以下、本発明のセンサー装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るセンサー装置の使用状態の一例を示す図、図2は、図1に示すセンサー装置の概略構成を示すブロック図、図3は、図2に示す第1の電極、第2の電極および機能素子を説明するための平面図、図4は、図2に示す第1の電極、第2の電極を説明するための断面図(図3中のA−A線断面図)、図5は、図2に示す機能素子を説明するための断面図(図3中のB−B線断面図)、図6(a)は、図2に示す第1の電極の構成の一例を示す拡大断面図、図6(b)は、図2に示す第2の電極の構成の一例を示す拡大断面図、図7および図8は、それぞれ、図2に示す機能素子に備えられた差動増幅回路を示す回路図、図9(a)は、FeのpHおよび電位と状態との関係の一例を示す図、図9(b)は、FeAlのpHおよび電位と状態との関係の一例を示す図、図10は、図1に示すセンサー装置の作用の一例を説明するための図である。
なお、以下では、本発明のセンサー装置をコンクリート構造物の品質測定に用いる場合を例に説明する。
図1に示すセンサー装置1は、コンクリート構造物100の品質を測定するものである。
コンクリート構造物100は、コンクリート101内に複数の鉄筋102が埋設されている。そして、センサー装置1は、コンクリート構造物100のコンクリート101内の鉄筋102付近に埋設されている。なお、センサー装置1は、コンクリート構造物100を打設する際に、コンクリート101の打設前に鉄筋に固定して埋め込んでもよいし、打設後に硬化したコンクリート101に穿孔して埋め込んでもよい。
このセンサー装置1は、本体2と、その本体2の表面に露出した第1の電極3および第2の電極4とを有する。本実施形態では、第1の電極3および第2の電極4は、鉄筋102よりもコンクリート構造物100の外表面側において、コンクリート構造物100の外表面からの距離が互いに等しくなるように設置されている。また、第1の電極3および第2の電極4は、それぞれ、電極面がコンクリート構造物100の外表面に平行または略平行となるように設置されている。そして、第1の電極3および第2の電極4は、コンクリート101の測定対象部位のpH変化に伴って、これらの間の電位差が変化するように構成されている。なお、第1の電極3および第2の電極4については、後に詳述する。
また、センサー装置1は、図2に示すように、第1の電極3および第2の電極4に電気的に接続された機能素子51と、電源52と、温度センサー53と、通信用回路54と、アンテナ55と、発振器56とを有し、これらが本体2内に収納されている。
以下、センサー装置1を構成する各部を順次説明する。
(本体)
本体2は、第1の電極3、第2の電極4および機能素子51等を支持する機能を有する。
このような本体2は、図4および図5に示すように、第1の電極3、第2の電極4および機能素子51を支持する基板21を有する。なお、基板21は、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56をも支持するが、図3〜5では、説明の便宜上、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56の図示を省略している。
この基板21は、絶縁性を有する。基板21としては、特に限定されず、例えば、アルミナ基板、樹脂基板等を用いることができる。
この基板21上には、例えばソルダーレジストのような絶縁性の樹脂組成物で構成された絶縁層23が設けられている。そして、この絶縁層23を介して基板21上には、第1の電極3、第2の電極4および機能素子51が実装されている。
図5に示すように、この基板21上には、機能素子51(集積回路チップ)が保持され、機能素子51の導体部61、62(電極パッド)が第1の電極3および第2の電極4と接続されている。
この導体部61は、第1の電極3と導体部516a、516d、および、トランジスタ514aのゲート電極とを電気的に接続している。また、導体部62は、第2の電極4と導体部516b、516e、および、トランジスタ514bのゲート電極とを電気的に接続している。第1の電極3と第2の電極4は、各々、トランジスタ514a、514bのゲート電極と接続しているためフローテイング状態にある。515aと515bは、集積回路の層間絶縁膜であり、25は、集積回路の保護膜である。
