JP6007500B2 - センサー装置 - Google Patents
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Description
施工直後のコンクリート構造物中のコンクリートは、通常、強アルカリ性を呈する。そのため、施工直後のコンクリート構造物中の鉄筋は、その表面に不動態膜が形成されるため、安定である。しかし、施工後に酸性雨や排気ガス等の影響を受けたコンクリート構造物は、コンクリートが徐々に酸性化していくため、鉄筋が腐食することとなる。
特許文献1に係るセンサー装置では、細線が切断されたタイミングにより、コンクリート構造物中の鉄筋の腐食が始まった時期を知ることは可能である。しかし、特許文献1に係るセンサー装置では、細線が腐食し始めてから切断に至るまでの間に鉄筋の腐食が進行してしまい、鉄筋の腐食前に予防的または計画的な保全を行うことができないという課題があった。
本発明のセンサー装置は、第1の金属材料で構成された第1の電極と、
前記第1の電極に対して離間して設けられ、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料で構成された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との電位差により生じた電荷を蓄積する蓄電部と、
前記蓄電部に蓄積された電荷に応じた電位差を測定する測定部と、
前記蓄電部を前記第1の電極および前記第2の電極に電気的に接続する第1の状態と、前記蓄電部を前記測定部に電気的に接続する第2の状態とを切り換える切換部とを備え、
前記第1の金属材料および前記第2の金属材料は、それぞれ、測定対象部位の環境変化に伴って、表面に不動態膜を形成するか、または、表面に存在した不動態膜を消失させる金属材料であり、
前記蓄電部は、不動態膜の有無による前記第1の電極または前記第2の電極の電位の変化に伴う前記第1の電極と前記第2の電極との電位差により生じた電荷を蓄積することを特徴とする。
特に、蓄電部を第1の電極と第2の電極との電位差に飽和させた状態で、蓄電部に蓄積された電荷に応じた電位差を測定部で測定することにより、第1の電極と第2の電極との電位差により生じる電荷が微小であっても、かかる電位差を測定することができる。また、第1の電極と第2の電極との電位差が外乱等により変動しても、測定部で測定される電位差を安定化することができる。
このようなことから、測定対象部位のpHまたは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを高精度に検知することができる。
特に、第1の金属材料および第2の金属材料が、測定対象部位の環境変化に伴って、表面に不動態膜を形成するか、または、表面に存在した不動態膜を消失させる金属材料であることにより、測定対象部位のpHまたは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを高精度に検知することができる。
これにより、測定部で電位差を測定した後に、蓄電部を速やかに初期状態(蓄積された電荷の量がゼロまたはそれに近い状態)とすることができる。そのため、次回の蓄電部での蓄電のために測定部での測定後に第2の状態から第1の状態へ切り換えるまでの時間長さを短くしつつ、次回の測定部での測定も前回の測定部での測定と同様に高精度に行うことができる。
これにより、測定部で電位差を測定する際に、蓄電部に蓄積された電荷が抵抗器で不本意に消費されるのを防止することができる。
本発明のセンサー装置では、前記測定部は、前記切換部が前記第2の状態であるとき、前記蓄電部に蓄積された電荷に応じた電位差を増幅するオペアンプを有することが好ましい。
これにより、蓄電部に蓄積された電荷に応じた電位差を測定部で測定することができる。
これにより、切換部の切り換えを所望のタイミングで行うことができる。
本発明のセンサー装置では、前記測定部の測定結果に基づいて、測定対象部位のpHまたは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを判断する判断部を備えることが好ましい。
これにより、測定対象部位のpHまたは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを検知することができる。
鉄または鉄系合金(鉄系材料)は比較的安価で入手が容易である。また、例えば、センサー装置をコンクリート構造物の状態測定に用いた場合、第1の金属材料をコンクリート構造物中の鉄筋と同一材料とすることが可能であり、第1の金属材料を鉄筋と同一材料とすることにより、コンクリート構造物中の鉄筋の腐食状態を効果的に検知することができる。
