクリル系サイズ剤の少なくとも一つを用いて表面サイズしていることが好ましい。ポリビニールアルコール系サイズ剤としては、特開平1−266537号記載もしくは例示のポリビニルアルコール系ポリマーが挙げられる。
【0025】
その他表面サイズ剤としては、澱粉、各種水溶性ポリマー、親水性コロイドとして、特開平1−266537号記載もしくは例示の澱粉系ポリマー、ゼラチン系ポリマー、ポリアクリルアミド系ポリマー、セルロース系ポリマーなど、エマルジョン、ラテックス類として、特開昭55−4027号、特開平1−180538号記載もしくは例示のエチレンとアクリル酸(又はメタクリル酸)とを少なくとも構成要素とする共重合体のエマルジョンもしくはラテックス、スチレン・ブタジエン系、酢酸ビニル・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系共重合体及びそれらのカルボキシ変性共重合体のエマルジョンもしくはラテックス等を併用して用いることができる。
【0026】
また、表面サイズに含有できる成分は、帯電防止として、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩、塩化カルシウム、塩化バリウム等のアルカリ土類金属塩、コロイド状シリカ等のコロイド状金属酸化物、ポリスチレンスルホン酸等の有機帯電防止剤など、顔料として、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、酸化チタンなど、pH調整剤として、塩酸、リン酸、クエン酸、苛性ソーダなど、その他前記した着色顔料、着色染料、蛍光増白剤などの添加剤を適宜組み合わせられる。
【0027】
表面サイズの方法は、サイズプレスもしくはタブサイズプレスあるいはブレード塗工、エアーナイフ塗工などの塗工によって乾燥塗工量として1.0g/m2以上塗設するのが好ましい。
【0028】
本発明の支持体は、抄紙後にマシンカレンダー、スーパーカレンダー、熱カレンダー等を用いてカレンダー処理を行っても構わない。カレンダー処理によって波打ちが少なく、高平滑感が高まる。
【0029】
本発明の支持体の厚みに関しては、20〜300μm程度が好ましい。300μmを越えると剛性が高くなり該記録シートの柔軟性が欠如するので、インクジェット記録装置内での搬送性が低下することがある。また、20μm未満になると印字特性(波打ち、インク吸収性等)に悪影響を与えることがあり、さらにインクジェット記録シートの剛性が低くなることからインクジェット記録装置内での搬送性が低下することがある。
【0030】
本発明の支持体の超音波伝達速度の縦目(抄紙機で紙及び板紙を抄造する場合における、紙の進行方向)と横目(抄紙機で紙及び板紙を抄造する場合における、紙の進行方向に直角な方向)との縦横比(縦目方向の超音波伝達速度/横目方向の超音波伝達速度)が1.4以下であることが好ましい。1.4を越えると画像記録をした場合、横目方向での伸びが縦目方向での伸びよりも大きくなる傾向が強くなり支持体の波打ちが起こりやすくなる。
【0031】
超音波伝達速度は、ヤング率と相関関係があり、代替指標とすることができる。縦目方向のヤング率と横目方向のヤング率の比をヤング率の縦横比とする。ヤング率が小さい程、水分(インク溶媒)による支持体の伸びが大きくなる。縦目方向と横目方向との伸びが異なる程(ヤング率の縦横比が大きい程)支持体が伸びた時に縦目方向と横目方向とのひずみが大きくなり、支持体に波打ちが起こり易くなる。叩解後のパルプ繊維は、繊維の長さ方向よりも幅方向のヤング率は低く伸びが大きい。従って、支持体の繊維配向性がヤング率の縦横比に影響を及ぼす。繊維配向性が弱い程、ヤング率の縦横比は1に近づく。
【0032】
波打ちは一般的に用紙に水分が浸透すると用紙を構成するパルプの伸び(膨潤)、応力緩和が起こり、局所的に凹凸が発生する為と考えられるが、本発明の支持体では吸水時の伸びが各方向で均等であるため、局所的に発生する凹凸が抑えられる為と推測される。
【0033】
本発明のインクジェット記録シートは、塗工タイプのインクジェット記録シートであり、前記支持体の少なくとも片面上にインク受理層が設けられる。本発明で言うインク受理層とは、インク中の溶媒を浸透させ、保持または吸収するような空隙を構成する主として顔料とバインダーからなる層や、インク中の溶媒に溶解または膨潤する主として高分子物質からなる層等を指す。これらの層は単独でもそれぞれの層が二層以上の多層でも、顔料層と高分子層の組み合わせでも本発明のインク受理層としてなんら問題はないが、顔料層の方がインク吸収容量が大きく好ましい。
【0034】
これらのインク受理層を前記支持体の上に設けた場合は、均一なインク受理層とすることができ、インクジェットプリンターを使用してインク受理層に画像を記録した場合、発色性、鮮明性に優れ、且つ記録後のシートの波打ちが少なく、高平滑性の記録シートが得られる。
【0035】
主として顔料とバインダーからなるインク受理層に使用する顔料としては、公知の白色顔料を一種類以上用いることができる。例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、チサンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、気相法シリカ、α,β,γ,δ−等のアルミニウム酸化物、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリスチレン、尿素樹脂、メラミン樹脂の有機顔料等の白色顔料を一種類以上用いることができる。中でも、多孔性無機顔料が好ましく、多孔性合成非晶質シリカ、多孔性炭酸マグネシウム、多孔性アルミナ等が挙げられ、特に細孔容量の大きい多孔性合成非晶質シリカが好ましい。通常これら顔料の平均粒子径は0.1〜20μmの範囲が好ましい。本発明において非晶質シリカ、アルミナ水和物、コロイダルシリカ、気相法シリカを用いると、発色性、鮮明性に優れた画像が得られる。
【0036】
インク受理層に使用するバインダーとしては、例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆、蛋白、ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸及びメタクリル酸の重合体又は共重合体等のアクリル系重合体ラテックス、無水マレイン酸、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、或いはこれら各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス、メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂系等の水性バインダー、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポチエステル樹脂、酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系バインダーが挙げられ、少なくとも1種以上で使用することができる。
