JP4588108B1 - 腐食センサ装置、腐食センサ装置の製造方法、腐食検出方法、センサおよびセンサの製造方法 - Google Patents

腐食センサ装置、腐食センサ装置の製造方法、腐食検出方法、センサおよびセンサの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】細線の切断を検出する考え方を踏襲しながらも、製造上の問題を解決し、感度が高く、設計自由度を大きくする。
【解決手段】コンクリート構造物中の鋼材の腐食進行状況を検出する腐食センサ装置1であって、鉄を圧延することにより作製した鉄箔材で形成された導体パターン部10aと、導体パターン部10aを保持する基板10bと、導体パターン部10aの電気的特性を測定し、測定した導体パターン部10aの電気的特性に基づいて、コンクリート構造物中の鋼材腐食因子を検出する腐食検出部2と、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、コンクリート構造物中の鋼材の腐食進行状況を検出する技術に関する。
コンクリート構造物中の鋼材は、コンクリートがアルカリ性環境を保持していることで鋼材表面に不動態皮膜を形成し、腐食から保護されている。しかしながら、例えば、空気中の二酸化炭素、下水道施設における硫酸、あるいは塩化物イオンなどの腐食因子がコンクリート中に浸入すると、この不動態皮膜が破壊され、コンクリート中にある水と酸素によって鋼材の腐食が開始する。
コンクリート構造物の鋼材が腐食すると、鋼材の体積膨張を生じ、その膨張圧でコンクリートにひび割れを生じ、ひび割れを通じてさらに腐食因子の浸入と外部からの水と酸素の供給によって鋼材の腐食は加速的に進行し、ついにはコンクリート構造物としての機能が保持できなくなる。
従って、鋼材の腐食が開始する前に腐食因子の侵入や鋼材の腐食開始を検知し、例えば、表面被覆などの対策で腐食因子や水と酸素のさらなる浸入を阻止して鋼材を腐食から守り、コンクリート構造物の予防的な保全を図ることが重要となる。この問題に対し、従来から種々の腐食診断方法が提案されている。例えば、コア抜きを行なって腐食因子を分析する方法や、非破壊的に鋼材の自然電位や分極抵抗を測定する手法、化学センサやガスセンサにより腐食因子を検出する手法、鉄製の細線を模擬腐食部材としてコンクリートに埋設し、細線が断線したときに腐食を検出する手法などが知られている。
これらの腐食診断手法のうち、細線の断線によって腐食を検知する方法は、(1)予めセンサを埋設することでコア抜きなどコンクリートを痛めることがない、(2)コンクリート表面と鋼材の間に細線を深さに応じて数本設置することで表面からの腐食因子の浸入の時間依存性をモニタリングでき維持管理計画の立案を容易とする、(3)直接的に鉄の腐食を捉えるので腐食因子だけでなく水や酸素の供給状態をも含めた腐食の可能性を検知できる、(4)電気抵抗の変化を捉えるので極めて低消費電力での検出が可能で長期モニタリングに適する、というメリットがあり、細線切断を検出することによる腐食診断方法が、種々提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
特開平8−094557号公報 特開平8−233896号公報 特許3205291号公報 特開2007−163324号公報
しかしながら、細線の使用には問題点もある。まず、検出感度について以下に述べる。細線による検知では腐食によって切断することで達成されるものであり、僅かな腐食で切断が生じる必要があり、検出感度の観点からはなるべく細いことが望ましい。しかしながら、鉄は他の金属と比較して伸ばしにくく、径が0.1mmよりも細い線を作製することは非常に難しい。鉄以外の金属を混ぜることで細くできるが金属の性質が変わってしまうので鋼材腐食検知センサとして適さなくなるという問題がある。また、腐食は確率的に生じるものであり一様に生じることはなく、また腐食には理論的にも腐食部における腐食電池の形成が必要である。従って、細線の長さが短いとコンクリート中の環境が腐食環境となっても確率的に必ずしも細線が腐食切断されない場合も生じ、細線の断面積や表面積に応じて細線には適当な長さがないと腐食速度が遅くなり、何れも結果として腐食検出感度を低下させることとなる。
また、鉄の細線は、取り扱いが容易ではないという問題がある。細線を回路にハンダ付けする際にも手間がかかり、また、簡単に折れてしまう。これでは大量生産が難しく、産業上望ましくないだけでなく、直線の状態以外では利用が困難である。例えば、感度の向上を図るために細線を長くするとコンクリート内で容易に設置できなくなり、細線の配置形状を変えて設置することも検討されたが、細線は加工しにくいため、複雑な形状の実現は難しい。一方で、コンクリート内へ設置された細線は、コンクリートの打設時にコンクリートの骨材などによって物理的に破損してしまう可能性もある。この問題を解決するために予め硬化したモルタルにみぞを掘っておいて、溝に沿わせて細線を巻いてセンサとしてコンクリート内に設置する手法などが必要となるが、細線の加工やモルタルへの配置が煩雑となる。
一方、このように加工性の低い細線の問題を解決するために、鉄メッキを行なう手法も提案されている。これは、アルミニウムのシートをエッチングして、パターンを形成し、その上に鉄メッキを行なうことにより、センサ部を作製する手法である。アルミニウムに鉄がメッキされた状態でコンクリート内部に埋設されるが、アルミニウムはアルカリ環境下ではすぐに溶けるため、鉄のセンサを実現することができる。また、エッチングにより複雑な導体パターンを構成することができると共に、大量生産が可能であり、メッキであるため、鉄の厚さも制御することができる(例えば、特許文献4)。
このように、鉄メッキを利用する手法は、センサとしての感度が向上し、設計の自由度も高いが、実際に実験をしてみると、問題点があることが判明した。すなわち、鉄のメッキをアルミニウム上に均一にメッキすることが困難なのである。エッチングで、母材のアルミニウムパターンのエッジが基板に対して鉛直にならず、えぐれるようなサイドエッチングが生じる場合があり、この部分には鉄メッキ被覆が十分に行なわれず、アルミニウム母材が露出してしまうことがある。また、メッキでピンホールが生じる場合がある。これらのケースではコンクリート内でアルミニウムが腐食因子によらずに溶解し、アルミニウムが溶ける際に鉄メッキを割るために結果として断線してしまう。これは、鉄メッキの厚さが20μm程度の場合に確認されている。このように、鉄メッキがうまくいかないため、センサとしてうまく機能しないという製造上の問題点が確認された。
