JP5906650B2 - センサー装置およびセンサー素子 - Google Patents
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Description
施工直後のコンクリート構造物中のコンクリートは、通常、強アルカリ性を呈する。そのため、施工直後のコンクリート構造物中の鉄筋は、その表面に不動態膜が形成されるため、安定である。しかし、施工後に酸性雨や排気ガス等の影響を受けたコンクリート構造物は、コンクリートが徐々に酸性化していくため、鉄筋が腐食することとなる。
そこで、例えば、特許文献1に係るセンサー装置では、コンクリート構造物中の鉄筋と同種材料からなる細線をコンクリート構造物中に埋設し、腐食による細線の断線の有無を検知することにより、コンクリート中の鉄筋の腐食状況を予測する。
本発明のセンサー装置は、金属材料で構成された電気抵抗体と、
前記電気抵抗体の表面の一部との間に隙間を形成して設けられた隙間形成体と、
前記隙間に充填され、測定対象物内の環境下で溶解または分解することにより消失する隙間充填体と、
前記電気抵抗体の抵抗値を測定する機能を有する機能素子とを有し、
前記機能素子で測定された抵抗値に基づいて、前記測定対象物の測定対象部位の状態を測定し得るように構成されたことを特徴とする。
これにより、隙間充填体を簡単かつ高精度に形成することができる。
本発明のセンサー装置では、前記隙間形成体は、前記隙間充填体上に成膜することにより形成されたものであることが好ましい。
これにより、隙間充填体の厚さに応じて電気抵抗体と隙間形成体との間の隙間を高精度に規定することができる。
これにより、測定対象物が例えばコンクリート構造物である場合、コンクリート構造物中のコンクリートが強アルカリ性を呈するので、コンクリート構造物中で隙間充填体を溶解させることができる。
これにより、電気抵抗体の隙間腐食を生じさせ得る隙間を電気抵抗体と隙間形成体との間に簡単かつ確実に形成することができる。
本発明のセンサー装置では、前記電気抵抗体は、長尺状をなし、
前記隙間形成体は、前記電気抵抗体の長手方向での一部の表面との間に前記隙間を形成していることが好ましい。
これにより、電気抵抗体の隙間腐食を生じさせ得る隙間を電気抵抗体と隙間形成体との間に簡単かつ確実に形成することができる。
本発明のセンサー装置では、前記電気抵抗体は、前記隙間形成体に覆われていない部分の表面積が前記隙間を介して前記隙間形成体に覆われている部分の表面積よりも大きいことが好ましい。
これにより、電気抵抗体の隙間腐食を促進することができる。
これにより、隙間形成体が電気抵抗体の一部として機能してしまうのを防止することができる。そのため、電気抵抗体および隙間形成体の設計が容易となる。
本発明のセンサー装置では、前記隙間形成体は、前記電気抵抗体を構成する金属材料と同種の金属材料で構成されていることが好ましい。
これにより、隙間形成体と電気抵抗体とが接触しても、その接触による電気抵抗体の腐食を防止することができる。
これにより、測定対象部位がコンクリートである場合であっても、隙間形成体の耐久性を優れたものとすることができる。そのため、コンクリートの状態を長期に亘り安定して測定することができる。
本発明のセンサー装置では、前記隙間における前記隙間形成体と前記電気抵抗体との間の距離は、1μm以上100μm以下であることが好ましい。
これにより、電気抵抗体の隙間腐食を生じさせることができる。
これにより、測定対象部位のpHが所定値以上である場合に、電気抵抗体の表面に不動態膜が形成される。
このようなことから、電気抵抗体の抵抗値に基づいて、測定対象部位に塩化物イオンが侵入したことを高精度に検知することができる。
これらの金属は比較的安価で入手が容易である。また、例えば、センサー装置をコンクリート構造物の状態測定に用いた場合、電気抵抗体をコンクリート構造物中の鉄筋と同一材料(または近似した材料)で構成することが可能であり、コンクリート構造物中の鉄筋の腐食状態を効果的に検知することができる。
