JP4032435B2 - 電子写真用転写用紙兼インキジェット記録用紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真用転写用紙に関するものであり、特に、インキジェット記録用紙としても兼用できる電子写真用転写用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真用転写用紙を用いる乾式PPC(Plain Paper Copy=普通紙コピー)は、電子写真方式の主流となっている。この方式のためのコピー用紙を以下にPPC用紙と略称する。PPC用紙については数多くの技術が開発され、特許も数多く公開されている。これらのうち、特に重要な技術課題の1つとして、複写機で複写する際の紙の送行不良に関する課題がある。
【0003】
送行不良とは、紙の重送、紙づまり、紙の空送、耳折れなどを総称するものである。これらは、紙の剛性不足、紙のカール、摩擦係数の大小、静電気などに起因するが、複数の要因が関係したり、その他の要因が関係する場合もあるが特に重送に関しては静電気との関係が強い。
【0004】
特開昭55−142799号公報、特開昭57−128346号公報には重送に関連して表面電気抵抗について開示され、特開昭59−162561号公報には、填料の配合について開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの技術によっても静電気による送行不良の問題は完全には解決されていない。また、最近になってPPC用紙とインキジェット記録用紙を兼用にすることが望まれている。従って、本発明は前記課題を解決すると同時に、インキジェット記録適性をも兼ねそなえた、PPC用紙を得ることを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明者等は鋭意検討の結果、以下の構成をとることにより目的が達成されることを見出し、本発明を完成させたものである。すなわち、植物繊維のみからなる濾水度(カナディアン スタンダード フリーネス)600ml以下のパルプを用い、填料としてふっ石水を含む化合物を対絶乾パルプあたり10〜40重量%含有し、さらに澱粉及びスチレン系樹脂を含む表面サイズ剤をサイズプレスして抄紙された用紙であり、前記用紙の、Federal Test Method Standard No.101 Method 4046に規定される帯電電位の減衰特性における10%カットオフ時間が、20℃・20%RH雰囲気における測定で60秒以内であることを特徴とする電子写真用転写用紙兼インキジェット記録用紙である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の紙を製造するために用いられるパルプは、通常の印刷紙、情報記録紙、電子写真用転写用紙などに使用されるパルプであれば特に制限はない。化学パルプ(NBKP、LBKPなど)、機械パルプ(GP、CGP、RGP、TMPなど)、脱墨古紙パルプ(DIP)のいずれでも良く、これらが混合して配合されたものであっても良い。本発明が対象とする紙は、米坪で30〜200g/m2 程度である。
【0008】
本発明に用いられるふっ石水を含む化合物とは、次の事項を具備しているものと定義される。即ち、
該化合物は、その構造内の「あきま」に、ゆるく結合した水分(以下ふっ石水という)を含有しており、その「あきま」の中に充分ふっ石水を含有している状態にても、塩化ナトリウム等が示す潮解、風解現象に見られるベトツキはなく、見かけ上乾燥状態を保っている。
該化合物が含有するふっ石水を加熱あるいは減圧等の手段により完全に除去しても、その結晶構造は破壊されない。
ふっ石水を完全に除去した該化合物は低湿時においても直ちに水分を再吸着し、すぐ元の飽和状態に戻る。
ふっ石水は該化合物が含有している各種イオンと共存しており、それにより、良好な電気伝導性を示す。
ふっ石水を含む化合物は、内部にとりこんでいる水と水中に電離しているイオンにより導電性が出ると推定されている。そのため、空気中の水分変化によって導電性の値の変化が少ないという利点がある。また、潮解や溶解のような現象を利用していないので、表面にべとつきがないと言う利点がある。
【0009】
ふっ石水を含む化合物として本発明に適用できる化合物の例としては、各種縮合酸が挙げられるが、そのうち、代表的なものとして、天然ゼオライト鉱物、合成ゼオライト、ゼオライト類似鉱物が挙げられる。
