JP3847300B2 - コンクリート中の鋼材の腐蝕予測装置及び腐蝕予測方法 - Google Patents
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しかしながら、特許文献1の推定方法では、コンクリート中の鉄筋や鉄骨等に腐蝕が生じてからでなければ、腐食状況を推定することができないため、事前の補修対策に繋げることが難しく、またコンクリートの中性化や塩化物イオン等の浸透がどの程度進んでいるかも予測できないという問題があった。
しかしながら、細線はコンクリート中に埋設されているため、たとえ、細線に腐蝕が生じ始めても、空気中で両端が支持されている場合ほど、確実な切断状態にはならず、したがって、細線の両側の電位差も、それほど明瞭に生じるものではなく、このような特許文献2の方法によっては、コンクリート中の鋼材の腐蝕状況を予測することは難しい。
また、たとえ細線の両側の電位差を測定して細線の切断時を測定できたとしても、この細線の切断と、そのコンクリート被り位置での鋼材の腐食進行状況との関係は必ずしも明確ではなく、鋼材の腐食の程度を詳細に推定することはできない。
本発明において、不溶性と導電性を有する材料からなる照合電極と、コンクリート構造物内に配設される鋼材と同種の材料からなる金属試料極とは、互いに接触しないように可能な限り近接して設けられ、これら両電極間にはコンクリートやモルタルが充填され、これらコンクリート等は電解質であるため、試料極と電解質と照合電極とからなる二極電解セルが形成され、この二極電解セルは配線により電位差測定計に接続される。コンクリート構造物の構築直後、両電極間の自然電位の差を繰返し測定する。この測定は、コンクリート中の浅い位置から深い位置までそれぞれ異なる深さに埋設された各電極毎に行われる。このように自然電位差を繰返し測定するなかで、自然電位差に変化が生じた場合には、外部環境の影響を受けてコンクリートが変質し、内部の鉄筋や鉄骨等の鋼材が錆び易くなっているものと判断する。すなわち、コンクリートが外部環境の影響を受けて、例えば、中性化や塩化物イオンの浸透等が生じた場合、金属試料極には錆等の腐蝕が生じる一方で、照合電極には腐蝕は発生せず、両極間の自然電位差には明らかな変化が生じる。また複数の電極は、コンクリート中の浅い位置から深い位置までそれぞれ異なる深さに埋設されているため、どの深さの電極に自然電位差の変化が生じたかを確認するだけで、コンクリートの劣化深さを知ることが可能になった。
また前記照合電極は、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニッケル、銅またはこれらの合金のうちの少なくとも一種類の金属を選択し、選択した金属に白金族金属または金からなる被膜を設けたもので形成しても良く、このように構成すれば、照合電極を金や白金等の高価な金属のみで形成した場合よりも材料コストの低減が図れる。このようなチタン、タンタル、ニオブ等の材料はコンクリート等のアルカリ成分に接触すると表面に不導体被膜を形成するものであるが、白金族金属または金による被膜が設けられているので、この被膜部分では導電性が維持できて、たとえ金等の被膜が部分的に損傷したとしても、自然電位差の測定精度には影響が及ばない。
図1(a)は本発明の腐蝕予測装置1の平面図であり、図1(b)は一点鎖線Ib−Ibに沿った断面図である。腐蝕予測装置1は、図1(a)に示したように、ほぼ平行に所定間隔で並んだ複数の電極2,3,4を両側から枠体5で固定したものである。
各電極2,3,4は、網状材料を筒状に形成してなる筒状網部材2a,3a,4aと、これら各筒状網部材2a,3a,4aに接触しないように、それぞれの孔内に挿通した棒状部材2b,3b,4bとから構成される。ここで、筒状網部材2a,3a,4aは、測定対象となるコンクリート構造物の鉄筋や鉄骨等の鋼材と同種材質の鋼材から形成されたものを使用し、一方、棒状部材2b,3b,4bはコンクリート中においても溶解反応を生じない不溶性材料であり且つ導電性材料、例えば、金、白金、パラジュウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、炭素などのうちの少なくとも一種類の材料から形成されたものを使用する。つまり、筒状網部材2a,3a,4aは金属試料極として用いられ、棒状部材2b,3b,4bは照合電極として用いられるものである。