本発明のセンサー装置では、前記第1の金属材料および前記第2の金属材料のいずれか一方は、隙間腐食または孔食を生じるように構成されていることが好ましい。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るセンサー装置の使用状態の一例を示す図、図2は、図1に示すセンサー装置の概略構成を示すブロック図、図3は、図1に示すセンサー装置の平面図、図4は、図3中のA−A線断面図、図5は、図2に示す蓄電部、測定部および切換部(第1の状態)を説明するための回路図、図6は、図2に示す蓄電部、測定部および切換部(第2の状態)を説明するための回路図である。
なお、以下では、本発明のセンサー装置をコンクリート構造物の状態測定に用いる場合を例に説明する。
コンクリート構造物100は、コンクリート101内に複数の鉄筋102が埋設されている。そして、センサー装置1は、コンクリート構造物100のコンクリート101内の鉄筋102付近に埋設されている。なお、センサー装置1は、コンクリート構造物100の打設する際に、コンクリート101の硬化前に鉄筋に固定して埋め込んでもよいし、打設後に硬化したコンクリート101に穿孔して埋め込んでもよい。
また、センサー装置1は、図2に示すように、蓄電部51と、測定部52と、切換部53と、通信部54と、制御部55と、記憶部56と、時刻情報生成部57と、電源部58とを有し、これら(電気回路)が本体2内に収納されている。
(本体)
本体2は、第1の電極3および第2の電極4等を支持する機能を有する。
このような本体2は、図3および図4に示すように、第1の電極3および第2の電極4を支持する基板21を有する。なお、図示しないが、基板21は、蓄電部51、測定部52、切換部53、通信部54、制御部55、記憶部56、時刻情報生成部57および電源部58も支持する。
この基板21上には、例えばソルダーレジストのような絶縁性の樹脂組成物で構成された絶縁層23が設けられている(図4参照)。そして、この絶縁層23を介して基板21上には、第1の電極3および第2の電極4が実装されている。
この導体部61は、第1の電極3に電気的に接続されている。また、導体部62は、第2の電極4に電気的に接続されている。
また、本体2は、蓄電部51、測定部52、切換部53、通信部54、制御部55、記憶部56、時刻情報生成部57および電源部58を収納する機能を有する。
具体的には、図3および図4に示すように、本体2は、封止部24を有する。この封止部24は、蓄電部51、測定部52、切換部53、通信部54、制御部55、記憶部56、時刻情報生成部57および電源部58を封止する機能を有する。これにより、センサー装置1を水分やコンクリートの存在下に設置した場合に、蓄電部51、測定部52、切換部53、通信部54、制御部55、記憶部56、時刻情報生成部57および電源部58の劣化を防止することができる。
なお、封止部24は、必要に応じて設ければよく、省略することもできる。
第1の電極3および第2の電極4は、図4に示すように、それぞれ、前述した本体2の外表面上(より具体的には基板21上)に設けられている。特に、第1の電極3および第2の電極4は、同一平面上に設けられている。そのため、第1の電極3および第2の電極4の設置環境の差が生じるのを防止することができる。
本実施形態では、第1の電極3および第2の電極4は、それぞれ、薄膜状をなしている。また、第1の電極3および第2の電極4の平面視形状は、それぞれ、四角形をなしている。また、第1の電極3および第2の電極4は、平面視にて、互いの形状および面積が等しくなっている。
Feは、pHが9よりも大きいときに不動態膜を形成する。また、FeAl(Al0.8%)系炭素鋼は、pHが4よりも大きいときに不動態膜を形成する。また、Niは、pHが8〜14であるときに不動態膜を形成する。また、Mgは、pHが10.5よりも大きいときに不動態膜を形成する。また、Znは、pHが6〜12であるときに不動態膜を形成する。
また、第2の金属材料は、前述した第1の金属材料と異なる金属材料であれば、不動態膜を形成するものであってもよいし、不動態膜を形成しないものであってもよい。
第2の金属材料が不動態膜を形成するものである場合、第2の金属材料として、上述の第1の金属材料として例示した金属を挙げることができる。
