以下、本開示の内容を、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様を含み、以下に例示する開示の内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、それはあくまで一例であって、本開示の内容を必ずしも限定するものではない。また、本開示において、ある図面に記載されたある要素と、他の図面に記載されたある要素とが同一又は対応する関係にあるときは、同一の符号(又は符号として記載された数字の後にa、bなどを付した符号)を付して、繰り返しの説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有さない。
本開示において、ある部材又は領域が他の部材又は領域の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限りこれは他の部材又は領域の直上(又は直下)にある場合のみでなく他の部材又は領域の上方(又は下方)にある場合を含む。すなわち、他の部材又は領域の上方(又は下方)においてある部材又は領域との間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
第1の開示:
(1)検知センサの構成
図1は、本開示の一実施形態に係る検知センサ100aの構成を示す。図1は、検知センサ100aの構成を平面図で示し、図中に示すA1−A2線に対応する断面構造を図2(A)に示し、B1−B2線に対応する断面構造を図2(B)に示す。
図1に示すように、検知センサ100aは、基材フィルム104と、基材フィルム104に設けられた第1検知回路106a、第2検知回路106b、第1集積回路108a、第2集積回路108bを含む。第1検知回路106aは第1集積回路108aと接続され、第2検知回路106bは第2集積回路108bと接続される。
基材フィルム104の上面において、第1検知回路106aと第2検知回路106bとは近接して配置される。検知センサ100aは、第1検知回路106a及び第2検知回路106bが配置される領域がセンシング領域102となる。第1集積回路108a及び第2集積回路108bは、センシング領域102の外側の領域に配置される。また、基材フィルム104には、第1集積回路108aと接続される第1アンテナ110aと、第2集積回路108bと接続される第2アンテナ110bが設けられる。第1アンテナ110a及び第2アンテナ110bは、第1集積回路108a及び第2集積回路108bがリーダ・ライタ装置(図示せず)と無線通信を行うために設けられる。リーダ・ライタ装置は、検知センサ100aに命令を与え、データを読み出す装置である。第1アンテナ110a及び第2アンテナ110bもセンシング領域102の外側に配置される。
検知センサ100aは、構造物に付着させた状態で用いられる。検知センサ100aは、第1検知回路106a及び第2検知回路106bの一方又は双方の電気的特性の変化を検出することで、構造物の状態が変化したことを検知する機能を有する。ここで、構造物の状態変化には、構造物の表面に表れるひび割れ、部分的な崩落、壁面の繋ぎ目における変位等が含まれる。検知センサ100aは無線通信機能を有する第1集積回路108a及び第2集積回路108bによって、遠隔操作により構造物の状態変化を検知することが可能とされている。
なお、本開示において、「構造物」とは、例えば、道路設備、鉄道設備、港湾設備、空港設備、送信設備、送電設備、建築物(ビルディング等)、工芸品、その他の建造物である。例えば、道路設備及び鉄道設備であれば、橋梁、橋脚、トンネル、法面、その他道路設備の付属物(表示板、信号機、架線等)を含む。また、構造物には、人工物のみでなく、地盤、山岳斜面、岩石等の天然物が対象とされる場合もある。
第1検知回路106a及び第2検知回路106bは、それぞれ線状の導体パターンを有する。導体パターンの形態は適宜設計され得るが、例えば、一端と他端とを有する1本の導線によって形成される。導体パターンを形成する導線は、センシング領域102を交差するように配置される。例えば、導体パターンは、複数回屈曲し、センシング領域102の全体に広がるように配置される。
基材フィルム104の形状に限定はないが、例えば、平面視において縦幅と横幅が異なる矩形であるものが適用される。図1は、線状の導体パターンが、矩形の基材フィルム104の長手方向(図1で示すY方向)に沿って伸長する直線状の配線部分と、長手方向の一端及び他端でクランク状に折り返される配線の屈曲部分とを含むパターンで形成され、センシング領域102に配置される態様を示す。すなわち、第1検知回路106a及び第2検知回路106bを形成する導体パターンは、センシング領域102において、メアンダラインを形成するように折れ曲がった配線によるパターンを有している。
第1検知回路106aを形成する線状の導体パターンと第2検知回路106bを形成する線状の導体パターンとは、平面視において、それぞれの線状の導体パターンが咬み合うように配設される。図2(A)に示すように、断面視においては、第1検知回路106aを形成する線状の導体パターンと第2検知回路106bを形成する線状の導体パターンとが、基材フィルム104の第1面において、交互に隣接して配置される。このように、第1検知回路106aと第2検知回路106bとは、同じ領域に近接して配置されることで、センシング領域102を同一とし、構造物において同じ領域の状態を検知することが可能となる。
