JP5420204B2 - 携帯型の物質検出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、携帯型の物質検出装置に関する。
従来、所定の検出対象物質を検出するセンサとして、携帯電話機等の携帯端末に取り付けられたセンサが知られている(例えば、特許文献1〜7参照)。
このようなセンサにおいて、確実に検出対象物質を検出するためには、センサの劣化を自己診断して、センサを交換するのが好ましい(例えば、特許文献8参照)。
特開2006−075447号公報 特開2007−142835号公報 特開2002−064595号公報 特開2006−217485号公報 特開2005−311995号公報 特表2003−526768号公報 特開2000−341375号公報 特開2002−071630号公報
しかしながら、センサの寿命が短くセンサがすぐに劣化すると、センサを交換する頻度が多くなり、煩わしいという問題がある。特に、一酸化炭素やメタンガスなどの人命に危険を及ぼすガスを検知する場合、不測の事故を未然に防ぐために上記ガスの濃度を常時測定する必要があるが、ガス発生時にセンサが劣化してしまっていては、所有者に警告を発することができず、回避行動をとることができないため、常にセンサが正常に機能するようにする必要がある。しかしながら、センサの寿命が短くセンサがすぐに劣化すると、センサを交換する頻度が多くなり、煩わしい。また、交換頻度が多いとその分、センサのコストがかさむことになる。
本発明の課題は、長期間交換する必要のないセンサを備える携帯型の物質検出装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
携帯型の物質検出装置において、
持ち運び可能な筐体と、
2次元又は3次元マトリックス状に配置された複数のセンサ部と、前記複数のセンサ部それぞれを外部から遮断する封止部と、を有し、前記筐体に着脱自在なマトリックスセンサと、
前記複数のセンサ部のうちの、所定のセンサ部を指定する指定手段と、
前記指定手段により指定されたセンサ部に対応する前記封止部を除去する除去手段と、
前記指定手段により指定されたセンサ部による検出データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された検出データに基づいて、検出対象物質の濃度を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された検出対象物質の濃度が所定の閾値以上であるか否か判断する濃度判断手段と、
前記濃度判断手段により検出対象物質の濃度が所定の閾値以上であると判断された場合に、当該検出対象物質が検出された旨を報知する検出報知手段と、
前記マトリックスセンサを交換するよう報知する交換報知手段と、
前記センサ部が劣化しているか否か判断する劣化判断手段と、
を備え、
前記指定手段は、前記劣化判断手段によりセンサ部が劣化していると判断された場合に、未指定のセンサ部を指定し、
前記交換報知手段は、前記指定手段により前記複数のセンサ部の全てが指定された場合に、前記マトリックスセンサを交換するよう報知し、
前記センサ部は、所定の検出素子と、少なくとも前記検出対象物質が透過する透過膜と、前記検出素子と前記透過膜との間に形成された検出層と、を有し、
前記複数のセンサ部のうちの少なくとも一のセンサ部における前記検出素子と前記透過膜との間の距離、他のセンサ部における前記検出素子と前記透過膜との間の距離と異ならせることによって、検出濃度範囲が異なる複数種類のセンサ部を備えるものとなるよう構成したことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の携帯型の物質検出装置において、
前記マトリックスセンサは、基板と、前記基板上に、2次元又は3次元マトリックス状に配置された前記複数のセンサ部と、前記基板上に配置され、前記センサ部同士を隔てる隔壁部と、前記センサ部の前記基板と対向する側の面を封止することによって、前記複数のセンサ部それぞれを外部から遮断する前記封止部と、を備え、
前記センサ部は、前記基板上に配置された前記検出素子と、前記検出素子上に配置され、少なくとも前記基板に対して略垂直方向に貫通する細孔を有する多孔体と、前記多孔体の細孔の内部に担持され、検出対象物質と選択的に反応する反応物質と、を有し、前記検出素子により前記反応に伴う所定の変化を検出することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載の携帯型の物質検出装置において、
前記センサ部により検出可能な検出対象物質の種類を記憶する種類記憶手段を備え、
前記検出報知手段は、前記検出対象物質が検出された旨を報知するとともに、前記種類記憶手段に記憶された当該検出対象物質の種類を報知することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、
請求項1〜3の何れか一項に記載の携帯型の物質検出装置において、
前記検出対象物質の濃度レベルを判定するための判定データを記憶する判定データ記憶手段と、
前記濃度判断手段により検出対象物質の濃度が所定の閾値以上であると判断された場合に、前記算出手段により算出された当該検出対象物質の濃度と、前記判定データ記憶手段に記憶された判定データと、に基づいて、当該検出対象物質の濃度レベルを判定する判定手段と、
を備え、
前記検出報知手段は、前記検出対象物質が検出された旨を報知するとともに、前記判定手段により判定された当該検出対象物質の濃度レベルを報知することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、
請求項1〜4の何れか一項に記載の携帯型の物質検出装置において、
当該物質検出装置は、携帯電話機であることを特徴とする。
本発明によれば、持ち運び可能な筐体と、2次元又は3次元マトリックス状に配置された複数のセンサ部と複数のセンサ部それぞれを外部から遮断する封止部とを有し、筐体に着脱自在なマトリックスセンサと、複数のセンサ部のうちの、所定のセンサ部を指定する指定手段と、指定手段により指定されたセンサ部に対応する封止部を除去する除去手段と、指定手段により指定されたセンサ部による検出データを取得する取得手段と、取得手段により取得された検出データに基づいて、検出対象物質の濃度を算出する算出手段と、算出手段により算出された検出対象物質の濃度が所定の閾値以上であるか否か判断する濃度判断手段と、濃度判断手段により検出対象物質の濃度が所定の閾値以上であると判断された場合に、当該検出対象物質が検出された旨を報知する検出報知手段と、マトリックスセンサを交換するよう報知する交換報知手段と、を備えている。
すなわち、封止部によりセンサ部が外部から遮断されているため、指定されて封止部が除去されるまでは大気等への曝露に伴うセンサ部の劣化を防止することができるとともに、複数のセンサ部のうちの指定されたセンサ部のみを使用するため、指定されて使用されるまでは使用に伴うセンサ部の劣化を防止することができる。さらに、マトリックスセンサが備える複数のセンサ部全てを同時に使用するのではなく、複数のセンサ部のうちの指定されたセンサ部のみを使用(封止部を除去して使用)するため、複数のセンサ部全てを使い切るまでは、マトリックスセンサは使用可能である。したがって、個々のセンサ部の寿命が短いものであっても、マトリックスセンサのセンサとしての寿命を長くすることができ、センサ(マトリックスセンサ)を長期間交換する必要がない。
また、本発明によれば、センサ部が劣化しているか否か判断する劣化判断手段を備え、指定手段は、劣化判断手段によりセンサ部が劣化していると判断された場合に、未指定のセンサ部を指定し、交換報知手段は、指定手段により複数のセンサ部の全てが指定された場合に、マトリックスセンサを交換するよう報知するようになっている。
すなわち、複数のセンサ部のうちの指定されたセンサ部を使用(封止部を除去して使用)し、そのセンサ部が劣化すると、次に使用するセンサ部(封止部が除去されていない未指定のセンサ部)を指定するようになっているとともに、マトリックスセンサが備える全てのセンサ部が指定されると、マトリックスセンサを交換するよう報知するようになっているため、マトリックスセンサを長寿命化することができるとともに、マトリックスセンサのセンサとしての信頼性を高めることができる。
以下、図を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、発明の範囲は、図示例に限定されない。
本実施の形態では、物質検出装置として、携帯電話機を例示するとともに、マトリックスセンサとして、酵素センサとして機能するセンサ部を有するマトリックスセンサを例示して説明することとする。
<携帯電話機>
図1は本発明の携帯電話機1の正面図、図2は本発明の携帯電話機1の背面図、図3は本発明の携帯電話機1の側面図、図4は本発明の携帯電話機1の機能的構成を示すブロック図である。
携帯電話機1は、携帯可能(持ち運び可能)な電話機であり、例えば、図1〜図4に示すように、検出対象物質を検出する機能を有する検出部2と、携帯電話機としての機能を有する本体部4と、などを備えて構成される。
本体部4の筐体4aには、例えば、図1〜図3に示すように、検出部2を収容するための収容部4a1が設けられている。
収容部4a1の一側面(例えば、図1における右側面)は開口面となっており、その開口面から検出部2を挿入したり取り出したりできるようになっている。すなわち、検出部2は、本体部4の筐体4aに着脱自在となっている。
検出部2は、例えば、外形略直方体形状を成しており、検出部2のサイズは、例えば、15mm×20mm×2mmである。
検出部2の筐体2a内には、検出対象物質を検出するマトリックスセンサ10が収容されている。例えば、図2に示すように、検出部2の筐体2aの一面には、例えば、マトリックスセンサ10の上方を覆う気体試料が透過可能なフィルタ2a1が設けられているとともに、本体部4の筐体4aの背面における収容部4a1に対応する位置には、例えば、気体試料が透過可能なガス透過口4a2が設けられている。そして、本体部4の筐体4aに検出部2が収容された状態において、ガス透過口4a2は、内側からフィルタ2a1で塞がれるようになっている。
また、例えば、図1に示すように、検出部2の筐体2aからは、例えば、検出側接続部52の一部(パッド部分)が露出しているとともに、図示は省略するが、本体部4の筐体4aに設けられた収容部4a1からは、例えば、本体側接続部86の一部(パッド部分)が露出している。これにより、本体部4の筐体4aに検出部2が収容された状態において、検出側接続部52と本体側接続部86とが接触して、検出部2と本体部4とが電気的に接続できるようになっている。
<検出部>
図5は検出部2を模式的に示す図である。
検出部2は、例えば、マトリックスセンサ10を用いて、検出対象物質を検出する装置である。
具体的には、検出部2は、例えば、図4及び図5に示すように、マトリックスセンサ10と、封止除去部30と、検出データ取得部40と、検出側メモリ部51と、検出側接続部52と、などを備えて構成される。
なお、検出部2において、マトリックスセンサ10と、封止除去部30や検出データ取得部40、制御部50、メモリ部60などとは、別々に構成しても良いし、封止除去部30や検出データ取得部40、制御部50、メモリ部60などをマトリックスセンサ10と同一の基礎基板11上に形成して、集積化して構成(ワンチップ化)しても良い。また、ワンチップ化する場合は、マトリックスセンサ10と、封止除去部30や検出データ取得部40、制御部50、メモリ部60などが配置された基板と、を積み重ねることによって、多層型に構成しても良い。
<マトリックスセンサ>
図6はマトリックスセンサ10の平面斜視図、図7は図6のVII−VII線における断面図、図8は電極12が形成された基礎基板11の平面図、図9はセンサ部20の特定の仕方を説明するための図である。
マトリックスセンサ10は、例えば、図6に示すように、5×5の2次元マトリックス状に配置された25個のセンサ部20を有している。センサ部20は、例えば、酵素Eの特性を利用して気体試料中(例えば、大気中)の検出対象物質を電気化学的計測法によって検出する酵素センサである。
ここで、マトリックスセンサ10の基礎基板11側を下側、透過膜15側を上側とし、マトリックスセンサ10の行方向を左右方向、列方向を前後方向とする。
また、例えば、図9に示すように、各行(X)に、上から順に「1」〜「5」の番号を割り当てるとともに、各列(Y)に、左から順に「1」〜「5」の番号を割り当てて、センサ部20を特定する際、センサ部(X,Y)と呼ぶこととする。
具体的には、センサ部20は、例えば、図7に示すように、基礎基板11上に形成された検出層21と、検出層21上に形成された透過層22と、透過層22上に形成された供給層23と、により構成されている。
検出層21は、電解液(導電性のゲル状物質等であっても良い。)で満たされている。検出素子としての電極12は、検出層21に配置されており、検出対象物質と選択的に反応する反応物質(生体物質)としての酵素Eは、多孔体13に担持(固定)された状態で検出層21に含有されている。そして、供給層23の透過層22と対向する側の面(すなわち、センサ部20の基礎基板11と対向する側の面)は、除去可能な封止部17により封止されている。