前記機能素子は、前記多孔質電気抵抗体の抵抗値を測定する機能をも有することが好ましい。
これにより、多孔質電気抵抗体および電気抵抗体が同一環境に設置されていても、多孔質電気抵抗体の塩化物イオンによる局所腐食の開始(すなわち電気抵抗増大の)タイミングを、電気抵抗体の塩化物イオンによる局所腐食の開始タイミングよりも遅らせることができる。
このようなことから、測定対象部位の塩化物イオン濃度変化を測定対象部位のpH変化と区別して測定することができる。
このようなことから、多孔質電気抵抗体の塩化物イオンによる腐食の速度を遅くすることができる。そのため、測定対象部位の塩化物イオン濃度の測定を長期にわたり行うことができる。
前記機能素子は、前記緻密質電気抵抗体の抵抗値を測定する機能をも有することが好ましい。
これにより、緻密質電気抵抗体および電気抵抗体が同一環境に設置されていても、緻密質電気抵抗体の塩化物イオンによる局所腐食の開始タイミングを、電気抵抗体の塩化物イオンによる局所腐食の開始タイミングよりも遅らせることができる。
このようなことから、測定対象部位の塩化物イオン濃度変化を測定対象部位のpH変化と区別して測定することができる。
このようなことから、電気抵抗体の隙間腐食の速度よりも遅いものの、多孔質電気抵抗体に比べて緻密質電気抵抗体の塩化物イオンによる局所腐食の速度を速くすることができる。そのため、測定対象部位の塩化物イオン濃度の測定を中期にわたり行うことができる。
これにより、測定対象物のpH変化あるいは塩化物イオン濃度変化に伴う状態変化を検知することができる。
本発明のセンサー装置では、アンテナと、前記アンテナに給電する機能を有する通信用回路とを有し、
前記機能素子は、前記通信用回路を駆動制御する機能をも有することが好ましい。
これにより、無線により測定対象物の外部へ測定結果を送信することができる。
前記電気抵抗体の表面の一部との間に隙間を形成して設けられた隙間形成体と、
前記隙間に充填され、測定対象物内の環境下で溶解または分解することにより消失する隙間充填体とを有し、
前記電気抵抗体の抵抗値に基づいて、前記測定対象物の測定対象部位の状態を測定し得るように構成されたことを特徴とする。
これにより、コンクリートの品質劣化を防止しつつ、測定対象物の状態を測定し、その測定結果に基づく情報を鉄筋の腐食前の計画的または予防的な保全に活用することができるセンサー素子を提供できる。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るセンサー装置の使用状態の一例を示す図、図2は、図1に示すセンサー装置の概略構成を示すブロック図、図3は、図2に示す電気抵抗体および機能素子を説明するための平面図、図4は、図2に示す電気抵抗体、隙間形成体および隙間充填体を説明するための断面図(図3中のA−A線断面図)、図5は、図4に示す隙間充填体の消失後の電気抵抗体および隙間形成体を説明するための断面図、図6は、図5に示す電気抵抗体の塩化物イオンによる腐食を説明する模式図である。
なお、以下では、本発明のセンサー装置をコンクリート構造物の品質測定に用いる場合を例に説明する。
コンクリート構造物100は、コンクリート101内に複数の鉄筋102が埋設されている。そして、センサー装置1は、コンクリート構造物100のコンクリート101内の鉄筋102付近にセンサー素子として埋設されている。なお、センサー装置1は、コンクリート構造物100の打設する際に、コンクリート101の打設前に鉄筋に固定して埋め込んでもよいし、打設後に硬化したコンクリート101に穿孔して埋め込んでもよい。
また、センサー装置1は、図2に示すように、電気抵抗体3および電気抵抗体4に電気的に接続された機能素子51と、電源52と、温度センサー53と、通信用回路54と、アンテナ55と、発振器56とを有し、これらが本体2内に収納されている。
(本体)
本体2は、電気抵抗体3、電気抵抗体4および機能素子51等を支持する機能を有する。
