JP2005091034A - 鋼材コンクリート構造物の塩害検知システム及びその検知装置並びに鋼材コンクリート構造物 - Google Patents

鋼材コンクリート構造物の塩害検知システム及びその検知装置並びに鋼材コンクリート構造物 Download PDF

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淳 荒川
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Abstract

【課題】ワイヤレスで鋼材コンクリート構造物中の鋼材の塩害或いはコンクリートの中性化による腐食状態を短時間で容易に検出することができる鋼材コンクリート構造物の塩害検知システム及びその検知装置並びに鋼材コンクリート構造物を提供する。
【解決手段】モニタ装置8から電波によって供給されたエネルギーによって動作し、周囲のpH値と塩化物イオン濃度値を検出して検出結果をディジタルデータとしてモニタ装置8に送信する検知装置7を、橋桁2の繋ぎ目部分に伸縮装置4を固定する後打ちコンクリート3内に複数個埋設し、後打ちコンクリート3内に埋設されている伸縮装置4の鉄鋼からなるアンカーボルト近傍のpH値と塩化物イオン濃度値をワイヤレスで検出することにより、塩害によるアンカーボルトの腐食状態を検知する。
【選択図】図1

Description

本発明は、鋼材コンクリート構造物の塩害検知システム及びその検知装置並びに鋼材コンクリート構造物に関するものである。
橋梁等の構造物に使用される鉄骨や鉄筋等の鋼材が埋設された鋼材コンクリート構造物におけるコンクリートは通常強アルカリ性(pH12〜13)であるため、鋼材の表面に薄い水酸化第一鉄皮膜が形成されて不動態化した不動態皮膜が形成されているので、鋼材が腐食することはないが、コンクリート製造時にコンクリート中に塩化物イオンが混入したり、或いは構造物の使用中にコンクリート内に塩化物イオンが浸透して、コンクリート中に蓄積された塩化物イオンの量がある限度以上になると、鋼材表面の不動態皮膜が破壊されて鋼材が活性態に変化する、いわゆる塩害が発生する。
塩害は、飛来塩化物や海砂、凍結防止剤などによる塩分によってコンクリート中の鋼材が腐食する現象であり、鋼材コンクリート構造物の耐久性を著しく低下させる原因の1つとなっている。
また、上記不動態皮膜はコンクリートがアルカリ性にある環境で形成されており、コンクリート中に二酸化炭素などが浸透してコンクリートが中性化すると不動態被膜が破壊されて鋼材が活性態に変化する。
この様に鋼材が活性態に変化することにより、コンクリート中の鋼材の腐食が促進されて鋼材の強度が低下すると共に、これに伴いコンクリートのひび割れや剥離が引き起こされる。
塩害やコンクリートの中性化は、鋼材コンクリート構造物の内部に発生するため早期発見は難しく、コンクリートのひび割れや鋼材の断面積減少等の致命的な損傷に繋がるため、この鋼材腐食の進行を事前に予測することが必要である。
このような鋼材腐食の進行を事前に予測するために様々な研究開発がなされており、例えば、特開2002−38723号公報に開示される鉄骨・鉄筋コンクリート造建築物のリアルタイムライフサイクルメンテナンス手法(第1従来例)や、特開平10−221292号公報に開示されるコンクリート中の鋼材の腐食検出方法(第2従来例)、特開平11−153568号公報に開示されるコンクリート中鋼材の腐食状況の予測方法(第3従来例)、特開2003−107030号公報に開示されるひび割れ検知システム(第4従来例)、特開2001−208733号公報に開示されるコンクリート構造物の劣化測定装置(第5従来例)、特開2003−139731号公報に開示される構造物調査・診断システム(第6従来例)などの手法が周知技術として知られている。