また、本体2は、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56を収納する機能を有する。
特に、本体2は、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56を液密的に収納するように構成されている。
具体的には、図4および図5に示すように、本体2は、封止部24を有する。この封止部24は、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56を封止する機能を有する。これにより、センサー装置1を水分やコンクリートの存在下に設置した場合に、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56の劣化を防止することができる。
ここで、封止部24は、開口部241を有し、この開口部241から第1の電極3および第2の電極4を露出させつつ、第1の電極3および第2の電極4以外の各部を覆うように設けられている(図3および図4参照)。これにより、封止部24が第1の電極3および第2の電極4以外の各部の劣化を防止しつつ、センサー装置1が測定を行うことができる。なお、開口部241は、第1の電極3の少なくとも一部および第2の電極4の少なくとも一部を露出するように形成されていればよい。
封止部24の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂のような熱可塑性樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂のような熱硬化性樹脂等の各種樹脂材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、封止部24は、必要に応じて設ければよく、省略することもできる。
(第1の電極、第2の電極)
第1の電極3および第2の電極4は、図4に示すように、それぞれ、前述した本体2の外表面上(より具体的には基板21上)に設けられている。特に、第1の電極3および第2の電極4は、同一平面上に設けられている。そのため、第1の電極3および第2の電極4の設置環境の差が生じるのを防止することができる。
また、第1の電極3および第2の電極4は、互いに電位の影響を受けない程度(例えば数mm)に離間している。
本実施形態では、第1の電極3および第2の電極4は、それぞれ、薄膜状をなしている。また、第1の電極3および第2の電極4の平面視形状は、それぞれ、四角形をなしている。また、第1の電極3および第2の電極4は、平面視にて、互いの形状および面積が等しくなっている。
特に、第1の電極3は、図6(a)に示すように、複数の空孔31を有する多孔質体32で構成されている。そして、複数の空孔31は、隣接する空孔31同士が連通する連続空孔(細孔)をなし、その連続空孔が第1の電極3の表面に開口している。
同様に、第2の電極4は、図6(b)に示すように、複数の空孔41を有する多孔質体42で構成されている。そして、複数の空孔41は、隣接する空孔41同士が連通する連続空孔(細孔)をなし、その連続空孔が第2の電極4の表面に開口している。
このような連続空孔により第1の電極3および第2の電極4の表面積をそれぞれ大きくすることができる。そのため、第1の電極3および第2の電極4にそれぞれ付着する水分量を多くすることができる。
また、細孔による毛管凝縮効果により、より低い相対湿度で、第1の電極3上および第2の電極4上にそれぞれ水分を結露させることができる。そのため、第1の電極3上および第2の電極4上に安定して液体の水を存在させることができる。すなわち、仮に第1の電極3および第2の電極4が緻密体で構成された場合に第1の電極3上および第2の電極4上に結露が生じないような低い相対湿度においても、第1の電極3上および第2の電極4上にそれぞれ結露させて液体の水を存在させることができる。
このようなことから、外部環境の湿度や温度の変化に伴ってコンクリート101内の相対湿度が変化しても、第1の電極3上および第2の電極4上の水分量の変動を防止することができる。その結果、外部環境の湿度や温度の変化によって第1の電極3および第2の電極4の自然電位が変動するのを防止し、コンクリート101の測定対象部位の状態を高精度に測定することができる。