このような本体2は、図3および図4に示すように、電気抵抗体3、電気抵抗体4および機能素子51を支持する基板21を有する。なお、基板21は、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56をも支持するが、図3および図4では、説明の便宜上、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56の図示を省略している。
この基板21上には、例えばソルダーレジストのような絶縁性の樹脂組成物で構成された絶縁層23が設けられている。そして、この絶縁層23を介して基板21上には、電気抵抗体3、電気抵抗体4および機能素子51が実装されている。
また、本体2は、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56を収納する機能を有する。
特に、本体2は、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56を液密的に収納するように構成されている。
なお、封止部24は、必要に応じて設ければよく、省略することもできる。
電気抵抗体3および電気抵抗体4は、図4に示すように、それぞれ、前述した本体2の外表面上(より具体的には基板21上)に設けられている。特に、電気抵抗体3および電気抵抗体4は、同一平面上に設けられている。そのため、電気抵抗体3および電気抵抗体4の設置環境の差が生じるのを防止することができる。
また、電気抵抗体3および電気抵抗体4は、互いに電位の影響を受けない程度(例えば数mm)に離間している。
また、電気抵抗体3、4の外形は、それぞれ、板状またはシート状をなしている。また、電気抵抗体3、4は、それぞれ、長尺状をなしている。すなわち、電気抵抗体3、4は、それぞれ、帯状をなしている。これにより、電気抵抗体3、4をそれぞれ腐食により切断され易くすることができる。
また、電気抵抗体3は、電気抵抗体4よりも長尺となっている。なお、電気抵抗体3、4の長さの関係は、これに限定されず、例えば、電気抵抗体4が電気抵抗体3よりも長尺であってもよいし、電気抵抗体の長さと電気抵抗体4の長さが等しくてもよい。
これにより、測定対象部位のpHが所定値以上である場合に、電気抵抗体3の表面に不動態膜が形成される。
例えば、Feは、pHが約9よりも大きいときに不動態膜を形成する。また、FeAl(Al0.8%)系炭素鋼は、pHが約4よりも大きいときに不動態膜を形成する。また、Niは、pHが8〜14であるときに不動態膜を形成する。また、Mgは、pHが10.5よりも大きいときに不動態膜を形成する。また、Znは、pHが6〜12であるときに不動態膜を形成する。
また、例えば、炭素鋼(SD345)は、塩化物イオン濃度が約1.2kg/m3を超えたときに不動態膜の破壊が始まる。
また、電気抵抗体3は、前述したような第1の金属材料からなる緻密質体で構成されているのが好ましい。これにより、電気抵抗体3の後述する隙間腐食を生じさせやすくすることができる。
また、電気抵抗体4の構成材料は、前述した電気抵抗体3の構成材料と同じであっても異なっていてもよい。
また、電気抵抗体4を構成する金属材料を電気抵抗体3を構成する金属材料と同種とすることにより、電気抵抗体4の酸性化または中性化による腐食の開始タイミングと、電気抵抗体3の酸性化または中性化による腐食の開始タイミングとを一致または近似したものとすることができる。
このようなことから、測定対象部位の塩化物イオン濃度変化を測定対象部位のpH変化と区別して測定することができる。
電気抵抗体4が金属材料からなる多孔質体で構成された多孔質電気抵抗体である場合、電気抵抗体4の表面には腐食の生じやすい部分として微細な多数の凹部が均一に分散して形成される。そのため、電気抵抗体4の表面は、塩化物イオンの存在下において、均一に腐食が生じ、局所的な腐食(孔食)が抑制される。
このようなことから、電気抵抗体4の塩化物イオンによる腐食の速度を遅くすることができる。そのため、測定対象部位の塩化物イオン濃度の測定を長期にわたり行うことができる。