上記第1従来例では、鉄骨・鉄筋コンクリート造建築物の鉄筋部、コンクリート部に変形量及びコンクリートのpHを測定することができる計測装置を埋設しておき、各種計測装置のリード線をデータ蓄積装置に接続して電話回線を使用することにより、遠隔地にある監視室のコンピュータのモニターにおいて各種計測装置の埋設箇所の鉄筋部、コンクリート部の変形量及びコンクリート部のpHを時系列的にリアルタイムで監視する。これにより、劣化の早期発見と早期補修を確実に実施できるようにしている。
上記第2従来例では、コンクリート中に鋼材を有するコンクリート構造物のコンクリートの表面に、電極を備えた2個以上の鋼材腐食検出端を一定の間隔で接触させ、電位測定装置により、2箇所以上のコンクリート中の鋼材の自然電位の差を測定することにより、コンクリート中の鋼材の腐食状況を検出している。鋼材が腐食すると腐食電池が形成され、鋼材の自然電位が変化することから鋼材の腐食を検出している。
上記第3従来例では、コンクリート構造物中の鋼材と同種材料からなる細線を、コンクリート構造物中に埋設し、腐食によって細線が断線する時を測定し、コンクリート中鋼材の腐食状況を予測する。
上記第4従来例では、棒状もしくは線状の電気抵抗体を有するひび割れ検知部、電気抵抗体の電気抵抗値を測定する電気抵抗測定部、電気抵抗値のデータ信号を送信する送信部、及び電源部を備えたひび割れ検知装置をコンクリートに埋設し、コンクリートの外部には、ひび割れ検知装置からのデータ信号を受信する受信部、及びそのデータ信号を解析するデータ解析部を備えたデータ解析装置を設けることによりコンクリートのひび割れを検知している。
上記第5従来例では、コンクリート構造物を加振して共振周波数を測定し、鉄筋コンクリート構造物の劣化を測定している。
上記第6従来例では、コンクリート構造物表面の初期温度をサーモグラフィ装置で計測し、露出させた鉄筋に強制加熱を行って、コンクリート構造物の温度履歴を熱画像時間履歴としてメモリに格納し、コンピュータを用いて熱画像時間履歴に基づいて熱伝導解析を行うことで、鉄筋の腐食の有無、鉄筋の位置、コンクリート中のひび割れを高精度に計測できるようにしている。
特開2002-38723号公報 特開平10-221292号公報 特開平11-153568号公報 特開2003-107030号公報 特開2001-208733号公報 特開2003-139731号公報
しかしながら、上記第1従来例においては、各種計測装置とデータ蓄積装置との間をリード線によって接続しなければならず、リード線の配線に手間を要すると共にリード線が断線した場合には計測不能になる。
また、上記第2従来例においては、コンクリート構造物のコンクリートの表面に、電極を備えた2個以上の鋼材腐食検出端を一定の間隔で接触させて、コンクリート中の鉄筋の腐食を検出しているので、複数箇所の鉄筋の腐食を同時に検出しようとすると装置構成が複雑になってしまう。
上記第3従来例では、コンクリート構造物中の鋼材と同種材料からなる細線をコンクリート構造物中に埋設しなければならないので、細線の埋設時に細線が切断されないように注意しなければならず、細線の埋設に手間を要する。また、複数箇所の鉄筋の腐食を同時に検出しようとすると装置構成が複雑になってしまう。
上記第4従来例は、コンクリートのひび割れを検知する装置であり、塩素イオン等の塩害発生源となるイオン以外の導電性の液体がコンクリート中に染み込んだ場合にも電気抵抗体の電気抵抗値が変化するので、コンクリート構造物中の鋼材の腐食状態の検出に用いることは不適切である。
上記第5従来例においては、コンクリート構造物を加振しなければならず、腐食状態の監視を行うには不向きである。
上記第6従来例においては、鉄筋を加熱する必要があるため計測に手間を要するので、腐食状態の監視を行うには不向きである。
本発明の目的は上記の問題点に鑑み、ワイヤレスで鋼材コンクリート構造物中の鋼材の塩害或いはコンクリートの中性化による腐食状態を短時間で容易に検出することができる鋼材コンクリート構造物の塩害検知システム及びその検知装置並びに鋼材コンクリート構造物を提供することである。