第1検知回路106a及び第2検知回路106bは、線状の導体パターンの配線密度を高めると(単位面積当たりの配線数を増やすと)構造物のより狭い領域の状態変化を検知することできる。一方、線状の導体パターンの配線密度を低くすると(単位面積当たりの配線数を減らすと)、構造物において比較的大きな領域の状態変化を検知することが可能となる。別言すれば、検知センサ100aのセンシング領域102において、検知回路106(第1検知回路106a、第2検知回路106b)の配線密度を高くすれば、構造物における比較的小さな欠陥を検出することができ、配線密度を低くすれば、比較的小さな欠陥の影響は受けずに大きな欠陥を検出することが可能となる。このように、検知回路106(第1検知回路106a、第2検知回路106b)の線状の導体パターンを形成する配線密度を異ならせることで、検出感度を調整することができる。
なお、図1は、第1検知回路106a及び第2検知回路106bの各線状の導体パターンがメアンダライン状に屈曲する態様を示すが、本開示はこれに限定されず、直線状、矩形状、波線状等の各種のパターンを適用することができる。例えば、図3に示すように、第1検知回路106a及び第2検知回路106bを構成する各線状の導体パターンを渦巻き状に設けてもよい。第1検知回路106aの導体パターンと第2検知回路106bの導体パターンとは、略平行に設けることで、同一のセンシング領域102に設けることができる。また、第1集積回路108a、第2集積回路108b、第1アンテナ110a、及び第2アンテナ110bはセンシング領域102の外側に配置される。
また、センシング領域102の範囲は、基材フィルム104の面内であれば、第1検知回路106a及び第2検知回路106bの長さ、幅を変えることで自在に変更可能である。
第1集積回路108a及び第2集積回路108bは、センシング領域102の外側に配置される。また、第1アンテナ110a及び第2アンテナ110bも同様に、センシング領域102の外側に配置される。図2(B)は、第1集積回路108aと第1アンテナ110a、及び第2集積回路108bと第2アンテナ110bとが、基材フィルム104の第1面であって、センシング領域102の外側に配置される一例を示す。このような配置により、第1集積回路108a、第2集積回路108b、第1アンテナ110a及び第2アンテナ110bは、センシング領域102の影響を受けずに動作の安定性が確保される。すなわち、第1集積回路108a及び第2集積回路108b、第1アンテナ110a及び第2アンテナ110bをセンシング領域102の外側に配置することで、構造物に付着された検知センサ100aが異常を検知したときに、第1集積回路108a及び第2集積回路108bが基材フィルム104から剥落したり、アンテナ110が断線したりすることを防止することができる。
なお、図示はされないが、第1集積回路108a、第2集積回路108b、第1アンテナ110a及び第2アンテナ110bの少なくとも一つは、基材フィルム104の他方の面(第2面)に設けられてもよい。この場合、第1集積回路108aと第1検知回路106aとの接続、第2集積回路108bと第2検知回路106bとの接続は基材フィルムを貫通する配線によって接続される。
なお、図1及び図2(B)は、第1検知回路106a及び第2検知回路106bに対応して第1集積回路108a及び第2集積回路108bが設けられる態様を示すが、本開示に係る検知センサ100はこのような態様に限定されない。例えば、第1検知回路106aと第2検知回路106bが、同じ機能を有する一つの集積回路108に接続されていてもよい。また、検知回路106は、一つの検知センサ100に複数個設けられていればよく、例えば、3個以上の検知回路106が設けられていてもよい。
(2)集積回路
図4は、集積回路108(第1集積回路108a、第2集積回路108b)の構成を示すブロック図である。集積回路108は、電源部130、無線通信部132、制御部134、計測部138、記憶部136を含む。電源部130は、アンテナ110で受信した変調波の整流と安定化を行うことにより電力を生成し、集積回路108の動作に必要な電力を各部に供給する機能を有する。無線通信部132は、リーダ・ライタ装置140と通信を行い、制御部134へ受信した信号を出力し、また制御部134から出力される信号を送信する機能を有する。制御部134は、記憶部136からデータを読み出し、計測部138の動作を制御し、また計測部138から取得した信号を無線通信部132に出力する機能を有する。記憶部136は、集積回路108の製造段階で書き込まれた固有の識別情報が予め記憶されている。また、記憶部136には、ユーザが任意のデータを書込むことができるユーザ領域が含まれていてもよい。計測部138は、前述のように、検知回路106と接続され、検知回路106の電気的特性を計測する機能を有する。
このような集積回路108は、外寸が1mm以下の半導体チップによって実現されるので、センシング領域102に影響を与えることなく基材フィルム104に実装することができる。
なお、図4では、アンテナ110が、集積回路108に外付けされているが、無線通信部132の一部として内蔵されていてもよい。また、図4は、電源部130が、アンテナ110で受信した電波から電力を生成するパッシブ型の形態を示すが、これに代えてバッテリーが検知センサ100aに内蔵されていてもよい。
(3)検知回路
図1において、基材フィルム104の一方の面(第1面)は絶縁表面を有する。第1検知回路106aと第2検知回路106bとは、それぞれの線状の導体パターンが隣接するように配置されるが、双方の線状の導体パターンは電気的に絶縁される。第1検知回路106a及び第2検知回路106bの各線状の導体パターンは、基材フィルム104が変形することに伴って断線又は変形する。
