JP5970687B2 - センサー装置 - Google Patents
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Description
施工直後のコンクリート構造物中のコンクリートは、通常、強アルカリ性を呈する。そのため、施工直後のコンクリート構造物中の鉄筋は、その表面に不動態膜が形成されるため、安定である。しかし、施工後に酸性雨や排気ガス等の影響を受けたコンクリート構造物は、コンクリートが徐々に酸性化(中性化)していくため、鉄筋が腐食することとなる。また、コンクリート構造物は、コンクリートへ侵入した塩化物イオンによっても鉄筋が腐食する。
しかし、かかる装置では、鉄筋の腐食の原因がコンクリート中へ侵入した塩化物イオンによるものなのか、コンクリートの中性化によるものなのかを特定することができず、その結果、コンクリート構造物の適切な保全を行うことができないという問題があった。
本発明のセンサー装置は、局所的に形成された凹部または貫通孔を備え、第1の金属材料で構成された第1の電極と、
前記第1の電極に対して離間して設けられ、第2の金属材料で構成された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との電位差を測定する機能を有する機能素子とを有し、
前記機能素子で測定された電位差に基づいて、測定対象部位の状態を測定し得るように構成されたことを特徴とする。
このように構成されたセンサー装置によれば、第1の電極に局所的に凹部または貫通孔が形成されているので、測定対象部位の塩化物イオン濃度が第2の電極の腐食が生じない比較的低い状態であっても、第1の電極を孔食により腐食させることができる。
そのため、測定対象部位の塩化物イオン濃度が比較的低い状態であっても、第1の電極と第2の電極との電位差が生じ、かかる電位差に基づいて塩化物イオンの侵入を検知することができる。
D/Wが1以上であることが好ましい。
これにより、第1の電極の孔食を効果的に生じさせることができる。
本発明のセンサー装置では、前記第1の電極は、前記凹部または前記貫通孔に引っ張り応力を生じさせた状態で保持されていることが好ましい。
これにより、第1の電極の孔食による腐蝕速度を高めることができる。
前記第2の電極は、前記第1の凹部とは深さおよび幅のうちの少なくとも一方が異なり、局所的に形成された第2の凹部を備えることが好ましい。
これにより、測定対象部位の塩化物イオン濃度を段階的に検知することができる。
これにより、測定対象部位のpHが所定値以上である場合に、第1の電極および第2の電極の表面に不動態膜が形成される。
このようなことから、第1の電極と第2の電極との電位差に基づいて、測定対象部位に塩化物イオンが侵入したことを高感度に検知することができる。
これにより、第1の電極および第2の電極の表面にそれぞれ不動態膜が形成された状態において、第1の電極と第2の電極との電位差が測定対象部位の塩化物イオン濃度に応じたものとなる。そのため、第1の電極と第2の電極との電位差に基づいて、測定対象部位に塩化物イオンが侵入したことをより高感度に検知することができる。
これにより、第1の電極の不動態膜が形成または消失するタイミングと、第2の電極の不動態膜が形成または消失するタイミングとを異ならせることができる。そのため、第1の電極と第2の電極との電位差に基づいて、測定対象部位のpHが設定値以下か否かを検知することができる。
鉄または鉄系合金(鉄系材料)は比較的安価で入手が容易である。また、例えば、センサー装置をコンクリート構造物の状態測定に用いた場合、第1の電極および第2の電極の少なくとも一方の電極をコンクリート構造物中の鉄筋と同一材料(または近似した材料)で構成することが可能であり、コンクリート構造物中の鉄筋の腐食状態を効果的に検知することができる。
これにより、測定対象物のpH変化あるいは塩化物イオン濃度変化に伴う状態変化を検知することができる。
前記アンテナに給電する機能を有する通信用回路とを有し、
前記機能素子は、前記通信用回路を駆動制御する機能をさらに有することが好ましい。