また、複数の空孔31および複数の空孔41の平均径は、それぞれ、前述したように毛管凝縮効果を生じ得る範囲であれば、特に限定されないが、例えば、2nm以上50nm以下であるのが好ましい。すなわち、空孔31および空孔41は、それぞれ、メソ孔であるのが好ましい。また、複数の空孔31の平均径と複数の空孔41の平均径とは、互いに同じであっても異なっていてもよい。
さらに、第1の電極3および第2の電極4の空孔率は、それぞれ、前述したように毛管凝縮効果を生じ得る範囲であれば、特に限定されないが、例えば、10%以上90%以下であるのが好ましい。また、第1の電極3の空孔率と第2の電極4の空孔率とは、互いに同じであっても異なっていてもよい。
本実施形態では、第1の電極3および第2の電極4は、互いに異なる材料で構成されている。以下、第1の電極3および第2の電極4の構成材料について詳述する。
第1の電極3は、不動態膜(第1の不動態膜)を形成する第1の金属材料(以下、単に「第1の金属材料」とも言う)で構成されている。このように構成された第1の電極3は、pHの変化によって不動態膜が形成されたり破壊されたりする。このような第1の電極3に不動態膜が形成された状態(不動態化した状態)では不活性(貴)であり、自然電位が高くなる(貴化する)。一方、第1の電極3は、不動態膜が破壊された状態(消失された状態)では活性(卑)である。そのため、第1の電極3の電位は、pH変化に伴う不動態膜の有無により急峻に変化する。
第1の金属材料としては、不動態膜が形成される限り、特に限定されないが、例えば、Fe、Ni、Mg、Znまたはこれらを含む合金等が挙げられる。
例えば、Feは、pHが9よりも大きいときに不動態膜を形成する(図9(a)参照)。また、FeAl(Al0.8%)系炭素鋼は、pHが4よりも大きいときに不動態膜を形成する(図9(b)参照)。また、Niは、pHが8〜14であるときに不動態膜を形成する。また、Mgは、pHが10.5よりも大きいときに不動態膜を形成する。また、Znは、pHが6〜12であるときに不動態膜を形成する。
中でも、第1の金属材料は、FeまたはFeを含む合金(Fe系合金)、すなわち鉄系材料(具体的には、炭素鋼、合金鋼、SUS等)であるのが好ましい。鉄系材料は安価で入手が容易である。また、本実施形態のように、センサー装置1をコンクリート構造物100の状態測定に用いた場合、第1の金属材料をコンクリート構造物100の鉄筋102と同一または近似の材料とすることが可能であり、鉄筋102の腐蝕環境状態を効果的に検知することができる。例えば、第1の電極3がFeで構成されている場合、pHが9以上か否かの判断ができる。
一方、第2の電極4は、第1の金属材料とは異なる第2の金属材料(以下、単に「第2の金属材料」とも言う)で構成されている。このように構成された第2の電極4は、前述したように不動態膜の有無により第1の電極3の電位が変化する際に、不導体膜の形成や破壊(消失)が無く、急激な電位の変化がない。そのため、前述したように不動態膜の有無により第1の電極3の電位が変化する際に、第1の電極3と第2の電極4との電位差が急峻に変化する。そのため、第1の電極3および第2の電極4の設置環境(本実施形態ではコンクリート101の鉄筋102付近)のpHが設定値以下か否かを正確に検知することができる。
第2の金属材料としては、第1の金属材料とは不動態膜形成・消失のpH依存が異なる金属材料であり、電極として機能し得るものであれば、特に限定されず、各種金属材料を用いることができる。
また、第2の金属材料は、前述した第1の金属材料と異なる金属材料であれば、不動態膜を形成するものであってもよいし、不動態膜を形成しないものであってもよい。
第2の金属材料が不動態膜(第2の不動態膜)を形成するものである場合、第2の金属材料として、上述の第1の金属材料として例示した金属を挙げることができる。
本発明の好ましい態様においては、第1の金属材料が不動態膜を形成するpHの範囲の下限値を第1のpH(第1の不動態化pH)とし、第2の金属材料が不動態膜を形成するpHの範囲の下限値を第2のpH(第2の不動態化pH)としたとき、第1のpHおよび第2のpHが互いに異なる。すなわち、第1の金属材料は、第1のpHよりも大きいpHとなったときに不動態膜を形成し、第2の金属材料は、第1のpHとは異なる第2のpHよりも大きいpHとなったときに不動態膜を形成する。これにより、第1の電極3および第2の電極4が設置された環境のpHが第1のpH以下か否かおよび第2のpH以下か否かをそれぞれ正確に検知することができる。