このようなことから、電気抵抗体3の隙間腐食の速度よりも遅いものの、電気抵抗体4の塩化物イオンによる腐食の速度を速くすることができる。そのため、測定対象部位の塩化物イオン濃度の測定を中期にわたり行うことができる。
また、電気抵抗体3、4の厚さは、それぞれ、特に限定されないが、腐食による電気抵抗の変化が大きく、コンクリート強度に影響を及ぼさないためには、10nm以上5mm以下であるのが好ましい。
隙間形成体8は、電気抵抗体3の表面の一部との間に隙間Gを形成して配置されている。この隙間Gは、電気抵抗体3の表面に対して局所的に形成されている。
図4に示すように、隙間Gには、隙間充填体10が充填されている。
隙間充填体10は、隙間Gを埋めるように電気抵抗体3と隙間形成体8との間に設けられている。この隙間充填体10は、測定対象物内の環境下で溶解または分解することにより消失する。これにより、センサー装置1を測定対象物内に設置したときに、隙間充填体10が溶解または分解することにより消失し、図5に示すように、隙間Gが現れる。
例えば、隙間充填体10の構成材料としては、アルカリ溶解性を有する金属材料または樹脂材料を用いることができる。コンクリート構造物中のコンクリートが強アルカリ性を呈するので、コンクリート構造物中で隙間充填体10を溶解させることができる。
また、アルカリ溶解性を有する樹脂材料としては、アルカリ水溶液(特に強アルカリ水溶液)に溶解し得る樹脂材料(アルカリ可溶性樹脂)であればよく、例えば、ポリメチルグルタルイミド(PMGI)等を用いることができる。
このような隙間充填体10の消失により隙間Gが現れると、測定対象部位の塩化物イオン濃度が比較的低い状態であっても、電気抵抗体3を隙間腐食により腐食させ、その結果、電気抵抗体3の抵抗値の変化に基づいて塩化物イオンの侵入を高感度に検知することができる。
このようなことから、電気抵抗体3の抵抗値に基づいて、測定対象部位に塩化物イオンが侵入したことを高精度に検知することができる。
電気抵抗体3が塩化物イオン(Cl−)の存在下にあるとき、隙間G内に侵入した塩化物イオンにより、電気抵抗体3の表面に形成された不動態膜の局所的な破壊が一旦生じると、電気抵抗体3を構成する第1の金属材料が金属イオン(Mn+)として隙間G内に溶出する。
Fe→Fe2++2e
の反応により、隙間G内に金属イオンとしてFe2+が溶出する。
このように隙間G内に溶出した金属イオンは、拡散速度が遅く、隙間G内に滞留する。これにより、隙間G内での金属イオンの濃度が増加する。
そのため、隙間G外における塩化物イオンの濃度に比し、隙間G内における塩化物イオンの濃度が高くなる。
例えば、第1の金属材料が純鉄(Fe)である場合、
Fe2++2Cl−→FeCl2
FeCl2+2H2O→Fe(OH)2+HCl
の反応により、隙間G内の水素イオンの濃度が増加する。
そのため、隙間G外における水素イオンの濃度に比し、隙間G内における水素イオンの濃度が高くなる。
以上のようなことから、隙間G外における塩化物イオンおよび水素イオンの濃度が比較的少なくても、隙間G内の塩化物イオン濃度および水素イオン濃度が高まり、電気抵抗体3の隙間腐食が進行することとなる。
例えば、第1の金属材料が純鉄(Fe)である場合、
電気抵抗体3のアノード領域では、Fe→Fe2++2eのアノード反応が生じ、
電気抵抗体3のカソード領域では、1/2O2+H2O+2e→2OH−のカソード反応が生じる。
このような隙間形成体8は、例えば、電気抵抗体3上に隙間充填体10を例えば電解メッキ等の成膜法により形成した後、その隙間充填体10上に隙間形成体8を公知の成膜法により形成することにより形成することができる。
また、隙間形成体8が隙間充填体10上に成膜することにより形成されたものであることにより、隙間形成体8を簡単かつ高精度に形成することができる。また、隙間充填体10の厚さに応じて電気抵抗体3と隙間形成体8との間の隙間Gを高精度に規定することができる。
かかる絶縁性材料としては、特に限定されないが、例えば、SiO2、Si3N4等の絶縁性セラミックス材料、PSF(ポリサルフォン)、PAI(プリアミドイミド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の樹脂材料等が挙げられ、中でも、強アルカリ液に耐え得るものが好ましい。
