JP5929213B2 - センサー装置およびセンサー装置を備える構造物 - Google Patents

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Description

本発明は、センサー装置およびセンサー装置を備える構造物に関するものである。
センサー装置としては、例えば、コンクリート中の鉄筋の腐食状態を測定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
施工直後のコンクリート構造物中のコンクリートは、通常、強アルカリ性を呈する。そのため、施工直後のコンクリート構造物中の鉄筋は、その表面に不動態膜が形成されるため、安定である。しかし、施工後に酸性雨や排気ガス等の影響を受けたコンクリート構造物は、コンクリートが徐々に酸性化していくため、鉄筋が腐食することとなる。
そこで、例えば、特許文献1に係るセンサー装置では、コンクリート構造物中の鉄筋と同種材料からなる細線をコンクリート構造物中に埋設し、腐食による細線の断線の有無を検知することにより、コンクリート中の鉄筋の腐食状況を予測する。
特許文献1に係るセンサー装置では、細線が切断されたタイミングにより、コンクリート構造物中の鉄筋の腐食が始まった時期を知ることは可能である。しかし、特許文献1に係るセンサー装置では、細線が腐食し始めてから切断に至るまでの間に鉄筋の腐食が進行してしまい、鉄筋の腐食前に予防的または計画的な保全を行うことができないという課題があった。
特開平11−153568号公報
本発明の目的は、コンクリートの品質劣化を防止しつつ、測定対象物の状態を測定し、その測定結果に基づく情報を鉄筋の腐食前の計画的または予防的な保全に活用することができるセンサー装置を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のセンサー装置は、局所的に形成された凹部または貫通孔を備え、金属材料で構成された電気抵抗体と、
前記電気抵抗体の抵抗値を測定する機能を有する機能素子とを有することを特徴とする。
このように構成されたセンサー装置によれば、電気抵抗体に局所的に凹部または貫通孔が形成されているので、測定対象部位の塩化物イオン濃度が比較的低い状態であっても、電気抵抗体を孔食により腐食させることができる。
そのため、測定対象部位の塩化物イオン濃度が比較的低い状態であっても、電気抵抗体の抵抗値が変化し、かかる変化に基づいて塩化物イオンの侵入を高感度に検知することができる。
本発明のセンサー装置では、前記凹部または前記貫通孔の幅をWとし、前記凹部または前記貫通孔の深さをDとしたときに、
D/Wが1以上であることが好ましい。
これにより、電気抵抗体の孔食を効果的に生じさせることができる。
本発明のセンサー装置では、前記凹部または前記貫通孔の幅は、1μm以上100μm以下であることが好ましい。
これにより、電気抵抗体の孔食を効果的に生じさせることができる。
本発明のセンサー装置では、前記電気抵抗体は、板状またはシート状をなす2つの第1の部分と、前記2つの第1の部分を連結する長手形状の第2の部分とを有し、
前記凹部または前記貫通孔は、前記第2の部分に形成されていることが好ましい。
これにより、電気抵抗体の孔食による腐食速度を高めることができる。
本発明のセンサー装置では、前記金属材料は、測定対象部位の環境変化に伴って、表面に不動態膜を形成するか、または、表面に存在した不動態膜を消失させる金属材料であることが好ましい。
これにより、電気抵抗体の抵抗値に基づいて、測定対象部位に塩化物イオンが侵入したことをより高感度に検知することができる。
本発明のセンサー装置では、前記金属材料は、鉄または鉄系材料であることが好ましい。
鉄または鉄系合金(鉄系材料)は比較的安価で入手が容易である。また、例えば、センサー装置をコンクリート構造物の状態測定に用いた場合、電気抵抗体をコンクリート構造物中の鉄筋と同一材料(または近似した材料)で構成することが可能であり、コンクリート構造物中の鉄筋の腐食状態を効果的に検知することができる。
本発明のセンサー装置では、前記電気抵抗体を構成する第1の電気抵抗体と、
前記第1の電気抵抗体に対して離間して設けられた第2の電気抵抗体とを有し、
前記機能素子は、前記第1の電気抵抗体および前記第2の電気抵抗体のそれぞれの抵抗値を測定する機能を有することが好ましい。
これにより、測定対象部位の塩化物イオン濃度変化を測定対象部位のpH変化と区別して測定することができる。また、測定対象部位の塩化物イオン濃度の測定を中期にわたり行うことができる。
本発明のセンサー装置では、前記第2の電気抵抗体は、金属材料からなる多孔質体で構成されていることが好ましい。
これにより、第1の電気抵抗体および第2の電気抵抗体が同一環境に設置されていても、第2の電気抵抗体の塩化物イオンによる局所腐食の開始タイミングを、第1の電気抵抗体の塩化物イオンによる局所腐食の開始タイミングよりも簡単かつ確実に遅らせることができる。
本発明のセンサー装置では、前記電気抵抗体は、前記凹部または前記貫通孔に引っ張り応力を生じさせた状態で保持されていることが好ましい。
これにより、電気抵抗体の孔食による腐食速度を高めることができる。
本発明のセンサー装置では、前記機能素子は、前記電気抵抗体の抵抗値に基づいて、前記測定対象部位のpHあるいは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを検知する機能をも有することが好ましい。
これにより、測定対象物のpH変化あるいは塩化物イオン濃度変化に伴う状態変化を検知することができる。
本発明のセンサー装置では、アンテナと、前記アンテナに給電する機能を有する通信用回路とを有し、
前記機能素子は、前記通信用回路を駆動制御する機能をも有することが好ましい。
これにより、無線により測定対象物の外部へ測定結果を送信することができる。
本発明のセンサー装置は、局所的に形成された第1の凹部または第1の貫通孔を備え、金属材料で構成された第1の電気抵抗体と、