【0037】
バインダーの総量は、目的とするインクジェット記録シートの特性に合わせて、適宜調整することが出来るが、一般には、顔料100質量%に対して、5〜80質量%が好ましい。また、従来公知の染料を定着する目的として添加するカチオン樹脂を併用することもできる。
【0038】
その他の添加剤として、顔料分散剤、増粘剤、レベリング剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、酸化防止剤、界面活性剤、消泡剤、抑泡剤、発泡剤、浸透剤、離型剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤及びpH調節剤等の各種添加剤を適宜組合わせて添加しても良い。
【0039】
インク中の溶媒に溶解または膨潤する主としては高分子物質からなるインク受理層を有する様態では、高分子物質としては、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、アクリル系ポリマー、ポリビニルアセタール系ポリマー等種々のインク吸収性ポリマーが挙げられる。これらの混合物や多層も本発明のインク受容層として使用可能である。
【0040】
インク受容層の塗工方法としては、スライドポッパーコーティング方式、カーテンコーティング方法、エクストルージョンコーティング方式、エアーナイフコーティング方式、ブレードコーティング方式、ロールコーティング方式、ロッドバーコーティング方式、及びグラビアコーティング方式、サイズプレスコーティング方式、スプレーコーティング方式等が挙げられる。これらコーティング方式は、オンマシン或いはオフマシンで行うことができる。また、塗工後にはカレンダーを用いて仕上げても良い。カレンダーの方法としては、マシンカレンダー方式、TGカレンダー方式、スーパーカレンダー方式、ソフトカレンダー方式、エンボスカレンダー方式等が挙げられる。
【0041】
本発明のインク受理層の塗工量としては、1〜40g/m2の範囲であることが好ましい。塗工量が1g/m2未満ではインク受理層によるインク吸収性が充分ではないため、吸収ムラ等が発生し、インクジェット性能に悪影響が生じることがある。また、40g/m2を越えるとインク受理層と支持体の間の接着強度が低下することがある。
【0042】
本発明における支持体のインク受容層を設ける反対側の面には、帯電防止、搬送性、カール防止、筆記性、糊付け性等のために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には、無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、硬化剤、顔料、滑剤、マット化剤、界面活性剤等を適宜組み合わせて添加しても良い。
【0043】
本発明のインクジェット記録シートの厚さは、50〜300μm程度が好ましい。300μmを越えると剛性が高くなり該記録シートの柔軟性が欠如するので、インクジェット記録装置内での搬送性が低下することがある。また、50μm未満になると印字特性(波打ち、インク吸収性等)に悪影響を与えることがあり、さらにインクジェット記録シートの剛性が低くなることからインクジェット記録装置内での搬送性が低下することがある。
【0044】
本発明のインクジェット記録シートは、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.27 B法に基づくフェンチェル伸縮試験機による横目方向(抄紙機で紙及び板紙を抄造する場合における、紙の進行方向に直角な方向)の1分後の浸水伸度が1.7%以下、好ましくは1.5以下とする。1.7%を越えると画像記録後のシートの波打ちが発生する場合がある。浸水伸度を抑える手段としては、本発明の支持体であるパルプの選択、叩解方法・条件の選択、内添サイズ・表面サイズの選択、或いは、インク受理層の選択による支持体の伸び(膨潤)を抑える方法を挙げた。
【0045】
本発明のインクジェット記録シートの記録に用いるインクは、一般的に下記の着色剤、溶媒、その他の添加剤からなる記録液体である。
【0046】
該インクの着色剤としては、直接染料、塩基性染料、反応性染料、食用色素などに代表される水溶性染料等の染料、カーボンブラックなどの有色無機顔料、フタロシアニン系有機顔料、アゾ系有機顔料等の顔料が挙げられる。
【0047】
該インクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤である。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトンアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2、6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個のアルキレングルコール類、グリセリン、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等が挙げられる。これら多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテルが好ましい。その他添加剤としては、例えば、pH調整剤、金属封鎖剤、防カビ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤、及び防錆剤等が挙げられる。
【0048】
本発明におけるインクジェット記録シートは、水性インク用のインクジェット記録シートとしての使用に留まらず、記録時に液状であるインクを使用するどのような記録シートとしても用いることもできる。例えば、熱溶融性物質、染顔料などを主成分とする熱溶融性インクを樹脂フィルム、高密度紙、合成紙などの薄い支持体上に塗設したインクシートを、その裏側より加熱し、インク溶融させて転写する熱転写記録用受像シート、熱溶融性インクを過熱溶融して微小液滴化、飛翔記録するインクジェット記録シート、油溶性染料を溶媒に溶解したインクを用いたインクジェット記録シート、着色顔料を有機溶媒に分散したインクを用いたインクジェット記録シート、光重合型モノマー及び無色または有色の染顔料を内包したマイクロカプセルを用いた感光感圧型ドナーシートに対応する受像シートなどが挙げられる。
【0049】