また、隙間形成体8が耐アルカリ性を有する材料から構成されていることにより、測定対象部位がコンクリートである場合であっても、隙間形成体8の耐久性を優れたものとすることができる。そのため、コンクリートの状態を長期に亘り安定して測定することができる。
機能素子51は、前述した本体2の内部に埋設されている。なお、機能素子51は、前述した本体2の基板21に対して電気抵抗体3および電気抵抗体4とは、同一面に設けても、反対側に設けても良い。
この機能素子51は、電気抵抗体3および電気抵抗体4の抵抗値をそれぞれ測定する機能を有する。これにより、電気抵抗体3、4の抵抗値に基づいて、測定対象部位の状態を測定することができる。
また、機能素子51は、電気抵抗体3および電気抵抗体4の抵抗値に基づいて、測定対象物であるコンクリート構造物100の測定対象部位のpHあるいは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを検知する機能をも有する。これにより、コンクリート構造物100のpH変化あるいは塩化物イオン濃度変化に伴う状態変化を検知することができる。
また、機能素子51は、電源52からの通電により作動する。電源52は、機能素子51を動作可能な電力を供給できるものであれば、特に限定されず、例えば、ボタン型電池のような電池であってもよいし、圧電素子のような発電機能を有する素子を用いた電源ものであってもよい。
また、機能素子51は、温度センサー53の検知温度情報を取得し得るように構成されている。これにより、測定対象部位の温度に関する情報も得ることができる。このような温度に関する情報を用いることにより、測定対象部位の状態をより正確に測定したり、測定対象部位の変化を高精度に予想したりすることができる。
また、機能素子51は、通信用回路54を駆動制御する機能をも有する。例えば、機能素子51は、電気抵抗体3、4の抵抗値に関する情報(以下、単に「抵抗値情報」ともいう)と、測定対象部位のpHあるいは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かに関する情報(以下、単に「pH情報」ともいう)とをそれぞれ通信用回路54に入力する。また、機能素子51は、温度センサー53によって検知された温度に関する情報(以下、単に「温度情報」ともいう)も併せて通信用回路54に入力する。
この通信用回路54は、例えば、電磁波を送信するための送信回路、信号を変調する機能を有する変調回路等を有する。なお、通信用回路54は、信号の周波数を小さく変換する機能を有するダウンコンバータ回路、信号の周波数を大きく変換する機能を有するアップコンバータ回路、信号を増幅する機能を有する増幅回路、電磁波を受信するための受信回路、信号を復調する機能を有する復調回路等を有していてもよい。
また、機能素子51は、発振器56からのクロック信号を取得し得るように構成されている。これにより、各回路の同期をとったり、各種情報に時刻情報を付加したりすることができる。
発振器56は、特に限定されないが、例えば、水晶振動子を利用した発振回路で構成されている。
以上説明したように構成されたセンサー装置1を用いた測定方法は、電気抵抗体3および電気抵抗体4を測定対象物であるコンクリート構造物100内にそれぞれ埋設し、電気抵抗体3、4の抵抗値に基づいて、コンクリート構造物100の状態を測定する。
打設直後のコンクリート構造物100において、通常、適切に打設されていれば、コンクリート101は強アルカリ性を呈する。そのため、コンクリート構造物100内に埋設されたセンサー装置1の隙間充填体10は、溶解または分解により消失する。また、電気抵抗体3および電気抵抗体4は、それぞれ、安定な不動態膜を形成する。
その後、コンクリート構造物100は、二酸化炭素、酸性雨、排気ガス等の影響により、コンクリート101のpHが徐々に酸性側に変化していく。