前記第1の電気抵抗体に対して離間して設けられ、局所的な凹部および貫通孔を備えていないか、または、前記第1の凹部または前記第1の貫通孔の幅よりも大きい幅で形成された第2の凹部または第2の貫通孔を備えた第2の電気抵抗体とを有し、
前記第1の電気抵抗体および前記第2の電気抵抗体の抵抗値をそれぞれ測定する機能を有する機能素子とを有することを特徴とする。
これにより、測定対象部位の塩化物イオン濃度変化を測定対象部位のpH変化と区別して測定することができる。また、測定対象部位の塩化物イオン濃度の測定を中期にわたり行うことができる。
本発明の第1実施形態に係るセンサー装置の使用状態の一例を示す図である。 図1に示すセンサー装置の概略構成を示すブロック図である。 図2に示す電気抵抗体および機能素子を説明するための平面図である。 図2に示す電気抵抗体を説明するための断面図(図3中のA−A線断面図)である。 図2に示す電気抵抗体の塩化物イオンによる腐食を説明する模式図である。 本発明の第2実施形態に係るセンサー装置を示す平面図である。 図6に示す電気抵抗体を説明するための断面図(図6中のA−A線断面図)である。 本発明の第3実施形態に係るセンサー装置を示す平面図である。 図8に示す電気抵抗体を説明するための断面図(図8中のA−A線断面図)である。 本発明の第4実施形態に係るセンサー装置を示す平面図である。 図10に示す電気抵抗体を説明するための断面図(図10中のA−A線断面図)である。 本発明の第5実施形態に係るセンサー装置の使用状態の一例を示す図である。 図12に示すセンサー装置に備えられた電気抵抗体(第1の電気抵抗体)を説明するための図である。 図13に示す電気抵抗体の上面図である。
以下、本発明のセンサー装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るセンサー装置の使用状態の一例を示す図、図2は、図1に示すセンサー装置の概略構成を示すブロック図、図3は、図2に示す電気抵抗体および機能素子を説明するための平面図、図4は、図2に示す電気抵抗体を説明するための断面図(図3中のA−A線断面図)、図5は、図2に示す電気抵抗体の塩化物イオンによる腐食を説明する模式図である。
なお、以下では、本発明のセンサー装置をコンクリート構造物の品質測定に用いる場合を例に説明する。
図1に示すセンサー装置1は、コンクリート構造物100の品質を測定するものである。
コンクリート構造物100は、コンクリート101内に複数の鉄筋102が埋設されている。そして、センサー装置1は、コンクリート構造物100のコンクリート101内の鉄筋102付近に埋設されている。なお、センサー装置1は、コンクリート構造物100の打設する際に、コンクリート101の打設前に鉄筋に固定して埋め込んでもよいし、打設後に硬化したコンクリート101に穿孔して埋め込んでもよい。
このセンサー装置1は、本体2と、その本体2の表面に露出した電気抵抗体3、4とを有する。本実施形態では、電気抵抗体3(第1の電気抵抗体)および電気抵抗体4(第2の電気抵抗体)は、鉄筋102よりもコンクリート構造物100の外表面側において、コンクリート構造物100の外表面からの距離が互いに等しくなるように設置されている。また、電気抵抗体3および電気抵抗体4は、それぞれ、コンクリート構造物100の外表面に対して平行または略平行となるように設置されている。そして、電気抵抗体3および電気抵抗体4は、それぞれ、コンクリート101の測定対象部位の酸または塩化物イオンによって腐食し、切断するように構成されている。なお、電気抵抗体3および電気抵抗体4については、後に詳述する。
また、センサー装置1は、図2に示すように、電気抵抗体3および電気抵抗体4に電気的に接続された機能素子51と、電源52と、温度センサー53と、通信用回路54と、アンテナ55と、発振器56とを有し、これらが本体2内に収納されている。
以下、センサー装置1を構成する各部を順次説明する。
(本体)
本体2は、電気抵抗体3、電気抵抗体4および機能素子51等を支持する機能を有する。
このような本体2は、図3および図4に示すように、電気抵抗体3、電気抵抗体4および機能素子51を支持する基板21を有する。なお、基板21は、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56をも支持するが、図3および図4では、説明の便宜上、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56の図示を省略している。
この基板21は、絶縁性を有する。基板21としては、特に限定されず、例えば、アルミナ基板、樹脂基板等を用いることができる。
この基板21上には、例えばソルダーレジストのような絶縁性の樹脂組成物で構成された絶縁層23が設けられている。そして、この絶縁層23を介して基板21上には、電気抵抗体3、電気抵抗体4および機能素子51が実装されている。
図3に示すように、機能素子51の導体部61、62(電極パッド)が配線71、72を介して電気抵抗体3の両端部に電気的に接続され、機能素子51の導体部63、64(電極パッド)が配線73、74を介して電気抵抗体4の両端部に電気的に接続されている。
また、本体2は、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56を収納する機能を有する。
特に、本体2は、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56を液密的に収納するように構成されている。
具体的には、図3および図4に示すように、本体2は、封止部24を有する。この封止部24は、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56を封止する機能を有する。これにより、センサー装置1を水分やコンクリートの存在下に設置した場合に、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56の劣化を防止することができる。