本発明の鋼材コンクリート構造物の塩害検知システムによれば、ワイヤレスで鋼材コンクリート構造物中の鋼材の塩害或いはコンクリートの中性化による腐食状態を短時間で容易に検出することができるので、コンクリートの割れや鉄筋・鉄骨の断面積減少等の致命的な損傷を早期に発見することが可能であると共に、pH値の経時変化や塩化物イオン濃度値の経時変化より、コンクリート構造物中の鉄筋・鉄骨の寿命予測が可能となる。
また、本発明の検知装置によれば、鋼材コンクリート構造物中のpH値や塩化物イオン濃度値の情報をワイヤレスで送信することができると共に駆動エネルギーを外部からワイヤレスで供給できるので、コンクリート構造物中の任意の場所への設置を容易に行うことができる。さらに、ワイヤレスで鋼材コンクリート構造物中の鋼材の塩害或いはコンクリートの中性化による腐食状態を短時間で容易に検出可能となる。
また、本発明の鋼材コンクリート構造物によれば、ワイヤレスで鋼材コンクリート構造物中の鋼材の塩害或いはコンクリートの中性化による腐食状態を短時間で容易に検出可能となる。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態における鋼材コンクリート構造物の塩害検知システムを示す構成図である。図において、1は鉄筋や鉄骨等の鋼材をコンクリート中に埋設してなる鋼材コンクリート構造物である橋梁で、橋桁2と、伸縮装置4、支承装置5、橋脚6とから構成されている。また、7は検知装置、8はモニタ装置、9は点検作業員である。
伸縮装置4は、そのアンカーボルトが後打ちコンクリート3によって橋桁2の繋ぎ目部分、すなわち隣り合う橋桁2を連結する部分に固定されている。
図2は一実施形態における伸縮装置4を示す外観斜視図、図3は一実施形態における伸縮装置4を示す平面図、図4は図3におけるA−A線矢視方向断面図、図5は図3におけるB−B線矢視方向断面図である。
これらの図において、41は本体ゴム、42a及び42bは本体ゴム41の幅方向両側の底面に固定された直方体形状の鋼板からなる定着板、43は幅方向中央部に埋設された直方体形状の鋼板からなる荷重支持鋼板である。
44は例えば鉄鋼からなるアンカーボルトで、略L型をなし、伸縮装置4の幅方向両側に突き出すように複数個設けられている。アンカーボルト44の一端にはネジ溝が形成され、その一端が定着板42a,42b及び本体ゴム41に設けられた挿入孔に挿入されて、ナット挿入孔45に挿入されたナット46によって定着板42a,42b及び本体ゴム41に固定されている。
47は、2つの定着板42a,42b間に、伸縮装置4の長手方向に延びるように本体ゴム41の底面に形成された凹部である。
48a及び48bは、本体ゴム41の表面に形成された溝で、本体ゴム41の幅方向の両側に設けられ、波形に蛇行して伸縮装置4の長手方向に延びるように形成されている。
49a及び49bは、本体ゴム41の表面に形成された溝で、本体ゴムの41の幅方向の中央部に、長手方向に延びるように形成されている。
また、図6に示すように、検知装置7は、伸縮装置4を橋桁2の繋ぎ目部分に固定するための後打ちコンクリート3の内部に複数個埋設されている。本実施形態では、検知装置7の埋設位置を、塩害を生じやすい鉄鋼からなるアンカーボルト44の周囲としている。
図7は、一実施形態における検知装置7の電気系回路を示すブロック図である。図において、71は送受信用アンテナ、72は電子スイッチ、73は整流回路、74は検波部、75はセンサ部、76は中央処理部、77は発信部である。
アンテナ71は、100KHz〜300KHz(第1周波数)及び300MHz(第2周波数)に共振するように設定されている。
電子スイッチ72は、後述するCPU761によって切替が行われ、検知装置7が駆動していない状態では、送受信用アンテナ71を後述する整流回路73と検波部74に接続する。尚、検知装置7の送受信周波数が異なる場合は、電子スイッチ72に代えて帯域通過型フィルタ或いは低域通過型フィルタ及び広域通過型フィルタ等を組み合わせたデュープレクサを用いても良い。