この場合、第1の金属材料は、3以上5以下のpH、または、8以上10以下のpHよりも大きいpHとなったときに不動態膜を形成するものであるのが好ましい。3以上5以下のpH以下か否かを検知することにより、第1の電極3および第2の電極4の設置環境が酸性状態になってしまったことを知ることができる。また、8以上10以下のpH以下か否かを検知することにより、第1の電極3および第2の電極4の設置環境が酸性状態に近付いていることを事前に知ることができる。
このような第1の電極3および第2の電極4は、それぞれ、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等により形成することができる。
蓄電部51は、前述した第1の電極3と第2の電極4との電位差により生じた電荷を蓄積する機能を有する。また、蓄電部51は、蓄電部51に蓄積した電荷を放出する機能を有する。
この蓄電部51は、後述する第1の状態の切換部53を介して、第1の電極3および第2の電極4に電気的に接続される。これにより、第1の電極3と第2の電極4との電位差に応じた電荷を蓄電部51に蓄積することができる。
このような蓄電部51は、第1の電極3と第2の電極4との電位差により生じた電荷のような微小な電荷を蓄積・放出(充放電)できるものであれば、特に限定されず、各種コンデンサ(キャパシタ)を用いることができる。
また、蓄電部51に用いるコンデンサは、第1の電極3および第2の電極4の電極面の面積、測定部52での測定期間同士の間の時間間隔等に応じて、容量が設定される。例えば、第1の電極3および第2の電極4の電極面の面積が大きくなるほど、蓄電部51に用いるコンデンサの容量を大きくすることができる。また、測定部52での測定期間同士の間の時間間隔が長くなるほど、蓄電部51に用いるコンデンサの容量を大きくすることができる。
ここで、T1とT2との関係について具体例を挙げて説明すると、例えば、蓄電部51に用いるコンデンサの容量Cを5[μF]とし、測定時間間隔(第1の期間)T1を1日(86400sec)とし、第1の状態で第1の電極3および第2の電極4から蓄電部51へ流れる電流Iを0.1[nA]とし、第1の電極3と第2の電極4との間の電位差(後述するように第1の電極3のみが卑下した場合の電位差)Vを0.35[V]とし、切換部53に用いるスイッチのリーク電流ILを10[pA]とした場合、T2は、C×V/I=17500[sec]となる。
よって、かかる場合、T2/T1は、0.20である。
測定部52(測定回路)は、蓄電部51に蓄積された電荷に応じた電位差を測定する機能を有する。
この測定部52は、後述する第2の状態の切換部53を介して、蓄電部51に電気的に接続される。これにより、蓄電部51に蓄積された電荷に応じた電位差を測定部52で測定することができる。
オペアンプ521は、後述するように切換部53が第2の状態であるとき、蓄電部51に蓄積された電荷に応じた電位差を増幅する。これにより、蓄電部51に蓄積された電荷に応じた電位差を測定部52で測定することができる。
なお、測定部52の回路構成は、蓄電部51に蓄積された電荷に応じた電位差を測定し得るものであれば、図示のものに限定されず、例えば、他の回路が付加されていてもよい。
切換部53は、蓄電部51を第1の電極3および第2の電極4に電気的に接続する第1の状態(以下、単に「第1の状態」という)と、蓄電部51を測定部52に電気的に接続する第2の状態(以下、単に「第2の状態」という)とを切り換える機能を有する。
図5に示すように、切換部53が第1の状態であるとき、第1の電極3と第2の電極4との電位差に応じた電荷を蓄電部51に蓄積することができる。
特に、蓄電部51を第1の電極3と第2の電極4との電位差に飽和させた状態で、蓄電部51に蓄積された電荷に応じた電位差を測定部52で測定することにより、第1の電極3と第2の電極4との電位差により生じる電荷が微小(例えば電位差が0.35V程度)であっても、かかる電位差を測定することができる。また、第1の電極3と第2の電極4との電位差が外乱等により変動しても、測定部52で測定される電位差を安定化することができる。
スイッチ531は、蓄電部51(より具体的にはコンデンサ511の一方の電極)を第1の電極3に電気的に接続する状態と測定部52(より具体的にはオペアンプ521の一方の入力端子)に電気的に接続する状態とを切り換え可能に構成されている。
そして、これらのスイッチ531、532の切り換えは、後述する制御部55により制御される。
通信部54は、無線通信機能を有する。
より具体的に説明すると、通信部54は、前述した第1の電極3と第2の電極4との電位差に基づく測定情報を無線送信する機能を有する。この無線送信された測定情報は、図示しないホストで受信される。