この場合、第1のpHが8以上10以下であり、かつ、第2のpHが7以下であるのが好ましい。これにより、第1のpH以下か否かを検知することにより、第1の電極3および第2の電極4の設置環境が中性状態に近付いていることを事前に知ることができる。このようなことから、本実施形態にように、センサー装置1をコンクリート構造物100の状態測定に用いた場合、鉄筋102の腐食防止の対策を事前に行うことができる。また、第2のpH以下か否かを検知することにより、第1の電極3および第2の電極4の設置環境が酸性状態になってしまったことを知ることもできる。
また、この場合、第2の金属材料は、FeまたはFeを含む合金(Fe系合金)、すなわち鉄系材料であるのが好ましい。鉄系材料は安価で入手が容易である。また、本実施形態のように、センサー装置1をコンクリート構造物100の状態測定に用いた場合、第2の金属材料を鉄筋102と同一材料とすることが可能であり、第2の金属材料を鉄筋102と同一材料とすることにより、鉄筋102の腐蝕状態を効果的に検知することができる。
一方、第2の金属材料が不動態膜を形成しないものである場合、第2の金属材料として、Pt、Au等を挙げることができる。第2の金属材料が不動態膜を形成しないものである場合、第1の電極3および第2の電極4の設置環境が強アルカリ状態から強酸性状態へ変化するとき、その変化を1段階で高精度に検知することができる。
この場合、第1の金属材料は、3以上5以下のpH、または、8以上10以下のpHよりも大きいpHとなったときに不動態膜を形成するものであるのが好ましい。3以上5以下のpH以下か否かを検知することにより、第1の電極3および第2の電極4の設置環境が酸性状態になってしまったことを知ることができる。また、8以上10以下のpH以下か否かを検知することにより、第1の電極3および第2の電極4の設置環境が中性状態に近付いていることを事前に知ることができる。
本発明の他の態様によれば、第2の金属材料が不動態膜を形成するものである場合、第1の金属材料の不動態膜破壊が始まる塩化物イオン濃度下限値を第1の塩化物イオン濃度とし、第2の金属材料の不動態膜破壊が始まる塩化物イオン濃度下限値を第2の塩化物イオン濃度としたとき、第1の塩化物イオン濃度および第2の塩化物イオン濃度が互いに異なる。すなわち、第1の金属材料は、第1の塩化物イオン濃度よりも大きくなったときに不動態膜破壊が始まり、第2の金属材料は、第1の塩化物イオン濃度とは異なる第2の塩化物イオン濃度よりも大きくなったときに不動態膜の破壊が始まる。これにより、第1の電極3および第2の電極4が設置された環境の塩化物イオン濃度が第1の塩化物イオン濃度以下か否かおよび第2の塩化物イオン濃度以下か否かをそれぞれ正確に検知することができる。
このようなことから、本実施形態のように、センサー装置1をコンクリート構造物100の状態測定に用いた場合、外部からコンクリート101内に侵入するCO2(中性化)や塩素イオンをコンクリート構造物100中の鉄筋102に届く前に検知できる。従って、鉄筋102が腐食する前に腐食防止の対策を行うことができる。
このような第1の電極3および第2の電極4は、それぞれ、特に限定されず、公知の多孔質体膜の形成方法を用いて形成することができる。なお、図6に示す複数の空孔31および複数の空孔41の形状は、それぞれ、一例であり、前述したように第1の電極3および第2の電極4が毛管凝縮効果を発揮し得るものであれば、図示のものに限定されず、第1の電極3および第2の電極4は、連続空孔を有する公知の各種多孔質体で構成することができる。
(機能素子)
機能素子51は、前述した本体2の内部に埋設されている。なお、機能素子51は、前述した本体2の基板21に対して第1の電極3および第2の電極4とは、同一面に設けても、反対側に設けても良い。
この機能素子51は、第1の電極3と第2の電極4との電位差を測定する機能を有する。これにより、第1の電極3と第2の電極4との電位差に基づいて、第1の電極3および第2の電極4の設置環境のpHが設定値以下か否かを検知することができる。
また、機能素子51は、第1の電極3と第2の電極4との電位差に基づいて、測定対象物であるコンクリート構造物100の測定対象部位のpHあるいは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを検知する機能をも有する。これにより、コンクリート構造物100のpH変化あるいは塩化物イオン濃度変化に伴う状態変化を検知することができる。