すなわち、センサ部20は、検出層21に電解液と酵素Eとを含有した状態で、封止部17により外部から遮断されている。
センサ部20において、封止部17が除去されて供給層23に気体試料が供給されると、その気体試料中の検出対象物質は、透過層22を透過して検出層21に移行し、検出層21が備える酵素Eと反応する。そして、センサ部20は、その反応に伴う所定の変化(具体的には、作用電極121と対向電極123との間に流れる電流量の変化)を電極12により検出することによって、検出対象物質を検出するようになっている。
すなわち、例えば、検出対象物質をアルコール、酵素Eをアルコールデヒドロゲナーゼとした場合、アルコールデヒドロゲナーゼが補酵素(NAD)の存在下でアルコールを酸化する反応(アルコール+NAD ―(酵素E)→ アルデヒド又はケトン+NADH+H)により生成される還元型酵素の量の変化を、作用電極121と対向電極123との間に流れる電流量の変化として電極12で検出することによって、検出対象物質を検出するようになっている。具体的には、酸化型のアルコールデヒドロゲナーゼがアルコールを酸化する反応に伴い、酸化型のアルコールデヒドロゲナーゼ(酸化型酵素)は還元型のアルコールデヒドロゲナーゼ(還元型酵素)となり、その還元型酵素は、直接的に又は電子伝達体を介して間接的に電子(e)を作用電極121に渡して酸化型酵素に戻る。この際、作用電極121と対向電極123との間に流れる還元型酵素又は還元型電子伝達体を再酸化するための電流量を電極12で検出することによって、検出対象物質を検出するようになっている。
マトリックスセンサ10は、例えば、図7に示すように、基板としての基礎基板11と、基礎基板11上面の分析部111内に形成された電極12(作用電極121、参照電極122及び対向電極123)と、電極12上に形成された多孔体13と、多孔体13の細孔13aの内部に担持された酵素Eと、基礎基板11上に形成された隔壁部14と、隔壁部14上に形成された透過膜15と、透過膜15上に形成されたスペーサ16と、スペーサ16上に形成された封止部17と、封止部17上に配置されたカバー部18と、などを備えて構成される。
(基礎基板)
基礎基板11は、例えば、平面視略矩形状に形成されている。基礎基板11は、例えば、基礎基板11上面に、5×5の2次元マトリックス状に並んだ平面視略円形状の分析部111を有している。
基礎基板11としては、例えば、半導体基板、絶縁基板、高分子基板等を用いることができる。
ここで、半導体基板としては、例えば、シリコン基板等を用いることができる。
また、絶縁基板としては、例えば、ガラス基板、セラミックス基板、紙基板、木材基板等を用いることができる。
また、高分子基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのエステル類、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))などのフッ素ポリマー類、ポリエーテル類、ポリスチレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン類、ポリイミド類等を用いることができる。
なお、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)などを基礎基板11上に形成する場合(例えば、マトリックスセンサ10と、検出データ取得部40や検出側メモリ部51などと、を一体的に構成(ワンチップ化)する場合等)は、予め層間絶縁層を形成し、そして、フォトグラフィー法などによりスルーホールを形成することによって、電気的接続を確保しておくと良い。
(電極)
電極12(作用電極121、参照電極122及び対向電極123)は、例えば、図8に示すように、基礎基板11上面における分析部111の内部に形成されており、作用電極121、参照電極122及び対向電極123に対応して設けられたパッド124,124,124と配線を介して接続されている。
パッド124は、例えば、図8に示すように、基礎基板11上面における基礎基板11の縁部に形成されている。
電極12、パッド124及び電極12とパッド124とを接続する配線は、例えば、蒸着法又はスパッタリング法により電極用薄膜を成膜して、フォトリソグラフィー工程でパターニングすることによって作成することができる。なお、電極12、パッド124及び配線の作成は、フォトリソプロセスでの作成に限定されるものではなく、例えば、スクリーン印刷の手法を用いて簡易的に行っても良い。
電極用薄膜の材質としては、例えば、Al、Cr、Mo、Ta、Ti、W、Nb、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Ru、RuO、C等及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1つを用いることができる。
また、参照電極122は銀/塩化銀電極であるのが好ましい。銀/塩化銀電極である参照電極122は、例えば、参照電極122となる電極用薄膜上に、銀/塩化銀インクを塗布してベーキングすることにより作成しても良いし、スクリーン印刷法や蒸着法、スパッタリング法などによって一旦銀電極を形成させた後に、一定電流を電解したり、塩化第2銀水溶液中に浸漬したりすることにより作成しても良い。
また、コンタクト特性や電気導電性の向上という観点から、異なる種類の金属膜を積層したものを電極用薄膜としても良い。
(多孔体)
多孔体13は、例えば、作用電極121上に直接形成されており、基礎基板11に対して略垂直方向に貫通する細孔13aを有している。
多孔体13は、例えば、平面視略円形状に形成されている。多孔体13の平面視におけるサイズ(径)は、分析部111のサイズ(径)と同一又はそれ以下となるよう設定されており、多孔体13の厚み(上下方向の長さ)は、電極12と透過膜15との間の距離と同一又はそれ以下となるよう設定されている。
多孔体13としては、例えば、シリカ系メソ多孔体を好ましく用いることができる。
シリカ系メソ多孔体は、例えば、ケイ酸やアルミナなどの各種金属酸化物、ケイ酸と他種の金属との複合酸化物等によって構成することができる。
例えば、ケイ酸により構成されるシリカ系メソ多孔体の作製においては、例えば、カネマイトのような層状シリケート、アルコキシシラン、シリカゲル、水ガラス、ケイ酸ソーダ等を好ましく用いることができる。
また、多孔体13は、作用電極121上に直接形成されたシリカ系メソ多孔体に限ることはなく、例えば、シート状、バルク状、膜状、粉末状等のシリカ系メソ多孔体を個別に形成して、少なくとも作用電極121に対応する位置に細孔13a(基礎基板11に対して略垂直方向に貫通する細孔13a)が配置されるよう加工して、電極12(作用電極121)上に設置したものであっても良い。
具体的には、シリカ系メソ多孔体は、例えば、無機材料を界面活性剤と混合反応させて、界面活性剤のミセルの周りに無機の骨格が形成された界面活性剤/無機複合体を形成させた後、例えば、有機溶剤で抽出したり400℃〜600℃で焼成したりする等して界面活性剤を除去することにより作製される。これにより、シリカ系メソ多孔体は、無機骨格中に、界面活性剤のミセルと同じ形状のメソポア細孔(細孔13a)を有するものとなる。
シリカ系メソ多孔体の作製において、ケイ酸等のケイ素含有化合物を出発材料とする場合には、例えば、カネマイトのような層状シリケートを形成して、この層間にミセルを挿入し、そして、ミセルが存在しない層間をシリケート分子でつなぎ、その後、ミセルを除去することによって細孔13aを形成することができる。
また、シリカ系メソ多孔体の作製において、水ガラス等のケイ素含有物質を出発材料とする場合には、例えば、ミセルの周囲にシリケート分子を集合させて重合させることによりシリカを形成し、その後、ミセルを除去することによって細孔13aを形成することができる。この場合、通常、ミセルの形状は柱状となり、その結果、シリカ系メソ多孔体に、柱状の細孔13aが形成されることになる。
シリカ系メソ多孔体は、作製段階で、界面活性剤のアルキル鎖の長さを変えてミセルの径を変化させることによって、細孔13aの内径を制御することができる。また、界面活性剤と併せて、トリメチルベンゼン、トリプロピルベンゼン等の比較的疎水性の分子を添加することによって、ミセルを膨潤させ、さらに大きな内径の細孔13aを形成することもできる。
シリカ系メソ多孔体の細孔13aのサイズ(細孔13aの径)は、固定する酵素Eのサイズ(酵素Eの径)に応じて決定される。すなわち、例えば、ミセルのサイズ(ミセルの径)が、酵素Eのサイズの0.5〜2.0倍となる界面活性剤を用いてシリカ系メソ多孔体を作製することによって、細孔13aのサイズが、固定する酵素Eのサイズの0.5〜2.0倍となるシリカ系メソ多孔体を得ることができる。
作用電極121上への細孔13a(基礎基板11に略垂直方向に貫通する細孔13a)を有するシリカ系メソ多孔体の形成方法としては、例えば、電極12を作成した基礎基板11において、作用電極121以外をレジストで被覆し、各種界面活性剤とシリカ源を含む前駆溶液を作用電極121部分にキャストした後、10T級の強磁場を基礎基板11に対して略垂直方向にかけて乾燥させる。前駆溶液は、溶媒の揮発に伴い前駆溶液が濃縮されていく自己集合の過程でリオトロピック液晶形態が形成され、メソ構造が形成されるが、これらは磁場方向と平行方向に配列する。これを、400℃〜600℃で焼成するか、或いは、レジストを除去後に有機溶剤抽出により界面活性剤を除去すれば、作用電極121部分に基礎基板11に略垂直方向に貫通する細孔13aを有するシリカ系メソ多孔体が形成される。
シリカ系メソ多孔体の作成方法としては、上記の他にスピンコートや核成長による析出、光配向、電場、磁場、shear flowなどによる外場を利用する方法、電荷を考慮したさまざまな界面活性剤を複合化させる方法、ブロックコポリマーのミクロ相分離を利用する方法、陽極酸化ポーラスアルミナを電極12(作用電極121)上に形成後、それを鋳型として内部にメソチャネル集合体を形成する方法、基板界面の改質などの方法等によって、電極12(作用電極121)上へ方向制御した形で形成することもできるし、或いは、個別に形成して適切な方法で加工して形成しても良い。
また、シリカ系メソ多孔体における細孔13aの貫通方向は、少なくとも基礎基板11に対して略垂直方向を含むのであれば任意であり、ランダムであっても良い。
シリカ系メソ多孔体の細孔13aのサイズは、固定された酵素Eの立体構造の変化を防止可能な程度に設定されている。
具体的には、シリカ系メソ多孔体の細孔13aのサイズは、例えば、固定される酵素E(酵素分子又は活性部位を含む酵素の断片)のサイズの0.5〜2.0倍程度であることが好ましく、固定される酵素Eのサイズの0.7〜1.4倍程度であることがより好ましく、固定される酵素Eのサイズとほぼ同一であることが最も好ましい。すなわち、シリカ系メソ多孔体における細孔13aの直径(中心細孔直径)は、固定される酵素Eの直径の0.5〜2.0倍程度であることが好ましく、固定される酵素Eの直径の0.7〜1.4倍程度であることがより好ましく、固定される酵素Eの直径とほぼ同一であることが最も好ましい。なお、具体的な中心細孔直径の値は、酵素Eの直径との関係で決定されるので一律には規定できないが、例えば、1〜50nm程度とすることができる。
ここで、酵素Eが多量体を形成する場合には、固定される酵素Eのサイズ(直径)は、多量体のサイズ(直径)とすることができる。ここで、多量体とは、2以上の酵素(タンパク質)が、直接に、又は水などの低分子を介して結合してなる化合物をいい、結合には、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合が含まれる。しかし、これらの結合の種類は、特に制限されない。
シリカ系メソ多孔体の細孔13aのサイズを、固定する酵素Eのサイズの0.5〜2.0倍程度(より好ましくは0.7〜1.4倍程度、最も好ましくはほぼ同一)にすることによって、固定する酵素Eの立体構造の維持が容易となるため、シリカ系メソ多孔体の細孔13aの内部に固定された酵素Eを安定化することができる。
さらに、シリカ系メソ多孔体の比表面積は、例えば、200〜1500m程度であるため、酵素Eをシリカ系メソ多孔体に固定することによって、酵素Eを電極12の表面に直接固定する場合と比較して、検出層21に多量の酵素Eを含有させることができるため、センサ部20による検出対象物質の検出を高感度化することができる。
また、シリカ系メソ多孔体の細孔13aには、基礎基板11に対して略垂直方向に貫通する細孔13aが含まれるため、基礎基板11に対して略垂直方向に貫通する細孔13aを含まない場合と比較して、酵素Eの活性中心と電極12(作用電極121)との電子移動がスムーズになるため、センサ部20による検出対象物質の検出を高速化することができる。
なお、多孔体13は、シリカ系メソ多孔体に限ることはなく、酵素Eを固定することができ、かつ、少なくとも基礎基板11に対して略垂直方向に貫通する細孔13aを有するのであれば任意であり、例えば、公知の方法で作成したメソポーラス金属やメソポーラスカーボンなどを用いることができる。これらは、ハードテンプレート法(メソポーラスシリカを鋳型として用いそのレプリカを合成する手法)やソフトテンプレート法(リオトロピック液晶を直接鋳型とする手法)などにより電極12(作用電極121)上に直接合成することができ、高い電気伝導性を有することから、電極12(作用電極121)の有効表面積を著しく増大することができ、大幅な感度向上を実現することができる。