図1において、点線で囲む領域Rに対応する部分拡大図を図5(A)及び図5(B)に示す。図5(A)は領域Rの平面図を示し、図5(B)はC1−C2線に対応する断面図を示す。
図5(A)は、第1検知回路106aを構成する線状の導体パターンの配線幅と、第2検知回路106bを構成する線状の導体パターンの配線幅が異なる場合を示す。具体的には、第1検知回路106aを構成する線状の導体パターンの配線幅に対して、第2検知回路106bを構成する線状の導体パターンの配線幅が太くなるように設けられている。第1検知回路106aを構成する線状の導体パターンは、配線膜厚t1、配線幅w1であり、第2検知回路106bを構成する線状の導体パターンは、配線膜厚t1で同じであり、配線幅w2(w2>w1)で、配線幅が太いことを示す。
図5(B)に示すように、第1検知回路106a及び第2検知回路106bの線状の導体パターンは基材フィルム104に固着されている。図5(A)において、仮に、基材フィルム104に対し、C1−C2線を中心として、矢印で示すY1と、Y1とは逆のY2の方向にそれぞれ引張力が作用すると、第1検知回路106a及び第2検知回路106bの各線状の導体パターンにも同様の引張力が作用する。引張力の作用により基材フィルム104が展延したり、C1−C2線に沿って破断したりすると、第1検知回路106a及び第2検知回路106bの各線状の導体パターンの少なくとも一部は塑性変形したり、断線したりすることとなる。このような特性は、図5(A)で示すX1及びX2の方向に力が作用する場合も同様である。
第1検知回路106a及び第2検知回路106bは、各線状の導体パターンの配線幅が異なっているが、初期状態では両線状の導体パターンは導通状態にある。線状の導体パターンは一部が断線することで高抵抗化し、又は線状の導体パターンの一部が塑性変形して断面積が縮小すると高抵抗化する。検知センサ100aは、第1検知回路106a及び第2検知回路106bの抵抗変化検出すること、あるいは線状の導体パターンの抵抗が低いか高いかを判定することで、構造物の状態変化を検知する。
第1検知回路106a及び第2検知回路106bを形成する各線状の導体パターンは、配線幅が細い場合に、配線幅が太い場合と比べて断線しやすく、また塑性変形しやすい状態にある。このような配線の性質を利用することで、第1検知回路106aと第2検知回路106bとの感度を異ならせることが可能となる。
図5(A)及び図5(B)で示す態様では、第1検知回路106aと第2検知回路106bとの各線状の導体パターンの配線幅を異ならせることで、検知センサ100aは、構造物の変化の状態を少なくとも2段階に分けて検出することが可能となる。具体的には、検知センサ100aが構造物のひび割れの状態を検出するとき、第1検知回路106aによってひび割れの割れ幅が小さな状態を検知し、第2検知回路106bによってひび割れの割れ幅が大きな状態を検知することが可能となる。このように、検知センサ100aは、線状の導体パターンの配線幅が異なる検知回路106をセンシング領域102に複数個設けることで、構造物の変化の状態を多段階に分けて検出することが可能となる。
図6(A)及び図6(B)は、第1検知回路106aを構成する線状の導体パターンの配線膜厚と、第2検知回路106bを構成する線状の導体パターンの配線膜厚が異なる場合を示す。図6(B)は、第1検知回路106aの線状の導体パターンの配線幅w1と第2検知回路106bの線状の導体パターンの配線幅w2が同じであり、第1検知回路106aの線状の導体パターンの配線膜厚d1に対して第2検知回路106bの線状の導体パターンの配線膜厚d2が厚く設けられている場合を示す(d1<d2)。
このように第1検知回路106a及び第2検知回路106bの各線状の導体パターンの配線膜厚を異ならせることで、配線幅を異ならせた場合と同様に、検出感度を異ならせることが可能となる。すなわち、第1検知回路106a及び第2検知回路106bを構成する各線状の導体パターンは、配線膜厚が小さい場合、配線膜厚が大きい場合と比べて断線しやすく、また塑性変形しやすくなる。このような性質を利用することで、第1検知回路106aと第2検知回路106bとの感度を異ならせることが可能となる。
第1検知回路106aと第2検知回路106bの感度を異ならせるには、線状の導体パターンを形成する配線の材質を異ならせてもよい。例えば、第1検知回路106a及び第2検知回路106bを構成する線状の導体パターンの一方の配線を、金、銀、ニッケル、銅など相対的に延性の高い金属材料で形成し、他方の配線をアルミニウム、スズなど前者とは相対的に延性の低い金属材料で形成すればよい。このように線状の導体パターンを形成する配線の材質を異ならせることで、第1検知回路106aと第2検知回路106bとの検出感度を異ならせることができる。
もちろん、検知センサ100aに設けられる複数の検知回路106において、各線状の導体パターンを形成する配線の断線しやすさ(又は断線しにくさ)を異ならせるには、配線の線幅、膜厚、材質のそれぞれを異ならせることのみならず、各配線の線幅及び膜厚、線幅及び材質、膜厚及び材質、あるいは線幅、膜厚及び材質の全てを変えてもよい。