このような機能素子51は、例えば、集積回路である。より具体的には、機能素子51は、例えば、MCU(マイクロコントロールユニット)であり、図2に示すように、CPU511と、A/D変換回路512と、差動増幅回路514とを有する。
より具体的に説明すると、機能素子51は、図5に示すように、基板513と、基板513上に設けられた複数のトランジスタ514a、514b、514cと、トランジスタ514a、514b、514cを覆う層間絶縁膜515a、515bと、配線および導体ポストを構成する導体部516a、516b、516c、516d、516e、516fと、保護膜25と、電極パッドを構成する導体部61、62とを有する。
基板513は、例えばSOI基板であり、CPU511およびA/D変換回路512が形成されている。基板513としてSOI基板を用いることにより、トランジスタ514a〜514cをSOI型MOSFETとすることができる。
複数のトランジスタ514a、514b、514cは、それぞれ例えば電界効果トランジスタ(FET)であり、差動増幅回路514の一部を構成するものである。
差動増幅回路514は、図7に示すように、3つのトランジスタ514a〜514cと、カレントミラー回路514dとで構成されている。
また、差動増幅回路514は、図8に示すように、演算増幅器201、202と、演算増幅器203とを有する。
演算増幅器201は、比較用電極7を基準として第1の電極3の電位を検出する。また、演算増幅器202は、比較用電極7を基準として第2の電極4の電位を検出する。また、演算増幅器203は、演算増幅器201の出力電位と演算増幅器202の出力電位との差を検出する。
導体部516aは、その一端がトランジスタ514aのゲート電極に接続され、他端が前述した導体部516dに接続されている。導体部516dは、導体部61を介して第1の電極3に電気的に接続されている。これにより、トランジスタ514aのゲート電極と第1の電極3とが電気的に接続されている。そのため、第1の電極3の電位の変化に応じて、トランジスタ514aのドレイン電流が変化する。
同様に、導体部516bは、その一端がトランジスタ514bのゲート電極に接続され、他端が前述した導体部516eに接続されている。導体部516eは、導体部62を介して第2の電極4に電気的に接続されている。これにより、トランジスタ514bのゲート電極と第2の電極4とが電気的に接続されている。そのため、第2の電極4の電位の変化に応じて、トランジスタ514bのドレイン電流が変化する。
また、導体部516cは、その一端がトランジスタ514cのゲート電極に接続され、他端が前述した導体部516fに接続され、回路の一部を構成している。
また、機能素子51は、電源52からの通電により作動する。電源52は、機能素子51を動作可能な電力を供給できるものであれば、特に限定されず、例えば、ボタン型電池のような電池であってもよいし、圧電素子のような発電機能を有する素子を用いた電源ものであってもよい。
また、機能素子51は、温度センサー53の検知温度情報を取得し得るように構成されている。これにより、測定対象部位の温度に関する情報も得ることができる。このような温度に関する情報を用いることにより、測定対象部位の状態をより正確に測定したり、測定対象部位の変化を高精度に予想したりすることができる。
温度センサー53は、測定対象物であるコンクリート構造物100の測定対象部位の温度を検知する機能を有する。このような温度センサー53としては、特に限定されず、例えば、サーミスター、熱電対等の公知の様々な種類の温度センサーを用いることができる。
また、機能素子51は、通信用回路54を駆動制御する機能をも有する。例えば、機能素子51は、第1の電極3と第2の電極4との電位差に関する情報(以下、単に「電位差情報」ともいう)と、測定対象部位のpHあるいは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かに関する情報(以下、単に「pH情報」ともいう)とをそれぞれ通信用回路54に入力する。また、機能素子51は、温度センサー53によって検知された温度に関する情報(以下、単に「温度情報」ともいう)も併せて通信用回路54に入力する。
通信用回路54は、アンテナ55に給電する機能(送信機能)を有する。これにより、通信用回路54は、入力された情報をアンテナ55を介して無線送信することができる。送信された情報は、コンクリート構造物100の外部に設けられた受信機(リーダー)で受信される。