これにより、無線により測定対象物の外部へ測定結果を送信することができる。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るセンサー装置の使用状態の一例を示す図、図2は、図1に示すセンサー装置の概略構成を示すブロック図、図3は、図2に示す第1の電極、第2の電極および機能素子を説明するための平面図、図4は、図2に示す第1の電極および第2の電極を説明するための断面図(図3中のA−A線断面図)、図5は、図2に示す機能素子を説明するための断面図(図3中のB−B線断面図)、図6は、図2に示す第1の電極の塩化物イオンによる腐食を説明する模式図、図7および図8は、それぞれ、図2に示す機能素子に備えられた差動増幅回路を示す回路図、図9は、図1に示すセンサー装置の作用の一例を説明するための図である。
図1に示すセンサー装置1は、コンクリート構造物100の品質を測定するものである。
コンクリート構造物100は、コンクリート101内に複数の鉄筋102が埋設されている。そして、センサー装置1は、コンクリート構造物100のコンクリート101内の鉄筋102付近に埋設されている。なお、センサー装置1は、コンクリート構造物100を打設する際に、コンクリート101の打設前に鉄筋に固定して埋め込んでもよいし、打設後に硬化したコンクリート101に穿孔して埋め込んでもよい。
このセンサー装置1は、本体2と、その本体2上に設けられた第1の電極3、第2の電極4および第3の電極7とを有する。
また、センサー装置1は、図2に示すように、第1の電極3、第2の電極4および第3の電極7に電気的に接続された機能素子51と、電源52と、温度センサー53と、通信用回路54と、アンテナ55と、発振器56とを有し、これらが本体2内に収納されている。
(本体)
本体2は、第1の電極3、第2の電極4、第3の電極7および機能素子51等を支持する機能を有する。
このような本体2は、図4および図5に示すように、第1の電極3、第2の電極4、第3の電極7および機能素子51を支持する基板21を有する。なお、基板21は、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56をも支持するが、図3〜5では、説明の便宜上、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56の図示を省略している。
図4に示すように、この基板21上には、例えばソルダーレジストのような絶縁性の樹脂組成物で構成された絶縁層23が設けられている。そして、この絶縁層23を介して基板21上には、第1の電極3、第2の電極4、第3の電極7および機能素子51が実装されている。
この導体部61は、第1の電極3と、導体部516a、516dおよびトランジスタ514aのゲート電極とを電気的に接続している。また、導体部62は、第2の電極4と、導体部516b、516eおよびトランジスタ514bのゲート電極とを電気的に接続している。第1の電極3と第2の電極4は、各々、トランジスタ514a、514bのゲート電極と接続しているためフローテイング状態にある。515aと515bは、集積回路の層間絶縁膜であり、25は、集積回路の保護膜である。
特に、本体2は、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56を液密的に収納するように構成されている。
具体的には、図4および図5に示すように、本体2は、封止部24を有する。この封止部24は、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56を封止する機能を有する。これにより、センサー装置1を水分やコンクリートの存在下に設置した場合に、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56の劣化を防止することができる。
なお、封止部24は、必要に応じて設ければよく、省略することもできる。
第1の電極3および第2の電極4は、図4に示すように、それぞれ、前述した本体2の外表面上(より具体的には基板21上)に設けられている。特に、第1の電極3および第2の電極4は、同一平面上に設けられている。そのため、第1の電極3および第2の電極4の設置環境の差が生じるのを防止することができる。
本実施形態では、第1の電極3および第2の電極4は、それぞれ、板状またはシート状をなしている。また、第1の電極3および第2の電極4の平面視形状は、それぞれ、四角形をなしている。また、第1の電極3および第2の電極4は、平面視にて、互いの形状および面積が等しくなっている。なお、第1の電極3および第2の電極4の平面視での形状および面積は、互いに異なっていてもよい。