天然ゼオライト鉱物はアルミノ珪酸塩と呼ばれ、下式(1)の一般式で現される。
式(1) WmZnO2n・sH2O
上の式でW は2価及び1価の金属イオンを現すが、多くはCa2+またはNa+,K+ で、まれにSr2+,Ba2+ が含まれ、Z はSi+Al(Si:Al>1)、s は一定しない。W は他の陽イオンと交換可能である。
【0010】
これらのゼオライト鉱物は、3次元骨組み構造中に特有の「あきま」を持っており、交換可能な陽イオンは水分子とともにこの「あきま」に入っている。水の他一般の溶媒もその「あきま」に吸着され得るが極性の強いものほど選択的に吸着され得る。天然ゼオライトとほぼ同様な3次元骨組構造を持ち基本的な性質は天然ゼオライトと変わりない合成ゼオライトも多数存在する。
【0011】
さらに、「あきま」を持ち水分子の脱吸着現象においてその結晶構造が変化しないなどの性質においてはゼオライト鉱物と同じであるが、化学組成はゼオライトと異なる鉱物も天然及び合成品として存在する。これをゼオライト類似鉱物と言い、本発明に使用することができる。
【0012】
本発明に用いられるゼオライト鉱物を天然、合成とりまぜて構造的に分類すれば次の6種類になる。
(1)ホウフッ石群
アナルサイト NaAlSi2O6・H2O
ボルサイト (Ca,Na)AlSi2O6.xH2O (x<1.0)
ビサイト Ca10Na2Al10Si6P10(H3)12(H2O)16O96
ケホサイト Zn5.5Ca2.5Al16P16(H3)16(H2O)32O96
【0013】
【0014】
【0015】
(4)ソーダフッ石群
ソーダフッ石 Na2(Al2Si3O10).2H2O
メソフッ石 Na2Ca2(Al6Si9O30).8H2O
スコレスフッ石 Ca(Al2Si3O10).3H2O
トムソンフッ石 NaCa2(Al5Si5O20).6H2O
エジントンフッ石 Ba(Al2Si3O10).4H2O
ゴナルドフッ石 Na2Ca(Al4Si6O20).6H2O
ローデサイト KNaCa2(H2Si8O20).5H2O
マウンテナイト KNa2Ca2(HSi8O20).5H2O
【0016】
(5)ジュウジフッ石群
ジュウジフッ石 Ba2(Al4Si12O32).4H2O
カイジュウジフッ石 (KXNa1-x)5Al5Si11O32.10H2O
ジスモンドフッ石 Ca(Al2Si2O5).4H2O
モレキュラーシーブB型* Na2(Al2Si3O10).5H2O
ガロナイト NaCa2.5(Al3Si5O16)2.13.5H2O
【0017】
【0018】
本発明でいうふっ石水を含む化合物を含有するPPC用紙は植物繊維からなる濾水度(カナディアン スタンダード フリーネス)600ml以下のパルプを用いて抄紙され、填料としてふっ石水を含む化合物を対絶乾パルプあたり8重量%以上含有させたものであり、かつFederal Test Method Standard No.101 Method 4046に規定される帯電電位の減衰特性における10%カットオフ時間が、20℃・20%RH雰囲気における測定で60秒以内にすることが必要である。ここでふっ石水を含む化合物を8重量%以上含有としているのは、用いるパルプの種類や紙表面のサイズ剤塗工等の影響で減衰特性に変化が生ずるからである。
【0019】
従来PPC用紙の走行性と帯電防止方法およびその評価方法については、支持体の片側また両側に帯電防止処理を付与することにより表面抵抗値を所定の範囲に入れて制御することが一般的に行われて来たが、本願のように帯電防止剤を内添せしめる方法では、表面抵抗値で評価するよりもFederal Test Method Standard No.101 Method 4046に規定される帯電電位の減衰特性を測定することにより得られた減衰時間と走行性との相関が強く見られることがわかった。
【0020】
また、填料としてふっ石水を含む化合物を対絶乾パルプあたり8重量%以上含有せしめることによりPPC用紙の走行性を改良する以外に、インキジェット記録用紙として用いた場合、ふっ石水を含む化合物がインキを吸収する特性が優れ乾燥性、定着性、ストライクスルー(インキの裏抜け特性)防止特性に優れていることが判明した。
【0021】
PPC用紙兼インキジェット記録用紙としては前記の性能以外にカール適性、仕上げ適性など優れていることが求められるので下記A〜Eの要件を満たすことが好ましい。
A:アルキルケテンダイマーサイズ剤が内添され、かつ、澱粉、アルキルケテンダイマーサイズ剤、スチレン系樹脂混合系の表面サイズ剤を塗工