また、個別に形成した多孔体13を用いる場合には、上記の方法で個別に作成したメソポーラス金属やメソポーラスカーボンなどを用いる他にも、例えば、多孔質アルミナ等の多孔体、親水性テフロン膜、ナイロン膜やその他の材質(例えば、セルロース混合エステル、ポリビニリデンジフロライド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタートなど)からなる親水性膜、ナイロンメッシュ等のメッシュ体などであっても良い。また、酵素Eを固定するための担体は、多孔体13に限ることはなく、多孔体13と同等の機能を有するもの(電極12(作用電極121)よりも比表面積が大きく、かつ、基礎基板11に対して略垂直方向に貫通する細孔13a(流路)を持つもの)であれば任意であり、例えば、カーボンナノチューブ等の繊維状集合体などであっても良い。
(酵素)
酵素Eは、検出対象物質と選択的に反応する酵素であれば任意であり、検出対象物質の種類によって適宜変更可能である。
具体的には、酵素Eは、例えば、酸化還元酵素、加水分解酵素、転移酵素、異性化酵素などの酵素(酵素タンパク質)である。
また、酵素Eは、例えば、生来の酵素分子であっても、活性部位を含む酵素の断片であっても良い。当該酵素分子又は当該活性部位を含む酵素の断片は、例えば、動植物や微生物から抽出したものであっても良いし、所望によりそれを切断したものであっても良いし、遺伝子工学的に又は化学的に合成したものであっても良い。
酸化還元酵素としては、例えば、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、ホルムアルデヒドオキシダーゼ、ソルビトールオキシダーゼ、フルクトースオキシダーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、フルクトシルアミンオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、グリセロールデヒドロゲナーゼ、グルタメートデヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、ウリカーゼ等を用いることができる。この他に、コレステロールエステラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、ブチリルコリンエステラーゼ、クレアチニナーゼ、クレアチナーゼ、DNAポリメラーゼ、さらにこれら酵素のミュータント等を用いることができる。
加水分解酵素としては、例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、インベルターゼ、マルターゼ、β−ガラクトシダーゼ、リゾチーム、ウレアーゼ、エステラーゼ、ヌクレアーゼ群、ホスファターゼ群等を用いることができる。
転移酵素としては、例えば、各種アシル転移酵素、キナーゼ群、アミノトランスフェラーゼ群等を用いることができる。
異性化酵素としては、例えば、ラセマーゼ群、ホスホグリセリン酸ホスホムターゼ、グルコース6−リン酸イソメラーゼ等を用いることができる。
多孔体13に固定する酵素Eは、1種類の酵素であっても、2種類以上の酵素であっても良い。
具体的には、多孔体13に固定する酵素Eは、例えば、1種類の酵素であっても、分子量及び/又はサイズ(径)が略同一の2種類以上の酵素であっても、分子量及び/又はサイズが異なる2種類以上の酵素であっても良い。また、多孔体13に固定する酵素Eが2種類以上である場合、酵素Eは、例えば、同種の検出対象物質(基質)に作用する2種類以上の酵素であっても、異種の検出対象物質に作用する2種類以上の酵素であっても、同種及び/又は異種の検出対象物質に作用する2種類以上の酵素であっても良い。
また、多孔体13に固定する酵素Eが2種類以上である場合、その2種類以上の酵素は、多孔体13における別々の細孔13aの内部に固定されていても、同一の細孔13aの内部に固定されていても良い。
ここで、特に、多孔体13に固定する酵素Eが2種類以上であって、その2種類以上の酵素が異種の検出対象物質に作用する場合、センサ部20は、その異種の検出対象物質(2種類以上の検出対象物質)を同時に検出することができる。
酵素Eを多孔体13に固定する方法としては、例えば、多孔体13に酵素Eを含む溶液を滴下するディップ法、酵素Eを含む溶液に多孔体13を漬侵する漬侵法、電場などの外場を利用して酵素Eを多孔体13に導入する方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これにより、高次構造と活性を保持したまま、酵素Eを多孔体13に固定化することができる。
さらに、必要に応じて、公知の酵素固定化法(例えば、導電性高分子、グルタルアルデヒド、光架橋性樹脂等を用いる固定化法等)と併用することもできる。
また、酵素Eを多孔体13に固定した後、その多孔体13を電極12上に配置しても良いし、電極12上に多孔体13を配置した後、その多孔体13に酵素Eを固定するようにしても良い。
ここで、酵素Eと電極12(作用電極121)との間の電子の受け渡しを促進するための電子伝達体を、検出層21に含有させるのが好ましい。
なお、電子伝達体は、検出層21に含有されていれば任意であり、例えば、検出層21を満たす電解液に溶解した状態で検出層21に含有されていても良いし、例えば、多孔体13の細孔13aの内部に導入(固定)された状態で検出層21に含有されていても良いし、例えば、電極12(作用電極121)に直接固定された状態で検出層21に含有されていても良い。
具体的には、電子伝達体としては、例えば、ポリアニリンなどの導電性高分子、キノンやキノン誘導体(ナフトキノンやベンゾキノンなど)などのキノン系化合物、フェロセンやフェロセン誘導体などのフェロセン系化合物、フェリシアン化カリウム、オスミウム錯体、各種ビタミン、ビオロゲン等が挙げられる。
また、酵素Eの活性の発現を触媒するための補酵素を、検出層21に含有させるのも好ましい。
なお、補酵素は、検出層21に含有されていれば任意であり、例えば、検出層21を満たす電解液に溶解した状態で検出層21に含有されていても良いし、例えば、多孔体13の細孔13aの内部に導入(固定)された状態で検出層21に含有されていても良いし、例えば、電極12(作用電極121)に直接固定された状態で検出層21に含有されていても良い。
また、補酵素300は、例えば、補因子としての各種金属原子や金属イオン、金属錯体、各種色素など(例えば、Fe2+、Mn2+、Cu2+、Zn2+、Co3+等)とともに検出部10に含有されていても良い。
例えば、不安的中間体を経由する反応等、酵素Eのアミノ酸側鎖の触媒作用では容易に進まない反応の場合、適当な構造を有し、酵素反応の発現に関与する低分子量の有機小分子や金属イオン、金属錯体などを補因子(cofactor)として使用することが多い。補因子の中でも有機小分子や金属錯体を補酵素と呼ぶ。特に、酵素Eとして、補酵素依存型酵素を用いた場合、検出層21に補酵素を導入することによって、酵素反応を効率よく行わせることができる。
補酵素は、酵素E(補酵素依存型酵素)の種類に応じて、適宜選択することができる。具体的には、補酵素としては、例えば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、補酵素I、補酵素II、フラビンモノヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、リポ酸、アデノシン三リン酸(ATP)、チアミンピロリン酸(TPP)、ピリドキサルリン酸(PALP)、テトラヒドロ葉酸(THF,Coenzyme F)、UDPグルコース(UDPG)、補酵素A、補酵素Q、ビオチン、補酵素B12(コバラミン)、S−アデノシルメチオニン等の1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる。
(隔壁部)
隔壁部14は、例えば、平面視略矩形状に形成されており、分析部111に対応する領域に、上下方向に貫通する開口部を有している。分析部111内及び隔壁部14の開口部内が、センサ部20の検出層21となる。すなわち、センサ部20,20同士は、隔壁部14によって隔てられている。
隔壁部14は、例えば、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂などを用いてフォトリソグラフィー法等により基礎基板11上に直接形成しても良いし、例えば、基礎基板11上に電極12を形成する前に、基礎基板11上面にエッチング等により凹部を形成してそれを検出層21(隔壁部14の開口部)としても良いし、例えば、スクリーン印刷等により基礎基板11上に隔壁部14としてガラス隔壁等を形成しても良い。
或いは、隔壁部14を、例えば、基礎基板11と個別に作成し、基礎基板11の上面に熱圧着、熱融着又は接着することによって、基礎基板11上に固定してもよい。この場合、例えば、半導体製の板状部材、絶縁体製の板状部材、高分子材料製の板状部材等に、エッチング等によって開口部を形成することにより作成することができる。
また、隔壁部14は、例えば、陽極酸化アルミナ等の、基礎基板11に対して略垂直方向に貫通する貫通孔を有する構造体であっても良い。
(透過膜)
透過膜15は、例えば、平面視略矩形状に形成されており、例えば、基礎基板11の上面に熱圧着、熱融着又は接着されることによって、基礎基板11上に固定されている。
透過膜15における分析部111に対応する領域は、センサ部20の透過層22となっており、検出層21と供給層23とを隔てている。検出層21と供給層23とを透過層22で隔てることによって、例えば、センサ部20の使用中に検出層21を満たす電解液が漏れてしまうのを防止したり、センサ部20の使用中に検出層21を満たす電解液が蒸発してしまうのを抑制したりすることができる。
供給層23に供給された気体試料中の検出対象物質は、透過層22(透過膜15)を透過して検出層21に移行し、検出層21が備える酵素Eと反応するようになっている。したがって、透過膜15は、少なくとも検出対象物質が透過する膜であれば任意であり、検出対象物質の種類によって適宜変更可能であるが、透過膜15としては、検出対象物質(検出対象ガス)は透過するが、電解液等の液体は透過しないガス透過膜が好ましい。
ここで、ガス透過膜としては、例えば、通気性を有するポリエチレン膜やテフロン膜などを用いることができる。
(スペーサ)
スペーサ16は、例えば、平面視略矩形状に形成されており、分析部111に対応する領域に、上下方向に貫通する開口部を有している。
スペーサ16の開口部内が、センサ部20の供給層23となる。
スペーサ16は、例えば、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂などを用いてフォトリソグラフィー法等により透過膜15上に直接形成しても良いし、例えば、スパッタやプラズマCVD法を用いてシリコン酸化膜や窒化膜のような絶縁層を堆積することにより形成しても良いし、例えば、スクリーン印刷等により形成しても良い。
或いは、スペーサ16を、予め開口部を有する部材として個別に作成し、透過膜15の上面に熱圧着、熱融着又は接着することによって、透過膜15上に固定してもよい。この場合、例えば、半導体製の板状部材、絶縁体製の板状部材、高分子材料製の板状部材等に、エッチング等によって開口部を形成することにより作成することができる。
スペーサ16は、透過膜15と封止部17とを隔てて配置するために設けられている。これにより、封止部17を除去する際に、透過膜15が傷付いたり透過膜15も除去されたりするのを防止することができる。
(封止部)
封止部17は、例えば、平面視略矩形状に形成されており、例えば、スペーサ16の上面に熱圧着されたり接着されたりして、スペーサ16上に形成されている。
貼り合わせによる封止部17の形成には、例えば、STP法を用いることができる。すなわち、まず、シートフィルムに予め塗布形成した樹脂膜を、真空中でスペーサ16に熱圧着する。次いで、シートフィルムを樹脂膜から剥離し、スペーサ16に貼り付けられた樹脂膜を、300℃程度の温度で1時間程度保持する熱処理により硬化する。これにより、封止膜が形成される。樹脂膜は、例えば、ポリアミド、ポリアミド酸、ポリベンゾオキサゾール(若しくはこの前駆体)などのベース樹脂(ポリイミド)を使用することができる。
封止部17は、複数のセンサ部20それぞれを外部から遮断するために設けられている。したがって、センサ部20を封止する封止部17が除去されるまでは、外部からそのセンサ部20へ気体や液体が浸入することがなく、かつ、そのセンサ部20から外部へ気体や液体が放出されることがない。これにより、検出層21を満たす電解液が蒸発したり、検出層21が備える酵素Eや電極12が劣化(酸化等)したりするのを防止することができる。
封止部17としては、センサ部20を外部から遮断できるものであれば、すなわち、気体及び液体を透過しないものであれば任意であり、例えば、ガス不透過性の膜状部材などを用いることができる。