ここで、封止部24は、開口部241を有し、この開口部241から電気抵抗体3および電気抵抗体4の一部をそれぞれ露出させつつ、電気抵抗体3および電気抵抗体4以外の各部を覆うように設けられている。これにより、封止部24が電気抵抗体3および電気抵抗体4以外の各部の劣化を防止しつつ、センサー装置1が測定を行うことができる。なお、開口部241は、電気抵抗体3の少なくとも一部および電気抵抗体4の少なくとも一部を露出するように形成されていればよい。
封止部24の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂のような熱可塑性樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂のような熱硬化性樹脂等の各種樹脂材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、封止部24は、必要に応じて設ければよく、省略することもできる。
(電気抵抗体)
電気抵抗体3(第1の電気抵抗体)および電気抵抗体4(第2の電気抵抗体)は、図4に示すように、それぞれ、前述した本体2の外表面上(より具体的には基板21上)に設けられている。特に、電気抵抗体3および電気抵抗体4は、同一平面上に設けられている。そのため、電気抵抗体3および電気抵抗体4の設置環境の差が生じるのを防止することができる。
また、電気抵抗体3および電気抵抗体4は、互いに電位の影響を受けない程度(例えば数mm)に離間している。
この電気抵抗低3、4は、それぞれ、金属材料で構成され、酸または塩化物イオンにより腐食するものである。そのため、電気抵抗体3、4は、酸または塩化物イオンの環境下で、腐食により切断される。
また、電気抵抗体3、4の外形は、それぞれ、板状またはシート状をなしている。また、電気抵抗体3、4は、それぞれ、長尺状をなしている。すなわち、電気抵抗体3、4は、それぞれ、帯状をなしている。これにより、電気抵抗体3、4をそれぞれ腐食により切断され易くすることができる。
また、電気抵抗体3は、電気抵抗体4よりも長尺となっている。なお、電気抵抗体3、4の長さの関係は、これに限定されず、例えば、電気抵抗体4が電気抵抗体3よりも長尺であってもよいし、電気抵抗体の長さと電気抵抗体4の長さが等しくてもよい。
特に、電気抵抗体3の側面には、局所的に凹部31(切欠き)が形成されている。
このような凹部31を備える電気抵抗体3では、測定対象部位の塩化物イオン濃度が比較的低い状態であっても、電気抵抗体3を孔食により腐食させることができる。
そのため、測定対象部位の塩化物イオン濃度が比較的低い状態であっても、電気抵抗体3の抵抗値が変化し、かかる変化に基づいて塩化物イオンの侵入を高感度に検知することができる。
以下、図5に基づいて、凹部31を有する電気抵抗体3の塩化物イオンによる腐食(孔食)についてより具体的に説明する。
電気抵抗体3が塩化物イオン(Cl)の存在下にあるとき、凹部31内に侵入した塩化物イオンにより、電気抵抗体3の表面に形成された不動態膜の局所的な破壊が一旦生じると、電気抵抗体3を構成する第1の金属材料が金属イオン(Mnn+)として凹部31内に溶出する。
例えば、第1の金属材料が純鉄(Fe)である場合、
Fe→Fe2++2e
の反応により、凹部31内に金属イオンとしてFe2+が溶出する。
このように凹部31内に溶出した金属イオンは、拡散速度が遅く、凹部31内に滞留する。これにより、凹部31内での金属イオンの濃度が増加する。
すると、凹部31内での電気的中性を保つように、凹部31外から凹部31内へ塩化物イオンが泳動し、塩化物イオンが凹部31内に集中する。これにより、凹部31内での塩化物イオンの濃度も増加する。
そのため、凹部31外における塩化物イオンの濃度に比し、凹部31内における塩化物イオンの濃度が高くなる。
また、凹部31内では、金属イオンと塩化物イオンと水との反応により、水素イオンが発生し、凹部31内の水素イオン濃度が増加、すなわち凹部31内のpHが低下する。
例えば、第1の金属材料が純鉄(Fe)である場合、
Fe2++2Cl→FeCl
FeCl+2HO→Fe(OH)+HCl
の反応により、凹部31内の水素イオンの濃度が増加する。
そのため、凹部31外における水素イオンの濃度に比し、凹部31内における水素イオンの濃度が高くなる。
以上のようなことから、凹部31外における塩化物イオンおよび水素イオンの濃度が比較的少なくても、凹部31内の塩化物イオン濃度および水素イオン濃度が高まり、電気抵抗体3の腐食(孔食)が進行することとなる。
ここで、電気抵抗体3の表面は、孔食が生じる部分(凹部31の壁面付近)がアノード領域となり、凹部31の外側に露出した部分がカソード領域となる。
例えば、第1の金属材料が純鉄(Fe)である場合、
電気抵抗体3のアノード領域では、Fe→Fe2++2eのアノード反応が生じ、
電気抵抗体3のカソード領域では、1/2O+HO+2e→2OH−のカソード反応が生じる。
このようなカソード反応は、電気抵抗体3のカソード領域を大きくすることにより、アノード反応が促進される。そのため、電気抵抗体3の表面の凹部31の外側に露出した部分の面積を大きくすることにより、測定対象部位の塩化物イオン濃度がより低い状態においても、電気抵抗体3の孔食が生じるため、測定対象部位への塩化物イオンの侵入をより高感度に検知することができる。
本実施形態では、凹部31は、電気抵抗体3の厚さ方向(上下方向)の全域に亘って形成されたV字溝である。
このような凹部31の横断面は、開口部側(電気抵抗体3の一方の側面側)から底部側(電気抵抗体3の他方の側面側)に向けて幅が漸減する三角形をなしている。これにより、凹部31の深さが比較的浅くても、前述したような電気抵抗体3の孔食を効果的に生じさせることができる。
また、凹部31の幅(本実施形態では電気抵抗体3を側方からみたときに延在方向に対して垂直な方向での長さ)をWとし、凹部31の深さ(最大深さ)をDとしたきに、D/Wは、1以上であるのが好ましく、1以上4以下であるのがより好ましく、2以上3以下であるのがさらに好ましい。これにより、電気抵抗体3の孔食を効果的に生じさせることができる。