このような凹部31を備える第1の電極3では、測定対象部位の塩化物イオン濃度が第2の電極4の腐食が生じない比較的低い状態であっても、第1の電極3を孔食により腐食させることができる。
本実施形態では、凹部31は、平面視にて帯状をなしている。すなわち、凹部31は、一方向に延在する溝である。
また、凹部31の幅(本実施形態では平面視にて延在方向に対して垂直な方向での長さ)をWとし、凹部31の深さ(最大深さ)をDとしたきに、D/Wは、1以上であるのが好ましく、1以上4以下であるのがより好ましく、2以上3以下であるのがさらに好ましい。これにより、第1の電極3の孔食を効果的に生じさせることができる。
この凹部31は、例えば、第1の電極3をエッチング(ドライエッチングまたはウエットエッチング)することにより形成することができる。このようにして凹部31を形成することにより、後述するような第1の電極3の塩化物イオンによる腐食(孔食)を促進し得る凹部31を簡単かつ確実に形成することができる。なお、凹部31の形成方法としては、これに限定されるものではなく、例えば、レーザー、機械加工等を用いることもできる。
また、凹部31の幅Wは、特に限定されないが、例えば、1μm以上100μm以下程度であるのが好ましい。
また、凹部31の数は、本実施形態では1つであるが、第1の電極3の孔食を促進することができれば、2つ以上であってもよい。
また、第1の電極3は、その少なくとも表面付近が緻密体で構成されているのが好ましい。これにより、第1の電極3は、塩化物イオンの存在下において、最も腐食が生じやすい部分が最初に腐食し、その最初に腐食を生じた部位の腐食し易さが他の部分に比してさらに大きくなるため、局所的な腐食(孔食)が生じる。
また、上述したように第2の電極4を多孔質体を用いて構成した場合、その多孔質体の空孔の平均径は、前述したような塩化物イオンによる孔食を防止し得る範囲であれば、特に限定されないが、例えば、2nm以上50nm以下であるのが好ましい。すなわち、かかる空孔は、メソ孔であるのが好ましい。また、かかる多孔質体の空孔率は、前述したように塩化物イオンによる孔食を防止し得る範囲であれば、特に限定されないが、例えば、10%以上90%以下であるのが好ましい。
ここで、第1の電極3および第2の電極4の構成材料について説明する。
第1の金属材料としては、不動態膜が形成される限り、特に限定されないが、例えば、Fe、Ni、Mg、Znまたはこれらを含む合金等が挙げられる。
中でも、第1の金属材料は、FeまたはFeを含む合金(Fe系合金)、すなわち鉄系材料(具体的には、炭素鋼、合金鋼、SUS等)であるのが好ましい。鉄系材料は安価で入手が容易である。また、本実施形態のように、センサー装置1をコンクリート構造物100の状態測定に用いた場合、第1の金属材料をコンクリート構造物100の鉄筋102と同一または近似の材料とすることが可能であり、鉄筋102の腐食環境状態を効果的に検知することができる。例えば、第1の電極3がFeで構成されている場合、pHが9以上か否かの判断ができる。
この第2の金属材料としては、第2の電極4が電極として機能し得るものであれば、特に限定されず、各種金属材料を用いることができる。
また、第2の金属材料は、前述した第1の金属材料と同種の材料(同一または近似した材料)で構成されていてもよいし、前述した第1の金属材料と異なる材料で構成されていてもよい。
また、第2の金属材料は、不動態膜を形成するものであってもよいし、不動態膜を形成しないものであってもよい。
すなわち、第1の電極3および第2の電極4の表面にそれぞれ不動態膜が形成された状態において、第1の電極3と第2の電極4との電位差が測定対象部位の塩化物イオン濃度に応じたものとなる。そのため、第1の電極3と第2の電極4との電位差に基づいて、測定対象部位に塩化物イオンが侵入したことをより高感度に検知することができる。
また、第2の金属材料が不動態膜(第2の不動態膜)を形成するものである場合、第2の金属材料として、上述の第1の金属材料として例示した金属を挙げることができる。