上記のように腐蝕予測装置1をコンクリート8中に埋設し、各電極2,3,4から配線を延長して電位差測定計7に接続し、所定期間毎に繰返し測定を行う。この測定間隔は、例えば、2週間から6カ月毎に行えば良い。
一般的に、中性化や二酸化酸素の浸透等によるコンクリートの劣化は、コンクリート表面から内部に向けて進むものであるため、このように異なる深さで複数の電極2,3,4を配置した場合、それぞれの筒状網部材2a,3a,4aは、被りが浅いものから徐々に錆等の腐食が発生するものと思われる。そして、筒状網部材2a,3a,4aに錆等の腐食が発生すると、棒状部材2b,3b,4bとの間の電位差が電極2,3,4の順にマイナス方向に変化し始め、その順に電位差の変化量も大きくなる。
例えば、ASTM(C876−87)の規準では、コンクリート中の鋼材の不動態化電位は約−200mVvsCSE以上であり、コンクリート中の鋼材の孔食発生臨界電位は約−200mVvsCSE以下、中程度の腐食は−200〜−350mVvsCSE程度で発生し、90%以上の確率で腐食が生じるのは−350〜−500mVvsCSE程度であり、−500mVvsCSE以下では著しい腐食が生じるとされている。このようなASTM(C876−87)の規準にしたがって、コンクリート被り各位置における腐食状況を詳細に推定することができる。
したがって、このような変化が生じた電極2,3,4の深さまで、コンクリートの劣化が進んだものと推定し、このようなコンクリート劣化が鉄筋等の鋼材やコンクリート構造物に致命的な影響を及ぼす前にコンクリート構造物に適切な対策を施す。
2,3,4 電極
2a,3a,4a 筒状網部材(金属試料極)
2b,3b,4b 棒状部材(照合電極)
5 枠体
6a,6b 配線
7 電位差測定計
8 コンクリート
9 鉄筋
Claims (5)
- コンクリート構造物内に配設される鋼材と同種の材料からなる金属試料極と、コンクリート中において溶解反応を生じない不溶性材料であり且つ導電性材料からなる照合電極とを、所定長離隔して二極電解セルを形成し、該二極電解セルの複数がコンクリート構造物中の鋼材の被り深さよりも浅い位置から深い位置の複数箇所にほぼ平行に段階的に埋設され、各二極電解セルは配線により電位差測定計に接続され得るものであるコンクリート中の鋼材の腐蝕予測装置。
- 前記照合電極は、金、白金、パラジュウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、炭素などの対コンクリート不溶性材料のうちの少なくとも一種類の材料から形成するか、あるいはチタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニッケル、銅などの対コンクリート不溶性材料のうちの少なくとも一種類の金属に白金族金属または金からなる被膜を設けたもので形成したことを特徴とする請求項1に記載の鋼材の腐蝕予測装置。
- 前記金属試料極及び前記照合電極が、板状、棒状、あるいは網状に形成されたものである請求項1に記載の鋼材の腐蝕予測装置。
- 前記金属試料極及び前記照合電極の一方は、網状材が筒状に形成されたものであり、他方の電極は棒状材または線材に形成されたものであり、該棒状材または線材の電極が前記筒状電極の孔内に接触しないように挿通されたものである請求項1に記載の鋼材の腐蝕予測装置。
- コンクリート構造物内に配設される鋼材と同種の材料からなる金属試料極と、コンクリート中において溶解反応を生じない不溶性材料であり且つ導電性材料からなる照合電極とを、所定長離隔して二極電解セルを形成し、該二極電解セルの複数をコンクリート構造物中の鋼材の被り深さよりも浅い位置から深い位置の複数箇所にほぼ平行に段階的に埋設し、各二極電解セルにおける前記照合電極に対する金属試料極の電位差を測定し、各二極電解セルが配置されたコンクリート深さにおけるコンクリート変質の程度を推定することによりコンクリート中の鋼材の腐蝕を予測する方法。
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