したがって、鉄単材であって、かつ鉄の細線よりも感度及び加工性の高い材料が求められていた。従来、センサを鉄の細線で構成した場合、最も細い細線で直径が0.1mmである。非特許文献1の「4.1 通電を行わないセンサーの感度」には、コンクリート中に埋設された鉄線の腐食破断の様子が記載されている。ここには「…鉄線が腐食破断を起こしたものと考えられた。しかし,この場合の塩化物イオン量は12kg/m3近くにも達しており,コンクリート中の鉄筋腐食発生限界量とされる1.2〜2.4kg/ m3に比べて極めて大きな値であった。…また、他の供試体においても、深さ5mm位置の塩化物イオン量は8〜10kg/ m3に達し、…その位置の抵抗測定結果には何の変状も認められなかった。」と示されている。これは、0.1mmの鉄線は、塩化物イオン量が12kg/m3近くに達しなければ、破断しなかったことを意味する。従って、センサの感度をより高めるためには、センサの厚さを0.1mmよりも小さく(薄く)しなければならない。例えば、腐食初期の検知を可能とするため、腐食因子としての塩化物イオン量が1.2〜2.4kg/ m3の環境下において、抵抗値の顕著な変化が認められるように、厚さを十分に小さく(薄く)したセンサが望まれる。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、細線の切断を検出する考え方を踏襲しながらも、製造上の問題を解決し、感度が高く、設計自由度が大きい腐食センサ装置、腐食センサ装置の製造方法、腐食検出方法、センサおよびセンサの製造方法を提供することを目的とする。
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の腐食センサ装置は、コンクリート構造物中の鋼材の腐食進行状況を検出する腐食センサ装置であって、鉄を圧延することにより作製され、厚さが5μm以上25μm以下である鉄箔材で形成された導体パターン部と、前記導体パターン部を保持する基板と、前記導体パターン部が断線することによる抵抗値の変化に基づいて、コンクリート構造物中の鋼材腐食因子を検出する腐食検出部と、を備えることを特徴とする。
このように、鉄を圧延することにより作製した鉄箔材によって、導体パターン部を形成するので、従来の細線を用いた場合よりも、設計の自由度が高くなり、製造が容易となる。その結果、複雑な形状を容易に構成することが可能となる。また、鉄箔材の厚さを25μm以下にすることにより細線よりも断線するまでの時間を短くすることができ、その結果、センサとしての感度を高め、鉄筋腐食発生限界量とされる1.2〜2.4kg/ m3の塩化物イオン量での検知が可能となるとともに、導体パターン部が基板で保持されるのでコンクリート打設時の強度を確保することが可能となる。
(2)また、本発明の腐食センサ装置において、前記導体パターン部は、前記基板上で、二次元的な凹凸形状または渦巻き形状の回路を構成することを特徴とする。
このように、基板上で、二次元的な凹凸形状または渦巻き形状の回路を構成するので、センサ全体をできるだけ小さいものにすると共に、導体パターン部の面積を大きくすることができる。その結果、腐食因子を接触する確率を高めてセンサの感度を向上させ、小型化によってコンクリート表面と鋼材との間に設置が可能となり、これにより鋼材に腐食因子が到達する前に腐食因子の検知が可能となる。腐食が確率的に生じるため線は長いことが必要であり、基板上での二次元的な凹凸形状または渦巻き形状の回路の形成は、
線の長さを伸長するのと同じ効果を少ないスペースで実現可能である。
(3)また、本発明の腐食センサ装置の製造方法は、コンクリート構造物中に埋設される鋼材腐食因子を検出する腐食センサ装置の製造方法であって、鉄を圧延することにより作製し、厚さが5μm以上25μm以下である鉄箔材と基板とを一体化させて鉄箔シートを作製する工程と、前記鉄箔シートの鉄箔上に、凹凸形状または渦巻き形状の回路パターンのレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜が形成された鉄箔シートをエッチングする工程と、前記エッチング後の鉄箔シートのレジスト膜を除去する工程と、前記鉄箔シートの回路パターンに導線を接続する工程と、前記導線と、前記回路パターンの断線による抵抗値の変化を測定して前記回路パターン部の腐食を検出する腐食検出部とを接続する工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
このように、鉄箔材と基板とを一体化させて鉄箔シートを作製し、鉄箔シートの鉄箔上に、凹凸形状または渦巻き形状の回路パターンのレジスト膜を形成して、エッチングするので、二次元的に複雑な形状のパターンを形成することができる。これにより、センサ全体をできるだけ小さいものにすると共に、導体パターン部の面積を大きくすることができる。その結果、腐食因子を接触する確率を高め、センサの感度を向上させることが可能となる。また、エッチングにより、導体パターン部と共に回路部分も同時に作ることができるので、製造工程を簡略化することが可能となる。
(4)また、本発明の腐食検出方法は、上記(1)または(2)記載の腐食センサ装置をコンクリート構造物中に埋設して、前記導体パターン部の断線による抵抗値の変化を測定し、前記測定した導体パターン部の断線による抵抗値の変化に基づいて、コンクリート構造物中の鋼材腐食因子を検出することを特徴とする。
このように、導体パターン部を鉄箔材で形成するため、厚さを非常に薄くすることができ、細線よりも断線するまでの時間を短くすることができる。その結果、センサとしての感度を高めることが可能となるだけでなく、省電力での検出を可能とする。さらに形成した導体パターン部は、細線と比較して平坦となるため、糊付きのプラスチックフィルムなどで製造後に保護フィルムで保護しておくことが可能で、細線がコンクリートへの設置前に腐食することがあったのに対し、設置まで腐食することなく運搬やコンクリート型枠内に設置でき、打設前に保護フィルムを除去することで、品質確保を容易とすることができる。また、鉄メッキの手法でも母材であるアルミの機械的強度が不足するために保護フィルムの使用は困難であった。
(5)また、本発明のセンサは、コンクリート構造物中の鋼材の腐食進行状況を検出する腐食センサ装置に用いられるセンサであって、鉄を圧延することにより作製され、厚さが5μm以上25μm以下である鉄箔材で形成された導体パターン部と、前記導体パターン部を保持する基板と、を備え、コンクリート構造物中の鋼材腐食因子によって、前記導体パターン部が断線し、前記導体パターン部の抵抗値の変化が生ずることを特徴とする。
このように、鉄を圧延することにより作製した鉄箔材によって、導体パターン部を形成するので、従来の細線を用いた場合よりも、設計の自由度が高くなり、製造が容易となる。その結果、複雑な形状を容易に構成することが可能となる。また、鉄箔材の厚さは、非常に薄いため、細線よりも断線するまでの時間を短くすることができ、その結果、センサとしての感度を高めるとともに、パターン部の保持によってコンクリート打設時の強度を確保することが可能となる。
(6)また、本発明のセンサの製造方法は、コンクリート構造物中に埋設される鋼材腐食因子を検出する腐食センサ装置に用いられるセンサの製造方法であって、鉄を圧延することにより作製され、厚さが5μm以上25μm以下である鉄箔材と基板とを一体化させて鉄箔シートを作製する工程と、前記鉄箔シートの鉄箔上に、凹凸形状または渦巻き形状の回路パターンのレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜が形成された鉄箔シートをエッチングする工程と、前記エッチング後の鉄箔シートのレジスト膜を除去する工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
このように、鉄箔材と基板とを一体化させて鉄箔シートを作製し、鉄箔シートの鉄箔上に、凹凸形状または渦巻き形状の回路パターンのレジスト膜を形成して、エッチングするので、二次元的に複雑な形状のパターンを形成することができる。これにより、センサ全体をできるだけ小さいものにすると共に、導体パターン部の面積を大きくすることができる。その結果、腐食因子を接触する確率を高め、センサの感度を向上させることが可能となる。