これらの記録シートの共通点は、記録時にインクが液状状態である点である。液状インクは、硬化、固化又は定着までに、記録シートのインク受理層の深さ方向又は水平方向に対して浸透又は拡がっていく。上述した各種記録シートは、それぞれの方式に応じた吸収性を必要とするもので、本発明のインクジェット記録シートを上述した各種記録シートとして利用しても構わない。更に、複写機・プリンター等に広く使用されている電子写真記録方式のトナーを加熱定着する記録シートとして、本発明におけるインクジェット記録シートを使用しても構わない。
【0050】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す部及び%は、特に明示しない限り固形分あるいは実質成分の質量部及び質量%を示す。
【0051】
<支持体Aの作製>
広葉樹晒クラフトパルプ50部と広葉樹漂白サルファイトパルプ35部及び針葉樹晒クラフトパルプ15部からなる混合パルプをダブルディスクリファイナーを用いてカッティング叩解を行い、繊維長0.60mm、濾水度250mlCSFになるように叩解後、カチオン化澱粉3部、アニオン化ポリアクリルアミド0.2部、アルキルケテンダーマー乳化物(ケテンダイマー分として)0.4部、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂0.4部を加え、水に混合してなるスラリーから長網抄紙機にて坪量170g/m2の原紙を抄造し、抄造時にサイズプレス装置でカチオン化澱粉を固形分で2g/m2付着させて支持体Aを得た。支持体Aの超音波伝達速度縦横比は1.3であった。超音波伝達速度縦横比の測定は、超音波伝達速度測定機(ソニックテスター T−3000型、野村商事社製)で行った。
【0052】
<支持体Bの作製>
広葉樹漂白クラフトパルプ50部、広葉樹漂白サルファイトパルプ35部及び針葉樹漂白サルファイトパルプ15部からなる混合パルプをコニカルリファイナーを用いて、繊維長0.85mm、濾水度470mlCSFになるように叩解後、支持体Aと同様の処理を行い支持体Bを得た。支持体Bの超音波伝達速度縦横比は1.3であった。
【0053】
<支持体Cの作製>
広葉樹漂白クラフトパルプ50部、広葉樹漂白サルファイトパルプ35部及び針葉樹漂白サルファイトパルプ15部からなる混合パルプをコニカルリファイナーを用いて、繊維長0.40mm、濾水度180mlCSFになるように叩解後、支持体Aと同様の処理を行い支持体Cを得た。支持体Cの超音波伝達速度縦横比は1.2であった。
【0054】
<支持体Dの作製>
支持体Aの抄造時にサイズプレス装置で使用するカチオン化澱粉をカルボキシル変性ポリビニルアルコールに代えて支持体Dを得た。支持体Dの超音波伝達速度縦横比は1.3であった。
【0055】
<支持体Eの作製>
支持体Aの抄造時にサイズプレス装置で使用するカチオン化澱粉をポリアクリルアミド系サイズ剤(ポリマセットHP−710、荒川化学社製)に代えて支持体Eを得た。支持体Eの超音波伝達速度縦横比は1.3であった。
【0056】
<支持体Fの作製>
支持体Aの抄造時にサイズプレス装置で使用するカチオン化澱粉をオレフィン系サイズ剤(ポリマロン1329、荒川化学社製)に代えて支持体Fを得た。支持体Fの超音波伝達速度縦横比は1.3であった。
【0057】
<支持体Gの作製>
支持体Aの抄造時にサイズプレス装置で使用するカチオン化澱粉をスチレン・アクリル系サイズ剤(ポリマロン360、荒川化学社製)に代えて支持体Gを得た。支持体Gの超音波伝達速度縦横比は1.3であった。
【0058】
<支持体Hの作製>
支持体Aのアルキルケテンダイマー乳化物(ケテンダイマー分として)を0.9部に代えて支持体Hを得た。支持体Hの超音波伝達速度縦横比は1.5であった。
【0059】
<支持体Iの作製>
支持体Aのスラリーの調整に用いるカチオン化澱粉を両性澱粉(ケイト3210、王子ナショナル社製)0.7部に代えて支持体Iを得た。支持体Iの超音波伝達速度縦横比は1.6であった。
【0060】
<支持体Jの作製>
広葉樹漂白クラフトパルプ50部、広葉樹漂白サルファイトパルプ35部及び針葉樹漂白サルファイトパルプ15部からなる混合パルプをコニカルリファイナーを用いて、繊維長0.95mm、濾水度550mlCSFになるように叩解後、支持体Aと同様の処理を行い支持体Jを得た。支持体Jの超音波伝達速度縦横比は1.6であった。
【0061】
<インク受理層塗工液A>
インク受理層の顔料として非晶質シリカ微粒子(ミズカシルP78A:平均粒子径3.3μ:水澤化学社製)100部、ポリビニルアルコール(PVA117:クラレ社製)20部、カチオン性染料定着剤(スミレッズレジン1001:住友化学社製)20部を水に溶解、混合し、固形分15%のインク受理層塗工液Aとした。
【0062】
<インク受理層塗工液B>
インク受理層の顔料としてアルミナゾル(AS−3、触媒化成社製)95部、ポリビニルアルコール(MA−26、信越化学社製)5部を水に溶解、混合し、固形分10%のインク受理層塗工液Bとした。
【0063】
実施例1〜8及び比較例1〜3
支持体上に表1記載のインク受理層をバーコーターにより乾燥塗工量15g/m2になるように塗工乾燥し、実施例1〜8及び比較例1〜3を得た。
【0064】
以上、実施例及び比較例で作製したインクジェット記録シートについて、下記の評価方法により評価し、その結果を表1に示す。
【0065】
(1)浸水伸度
J.TAPPI紙パルプ試験方法No.27 B法に基づくフェンチェル伸縮試験機による紙横目方向の1分後の浸水伸度の測定を行った。
【0066】
(2)画像鮮明性
画像の鮮明性は、高精細な写真画像をPM820C(エプソン社製)を用いて描画しインクの溢れや、流れ具合を目視で判断した。
○:優れているもの
△:一般的なもの
×:使用に耐えないもの
【0067】
(3)画像記録後の波打ち
画像記録後の波打ちは、色相、明度の範囲が広く、高精細な写真画像をPM820C(エプソン社製)を用いて描画し、画像記録直後の波打ちを目視で判断した。
○:画像記録後の波打ちが認められない。
△:画像記録後の波打ちがほとんど認められない。
×:画像記録後の波打ちが明らかに認められる。
実用使用上問題のない範囲は、○及び△の評価である。
【0068】
【表1】
【0069】
以上、表1から明らかな様に、天然パルプを主成分とする支持体の超音波伝達速度縦横比が1.4以下で、インクジェット記録シートがJ.TAPPI紙パルプ試験方法No.27 B法に基づくフェンチェル伸縮試験機による紙横目方向の1分後の浸水伸度が1.7%以下である実施例1〜8では、画像の発色性、鮮明性に優れた高品質なインクジェット画像が得られ、画像記録後のシートの波打ちがない良好なものが得られることがわかる。
【0070】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録シートを用いれば、画像の発色性、鮮明性に優れた高品質なインクジェット画像が得られることを可能にし、画像記録後のシートの波打ちが少なく、高平滑感のある見栄えのよいインクジェット記録シートを提供することが可能になった。