そして、測定対象部位の塩化物イオン濃度が炭素鋼を腐食させる限界濃度に達すると、電気抵抗体4も腐食し、電気抵抗体4の抵抗値が大きくなる。
このような電気抵抗体3、4の抵抗値に基づいて、測定対象部位への塩化物イオンの侵入を段階的に検知することができる。
このような電気抵抗体3、4の抵抗値に基づいて、測定対象部位のpHが9程度になったことを検知することができる。
また、コンクリート構造物100の打設時に異常があった否かを判断することもできる。そのため、コンクリート構造物100の初期トラブルを防止し、コンクリート構造物100の品質を向上させることができる。
また、本実施形態では、隙間腐食を生じない電気抵抗体4が電気抵抗体3とは別体として設けられているので、測定対象部位の塩化物イオン濃度変化を測定対象部位のpH変化と区別して測定することができる。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図6は、本発明の第2実施形態に係るセンサー装置を示す平面図である。
以下、第2実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2実施形態のセンサー装置は、電気抵抗体の形状および数が異なるとともに、隙間形成体の数が異なる以外は、第1実施形態のセンサー装置とほぼ同様である。なお、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
電気抵抗体3Aは、互いに離間した2つの第1の部分31、32と、この2つの第1の部分31、32間に形成された第2の部分33とから構成されている。
第1の部分31、32は、それぞれ、平面視にて四角形をなしている。
そして、第2の部分33は、第1の部分31と第1の部分32とを連結している。本実施形態では、第2の部分33は、長尺状をなし、その一端が第1の部分31に接続され、他端が第1の部分32に接続されている。
隙間形成体8Aは、前述した電気抵抗体3Aの第2の部分33との間に隙間Gを形成して設けられている。
以上説明したような第2実施形態に係るセンサー装置1Aによっても、コンクリート101の品質劣化を防止しつつ、測定対象物の状態を測定し、その測定結果に基づく情報を鉄筋102の腐食前の計画的または予防的な保全に活用することができる。
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
図8は、本発明の第3実施形態に係るセンサー装置の使用状態の一例を示す図、図9は、図8に示すセンサー装置に備えられた電気抵抗体(多孔質電気抵抗体)を説明するための拡大断面図である。
第3実施形態のセンサー装置は、電気抵抗体の数が異なる以外は、第1実施形態のセンサー装置とほぼ同様である。なお、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
本実施形態では、電気抵抗体3、4、9は、コンクリート構造物100の外表面からの距離が、コンクリート構造物100の外表面と鉄筋102との間に距離(すなわち鉄筋102のかぶり深さ)とほぼ等しくなるように設置されている。
本実施形態では、電気抵抗体4は、金属材料からなる緻密質体で構成されている。
具体的には、図9に示すように、電気抵抗体9は、複数の空孔91を有する多孔質体92で構成されている。
さらに、電気抵抗体9の空孔率は、特に限定されないが、例えば、10%以上90%以下であるのが好ましい。
このような電気抵抗体4、9は、電気抵抗体3と同一環境に設置されていても、電気抵抗体4、9の塩化物イオンによる局所腐食の開始タイミングを、電気抵抗体3の塩化物イオンによる局所腐食の開始タイミングよりも遅らせることができる。
このようなことから、測定対象部位の塩化物イオン濃度変化を測定対象部位のpH変化と区別して測定することができる。
このようなことから、電気抵抗体9の塩化物イオンによる腐食の速度を遅くすることができる。そのため、測定対象部位の塩化物イオン濃度の測定を長期にわたり行うことができる。