また、通信部54は、図示しないホストから無線送信された時刻情報を受信する機能をさらに有していてもよい。この場合、この受信した時刻情報は、後述する時刻情報生成部57の時刻の補正に用いることができる。これにより、時刻情報生成部57およびホストの時刻を合わせることにより、センサー装置1およびホストの動作を簡単かつ確実に同期させることができる。そのため、センサー装置1を無駄なく動作させ、センサー装置1の消費電力を抑えることができる。
アンテナ541は、特に限定されないが、例えば、金属材料、カーボン等で構成され、巻線、薄膜等の形態をなす。なお、アンテナ541は、送信および受信に共通して1つのアンテナで構成されていてもよいし、送信および受信のそれぞれに対応して2つのアンテナで構成されていてもよい。
また、通信部54は、コンクリート構造物100内での無線通信が可能であれば、特に限定されないが、LF帯域(30kHz〜300kHz)の搬送波を用いるものが好ましい。これにより、センサー装置1の消費電力を抑えつつ、センサー装置1とホストとの通信可能な距離を大きくすることができる。
制御部55は、センサー装置1を構成する各部を制御する機能を有する。
より具体的に説明すると、制御部55は、前述した切換部53の切り換えを制御する機能を有する。これにより、切換部53の切り換えを所望のタイミングで行うことができる。
この制御部55は、特に限定されないが、例えば、MPUで構成されている。
そして、制御部55は、例えば、後述する記憶部56に記憶されたプログラムに基づいて、センサー装置1を構成する各部を制御する。
記憶部56は、センサー装置1の各部を制御するためのプログラムが予め記憶されている。
なお、記憶部56には、複数のプログラムが予め記憶され、制御部55が、図示しないホストからの指示情報に基づいて、複数のプログラムのうちの1つのプログラムを選択して実行してもよい。例えば、記憶部56には、切換部53の第1の状態の時間長さが異なる複数のプログラムが記憶されていてもよい。この場合、例えば、平常時には、切換部53の第1の状態の時間長さが長い(例えば1日〜1週間程度)のプログラムを用い、所望時(非常時)には、切換部53の第1の状態の時間長さが短い(例えば数時間程度)のプログラムを用いる。
このような記憶部56は、特に限定されず、不揮発性メモリ、揮発性メモリのいずれも用いることができるが、電力を供給しなくても情報を記憶した状態を保持することができ、省電力化を図ることができるという観点から、不揮発性メモリを用いるのが好ましく、特に、省電力で情報の読み書きができるという観点から、フラッシュメモリを用いるのが好ましい。
時刻情報生成部57は、時刻情報(クロック信号)を生成する機能を有する。これにより、時刻情報生成部57の時刻情報に基づいて、制御部55がセンサー装置1の各部を制御することができる。
この時刻情報生成部57は、特に限定されないが、例えば、水晶振動子を利用した発振回路で構成されている。これにより、時刻情報生成部57は比較的省電力で時刻情報を生成することができる。
電源部58は、センサー装置1を構成する各部に電力を供給するものである。
このような電源部58としては、特に限定されないが、例えば、ボタン型電池のような電池を用いることができ、特に、電池動作寿命が比較的長いという観点から、リチウム電池を用いるのが好ましい。
図7は、図1に示すセンサー装置の作用の一例を説明するための図、図8(a)は、図5および図6に示す蓄電部に蓄積された電荷量の変遷を示す図、図8(b)は、図5および図6に示す切換部の切り換えタイミングを示す図である。
打設直後のコンクリート構造物100において、通常、適切に打設されていれば、コンクリート101は強アルカリ性を呈する。そのため、このとき、図7(a)に示すように、第1の電極3および第2の電極4は、それぞれ、安定な不動態膜を形成する。すなわち、図7(a)に示すように、第1の電極3は、その表面に不動態膜31が形成され、第2の電極4は、その表面に不動態膜41が形成される。これにより、第1の電極3および第2の電極4の自然電位がそれぞれ上がっている(貴化している)。その結果、コンクリートの打設直後における第1の電極3と第2の電極4との電位差は小さくなる。
そして、コンクリート101のpHが9程度にまで下がると、図7(b)に示すように、第2の電極4は、その不動態膜41が安定であり、自然電位の変化が少ないものの、第1の電極3は、その不動態膜が崩壊し始め、自然電位が下がる(卑化する)。これにより、第1の電極3と第2の電極4との電位差が大きくなる。