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録シートに関するものであり、更に詳しくは、天然パルプを主成分とする紙を支持体として、その上にインク受理層を設けることにより、インクジェット記録方式で高品質な画像の形成を可能にし、記録後のシートの波打ちが少なく、高平滑感のあるインクジェット記録シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、種々の作動原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙等の被記録材に付着させ、画像や文字等を記録を行うものであるが、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きい、現像及び定着が不要等の特徴があり、漢字を含めた各種図形及びカラー画像等の記録装置として種々の用途において急速に普及している。また、多色インクジェット方式により形成される画像は、製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画に比較して、遜色のない記録を得ることが可能である。更に作成部数が少なくて済む用途に於ては、写真技術によるよりも安価であることからフルカラー画像記録分野にまで広く応用されつつある。
【0003】
更に、用途の多様化に伴って、ポスターやPOPアートに使用されたり、裏面に粘着剤層を設けて、価格表示用ラベル、商品表示(バーコード)用ラベル、品質表示用ラベル、計量表示用ラベル、広告宣伝用ラベル(ステッカー)等のラベル用途、広い範囲の被着体に良く接着し、貼り付け作業が簡単な為、他面に粘着層を介して感熱特性、磁気特性、オフセット印刷特性を有するシート等と貼り合わせて複合した機能を付加させることも可能となることから、切符、定期券、各種カード等への応用も広がりつつある。
【0004】
インクは、溶剤タイプと水性タイプに分類されるが、価格、安全性、取り扱いの容易性等から水性インクが多く、特にこのような用途の多様化により、水性インクが抱える問題である印字面に水が付着した際に発生するインクの滲み出しの防止が重要な課題となっている。しかし、この課題に対する取り組みは充分に行われていないのが現状であり、インク吸収体としての機能を有する木材パルプを主体成分とする支持体をインクジェット記録シートの媒体とする該記録シートにおいては、更に重要且つ早期に解決しなければならない課題となっている。
【0005】
インクジェット記録方式で使用される記録シートとしては、通常の印刷や筆記に使われる上質紙やコーテッド紙を使うべく、装置やインク組成の面から努力がなされてきた。しかし、装置の高速化・高精細化或いはフルカラー化等インクジェット記録装置の性能の向上や用途の拡大に伴い、記録シートに対してもより高度な特性が要求されるようになった。即ち、当該記録シートとしては、印字ドットの濃度が高く、色調が明るく鮮やかであること、インクの吸収が早くて印字ドットが重なった場合においてもインクが流れ出したり滲んだりしないこと、印字ドットの横方向への拡散が均一で必要以上に大きくなく、且つ、周辺が滑らかでぼやけないこと、経時や環境で画質の変化がないこと、例えば、耐光性、耐水性、耐オゾン性に優れていること等が要求される。
【0006】
このような要求に対して、インク吸収性向上や印字ドットの拡散防止に対しては支持体上にインク受理層を設ける方法、インク受理層中におけるインク中の染料成分の分布状態が色彩性や鮮鋭性に影響することに着目して、染料成分を吸着する特定の剤を用いる方法、耐光性、耐水性、耐オゾン性を向上させるために、塩基性オリゴマーを含有させること、基材中又は基材上の塗工層のポリビニルアミン共重合物を用いること等、従来からいくつかの提案が行われてきた。
【0007】
また、インクジェット記録装置が安価でしかも鮮鋭性や色彩性といった画像再現性や色再現性に優れた画像をパーソナルコンピューターレベルで簡単に得られることができるようになったことから、インクジェット記録装置は、特定の人に使用される特殊な記録装置から汎用の記録装置に変遷してきており、画像も印刷物や写真に匹敵するような品質のものが得られることから、自作の絵葉書やデジタル写真のプリンタとしての用途にも使われるようになっている。この場合は絵葉書や写真プリントのもつ質感や触感が要求されるようにもなった。更に、このような用途においては打ち込むインク量が多く、支持体に達するインク溶媒によって記録後のシートが波打ちを生じ、見栄えが悪くなるという問題も発生している。従って、これらの特性を確保することがインクジェット記録装置やインクジェット記録シートの必要条件となっているのが現状である。
【0008】
この波打ち現象を回避する手段として、支持体を充分厚くして支持体の伸縮を抑える方法などが一般的に行われる。また、支持体の伸縮を抑える為に、支持体を介して両面インク受理層を設ける方法、基紙を二層化する方法が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかしこれらの手法は、最近のインク吐出量が増大している記録装置に対しては完全に波打ちを回避することは難しい。又、支持体を厚くし、支持体の剛性で対応するには、かなりの厚さが必要となり、通常使用する記録シートの厚さである70〜300μmの範囲を大きく上回ることになる。その結果、支持体の剛性が高くなり該記録シートの柔軟性が欠如することと、支持体が厚いことからインクジェット記録装置内での搬送性が低下することになる。
【0009】
また、インク受理層の吸収容量を増加し、インクが支持体に達しないようにする方法が考えられる。しかし、インク受理層の吸収容量を高めるためには、該受理層のバインダー成分を減少させるか、該受理層の塗設量を増やす必要があり、これによりインク受理層と支持体の間の接着強度低下や画像を形成するドットの細りによる画像再現性の低下が発生するため良好な方法とはいえない。
【0010】
更に、印字されたインクが支持体に浸透しないように支持体表面にバリア層を設けたり、支持体表面にインクが浸透しないように耐水化する方法(例えば、特許文献3参照)が考えられる。しかし、これらの手法では該記録シートのインク吸収容量が低下し、インクの溢れや滲みが発生してしまい、良好な画質を得ることは難しい。
【0011】
【特許文献1】
特開平2−270588号公報
【特許文献2】
特開平6−155893号公報
【特許文献3】