図5(A)、図5(B)に示す場合において、第1検知回路106a及び第2検知回路106bを構成する線状の導体パターンの配線幅を、例えば、0.1mm〜10mmとし、双方の配線幅の差を、例えば、2倍〜10倍の範囲として設けることができる。また、図6(A)、図6(B)に示す場合において、第1検知回路106a及び第2検知回路106bの線状の導体パターンは、配線膜厚を、0.1μm〜100μmとし、双方の線状の導体パターンの膜厚の差を、例えば、1倍〜1000倍の範囲として設けることができる。
このような第1検知回路106a及び第2検知回路106bの各線状の導体パターンは、銀ペースト、導電性のカーボンペーストのような導電性ペーストを印刷することにより形成される。また、第1検知回路106a及び第2検知回路106bの各線状の導体パターンは、メッキ法、真空蒸着法、スパッタリング法の成膜法により作製される、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、スズ等の被膜によって形成することができる。また、第1検知回路106a及び第2検知回路106bは、基材フィルム104に貼り合わされたアルミニウム、銅の箔材をエッチングして形成されたものであってもよい。
(4)基材フィルム
基材フィルム104は脆性を有する。基材フィルム104は、合成樹脂材、紙材、ガラス材のような脆性を有する素材によって形成される。例えば、基材フィルム104として、脆性フィルムが用いられる。脆性フィルムとは、通常の塩化ビニル系樹脂によるフィルムに比べ脆性が高いフィルムであり、脆く破れやすい性質を有するフィルムである。脆性を有するフィルムとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートのようなポリエステルでなるプラスチックフィルムが用いられる。このようなプラスチックフィルムが用いられる場合、基材フィルム104は、10μm〜100μm、例えば、15μm〜60μmの厚みを有していることが好ましい。
また、基材フィルム104として、塩化ビニル系樹脂に可塑剤と充填材を多量に含有させたフィルム、塩化ビニル系樹脂とアクリル系樹脂との混合樹脂に溶融シリカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウムのいずれかの充填材を多量に充填した脆性を有するフィルムが用いられてもよい。
また、基材フィルム104として、ガラス材が用いられてもよい。例えば、基材フィルム104として板厚が0.5mm以下、好ましくは0.05mm以下、例えば0.01mmの薄板ガラスを用いることができる。
基材フィルム104の脆性は、例えば、破断強度が0.5N/mm〜100N/mmであるとともに破断伸度が10%以下であることが好ましい。この値は、構造物として例示される鉄筋コンクリート壁の破断強度である400N/mm2より十分に小さい値であるとともに、長さ1mmの局所的な箇所に0.1mm(10%)の変位(ひび)が生じた場合の伸び量である。すなわち、基材フィルム104の破断強度は、検知対象とする構造物の破断強度に比べて、同程度かそれ以下の破断強度を有することが好ましい。構造物と基材フィルム104の強度差をこのような範囲とすることにより、構造物にひび割れが生じたり、壁面の部分的な欠損(崩落)が生じたりする場合に、基材フィルム104が破断して異常を検知することが可能となる。
もっとも、基材フィルム104の脆性は、材質及び厚みに依存して変化する。別言すれば、基材フィルム104の材質や厚みを変えることにより、検知センサ100としての感度を調整することができる。例えば、同じ材質であっても、基材フィルム104の厚みを薄くすることで、構造物の変化に対する感度を高くすることができ、厚くすることで感度を低くすることができる。
(6)検知センサの取り付け構造
図7(A)は、検知センサ100aを構造物に付着させた状態を断面図で示す。検知センサ100aは、構造物112に貼付け部材114を介して付着される。貼付け部材114は、粘着材、粘着シート、接着材、接着シート等の粘着性又は接着性を有する部材である。貼付け部材114が設けられる構造物112の施工面は、平面及び曲面のいずれであってもよく、また角部であってもよい。構造物112の施工面は、貼付け部材114が密着するようにプライマ加工等が施されていてもよい。
貼付け部材114として用いられる粘着材は一般に高粘度で低弾性率の半固体状であり、接合形成後もその状態又は当初の状態に近い状態を維持する。粘着材としては、ゴム系、アクリル系、シリコーン系等の粘着材を適用することができる。貼付け部材114として用いられる接着材は非着材を接合した後に化学反応によって固化し、接着界面において比較的高い接着強さを発現するものである。接着材としては、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコーン樹脂系、塩化ビニル樹脂系等の接着材を適用することができる。接着材は、また、光硬化型、熱硬化型等の各種の接着材を適用することができる。また、粘着シートは、シート状の粘着材であり、接着シートはシート状の接着材である。
貼付け部材114は、基材フィルム104と略同一または、それよりも大きな面積で設けられる。これにより、検知センサ100aは構造物112に対し安定的に固定される。一方、別の態様として、貼付け部材114をストライプ状又はドット状に設け、検知センサ100aを構造物112に固定してもよい。