このような検知結果を利用することにより、コンクリート構造物100の打設後の品質の経時変化をモニタリングすることができる。そのため、鉄筋102が腐食する前に、コンクリート101の劣化(中性化や塩分侵入)を把握することができる。これにより、鉄筋102が腐食する前に、コンクリート構造物100に塗装や防腐剤混入モルタル等による補修工事を行うことが可能となる。
また、コンクリート構造物100の打設時に異常があった否かを判断することもできる。そのため、コンクリート構造物100の初期トラブルを防止し、コンクリート構造物100の品質を向上させることができる。
また、第1の電極3と第2の電極4との電位差に基づいて、測定対象物であるコンクリート構造物100の第1の電極3および第2の電極4が埋設された部位のpHが設定値以下か否かを検知することができる。また、第1の電極3と第2の電極4との電位差に基づいて、測定対象物であるコンクリート構造物100の品質を測定することができる。これにより、コンクリート構造物100のpH変化に伴う状態変化を検知することができる。
また、第1の電極3および第2の電極4の設置環境の塩化物イオン濃度変化に伴う不動態膜破壊(消失)により第1の電極3と第2の電極4との電位差が急峻に変化する。そのため、第1の電極3および第2の電極4の設置環境の塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを正確に検知することができる。
上述したような第1の電極3と第2の電極4との電位差は、微小であり、かつ、第1の電極3および第2の電極4の電極面積が小さいため、測定部52で直接的に測定することが難しい。
そこで、本発明に係るセンサー装置1では、第1の期間(測定部52での測定期間同士の間の時間間隔)では、切換部53を第1の状態(図5参照)とすることにより、第1の電極3と第2の電極4との電位差により生じた電荷が蓄電部51に蓄積される。
ここで、第1の期間は、特に限定されないが、例えば、平常時には1日〜1週間程度に設定される。
この第2の期間内に、測定部52では、蓄電部51の電位差に応じた信号がオペアンプ521から出力される。このとき、図8(a)に示すように、蓄電部51に蓄積された電荷が抵抗器522にも放出・消費される。
以上のような第1の期間および第2の期間を交互に繰り返すことにより、長期にわたり、コンクリート構造物100の状態を測定することができる。
特に、蓄電部51を第1の電極3と第2の電極4との電位差に飽和させた状態で、蓄電部51に蓄積された電荷に応じた電位差を測定部52で測定することにより、第1の電極3と第2の電極4との電位差により生じる電荷が微小であっても、かかる電位差を測定することができる。また、第1の電極3と第2の電極4との電位差が外乱等により変動しても、測定部52で測定される電位差を安定化することができる。
このようなことから、測定対象部位のpHまたは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを高精度に検知することができる。そのため、コンクリート構造物100の状態を測定し、その測定結果に基づく情報を鉄筋102の腐食前の計画的または予防的な保全に活用することができる。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図9は、本発明の第2実施形態に係るセンサー装置の蓄電部、測定部および切換部(第2の状態)を説明するための回路図である。
以下、第2実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態のセンサー装置1Aは、蓄電部51に蓄積された電荷に応じた電位差を測定する機能を有する測定部52Aを有する。
本実施形態では、測定部52Aは、オペアンプ521で構成されている。ここで、測定部52Aは、前述した第1実施形態の測定部52において、抵抗器522を省略したものである。
以上説明したような第2実施形態のセンサー装置1Aによっても、コンクリート構造物100の状態を測定し、その測定結果に基づく情報を鉄筋102の腐食前の計画的または予防的な保全に活用することができる。
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
図10は、本発明の第3実施形態に係るセンサー装置の蓄電部、測定部および切換部(第2の状態)を説明するための回路図、図11(a)は、図10に示す蓄電部に蓄積された電荷量の変遷を示す図、図11(b)は、図10に示す切換部の切り換えタイミングを示す図、図11(c)は、図10に示す測定部のスイッチの切り換えタイミングを示す図である。