この場合、第1の金属材料は、3以上5以下のpH、または、8以上10以下のpHよりも大きいpHとなったときに不動態膜を形成するものであるのが好ましい。3以上5以下のpH以下か否かを検知することにより、第1の電極3および第2の電極4の設置環境が酸性状態になってしまったことを知ることができる。また、8以上10以下のpH以下か否かを検知することにより、第1の電極3および第2の電極4の設置環境が中性状態に近付いていることを事前に知ることができる。
このような第1の電極3および第2の電極4の形成方法としては、それぞれ、特に限定されず、公知の成膜法を用いることができる。
このようなことから、第1の電極3と第2の電極4との電位差に基づいて、測定対象部位に塩化物イオンが侵入したことを高感度に検知することができる。
第1の電極3が塩化物イオン(Cl−)の存在下にあるとき、凹部31内に侵入した塩化物イオンにより、第1の電極3の表面に形成された不動態膜の局所的な破壊が一旦生じると、第1の電極3を構成する第1の金属材料が金属イオン(Mnn+)として凹部31内に溶出する。
Fe→Fe2++2e
の反応により、凹部31内に金属イオンとしてFe2+が溶出する。
このように凹部31内に溶出した金属イオンは、拡散速度が遅く、凹部31内に滞留する。これにより、凹部31内での金属イオンの濃度が増加する。
そのため、凹部31外における塩化物イオンの濃度に比し、凹部31内における塩化物イオンの濃度が高くなる。
また、凹部31内では、金属イオンと塩化物イオンと水との反応により、水素イオンが発生し、凹部31内の水素イオン濃度が増加、すなわち凹部31内のpHが低下する。
Fe2++2Cl−→FeCl2
FeCl2+2H2O→Fe(OH)2+HCl
の反応により、凹部31内の水素イオンの濃度が増加する。
そのため、凹部31外における水素イオンの濃度に比し、凹部31内における水素イオンの濃度が高くなる。
以上のようなことから、凹部31外における塩化物イオンおよび水素イオンの濃度が比較的少なくても、凹部31内の塩化物イオン濃度および水素イオン濃度が高まり、第1の電極3の腐食(孔食)が進行することとなる。
例えば、第1の金属材料が純鉄(Fe)である場合、
第1の電極3のアノード領域では、Fe→Fe2++2eのアノード反応が生じ、
第1の電極3のカソード領域では、1/2O2+H2O+2e→2OH−のカソード反応が生じる。
第3の電極(比較用電極)7は、図4に示すように、前述した本体2の外表面上(より具体的には基板21上)に設けられている。また、第3の電極7は、前述した第1の電極3および第2の電極4と同一平面上に設けられている。なお、第3の電極7を省略してもよく、この場合でも、第1の電極3と第2の電極4との間の電位差を測定することができる。
このような第3の電極7の電位を基準として、第1の電極3および第2の電極4の電位を検知することができる。そして、その2つの電位とともに、第1の電極3と第2の電極4との電位差の経時変化を把握することができる。これにより、塩化物イオン濃度とpHの経時変化をより高確度に測定することができる。
このような第3の電極7は、化学的に安定で、かつ、導電性を有する材料で構成されている。かかる材料としては、特に限定されないが、例えば、SUS、または、Pt、Au、Ag等の金属材料(貴金属)を用いることができる。これにより、安定した基準電位を取得することができる。また、簡単かつ確実に、第3の電極7を形成することができる。また、貴金属は化学的に安定であり、イオンに対する感応性が極めて低いとともに優れた導電性を有する。そのため、貴金属は第3の電極7の構成材料として適している。
このような第3の電極7は、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等により形成することができる。
機能素子51は、前述した本体2の内部に埋設されている。
この機能素子51は、第1の電極3と第2の電極4との電位差を測定する機能を有する。これにより、第2の電極4の電位に対する第1の電極3の電位の変化を検知することができる。そのため、第1の電極3と第2の電極4との電位差に基づいて、pHをより高精度に測定することができる。
このような機能素子51は、例えば、集積回路である。より具体的には、機能素子51は、例えば、MCU(マイクロコントロールユニット)であり、図2に示すように、CPU511と、A/D変換回路512と、差動増幅回路514とを有する。