特開平10−46498号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、水性インクを用いるインクジェット記録方式において、画像の発色性、鮮明性に優れた高品質のインクジェット画像が得られ、画像記録後のシートの波打ちが少なく、高平滑感のある見栄えの良いインクジェット記録シートを提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前述のような印字特性が良好で画像記録後の記録シートの波打ちを低減した性能を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、天然パルプを主成分とする支持体の超音波伝達速度縦横比が1.4以下で、インクジェット記録シートがJ.TAPPI紙パルプ試験方法No.27 B法に基づくフェンチェル伸縮試験機による紙横目方向の1分後の浸水伸度が1.7%以下であることで上記課題が解決された。
【0014】
該天然パルプがカッティング叩解によって、濾水度が200mlCSF以上500mlCSF以下であることが好ましい様態である。
【0015】
該支持体がポリビニルアルコール系サイズ剤、ポリアクリルアミド系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、スチレン・アクリル系サイズ剤の少なくとも一つを用いて表面サイズしてなることが好ましい様態である。
【0016】
該インク受理層に用いられる顔料が非晶質シリカ、アルミナ水和物、コロイダルシリカ、気相法シリカの少なくとも一つからなることが好ましい様態である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のインクジェット被記録材について、詳細に説明する。本発明に使用する天然パルプは、主に木材パルプである。木材パルプとしては、塩素、次亜塩素酸、二酸化塩素漂白の通常の漂白処理並びにアルカリ抽出もしくはアルカリ処理および必要に応じて過酸化水素、酸素などによる酸化漂白処理など、およびそれらの組み合わせ処理を施した針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、針葉樹広葉樹混合パルプの木材パルプが用いられ、クラフトパルプ、サルファイトパルプ、ソーダパルプなどの各種のもの、更には古紙パルプ等を用いることができる。これらのパルプのうち短繊維で平滑性の出やすいサルファイトパルプ、好ましくはサルファイト広葉樹パルプを多く用いる。具体的には、特開昭60−67940号記載もしくは例示の広葉樹パルプを60質量%以上、好ましくは75質量%以上用いることが好ましい。
【0018】
パルプの叩解条件としては、叩解機により長繊維分がなるべく少なくなるように叩解する。具体的には、例えばパルプの叩解は、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.52−89「紙及びパルプ繊維長試験方法」に準拠して測定される長さ加重平均繊維長を0.35mm〜0.90mm、好ましくは0.45mm〜0.80mm、更に好ましくは0.45mm〜0.70mm、繊維長1mm以下の累積重量が70%以上とする。
【0019】
パルプの叩解方法としては、コニカルタイプ、ドラムタイプ、ディスクタイプ等が挙げられるが、ディスクタイプリファイナーとしてダブルディスクリファイナーを用いたカッティング叩解が好ましい。ダブルディスクリファイナーを用いると繊維を粘状叩解(すりつぶし)からカッティング叩解(切断)まで支持体の要求品質に合ったプレートが選択できる。カッティング叩解によって粘状紙料とはならず遊離状紙料ができ易くなり、地合いの良い支持体を得ることができる。濾水度200mlCSF以上500mlCSF以下、好ましくは200mlCSF以上330mlCSF以下にする。
【0020】
本発明に用いられる支持体中に含有する乾燥紙力増強剤としてカチオン化澱粉、ポリアクリルアミド、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー乳化物、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロルヒドリン樹脂等は、紙料スラリー調整時に添加する。
【0021】
本発明に用いられるアルキルケテンダイマー乳化物は、パルプ100質量部に対して、ケテンダイマー分として0.1〜0.8質量部含有していることが好ましく、これより少ないと波打ち現象に効果がなくなることがあり、0.8質量%を越えると支持体とインク受理層との接着性が悪くなることがある。また、内添サイズ剤として、脂肪酸金属塩あるいは脂肪酸、エポキシ化高級脂肪酸アミド、アルケニルまたはアルキルコハク酸無水物乳化物、ロジン誘導体等を併用して用いることができる。
【0022】
本発明に用いられるポリアクリルアミドは、アニオン性、カチオン性あるいは両性のいずれも用いることができる。また、乾燥紙力増強剤として、カチオン化澱粉の他、ポリビニルアルコールや植物性ガラクトマンナン等を併用して用いることができる。
【0023】
本発明に用いられる支持体に含有できる成分は、填料として、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン等、定着剤として、塩化アルミニウム、硫酸バンド等の水溶性アルミニウム塩等、pH調整剤として、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、硫酸等を、その他特開昭63−204251号、特開平1−266537号等に記載もしくは例示の着色顔料、着色染料、蛍光増白剤などを適宜組み合わせられる。
【0024】
本発明に用いられる支持体は、ポリビニルアルコール系サイズ、ポリアクリルアミド系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、スチレン・アクリル系サイズ剤の少なくとも一つを用いて表面サイズしていることが好ましい。ポリビニールアルコール系サイズ剤としては、特開平1−266537号記載もしくは例示のポリビニルアルコール系ポリマーが挙げられる。
【0025】
その他表面サイズ剤としては、澱粉、各種水溶性ポリマー、親水性コロイドとして、特開平1−266537号記載もしくは例示の澱粉系ポリマー、ゼラチン系ポリマー、ポリアクリルアミド系ポリマー、セルロース系ポリマーなど、エマルジョン、ラテックス類として、特開昭55−4027号、特開平1−180538号記載もしくは例示のエチレンとアクリル酸(又はメタクリル酸)とを少なくとも構成要素とする共重合体のエマルジョンもしくはラテックス、スチレン・ブタジエン系、酢酸ビニル・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系共重合体及びそれらのカルボキシ変性共重合体のエマルジョンもしくはラテックス等を併用して用いることができる。
【0026】
また、表面サイズに含有できる成分は、帯電防止として、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩、塩化カルシウム、塩化バリウム等のアルカリ土類金属塩、コロイド状シリカ等のコロイド状金属酸化物、ポリスチレンスルホン酸等の有機帯電防止剤など、顔料として、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、酸化チタンなど、pH調整剤として、塩酸、リン酸、クエン酸、苛性ソーダなど、その他前記した着色顔料、着色染料、蛍光増白剤などの添加剤を適宜組み合わせられる。