ここで、ガス不透過性の膜状部材としては、例えば、塩化ビニル膜などの高分子材料製の膜状部材、アルミ薄膜、これらに高分子材料をラミネートしたもの、特性の異なる高分子材料同士をラミネートしたもの、SiN膜、SiO2 膜、TEOS膜又はこれらの複合膜等を用いることができる。
なお、封止部17を除去する際に、透過膜15が傷付いたり透過膜15も除去されたりすることがないのであれば、スペーサ16を省略して、透過膜15上に直接、封止部17を形成しても良い。ここで、封止部17を除去する際に、透過膜15が傷付いたり透過膜15も除去されたりすることがない場合とは、例えば、透過膜15として耐熱性の高い膜を用いるとともに、封止部17として透過膜15よりも耐熱性の低い部材を用いて、電圧印加等の熱で加熱することにより封止部17を除去する場合等である。
透過膜15上に直接、封止部17を形成する場合、封止部17の形成に、例えば、STP法を用いるのであれば、シートフィルムに予め塗布形成した樹脂膜を、真空中で透過膜15に熱圧着すればよい。
(カバー部)
カバー部18は、各センサ部20に気体試料や液体試料を供給するための上下方向に貫通する供給口を有しており、当該供給口が分析部111に対応するように、封止部17の上面に形成または配置されている。カバー部18は、例えば、封止部17上に絶縁性の光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂などを用いてフォトリソグラフィー、スクリーン印刷等により形成することもできるし、例えば、シリコン酸化膜等の絶縁物をスパッタ法により堆積形成することもできるし、例えば、半導体製の板状部材、絶縁体製の板状部材、高分子材料製の板状部材等に、エッチング等によって開口部を形成することにより予め作成したものを封止部15の上面に熱圧着、熱融着又は接着することによって、透過膜15上に固定して形成することもできる。
カバー部18は、例えば、封止部17が意図しないときに除去されたり傷付いたりするのを防止するために設けられているとともに、マトリックスセンサ10の外観からセンサ部20の位置を認識可能とするために設けられている。
<封止除去部>
封止除去部30は、例えば、検出側接続部52を介して本体部4の制御部70から入力される制御信号に従って、除去手段として、指定されたセンサ部20に対応する封止部17を除去する。
具体的には、封止除去部30は、例えば、図5に示すように、封止部17を機械的に除去する除去部材31と、除去部材31を移動させる移動部32と、移動部32を移動させる駆動部33と、などを備えて構成される。
除去部材31は、例えば、微小な針や剣山のような突部を有する構造をなしており、例えば、除去部材31の軸が上下方向に対して略平行となるように、かつ、除去部材31の先端が下方(マトリックスセンサ10側)を向くように、移動部32に取り付けられている。
移動部32は、例えば、その先端に除去部材31が取り付けられており、例えば、マトリックスセンサ10の上方に配置されている。そして、移動部32は、例えば、上下方向、左右方向及び前後方向に移動できるようになっている。
駆動部33は、例えば、この駆動部33の駆動源から発生する力を用いて、除去部材31が取り付けられた移動部32を上下方向、左右方向及び前後方向に移動させることによって、除去部材31の先端部を、制御部70により指定されたセンサ部20に対応する封止部17に刺し込んだり、封止部17から引き上げたりするためのものである。
ここで、移動部32の上下方向の下限は、移動部32の下方に配置されたマトリックスセンサ10が備える封止部17を除去部材31で破って封止部17に穴を開けることができるように、かつ、マトリックスセンサ10が備える透過膜15に除去部材31が接触しないように、設定されている。
また、封止除去部30は、例えば、封止部17の上部に一体化して設けることもできる。封止除去部30を封止部17の上部に一体化して設けることができる場合とは、例えば、透過膜15として耐熱性の高い膜を用いるとともに、封止部17を耐熱性の低い部材で形成し、封止部17に封止除去部30として抵抗部を配置して、電圧印加等の熱で封止部17を焼き切ることにより封止部17を除去する場合等である。この場合、機械的な除去手段を必要としないため、移動部32及び駆動部33は必要ではない。
<検出データ取得部>
図10は検出データ取得部40の駆動回路を示す図、図11は作用電極121に接続されたアドレシング可能な能動素子(AC)を示す回路図であり、図12〜図14は図11に示す能動素子(AC)の一例を示す回路図である。
ここで、図10〜図14において、“WXY”はセンサ部(X,Y)の作用電極121を示し、“RXY”はセンサ部(X,Y)の参照電極122を示し、“CXY”はセンサ部(X,Y)の対向電極123を示す。
検出データ取得部40は、例えば、検出側接続部52を介して本体部4の制御部70から入力される制御信号に従って、取得手段として、指定されたセンサ部20による検出データ(指定されたセンサ部20が備える作用電極121と対向電極123との間に流れる電流量に基づく検出データ)を取得し、検出側接続部52を介して本体部4の制御部70に出力する。
すなわち、検出データ取得部40は、例えば、指定されたセンサ部20について、参照電極122に対して作用電極121に所定の電圧値の電圧を印加し、その際に作用電極121から出力される電流の電流値(応答電流値)を取得して、検出側接続部52を介して制御部70に出力する。
具体的には、検出データ取得部40は、例えば、図10に示すように、セレクト回路41と、ポテンショスタット回路42と、などを備えて構成される。
セレクタ回路41は、例えば、検出側接続部52を介して制御部70から入力される制御信号に従って、制御部70により指定されたセンサ部20が備える作用電極121をONする。
具体的には、セレクト回路41は、例えば、図10に示すように、作用電極121とポテンショスタット回路42との接続をON/OFFするセレクタスイッチ411と、検出側接続部52を介して制御部70から入力される制御信号に従ってセレクタスイッチ411を制御する回路412(ドライブ回路(能動素子)及びシフトレジスタ回路)と、などを備えて構成される。
セレクタスイッチ411は、例えば、作用電極121と接続する能動素子(AC)などにより構成されている。
能動素子(AC)は、例えば、図11に示すように、マトリックスセンサ10が有する作用電極121それぞれに対応して設けられており、信号線Aと信号線Bとに接続されてアドレシング可能となっている。
能動素子(AC)としては、例えば、図12に示すような、2つのダイオードで構成された能動素子、図13に示すような、コンデンサと接続した抵抗を持つダイオードで構成された能動素子、図14に示すような、MOSトランジスタで構成された能動素子などを用いることができる。図11図14
シフトレジスタを含む回路41は、例えば、検出側接続部52を介して制御部70から入力されるシリアル形式のデータをパラレル形式のデータに変換して、制御部70により指定されたセンサ部20が備える作用電極121がポテンショスタット回路42と接続するように、セレクタスイッチ411を制御する。すなわち、制御部50から送付されたセレクタ信号に対応する信号線A及び信号線Bを選択する。
具体的には、シフトレジスタを含む回路41は、例えば、制御部70から行(X)と列(Y)が指定されると、対応する信号線A及び信号線Bに信号を供給して、センサ部(X,Y)が備える作用電極121(WXY)と、ポテンショスタット回路42と、の接続をONする。
より具体的には、シフトレジスタを含む回路41は、例えば、制御部70から「行(X)=2、列(Y)=5」を選択する旨のデータが送付されると、信号線A及び信号線Bに信号を供給して、センサ部(2,5)が備える作用電極121(W25)と、ポテンショスタット回路42と、の接続をONする。
ポテンショスタット回路42は、例えば、シングルチャンネルのポテンショスタット回路である。ポテンショスタット回路42は、例えば、検出側接続部52を介して制御部70から入力される制御信号に従って、参照電極122に対して作用電極121に所定の電圧値の電圧を印加し、その際に作用電極121から出力される電流の電流値(応答電流値)を取得して、検出側接続部52を介して制御部70に出力する。
ポテンショスタット回路42は、制御部50からの信号及びデータにより、順次、D/A変換器412、制御アンプ422、電位計測回路423へ電圧を設定・出力、及びそれに同期させてセレクタスイッチ411を切り替えて対応する作用電極121を選択して順次連続的に電流値を取り込むことにより、シングルチャンネルで複数のセンサの出力を取り込むことができ、マルチチャンネル回路の役割を果たすことができる。したがって、コスト及び面積を大幅に削減することができる。
具体的には、ポテンショスタット回路42は、例えば、図10に示すように、D/A変換器421と、制御アンプ422と、電位計測回路423と、電流電圧変換回路424と、A/D変換器425と、などを備えて構成される。
D/A変換器421は、例えば、検出側接続部52を介して制御部70から所定の電圧値に関するデジタル信号が入力されると、そのデジタル信号をアナログ信号に変換して、対向電極123の制御アンプ422にその所定の電圧値の電圧信号を出力する。
対向電極123の制御アンプ422は、例えば、参照電極122の電位を計測する電位計測回路423と接続されており、参照電極122の電位を基準にして、D/A変換器421から入力された電圧データに相当する電圧値を、対向電極123に印加する。
そして、その際に作用電極121から出力される応答電流は、例えば、電流電圧変換回路424で電圧信号(アナログ信号)に変換され、A/D変換器425でデジタル信号に変換されて、検出側接続部52を介して制御部70に出力されるようになっている。
<検出側メモリ部>
検出側メモリ部51は、例えば、磁気的記録媒体、光学的記録媒体、或いは、半導体メモリで構成されている。
検出側メモリ部51は、例えば、種類記憶手段及び判定データ記憶手段として、検出部2に内蔵されたマトリックスセンサ10に関するマトリックスセンサ情報を記憶している。
ここで、マトリックスセンサ情報とは、例えば、マトリックスセンサ10を識別するためのマトリックスセンサ識別情報と、マトリックスセンサ10(マトリックスセンサ10が有するセンサ部20)により検出可能な検出対象物質の種類と、検出対象物質の濃度レベルを判定するための判定データと、などの情報である。
なお、マトリックスセンサ情報は、例えば、本体部4の筐体4aに検出部2が収容されて、検出側接続部52と本体側接続部86とが接触すると、制御部70が、検出側メモリ部51から取得して、本体側メモリ部85に記憶させるようにしても良い。
判定データとは、例えば、濃度レベルを識別するための情報と、検出対象物質の濃度の範囲と、などが対応付けられた情報である。具体的には、判定データは、例えば、「濃度レベル1:100ppb以上500ppb未満」、「濃度レベル2:500ppb以上800ppb未満」、「濃度レベル3:800ppb以上1000ppb未満」、「濃度レベル4:1000ppb以上」などの情報である。
無論、各濃度レベルに対応する検出対象物質の濃度の範囲は、検出対象物質の種類によって適宜変更可能である。
なお、濃度レベルの個数は、濃度レベル1〜濃度レベル4の4つに限ることはなく、複数であれば任意である。
検出側接続部52は、例えば、本体部4の筐体4aに検出部2が収容された状態において、本体側接続部86と接触して、検出部2を本体部4と電気的に接続するためのものである。
具体的には、検出側接続部52は、例えば、図4に示すように、封止除去部30や検出データ取得部40、検出側メモリ部51などと接続しており、本体部4の筐体4aに検出部2が収容されて、検出側接続部52と本体側接続部86とが接触すると、封止除去部30や検出データ取得部40、検出側メモリ部51などは、検出側接続部52及び本体側接続部86を介して、本体部4の制御部70と接続できるようになっている。
ここで、検出部2においては、検出部2の筐体2a内には、例えば、マトリックスセンサ10と、封止除去部30と、検出データ取得部40と、検出側メモリ部51と、が収容されている。その収容された状態において、例えば、マトリックスセンサ10の上方は、検出部2の筐体2aに設けられたフィルタ2a1で覆われており、例えば、マトリックスセンサ10上面とフィルタ2a1との間の領域を、封止除去部30の移動部32(除去部材31が先端に取り付けられた移動部32)が移動するようになっている。
また、マトリックスセンサ10の上方は、検出部2の筐体2aに設けられたフィルタ2a1で覆われているため、気体試料は、例えば、本体部4の筐体4aに設けられたガス透過口4a2を透過して、フィルタ2a1を透過し、そして、マトリックスセンサ10が備えるセンサ部20のうちの、封止部17が除去されたセンサ部20の供給層23に供給されるようになっている。
<本体部>
本体部4は、例えば、携帯電話機として機能するとともに、検出部2による検出データに基づいて、検出対象物質の濃度を算出して、必要であれば所定の警告を行う装置である。
具体的には、本体部4は、例えば、図4に示すように、制御部70と、操作部81と、表示部82と、スピーカ部83と、バイブレータ部84と、本体側メモリ部85と、本体側接続部86と、などを備えて構成されている。