これに対し、D/Wが小さすぎると、後述するような凹部31内での金属イオンの滞留が生じ難く、その結果、電気抵抗体3の孔食を効果的に生じさせることが難しい。一方、D/Wが大きすぎると、電気抵抗体3の形状、構成材料等によっては、凹部31の形成が難しく、また、D/Wを大きくしても、電気抵抗体3の孔食を生じさせる効果はほとんど変わらない。
なお、凹部31は、その延在方向での少なくとも一部において、前述したようなD/Wの関係を満たせばよい。また、「凹部31の幅」とは、凹部31の横断面における開口端の幅をいう。
この凹部31は、例えば、電気抵抗体3をエッチング(ドライエッチングまたはウエットエッチング)することにより形成することができる。このようにして凹部31を形成することにより、後述するような電気抵抗体3の塩化物イオンによる腐食(孔食)を促進し得る凹部31を簡単かつ確実に形成することができる。なお、凹部31の形成方法としては、これに限定されるものではなく、例えば、レーザー、機械加工等を用いることもできる。
また、この凹部31の深さ(最大深さ)Dは、特に限定されないが、例えば、1μm以上100μm以下であるのが好ましく、10μm以上80μm以下であるのがより好ましく、20μm以上60μm以下であるのがさらに好ましい。これにより、後述するような電気抵抗体3の孔食を生じさせ得る凹部31を簡単かつ確実に形成することができる。
また、凹部31の幅Wは、特に限定されないが、例えば、1μm以上100μm以下程度であるのが好ましい。これにより、電気抵抗体3の孔食を効果的に生じさせることができる。
また、凹部31の延在方向での長さは、特に限定されない。
なお、凹部31の数は、本実施形態では1つであるが、電気抵抗体3の孔食を促進することができれば、2つ以上であってもよい。
このような電気抵抗体3(第1の電気抵抗体)の構成材料(第1の金属材料)としては、酸または塩化物イオンの存在下で腐食するものであれば、特に限定されないが、測定対象部位の環境変化に伴って表面に不動態膜を形成するか、または、表面に存在した不動態膜を消失させる金属材料を用いるのが好ましい。
これにより、測定対象部位のpHが所定値以上である場合に、電気抵抗体3の表面に不動態膜が形成される。
このような不動態膜(第1の不動態膜)を形成する金属材料(第1の金属材料)としては、例えば、Fe、Ni、Mg、Znまたはこれらを含む合金等が挙げられる。
例えば、Feは、pHが約9よりも大きいときに不動態膜を形成する。また、FeAl(Al0.8%)系炭素鋼は、pHが約4よりも大きいときに不動態膜を形成する。また、Niは、pHが8〜14であるときに不動態膜を形成する。また、Mgは、pHが10.5よりも大きいときに不動態膜を形成する。また、Znは、pHが6〜12であるときに不動態膜を形成する。
また、例えば、炭素鋼(SD345)は、塩化物イオン濃度が約1.2kg/mを超えたときに不動態膜の破壊が始まる。
中でも、電気抵抗体3を構成する金属材料は、FeまたはFeを含む合金(Fe系合金)、すなわち鉄系材料(具体的には、炭素鋼、合金鋼、SUS等)、ニッケルまたはこれらを含む合金であるのが好ましい。これらの材料は安価で入手が容易である。また、本実施形態のように、センサー装置1をコンクリート構造物100の状態測定に用いた場合、電気抵抗体3の構成材料をコンクリート構造物100の鉄筋102と同一または近似の材料とすることが可能であり、鉄筋102の腐食環境状態を効果的に検知することができる。例えば、電気抵抗体3がFeで構成されている場合、pHが9以上か否かの判断ができる。
また、電気抵抗体3は、前述したような第1の金属材料からなる緻密質体で構成されているのが好ましい。これにより、電気抵抗体3の後述する孔食を生じさせやすくすることができる。
一方、電気抵抗体4(第2の電気抵抗体)の構成材料(第2の金属材料)としては、電気抵抗体3の構成材料と同様、酸または塩化物イオンの存在下で腐食するものであれば、特に限定されないが、不動態膜(第2の不動態膜)を形成する金属材料(第2の金属材料)、例えば、Fe、Ni、Mg、Znまたはこれらを含む合金等を用いるのが好ましい。
また、電気抵抗体4の構成材料は、前述した電気抵抗体3の構成材料と同じであっても異なっていてもよい。
また、電気抵抗体4を構成する金属材料を電気抵抗体3を構成する金属材料と同種とすることにより、電気抵抗体4の酸性化または中性化による腐食の開始タイミングと、電気抵抗体3の酸性化または中性化による腐食の開始タイミングとを一致または近似したものとすることができる。
このようなことから、測定対象部位の塩化物イオン濃度変化を測定対象部位のpH変化と区別して測定することができる。
また、電気抵抗体4は、金属材料で構成された緻密質体で構成されていてもよいし、金属材料で構成された多孔質体で構成されていてもよい。
電気抵抗体4が金属材料からなる多孔質体で構成された多孔質電気抵抗体である場合、電気抵抗体4の表面には腐食の生じやすい部分として微細な多数の凹部が均一に分散して形成される。そのため、電気抵抗体4の表面は、塩化物イオンの存在下において、均一に腐食が生じ、局所的な腐食(孔食)が抑制される。
このようなことから、電気抵抗体4の塩化物イオンによる腐食の速度を遅くすることができる。そのため、測定対象部位の塩化物イオン濃度の測定を長期にわたり行うことができる。
一方、電気抵抗体4が金属材料からなる緻密質体で構成された緻密質電気抵抗体である場合、電気抵抗体4の表面は、塩化物イオンの存在下において、最も腐食が生じやすい部分が最初に腐食し、その最初に腐食を生じた部位の腐食し易さが他の部分に比してさらに大きくなるため、局所的な腐食(孔食)が生じる。
このようなことから、電気抵抗体3の塩化物イオンによる腐食の速度よりも遅いものの、電気抵抗体4の塩化物イオンによる腐食の速度を速くすることができる。そのため、測定対象部位の塩化物イオン濃度の測定を中期にわたり行うことができる。
このような電気抵抗体3および電気抵抗体4は、それぞれ、特に限定されず、成膜法を用いて形成することができる。
また、電気抵抗体3、4の厚さは、それぞれ、特に限定されないが、腐食による電気抵抗の変化が大きく、コンクリート強度に影響を及ぼさないためには、10nm以上5mm以下であるのが好ましい。
(機能素子)