B:表裏の平均繊維長差0.1mm以下
C:JIS P8122に規定するサイズ度30秒以上
D:静摩擦係数0.5〜0.6
E:JIS P8117に規定する透気度40秒以下
【0022】
表面サイズ剤は、更に寸法安定性を向上するため、及び、インキジェット記録適性の向上、即ち、インキのにじみを防止するために必要である。この目的に対してはアルキルケテンダイマーサイズ剤(以下AKDと略称する)を表面塗工することが最も確実で有効な手段である。しかし、AKD単独では内部に浸透し過ぎるので、澱粉を混合する必要がある。また、澱粉は、表面強度の向上の意味でも必要であり、寸法安定性にも寄与する。
【0023】
さらに、澱粉/AKDの2成分から成る表面サイズ剤の塗布では、摩擦係数が低下し過ぎて、断裁における不揃いの問題があるため、スチレン系樹脂を混合することにより摩擦係数の制御を行う必要がある。不揃いのものは、高速コピー機にかけた場合に、重送や紙詰まりの原因となるためである。表面サイズ剤の塗布量は、前記目的を達成するためには、固形分で0.2〜2g/m2 が好ましい範囲である。
【0024】
本発明に使用する澱粉としては、小麦澱粉、玉蜀黍澱粉、甘薯澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉などのいずれでも良く、これらの変性澱粉であっても良い。
【0025】
本発明に使用するスチレン系樹脂としては、スチレン・マレイン酸共重合体、スチレン・アクリル酸共重合体、スチレン・アクリル酸エステル共重合体などが一例として挙げられる。
【0026】
そして、内添サイズ剤との適当な組み合わせによって、サイズ度を30秒以上とすることにより、上記各目的が達成される。サイズ度はステキヒト法(JIS P8122)により測定される値である。サイズ度の低い紙にインキジェット記録を行うとインキが紙の横方向ににじみ、明瞭な印字ができないので、そのためにも、本発明においては、サイズ度が30秒以上が必要である。
【0027】
表裏の繊維長の差はカール防止に対して重要な要素であり、表面と裏面の平均繊維長の差を0.1mm以下とすることが重要である。本発明で言う繊維長はカヤニ式繊維長測定装置(JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.52 に準ずる)で測定されたものである。また、表裏の繊維長差とは表面近傍(表面から全厚みの20%まで)の平均繊維長を測定した場合の、表面近傍と裏面近傍の各平均繊維長の差を意味する。
【0028】
静摩擦係数は、0.5未満では用紙が滑り過ぎて、断裁機において不揃いとなり、ひいては、複写の時点で紙の重送や空送をきたす。また、0.6を越えても、複写の時点で重送や空送の原因となる。また、インキジェット記録においても、プリンターにおいて紙が2枚以上重なって供給されるのを防止するため、上記範囲の静摩擦係数が必要である。
【0029】
耳おれ防止のためには、紙の剛性が高い方が好ましく、本発明の場合でも、紙の密度があまり高くならないようにすることは好ましいが、カール防止(水分による寸法変化の安定化)という観点から考えると、単に密度を下げれば良いのではなく、繊維のフィブリルの絡み合いを減少させることが重要であり、この尺度としては密度ではなく透気度を採用することが良いと考えられる。本発明者の検討によれば、カール防止を良好とするためには透気度は40秒以下さらに好ましくは20秒以下とする必要がある。
【0030】
本発明に用いるふっ石水を含む化合物の含有量については、対絶乾パルプあたり8〜50重量%、好ましくは10〜40重量%が適当で、これより含有量が少ないと特徴的な効果が得られず、また含有量が多すぎると紙質が損なわれる結果となる。また、ふっ石水を含む化合物以外の填料を配合することも可能である。なお、本発明における含有量とはJIS P 8128に規定される紙中の灰分測定値である。
【0031】
またふっ石水を含む化合物と併用する、その他の填料としては、一般に製紙用填料として用いられるあらゆる種類の填料が使用可能であるが、たとえばクレー、タルク、炭酸カルシウム等の汎用填料が挙げられる。
【0032】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
参考例