整流回路73(エネルギー変換手段)は、ダイオード731,732、コンデンサ733、及び抵抗器734から構成され、周知の全波整流回路を形成している。この整流回路73の入力側には電子スイッチ72を介して送受信用アンテナ71が接続され、送受信用アンテナ71に誘起した高周波電流を整流して直流電流に変換し、中央処理部76、記憶部763及び発信部77の駆動電源として出力するものである。
検波部74は、ダイオード741とアナログ/ディジタル(以下、A/Dと称する)変換回路742からなり、ダイオード741のアノードは電子スイッチ72を介してアンテナ71に接続され、カソードはA/D変換回路742を介して中央処理部76のCPU761に接続されている。
センサ部75は、pHセンサ素子751とA/D変換回路752及び塩化物イオンセンサ素子753とA/D変換回路754から構成されている。pHセンサ素子751は周囲の水素イオン濃度を検知して周囲のpH値を検出し、検出したpH値に対応するアナログ電気信号を出力する。塩化物イオンセンサ素子753は周囲の塩化物イオン濃度値を検知し、検知した塩化物イオン濃度値に対応するアナログ電気信号を出力する。
pHセンサ素子751から出力されたpH値に対応するアナログ電気信号はA/D変換回路752に入力される。A/D変換回路752は、pHセンサ素子751から入力した電気信号の値をディジタル値に変換して中央処理部76に出力する。
塩化物イオンセンサ素子753から出力された塩化物イオン濃度値に対応するアナログ電気信号はA/D変換回路754に入力される。A/D変換回路754は、塩化物イオンセンサ素子753から入力した電気信号の値をディジタル値に変換して中央処理部76に出力する。
中央処理部76は、周知のCPU761、ディジタル/アナログ(以下、D/Aと称する)変換回路762及び記憶部763から構成され、CPU761は電源が供給されて駆動するとEEPROM等の半導体メモリからなる記憶部763内に記憶されているプログラムに従って動作する。記憶部763には、上記プログラムと、個々の検知装置7に固有の識別情報が記憶されている。
CPU761は、動作を開始した後、センサ部75から取得したディジタル値に基づいて所定時間毎にpH値と塩化物イオン濃度値を検出すると共に、検波部74を介して後述するモニタ装置8から送信命令を受信したときに、検出したpH値と塩化物イオン濃度値の情報を自己の識別情報と共にD/A変換回路762を介して発信部77(送信手段)に出力し、これらの情報を送信する。この情報送信時には、CPU761は電子スイッチ72を切り替えて発信部77をアンテナ71に接続すると共に、時間間隔T2で同じ情報を複数回繰り返して送信する。本実施形態では、例えば時間T2を10ms、繰り返し数を5回に設定している。尚、モニタ装置8からの送信命令を受信しなくとも、CPU761が動作を開始した後に、検出したpH値と塩化物イオン濃度値の情報を自己の識別情報と共に送信するようにしても良い。
発信部77は、発振回路771、変調回路772及び高周波増幅回路773から構成され、発振回路771によって発振された、例えば300MHzの搬送波を、中央処理部76から入力した情報信号に基づいて、変調回路772で変調して、これを高周波増幅回路773及び電子スイッチ72を介してアンテナ71に供給する。
図8は、一実施形態におけるモニタ装置8の電気系回路を示すブロック図である。図において、8はモニタ装置で、受信用アンテナ81、受信部82、中央処理部83、キーボード84、表示部85、発信部86、送信用アンテナ87、及びこれらへ電源を供給する電源部88から構成されている。ここで、本発明におけるモニタ装置とは、前述した検知装置7に対して第1周波数の電磁波を輻射し、これに伴って検知装置7から送信される第2周波数の電磁波を受信することにより、検知装置7が検知した検出結果を検知情報として取得し、この検知情報に基づいて伸縮装置4の周囲のpH値と塩化物イオン濃度値を検出する装置を言う。