本発明によれば、導体パターン部を鉄箔材で形成するため、厚さを非常に薄くすることができ、細線よりも断線するまでの時間を短くすることができる。その結果、センサとしての感度を高めることが可能となる。
本実施形態に係る腐食センサ装置の概略構成を示す図である。 (a)は、二次元的な凹凸形状の導体パターン部を示す図であり、(b)は、二次元的な渦巻き形状の導体パターン部を示す図である。 本実施形態に係る腐食センサ装置の実験の様子を示す図である。 実験結果を示す図である。 本実施形態に係る導体パターン部の作製方法の手順を示すフローチャートである。 鉄箔センサおよび比較として鉄線センサについて試験を実施した様子を示す図である。 塩分濃度1.6 kg/m3の環境下における各腐食センサの抵抗値変化を示した図である。 塩分濃度1.6 kg/m3の環境下における各腐食センサの抵抗値変化を示した図である。 塩分濃度1.6 kg/m3の環境下における各腐食センサの抵抗値変化を示した図である。 センサの線幅を変化させ、50%の腐食切断が生じた様子を示す図である。 試験に用いた各鉄箔センサを線長さ別に50%腐食切断のサイクル数として整理して示した図である。 回路図を示す図である。 導体パターン部の抵抗値を示す図である。 導体パターン部の静電容量と抵抗を測定した結果を示す図である。 腐食因子がセンサ両端部を除く表面積全体に浸食し、全ての長さ方向に対し一様に腐食が進み、センサ断面積が減少していくモデル1を示す図である。 センサの一部が腐食因子により浸食されその部分のみ断面積が減少していくモデル2を示す図である。 モデル1による抵抗値の変化を示す図である。 モデル2において腐食部長さが0.1mmとなった時の結果を示す図である。 モデル2において腐食部長さが1mmとなった時の結果を示す図である。 モデル2において腐食部長さが5mmとなった時の結果を示す図である。 モデル2において腐食部長さが10mmとなった時の結果を示す図である。 モデル2で検討した結果の腐食部長さ0.1mmと10mmを重ねたグラフを示す図である。 促進試験による経時的な抵抗値の変化を示す図である。
次に、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明者は、一部の磁性薄膜や磁気デバイス等の特殊用途に用いられる鉄箔材に着目して、これをコンクリート構造物中の鋼材の腐食を診断するために用いることを見出し、本発明をするに至った。鉄箔材は、鉄を電気分解して純鉄にし、それから圧延するため、鉄を非常に薄くすることができる。この鉄箔材であれば、レジストを印刷してエッチングをすることができる。従って、鉄箔材を用いることにより、細線や鉄メッキではできなかった小型で複雑なセンサを構成することが可能となる。なお、本明細書では、鉄箔材と細線との相違を次のように定義する。すなわち、細線は、鉄に張力を与えて引っ張ることにより作製されるものであるのに対し、鉄箔材とは、鉄を圧延することにより作製されるものである。その結果、細線は、最も細くても径が0.1mm以上であるのに対し、鉄箔材は、厚さが0.1mm未満である。
コンクリート構造物中の鋼材の腐食進行状況を検出するセンサとしてのより好適な鉄箔材の厚さは3μm以上、0.1mm未満である。鉄箔の厚さが0.1mm以上ある場合にはエッチングに時間を要し、この間に鉄が酸化されることで膨張を生じてレジスト膜を損傷させ、一様な線幅が確保できない場合がある。一方、鉄箔材の厚さは3μm以上であることが好ましい。3μmより薄いとコンクリート打設時に物理的な強度が不足して断線することがある。物理的強度と腐食検知の感度を考慮すると、5μm以上25μm以下とすることがより好ましい。
また、鉄箔の線幅に関しては、0.1mm未満の線幅の場合にはエッチング中に断線を生じる場合もあり、一方で、下地材との付着力が弱く、製造あるいはコンクリートの打設で損傷を受けやすくなる。エッチングやコンクリート打設、設置、フィルムによる保護の観点からは0.1mm以上が望ましく、さらに線幅が太い場合には腐食切断による感度が低下するため、線幅が2.0mm以下であることが好ましい。
図1は、本実施形態に係る腐食センサ装置の概略構成を示す図である。この腐食センサ装置1は、鉄箔材で形成された導体パターン部10aが基板10bに保持されており、導体パターン部10aが腐食検出部2に電気的に接続されている。導体パターン部10aは、鉄箔材により形成されているため、厚さが0.1mm未満である。導体パターン部10aおよび基板10bは、センサを構成する。
図1において、導体パターン部10aは、二次元的に複雑な形状を取ることが可能である。例えば、図2(a)は、二次元的な凹凸形状の導体パターン部10aを示す図であり、図2(b)は、二次元的な渦巻き形状の導体パターンを示す図である。このように、鉄箔材を用いるため、細線では不可能な複雑な形状の導体パターン部10aを構成することが可能となる。
基板上での二次元的な凹凸形状または渦巻き形状の回路の形成は、線の長さを省スペースで実現可能とするものである。線の長さについて、厚さ5〜25μm、線幅1.0mmでの鉄箔を用いた検討では、線の長さ20mmでは塩分含有コンクリートに対して切断しないセンサが約1割認められ、線の長さは50mm以上とすることですべての線が断線した。線の長さは、用いる鉄箔の厚さ、線幅、設置可能スペースに依存するが、線長さとしては50mm以上が望ましい。一方、線長さが1000mmを超えると、パターン部の面積が大きくなり、構造物中に埋設する上で好ましくない。本実施形態では、例えば、鉄箔の厚さ20μmを用い、導体パターン部の線幅1.0mm、線の長さは総計で250mmである。
上記センサにリード線を接続し、コンクリート構造物に埋設し、センサに接続されたリード線のもう一方をコンクリート構造物の外部に引き出して、インタフェース回路および検出回路から構成される腐食検出部と接続して、腐食センサ装置を構成することができる。この腐食検出部により、リード線に接続されたセンサ部の電気的特性を把握することによって断線を検知することが可能となる。しかし、図1に示すように、腐食検出部をパッシブ型RFIDに代表されるバッテリーレスの無線モジュールで構成し、腐食センサ装置全体をコンクリート構造物に埋設することにより長期間に渡り計測することが可能となる。無線モジュールを構成することによって、センサに接続されたリード線を伝達して腐食因子がコンクリート内部に侵入する可能性を排除すると共に、リード線自体が腐食により劣化することを回避することができる。さらに、本腐食センサ装置自体をもコンクリート中に埋設することによって、腐食検出部の腐食因子による劣化を防ぐ効果を有する。腐食センサ装置は、腐食環境にあるコンクリートの検知に使用される場合が多いため、無線モジュールで腐食センサ装置を構成してコンクリート構造物に埋設することは本装置自体の耐久性確保の観点から見ると効果が大きい。