白色度70%まで脱インキされた脱墨古紙パルプ50重量部、カナダ標準濾水度で500ccに調成されたNBKP・LBKPの1:1混合パルプ50重量部から成るパルプを用いて米坪64g/m2 の電子写真転写用紙兼インキジェット記録用紙をツインワイヤー抄紙機で抄紙した。内添サイズ剤としては固形分換算で対パルプでAKD(荒川化学社製SPK287)0.2重量%、カチオン澱粉0.5重量%添加し、填料として、ふっ石水を含む化合物として天然ゼオライト(モルデナイト,クリノプチロライトの混合物)を灰分8重量%(対パルプ)配合した。表面サイズ剤として、変性タピオカ澱粉の15重量%糊液を使用した。該澱粉糊液には、対澱粉固形分で、AKD(日本PMC社製SS−362)0.3重量%、スチレン・マレイン酸共重合体樹脂5重量%を添加して表面サイズ剤とした。上記表面サイズ剤を乾燥固形分で1g/m2 となるように、ロールコーターで上記用紙の両面に塗布・乾燥した。
【0034】
実施例1
参考例において、天然ゼオライトに変えて合成ゼオライト(トーソー(株)製:トヨビルダー)を灰分10重量%(対パルプ)となるように使用した以外は、参考例と全く同様にして実施例1の紙を得た。
【0035】
実施例2
参考例において、天然ゼオライトの配合量を灰分20重量%(対パルプ)配合し、そのほかは参考例と全く同様にして実施例2の紙を得た。
【0036】
比較例1
参考例において、天然ゼオライトに変えて炭酸カルシウムを使用した以外は、参考例と全く同様にして比較例1の紙を得た。
【0037】
比較例2
参考例において、天然ゼオライトに変えて炭酸カルシウムを使用し、かつ表面サイズ液に塩化ナトリウムを25重量%添加し、表面サイズ剤を乾燥固形分で1.3g/m2 となるようにした以外は参考例と全く同様にして比較例2の紙を得た。
【0038】
<評価方法>
なお、ここで、表1に記載した各種評価についてその方法を説明する。
(1)高速コピー
高速PPC複写機である富士ゼロックスLP5090を用いて、1000枚の複写をとり、下記の基準で評価した。
○ 重送又は紙詰まり無し
△ 重送又は紙詰まり1回
× 重送又は紙詰まり2回以上
【0039】
(2)インキジェット適性
キャノン社のインキジェットプリンター(BJ10V Selct)により、印字を行い乾燥性、定着性、ストライクスルー(インキの裏抜け特性)特性を評価した。
乾燥性:記録直後表面をガーゼで強くこすりインキの転移性を見た。
○ 転移無し × 転移有り
定着性:記録1日後、水道水に1時間漬けた後乾燥させ印字の判読性を評価した。
○ 視認できる △視認しにくい × 視認できない
ストライクスルー特性:ベタ記録を行い裏面からインキの裏抜けの程度を目視評価した。
○ 裏抜け無し △やや有り × 裏抜け有り
【0040】
(3)帯電性評価法
STATIC DECAY METER-406C(electro-tech systems,inc.製)を用いてFederal Test Method Standard No.101 Method 4046に規定される10%カットオフ時間を測定した。20℃、20%RHの雰囲気下で測定した。
【0041】
(4)表面抵抗測定方法
参考までにヒューレットパッカード社製高抵抗測定器4329A及び抵抗測定箱16008Aを用いて、印加電圧100Vで測定した。20℃、20%RHの雰囲気下で測定した。
【0042】
これらの評価結果を表1に示す。
【表1】
【0043】
【発明の効果】
表1に示したように、本発明の電子写真用転写用紙兼インキジェット記録用紙はPPC高速コピー適性に優れ、インキジェット記録においても、インキのセット性、裏抜け防止性が優れており、本発明で採用した帯電性評価法がPPC高速コピー適性と相関が高いことが示された。特にPPC用紙の導電剤として本業界で主として用いられてきた無機塩である塩化ナトリウムを使用すると、その潮解性のためにインキの乾燥性が悪かった。
Claims (1)
- 植物繊維のみからなる濾水度(カナディアン スタンダード フリーネス)600ml以下のパルプを用い、填料としてふっ石水を含む化合物を対絶乾パルプあたり10〜40重量%含有し、さらに澱粉及びスチレン系樹脂を含む表面サイズ剤をサイズプレスして抄紙された用紙であり、前記用紙の、Federal Test Method Standard No.101 Method 4046に規定される帯電電位の減衰特性における10%カットオフ時間が、20℃・20%RH雰囲気における測定で60秒以内であることを特徴とする電子写真用転写用紙兼インキジェット記録用紙。
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