モニタ装置8の受信部82(受信手段)は、受信機821とA/D変換回路822から構成され、受信器821の入力側は受信用アンテナ81に接続され、300MHz(第2周波数)の電磁波を受信し、これを検波した後、A/D変換回路822を介して中央処理部83に出力する。
中央処理部83は、周知のCPU831(異常検出手段)及びメモリ832(基準値記憶手段)から構成され、メモリ832に記憶されているプログラムによって伸縮装置4の周囲のpH値と塩化物イオン濃度値の検出処理を行う。CPU831はキーボード84から入力された命令に基づいて、受信部82から入力した上記検知情報をメモリ832に記憶すると共に、メモリ832に予め記憶されているデータベースの情報及び上記受信した検知情報に基づいて、伸縮装置4の周囲のpH値と塩化物イオン濃度値の情報を表示部85に表示する。
ここで、上記データベースには、各伸縮装置4のセリアルナンバーとその設置場所及びそれに設けられている検知装置7の識別情報並びに各検知装置7の検知情報の基準値が対応づけられて格納されている。前記検知情報の基準値としては、鋼材コンクリート構造物に異常がない状態の時の定常状態における検出結果の許容範囲、例えば、伸縮装置7を設置したときの初期状態における検出結果と、各計測時における検出結果の情報が格納されている。
CPU831は、取得した検知情報を各検知装置7毎に受信した日時情報に対応づけてメモリ832に記憶すると共に、検知情報に含まれる検出結果とデータベースに記憶されている基準値とを比較すると共に、各検知装置7の検出結果が所定の閾値を超えているか否かを判定し、その判定結果を各検知装置7毎にメモリ832に記憶する。
上記中央処理部83が表示部に表示する状態情報としては、例えば、伸縮装置4のセリアルナンバーとその設置場所及びそれに設けられている検知装置7の識別情報、並びに、各検知装置7の検出結果の推移に基づいて、検出結果が異常値であるか否すなわち塩害によりアンカーボルト44が腐食しているか否かの情報が表示される。
さらに、発信部86(電磁波輻射手段)はCPU831からの制御信号に基づいて、100KHz〜300KHz(第1周波数)の電磁波を送信用アンテナ87を介して外部に連続して輻射すると共に、所定時間間隔T1で搬送波に所定の送信命令をのせて送信する。ここで、発信部86による高周波出力は、微小なものであり、本実施形態では送信用アンテナ87から例えば半径5m以内に存在する検知装置7に対して駆動用のエネルギーを供給できる値に設定されている。また、上記送信命令の送信時間間隔T1は、例えば基準値としては300msに設定されており、キーボード84からの命令入力によって変更できるようになっている。
上記構成よりなる塩害検知システムでは、点検作業員9がモニタ装置8を操作することにより、伸縮装置4の近傍において、モニタ装置8の送信用アンテナ87から上記第1周波数の電磁波が輻射されると、伸縮装置4の近傍に設けられている検知装置7は、第1周波数の電磁波を受波し、この電磁波のエネルギーを整流回路73によって電気エネルギーに変換し、検知装置7はこの電気エネルギーによって動作する。
さらに、検知装置7のセンサ部75によって、周囲のpH値と塩化物イオン濃度値が検出されて、これに対応する電気信号が出力され、検知装置7からその検出結果が検知情報として上記第2周波数の電磁波を用いて送信される。
これにより、モニタ装置8は、受信用アンテナ81を介して、検知装置7から送信された第2周波数の電磁波を受信し、受信した電磁波から検知情報を検出し、この検知情報に基づいて、伸縮装置4の周囲のpH値と塩化物イオン濃度値を検出する。
従って、何処に設置されているセリアルナンバーがいくつの伸縮装置4の近傍に設置されているどの検知装置7の周囲で、pH値或いは塩化物イオン濃度値がが異常であるか否かを短時間で容易に検出することができる。これにより、伸縮装置4における塩害の発生状況を極めて簡単に把握することができる。