なお、本体部4の携帯電話機としての構成は、公知の携帯電話機と略同一であるため、詳細な説明は省略する。
<制御部>
制御部70は、例えば、図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)71と、RAM(Random Access Memory)72と、記憶部73と、などを備えている。
CPU71は、例えば、記憶部73に記憶された携帯電話機1用の各種処理プログラムに従って各種の制御動作を行う。
RAM72は、例えば、CPU71によって実行される処理プログラムなどを展開するためのプログラム格納領域や、入力データや上記処理プログラムが実行される際に生じる処理結果などを格納するデータ格納領域などを備える。
記憶部73は、例えば、携帯電話機1で実行可能なシステムプログラム、当該システムプログラムで実行可能な各種処理プログラム、これら各種処理プログラムを実行する際に使用されるデータ、CPU71によって演算処理された処理結果のデータなどを記憶する。なお、プログラムは、コンピュータが読み取り可能なプログラムコードの形で記憶部73に記憶されている。
具体的には、記憶部73は、例えば、図4に示すように、劣化判断プログラム731と、センサ部指定プログラム732と、封止除去制御プログラム733と、検出データ取得制御プログラム734と、濃度算出プログラム735と、濃度判断プログラム736と、濃度レベル判定プログラム737と、検出報知制御プログラム738と、交換報知制御プログラム739と、などを記憶している。
劣化判断プログラム731は、例えば、封止除去部30により封止部17が除去されたセンサ部20が劣化しているか否か判断する機能を、CPU71に実現させる。
具体的には、CPU71は、例えば、センサ部20に対応する封止部17が除去されてからの期間が、予め設定された“センサ部20の有効使用期間”を超えたか否か判断する。そして、例えば、センサ部20の有効使用期間を超えたと判断した場合に、そのセンサ部20が劣化していると判断する。
ここで、センサ部20は、センサ部20を封止する封止部17が除去されると、検出層21を満たす電解液が蒸発したり検出層21が備える酵素Eや触媒、電極12が劣化(酸化等)したりして、感度が低下していく。したがって、センサ部20の有効使用期間としては、例えば、封止部17を除去してからセンサ部20の感度の低下の度合いが予め設定された“許容感度範囲”を超えるまでに要する一般的な期間等を予め計測して、検出側メモリ部51及び/又は本体側メモリ部85に記憶しておき、それを用いることができる。
CPU71は、かかる劣化判断プログラム731を実行することによって、劣化判断手段として機能する。
センサ部指定プログラム732は、例えば、複数のセンサ部20のうちの、所定のセンサ部20(例えば、所定の一のセンサ部20)を指定する機能を、CPU71に実現させる。
具体的には、CPU71は、例えば、劣化判断プログラム731を実行したCPU71によりセンサ部20が劣化していると判断された場合に、予め設定された“使用するセンサ部20の順番”に従ってセンサ部20(封止部17が除去されていない未指定のセンサ部20)を指定する。
ここで、使用するセンサ部20の順番は任意であり、具体的には、例えば、“センサ部(1,1)→センサ部(1,2)→・・・→センサ部(1,5)→センサ部(2,1)→センサ部(2,2)→・・・→センサ部(2,5)→センサ部(3,1)→センサ部(3,2)→・・・→センサ部(3,5)→センサ部(4,1)→センサ部(4,2)→・・・→センサ部(4,5)→センサ部(5,1)→センサ部(5,2)→・・・→センサ部(5,5)”等である。使用するセンサ部20の順番は、例えば、検出側メモリ部51及び/又は本体側メモリ部85に記憶されている。
CPU71は、かかるセンサ部指定プログラム732を実行することによって、指定手段として機能する。
封止除去制御プログラム733は、例えば、本体側接続部86及び検出側接続部52を介して封止除去部30に制御信号を入力して、センサ部指定プログラム732を実行したCPU71により指定されたセンサ部20に対応する封止部17を除去させる機能を、CPU71に実現させる。
ここで、封止除去部30が備える移動部32の左右方向及び前後方向の初期位置は、例えば、移動部32がマトリックスセンサ10の直上以外の場所に位置するように設定されているとともに、移動部32の上下方向の初期位置は、除去部材31の先端がマトリックスセンサ10のカバー部18よりも上側に位置するように設定されている。CPU71が封止除去部30を制御することによって、移動部32は、例えば、左右方向及び前後方向の初期位置から指定されたセンサ部20の直上まで移動し、次いで、上下方向の初期位置から下方向に移動して除去部材31で封止部17を除去し、次いで、上下方向の初期位置に戻って、左右方向及び前後方向の初期位置に戻るように移動するようになっている。これにより、検出対象物質を検出している間は、移動部32がマトリックスセンサ10の直上以外の場所に位置することになるため、気体試料が効率よく供給層23に供給されることになる。
検出データ取得制御プログラム734は、例えば、本体側接続部86及び検出側接続部52を介して検出データ取得部40に制御信号を入力して、センサ部指定プログラム732を実行したCPU71により指定されたセンサ部20(封止部17が除去されたセンサ部20)による検出データを取得させ、検出側接続部52及び本体側接続部86を介して制御部70に出力させる機能を、CPU71に実現させる。
なお、CPU71は、検出データ取得部40から入力された検出データを、例えば、検出側メモリ部51及び/又は本体側メモリ部85に記憶させたり、表示部82に表示させたりするようになっている。
濃度算出プログラム735は、例えば、検出データ取得部40により取得された検出データに基づいて、検出対象物質の濃度を算出する機能を、CPU71に実現させる。
具体的には、CPU71は、例えば、予め取得された“検量線”と、検出データ取得部40により取得された検出データ(応答電流値)と、に基づいて、検出対象物質の濃度を算出する。
ここで、検量線は、例えば、横軸を検出対象物質(基質)の濃度、縦軸を応答電流として、センサ部20を使用して予め作成された検量線であり、例えば、検出側メモリ部51及び/又は本体側メモリ部85に記憶されている。
なお、CPU71は、算出された検出対象物質の濃度を、例えば、検出側メモリ部51及び/又は本体側メモリ部85に記憶させたり、表示部82に表示させたりするようになっている。
また、CPU71は、検量線と、検出データと、に基づいて、検出対象物質の濃度を算出できない場合、例えば、所定のエラー表示を表示部82に表示させるようになっている。
CPU71は、かかる濃度算出プログラム735を実行することによって、算出手段として機能する。
濃度判断プログラム736は、例えば、濃度算出プログラム735を実行したCPU71により算出された検出対象物質の濃度が所定の閾値以上であるか否か判断する機能を、CPU71に実現させる。
具体的には、CPU71は、例えば、検出側メモリ部51(又は本体側メモリ部85)に記憶された判定データから所定の閾値を取得して、算出された濃度が、その所定の閾値以上であるか否かを判断する。
より具体的には、判定データが、例えば、「濃度レベル1:100ppb以上500ppb未満」、「濃度レベル2:500ppb以上800ppb未満」、「濃度レベル3:800ppb以上1000ppb未満」、「濃度レベル4:1000ppb以上」である場合、CPU71は、例えば、最も低い濃度レベル“濃度レベル1”に対応する濃度範囲“100ppb以上500ppb未満”の下限“100ppb”を所定の閾値として取得して、算出された濃度が、その所定の閾値以上であるか否かを判断する。
CPU71は、かかる濃度判断プログラム736を実行することによって、濃度判断手段として機能する。
濃度レベル判定プログラム737は、例えば、濃度判断プログラム736を実行したCPU71により検出対象物質の濃度が所定の閾値以上であると判断された場合に、濃度算出プログラム735を実行したCPU71により算出された当該検出対象物質の濃度と、検出側メモリ部51(又は本体側メモリ部85)に記憶された判定データと、に基づいて、当該検出対象物質の濃度レベルを判定する機能を、CPU71に実現させる。
具体的には、CPU71は、例えば、検出側メモリ部51(又は本体側メモリ部85)に記憶された判定データを参照して、算出された濃度が該当する濃度レベルを判定する。
より具体的には、判定データが、例えば、「濃度レベル1:100ppb以上500ppb未満」、「濃度レベル2:500ppb以上800ppb未満」、「濃度レベル3:800ppb以上1000ppb未満」、「濃度レベル4:1000ppb以上」であり、算出された濃度が、例えば、700ppbである場合、CPU71は、例えば、“濃度レベル2”を検出対象物質の濃度レベルとして判定する。
CPU71は、かかる濃度レベル判定プログラム737を実行することによって、判定手段として機能する。
検出報知制御プログラム738は、例えば、表示部82、スピーカ部83及び/又はバイブレータ部84に制御信号を入力して、濃度判断プログラム736を実行したCPU71により検出対象物質の濃度が所定の閾値以上であると判断された場合に、当該検出対象物質が検出された旨を報知させる機能を、CPU71に実現させる。
具体的には、CPU71は、例えば、表示部82、スピーカ部83及び/又はバイブレータ部84に、検出対象物質が検出された旨と、検出側メモリ部51(又は本体側メモリ部85)に記憶された当該検出対象物質の種類(マトリックスセンサ10により検出可能な検出対象物質の種類)と、濃度レベル判定プログラム737を実行したCPU71により判定された当該検出対象物質の濃度レベルと、を報知させる。
交換報知制御プログラム739は、例えば、例えば、表示部82、スピーカ部83及び/又はバイブレータ部84に制御信号を入力して、検出部2(マトリックスセンサ10)を交換するよう報知させる機能を、CPU71に実現させる。
具体的には、CPU71は、例えば、センサ部指定プログラム732を実行したCPU71により複数のセンサ部20の全てが指定されて、封止部17を除去していないセンサ部20がなくなった場合に、表示部82、スピーカ部83及び/又はバイブレータ部84に、本体部4に取り付けられた検出部2(マトリックスセンサ10)を交換するよう報知させる。
<操作部>
操作部81は、例えば、図1に示す本体部4の筐体4aの正面側に配置された操作キーなどから構成され、ユーザにより操作されると、当該操作信号を制御部70に出力する。
<表示部>
表示部82は、例えば、図1に示す本体部4の筐体4aの正面側に配置されたLCD(Liquid Crystal Display)パネルなどから構成され、例えば、制御部70から入力される制御信号に従って、所与の表示処理を行う。
具体的には、表示部82は、例えば、制御部70から入力される制御信号に従って、検出報知手段として、濃度判断プログラム736を実行したCPU71により検出対象物質の濃度が所定の閾値以上であると判断された場合に、当該検出対象物質が検出された旨と、検出側メモリ部51(又は本体側メモリ部85)に記憶された当該検出対象物質の種類(マトリックスセンサ10により検出可能な検出対象物質の種類)と、濃度レベル判定プログラム737を実行したCPU71により判定された当該検出対象物質の濃度レベルと、を表示して報知し、ユーザに注意を促す。
より具体的には、例えば、マトリックスセンサ10により検出可能な検出対象物質の種類が「一酸化炭素」である場合、検出対象物質の濃度レベルが“濃度レベル1”のときは、例えば、「低濃度の一酸化炭素を検出しました。念のため注意してください」等の表示が表示部82に表示され、検出対象物質の濃度レベルが“濃度レベル2”のときは、例えば、「中濃度の一酸化炭素を検出しました。注意してください」等の表示が表示部82に表示され、検出対象物質の濃度レベルが“濃度レベル3”のときは、例えば、「やや高濃度の一酸化炭素を検出しました。注意してください」等の表示が表示部82に表示され、検出対象物質の濃度レベルが“濃度レベル4”のときは、例えば、「高濃度の一酸化炭素を検出しました。注意してください」等の表示が表示部82に表示される。
また、表示部82は、例えば、制御部70から入力される制御信号に従って、交換報知手段として、本体部4に取り付けられた検出部2(マトリックスセンサ10)を交換するよう表示して報知し、ユーザに交換を促す。
<スピーカ部>
スピーカ部83は、例えば、図2に示すように、本体部4の筐体4aの背面側から音を出力できるように配置され、例えば、制御部70から入力される制御信号に従って、所与の音出力処理を行う。
具体的には、スピーカ部83は、例えば、制御部70から入力される制御信号に従って、検出報知手段として、濃度判断プログラム736を実行したCPU71により検出対象物質の濃度が所定の閾値以上であると判断された場合に、当該検出対象物質が検出された旨と、検出側メモリ部51(又は本体側メモリ部85)に記憶された当該検出対象物質の種類(マトリックスセンサ10により検出可能な検出対象物質の種類)と、濃度レベル判定プログラム737を実行したCPU71により判定された当該検出対象物質の濃度レベルと、を音を出力して報知し、ユーザに注意を促す。