基材フィルム104の一方の面(第1面)には、検知回路106(第1検知回路106a、第2検知回路106b)、集積回路108(第1集積回路108a及び第2集積回路108b)、アンテナ110(第1アンテナ110a、第2アンテナ110b)が設けられる。検知センサ100aは、基材フィルム104の一方の面(第1面)が構造物112と対向するように配設される。検知回路106(第1検知回路106a、第2検知回路106b)、集積回路108(第1集積回路108a及び第2集積回路108b)、アンテナ110(第1アンテナ110a、第2アンテナ110b)は、貼付け部材114によって全面が覆われることで外面に露出しない構造となる。これにより、検知回路106(第1検知回路106a、第2検知回路106b)は基材フィルム104によって保護され、外部からの作用による損傷を防ぎ、意図しない断線を防止することができる。
基材フィルム104の一方の面とは反対側の面(第2面)には、剥離フィルム116が設けられていてもよい。剥離フィルム116は粘着層118によって基材フィルム104に付着される。剥離フィルム116は粘着層118と共に基材フィルム104から剥離することができる。剥離フィルム116は、検知センサ100aを構造物112に取り付ける際に、基材フィルム104が破損しないように保護部材として用いられる。脆性を有する基材フィルム104は、剥離フィルム116によって保護されるので、検知センサ100aを構造物112に施工する段階では安定的に保持される。なお、剥離フィルム116としては、紙材、プラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等)が用いられる。
図7(A)は、検知回路106(第1検知回路106a、第2検知回路106b)が貼付け部材114を介して構造物112に近接して配置される態様を示す。このような配置により、検知回路106(第1検知回路106a、第2検知回路106b)は構造物112の状態の変化に対して敏感に反応する。この場合、貼付け部材114の厚みを変えることで、検知回路106(第1検知回路106a、第2検知回路106b)の感度を調節することができる。
図7(B)は、検知センサ100aの他方の面(第2面)に貼付け部材114を設けた態様を示す。基材フィルム104の一方の面(第1面)には検知回路106(第1検知回路106a、第2検知回路106b)、集積回路108(第1集積回路108a及び第2集積回路108b)、アンテナ110(第1アンテナ110a、第2アンテナ110b)が設けられ、保護フィルム120により覆われている。保護フィルム120は、ゴム系、シリコーン系等の粘着層118によって基材フィルム104と固定される。検知回路106(第1検知回路106a、第2検知回路106b)は保護フィルム120によって覆われるので、外部からの作用による損傷を防ぎ、意図しない断線を防止することができる。
図7(B)は、貼付け部材114及び基材フィルム104を介して検知回路106(第1検知回路106a、第2検知回路106b)が構造物112に配置される態様を示す。図7(A)に示す構成と比べ、図7(B)で示す構成は、構造物112との間に基材フィルム104が介在するので、構造物112の状態の変化に対する感度は、図7(A)で示す場合と比較して低下する。すなわち、検知回路106(第1検知回路106a、第2検知回路106b)と構造物112との間に介在する部材の数、種類、厚みを変えることで検知センサ100aの感度を変えることができる。別言すれば、検知回路106(第1検知回路106a、第2検知回路106b)の構造物112からの距離を変えることで、検知センサ100aの感度を変えることができる。
本開示によれば、複数の検知回路を設け、各検知回路の線状の導体パターンの配線幅、配線膜厚、配線の材質を変えることで、複数の検知回路の感度を異ならせることができる。また、検知回路106(第1検知回路106a、第2検知回路106b)と構造物112との間に介在する部材の数、種類、厚みを変えることで検知センサ100aの感度を変えることができる。これにより、構造部の状態の変化を多段階に検知することが可能となる。
第2の開示:
(1)第1の構成
図8(A)は第1検知センサ101aを示し、図8(B)は第2検知センサ101bを示す。第1検知センサ101aは、第1基材フィルム104aに、第1検知回路106a、第1集積回路108a、第1アンテナ110aが設けられる。第2検知センサ101bは、第2基材フィルム104bに、第2検知回路106b、第2集積回路108b、第2アンテナ110bが設けられる。このように、第1検知回路106aと第2検知回路106bとは、異なる基材フィルムに設けられる。なお、第1検知センサ101a及び第2検知センサ101bは、第1の開示に係る検知センサ100aと、検知回路の構造を除き同等の機能を有するものとする。
第1検知回路106aの線状の導体パターンと、第2検知回路106bの導体パターンとは、第1の開示と同様に、配線幅、配線膜厚、材質の少なくとも一つが異なるように形成される。例えば、本開示では、第1検知回路106aにおける検出感度が第2検知回路106bに比べて高くなるように構成されているものとする。すなわち、第1検知回路106aの線状の導体パターンが、第2検知回路106bの線状の導体パターンより破断しやすいように、配線幅、配線膜厚、材質の少なくとも一つが異ならせて設けられている。これにより、本開示に係る検知センサ100bは、以下に述べるように、第1検知センサ101a及び第2検知センサ101bを組み合わせて、検出感度の異なる複数の構成を実現している。