また、モニタ装置8は、上記のように所定時間間隔T1で検知情報を収集することができるので、ノイズ等によって電波通信状態が悪化しても確実に検知情報を取得することができる。
尚、本実施形態では、pH値に関しては後打ちコンクリート3が中性化するpHが7を閾値としている。また、塩化物イオン濃度値に関しては、発錆限界塩化物イオン量として土木学会や日本コンクリート工学協会などにより採用されている1.2kg/m3の値を用い、塩化物イオン量が1.2kg/m3以上である場合を塩化物イオンが関与した腐食が発生しているものとし、これ以下の塩化物イオン量の場合をコンクリートの中性化等によりアンカーボルト44が腐食しているものと判断している。
また、図9に示すように、モニタ装置8を備えた点検車両10を走行させ、橋梁1を通過することによって橋梁1に設けられている伸縮装置4の周囲のpH値と塩化物イオン濃度値を自動的に検出することができるシステムを構成することもできる。このシステムでは、橋梁1上で点検車両10を走行させている間に各伸縮装置4の周囲のpH値と塩化物イオン濃度値を検出することができる。
図9に示す点検車両10では、モニタ装置8の装置本体80は運転席近傍に配置され、受信用アンテナ81と送信用アンテナ87はアンテナユニットとして点検車両10の底部に固定されている。この様に受信用アンテナ81と送信用アンテナ87を点検車両10の底部に固定することにより、検知装置7との間の通信をより微小な高周波出力で行うことができる。
また、点検車両10を用いたシステムでは、点検車両10を走行させるだけで伸縮装置4の周囲のpH値と塩化物イオン濃度値を容易に検出することができるので、橋梁上の交通規制を行い、人手による点検作業を行う必要がない。これにより、点検作業に要する時間の短縮を図ることができる。さらに、点検作業経験の無い作業員による誤判断も無くすことができる。
尚、上記実施形態は本発明の一具体例であって、本発明がこれらの一具体例の構成のみに限定されないことは言うまでもないことである。例えば、上記実施形態では、橋梁1における伸縮装置7の周囲のpH値と塩化物イオン濃度値を検出するシステムを構成したが、橋梁1以外のコンクリート構造物中におけるpH値と塩化物イオン濃度値を検出するシステムを構成しても良いことは言うまでもない。
また、上記実施形態ではpHセンサ素子751と塩化物イオンセンサ素子753とを有するセンサ部75を設けたが、pHセンサ素子751或いは塩化物イオンセンサ素子753の何れか一方を有するセンサ部を備えた検知装置を用いても良い。
また、検知装置7或いはセンサ素子751,753を塩害による腐食検出対象となるアンカーボルト44に装着してアンカーボルト44の周囲のpH値と塩化物イオン濃度値を検出するようにしても良い。また、後打ちコンクリート3の露出表面からアンカーボルト44に向けて所定間隔で複数の検知装置7を配置し、後打ちコンクリート3の露出表面からの距離によるpH値及び塩化物イオン濃度値の変化を検出できるようにしても良い。
また、上記実施形態では、第1周波数と第2周波数として互いに異なる周波数を用いたが、第1周波数と第2周波数として同一周波数を用いるときはモニタ装置8における電磁波の送受信を交互に行うようにすればよいことは言うまでもないことである。
本発明の一実施形態における鋼材コンクリート構造物の塩害検知システムを示す構成図 本発明の一実施形態における伸縮装置を示す外観斜視図 本発明の一実施形態における伸縮装置を示す平面図 図3におけるA−A線矢視方向断面図 図3におけるB−B線矢視方向断面図 本発明の一実施形態における検知装置の設置位置を説明する図 本発明の一実施形態における検知装置の電気系回路を示すブロック図 本発明の一実施形態におけるモニタ装置の電気系回路を示すブロック図 本発明の一実施形態における点検車両を示す図