【0027】
表面サイズの方法は、サイズプレスもしくはタブサイズプレスあるいはブレード塗工、エアーナイフ塗工などの塗工によって乾燥塗工量として1.0g/m2以上塗設するのが好ましい。
【0028】
本発明の支持体は、抄紙後にマシンカレンダー、スーパーカレンダー、熱カレンダー等を用いてカレンダー処理を行っても構わない。カレンダー処理によって波打ちが少なく、高平滑感が高まる。
【0029】
本発明の支持体の厚みに関しては、20〜300μm程度が好ましい。300μmを越えると剛性が高くなり該記録シートの柔軟性が欠如するので、インクジェット記録装置内での搬送性が低下することがある。また、20μm未満になると印字特性(波打ち、インク吸収性等)に悪影響を与えることがあり、さらにインクジェット記録シートの剛性が低くなることからインクジェット記録装置内での搬送性が低下することがある。
【0030】
本発明の支持体の超音波伝達速度の縦目(抄紙機で紙及び板紙を抄造する場合における、紙の進行方向)と横目(抄紙機で紙及び板紙を抄造する場合における、紙の進行方向に直角な方向)との縦横比(縦目方向の超音波伝達速度/横目方向の超音波伝達速度)が1.4以下であることが好ましい。1.4を越えると画像記録をした場合、横目方向での伸びが縦目方向での伸びよりも大きくなる傾向が強くなり支持体の波打ちが起こりやすくなる。
【0031】
超音波伝達速度は、ヤング率と相関関係があり、代替指標とすることができる。縦目方向のヤング率と横目方向のヤング率の比をヤング率の縦横比とする。ヤング率が小さい程、水分(インク溶媒)による支持体の伸びが大きくなる。縦目方向と横目方向との伸びが異なる程(ヤング率の縦横比が大きい程)支持体が伸びた時に縦目方向と横目方向とのひずみが大きくなり、支持体に波打ちが起こり易くなる。叩解後のパルプ繊維は、繊維の長さ方向よりも幅方向のヤング率は低く伸びが大きい。従って、支持体の繊維配向性がヤング率の縦横比に影響を及ぼす。繊維配向性が弱い程、ヤング率の縦横比は1に近づく。
【0032】
波打ちは一般的に用紙に水分が浸透すると用紙を構成するパルプの伸び(膨潤)、応力緩和が起こり、局所的に凹凸が発生する為と考えられるが、本発明の支持体では吸水時の伸びが各方向で均等であるため、局所的に発生する凹凸が抑えられる為と推測される。
【0033】
本発明のインクジェット記録シートは、塗工タイプのインクジェット記録シートであり、前記支持体の少なくとも片面上にインク受理層が設けられる。本発明で言うインク受理層とは、インク中の溶媒を浸透させ、保持または吸収するような空隙を構成する主として顔料とバインダーからなる層や、インク中の溶媒に溶解または膨潤する主として高分子物質からなる層等を指す。これらの層は単独でもそれぞれの層が二層以上の多層でも、顔料層と高分子層の組み合わせでも本発明のインク受理層としてなんら問題はないが、顔料層の方がインク吸収容量が大きく好ましい。
【0034】
これらのインク受理層を前記支持体の上に設けた場合は、均一なインク受理層とすることができ、インクジェットプリンターを使用してインク受理層に画像を記録した場合、発色性、鮮明性に優れ、且つ記録後のシートの波打ちが少なく、高平滑性の記録シートが得られる。
【0035】
主として顔料とバインダーからなるインク受理層に使用する顔料としては、公知の白色顔料を一種類以上用いることができる。例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、チサンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、気相法シリカ、α,β,γ,δ−等のアルミニウム酸化物、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリスチレン、尿素樹脂、メラミン樹脂の有機顔料等の白色顔料を一種類以上用いることができる。中でも、多孔性無機顔料が好ましく、多孔性合成非晶質シリカ、多孔性炭酸マグネシウム、多孔性アルミナ等が挙げられ、特に細孔容量の大きい多孔性合成非晶質シリカが好ましい。通常これら顔料の平均粒子径は0.1〜20μmの範囲が好ましい。本発明において非晶質シリカ、アルミナ水和物、コロイダルシリカ、気相法シリカを用いると、発色性、鮮明性に優れた画像が得られる。
【0036】
インク受理層に使用するバインダーとしては、例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆、蛋白、ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸及びメタクリル酸の重合体又は共重合体等のアクリル系重合体ラテックス、無水マレイン酸、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、或いはこれら各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス、メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂系等の水性バインダー、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポチエステル樹脂、酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系バインダーが挙げられ、少なくとも1種以上で使用することができる。
【0037】
バインダーの総量は、目的とするインクジェット記録シートの特性に合わせて、適宜調整することが出来るが、一般には、顔料100質量%に対して、5〜80質量%が好ましい。また、従来公知の染料を定着する目的として添加するカチオン樹脂を併用することもできる。
【0038】
その他の添加剤として、顔料分散剤、増粘剤、レベリング剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、酸化防止剤、界面活性剤、消泡剤、抑泡剤、発泡剤、浸透剤、離型剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤及びpH調節剤等の各種添加剤を適宜組合わせて添加しても良い。
【0039】
インク中の溶媒に溶解または膨潤する主としては高分子物質からなるインク受理層を有する様態では、高分子物質としては、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、アクリル系ポリマー、ポリビニルアセタール系ポリマー等種々のインク吸収性ポリマーが挙げられる。これらの混合物や多層も本発明のインク受容層として使用可能である。