機能素子51は、前述した本体2の内部に埋設されている。なお、機能素子51は、前述した本体2の基板21に対して電気抵抗体3および電気抵抗体4とは、同一面に設けても、反対側に設けても良い。
この機能素子51は、電気抵抗体3および電気抵抗体4の抵抗値をそれぞれ測定する機能を有する。これにより、電気抵抗体3、4の抵抗値に基づいて、測定対象部位の状態を測定することができる。
また、機能素子51は、電気抵抗体3および電気抵抗体4の抵抗値に基づいて、測定対象物であるコンクリート構造物100の測定対象部位のpHあるいは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを検知する機能をも有する。これにより、コンクリート構造物100のpH変化あるいは塩化物イオン濃度変化に伴う状態変化を検知することができる。
このような機能素子51は、例えば、集積回路である。より具体的には、機能素子51は、例えば、MCU(マイクロコントロールユニット)であり、図2に示すように、CPU511と、A/D変換回路512と、測定回路514とを有する。
また、機能素子51は、電源52からの通電により作動する。電源52は、機能素子51を動作可能な電力を供給できるものであれば、特に限定されず、例えば、ボタン型電池のような電池であってもよいし、圧電素子のような発電機能を有する素子を用いた電源ものであってもよい。
また、機能素子51は、温度センサー53の検知温度情報を取得し得るように構成されている。これにより、測定対象部位の温度に関する情報も得ることができる。このような温度に関する情報を用いることにより、測定対象部位の状態をより正確に測定したり、測定対象部位の変化を高精度に予想したりすることができる。
温度センサー53は、測定対象物であるコンクリート構造物100の測定対象部位の温度を検知する機能を有する。このような温度センサー53としては、特に限定されず、例えば、サーミスター、熱電対等の公知の様々な種類の温度センサーを用いることができる。
また、機能素子51は、通信用回路54を駆動制御する機能をも有する。例えば、機能素子51は、電気抵抗体3、4の抵抗値に関する情報(以下、単に「抵抗値情報」ともいう)と、測定対象部位のpHあるいは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かに関する情報(以下、単に「pH情報」ともいう)とをそれぞれ通信用回路54に入力する。また、機能素子51は、温度センサー53によって検知された温度に関する情報(以下、単に「温度情報」ともいう)も併せて通信用回路54に入力する。
通信用回路54は、アンテナ55に給電する機能(送信機能)を有する。これにより、通信用回路54は、入力された情報をアンテナ55を介して無線送信することができる。送信された情報は、コンクリート構造物100の外部に設けられた受信機(リーダー)で受信される。
この通信用回路54は、例えば、電磁波を送信するための送信回路、信号を変調する機能を有する変調回路等を有する。なお、通信用回路54は、信号の周波数を小さく変換する機能を有するダウンコンバータ回路、信号の周波数を大きく変換する機能を有するアップコンバータ回路、信号を増幅する機能を有する増幅回路、電磁波を受信するための受信回路、信号を復調する機能を有する復調回路等を有していてもよい。
また、アンテナ55は、特に限定されないが、例えば、金属材料、カーボン等で構成され、巻線、薄膜等の形態をなす。
また、機能素子51は、発振器56からのクロック信号を取得し得るように構成されている。これにより、各回路の同期をとったり、各種情報に時刻情報を付加したりすることができる。
発振器56は、特に限定されないが、例えば、水晶振動子を利用した発振回路で構成されている。
以上説明したように構成されたセンサー装置1を用いた測定方法は、電気抵抗体3および電気抵抗体4を測定対象物であるコンクリート構造物100内にそれぞれ埋設し、電気抵抗体3、4の抵抗値に基づいて、コンクリート構造物100の状態を測定する。
以下、電気抵抗体3、4がFe(炭素鋼)で構成されている場合を一例として、センサー装置1の作用を説明する。
打設直後のコンクリート構造物100において、通常、適切に打設されていれば、コンクリート101は強アルカリ性を呈する。そのため、このとき、電気抵抗体3および電気抵抗体4は、それぞれ、安定な不動態膜を形成する。
その後、コンクリート構造物100は、二酸化炭素、酸性雨、排気ガス等の影響により、コンクリート101のpHが徐々に酸性側に変化していく。
コンクリート101のpHが9程度にまで下がる前に、コンクリート構造物100のコンクリート101の測定対象部位に塩化物イオンが侵入すると、その塩化物イオン濃度が炭素鋼を腐食させる限界濃度(約1.2kg/m)に達するまでの間、電気抵抗体4に形成された不動態膜は、塩化物イオンの存在下においても、腐食せず、電気抵抗体4の抵抗値がほとんど変化せず低い状態に維持される。一方、電気抵抗体3に形成された不動態膜は、測定対象部位の塩化物イオン濃度が炭素鋼を腐食させる限界濃度に達していなくても(約0.1kg/m程度であっても)、塩化物イオンの存在下において、凹部31による孔食が生じ、電気抵抗体3の抵抗値が大きくなる。
そして、測定対象部位の塩化物イオン濃度が炭素鋼を腐食させる限界濃度に達すると、電気抵抗体4も腐食し、電気抵抗体4の抵抗値が大きくなる。
このような電気抵抗体3、4の抵抗値に基づいて、測定対象部位への塩化物イオンの侵入を段階的に検知することができる。
また、コンクリート構造物100のコンクリート101の測定対象部位に塩化物イオンが侵入していなくても、コンクリート101のpHが9程度にまで下がると、電気抵抗体3、4がともに腐食し、電気抵抗体3、4の抵抗値がともに大きくなる。
このような電気抵抗体3、4の抵抗値に基づいて、測定対象部位のpHが9程度になったことを検知することができる。
このような検知結果を利用することにより、コンクリート構造物100の打設後の品質の経時変化をモニタリングすることができる。そのため、鉄筋102が腐食する前に、コンクリート101の劣化(中性化や塩分侵入)を把握することができる。これにより、鉄筋102が腐食する前に、コンクリート構造物100に塗装や防腐剤混入モルタル等による補修工事を行うことが可能となる。