複数のトランジスタ514a、514b、514cは、それぞれ例えば電界効果トランジスタ(FET)であり、差動増幅回路514の一部を構成するものである。
また、差動増幅回路514は、図8に示すように、演算増幅器201、202と、演算増幅器203とを有する。
演算増幅器201は、第3の電極7を基準として第1の電極3の電位を検出する。また、演算増幅器202は、第3の電極7を基準として第2の電極4の電位を検出する。また、演算増幅器203は、演算増幅器201の出力電位と演算増幅器202の出力電位との差を検出する。
また、機能素子51は、導体部63を介して第3の電極7に電気的に接続されている。
また、機能素子51は、電源52からの通電により作動する。電源52は、機能素子51を動作可能な電力を供給できるものであれば、特に限定されず、例えば、ボタン型電池のような電池であってもよいし、圧電素子のような発電機能を有する素子を用いた電源ものであってもよい。
温度センサー53は、測定対象物であるコンクリート構造物100の測定部位の温度を検知する機能を有する。このような温度センサー53としては、特に限定されず、例えば、サーミスター、熱電対等の公知の様々な種類の温度センサーを用いることができる。
この通信用回路54は、例えば、電磁波を送信するための送信回路、信号を変調する機能を有する変調回路等を有する。なお、通信用回路54は、信号の周波数を小さく変換する機能を有するダウンコンバータ回路、信号の周波数を大きく変換する機能を有するアップコンバータ回路、信号を増幅する機能を有する増幅回路、電磁波を受信するための受信回路、信号を復調する機能を有する復調回路等を有していてもよい。
また、機能素子51は、発振器56からのクロック信号を取得し得るように構成されている。これにより、各回路の同期をとったり、各種情報に時刻情報を付加したりすることができる。
以上説明したように構成されたセンサー装置1を用いた測定方法は、センサー装置1を測定対象物であるコンクリート構造物100内にそれぞれ埋設し、第1の電極3と第2の電極4との電位差に基づいて、コンクリート構造物100の状態を測定する。
打設直後のコンクリート構造物100において、通常、適切に打設されていれば、コンクリート101は強アルカリ性を呈する。そのため、このとき、測定対象部位に塩化物イオンが侵入していなければ、第1の電極3および第2の電極4は、それぞれ、安定な不動態膜を形成する。すなわち、図9(a)に示すように、第1の電極3は、その表面に不動態膜33が形成され、第2の電極4は、その表面に不動態膜43が形成される。これにより、第1の電極3および第2の電極4の自然電位がそれぞれ上がっている(貴化している)。そのため、コンクリートの打設直後における第1の電極3と第2の電極4との電位差は小さくなる。
また、コンクリート構造物100は、二酸化炭素、酸性雨、排気ガス等の影響により、コンクリート101のpHが徐々に酸性側に変化(中性化)していく。
以上説明したように第1実施形態のセンサー装置1によれば、第1の電極3に局所的に凹部31が形成されているので、測定対象部位の塩化物イオン濃度が第2の電極4の塩化物イオンによる腐食が生じない比較的低い状態であっても、第1の電極3を孔食により腐食させることができる。そのため、測定対象部位の塩化物イオン濃度が比較的低い状態であっても、第1の電極3と第2の電極4との電位差が生じ、かかる電位差に基づいて塩化物イオンの侵入を検知することができる。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図10は、本発明の第2実施形態に係るセンサー装置の使用状態の一例を示す図である。
以下、第2実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態のセンサー装置1Aは、本体2Aと、その本体2Aの表面に露出した複数の第1の電極3a、3b、3cおよび複数の第2の電極4a、4b、4cとを有する。なお、図示しないが、センサー装置1Aは、前述した第1実施形態の第3の電極7と同様に、第1の電極3a、3b、3cおよび複数の第2の電極4a、4b、4cと対応して設けられた第3の電極を有する。