このようなことから、電気抵抗体3の隙間腐食の速度よりも遅いものの、電気抵抗体4の塩化物イオンによる腐食の速度を、電気抵抗体9の塩化物イオンによる腐蝕の速度よりも速くすることができる。そのため、測定対象部位の塩化物イオン濃度の測定を中期にわたり行うことができる。
以上説明したような第3実施形態に係るセンサー装置1Bによっても、コンクリート101の品質劣化を防止しつつ、測定対象物の状態を測定し、その測定結果に基づく情報を鉄筋102の腐食前の計画的または予防的な保全に活用することができる。
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
図10は、本発明の第4実施形態に係るセンサー装置の使用状態の一例を示す図である。
以下、第4実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第4実施形態のセンサー装置は、使用状態が異なる以外は、第3実施形態のセンサー装置とほぼ同様である。なお、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
以上説明したような第4実施形態に係るセンサー装置1Cによっても、コンクリート101の品質劣化を防止しつつ、測定対象物の状態を測定し、その測定結果に基づく情報を鉄筋102の腐食前の計画的または予防的な保全に活用することができる。
次に、本発明の第5実施形態を説明する。
図11は、本発明の第5実施形態に係るセンサー装置を示す部分拡大斜視図、図12(a)は、図11に示すセンサー装置に備えられた電気抵抗体を示す平面図、図12(b)は、図11に示すセンサー装置に備えられた電気抵抗体を示す側面図である。
以下、第5実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第5実施形態のセンサー装置は、電気抵抗体、隙間形成体および隙間充填体の構成が異なる以外は、第1実施形態のセンサー装置とほぼ同様である。
本実施形態では、電気抵抗体3Dおよび隙間形成体8Dは、それぞれ、板状またはシート状をなし、互いに重ねて配置されている。これにより、電気抵抗体3Dの隙間腐食を生じさせ得る隙間Gを電気抵抗体3Dと隙間形成体8Dとの間に簡単かつ確実に形成することができる。
そして、電気抵抗体3Dおよび隙間形成体8Dは、互いに重ねられた状態にて、双方を貫通する貫通孔(図示せず)が形成されており、その貫通孔に一方側からワッシャー112を介してボルト111を挿通し、他方側からワッシャー113を介してボルト111にナット114を螺合させることにより、隙間形成体8Dが電気抵抗体3Dに対して固定部材11により固定されている。
この隙間充填体10Dが測定対象物内で溶解または分解により消失することにより、電気抵抗体3Dと隙間形成体8Dとの間には、隙間が形成される。
ボルト111、ワッシャー112、113およびナット114の構成材料としては、それぞれ、特に限定されないが、絶縁性材料、電気抵抗体3Dと同種の金属材料を用いるのが好ましい。
この各第2の部分33Dの平面視での面積は、第1の部分31Dの平面視での面積、および、第1の部分32Dの平面視での面積よりも小さくなっている。
このような隙間形成体8Dは、前述した電気抵抗体3Dの各第2の部分33Dの上面との間に隙間Gを形成して設けられている。これにより、隙間充填体10Dが消失した状態において、電気抵抗体3Dの各第2の部分33Dを隙間腐食させることができる。
以上、本発明のセンサー装置およびセンサー素子を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明のセンサー装置およびセンサー素子では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
また、電気抵抗体の設置位置、大きさ(大小関係)、数等についても、前述したような測定が可能であれば、前述した実施形態に限定されず、任意である。