この通信用回路54は、例えば、電磁波を送信するための送信回路、信号を変調する機能を有する変調回路等を有する。なお、通信用回路54は、信号の周波数を小さく変換する機能を有するダウンコンバータ回路、信号の周波数を大きく変換する機能を有するアップコンバータ回路、信号を増幅する機能を有する増幅回路、電磁波を受信するための受信回路、信号を復調する機能を有する復調回路等を有していてもよい。
また、アンテナ55は、特に限定されないが、例えば、金属材料、カーボン等で構成され、巻線、薄膜等の形態をなす。
また、機能素子51は、発振器56からのクロック信号を取得し得るように構成されている。これにより、各回路の同期をとったり、各種情報に時刻情報を付加したりすることができる。
発振器56は、特に限定されないが、例えば、水晶振動子を利用した発振回路で構成されている。
以上説明したように構成されたセンサー装置1を用いた測定方法は、第1の電極3および第2の電極4を測定対象物であるコンクリート構造物100内にそれぞれ埋設し、第1の電極3と第2の電極4との電位差に基づいて、コンクリート構造物100の状態を測定する。
以下、第1の電極3がFeで構成され、第2の電極4がFeAlで構成されている場合を一例として、センサー装置1の作用を説明する。
打設直後のコンクリート構造物100において、通常、適切に打設されていれば、コンクリート101は強アルカリ性を呈する。そのため、このとき、図9(a)、(b)に示すように、第1の電極3および第2の電極4は、それぞれ、安定な不動態膜を形成する。すなわち、図10(a)に示すように、第1の電極3は、その表面に不動態膜33が形成され、第2の電極4は、その表面に不動態膜43が形成される。これにより、第1の電極3および第2の電極4の自然電位がそれぞれ上がっている(貴化している)。その結果、コンクリートの打設直後における第1の電極3と第2の電極4との電位差は小さくなる。
その後、コンクリート構造物100は、二酸化炭素、酸性雨、排気ガス等の影響により、コンクリート101のpHが徐々に酸性側に変化していく。
そして、コンクリート101のpHが9程度にまで下がると、図10(b)に示すように、第2の電極4は、その不動態膜43が安定であり、自然電位の変化が少ないものの、第1の電極3は、その不動態膜が崩壊し始め、自然電位が下がる(卑化する)。これにより、第1の電極3と第2の電極4との電位差が大きくなる。
また、コンクリート101のpHが4程度まで下がると、図10(c)に示すように、第2の電極4も、その不動態膜が崩壊し始め、自然電位が下がる。このとき、第1の電極3および第2の電極4は、ともに自然電位が下がっているので、第1の電極3と第2の電極4との電位差は、再び小さくなる。なお、このとき、第1の電極3および第2の電極4の腐蝕がそれぞれ進む。
このように、pHが9程度となるタイミングと、pHが4程度となるタイミングとの2つのタイミングで、第1の電極3と第2の電極4との電位差が急峻に変化する。そのため、測定対象部位のpHが9程度となったこと、および、測定対象部位のpHが4程度となったことをそれぞれ高精度に検知することができる。
このような検知結果を利用することにより、コンクリート構造物100の打設後の品質の経時変化をモニタリングすることができる。そのため、鉄筋102が腐蝕する前に、コンクリート101の劣化(中性化や塩分侵入)を把握することができる。これにより、鉄筋102が腐食する前に、コンクリート構造物100に塗装や防腐剤混入モルタル等による補修工事を行うことが可能となる。
また、コンクリート構造物100の打設時に異常があった否かを判断することもできる。そのため、コンクリート構造物100の初期トラブルを防止し、コンクリート構造物100の品質を向上させることができる。
以上説明したように第1実施形態のセンサー装置1によれば、第1の電極3および第2の電極4がそれぞれ連続空孔を有する多孔質体で構成されているので、第1の電極3および第2の電極4の表面積をそれぞれ大きくすることができる。そのため、第1の電極3および第2の電極4にそれぞれ付着する水分量を多くすることができる。
また、第1の電極3および第2の電極4の連続空孔(細孔)による毛管凝縮効果により、より低い相対湿度で、第1の電極3上および第2の電極4上にそれぞれ水分を結露させることができる。そのため、第1の電極3上および第2の電極4上に安定して液体の水を存在させることができる。