図1に示すインタフェース回路12は、導体パターン部10aと、無線モジュール13とを接続する回路であり、電圧(電位差)、電気抵抗、インピーダンス、静電容量など導出パターン10aの電気的特性を、電圧値などを出力値として無線モジュールに受け渡すものである。例えば、一定の電圧を印加して導出パターン10aの電気的特性である抵抗値を取得して抵抗値に応じた値を電圧値として出力することで、腐食断線によって生じる抵抗値の低下を印加電圧に対する比率で断線を検知することを可能とする。無線モジュール13は、特定小型小電力無線、RFID、無線LANなど、無線による送受信で外部に検知情報を伝達するものであり、検出回路13aおよび無線通信回路13bを有している。検出回路13aは、インタフェース回路12からの信号を読取るもので、アナログ/デジタル変換回路などが相当する。本実施形態では、導体パターン部10aの電圧を検出することとする。無線通信回路13bは、検出回路13aの検出結果を、アンテナ14を介して、外部の読取装置に対して無線送信する。ここで、インタフェース回路12、無線モジュール13、およびアンテナ14は、腐食検出部を構成する。
また、図1において、無線モジュール13の無線通信回路13bは、変調回路、充電/電源部、メモリなどから構成される。この電源部では、バッテリを搭載するタイプのものであっても良いし、いわゆるバッテリーレス、すなわち、蓄電機能を有し、外部から供給される電磁波による誘導電圧を一時的に蓄えるものであっても良い。無線通信回路13bに含まれるメモリは、全体の制御を行なうオペレーティングシステム、構造物の状態を検知するプログラム、検知した情報の記録などに用いるROMやRAMなどで構成される。メモリにはセンサのID番号を搭載してもよく、また、読取装置から構造物の埋め込み位置に関する情報をRAMに書き込み、これら情報をセンサで検知した情報と共に読み取り装置で読み取ってもよい。
また、図1におけるアンテナ14は、金属類、カーボンファイバーやフェライトなどが用いられ、中空の巻き線、あるいは磁性体巻き線、あるいは基板上にプリント技術を利用して成形したものを用いることが望ましく、PETなどのフィルム間にこれら材料を挟み込んで使用してもよく、またその形状はリング状、棒状、円盤状など適当な形に成型して用いてもよい。
また、導体パターン部10aは、例えば、腐食因子が進行する方向とほぼ直交する面上を設けると、腐食因子を捉える確率を上げることができる。さらに、複数の導体パターン部10aを深さ方向に平行に設ける。これにより、コンクリート内部に浸透する腐食因子を経時的に捉えることが可能であり、これにより、鋼材に腐食因子が到達するまでの期間を拡散の理論に基づいて精度よく予測することができ、コンクリート構造物の維持管理では有用な情報となる。例えば、腐食因子が拡散によってコンクリート表面から内部へ浸透するとすれば、コンクリート表面から導体パターン部10aまでの距離をA、コンクリート表面から鋼材までの距離をB、コンクリート構造物建設から腐食センサ装置が腐食因子を検知した時間をTAとすると、コンクリート構造物建設から鋼材の腐食が生じるまでの時間TBは、TB=TA・(B/A)として予測することができ、腐食センサ装置で検知した情報に基づいて、コンクリート構造物を劣化から守る対策を劣化が生じる前に施すことが可能となる。
本発明者は、鉄箔材によるセンサを製作し、検知確率の実験を行なった。図3は、本実施形態に係る腐食センサ装置の実験の様子を示す図である。センサ(導体パターン部)の形状は、上記のように、二次元的な凹凸形状や渦巻き形状とする。これは、コンクリートの外部から侵入した腐食因子を検知しやすくするためである。本実施形態では、基板10bを横40mm、縦50mmのサイズとした。ただし、本発明はこれに限定されるわけではなく、例えば、横を20mm〜100mmとすることもでき、縦を20mm〜100mmとすることもできる。図3において、腐食因子を塩化物イオンとしたときに、曝露面を塩化物イオンの進入方向とした。曝露面には被覆はせず、他の5面については樹脂による被覆を行なった。また、センサの設置位置は、曝露面からの深さが15mmの場合と35mmの場合とを行なった。この試験体を、15%の塩化ナトリウム水溶液中に浸漬し、コンクリートへの塩分浸透試験を行なった。そして、腐食因子である塩化物イオンによって、導体パターン部の鉄箔の腐食による抵抗変化を検知した。
図4は、実験結果を示す図である。図4に示すように、塩分の浸漬面(曝露表面)から近い、15mmの位置に設置したセンサから断線による抵抗変化が検知された。これにより、明確に腐食因子が浸透していることが把握できた。また、その後、塩分の浸漬面(曝露表面)から35mmの位置に設置したセンサからも断線による抵抗変化が検知された。その結果、鉄箔材によりセンサ(導体パターン部)を構成したときは、感度が高く、断線時差が他の種類と比較して小さく、設計自由度が大きく、そして、製造難易度が低いことを確認することができた。
次に、本実施形態に係る腐食センサ装置の作製方法について説明する。図5は、本実施形態に係る導体パターン部の作製方法の手順を示すフローチャートである。まず、鉄箔材と下地材とを一体化させて、鉄箔シートを作製する(ステップS1)。ここでは、下地材となる樹脂フィルム(例えば、PET、ポリイミド材等の樹脂フィルム)に、接着剤を塗布し、ローラ等を用いて、鉄箔材と下地材とを張り合わせる。これにより、鉄箔シートが作製される。
次に、ステップS1で作製した鉄箔シートの鉄箔上に、導体パターンのレジスト膜を形成する(ステップS2)。すなわち、鉄箔シートの鉄箔上に、センサ(導体パターン部)および回路の形状のレジスト膜を、スクリーン印刷やフォト印刷等によって形成する。これに併せて、完成後にセンサを抜き型によって個々に切断・分離するためのガイド等も印刷する。
次に、エッチングを行なう(ステップS3)。ここでは、レジスト印刷した鉄箔シートを、エッチング槽にてエッチングする。これにより、レジスト膜が施されていない露出した鉄箔は、エッチング液(例えば、塩化第2鉄溶液)によって溶解する。エッチング終了後、鉄箔シートをエッチング槽から取り出して、付着液を洗浄する。その後、レジスト被膜を溶剤等によって除去し、導体パターン部および回路の外形が完成する。
次に、成形後の分割を行なう(ステップS4)。接続するための回路と一体成形したセンサ(導体パターン部)において、それ以外の回路の防水・保護のため、耐水塗料の印刷や、保護フィルムの貼付を行なう。その後、抜き型を用いて、保護処理を施したセンサを個々に切断・分離する。ここで、樹脂シートは耐熱性が小さいため、ハンダを用いることが難しい。このため、嵌合端子を用いて接続部を形成しても良い。端子は、回路の接続用グラウンド部に、嵌合端子を用いてかしめることにより設ける。そして、コネクタ・リード線により、腐食検出部と接続する。
コンクリート構造物中の鋼材の腐食因子の浸透は、コンクリート表面から深さ方向に一様に進行する。腐食因子がコンクリートに埋設した検知部(センサ)に到達すると、センサの腐食が開始され同一環境下では腐食の進展も一様に進行する。つまり、腐食の進展により断線を検知するセンサの感度は、厚さまたは直径に依存する。すなわち、センサの厚さが小さく(薄く)なるほど、センサの感度は高くなる。鋼材の腐食検知を行なう場合、抵抗値の変化を検出する技術が知られているが、抵抗値の顕著な変化を捉え断線を検知するためには、腐食に要する時間を小さくする、つまりセンサの感度を高めることが非常に重要である。