また、複数の第1の電極3a、3b、3cは、コンクリート構造物100の外表面からの距離が互いに異なる。具体的には、コンクリート構造物100の外表面側から内側へ、複数の第1の電極3a、3b、3cがこの順に並んで設けられている。
さらに、第1の電極3aおよび第2の電極4aは、コンクリート構造物100の外表面からの距離が互いに等しくなるように設置されている。また、第1の電極3bおよび第2の電極4bは、コンクリート構造物100の外表面からの距離が互いに等しくなるように設置されている。第1の電極3cおよび第2の電極4cは、コンクリート構造物100の外表面からの距離が互いに等しくなるように設置されている。
本実施形態では、センサー装置1Aは、第1の電極3aと第2の電極4aとの電位差、第1の電極3bと第2の電極4bとの電位差、および、第1の電極3cと第2の電極4cとの電位差をそれぞれ図示しない機能素子により測定することができるように構成されている。
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
図11は、本発明の第3実施形態に係るセンサー装置の使用状態の一例を示す図、図12は、図11に示す第1の電極および第2の電極を説明するための断面図である。
以下、第3実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態のセンサー装置1Bは、図11に示すように、本体2Bと、その本体2B上に設けられた第1の電極3Bおよび第2の電極4Bとを有する。
また、図示しないが、センサー装置1Bは、前述した第1実施形態の第3の電極7と同様に構成された第3の電極を有する。
第1の電極3Bおよび第2の電極4Bは、図12に示すように、それぞれ、前述した本体2Bの外表面上に設けられている。
また、第2の電極4Bは、局所的に形成された第2の凹部41Bを備えている。
そして、第1の凹部31Bおよび第2の凹部41Bは、互いに深さが異なる。これにより、第1の電極3Bおよび第2の電極4Bの塩化物イオンによる孔食の発生しやすさを互いに異ならせることができる。そのため、測定対象部位の塩化物イオン濃度を段階的に検知することができる。
また、第1の凹部31Bの幅(平面視にて延在方向に対して垂直な方向での長さ)をW1とし、第1の凹部31Bの深さ(最大深さ)をD1としたきに、D1/W1は、1以上であるのが好ましく、1以上4以下であるのがより好ましく、2以上3以下であるのがさらに好ましい。これにより、第1の電極3Bの孔食を効果的に生じさせることができる。
また、この第1の凹部31Bの深さ(最大深さ)D1は、特に限定されないが、例えば、1μm以上100μm以下であるのが好ましく、10μm以上80μm以下であるのがより好ましく、20μm以上60μm以下であるのがさらに好ましい。これにより、第1の電極3Bの孔食を生じさせ得る第1の凹部31を簡単かつ確実に形成することができる。
また、第2の凹部41Bの幅(平面視にて延在方向に対して垂直な方向での長さ)をW2とし、第2の凹部41Bの深さ(最大深さ)をD2としたきに、D2/W2は、1以下であるのが好ましく、0.5以上1以下であるのがより好ましい。これにより、第1の電極3Bの孔食よりも発生タイミングが遅いものの、第2の電極4Bの孔食を生じさせることができる。
また、この第2の凹部41Bの深さ(最大深さ)D2は、特に限定されないが、例えば、1μm以上50μm以下であるのが好ましく、1μm以上30μm以下であるのがより好ましい。
以上説明したような第3実施形態のセンサー装置1Bによっても、コンクリート構造物100のコンクリート101中の塩化物イオン濃度変化をコンクリート101のpH変化と区別して測定し、その測定情報をコンクリート構造物100の計画的な保全に活用することができる。
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
図13は、本発明の第4実施形態に係るセンサー装置の概略構成を示す図、図14は、図13に示す第1の電極を説明するための図である。
以下、第4実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態のセンサー装置1Cは、図13に示すように、本体2Cと、その本体2C上に設けられた第1の電極3Cおよび第2の電極4Cとを有する。
第1の電極3Cは、その途中に局所的に形成された切欠き状の凹部31Cを有する。