このようなことから、外部環境の湿度や温度の変化に伴ってコンクリート101内の相対湿度が変化しても、第1の電極3上および第2の電極4上の水分量の変動を防止することができる。その結果、外部環境の湿度や温度の変化によって第1の電極3および第2の電極4の自然電位が変動するのを防止し、コンクリート101の測定対象部位の状態を高精度に測定することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図11は、本発明の第2実施形態に係るセンサー装置の使用状態の一例を示す図、図12(a)は、図11に示す第1の電極の構成の一例を示す拡大断面図、図12(b)は、図11に示す第2の電極の構成の一例を示す拡大断面図である。
以下、第2実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2実施形態のセンサー装置は、第1の電極および第2の電極の平面視形状および数が異なるとともに、第1の電極の構造が異なる以外は、第1実施形態のセンサー装置とほぼ同様である。なお、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
本実施形態のセンサー装置1Aは、本体2Aと、その本体2Aの表面に露出した複数の第1の電極3a、3b、3cおよび複数の第2の電極4a、4b、4cとを有する。
本実施形態では、第1の電極3a、3b、3cおよび第2の電極4a、4b、4cは、互いに離間して設けられている。また、第1の電極3a、3b、3cおよび第2の電極4a、4b、4cは、それぞれ、電極面がコンクリート構造物100の外表面に対して垂直または略垂直となるように設置されている。
また、複数の第1の電極3a、3b、3cは、コンクリート構造物100の外表面からの距離が互いに異なる。具体的には、コンクリート構造物100の外表面側から内側へ、複数の第1の電極3a、3b、3cがこの順に並んで設けられている。
同様に、複数の第2の電極4a、4b、4cは、コンクリート構造物100の外表面からの距離が互いに異なる。具体的には、コンクリート構造物100の外表面側から内側へ、複数の第2の電極4a、4b、4cがこの順に並んで設けられている。
さらに、第1の電極3aおよび第2の電極4aは、コンクリート構造物100の外表面からの距離が互いに等しくなるように設置されている。また、第1の電極3bおよび第2の電極4bは、コンクリート構造物100の外表面からの距離が互いに等しくなるように設置されている。第1の電極3cおよび第2の電極4cは、コンクリート構造物100の外表面からの距離が互いに等しくなるように設置されている。
このような第1の電極3a、3b、3cおよび第2の電極4a、4b、4cでは、第1の電極3aと第2の電極4aとが対をなし、第1の電極3bと第2の電極4bとが対をなし、第1の電極3cと第2の電極4cとが対をなす。
本実施形態では、センサー装置1Aは、第1の電極3aと第2の電極4aとの電位差、第1の電極3bと第2の電極4bとの電位差、および、第1の電極3cと第2の電極4cとの電位差をそれぞれ図示しない機能素子により測定することができるように構成されている。
ここで、第1の電極3aおよび第2の電極4aの構成について詳述する。なお、第1の電極3b、3cの構成は、それぞれ、第1の電極3aの構成と同様であり、また、第2の電極4b、4cの構成は、それぞれ、第2の電極4aの構成と同様である。
本実施形態では、図12(a)に示すように、第1の電極3aは、隣接する空孔31A同士が連通する連続空孔を有する多孔質体32Aで構成されている。この多孔質体32Aは、基体321と、基体321上に設けられ、基体321と異なる材料で構成された導体膜322とを備える。
このように第1の電極3aを基体321および導体膜322で構成することにより、多孔質体を製造することが難しい金属で導体膜322(第1の電極3aの表面付近)を構成することができる。また、第1の電極3を構成する多孔質体の空孔径を導体膜322の厚さにより調整することもできる。
このような第1の電極3aの基体321の構成材料としては、導電性を有する材料であればよく、前述した第1の実施形態の第1の電極3の構成材料(第1金属材料)の他、導電性セラミックスを用いることもできる。
また、導体膜322の構成材料としては、前述した第1の実施形態の第1の電極3の構成材料(第1金属材料)を用いることができる。
また、このような第1の電極3aは、例えば、多孔質体である基体321を形成し、その基体321上に電界メッキ等を用いて導体膜322を形成することにより得られる。