センサの感度を高めるために、直径0.1mmが限度であった鉄の細線を否定し、ベース材に対して鉄メッキを施す手法用いることによって厚さを小さくしたものが特許文献4記載のセンサである。しかし、上記のように、特許文献4のようなベース材に金属をメッキする手法では、サイドエッチングやピンホールの問題が生ずる。このため、ベース材に対して鉄メッキを施す手法は、最善策ではない。
本実施形態では、単独の材料である鉄箔でセンサを構成する。上記のように本明細書中に記載したように、本実施形態では、鉄箔材の厚さは5μm以上25μm以下である。このように薄い腐食センサを単独の材料で構成した事例は従来には存在しない。上記のように、本願発明の属する技術分野において、センサを鉄の細線で構成した場合、最も細い細線で直径が0.1mmである。従って、最も細い細線を用いた場合と比較して、本願発明では、センサの厚さを1/4以下とすることで高い感度のセンサを実現できる。
次に、このような本願発明の効果を裏付けると共に、数値範囲の臨界的意義を、説明する。非特許文献1の「4.1 通電を行わないセンサーの感度」には、コンクリート中に埋設された鉄線の腐食破断の様子が記載されている。ここには「…鉄線が腐食破断を起こしたものと考えられた。しかし,この場合の塩化物イオン量は12kg/m3近くにも達しており,コンクリート中の鉄筋腐食発生限界量とされる1.2〜2.4kg/ m3に比べて極めて大きな値であった。…また、他の供試体においても、深さ5mm位置の塩化物イオン量は8〜10kg/ m3に達し、…その位置の抵抗測定結果には何の変状も認められなかった。」と示されている。これは、0.1mmの鉄線は、塩化物イオン量が12kg/m3近くに達しなければ、破断しなかったことを意味する。
これに対し、本願発明に係るセンサでは、実験の結果、塩化物イオン量が1.2〜2.4kg/ m3の環境下において、抵抗値の顕著な変化が認められた。以下、実験の方法と結果を説明する。
[実験概要1]
本願明細書では、鉄箔センサの検知感度を示す試験として、センサを普通コンクリート中に埋設し、コンクリートが硬化したのち、塩水中に浸漬・乾燥を繰り返す促進試験を実施した結果を示している。さらに、これを補足し、本願発明に係る腐食センサの検知性能を確認するため、鉄箔センサおよび比較として鉄線センサについて試験を実施した。図6は、この実験の様子を示す図である。この試験は、センサが腐食する環境を明確にするため、予め塩分を添加して練り混ぜたコンクリートを使用し、センサを埋設・設置して、性能確認を行った。
[実験方法1]
(i)腐食センサ
試験に用いた腐食センサは、鉄箔センサ2種類(厚さ:10μm、20μm)、鉄線センサ1種類(φ0.1mm)の計3水準とした。
(ii)コンクリート
コンクリートに使用した材料は、普通セメント、水(上水道水)、JIS規定の細骨材(砂)、粗骨材(砂利)である。コンクリートの配合は一般的な普通コンクリートの配合とし、水および酸素の透過性を確保するため、水とセメントの質量比を0.65と設定した(水セメント比65%)。このコンクリートに、予め塩分(Cl換算)を添加し、腐食環境を変化させたコンクリートを作製した。塩分添加量は5水準とし、それぞれCl換算で0kg/m3、0.8 kg/m3、1.6 kg/m3、3.2 kg/m3、6.4 kg/m3となるようにコンクリートに添加した。これは、コンクリート中の鉄筋の腐食の開始・進行が、塩分条件によって変化するためであり、コンクリート中のCl量:1.2 kg/m3〜2.4kg/m3が、鉄筋腐食開始のひとつの指標とされていることから設定した。
(iii)試験体および計測方法
試験体は、キュービック状として作製し、6面のうち5面を樹脂で被覆し、残りの1面を曝露面(開放面)として酸素および水の供給面として促進試験を実施した(添付の実験概略図参照)。
センサの設置位置は、開放面から15mmの深さ位置とし、開放面と平行となるようセンサを設置した。なお、センサからは計測用のリード線をコンクリート試験体の外に出して作製した。促進試験は鉄筋の腐食が進行しやすい60℃環境で実施し、60℃水中浸漬−3日間、60℃・相対湿度60%−3日間を1サイクルとした水中浸漬・乾燥の繰り返し試験を実施した。なお、試験体を浸漬した水には蒸留水を使用した。センサの計測は、有線のリード線を試験体の外に予め出しておき、促進1サイクル毎に、デジタルマルチメーターを用いてセンサ検知部の電気抵抗を測定した。
[実験結果1]
図7〜図9に塩分濃度1.6 kg/m3の環境下における各腐食センサの抵抗値変化を示した。直径0.1mmの鉄線では全く抵抗値変化が認められなかったのに対し、鉄箔を用いたセンサでは、すべて抵抗値変化が認められた。グラフの上限を超えた抵抗値変化は、断線を意味している。
図8には、厚さ20μmの鉄箔センサの場合に各塩分濃度で断線するセンサの割合を示し、図9には、比較のために鉄線センサの場合を示した。厚さ20μmの鉄箔センサでは、40サイクルまでに1.6 kg/m3で100%、0.8 kg/m3で50%以上のセンサの断線が確認されたが、鉄線センサでは、3.2 kg/m3でも50%に満たず、1.6 kg/m3、0.8 kg/m3では、断線が確認できなかった。
以上により、鉄箔が25μm以下の厚さであれば、コンクリート中の鉄筋腐食発生限界量とされる1.2〜2.4kg/ m3の塩化物イオン量を捕らえるセンサとして十分な感度であると判断できると考えられる。これは鉄線のセンサに対して顕著な効果であると言える。さらに、本願発明では、メッキではなく、鉄箔そのものを使うので、仮にピンホールがあっても問題はない。また、サイドエッチングの問題が生ずることもない。
[実験概要2]
本願発明に係る腐食センサの検知性能を確認するため、鉄箔センサの検知感度を示す試験として、センサを普通コンクリート中に埋設し、コンクリートが硬化したのち、水中に浸漬・乾燥を繰り返す促進試験を実施した。この試験は、センサが腐食する環境を明確にするため、予め塩分を添加して練り混ぜたコンクリートを使用し、センサを埋設・設置して、性能確認を行ったものである。
[実験方法2]
(i)腐食センサ
試験に用いた腐食センサは、厚さ10μmの鉄箔を素材とした鉄箔センサとし、形状因子として検知部の線幅、線の長さを変化させ、実験での各水準の鉄箔センサのn数は5とした。
(ii)コンクリート
コンクリートに使用した材料は、普通セメント、水(上水道水)、JIS規定の骨材とした。コンクリートの配合は一般的な普通コンクリートの配合とし、水および酸素の透過性を確保するため、水とセメントの質量比を0.65と設定した(水セメント比65%)。このコンクリートに、予め塩分(塩化ナトリウム)を添加し、コンクリートを作製した。塩分添加量は5水準とし、それぞれCl換算で3.6 kg/m3または4.8 kg/m3となるようにコンクリートに添加した。
(iii)試験体および計測方法
試験体は、キュービック状として作製し、6面のうち5面を樹脂で被覆し、残りの1面を曝露面(開放面)として酸素および水の供給面として促進試験を実施した(実験概略図参照)。
センサの設置位置は、開放面から15mmの深さ位置とし、開放面と平行となるようセンサを設置した。なお、センサからは計測用のリード線をコンクリート試験体の外に出して作製した。促進試験は鉄筋の腐食が進行しやすい60℃環境で実施し、60℃水中浸漬−1日間、60℃・相対湿度60%−1日間を1サイクルとした水中浸漬・乾燥の繰り返し試験を実施した。なお、試験体を浸漬した水には蒸留水を使用した。センサの計測は、有線のリード線を試験体の外に予め出しておき、促進1サイクル毎に、デジタルマルチメーターを用いてセンサ検知部の電気抵抗を測定した。