特に、第1の電極3Cは、凹部31Cに引っ張り応力を生じさせた状態で保持されている。これにより、第1の電極3Cの孔食による腐蝕速度を高めることができる。
より具体的に説明すると、第1の電極3Cは、2つの導体34a、34bと、この2つの導体34a、34bを接合する接合部34cとを有する。
接合部34cは、柱体35a、35bを弾性変形させつつ導体34a、34bに引っ張り応力を生じさせた状態で、導体34aと導体34bとを接合している。
以上説明したような第4実施形態のセンサー装置1Cによっても、コンクリート構造物100のコンクリート101中の塩化物イオン濃度変化をコンクリート101のpH変化と区別して測定し、その測定情報をコンクリート構造物100の計画的な保全に活用することができる。
次に、本発明の第5実施形態を説明する。
図15は、本発明の第5実施形態に係るセンサー装置の概略構成を示す図、図16は、図15に示す第1の電極を説明するための図である。
以下、第5実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態のセンサー装置1Dは、図15に示すように、本体2Dと、その本体2D上に設けられた第1の電極3Dおよび第2の電極4Dとを有する。
絶縁体36aは、四角柱状をなしている。すなわち、絶縁体36aの横断面は、四角形をなしている。これにより、絶縁体36aに巻回された導体36dは、絶縁体36aの角部に対応する部分に生じる引っ張り応力を大きくすることができる。
この導体36b、36cの構成材料としては、導電性を有するものであれば、特に限定されないが、導体36dの構成材料と同様のものを用いるのが好ましい。
導体36dは、長尺状をなし、絶縁体36aの外周に巻回されており、一端部が導体36bに半田等により固定され、他端部が導体36cに半田等により固定されている。これにより、導体36dにその長手方向に沿って引っ張り応力を生じさせることができる。
以上説明したような第5実施形態のセンサー装置1Dによっても、コンクリート構造物100のコンクリート101中の塩化物イオン濃度変化をコンクリート101のpH変化と区別して測定し、その測定情報をコンクリート構造物100の計画的な保全に活用することができる。
次に、本発明の第6実施形態を説明する。
図17は、本発明の第6実施形態に係るセンサー装置の概略構成を示す図、図18は、図17に示す第1の電極を説明するための図である。
以下、第6実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態のセンサー装置1Eは、図17に示すように、本体2Eと、その本体2E上に設けられた第1の電極3Cおよび第2の電極4Cとを有する。
第1の電極3Eは、その途中に局所的に形成された切欠き状の凹部31Eを有する。
特に、第1の電極3Eは、凹部31Eに引っ張り応力を生じさせた状態で保持されている。これにより、第1の電極3Eの孔食による腐蝕速度を高めることができる。
保持部材37は、本体2Eに固定されている。また保持部材37には、第1の電極3Eが挿通される2つの貫通孔38a、38bが形成されている。これにより、第1の電極3Eを折り曲げた状態で保持することができる。
このような保持部材37の構成材料としては、測定対象物内で比較的安定して存在し得る絶縁性材料であれば、特に限定されないが、例えば、SiO2、Si3N4等の絶縁性セラミックス材料、PSF(ポリサルフォン)、PAI(プリアミドイミド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の樹脂材料等を用いることができる。
以上、本発明のセンサー装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、前述した実施形態では、孔食を促進させるために第1の電極に凹部を設けた例を説明したが、かかる凹部は、第1の電極を貫通していてもよい。すなわち、孔食を促進させるために第1の電極に貫通孔を形成してもよい。
また、前述した実施形態では第1の電極および第2の電極がそれぞれ基板上に設けられた場合を例に説明したが、これに限定されず、例えば、第1の電極および第2の電極は、例えば、センサー装置の本体の封止樹脂で構成された部分の外表面上に設けてもよい。