特に、導体膜322は、測定対象部位の環境変化に伴って、表面に不動態膜を形成するか、または、表面に存在した不動態膜を消失させる金属材料で構成されているのが好ましい。
これにより、測定対象部位のpH変化に伴う不動態膜の有無により第1の電極3aと第2の電極4aとの電位差が急峻に変化する。そのため、測定対象部位のpHが設定値以下か否かを正確に検知することができる。
また、測定対象部位の塩化物イオン濃度変化に伴う不動態膜の消失により第1の電極3aと第2の電極4aとの電位差が急峻に変化する。そのため、測定対象部位の塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを正確に検知することもできる。
一方、図12(b)に示すように、第2の電極4aは、前述した第1実施形態の第2の電極4と同様、隣接する空孔41同士が連通する連続空孔を有する多孔質体42で構成されている。
なお、第2の電極4aも、第1の電極3aと同様、基体と、その基体上に設けられた導体膜とを備える多孔質体で構成されていてもよい。
このような第2実施形態に係るセンサー装置1Aによれば、第1の電極3aおよび第2の電極4aの設置環境、第1の電極3bおよび第2の電極4bの設置環境、および、第1の電極3cおよび第2の電極4cの設置環境のpHがそれぞれ設定値以下か否かを正確に検知することができる。電位差をそれぞれ測定し、そのため、第1の電極3a、3b、3cおよび第2の電極4a、4b、4cの設置環境のpHが設定値以下か否かを正確に検知することができる。すなわち、コンクリート構造物100の外表面からの深さが異なる位置でのpHがそれぞれ設定値以下か否かを正確に検知することができる。これにより、コンクリート101のpHが酸性側に変化する速度を知ることができる。そのため、コンクリート構造物100の中性化(や塩害)の深さ方向への侵入予測を効果的に行うことができる。
以上、本発明のセンサー装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明のセンサー装置では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
また、前述した実施形態では第1の電極および第2の電極がそれぞれ基板上に設けられた場合を例に説明したが、これに限定されず、例えば、第1の電極および第2の電極は、例えば、センサー装置の本体の封止樹脂で構成された部分の外表面上に設けてもよい。
また、前述した実施形態では第1の電極および第2の電極がそれぞれ薄膜状をなす場合を例に説明したが、これに限定されず、第1の電極および第2の電極の形状は、それぞれ、例えば、ブロック状、線状等をなしていてもよい。また、前述した実施形態では第1の電極および第2の電極をそれぞれセンサー装置の本体の外表面に沿って設けているが、第1の電極および第2の電極をそれぞれセンサー装置の本体の外表面から突出させてもよい。また、第1の電極および第2の電極の設置位置、大きさ(大小関係)等についても、前述したような測定が可能であれば、前述した実施形態に限定されず、任意である。
また、前述した実施形態では機能素子がCPU、A/D変換回路および差動増幅回路を有する場合を例に説明したが、これに限定されず、例えば、機能素子には、ROM、RAM、各種駆動回路等の他の回路が組み込まれていてもよい。
また、前述した実施形態では第1の電極と第2の電極との電位差に関する情報をアクティブタグ通信により無線送信によりセンサー装置外部へ送信する場合を例に説明したが、これに限定されず、例えば、パッシブタグ通信を用いて情報をセンサー装置の外部へ送信してもよいし、有線により情報をセンサー装置の外部へ送信してもよい。
また、前述した実施形態では機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56を本体2内に収納し、これらを第1の電極3および第2の電極4とともに測定対処物であるコンクリート構造物100内に埋設する場合を例に説明したが、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56を測定対象物の外部に設けてもよい。
また、前述した実施形態では、第1の電極および第2の電極の双方が多孔質体で構成されている場合を例に説明したが、第1の電極および第2の電極のうちの少なくとも一方の電極が多孔質体で構成されていれば、本発明の効果を奏し得る。