[実験結果2]
(その1:線幅について)
図10は、センサの線幅を変化させ、50%の腐食切断が生じた様子を示す図である。導体パターン部が厚さ10μmで、線幅を変化させたそれぞれ鉄箔センサ5つを4.8 kg/m3のコンクリートに埋設した時の、その半数が切断する時期、すなわち、腐食切断したと判断される抵抗値の上昇が認められた腐食センサの数が2つから3つになった時の水中浸漬・乾燥の繰り返しをサイクル数を、50%腐食切断として評価した。線幅は、0.25mm、0.5mm、1mm、および2mm であるが、0.25mmのセンサについては、コンクリート打設直後に抵抗値が上昇し、センサとして機能しないものがあった。これは線幅0.25mmと細い場合にはコンクリート打設による導体パターン部の強度確保が困難であり、図10には示していない。
腐食切断時期は、線幅の二乗に比例して切断された。コンクリート中の腐食速度は、一般的には、g/cm2・年として一定の面積および一定期間の間に一定の重量減として表されている。しかしながら、腐食初期における鉄材の腐食においてもこの関係が保持されることは不明であったが、鉄箔センサについてもこの関係が成り立つことが判る。従って、線幅が2mmの時のサイクル数は20であり、試験における厳しい塩害環境下でも40日に相当する。線幅が2mmより太くなると、例えば、3mmとなれば腐食切断時期は90日となり、構造物維持管理におけるコンクリート用腐食センサとしては実用的ではなくなる。
(その2:線長について)
図11は、試験に用いた各鉄箔センサを線長さ別に50%腐食切断のサイクル数として整理して示した図である。線長さが長いほど、腐食を検知する感度が向上する。一方、線長さが50mmにおいては、塩分濃度が比較的高い4.8 kg/m3で安定した腐食開始の時期を検知できるが、塩分濃度が低い3.6 kg/m3では腐食開始を検知できるが感度が低下することが判る。4.8 kg/m3における試験では、線長さ50mmとした鉄箔センサが6サイクル以内に50%腐食切断し、また、15サイクル以内にすべて鉄箔センサで抵抗値の上昇が認められたのに対して、図には示していないが、同様に実施した4.8 kg/m3における線長さ20mm、線幅1.0mmとした鉄箔センサでは、80サイクルを超えても抵抗値の上昇が認められないセンサがあり、線長さ20mm以下では腐食センサ装置として望ましくない。
一方で、線長さを長くすることは、結果として導体パターン部の面積を増大することとなり、コンクリートの粗骨材の最大寸法が25mmとすると、線間隔同士の接触危険性による誤作動を考慮した0.2mm線間隔においても、線長さは約1000mmとなり、これ以上の線長さとすると、骨材径より導体パターン部が大きくなりコンクリート充填時の問題や、導体パターン部へのブリーディングの影響も生じる可能性もあるためコンクリート構造物への埋設では好ましくない。
以上のことから、本発明の鉄箔センサとしての線長さは20mmより長く1000mm以下、より望ましくは50mm以上、1000mm以下である。
また、本願発明の検出検知部は、電気的特性の変化をもって腐食開始の判断を行うものであるが、より高感度で、安定した計測を可能とするための最適な回路について、コンクリート中における鉄箔センサの電気特性の挙動より検討を行った。
電気的特性の変化の測定は特に限定されるものではないが、装置の複雑化による消費電力を抑制できることから、直流での導体パターン部への印加について検討を行った。
[実験方法3]
線幅1mm、線長50mm、鉄箔厚さ10μmとした導体パターン部を用い、前述と同様の塩分濃度1.2kg/m3(Cl換算)としたコンクリートに埋設し、42サイクル後経過後に導体パターン部を、図12に示す回路で測定した。導体パターン部は、塩分濃度が比較的低いことから、腐食開始直後である。なお、導体パターン部のコンクリート埋設直後の抵抗値は、5.8Ωであった。
検出部のインターフェース回路および検出回路は、図12に示す回路とし、全印加電圧は0.1〜18Vの範囲で、また導体パターン部との直列抵抗R1を180Ω〜480kΩまで変化させることで、導体パターン部への印加電圧を変化させた。全印加電圧、R1の抵抗値、および導体パターン部で測定された電圧(導体パターン部への印加電圧)から、導体パターン部の理論的な抵抗値を求めた。なお、導体パターン部での電圧測定は、アンプ回路を介して電圧を増幅し、オシロスコープを用いて測定した。
[実験結果3]
測定の結果、計算された導体パターン部の抵抗値を図13に示す。導体パターン部への印加電圧が0.1mV以上、2V以下で安定した測定が可能であった。導体パターン部への印加電圧が2Vを越える場合、測定開始直後から導体パターン部で測定される電圧は測定直後から急速に低下し、測定が不安定となった。この原因の詳細は不明であるが、導体パターン部への印加電圧が高いと、腐食で断線した導体パターン部においてコンクリート中の細孔溶液に含まれる各種イオンと腐食した導体パターン部が反応し、電流が流れやすくなったためと考えられる。一方で、印加電圧が0.1mVを下回ると、導体パターン部で測定される電圧が経時的に増加して測定が不安定となった。これは、詳細は不明であるが、腐食切断によって導体パターン部に容量成分を持つことによって、導体パターン部への印加電圧が低いと分極に時間を要し、測定が不安定になるばかりでなく、見かけ上、抵抗値が小さく測定されるためと考えられる。抵抗値が小さく測定された場合、導体パターン部で腐食切断が開始しているにも関わらず、電気的特性の変化として捉えられないということになる。
図14に、LCRメーターを用い、線幅0.5〜2.0mm、線長5〜50mm、鉄箔厚さ10〜20μmとした導体パターン部を用い、塩分濃度1.2〜4.8 kg/m3(Cl換算)としたコンクリートに埋設した導体パターン部について、静電容量と抵抗を測定した結果を示す。なお、図からは腐食切断していないと考えられる抵抗値10Ω以下のデータは省いている。測定時の等価論理回路は容量成分と抵抗との並列回路であり、測定周波数は100kHzとしたものである。実際のコンクリート中で形成される腐食切断後の等価回路は複雑と考えられるため、LCRメータでの測定値は必ずしも真値とは限らないが、コンクリート中での腐食切断によって、見かけ上の静電容量と抵抗とはおおよそ反比例の関係にあった。腐食が初期段階である例えば、抵抗値が10kΩより低い値を示す場合には、静電容量が大きくなる。
上記現象は、腐食の進展状況によって容量成分が増減することを示しており、交流での測定は静電容量の変化によって消費電流が変化してしまうため検知できにくくなることが判る。また、特に腐食切断開始としての判定基準を"100Ω以上、10KΩ以下の任意の抵抗"とした場合には、直流で0.1mV以上、2V以下の印加電圧で容量成分の影響を抑えて安定した測定が可能となる。
次に、[断線を判断する抵抗値の適正値の検討]を行った。非特許文献1で検討された鉄線センサと本発明である鉄箔センサのそれぞれについて腐食現象の進展に伴う抵抗値変化を、2種類の腐食進展モデルから検討し、断線現象を判断するに適正な抵抗値を導き出した。