また、前述した実施形態では電気抵抗体の抵抗値に関する情報をアクティブタグ通信により無線送信によりセンサー装置外部へ送信する場合を例に説明したが、これに限定されず、例えば、パッシブタグ通信を用いて情報をセンサー装置の外部へ送信してもよいし、有線により情報をセンサー装置の外部へ送信してもよい。
Claims (18)
- 金属材料で構成された電気抵抗体と、
前記電気抵抗体の表面の一部との間に隙間を備えて設けられた隙間形成体と、
前記隙間に設けられ、測定対象物内の環境下で溶解または分解する隙間充填体と、
前記電気抵抗体の抵抗値を測定する機能を有する機能素子とを有し、
前記機能素子で測定された抵抗値に基づいて、前記測定対象物の測定対象部位の状態を測定し得るように構成されたことを特徴とするセンサー装置。 - 前記隙間充填体は、前記電気抵抗体上に設けられたものである請求項1に記載のセンサー装置。
- 前記隙間形成体は、前記隙間充填体上に設けられたものである請求項2に記載のセンサー装置。
- 前記隙間充填体は、アルカリ溶解性を有する金属材料または樹脂材料で構成されている請求項1ないし3のいずれかに記載のセンサー装置。
- 前記電気抵抗体および前記隙間形成体は、それぞれ、板状またはシート状をなし、互いに重ねて配置されている請求項1ないし4のいずれかに記載のセンサー装置。
- 前記電気抵抗体は、長尺状をなし、
前記隙間形成体は、前記電気抵抗体の長手方向での一部の表面との間に前記隙間を備えている請求項1ないし4のいずれかに記載のセンサー装置。 - 前記電気抵抗体は、前記隙間形成体に覆われていない部分の表面積が前記隙間を介して前記隙間形成体に覆われている部分の表面積よりも大きい請求項1ないし6のいずれかに記載のセンサー装置。
- 前記隙間形成体は、絶縁性材料で構成されている請求項1ないし7のいずれかに記載のセンサー装置。
- 前記隙間形成体は、前記電気抵抗体を構成する金属材料と同種の金属材料で構成されている請求項1ないし7のいずれかに記載のセンサー装置。
- 前記隙間形成体は、耐アルカリ性を有する材料から構成されている請求項1ないし9のいずれかに記載のセンサー装置。
- 前記隙間における前記隙間形成体と前記電気抵抗体との間の距離は、1μm以上100μm以下である請求項1ないし10のいずれかに記載のセンサー装置。
- 前記電気抵抗体を構成する前記金属材料は、前記測定対象部位の環境変化に伴って表面に不動態膜を形成するか、または、表面に存在した不動態膜を消失させる金属材料である請求項1ないし11のいずれかに記載のセンサー装置。
- 前記電気抵抗体を構成する前記金属材料は、鉄、ニッケルまたはこれらを含む合金である請求項12に記載のセンサー装置。
- 前記電気抵抗体に対して離間して設けられ、金属材料からなる多孔質体で構成された多孔質電気抵抗体を有し、
前記機能素子は、前記多孔質電気抵抗体の抵抗値を測定する機能をも有する請求項1ないし13のいずれかに記載のセンサー装置。 - 前記電気抵抗体に対して離間して設けられ、金属材料からなる緻密質体で構成された緻密質電気抵抗体を有し、
前記機能素子は、前記緻密質電気抵抗体の抵抗値を測定する機能をも有する請求項1ないし14のいずれかに記載のセンサー装置。 - 前記機能素子は、前記電気抵抗体の抵抗値に基づいて、前記測定対象部位のpHあるいは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを検知する機能をも有する請求項1ないし15のいずれかに記載のセンサー装置。
- アンテナと、前記アンテナに給電する機能を有する通信用回路とを有し、
前記機能素子は、前記通信用回路を駆動制御する機能をも有する請求項1ないし16のいずれかに記載のセンサー装置。 - 金属材料で構成された電気抵抗体と、
前記電気抵抗体の表面の一部との間に隙間を備えて設けられた隙間形成体と、
前記隙間に設けられ、測定対象物内の環境下で溶解または分解する隙間充填体とを有し、
前記電気抵抗体の抵抗値に基づいて、前記測定対象物の測定対象部位の状態を測定し得るように構成されたことを特徴とするセンサー素子。
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