また、コンクリート構造物100の打設時に異常があった否かを判断することもできる。そのため、コンクリート構造物100の初期トラブルを防止し、コンクリート構造物100の品質を向上させることができる。
以上説明したように第1実施形態のセンサー装置1によれば、電気抵抗体3に局所的に凹部31が形成されているので、コンクリート構造物100の塩化物イオン濃度が比較的低い状態であっても、電気抵抗体3を孔食により腐食させることができる。
そのため、コンクリート構造物100の塩化物イオン濃度が比較的低い状態であっても、電気抵抗体3の抵抗値が変化し、かかる変化に基づいて塩化物イオンの侵入を高感度に検知することができる。
また、本実施形態では、局所的な凹部を有しない電気抵抗体4が電気抵抗体3とは別体として設けられているので、測定対象部位の塩化物イオン濃度変化を測定対象部位のpH変化と区別して測定することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図6は、本発明の第2実施形態に係るセンサー装置を示す平面図、図7は、図6に示す電気抵抗体を説明するための断面図(図6中のA−A線断面図)である。
以下、第2実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2実施形態のセンサー装置は、電気抵抗体の形状および数が異なる以外は、第1実施形態のセンサー装置とほぼ同様である。なお、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図6に示すセンサー装置1Aは、本体2上に設けられた電気抵抗体3Aを有する。
電気抵抗体3Aは、互いに離間した板状またはシート状をなす2つの第1の部分32、33と、この2つの第1の部分32、33間に形成された第2の部分34とから構成されている。
第1の部分32、33は、それぞれ、平面視にて四角形をなしている。
そして、第2の部分34は、第1の部分32と第1の部分33とを連結している。本実施形態では、第2の部分34は、長尺状(長手形状)をなし、その一端が第1の部分32に接続され、他端が第1の部分33に接続されている。
特に、第2の部分34の側面には、前述した第1実施形態の電気抵抗体3の凹部31と同様に構成された凹部31Aが形成されている。これにより、電気抵抗体3Aの孔食による腐食速度を高めることができる。
この第2の部分34の平面視での面積は、第1の部分32の平面視での面積、および、第1の部分33の平面視での面積よりも小さくなっている。すなわち、第1の部分32の平面視での面積、および、第1の部分33の平面視での面積は、それぞれ、第2の部分34の平面視での面積よりも大きくなっている。これにより、電気抵抗体3Aの凹部31Aによる孔食時にカソード反応を生じる部分の表面積を大きくすることができる。また、電気抵抗体3Aの凹部31Aによる孔食時にアノード反応を生じる部分の横断面(電流が流れる方向に直交する断面)の面積を小さくし、電気抵抗体3Aが凹部31による孔食により切断されやすくすることができる。
このようなセンサー装置1Aによれば、電気抵抗体3Aの第2の部分34を効果的に孔食させることができる。
以上説明したような第2実施形態に係るセンサー装置1Aによっても、コンクリート101の品質劣化を防止しつつ、測定対象物の状態を測定し、その測定結果に基づく情報を鉄筋102の腐食前の計画的または予防的な保全に活用することができる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
図8は、本発明の第3実施形態に係るセンサー装置を示す平面図、図9は、図8に示す電気抵抗体を説明するための断面図(図8中のA−A線断面図)である。
以下、第3実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第3実施形態のセンサー装置は、第1の電気抵抗体の構成が異なる以外は、第1実施形態のセンサー装置とほぼ同様である。なお、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図8に示すセンサー装置1Bは、本体2上に設けられた電気抵抗体3Bを有する。
電気抵抗体3Bは、長尺の板状またはシート状をなし、上面(本体2とは反対側の面)には、局所的に凹部31Bが形成されている。
このような凹部31Bを備える電気抵抗体3Bでは、前述した第1実施形態の電気抵抗体3と同様、測定対象部位の塩化物イオン濃度が比較的低い状態であっても、電気抵抗体3Bを孔食により腐食させることができる。
本実施形態では、凹部31Bは、平面視にて帯状をなしている。また、凹部31Bは、電気抵抗体3Bの長手方向に沿って延在している。
また、本実施形態では、凹部31Bは、V字溝であり、凹部31Bの横断面は、開口部側(電気抵抗体3B上面側)から底部側(電気抵抗体3Bの下面側)に向けて幅が漸減する三角形をなしている。
以上説明したような第3実施形態に係るセンサー装置1Bによっても、コンクリート101の品質劣化を防止しつつ、測定対象物の状態を測定し、その測定結果に基づく情報を鉄筋102の腐食前の計画的または予防的な保全に活用することができる。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
図10は、本発明の第4実施形態に係るセンサー装置を示す平面図、図11は、図10に示す電気抵抗体を説明するための断面図(図10中のA−A線断面図)である。
以下、第4実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第4実施形態のセンサー装置は、電気抵抗体の形状および数が異なる以外は、第1実施形態のセンサー装置とほぼ同様である。また、第4実施形態のセンサー装置は、電気抵抗体の凹部の構成が異なる以外は、第2実施形態のセンサー装置とほぼ同様である。なお、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図10に示すセンサー装置1Cは、本体2上に設けられた電気抵抗体3Cを有する。