モデル検討を行う上で、鉄箔センサおよび鉄線センサに対して腐食因子が表面から浸食する可能性を同一とするため両端部を除く表面積とセンサ長さを同一とした。鉄線センサは直径0.1mmとし長さを50mmに設定し、鉄箔センサは、厚み10μm、長さ50mmとし、基材のPETフィルムに面している面は腐食因子の浸食を受けないため、それ以外の表面積が鉄線センサの表面積と同等になる幅を算出した。それらの形状条件と鉄の抵抗率より理論抵抗値を計算し、各腐食モデルで抵抗値の変化を図示した。腐食モデルは、腐食因子がセンサ両端部を除く表面積全体に浸食し、全ての長さ方向に対し一様に腐食が進み、センサ断面積が減少していくモデル1とセンサの一部が腐食因子により浸食されその部分のみ断面積が減少していくモデル2で理論抵抗値がセンサ形状の違いによって、どのように変化するか検討を行った。図15は、モデル1を示す図であり、図16は、モデル2を示す図である。尚、モデル2においては、腐食部の長さを0.1〜10mmで検討した。
図17は、モデル1による抵抗値の変化を示す図である。図15からわかるように、モデル1の腐食現象の場合、鉄線センサと鉄箔センサの抵抗変化傾向はほぼ同等となる。この腐食モデルでは非特許文献1「4.1 通電を行わないセンサーの感度」の腐食破断の判断基準である4Ω程度の抵抗値変化は、断面積残存率がおよそ60%もあり、断線状態とは判断できないといえる。但し、腐食現象は一般的にも偏在して発生することや一部の腐食部が進展していくことが知られており、更に対象とするコンクリート中での利用を想定するとコンクリートの不均一性も影響しモデル1のように均等に腐食するとは限らない。
そこで、より現実的なモデルとして2のように一部の腐食が進展し断面積が減少していく場合の検討を行い、その現象が複数箇所でおこる場合を対象とするため、腐食部の長さを変え検討した。
図18、図19、図20、図21は、モデル2において腐食部長さがそれぞれ、0.1、1、5、10mmとなることを想定した時の結果を示す図である。このモデルでは、断線が近づくにつれ鉄箔と鉄線の違いが明らかとなっている。鉄線では抵抗値の変化が顕著に現れる時点の断面積残存率が腐食部の長さが長くなるにつれ、大きくなる傾向となる。鉄箔では腐食部長さによらず断面積残存率が10%以下の時点で抵抗値が急激に変化することがわかった。
モデル2で検討した結果の腐食部長さ0.1mmと10mmを重ねたグラフが図22である。鉄線センサは非特許文献1「4.1 通電を行わないセンサーの感度」に示す4Ωの抵抗値変化で断線を判断すると、腐食部の断面積残存率は30〜50%の時点で断線を判断していることとなり腐食の進展状況によって断線判断範囲が広くなる。
一方、鉄箔センサは抵抗値が数Ω〜数百Ωの範囲に変化した時点を捉えることにより断面積残存率5%以下の状態を検知でき、鉄線に比べ断線に近い状態の検知ができる。また、鉄線に比べ、鉄箔では断線付近で急激な抵抗値変化を生じるため、断線判断を行う範囲が狭く確実な検知を可能とする。コンクリート中の腐食現象は必ずしも本検討によるモデルのみで表されるのではなく、モデル1とモデル2の複合的な腐食モデルも考えられる。その場合、図17のプロット値よりブロードになり、鉄線センサを用い4Ωの抵抗値変化を断線として捉えると断線判断範囲が広くなり不確実性が高まる。
次に、[抵抗値の変化現象の把握による塩分量の推定]について説明する。
[実験方法2]
(i)腐食センサ
試験に用いた腐食センサは、厚さ10μmの鉄箔を素材とした鉄箔センサとし、形状因子として検知部の線幅、線の長さ、線間隔を変化させ、実験での各水準の鉄箔センサのn数は5とした。
(ii)コンクリート
コンクリートに使用した材料は、普通セメント、水(上水道水)、JIS規定の骨材とした。コンクリートの配合は一般的な普通コンクリートの配合とし、水および酸素の透過性を確保するため、水とセメントの質量比を0.65と設定した(水セメント比65%)。このコンクリートに、予め塩分(Cl換算塩化ナトリウム)を添加し、腐食環境を変化させたコンクリートを作製した。塩分添加量は5水準とし、それぞれCl換算で0 kg/m3〜9.6 kg/m3となるようにコンクリートに添加した。
(iii)試験体および計測方法
試験体は、キュービック状として作製し、6面のうち5面を樹脂で被覆し、残りの1面を曝露面(開放面)として酸素および水の供給面として促進試験を実施した(添付の実験概略図参照)。
センサの設置位置は、開放面から15mmの深さ位置とし、開放面と平行となるようセンサを設置した。なお、センサからは計測用のリード線をコンクリート試験体の外に出して作製した。促進試験は鉄筋の腐食が進行しやすい60℃環境で実施し、60℃水中浸漬−1日間、60℃・相対湿度60%−1日間を1サイクルとした水中浸漬・乾燥の繰り返し試験を実施した。なお、試験体を浸漬した水には蒸留水を使用した。センサの計測は、有線のリード線を試験体の外に予め出しておき、促進1サイクル毎に、デジタルマルチメーターを用いてセンサ検知部の電気抵抗を測定した。
図23は、促進試験による経時的な抵抗値の変化を示す図である。添加する塩分の練り込み量毎に各5個用意し、促進サイクルにあわせ各試料の抵抗値をデジタルマルチメータにて測定し、5個の試料の平均抵抗値をプロットした。尚、塩分添加量0kg/m3の水準は抵抗値の変化が表れなかったため除外した。
図23からわかるように、練り込んだ塩分添加量の違いにより抵抗値の変化傾向が異なり、塩分量が多くなるほど傾きが大きくなる。特に、腐食初期と考えられる、数Ω〜数百Ωの範囲ではなく、1KΩ〜MΩオーダーまでの上昇傾向に顕著な違いが認められる。

この結果より、抵抗値が1KΩ以上になった後において、ある時点の抵抗値と一定期間経過後の抵抗値の傾きにより、コンクリート中の塩分量が想定できる。つまり、鉄箔センサを用いた場合、数Ω〜数百Ωの範囲では腐食による断線を検知することが可能であり、更に1KΩ以上になった後に抵抗値の変化を測定することによりで塩分量を推定することができる。本発明のセンサでは腐食初期の数Ω〜1KΩを測定すると共にMΩオーダーまでの測定を行うことが有効である。
以上説明したように、本実施形態によれば、導体パターン部の基板からの厚さが0.1mm未満であるため、細線よりも断線するまでの時間を短くすることができ、その結果、センサとしての感度を高めることが可能となる。また、基板上で、二次元的な凹凸形状または渦巻き形状の回路を構成するので、センサ全体をできるだけ小さいものにすると共に、導体パターン部の面積を大きくすることができる。その結果、腐食因子を接触する確率を高め、センサの感度を向上させることが可能となる。
また、本発明は、次のような形態を採ることも可能である。すなわち、本実施形態に係る腐食センサ装置は、コンクリート構造物中の鋼材の腐食進行状況を検出する腐食センサ装置であって、鉄を圧延することにより作製した鉄箔材で形成された導体パターン部と、前記導体パターン部を保持する基板と、前記導体パターン部の電気的特性を測定し、前記測定した導体パターン部の電気的特性に基づいて、コンクリート構造物中の鋼材腐食因子を検出する腐食検出部と、を備えることを特徴としている。
このように、鉄を圧延することにより作製した鉄箔材によって、導体パターン部を形成するので、従来の細線を用いた場合よりも、設計の自由度が高くなり、製造が容易となる。その結果、複雑な形状を容易に構成することが可能となる。また、鉄箔材の厚さは、非常に薄いため、細線よりも断線するまでの時間を短くすることができ、その結果、センサとしての感度を高めるとともに、導体パターン部が基板で保持されるのでコンクリート打設時の強度を確保することが可能となる。