【0040】
インク受容層の塗工方法としては、スライドポッパーコーティング方式、カーテンコーティング方法、エクストルージョンコーティング方式、エアーナイフコーティング方式、ブレードコーティング方式、ロールコーティング方式、ロッドバーコーティング方式、及びグラビアコーティング方式、サイズプレスコーティング方式、スプレーコーティング方式等が挙げられる。これらコーティング方式は、オンマシン或いはオフマシンで行うことができる。また、塗工後にはカレンダーを用いて仕上げても良い。カレンダーの方法としては、マシンカレンダー方式、TGカレンダー方式、スーパーカレンダー方式、ソフトカレンダー方式、エンボスカレンダー方式等が挙げられる。
【0041】
本発明のインク受理層の塗工量としては、1〜40g/m2の範囲であることが好ましい。塗工量が1g/m2未満ではインク受理層によるインク吸収性が充分ではないため、吸収ムラ等が発生し、インクジェット性能に悪影響が生じることがある。また、40g/m2を越えるとインク受理層と支持体の間の接着強度が低下することがある。
【0042】
本発明における支持体のインク受容層を設ける反対側の面には、帯電防止、搬送性、カール防止、筆記性、糊付け性等のために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には、無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、硬化剤、顔料、滑剤、マット化剤、界面活性剤等を適宜組み合わせて添加しても良い。
【0043】
本発明のインクジェット記録シートの厚さは、50〜300μm程度が好ましい。300μmを越えると剛性が高くなり該記録シートの柔軟性が欠如するので、インクジェット記録装置内での搬送性が低下することがある。また、50μm未満になると印字特性(波打ち、インク吸収性等)に悪影響を与えることがあり、さらにインクジェット記録シートの剛性が低くなることからインクジェット記録装置内での搬送性が低下することがある。
【0044】
本発明のインクジェット記録シートは、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.27 B法に基づくフェンチェル伸縮試験機による横目方向(抄紙機で紙及び板紙を抄造する場合における、紙の進行方向に直角な方向)の1分後の浸水伸度が1.7%以下、好ましくは1.5以下とする。1.7%を越えると画像記録後のシートの波打ちが発生する場合がある。浸水伸度を抑える手段としては、本発明の支持体であるパルプの選択、叩解方法・条件の選択、内添サイズ・表面サイズの選択、或いは、インク受理層の選択による支持体の伸び(膨潤)を抑える方法を挙げた。
【0045】
本発明のインクジェット記録シートの記録に用いるインクは、一般的に下記の着色剤、溶媒、その他の添加剤からなる記録液体である。
【0046】
該インクの着色剤としては、直接染料、塩基性染料、反応性染料、食用色素などに代表される水溶性染料等の染料、カーボンブラックなどの有色無機顔料、フタロシアニン系有機顔料、アゾ系有機顔料等の顔料が挙げられる。
【0047】
該インクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤である。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトンアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2、6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個のアルキレングルコール類、グリセリン、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等が挙げられる。これら多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテルが好ましい。その他添加剤としては、例えば、pH調整剤、金属封鎖剤、防カビ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤、及び防錆剤等が挙げられる。
【0048】
本発明におけるインクジェット記録シートは、水性インク用のインクジェット記録シートとしての使用に留まらず、記録時に液状であるインクを使用するどのような記録シートとしても用いることもできる。例えば、熱溶融性物質、染顔料などを主成分とする熱溶融性インクを樹脂フィルム、高密度紙、合成紙などの薄い支持体上に塗設したインクシートを、その裏側より加熱し、インク溶融させて転写する熱転写記録用受像シート、熱溶融性インクを過熱溶融して微小液滴化、飛翔記録するインクジェット記録シート、油溶性染料を溶媒に溶解したインクを用いたインクジェット記録シート、着色顔料を有機溶媒に分散したインクを用いたインクジェット記録シート、光重合型モノマー及び無色または有色の染顔料を内包したマイクロカプセルを用いた感光感圧型ドナーシートに対応する受像シートなどが挙げられる。
【0049】
これらの記録シートの共通点は、記録時にインクが液状状態である点である。液状インクは、硬化、固化又は定着までに、記録シートのインク受理層の深さ方向又は水平方向に対して浸透又は拡がっていく。上述した各種記録シートは、それぞれの方式に応じた吸収性を必要とするもので、本発明のインクジェット記録シートを上述した各種記録シートとして利用しても構わない。更に、複写機・プリンター等に広く使用されている電子写真記録方式のトナーを加熱定着する記録シートとして、本発明におけるインクジェット記録シートを使用しても構わない。
【0050】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す部及び%は、特に明示しない限り固形分あるいは実質成分の質量部及び質量%を示す。
【0051】
<支持体Aの作製>
広葉樹晒クラフトパルプ50部と広葉樹漂白サルファイトパルプ35部及び針葉樹晒クラフトパルプ15部からなる混合パルプをダブルディスクリファイナーを用いてカッティング叩解を行い、繊維長0.60mm、濾水度250mlCSFになるように叩解後、カチオン化澱粉3部、アニオン化ポリアクリルアミド0.2部、アルキルケテンダーマー乳化物(ケテンダイマー分として)0.4部、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂0.4部を加え、水に混合してなるスラリーから長網抄紙機にて坪量170g/m2の原紙を抄造し、抄造時にサイズプレス装置でカチオン化澱粉を固形分で2g/m2付着させて支持体Aを得た。支持体Aの超音波伝達速度縦横比は1.3であった。超音波伝達速度縦横比の測定は、超音波伝達速度測定機(ソニックテスター T−3000型、野村商事社製)で行った。