ここで、制御部70は、例えば、スピーカ部83から出力される音の音パターンや音量を使い分けることによって、検出対象物質の種類や濃度レベルを報知するようになっている。
また、スピーカ部83は、例えば、制御部70から入力される制御信号に従って、交換報知手段として、本体部4に取り付けられた検出部2(マトリックスセンサ10)を交換するよう音を出力して報知し、ユーザに交換を促す。
<バイブレータ部>
バイブレータ部84は、例えば、制御部70から入力される制御信号に従って、所与の振動発生処理を行い、本体部4の筐体4aを振動させる。
具体的には、バイブレータ部84は、例えば、制御部70から入力される制御信号に従って、検出報知手段として、濃度判断プログラム736を実行したCPU71により検出対象物質の濃度が所定の閾値以上であると判断された場合に、当該検出対象物質が検出された旨と、検出側メモリ部51(又は本体側メモリ部85)に記憶された当該検出対象物質の種類(マトリックスセンサ10により検出可能な検出対象物質の種類)と、濃度レベル判定プログラム737を実行したCPU71により判定された当該検出対象物質の濃度レベルと、を振動して報知し、ユーザに注意を促す。
ここで、制御部70は、例えば、バイブレータ部84から発生される振動の振動パターンや振動の大きさを使い分けることによって、検出対象物質の種類や濃度レベルを報知するようになっている。
また、バイブレータ部84は、例えば、制御部70から入力される制御信号に従って、交換報知手段として、本体部4に取り付けられた検出部2(マトリックスセンサ10)を交換するよう振動して報知し、ユーザに交換を促す。
<本体側メモリ部>
本体側メモリ部85は、例えば、磁気的記録媒体、光学的記録媒体、或いは、半導体メモリで構成され、例えば、制御部70から入力される制御信号に従って、所定のデータを記憶する。
<検出対象物質濃度測定処理>
携帯電話機1による検出対象物質の濃度の測定に関する処理の一例について、図15及び図16のフローチャートを参照して説明する。
まず、CPU71は、ユーザによる操作部81の操作によって、自己プロテクト機能をONするよう指示されたか否かを判断する(ステップS11)。
ステップS11で、自己プロテクト機能をONするよう指示されていないと判断すると(ステップS11;No)、CPU71は、ステップS11の処理を繰り返して行う。
一方、ステップS11で、自己プロテクト機能をONするよう指示されたと判断すると(ステップS11;Yes)、CPU71は、自己プロテクト機能をONにして、表示部82に、所定の設定画面を表示させる(ステップS12)。
ここで、所定の設定画面には、例えば、検出する検出対象物質の種類、現在設定されている判定データ(各濃度レベルに対応する検出対象物質の濃度の範囲)、現在設定されている報知濃度レベル、現在設定されている報知の仕方等が表示されるようになっている。そして、この設定画面においては、例えば、検出する検出対象物質の種類、現在設定されている判定データ(各濃度レベルに対応する検出対象物質の濃度の範囲)、現在設定されている報知濃度レベル、現在設定されている報知の仕方等を変更できるようになっている。
具体的には、例えば、検出する検出対象物質の種類を変更する方法としては、例えば、この設定画面において、携帯電話機1(マトリックスセンサ10)で検出可能な検出対象物質の種類の中から少なくとも1つを選択して変更する方法等が挙げられる。
また、現在設定されている判定データ(各濃度レベルに対応する検出対象物質の濃度の範囲)を変更する方法としては、例えば、この設定画面において、各濃度レベルに対応する検出対象物質の濃度の範囲を選択して変更する方法等が挙げられる。
また、現在設定されている報知濃度レベルを変更する方法としては、例えば、この設定画面において、「濃度レベル1以上で報知」、「濃度レベル2以上で報知」、「濃度レベル3以上で報知」及び「濃度レベル4で報知」のうちの何れか1つを選択して変更する方法等が挙げられる。
また、現在設定されている報知の仕方を変更する方法としては、例えば、この設定画面において、「表示部82に表示して報知」、「スピーカ部83から音を出力して報知」及び「バイブレータ部84から振動を発生して報知」のうちの少なくとも1つを選択して変更する方法等が挙げられる。
次いで、CPU71は、ユーザが、設定画面に表示されている設定内容に同意したか否かを判断する(ステップS13)。
具体的には、ユーザは、設定画面に表示されている設定内容に同意する場合、例えば、操作部81を操作して、設定画面上に表示されている「設定OK」ボタンを選択するようになっている。
ステップS13で、ユーザが設定内容に同意していないと判断すると(ステップS13;No)、CPU71は、ステップS13の処理を繰り返して行う。
一方、ステップS13で、ユーザが設定内容に同意したと判断すると(ステップS13;Yes)、CPU71は、本体部4に取り付けられた検出部2に内蔵されているマトリックスセンサ10が未使用のマトリックスセンサであるか否か(すなわち、携帯電話機1中のマトリックスセンサ10が備える全てのセンサ部20が封止部17で封止されているか否か)を判断する(ステップS14)。
具体的には、CPU71は、例えば、本体部4に取り付けられた検出部2に内蔵されているマトリックスセンサ10の“使用履歴(例えば、封止部17が除去されたセンサ部20を識別するためのセンサ部識別情報)”に基づいて、そのマトリックスセンサ10が未使用のマトリックスセンサであるか否か判断する。
ここで、使用履歴とは、例えば、本体部4に取り付けられた検出部2に内蔵されているマトリックスセンサ10を識別するためのマトリックスセンサ識別情報と、封止部17が除去されたセンサ部20を識別するためのセンサ部識別情報と、その封止部17が除去された日時と、などが対応付けられた情報であり、例えば、検出側メモリ部51及び/又は本体側メモリ部85に記憶されている。
ステップS14で、本体部4に取り付けられた検出部2に内蔵されているマトリックスセンサ10が未使用のマトリックスセンサであると判断すると(ステップS14;Yes)、CPU71は、ステップS19の処理に移行する。
一方、ステップS14で、本体部4に取り付けられた検出部2に内蔵されているマトリックスセンサ10が未使用のマトリックスセンサでないと判断すると(ステップS14;Yes)、CPU71は、劣化判断プログラム731を実行して、前回の検出に使用したセンサ部20(封止部17が除去されたセンサ部20)が劣化しているか否か判断する(ステップS15)。
具体的には、CPU71は、例えば、本体部4に取り付けられた検出部2に内蔵されているマトリックスセンサ10の“使用履歴(例えば、封止部17が除去された日時)”に基づいて、前回の検出に使用したセンサ部20が劣化しているか否か判断する。
ステップS15で、前回の検出に使用したセンサ部20は劣化していないと判断すると(ステップS15;No)、CPU71は、センサ部指定プログラム732を実行して、その前回の検出に使用したセンサ部20を指定し(ステップS16)、ステップS21の処理に移行する。
一方、ステップS15で、前回の検出に使用したセンサ部20は劣化していると判断すると(ステップS15;Yes)、CPU71は、本体部4に取り付けられた検出部2に内蔵されているマトリックスセンサ10が備えるセンサ部20の中に封止部17が除去されていない未指定のセンサ部20があるか否か判断する(ステップS17)。
具体的には、CPU71は、例えば、本体部4に取り付けられた検出部2に内蔵されているマトリックスセンサ10の“使用履歴(例えば、封止部17が除去されたセンサ部20を識別するためのセンサ部識別情報)”に基づいて、そのマトリックスセンサ10が備えるセンサ部20の中に封止部17が除去されていない未指定のセンサ部20があるか否か判断する。
ステップS17で、本体部4に取り付けられた検出部2に内蔵されているマトリックスセンサ10が備えるセンサ部20の中に封止部17が除去されていない未指定のセンサ部20がないと判断すると(ステップS17;No)、CPU71は、交換報知制御プログラム739を実行して、表示部82、スピーカ部83及び/又はバイブレータ部84に、本体部4に取り付けられた検出部2を交換するよう報知させ(ステップS18)」、自己プロテクト機能をOFFにして、本処理を終了する。
ここで、この表示部82、スピーカ部83及び/又はバイブレータ部84による報知は、例えば、ユーザによる操作部81の操作によって、その警告(報知)を終了するよう指示された場合等に終了することとする。
一方、ステップS17で、本体部4に取り付けられた検出部2に内蔵されているマトリックスセンサ10が備えるセンサ部20の中に封止部17が除去されていない未指定のセンサ部20があると判断すると(ステップS17;Yes)、CPU71は、センサ部指定プログラム732を実行して、予め設定された使用するセンサ部20の順番に従って、センサ部20(封止部17が除去されていない未指定のセンサ部20)を指定する(ステップS19)。
次いで、CPU71は、封止除去制御プログラム733を実行して、封止除去部30に、指定されたセンサ部20に対応する封止部17を除去させる(ステップS20)。
次いで、CPU71は、検出データ取得制御プログラム734を実行して、検出データ取得部40に、指定されたセンサ部20による検出データを取得する(ステップS21)。
具体的には、例えば、指定されたセンサ部20が備える作用電極121への電圧印加を開始する。
次いで、CPU71は、濃度算出プログラム735を実行して、取得された検出データに基づいて、検出対象物質の濃度を算出する(ステップS22)。
次いで、CPU71は、濃度判断プログラム736を実行して、算出された検出対象物質の濃度が所定の閾値以上であるか否かを判断する(ステップS23)。
ステップS23で、算出された検出対象物質の濃度が所定の閾値以上であると判断すると(ステップS23;Yes)、CPU71は、濃度レベル判定プログラム737を実行して、算出された検出対象物質の濃度レベルを判定し(ステップS24)、検出報知制御プログラム738を実行して、表示部82、スピーカ部83及び/又はバイブレータ部84に、検出対象物質が検出された旨と、その検出対象物質の種類と、判定されたその検出対象物質の濃度レベルと、を報知させ(ステップS25)、ステップS26の処理に移行する。
ここで、この表示部82、スピーカ部83及び/又はバイブレータ部84による報知は、例えば、ユーザによる操作部81の操作によって、その警告(報知)を終了するよう指示された場合等に終了することとする。
一方、ステップS23で、算出された検出対象物質の濃度が所定の閾値以上でないと判断すると(ステップS23;No)、CPU71は、劣化判断プログラム731を実行して、使用中のセンサ部20(封止部17が除去されたセンサ部20)が劣化したか否かを判断する(ステップS26)。
具体的には、CPU71は、例えば、本体部4に取り付けられた検出部2に内蔵されているマトリックスセンサ10の“使用履歴(例えば、封止部17が除去された日時)”に基づいて、使用中のセンサ部20が劣化したか否かを判断する。
ステップS26で、使用中のセンサ部20が劣化していないと判断すると(ステップS26;No)、CPU71は、ステップS21以降の処理を繰り返して行う。
一方、ステップS26で、使用中のセンサ部20が劣化したと判断すると(ステップS26;Yes)、CPU71は、ステップS17以降の処理を繰り返して行う。
無論、ステップS11〜ステップS26の間に、ユーザによる操作部81の操作等によって、検出対象物質の濃度の測定を中止するよう指示されると、CPU71は、その時点で、自己プロテクト機能をOFFにして、本処理を終了する。
なお、携帯電話機1による検出対象物質濃度測定処理は、携帯電話機1のその他の機能(通話、メール受信、インターネット接続等)がONされている場合であっても、実行可能である。
ここで、ステップS26で、マトリックスセンサ10の“使用履歴”に基づいて、使用中のセンサ部20が劣化したか否かを判断するようにしたが、これに限ることはなく、例えば、封止部17が除去された日時からセンサ部20の使用期限を決定し、その使用期限になった際にアラーム信号を出力するよう構成すると、アラーム信号が出力されるまでは、算出された検出対象物質の濃度が所定の閾値以上でないと判断した(ステップS23;No)後に、或いは、検出対象物質が検出された旨と、その検出対象物質の種類と、判定されたその検出対象物質の濃度レベルと、を報知した(ステップS25)後に、ステップS21以降の処理を繰り返して行うよう構成できるため、ステップS26の処理を省略することができる。