また、本実施形態に係る腐食センサ装置において、前記導体パターン部は、前記基板からの厚さが0.1mm未満であって、前記基板上で、二次元的な凹凸形状または渦巻き形状の回路を構成することを特徴としている。
このように、導体パターン部の基板からの厚さが0.1mm未満であるため、細線よりも断線するまでの時間を短くすることができ、その結果、センサとしての感度を高めることが可能となる。また、基板上で、二次元的な凹凸形状または渦巻き形状の回路を構成するので、センサ全体をできるだけ小さいものにすると共に、導体パターン部の面積を大きくすることができる。その結果、腐食因子を接触する確率を高めてセンサの感度を向上させ、小型化によってコンクリート表面と鋼材との間に設置が可能となり、これにより鋼材に腐食因子が到達する前に腐食因子の検知が可能となる。腐食が確率的に生じるため線は長いことが必要であり、基板上での二次元的な凹凸形状または渦巻き形状の回路の形成は、線の長さを伸長するのと同じ効果を少ないスペースで実現可能である。
また、本実施形態に係る腐食センサ装置の製造方法は、コンクリート構造物中に埋設される鋼材腐食因子を検出する腐食センサ装置の製造方法であって、鉄を圧延することにより作製した鉄箔材と基板とを一体化させて鉄箔シートを作製する工程と、前記鉄箔シートの鉄箔上に、凹凸形状または渦巻き形状の回路パターンのレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜が形成された鉄箔シートをエッチングする工程と、前記エッチング後の鉄箔シートのレジスト膜を除去する工程と、前記鉄箔シートの回路パターンに導線を接続する工程と、前記導線と、前記回路パターンの電気的特性を測定して前記回路パターン部の腐食を検出する腐食検出部とを接続する工程と、を少なくとも含むことを特徴としている。
このように、鉄箔材と基板とを一体化させて鉄箔シートを作製し、鉄箔シートの鉄箔上に、凹凸形状または渦巻き形状の回路パターンのレジスト膜を形成して、エッチングするので、二次元的に複雑な形状のパターンを形成することができる。これにより、センサ全体をできるだけ小さいものにすると共に、導体パターン部の面積を大きくすることができる。その結果、腐食因子を接触する確率を高め、センサの感度を向上させることが可能となる。また、エッチングにより、導体パターン部と共に回路部分も同時に作ることができるので、製造工程を簡略化することが可能となる。
また、本実施形態に係る腐食検出方法は、上記いずれかに記載の腐食センサ装置をコンクリート構造物中に埋設して、前記導体パターン部の電気的特性を測定し、前記測定した導体パターン部の電気的特性に基づいて、コンクリート構造物中の鋼材腐食因子を検出することを特徴としている。
このように、導体パターン部を鉄箔材で形成するため、厚さを非常に薄くすることができ、細線よりも断線するまでの時間を短くすることができる。その結果、センサとしての感度を高めることが可能となるだけでなく、省電力での検出を可能とする。さらに形成した導体パターン部は、細線と比較して平坦となるため、糊付きのプラスチックフィルムなどで製造後に保護フィルムで保護しておくことが可能で、細線がコンクリートへの設置前に腐食することがあったのに対し、設置まで腐食することなく運搬やコンクリート型枠内に設置でき、打設前に保護フィルムを除去することで、品質確保を容易とすることができる。また、鉄メッキの手法でも母材であるアルミの機械的強度が不足するために保護フィルムの使用は困難であった。
また、本実施形態に係るセンサは、コンクリート構造物中の鋼材の腐食進行状況を検出する腐食センサ装置に用いられるセンサであって、鉄を圧延することにより作製した鉄箔材で形成された導体パターン部と、前記導体パターン部を保持する基板と、を備え、コンクリート構造物中の鋼材腐食因子によって、前記導体パターン部の電気的特性が変化することを特徴としている。
このように、鉄を圧延することにより作製した鉄箔材によって、導体パターン部を形成するので、従来の細線を用いた場合よりも、設計の自由度が高くなり、製造が容易となる。その結果、複雑な形状を容易に構成することが可能となる。また、鉄箔材の厚さは、非常に薄いため、細線よりも断線するまでの時間を短くすることができ、その結果、センサとしての感度を高めるとともに、パターン部の保持によってコンクリート打設時の強度を確保することが可能となる。
また、本実施形態に係るセンサの製造方法は、コンクリート構造物中に埋設される鋼材腐食因子を検出する腐食センサ装置に用いられるセンサの製造方法であって、鉄を圧延することにより作製した鉄箔材と基板とを一体化させて鉄箔シートを作製する工程と、前記鉄箔シートの鉄箔上に、凹凸形状または渦巻き形状の回路パターンのレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜が形成された鉄箔シートをエッチングする工程と、前記エッチング後の鉄箔シートのレジスト膜を除去する工程と、を少なくとも含むことを特徴としている。
このように、鉄箔材と基板とを一体化させて鉄箔シートを作製し、鉄箔シートの鉄箔上に、凹凸形状または渦巻き形状の回路パターンのレジスト膜を形成して、エッチングするので、二次元的に複雑な形状のパターンを形成することができる。これにより、センサ全体をできるだけ小さいものにすると共に、導体パターン部の面積を大きくすることができる。その結果、腐食因子を接触する確率を高め、センサの感度を向上させることが可能となる。
1 腐食センサ装置
2 腐食検出部
10a 導体パターン部
10b 基板
12 インタフェース回路
13 無線モジュール
13a 検出回路
13b 無線通信回路
14 アンテナ

Claims (2)

  1. 鉄を圧延することにより作製される鉄箔材で形成された導体パターン部を有する腐食センサを用いて、コンクリート構造物中の鋼材腐食因子の濃度を推定する腐食因子濃度推定方法であって、
    コンクリート構造物中に埋設された前記腐食センサの導体パターン部に電圧を印加し、抵抗値を取得するステップと、
    前記導体パターン部の抵抗値が基準値未満である場合は、前記抵抗値の変化に基づいて、前記導体パターン部の腐食による断線を検知するステップと、
    前記導体パターン部の抵抗値が前記基準値以上である場合は、予め求めた鋼材腐食因子の濃度と導体パターン部の抵抗値の時間的変化量との対応関係に基づいて、前記導体パターン部の抵抗値の時間的変化量に対応する鋼材腐食因子の濃度を選定するステップと、を含むことを特徴とする腐食因子濃度推定方法。
  2. 前記導体パターン部は、厚さが5μm以上25μm以下である鉄箔材で形成されており、
    前記取得した抵抗値が1kΩ未満である場合は、前記抵抗値が数Ω〜数百Ωの範囲への変化に基づいて、前記導体パターン部の腐食による断線を検知する一方、
    前記取得した抵抗値が1kΩ以上である場合は、予め求めた鋼材腐食因子の濃度と導体パターン部の抵抗値の時間的変化量との対応関係に基づいて、前記導体パターン部の抵抗値の時間的変化量に対応する鋼材腐食因子の濃度を選定することを特徴とする請求項1記載の腐食因子濃度推定方法。
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