また、前述した実施形態では測定情報をアクティブタグ通信により無線送信によりセンサー装置外部へ送信する場合を例に説明したが、これに限定されず、例えば、パッシブタグ通信を用いて情報をセンサー装置の外部へ送信してもよいし、有線により情報をセンサー装置の外部へ送信してもよい。
Claims (16)
- 局所的に形成された凹部または貫通孔を備え、第1の金属材料で構成された第1の電極と、
前記第1の電極に対して離間して設けられ、第2の金属材料で構成された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との電位差を測定する機能を有する機能素子とを有し、
前記第2の電極の表面は多孔質で構成され、
前記機能素子で測定された電位差に基づいて、測定対象部位の状態を測定し得るように構成されたことを特徴とするセンサー装置。 - 前記凹部または前記貫通孔の幅をWとし、前記凹部または前記貫通孔の深さをDとしたときに、
D/Wが1以上である請求項1に記載のセンサー装置。 - 前記第1の電極は、前記凹部または前記貫通孔に引っ張り応力を生じさせた状態で保持されている請求項1または2に記載のセンサー装置。
- 前記第1の電極は、第1の導体と第2の導体とが接合されることで形成され、
前記第1の導体は第1の固定部に固定され、
前記第2の導体は第2の固定部に固定され、
前記第1の固定部は前記第2の固定部の方向に撓み、前記第2の固定部は前記第1の固定部の方向に撓み、
前記第1の電極は前記固定部に固定された状態で、前記凹部または前記貫通孔に引っ張り応力を生じさせた状態で保持されている請求項3に記載のセンサー装置。 - 前記第1の電極は長尺状をなすとともに、角柱状の絶縁体に券回され、
前記第1の電極の一方の端部は前記絶縁体に固定され、前記第1の電極の他方の端部は前記絶縁体に固定され、
前記凹部は、前記第1の電極が前記角柱状の絶縁体の角部と接触する位置に形成されている請求項3に記載のセンサー装置。 - 前記第1の電極は長尺状をなすとともに、折り曲げられた状態で保持部材に保持され、
前記凹部は、前記第1の電極のお折り曲げられた部分に形成されている請求項3に記載のセンサー装置。 - 前記第1の電極は、前記凹部として、局所的に形成された第1の凹部を備え、
前記第2の電極は、前記第1の凹部とは深さおよび幅のうちの少なくとも一方が異なり、局所的に形成された第2の凹部を備える請求項1ないし3のいずれかに記載のセンサー装置。 - 前記第1の金属材料および前記第2の金属材料は、それぞれ、測定部位の環境変化に伴って表面に不動態膜を形成するか、または、表面に存在した不動態膜を消失させる金属材料である請求項1ないし4のいずれかに記載のセンサー装置。
- 前記第1の金属材料および前記第2の金属材料は、同種の金属材料で構成される請求項8に記載のセンサー装置。
- 前記第1の金属材料および前記第2の金属材料は、異なる金属材料で構成される請求項8に記載のセンサー装置。
- 前記第1の金属材料および前記第2の金属材料は、それぞれ、鉄または鉄系材料である請求項8ないし10のいずれかに記載のセンサー装置。
- 貴金属で形成された第3の電極を備える請求項1ないし11のいずれかに記載のセンサー装置。
- 前記第1の電極および前記第2の電極は、同一平面上に形成されている請求項1ないし12のいずれかに記載のセンサー装置。
- 互いに離間して設けられた複数の前記第1の電極と、複数の前記第1の電極と離間し、かつ互いに離間して設けられた複数の前記第2の電極と、を備え、
複数の前記第1の電極の配置方向と複数の前記第2の電極の配置方向とが互いに平行となるように配置されている請求項1ないし13のいずれかに記載のセンサー装置。 - 前記機能素子は、前記第1の電極と前記第2の電極との電位差に基づいて、前記測定対象部位のpHまたは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを検知する機能をも有する請求項1ないし14のいずれかに記載のセンサー装置。
- アンテナと、
前記アンテナに給電する機能を有する通信用回路とを有し、
前記機能素子は、前記通信用回路を駆動制御する機能をさらに有する請求項1ないし15のいずれかに記載のセンサー装置。
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