図9(A)は、第1の構成に係る検知センサ100b_1を示す。第1の構成に係る検知センサ100b_1は、第1検知センサ101aの第1検知回路106aが設けられた面と、第2検知センサ101bの第2検知回路106bが設けられた面とが対向して配置された構成を有する。第1検知回路106aと第2検知回路106bとは、弾性部材122を介して重ね合わせられる。弾性部材122は、ゴム材として、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴムのいずれも適用可能であるが、例えば、シリコーンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム等を適用することができる。
第1の構成に係る検知センサ100b_1は、第1検知センサ101a及び第2検知センサ101bの一方の面が構造物112に対向して配置される。図9(A)は、第1検知センサ101aの他方の面(第2面)が、貼付け部材114を介して設けられる態様を示す。第1の態様に係る検知センサ100b_1は、第2検知センサ101bと比較して検出感度の高い第1検知センサ101aが構造物112に近接して配置される。そのため、第1の構成に係る検知センサ100b_1は、構造物112の状態変化をより高感度で検出することが可能となる。
一方、第2検知センサ101bは、弾性部材122を介して構造物112に配置されることになる。そのため、第2検知センサ101bは検出感度が低下するものの、構造物112の状態変化において、微小な変化には感応せず、より大きな状態変化を検知することが可能となる。例えば、第1検知センサ101aにより構造物112に生じる小さなひび割れを検知し、第2検知センサ101bにより構造物112に生じる大きなひび割れを検知することが可能となる。
(2)第2の構成
図9(B)は、第2の構成に係る検知センサ100b_2を示す。第2の構成に係る検知センサ100b_2は、第1検知センサ101aが構造物112に近い側に設けられ、第2検知センサ101bが弾性部材122を介して第1検知センサ101aの上に配置される点は、第1の構成と同様である。
第1検知センサ101aは、一方の面(第1面)が構造物112に設置面に対向して配置される。したがって、第1検知回路106aは、構造物112に近接して配置されることとなる。そのため、第1検知センサ106b1は、構造物112の状態の変化を高感度で検出可能となる。第1検知センサ101aは、構造物112の微小なひび割れを検出することが可能となる。
一方、第2検知センサ101bは、第2基材フィルム104bの他方の面(第2面)が構造物112の設置面側に対向して配置される。第2検知回路106bと構造物112との間には、少なくとも貼付け部材114、第1基材フィルム104a、弾性部材122、第2基材フィルム104bが介在する。さらに、本開示の構成においては、第2検知回路106bの線状の導体パターンが、第1検知回路106aよりも検出感度が低くなるように構成されている。そのため、第2検知センサ101bは、第1検知センサ101aよりも検出感度が低くなる。このような構成によれば、第2検知センサ101bは、構造物112の微小なひび割れ等は検出しないものの、大きなひび割れは確実に検出可能となる。このように、検出感度の異なる複数の検知センサを組み合わせることで、構造物の異常を多段階で検出することができる。
(3)第3の構成
図10(A)は、第3の構成に係る検知センサ100b_3を示す。第3の構成に係る検知センサ100b_3は、第1検知センサ101aが構造物112に近い側に設けられ、第2検知センサ101bが弾性部材122を介して第1検知センサ101aの上に配置される。
第1検知センサ101aは、第1基材フィルム104aの他方の面(第2面)が構造物112の設置面と対向して配置される。第1基材フィルム104aと構造物112との間には貼付け部材114が設けられる。第1検知回路106aは第1基材フィルム104a及び貼付け部材114を介して構造物112に付着される。第3の構成に係る検知センサ100b_3は、第1検知センサ101aの第1検知回路106a及び第2検知センサ101bの第2検知回路106bが共に構造物112の設置面と対向しないように配置される。そのため、図9(A)で示す第1の構成及び図9(B)で示す第2の構成と比べて、第3の構成に係る検知センサ100b_3は検出感度が低下するものとなる。
(4)第4の構成
図10(B)は、第4の構成に係る検知センサ100b_4の構成を示す。第4の構成に係る検知センサ100b_4は、第1検知センサ101aが構造物112に近い側に設けられ、第2検知センサ101bが弾性部材122を介して第1検知センサ101aの上に配置される。
第1検知センサ101aは、第1基材フィルム104aの第1検知回路106aが設けられた面が構造物112の設置面に対向して配置される。第1基材フィルム104aと構造物112との間には貼付け部材114が設けられる。また、第2基材フィルム104bの第2検知回路106bが設けられた面は、構造物112の設置面に対向して配置される。第1基材フィルム104aと第2基材フィルム104bとの間には、弾性部材122が設けられる。
第4の構成に係る検知センサ100b_4は、第1の構成に係る検知センサ100b_1と比べて、第1検知センサ101a及び第2検知センサ101bが共に検出感度が高くなるように配置される。これにより、構造物112の変化の状態を高感度で検知することができる。
このように、第2の開示に係る構成によれば、検出感度の異なる検知回路を重ね合わせて配置することにより、検知センサの感度を調節することができる。それにより構造物112の同じ領域に発生する変化の状態を、多段階で検出することができる。
第3の開示:
図11は、本開示に係る検知センサ100cの構成を示す。検知センサ100cは、基材フィルム104の一方の面(第1面)に第1検知回路106aが配置され、他方の面(第2面)に第2検知回路106bが配置される。図11は、検知センサ100cの一方の面(第1面)が、構造物112に対向して配置され、貼付け部材114によって付着されている態様を示す。
第3の開示において、基材フィルム104の一方の面(第1面)に設けられる第1検知回路106a、第1集積回路108a、第1アンテナ110aの構成は、図8(A)に示す第1検知センサ101aと同様である。基材フィルム104の他方の面(第2面)に設けられる第2検知回路106b、第2集積回路108b、第2アンテナ110bの構成は、図8(B)に示す第2検知センサ101bと同様である。
検知センサ100cは、基材フィルム104の一方の面(第1面)が、構造物112の設置面に対向して配置される。第1検知回路106aと構造物112との間には、貼付け部材114が介在するが、第1検知回路106aは、第2検知回路106bに比べて構造物112に近接して配置されることとなる。
第1検知回路106a、第1集積回路108a及び第1アンテナ110aは、基材フィルム104の一方の面(第1面)に配置されるが、これらは貼付け部材114によって覆われることで、外部には露出しない構造となる。一方、基材フィルム104の他方の面(第2面)には、第2検知回路106b、第2集積回路108b、第2アンテナ110bが配置されるが、これらは粘着層118を介して保護フィルム120に覆われる。このような積層構造により、検知センサ100cを構成する各要素は封止される。
図11に示すように、第1検知回路106aと第2検知回路106bとは、基材フィルム104を介して重畳して配置される。このような配置により、構造物112の同じ領域の変化を検出対象とすることが可能となる。
一方、図11に示すように、第1アンテナ110aと第2アンテナ110bは、基材フィルム104を介して重ならない位置に配置される。このような配置により、第1アンテナ110a及び第2アンテナ110bの双方が干渉し、動作不良となることが防止される。
図11に示す構成において、第1検知回路106aと第2検知回路106bとは、それぞれの導体パターンの形態を異ならせることが可能である。また、第1検知回路106aに対して、第2検知回路106bは基材フィルム104の厚みだけ構造物112の設置面からの距離を異ならせて配置することができる。別言すれば、基材フィルム104の厚みを調整することで第2検知回路106bの構造物112からの距離を調整することも可能である。これにより、検知センサ100cは、構造部の状態の変化を多段階に検知することが可能となる。
第4の開示:
図12は、本開示に係る検知センサ100dの構成を示す平面図である。検知センサ100dは、基材フィルム104の一方の面(第1面)に、第1検知回路106a、第2検知回路106b、第1集積回路108a、第2集積回路108b、第1アンテナ110a及び第2アンテナ110bが配置される。
第1検知回路106aと第2検知回路106bは基材フィルム104の外周端に沿って配置される。図12は、第1検知回路106aの導体パターンが、第2検知回路106bの内側に配置される例を示すが、導体パターンの配置はこの例に限定されず、両者の配置が逆転していてもよい。第1検知回路106a及び第2検知回路106bの双方の導体パターンが、基材フィルム104の外周に沿ったリング状のパターンであると、集積回路108への接続において干渉する場合があるが、その場合はジャンパー線等により集積回路108への接続を図ればよい。
第1集積回路108a及び第2集積回路108b、また、これらに接続する第1アンテナ110a及び第2アンテナ110bは、第1検知回路106a及び第2検知回路106bで囲まれる領域の内側に配置される。基材フィルム104には、第1集積回路108a及び第2集積回路108b、また、これらに接続する第1アンテナ110a及び第2アンテナ110bが配置される領域に交差しないように、切り込み部124が設けられる。切り込み部124は、第1検知回路106a及び第2検知回路106bのそれぞれの導体パターンが設けられる領域を除き、基材フィルム104の一端から他端にかけて設けられる。切り込み部124は、基材フィルム104を完全に分断する切り込みではなく、厚みが薄くされている。また、切り込み部124は、ミシン目のように、基材フィルム104の厚みが薄くされた部分又は貫通する切り込みが不連続で設けられていてもよい。さらに、切り込み部124は、基材フィルム104に複数設けられていてもよい。
基材フィルム104は、切り込み部124が設けられた領域の脆性が高まる。したがって、構造物112に検知センサ100dを設けたとき、切り込み部124の領域が優先的に破断する。本開示に係る検知センサ100dは、切り込み部が設けられた領域をセンシング領域102となる。センシング領域102の幅、検出感度は、切り込み部124の配置、及び本数によって調節可能である。また、第1検知回路106aと第2検知回路106bの検出感度の調整は、第1の開示で述べたように、線状の導体パターンの配線幅、配線膜厚、材質を異ならせればよい。
一方、第1集積回路108a及び第2集積回路108b、また、これらに接続する第1アンテナ110a及び第2アンテナ110bが設けられる領域は、破断しないように基材フィルム104の厚みを設定することができるので、検知センサ100dの動作の安定性は確保される。