符号の説明
1…橋梁、2…橋桁、3…後打ちコンクリート、4…伸縮装置、5…支承装置、6…橋脚、7…検知装置、8…モニタ装置、9…点検作業員、10…点検車両、41…本体ゴム、42a,42b…定着板、43…荷重支持鋼板、44…アンカーボルト、45…ナット挿入孔、46…ナット、47…凹部、48a,48b,49a,49b…溝、71…送受信用アンテナ、72…電子スイッチ、73…整流回路、74…検波部、75…センサ部、76…中央処理部、77…発信部、731,732…ダイオード、733…コンデンサ、734…抵抗器、741…ダイオード、742…A/D変換回路、751…pHセンサ素子、752,754…A/D変換回路、753…塩化物イオンセンサ素子、81…受信用アンテナ、82…受信部、83…中央処理部、84…キーボード、85…表示部、86…発信部、87…送信用アンテナ、88…電源部、821…受信機、822…A/D変換回路、831…CPU、832…メモリ。

Claims (17)

  1. コンクリート部材中に鉄骨や鉄筋などの鋼材が埋設されてなる鋼材コンクリート構造物の塩害検知システムであって、
    鋼材コンクリート構造物の内部に埋設された検知装置と、
    前記鋼材コンクリート構造物の外部に設けられたモニタ装置とを備え、
    前記検知装置は、
    第1周波数の電磁波を受波し、該電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換するエネルギー変換手段と、
    前記電気エネルギーによって駆動し、周囲のpH値或いは塩化物イオン濃度値のうちの少なくとも何れか一方を物理量として検出し、該検出結果に対応する電気信号を出力するセンサ部と、
    前記電気エネルギーによって駆動し、前記センサ部から出力される電気信号に基づいて前記検出結果を検知情報として第2周波数の電磁波を用いて送信する送信手段とを備え、
    前記モニタ装置は、
    前記第1周波数の電磁波を輻射する電磁波輻射手段と、
    前記第2周波数の電磁波を受信する受信手段と、
    前記受信手段によって受信した電磁波から前記検知情報を検出する手段とを備えている
    ことを特徴とする鋼材コンクリート構造物の塩害検知システム。
  2. 前記モニタ装置は、前記鋼材コンクリート構造物に異常がない状態のときの定常状態における前記検出結果の許容範囲を基準値として記憶している基準値記憶手段と、
    前記基準値と前記検出結果とを比較することにより、前記検出結果が前記許容範囲外となったときに異常を検出する異常検出手段とを備えている
    ことを特徴とする請求項1に記載の鋼材コンクリート構造物の塩害検知システム。
  3. 前記モニタ装置の電磁波輻射手段は、駆動開始後に、所定の時間間隔T1で所定時間t1だけ前記第1周波数の電磁波を1回以上輻射する
    ことを特徴とする請求項1に記載の鋼材コンクリート構造物の塩害検知システム。
  4. 前記検知装置は、前記電気エネルギーが供給されて駆動している間に、前記検出結果を複数回送信する
    ことを特徴とする請求項1に記載の鋼材コンクリート構造物の塩害検知システム。
  5. 前記第1周波数と前記第2周波数は同一周波数に設定されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の鋼材コンクリート構造物の塩害検知システム。
  6. 前記第1周波数と前記第2周波数は互いに異なる周波数に設定されており、
    前記モニタ装置の電磁波輻射手段は、駆動開始後に、連続して前記第1周波数の電磁波を輻射する手段を有し、
    前記検知装置は、前記電気エネルギーが供給されて駆動している間、所定の時間間隔T2で前記検出結果を送信する
    ことを特徴とする請求項1に記載の鋼材コンクリート構造物の塩害検知システム。
  7. 少なくとも前記検知装置のセンサ部は、コンクリート部材内に埋設され、前記コンクリート部材の前記物理量を検出する