以上説明した本発明における携帯電話機1によれば、持ち運び可能な本体部4の筐体4aと、2次元マトリックス状に配置された複数のセンサ部20と複数のセンサ部20それぞれを外部から遮断する封止部17とを有し、筐体4aに着脱自在な検出部2(マトリックスセンサ10)と、複数のセンサ部20のうちの、所定のセンサ部20を指定するセンサ部指定プログラム732を実行したCPU71と、指定されたセンサ部20に対応する封止部17を除去する封止除去部30と、指定されたセンサ部20による検出データを取得する検出データ取得部40と、取得された検出データに基づいて、検出対象物質の濃度を算出する濃度算出プログラム735を実行したCPU71と、算出された検出対象物質の濃度が所定の閾値以上であるか否か判断する濃度判断プログラム736を実行したCPU71と、検出部2(マトリックスセンサ10)を交換するよう報知するとともに、検出対象物質の濃度が所定の閾値以上であると判断された場合に、当該検出対象物質が検出された旨を報知する表示部82、スピーカ部83及び/又はバイブレータ部84と、を備えている。
すなわち、封止部17によりセンサ部20が外部から遮断されているため、指定されて封止部17が除去されるまでは大気等への曝露に伴うセンサ部20の劣化を防止することができるとともに、複数のセンサ部20のうちの指定されたセンサ部20のみを使用するため、指定されて使用されるまでは使用に伴うセンサ部20の劣化を防止することができる。さらに、マトリックスセンサ10が備える複数のセンサ部20全てを同時に使用するのではなく、複数のセンサ部20のうちの指定されたセンサ部20のみを使用(封止部17を除去して使用)するため、複数のセンサ部20全てを使い切るまでは、検出部2(マトリックスセンサ10)は使用可能である。したがって、個々のセンサ部20の寿命が短いものであっても、マトリックスセンサ10のセンサとしての寿命を大幅に増加することができ、検出部2(マトリックスセンサ10)を長期間交換する必要がない。そのため、センサ交換に要する時間や煩わしさ、さらには、コストを抑えることができる。また、個々のセンサ部20が小さいため、動作時の消費電力を小さくすることができる。
特に、センサ部20が高温で動作させるセンサである場合は、使用による電極劣化が顕著であるが、マトリックスセンサ10にすることでセンサとしての寿命を大幅に延ばすことができる。
また、以上説明した本発明における携帯電話機1によれば、封止部17が除去されたセンサ部20が劣化しているか否か判断する劣化判断プログラム731を実行したCPU71を備え、センサ部指定プログラム732を実行したCPU71は、センサ部20が劣化していると判断された場合に、封止部17が除去されていない未指定のセンサ部20を指定し、表示部82、スピーカ部83及び/又はバイブレータ部84は、マトリックスセンサ10が備える全てのセンサ部20が指定された場合に、検出部2(マトリクスセンサ10)を交換するよう報知するようになっている。
すなわち、複数のセンサ部20のうちの指定されたセンサ部20のみを使用(封止部17を除去して使用)し、そのセンサ部20が劣化すると、次に使用するセンサ部20(封止部17が除去されていない未指定のセンサ部20)を指定するとともに、マトリックスセンサ10が備える全てのセンサ部20が指定されると、検出部2(マトリックスセンサ10)を交換するよう報知するようになっているため、マトリックスセンサ10のセンサとしての寿命を大幅に増加することができるとともに、マトリックスセンサ10のセンサとしての信頼性を高めることができる。
また、以上説明した本発明における携帯電話機1によれば、マトリックスセンサ10は、基礎基板11と、基礎基板11上に、2次元マトリックス状に配置された複数のセンサ部20と、基礎基板11上に配置され、センサ部20,20同士を隔てる隔壁部14と、センサ部20の基礎基板11と対向する側の面を封止することによって、複数のセンサ部20それぞれを外部から遮断する封止部17と、を備え、センサ部20は、基礎基板11上に配置された検出素子としての電極12と、電極12上に配置され、少なくとも基礎基板11に対して略垂直方向に貫通する細孔13aを有する多孔体13と、多孔体13の細孔13aの内部に担持され、検出対象物質と選択的に反応する反応物質(生体物質)としての酵素Eと、を有し、その反応に伴う所定の変化を電極12により検出するようになっている。
すなわち、検出対象物質と選択的に反応する酵素Eを多孔体13に固定しているため、酵素Eを電極12上に直接固定する場合と比較して、センサ部20が備える酵素Eの量が増加し、マトリックスセンサ10を小型化しても、センサ部20が高感度となる。
したがって、酵素Eを電極12上に直接固定する場合と比較して、より小型の高感度検出部2(マトリックスセンサ10)の提供が可能となるため、好適である。
さらに、多孔体13は、基礎基板11に対して略垂直方向に貫通する細孔13aを有する多孔体であるため、反応物質(酵素E)を適度に分散でき、しかも、基質や生成物の拡散性が良いので、センサ感度の向上が期待できる。
また、以上説明した本発明における携帯電話機1によれば、センサ部20により検出可能な検出対象物質の種類を記憶する種類記憶手段としての検出側メモリ部51を備え、表示部82、スピーカ部83及び/又はバイブレータ部84は、検出対象物質が検出された旨を報知するとともに、検出側メモリ部51に記憶された当該検出対象物質の種類を報知するようになっている。
したがって、ユーザに、検出対象物質が検出された旨とともに、その検出対象物質の種類を知らせることができるため、好適である。
また、以上説明した本発明における携帯電話機1によれば、検出対象物質の濃度レベルを判定するための判定データを記憶する判定データ記憶手段としての検出側メモリ部51と、濃度判断プログラム736を実行したCPU71により検出対象物質の濃度が所定の閾値以上であると判断された場合に、濃度算出プログラム735を実行したCPU71により算出された当該検出対象物質の濃度と、検出側メモリ部51に記憶された判定データと、に基づいて、当該検出対象物質の濃度レベルを判定する濃度レベル判定プログラム737を実行したCPU71と、を備え、表示部82、スピーカ部83及び/又はバイブレータ部84は、検出対象物質が検出された旨を報知するとともに、決定された当該検出対象物質の濃度レベルを報知するようになっている。
したがって、ユーザに、検出対象物質が検出された旨とともに、検出対象物質の濃度レベルを知らせることができるため、好適である。
なお、本発明の実施の形態は、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
<変形例1>
なお、実施の形態において、電極12の対向電極123は、図8及び図10に示すようなセンサ部20それぞれに対応して個別に形成されたものに限ることはなく、例えば、図17及び図18に示す電極12Aの対向電極123Aのように、一体的に形成されていても良い。ここで、図17においても、図8と同様、ドットパターンで塗りつぶした部分が電極12A(作用電極121A、参照電極122A及び対向電極123A)である。
具体的には、例えば、図17及び図18に示すように、各電極12Aの作用電極121Aは、基礎基板11上面における分析部111の内部に形成され、センサ部20それぞれに対応して個別に形成されており、各電極12Aの参照電極122Aは、基礎基板11上面における分析部111の内部に形成され、センサ部20それぞれに対応して個別に形成されており、各電極12Aの対向電極123Aは、基礎基板11上面における分析部111内及び分析部111外に一体的に形成されている。そして、対向電極123Aのうちの分析部の内部に形成された部分が、センサ部20それぞれに対応する対向電極として機能する。
この場合、電極12A(作用電極121A、参照電極122A及び対向電極123A)は、公知の方法により、ビアホールを介して、基礎基板11背面の配線パターンと電気的に接続されている。
以上説明した変形例1によれば、各センサ部20の対向電極が一体的に構成されているため、例えば、図18に示すように、各センサ部20の対向電極を個別に構成する場合(図10)と比較して、配線を個別に引き出す必要もなく、マトリックセンサ10と検出データ取得部40との間の配線を単純化できため、簡略化することができるとともに、センサチップとして一体化する場合などは、小型化することができる。
<変形例2>
なお、実施の形態において、マトリックスセンサ10は、図6及び図7に示すような、酵素Eの特性を利用した電流値検出型センサとして機能するセンサ部20を有するものに限ることはなく、例えば、図19及び図20に示すマトリックスセンサ10Bのように、酸化物半導体粒子等の触媒Cの特性を利用した抵抗値検出型センサとして機能するセンサ部20Bを有するものであっても良い。
<マトリックスセンサ>
図19はマトリックスセンサ10Bの平面斜視図、図20は図19のXX−XX線における断面図、図21は電極12Bが形成された基礎基板11Bの平面図である。
マトリックスセンサ10Bは、例えば、図19に示すように、22×22の2次元マトリックス状に配置された484個のセンサ部20Bを有している。センサ部20Bは、例えば、酸化物半導体粒子等の触媒Cの特性を利用して気体試料中(例えば、大気中)の検出対象物質を半導体式検出法(半導体表面へのガス吸着に伴う電気抵抗の変化を測定する方法)によって検出する半導体式ガスセンサである。
具体的には、センサ部20Bは、例えば、図20に示すように、基礎基板11B上(基礎基板11Bの表面)に形成された検出層21と、検出層21上に形成された透過層22と、透過層22上に形成された供給層23と、により構成されている。
検出層21は、所定の気体で満たされている。検出素子としての電極12Bは、検出層21に配置されており、検出対象物質と選択的に反応する反応物質としての触媒Cは、多孔体13Bに担持(固定)された状態で検出層21に含有されている。以下、多孔体13Bと、多孔体13Bに担持された触媒Cと、により構成される層を「感応層L」と呼ぶ。そして、供給層23の透過層22と対向する側の面(すなわち、センサ部20Bの基礎基板11Bと対向する側の面)は、除去可能な封止部17Bにより封止されている。
すなわち、センサ部20Bは、検出層21に所定の気体と感応層Lとを含有した状態で、封止部17Bにより外部から遮断されている。
なお、マトリックスセンサ20Bにおいては、例えば、基礎基板11の裏面に、センサ部20Bの動作温度を維持するための薄膜ヒータ等を設けても良い。薄膜ヒータの材質は、特に限定されるものではなく、例えば、白金、金、白金パラジウム合金等、従来の基板型半導体式ガスセンサと同様の材質を用いることができる。特に、白金は、耐久性に優れた材料であり、好ましく適用することができる。
センサ部20Bにおいて、封止部17Bが除去されて供給層23に気体試料が供給されると、その気体試料中の検出対象物質は、透過層22を透過して検出層21に移行し、検出層21が備える触媒Cと反応する。そして、センサ部20Bは、その反応に伴う所定の変化(具体的には、ガス吸着に伴う触媒Cへの電荷移動によるキャリア密度変化)を電極12Bにより検出することによって、検出対象物質を検出するようになっている。
すなわち、例えば、検出対象物質を一酸化炭素(CO)、触媒Cを酸化スズ(SnO)等のn型半導体微粒子とした場合、触媒C(半導体)の表面に吸着している酸素がCOと反応することによって変化する触媒Cの電気抵抗を、電極12Bで検出することにより、検出対象物質を検出するようになっている。具体的には、酸化スズ(SnO)等のn型半導体微粒子は、空気中では、表面に酸素が吸着して、その酸素に半導体中の電子が引き寄せられるため、半導体表面に電気伝導度が低い電子欠損層が存在し、電気抵抗が高い状態となるが、還元性ガスであるCOを供給すると、吸着している酸素がCOと反応してCOを生成して半導体表面から脱離し、その酸素に引き寄せられていた電子が半導体中に戻るため、電気伝導度が高くなり、電気抵抗が低下する。触媒Cを含む感応層Lの電気抵抗の変化率は、検出対象物質の濃度に依存するため、電気抵抗値の変化量を電圧値に変換して電極12Bで検出することによって、検出対象物質を検出するようになっている。
マトリックスセンサ10Bは、例えば、図20に示すように、基板としての基礎基板11Bと、基礎基板11B上面の分析部111内に形成された電極12B(第1検出電極125B及び第2検出電極126B)と、電極12B上に形成された感応層L(多孔体13Bと、多孔体13Bに担持された触媒Cと、により構成される感応層L)と、基礎基板11B上に形成された隔壁部14Bと、隔壁部14B上に形成された透過膜15Bと、透過膜15B上に形成されたスペーサ16Bと、スペーサ16B上に形成された封止部17Bと、封止部17B上に配置されたカバー部18Bと、などを備えて構成される。
(基礎基板)
基礎基板11Bは、例えば、平面視略矩形状に形成されている。基礎基板11Bの材質は、絶縁体であれば特に限定されるものではなく、例えば、シリコン、アルミナ、シリカ、ガラス等を用いることができる。
(電極)
電極12B(櫛型の第1検出電極125B及び第2検出電極126B)は、例えば、図21に示すように、基礎基板11B上面における分析部111の内部に形成されている。
電極12B(第1検出電極125B及び第2検出電極126B)は、例えば、公知の方法により、ビアホールを介して、基礎基板11B背面の配線パターンと電気的に接続されている。
電極12Bは、例えば、蒸着法又はスパッタリング法により電極用薄膜を成膜して、フォトリソグラフィー工程でパターニングすることによって作成することができる。なお、電極12Bの作成は、フォトリソプロセスでの作成に限定されるものではなく、例えば、スクリーン印刷の手法を用いて簡易的に行っても良い。