第3実施形態のセンサー装置は、測定部の構成が異なる以外は、第1実施形態のセンサー装置とほぼ同様である。なお、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
この測定部52Bは、第2の状態の切換部53を介して、蓄電部51に電気的に接続される。これにより、蓄電部51に蓄積された電荷に応じた電位差を測定部52Bで測定することができる。
スイッチ523は、蓄電部51と抵抗器522との間に設けられた開閉可能なスイッチである。これにより、測定部52Bで電位差を測定する際に、蓄電部51に蓄積された電荷が抵抗器522で不本意に消費されるのを防止することができる。
具体的に説明すると、センサー装置1Bでは、第1の期間後の第2の期間(測定部52Bでの測定期間)では、切換部53を第2の状態とすることにより、蓄電部51に蓄積された電荷が測定部52Bに供給される。
その後(オペアンプ521からの出力完了後)、スイッチ523をONとすることにより、蓄電部51に蓄積された電荷が抵抗器522に放出・消費される。これにより、測定部52Bで電位差を測定した後に、蓄電部51を速やかに初期状態(蓄積された電荷の量がゼロまたはそれに近い状態)とすることができる。
以上、本発明のセンサー装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、前述した実施形態では第1の電極および第2の電極がそれぞれ基板上に設けられた場合を例に説明したが、これに限定されず、例えば、第1の電極および第2の電極は、例えば、センサー装置の本体の封止樹脂で構成された部分の外表面上に設けてもよい。
また、前述した実施形態では第1の電極と第2の電極との電位差に関する情報をアクティブタグ通信により無線送信によりセンサー装置外部へ送信する場合を例に説明したが、これに限定されず、例えば、パッシブタグ通信を用いて情報をセンサー装置の外部へ送信してもよいし、有線により情報をセンサー装置の外部へ送信してもよい。
Claims (8)
- 第1の金属材料で構成された第1の電極と、
前記第1の電極に対して離間して設けられ、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料で構成された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との電位差により生じた電荷を蓄積する蓄電部と、
前記蓄電部に蓄積された電荷に応じた電位差を測定する測定部と、
前記蓄電部を前記第1の電極および前記第2の電極に電気的に接続する第1の状態と、前記蓄電部を前記測定部に電気的に接続する第2の状態とを切り換える切換部とを備え、
前記第1の金属材料および前記第2の金属材料は、それぞれ、測定対象部位の環境変化に伴って、表面に不動態膜を形成するか、または、表面に存在した不動態膜を消失させる金属材料であり、
前記蓄電部は、不動態膜の有無による前記第1の電極または前記第2の電極の電位の変化に伴う前記第1の電極と前記第2の電極との電位差により生じた電荷を蓄積することを特徴とするセンサー装置。 - 前記測定部は、前記切換部が前記第2の状態であるとき、前記蓄電部に蓄積された電荷の放出を促進させる抵抗器を有する請求項1に記載のセンサー装置。
- 前記測定部は、前記蓄電部と前記抵抗器との間に設けられた開閉可能なスイッチを有する請求項2に記載のセンサー装置。
- 前記測定部は、前記切換部が前記第2の状態であるとき、前記蓄電部に蓄積された電荷に応じた電位差を増幅するオペアンプを有する請求項1ないし3のいずれかに記載のセンサー装置。
- 前記切換部の切り換えを制御する機能を有する制御部を備える請求項1ないし4のいずれかに記載のセンサー装置。
- 前記測定部の測定結果に基づいて、測定対象部位のpHまたは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを判断する判断部を備える請求項1ないし5のいずれかに記載のセンサー装置。
- 前記第1の金属材料は、鉄または鉄系合金である請求項1ないし6のいずれかに記載のセンサー装置。
- 前記第1の金属材料および前記第2の金属材料のいずれか一方は、隙間腐食または孔食を生じるように構成されている請求項1ないし7のいずれかに記載のセンサー装置。
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JP2012023459A JP6007500B2 (ja) | 2012-02-06 | 2012-02-06 | センサー装置 |
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