    ことを特徴とする請求項1に記載の鋼材コンクリート構造物の塩害検知システム。
  8. 少なくとも前記検知装置のセンサ部は、前記鋼材に装着され、前記鋼材の周囲の前記物理量を検出する
    ことを特徴とする請求項1に記載の鋼材コンクリート構造物の塩害検知システム。
  9. 前記鋼材コンクリート構造物は前記検知装置を複数個備え、
    各検知装置は、個々に固有の識別情報を記憶している識別情報記憶手段を有すると共に、
    前記検知装置の送信手段は、前記検出結果と共に前記識別情報を送信する手段を有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の鋼材コンクリート構造物の塩害検知システム。
  10. コンクリート部材中に鉄骨や鉄筋などの鋼材が埋設されてなる鋼材コンクリート構造物の内部に埋設される検知装置であって、
    第1周波数の電磁波を受波し、該電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換するエネルギー変換手段と、
    前記電気エネルギーによって駆動し、周囲のpH値或いは塩化物イオン濃度値のうちの少なくとも何れか一方を物理量として検出し、該検出結果に対応する電気信号を出力するセンサ部と、
    前記電気エネルギーによって駆動し、前記センサ部から出力される電気信号に基づいて前記検出結果を検知情報として第2周波数の電磁波を用いて送信する送信手段とを備えている
    ことを特徴とする検知装置。
  11. 前記電気エネルギーが供給されて駆動している間、所定の時間間隔T2で前記検出結果を複数回送信する
    ことを特徴とする請求項10に記載の検知装置。
  12. 自己に固有の識別情報を記憶している識別情報記憶手段を有すると共に、
    前記送信手段は、前記検出結果と共に前記識別情報を送信する手段を有する
    ことを特徴とする請求項10に記載の検知装置。
  13. コンクリート部材中に鉄骨や鉄筋などの鋼材が埋設されてなる鋼材コンクリート構造物において、
    第1周波数の電磁波を受波し、該電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換するエネルギー変換手段と、
    前記電気エネルギーによって駆動し、周囲のpH値或いは塩化物イオン濃度値のうちの少なくとも何れか一方を物理量として検出し、該検出結果に対応する電気信号を出力するセンサ部と、
    前記電気エネルギーによって駆動し、前記センサ部から出力される電気信号に基づいて前記検出結果を検知情報として第2周波数の電磁波を用いて送信する送信手段とを有する検知装置を備えている
    ことを特徴とする鋼材コンクリート構造物。
  14. 前記検知装置のセンサ部は、コンクリート部材に埋設され、前記コンクリート部材内の前記物理量を検出する
    ことを特徴とする請求項13に記載の鋼材コンクリート構造物。
  15. 前記検知装置のセンサ部は、前記鋼材に装着され、前記鋼材の周囲の前記物理量を検出する
    ことを特徴とする請求項13に記載の鋼材コンクリート構造物。
  16. 前記検知装置を複数個備え、
    各検知装置は、個々に固有の識別情報を記憶している識別情報記憶手段を有すると共に、
    前記検知装置の送信手段は、前記検出結果と共に前記識別情報を送信する手段を有する
    ことを特徴とする請求項13に記載の鋼材コンクリート構造物。
  17. 鋼材コンクリート構造物が、橋桁の繋ぎ目部分に伸縮装置が設けられている橋梁であり、前記検知装置が前記伸縮装置を橋桁に固定するコンクリートの内部に設けられている
    ことを特徴とする請求項13に記載の鋼材コンクリート構造物。
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