【0052】
<支持体Bの作製>
広葉樹漂白クラフトパルプ50部、広葉樹漂白サルファイトパルプ35部及び針葉樹漂白サルファイトパルプ15部からなる混合パルプをコニカルリファイナーを用いて、繊維長0.85mm、濾水度470mlCSFになるように叩解後、支持体Aと同様の処理を行い支持体Bを得た。支持体Bの超音波伝達速度縦横比は1.3であった。
【0053】
<支持体Cの作製>
広葉樹漂白クラフトパルプ50部、広葉樹漂白サルファイトパルプ35部及び針葉樹漂白サルファイトパルプ15部からなる混合パルプをコニカルリファイナーを用いて、繊維長0.40mm、濾水度180mlCSFになるように叩解後、支持体Aと同様の処理を行い支持体Cを得た。支持体Cの超音波伝達速度縦横比は1.2であった。
【0054】
<支持体Dの作製>
支持体Aの抄造時にサイズプレス装置で使用するカチオン化澱粉をカルボキシル変性ポリビニルアルコールに代えて支持体Dを得た。支持体Dの超音波伝達速度縦横比は1.3であった。
【0055】
<支持体Eの作製>
支持体Aの抄造時にサイズプレス装置で使用するカチオン化澱粉をポリアクリルアミド系サイズ剤(ポリマセットHP−710、荒川化学社製)に代えて支持体Eを得た。支持体Eの超音波伝達速度縦横比は1.3であった。
【0056】
<支持体Fの作製>
支持体Aの抄造時にサイズプレス装置で使用するカチオン化澱粉をオレフィン系サイズ剤(ポリマロン1329、荒川化学社製)に代えて支持体Fを得た。支持体Fの超音波伝達速度縦横比は1.3であった。
【0057】
<支持体Gの作製>
支持体Aの抄造時にサイズプレス装置で使用するカチオン化澱粉をスチレン・アクリル系サイズ剤(ポリマロン360、荒川化学社製)に代えて支持体Gを得た。支持体Gの超音波伝達速度縦横比は1.3であった。
【0058】
<支持体Hの作製>
支持体Aのアルキルケテンダイマー乳化物(ケテンダイマー分として)を0.9部に代えて支持体Hを得た。支持体Hの超音波伝達速度縦横比は1.5であった。
【0059】
<支持体Iの作製>
支持体Aのスラリーの調整に用いるカチオン化澱粉を両性澱粉(ケイト3210、王子ナショナル社製)0.7部に代えて支持体Iを得た。支持体Iの超音波伝達速度縦横比は1.6であった。
【0060】
<支持体Jの作製>
広葉樹漂白クラフトパルプ50部、広葉樹漂白サルファイトパルプ35部及び針葉樹漂白サルファイトパルプ15部からなる混合パルプをコニカルリファイナーを用いて、繊維長0.95mm、濾水度550mlCSFになるように叩解後、支持体Aと同様の処理を行い支持体Jを得た。支持体Jの超音波伝達速度縦横比は1.6であった。
【0061】
<インク受理層塗工液A>
インク受理層の顔料として非晶質シリカ微粒子(ミズカシルP78A:平均粒子径3.3μ:水澤化学社製)100部、ポリビニルアルコール(PVA117:クラレ社製)20部、カチオン性染料定着剤(スミレッズレジン1001:住友化学社製)20部を水に溶解、混合し、固形分15%のインク受理層塗工液Aとした。
【0062】
<インク受理層塗工液B>
インク受理層の顔料としてアルミナゾル(AS−3、触媒化成社製)95部、ポリビニルアルコール(MA−26、信越化学社製)5部を水に溶解、混合し、固形分10%のインク受理層塗工液Bとした。
【0063】
実施例1〜8及び比較例1〜3
支持体上に表1記載のインク受理層をバーコーターにより乾燥塗工量15g/m2になるように塗工乾燥し、実施例1〜8及び比較例1〜3を得た。
【0064】
以上、実施例及び比較例で作製したインクジェット記録シートについて、下記の評価方法により評価し、その結果を表1に示す。
【0065】
(1)浸水伸度
J.TAPPI紙パルプ試験方法No.27 B法に基づくフェンチェル伸縮試験機による紙横目方向の1分後の浸水伸度の測定を行った。
【0066】
(2)画像鮮明性
画像の鮮明性は、高精細な写真画像をPM820C(エプソン社製)を用いて描画しインクの溢れや、流れ具合を目視で判断した。
○:優れているもの
△:一般的なもの
×:使用に耐えないもの
【0067】
(3)画像記録後の波打ち
画像記録後の波打ちは、色相、明度の範囲が広く、高精細な写真画像をPM820C(エプソン社製)を用いて描画し、画像記録直後の波打ちを目視で判断した。
○:画像記録後の波打ちが認められない。
△:画像記録後の波打ちがほとんど認められない。
×:画像記録後の波打ちが明らかに認められる。
実用使用上問題のない範囲は、○及び△の評価である。
【0068】
【表1】
【0069】
以上、表1から明らかな様に、天然パルプを主成分とする支持体の超音波伝達速度縦横比が1.4以下で、インクジェット記録シートがJ.TAPPI紙パルプ試験方法No.27 B法に基づくフェンチェル伸縮試験機による紙横目方向の1分後の浸水伸度が1.7%以下である実施例1〜8では、画像の発色性、鮮明性に優れた高品質なインクジェット画像が得られ、画像記録後のシートの波打ちがない良好なものが得られることがわかる。
【0070】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録シートを用いれば、画像の発色性、鮮明性に優れた高品質なインクジェット画像が得られることを可能にし、画像記録後のシートの波打ちが少なく、高平滑感のある見栄えのよいインクジェット記録シートを提供することが可能になった。
Claims (4)
- 天然パルプを主成分とする紙を支持体として、その少なくとも片面にインク受理層を塗設してなるインクジェット記録シートにおいて、該支持体が超音波伝達速度縦横比が1.4以下で、該インクジェット記録シートがJ.TAPPI紙パルプ試験方法No.27 B法に基づくフェンチェル伸縮試験機による紙横目方向の1分後の浸水伸度が1.7%以下であることを特徴とするインクジェット記録シート。
- 該天然パルプがカッティング叩解によって、濾水度が200mlCSF以上500mlCSF以下であること特徴とする請求項1記載のインクジェット記録シート。
- 該支持体がポリビニルアルコール系サイズ剤、ポリアクリルアミド系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、スチレン・アクリル系サイズ剤の少なくとも一つを用いて表面サイズしてなることを特徴とする請求項1、2いずれか1項記載のインクジェット記録シート。
- 該インク受理層に用いられる顔料が非晶質シリカ、アルミナ化合物、コロイダルシリカ、気相法シリカの少なくとも一つからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のインクジェット記録シート。
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