電気抵抗体3Cは、互いに離間した2つの第1の部分32、33と、この2つの第1の部分32、33間に形成された第2の部分34Cとから構成されている。
第2の部分34Cは、第1の部分32と第1の部分33とを連結している。本実施形態では、第2の部分34Cは、長尺状(帯状)をなし、その一端が第1の部分32に接続され、他端が第1の部分33に接続されている。
特に、第2の部分34Cの上面には、凹部31Cが形成されている。
このような凹部31Cを備える電気抵抗体3Cでは、前述した第1実施形態の電気抵抗体3と同様、測定対象部位の塩化物イオン濃度が比較的低い状態であっても、電気抵抗体3Cを孔食により腐食させることができる。
本実施形態では、凹部31Cは、平面視にて帯状をなしている。また、凹部31Cは、電気抵抗体3Cの長手方向に沿って延在している。
また、本実施形態では、凹部31Cは、矩形溝であり、凹部31Cの横断面は、開口部側(電気抵抗体3C上面側)から底部側(電気抵抗体3Cの下面側)に向けて幅が一定となっている。
このような電気抵抗体3Cでは、前述した第2実施形態の電気抵抗体3Aと同様、第1の部分32の平面視での面積、および、第1の部分33の平面視での面積は、それぞれ、第2の部分34Cの平面視での面積よりも大きくなっている。これにより、電気抵抗体3Cの第2の部分34Cを効果的に孔食させることができる。
以上説明したような第4実施形態に係るセンサー装置1Cによっても、コンクリート101の品質劣化を防止しつつ、測定対象物の状態を測定し、その測定結果に基づく情報を鉄筋102の腐食前の計画的または予防的な保全に活用することができる。
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態を説明する。
図12は、本発明の第5実施形態に係るセンサー装置の使用状態の一例を示す図、図13は、図12に示すセンサー装置に備えられた電気抵抗体(第1の電気抵抗体)を説明するための図、図14は、図13に示す電気抵抗体の上面図である。
以下、第5実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第5実施形態のセンサー装置は、電気抵抗体を1つ追加した以外は、第1実施形態のセンサー装置とほぼ同様である。なお、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図12に示すセンサー装置1Dは、電気抵抗体3、4の他に、本体2D上に設けられた電気抵抗体3Dを有する。
本実施形態では、電気抵抗体3、4、3Dは、コンクリート構造物100の外表面からの距離が、コンクリート構造物100の外表面と鉄筋102との間に距離(すなわち鉄筋102のかぶり深さ)とほぼ等しくなるように設置されている。
図13および図14に示すように、電気抵抗体3Dは、棒状の絶縁体36aの両端に固着した導体36b、36cと、絶縁体36aの外周面上に螺旋状に巻回された導体36dとを有する。
絶縁体36aは、四角柱状をなしている。すなわち、絶縁体36aの横断面は、四角形をなしている。これにより、絶縁体36aに巻回された導体36dは、絶縁体36aの角部に対応する部分に生じる引っ張り応力を大きくすることができる。
この絶縁体36aの構成材料としては、測定対象物内で比較的安定して存在し得る絶縁性材料であれば、特に限定されないが、例えば、SiO、Si等の絶縁性セラミックス材料、PSF(ポリサルフォン)、PAI(プリアミドイミド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の樹脂材料等を用いることができる。
導体36b、36cは、絶縁体36aの両端に例えば接着剤または嵌合により固着されている。
この導体36b、36cの構成材料としては、導電性を有するものであれば、特に限定されないが、導体36dの構成材料と同様のものを用いるのが好ましい。
導体36dは、長尺状をなし、絶縁体36aの外周に巻回されており、一端部が導体36bに半田等により固定され、他端部が導体36cに半田等により固定されている。これにより、導体36dにその長手方向に沿って引っ張り応力を生じさせることができる。
このように、電気抵抗体3Dは、その表面の一部(具体的には導体36d)に引っ張り応力を生じさせた状態で保持されている。これにより、電気抵抗体3Dの腐蝕速度を高めることができる。これは、電気抵抗体3Dの表面の引っ張り応力が生じた部分は原子間または分子間の結合が弱くなるため、電気抵抗体3Dの表面に不導体膜が形成されていても、その不導体膜が酸または塩化物イオンにより破壊されやすくなるからである。
しかも、導体36dの途中には、切欠き状の複数の凹部31Dが形成されている。この凹部31Dは、導体36dの、絶縁体36aの角部に対応する部位に設けられている。前述したように、絶縁体36aが四角柱状をなすことにより、絶縁体36aに巻回された絶縁体36aの角部に対応する部分に大きな生じる引っ張り応力が生じる。そのため、凹部31Dを絶縁体36aの角部に対応する部位に設けることにより、凹部31Dに引っ張り応力を効果的に生じさせることができる。
このような電気抵抗体3Dは、電気抵抗体3、4と同一環境に設置されていても、電気抵抗体3Dの塩化物イオンによる局所腐食の開始タイミングを、電気抵抗体3、4の塩化物イオンによる局所腐食の開始タイミングよりも早めることができる。
以上説明したような第5実施形態に係るセンサー装置1Dによっても、コンクリート101の品質劣化を防止しつつ、測定対象物の状態を測定し、その測定結果に基づく情報を鉄筋102の腐食前の計画的または予防的な保全に活用することができる。
以上、本発明のセンサー装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明のセンサー装置では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