このように、本開示によれば、基材フィルム104に切り込み部124を設けることで、構造物の変化を多段階で検出する検知センサを実現することができる。なお、切り込み部124の構成は、第1の開示、第2の開示、及び第3の開示に係る検知センサのセンシング領域102にも適用することができる。
第5の開示:
本開示は、検知センサ100と、リーダ・ライタ装置140と、サーバ装置142を含む構造物異常検知システムの一例を示す。
図13は。構造物異常検知システムの一例を示す。一つ又は複数の検知センサ100は、構造物112に敷設される。リーダ・ライタ装置140は、無線通信により非接触で検知センサ100のデータを取得する。リーダ・ライタ装置140は、サーバ装置142に対してデータの送受信が可能とされている。リーダ・ライタ装置140とサーバ装置142がオンラインで接続されている場合には、無線又は有線の電話回線、インターネット回線等によりデータの送受信が行われる。また、リーダ・ライタ装置140とサーバ装置142とがオフラインで接続されている場合には、不揮発性半導体メモリ、磁気メモリ、光ディスク等の記録媒体を介してデータの提供が行われる。
サーバ装置142は、管理者側の端末装置146と接続されていてもよい。サーバ装置142は、検知センサ100が構造物112の異常を検知したとき、リーダ・ライタ装置140を介して、異常が発生したことを示すデータを取得する。サーバ装置142は、取得したデータをデータベース144に逐次記録し、また取得したデータを端末装置146に送信する。なお、図13は、リーダ・ライタ装置140がサーバ装置142と接続される態様を示すが、図示される態様は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、リーダ・ライタ装置140とサーバ装置142との間には、中継局が介在していてもよい。なお、サーバ装置142は、複数のリーダ・ライタ装置140と接続されていてもよい。
検知センサ100は、第1の開示乃至第4の開示で説明されるように、構造物112の変化の状態を多段階で検出可能である。例えば、構造物112のひび割れが小さな場合と、大きく広がった場合とを区別して検知することが可能である。このような機能により、構造物112の経年変化の状態を、目視や打音検査に頼ることなく詳しく知ることが可能となる。
実施例1:
第1の開示に係る検知センサ100aの構成において、基材フィルム104として厚み38μmの2軸延伸ポリエステル基材フィルム表面に上に、10μmの厚みを有するアルミニウム箔で第1検知回路106a及び第2検知回路106bを形成した。第1検知回路106aの線状の導体パターンの配線幅は1mm、第2検知回路106bの線状の導体パターンの配線幅は2mmとした。
第1検知回路106a及び第2検知回路106bの上面には保護フィルム120を設け、構造物112としてコンクリート試験片に基材フィルムを、2液硬化型エポキシ接着剤(厚さ100μm)を塗布して付着させた。
検知センサ100aが付着されたコンクリート試験片を、引張試験機(テンシロン50KN)を用いて引張り破断を行い、ひび割れを検知した引き離し距離を測定した結果、ひび割れ幅が0.7mmの時に配線幅1.0mmの第1検知回路106aが破断検知し、更にひび割れ幅が3.0mmに達したとき配線幅が2.0mmの第2検知回路106bが破断検知した。
実施例2:
第2の開示に係る検知センサ100b_1の構成において、第1検知センサ101a及び第2検知センサ101bを、第1基材フィルム104a、第2基材フィルム104bとして厚み38μmの2軸延伸ポリエステル基材フィルム表面に上に、10μmの厚みを有するアルミニウム箔で第1検知回路106a及び第2検知回路106bを形成した。
第1検知センサ106b1と第2検知センサ106b2とを、1液縮合型シリコーンゴムを介して貼り合わせた。この際それぞれのアンテナ(第1アンテナ110a、第2アンテナ110b)は重ならないよう離れた位置に配置し、第1検知回路106aと第2検知回路106bとが弾性樹脂を介して積層されるようにした。このような検知センサ100b_1の上に保護フィルム120を貼り合わせた後、コンクリート試験片の表面に1液硬化型のエポキシ接着シート(200μm)を介して貼り付けた。
検知センサ100b_1が付着されたコンクリート試験片を、引張試験機(テンシロン50KN)を用いて引張り破断を行い、ひび割れを検知した引き離し距離を測定した結果、ひび割れ幅が0.7mmの時にコンクリート試験片側の検知回路が破断を検知し、更にひび割れ幅が5.0mmに達したときコンクリート試験片から遠い側の検知回路が破断を検知した。
実施例3:
第3の開示に係る検知センサ100cの構成において、基材フィルム104として厚み50μmの2軸延伸ポリエステル基材フィルム表面に上に、10μmの厚みを有するアルミニウム箔で第1検知回路106a及び第2検知回路106bを形成した。この際それぞれのアンテナ(第1アンテナ110a、第2アンテナ110b)は重ならないよう離れた位置に配置した。
第1検知回路106a及び第2検知回路106bの上面には保護フィルム120を設け、構造物112としてコンクリート試験片に基材フィルムを、1液硬化型エポキシ接着剤(厚さ200μm)を塗布して付着させた。
検知センサ100aが付着されたコンクリート試験片を、引張試験機(テンシロン50KN)を用いて引張り破断を行い、ひび割れを検知した引き離し距離を測定した結果、ひび割れ幅が1.0mmの時にコンクリート試験片側の検知回路が破断を検知し、更にひび割れ幅が2.0mmに達したときコンクリート試験片から遠い側の検知回路が破断を検知した。