また、前述した実施形態では、孔食を生じさせ易くするために電気抵抗体に凹部を形成した場合を例に説明したが、電気抵抗体に貫通孔を形成することにより電気抵抗体の孔食を生じさせ易くしてもよい。
また、第2の電気抵抗体には、第1の電気抵抗体に形成された凹部(第1の凹部)または貫通孔(第1の貫通孔)の幅よりも大きい幅の第2の凹部または第2の貫通孔が形成されていてもよい。
また、前述した実施形態では電気抵抗体がそれぞれ基板上に設けられた場合を例に説明したが、これに限定されず、例えば、電気抵抗体は、例えば、センサー装置の本体の封止樹脂で構成された部分の外表面上に設けてもよい。
また、電気抵抗体の設置位置、大きさ(大小関係)、数等についても、前述したような測定が可能であれば、前述した実施形態に限定されず、任意である。
また、前述した実施形態では機能素子がCPU、A/D変換回路および測定回路を有する場合を例に説明したが、これに限定されず、例えば、機能素子には、ROM、RAM、各種駆動回路等の他の回路が組み込まれていてもよい。
また、前述した実施形態では電気抵抗体の抵抗値に関する情報をアクティブタグ通信により無線送信によりセンサー装置外部へ送信する場合を例に説明したが、これに限定されず、例えば、パッシブタグ通信を用いて情報をセンサー装置の外部へ送信してもよいし、有線により情報をセンサー装置の外部へ送信してもよい。
また、前述した実施形態では機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56を本体2内に収納し、これらを電気抵抗体3および電気抵抗体4とともに測定対処物であるコンクリート構造物100内に埋設する場合を例に説明したが、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56を測定対象物の外部に設けてもよい。
1‥‥センサー装置 1A‥‥センサー装置 1B‥‥センサー装置 1C‥‥センサー装置 1D‥‥センサー装置 2‥‥本体 3‥‥電気抵抗体 3A‥‥電気抵抗体 3B‥‥電気抵抗体 3C‥‥電気抵抗体 3D‥‥電気抵抗体 4‥‥電気抵抗体 21‥‥基板 23‥‥絶縁層 24‥‥封止部 31‥‥凹部 31A‥‥凹部 31B‥‥凹部 31C‥‥凹部 31D‥‥凹部 32‥‥第1の部分 33‥‥第1の部分 34‥‥第2の部分 34C‥‥第2の部分 36a‥‥絶縁体 36b‥‥導体 36c‥‥導体 36d‥‥導体 51‥‥機能素子 52‥‥電源 53‥‥温度センサー 54‥‥通信用回路 55‥‥アンテナ 56‥‥発振器 61‥‥導体部 62‥‥導体部 63‥‥導体部 64‥‥導体部 71‥‥配線 72‥‥配線 73‥‥配線 74‥‥配線 100‥‥コンクリート構造物 101‥‥コンクリート 102‥‥鉄筋 241‥‥開口部 511‥‥CPU 512‥‥変換回路 514‥‥測定回路 W‥‥幅

Claims (13)

  1. 第1の金属材料で構成された第1の電気抵抗体と、
    第2の金属材料で構成された第2の電気抵抗体と、
    前記第1の電気抵抗体および前記第2の電気抵抗体との抵抗値をそれぞれ測定する機能を有する機能素子とを有し、
    前記第1の電気抵抗体は、局所的に形成された第1の凹部または第1の貫通孔を備え、
    前記第2の電気抵抗体は、多孔質体で構成され、
    前記機能素子で測定された前記第1の電気抵抗体および前記第2の電気抵抗体の抵抗値に基づいて、測定対象部位の状態を測定し得るように構成されたことを特徴とするセンサー装置。
  2. 前記第1の凹部または前記第1の貫通孔の幅をWとし、前記第1の凹部または前記第1の貫通孔の深さをDとしたときに、
    D/Wが1以上である請求項1に記載のセンサー装置。
  3. 前記第1の凹部または前記第1の貫通孔の幅は、1μm以上100μm以下である請求項1または2に記載のセンサー装置。
  4. 前記第1の電気抵抗体は、板状またはシート状をなす2つの第1の部分と、前記2つの第1の部分を連結する長手形状の第2の部分とを有し、
    前記第1の凹部または前記貫通孔は、前記第2の部分に形成されている請求項1ないし3のいずれかに記載のセンサー装置。
  5. 前記第2の電気抵抗体は、局所的な凹部および貫通孔を備えていないか、または、前記第1の凹部または前記第1の貫通孔の幅より大きい幅で形成された第2の凹部または第2の貫通孔を備える請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のセンサー装置。
  6. 前記第1の金属材料および前記第2の金属材料は、測定対象部位の環境変化に伴って、表面に不動態膜を形成するか、または、表面に存在した不動態膜を消失させる金属材料である請求項1ないしのいずれかに記載のセンサー装置。
  7. 前記第1の金属材料および前記第2の金属材料は、鉄または鉄系材料である請求項に記載のセンサー装置。
  8. 前記第1の金属材料と前記第2の金属材料とは、同種の金属材料である請求項1から7に記載のセンサー装置。
  9. 前記第1の電気抵抗体は、前記第1の凹部または前記貫通孔に引っ張り応力を生じさせた状態で保持されている請求項1ないしのいずれかに記載のセンサー装置。
  10. 前記機能素子は、前記第1の電気抵抗体および前記第2の電気抵抗体との抵抗値に基づいて、前記測定対象部位のpHあるいは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを検知する機能をも有する請求項1ないし9のいずれかに記載のセンサー装置。
  11. アンテナと、前記アンテナに給電する機能を有する通信用回路とを有し、
    前記機能素子は、前記通信用回路を駆動制御する機能をも有する請求項1ないし10のいずれかに記載のセンサー装置。
  12. 前記センサー装置は、構造物内に設けられ、前記第1の電気抵抗体と前記第2の電気抵抗体とは、前記構造物の表面からの距離が互いに等しくなるように設けられている請求項1ないし11に記載のセンサー装置。
  13. 請求項1ないし11に記載のセンサー装置を備える構造物。
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