電極用薄膜の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、白金、金、白金パラジウム合金等、従来の基板型半導体式ガスセンサと同様の材質を用いることができる。特に、白金は、耐久性に優れた材料であり、好ましく適用することができる。
(感応層)
感応層Lは、例えば、多孔体13Bと、多孔体13Bに担持された触媒Cと、により構成されている。
多孔体13Bは、例えば、第1検出電極125B及び第2検出電極126B上に直接形成されており、基礎基板11Bに対して略垂直方向に貫通する細孔13aを有している。
多孔体13Bは、例えば、第1検出電極125B及び第2検出電極126Bの一部を覆うように、例えば、平面視略長方形状に形成されている。
多孔体13Bとしては、例えば、金属多孔体を好ましく用いることができる。
金属多孔体としては、公知の方法で作成したメソポーラス金属やメソポーラスカーボンなどが挙げられる。金属多孔体は、ハードテンプレート法(メソポーラスシリカを鋳型として用いそのレプリカを合成する手法)やソフトテンプレート法(リオトロピック液晶を直接鋳型とする手法)などにより、第1検出電極125B及び第2検出電極126B上に(並びに、第1検出電極125Bと第2検出電極126Bとの間の領域の基礎基板11B上に)直接、基礎基板11Bに対して略垂直方向に合成することができる。
触媒Cとして細孔13aに担持される酸化物半導体微粒子としては、例えば、噴霧熱分解法、スプレードライ法、沈澱法等の製造方法により製造されたものを使用することができる。そして、その形状としては、例えば、球状に近いものが好適である。
また、触媒Cを含んだ構造(例えば、Pt−SnO)として、電極12B上又は基礎基板11B上に多孔体13Bを直接合成し、かつ、メソポーラス多孔体の骨格はナノ粒子の連結により形成することができる。この場合、表面積の増大に加え、触媒活性の向上により、さらに検出対象物質の検出感度を高めることができる。
或いは、細孔13a内の電極12B上又は基礎基板11B上に、例えば、Fe/Al等の触媒金属を付着させて加熱し、熱化学気相成長法によって、細孔13a内に基礎基板11Bに対して略垂直方向に配向するカーボンナノチューブを形成し、そして、そのカーボンナノチューブにEB蒸着などによって、白金触媒等の触媒Cを担持させることもできる。また、既知のアーク放電法やレーザー蒸発法などによって得られる繊維状のカーボンナノチューブを電極12B上又は基礎基板11B上に形成した多孔体13Cの細孔13a内に配置し、そして、そのカーボンナノチューブにEB蒸着などによって、触媒Cを担持させることもできる。
カーボンナノチューブを使用する場合、単層、多層の何れのカーボンナノチューブでも適用可能であるが、特に単層のカーボンナノチューブで半導体的性質を有するものが好ましい。
触媒Cを担持したカーボンナノチューブを細孔13a内に形成した場合、マトリックスセンサ10Bは、センサ部20Bの動作温度を維持するための薄膜ヒータを備えていなくても良い。一般的に半導体式ガスセンサでは、測定時に加えて、吸着ガスの脱離のために、350℃程度でのヒータによる加熱操作が必要となるが、触媒Cを担持したカーボンナノチューブを細孔13a内に形成したマトリックスセンサ10Bでは、常温で低濃度の検出対象物質を検出できる。
なお、触媒Cが担持された縦孔構造を有する多孔体13Bは、少なくとも第1検出電極124C及び第2検出電極125Cの上面に配置されていれば良い。特に、陽極酸化や界面活性剤を使用した金属のめっきなどの方法、或いは、外場により方向性を制御した金属など、電極12C上に基礎基板11Cに対して略垂直方向に貫通する細孔13aを有する有機・無機の構造体を直接形成しても良い。例えば、アルミナの陽極酸化により基礎基板11Cに対して略垂直方向に貫通する陽極酸化アルミナを形成することもできるし、さらに、その細孔の中にさらに小さなナノの細孔径を有するシリカチャンネルの束を形成することもできるし、予め金属触媒を含んだ形態での構造体として形成することもできる。
また、触媒Cを固定するための担体は、多孔体13Bに限ることはなく、多孔体13Bと同等の機能を有するもの(電極12Bよりも比表面積が大きく、かつ、基礎基板11Bに対して略垂直方向に貫通する細孔13a(流路)を持つもの)であれば任意であり、例えば、カーボンナノチューブ等の繊維状集合体などであっても良い。
(隔壁部)
隔壁部14Bは、例えば、基礎基板11B上に電極12Bを形成する前に、基礎基板11B上面にエッチング加工等して形成されており、隔壁部14Bの開口部内には、一対の検出電極(第1検出電極125B及び第2電極126B)が対向して配置されている。
(透過膜)
透過膜15Bは、例えば、基礎基板11CB上面に熱融着されたり接着されたりして、基礎基板11B上に固定されている。
なお、マトリックスセンサ10Bにおいては、透過膜15Bは、必ずしも備える必要はないが、封止部17Bが除去された後のセンサ部20B未使用時に湿気や空気中の浮遊物などが触媒Cや電極12Bに吸着して触媒Cや電極12Bが劣化してしまうのを防ぐ等の観点から、備えている方が望ましい。また、透過膜の特性(厚み、細孔径、材質等)を変えることで、センサ部20Bの検出濃度範囲の調整することができるので、この点でも、透過膜15Bは備えている方が望ましい。
(スペーサ)
スペーサ16Bは、例えば、スパッタやプラズマCVD法を用いてシリコン酸化膜や窒化膜のような絶縁層を堆積することにより形成する。或いは、例えば、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂などを用いてフォトリソグラフィー法等により透過膜15B上に直接形成しても良い。
(封止部)
封止部17Bは、例えば、STP法を用いて形成することができる。すなわち、まず、シートフィルムに予め塗布形成した樹脂膜を、真空中でスペーサ16Bに熱圧着する。次いで、シートフィルムを樹脂膜から剥離し、スペーサ16Bに貼り付けられた樹脂膜を、300℃程度の温度で1時間程度保持する熱処理により硬化する。これにより、封止膜が形成される。樹脂膜は、例えば、ポリアミド、ポリアミド酸、ポリベンゾオキサゾール(若しくはこの前駆体)などのベース樹脂(ポリイミド)を使用することができる。
なお、封止部17Bを除去する際に、透過膜15Bが傷付いたり透過膜15Bも除去されたりすることがないのであれば、スペーサ16Bを省略して、透過膜15B上に直接封止部17Bを形成しても良い。ここで、封止部17Bを除去する際に、透過膜15Bが傷付いたり透過膜15Bも除去されたりすることがない場合とは、例えば、透過膜15Bとして耐熱性の高い膜を用いるとともに、封止部17Bとして透過膜15Bよりも耐熱性の低い部材を用いて、加熱することにより封止部17Bを除去する場合等である。具体的には、例えば、封止部17B上に、ヒータ(抵抗体)マトリックスをスパッタ法等により形成する、或いは、STP法を用いて、樹脂膜、ヒータマトリックスシート、樹脂膜の順でスペーサ16Bに貼り付け、300℃程度の温度で1時間程度保持する熱処理により硬化することによって、ヒータマトリックスシートを備えた封止部17Bが形成される。使用時には、パルス電圧を印加して対応する抵抗部のみを焼き切ることにより、指定したアドレスのセンサ部20Bに対応する封止部17Bのみを除去する。
(カバー部)
カバー部18Bは、例えば、封止部17B上面における分析部111に対応する領域以外の部分に、シリコン酸化膜をスパッタ法により堆積して形成することができる。
ここで、マトリックスセンサ10Bは、実施の形態のマトリックスセンサ10よりも簡単な通常のガス検知回路(負荷抵抗を加えて、マトリックスセンサ10Bの各センサ部20B(R)と負荷抵抗(R)の両端に電圧を印加すると、センサ信号はRとRの分割電圧となり、センサ抵抗に応じてセンサ信号が変化するため、これを計測する)で、検出データを取得することができるため、マトリックスセンサ10CB接続する検出データ取得部40の詳細な説明は省略することとする。
以上説明した変形例2によれば、多孔体13Bとして、金属多孔体を好ましく用いることができるが、金属多孔体を電極12B上に直接形成して、その金属多孔体に触媒Cを担持させることによって、電極12Bの実効表面積を著しく増大することができるとともに、触媒Cを電極12B上に直接固定する場合と比較してセンサ部20Bが備える触媒Cの量を増大することができ、かつ、多孔体13Bは、基礎基板11Bに対して略垂直方向に貫通する細孔13aを有する多孔体であるため、反応物質(触媒C)を適度に分散でき、しかも、検出対象物質の拡散性が良いので、センサ感度の向上が期待できる。
また、以上説明した変形例2によれば、マトリックスセンサ10Bは484個のセンサ部20Bを有しているため、例えば、使用するセンサ部20Bのみをオンにして、ある一定濃度レベル以上の検出対象物質を検出した毎に新たなセンサ部20Bを使用するようにすれば、例えば、484回のガス検知が行えるため、用途によっては十分な使用期間を確保することができる。
なお、実施の形態において、複数のセンサ部20で同一試料中の検出対象物質を検出して、その複数のセンサ部20それぞれによる検出データを用いて所定の統計処理(例えば、平均値を求める処理、中間値を求める処理、平均や分散、標準偏差などから値の確からしさを求める処理、各検出データを加算する処理、各検出データの差分を取る処理等)を行い、当該所定の統計処理の結果に基づいて、検出対象物質の濃度を算出するようにしても良い。
この場合、複数のセンサ部20それぞれによる検出データを統計処理した結果に基づいて、検出対象物質の濃度を算出するため、携帯電話機1の濃度測定精度を高めることができる。
ここで、各検出データを加算する処理とは、例えば、検出対象物質が異なるセンサ部20を複数用意して、各センサ部20による検出データの和を取る処理である。具体的には、センサ部Aの検出対象物質がホルムアルデヒドであり、センサ部Bの検出対象物質がベンゼンであり、センサ部Cの検出対象物質がキシレンであり、センサ部Dの検出対象物質がトルエンである場合、各センサ部20による検出データの和をVOC(揮発性有機化合物)と定義して、この和に基づいて、VOCの濃度を算出することができる。
また、各検出データの差分を取る処理とは、例えば、検出対象物質が異なるセンサ部20を複数用意して、各センサ部20による検出データの差を取る処理である。具体的には、センサ部Aの検出対象物質が水素化合物及び硫黄系物質であり、センサ部Bの検出対象物質が硫黄系物質のみである場合、各センサ部20の検出データの差に基づいて、水素化合物の濃度を算出することができる。
また、実施の形態において、マトリックスセンサ10に、センサ部20に加えて、センサ部20から酵素Eのみを除いたセンサ部(差分用センサ部)を備え、センサ部20による検出データと、差分用センサ部による検出データと、の差分を取り、その差分に基づいて、検出対象物質の濃度を算出するようにしても良い。
この場合、差分用センサ部は、検出対象物質と酵素Eとの反応に伴う所定の変化を検出する際に観測されるドリフトのみを検出することができる。したがって、差分を取ることにより、検出対象物質と酵素Eとの反応に伴う所定の変化のみを検出することができるため、携帯電話機1の濃度測定精度を高めることができるとともに、ドリフトが収束(バックグラウンドが安定)するまで待機する必要がないため、携帯電話機1による濃度測定を高速化することができる。
また、実施の形態において、マトリックスセンサ10は、検出対象物質を検出可能な検出濃度範囲が同一の複数種類のセンサ部20を備えるものに限ることはなく、例えば、検出濃度範囲が異なる複数種類のセンサ部20を備えるものであっても良い。
この場合、検出濃度範囲が異なる複数種類のセンサ部20を備えるという簡易な構成で、携帯電話機1(マトリックスセンサ10)全体では、広範な検出濃度範囲を有することができるとともに、複数種類のセンサ部20のうちの最適な検出濃度範囲を有するセンサ部20で検出対象物質を検出することができるため、検出対象物質の濃度が未知であっても、適切な検出濃度範囲で当該検出対象物質を検出して、当該検出対象物質の濃度を算出することができる。
ここで、センサ部20の検出濃度範囲の調整の仕方は、例えば、検出対象物質が透過層22を透過する際の透過率を変えることによって調整する方法、透過膜15と電極12との間の距離を変えることによって調整する方法などが挙げられる。透過率を変えることによって調整する方法でセンサ部20の検出濃度範囲の調整する場合、例えば、透過率が高いセンサ部20(検出対象物質が透過層22を透過しやすいセンサ部20)ほど、検出濃度範囲が低濃度側となり、透過率が低いセンサ部20(検出対象物質が透過層22を透過しにくいセンサ部20)ほど、検出濃度範囲が高濃度側となる。また、例えば、酵素センサ等において、透過膜15と電極12との間の距離を変えることによって調整する方法でセンサ部20の検出濃度範囲の調整する場合、例えば、透過膜15と電極12との間の距離が小さいほど、検出濃度範囲は低濃度側となり、透過膜15と電極12との間の距離が大きいほど、検出濃度範囲は高濃度側となる。
また、例えば、マトリックスセンサ10に、機能が異なる複数種類のセンサ部20を備えることによって、マトリックスセンサ10を、検出濃度範囲が異なる複数種類のセンサ部20を備えるものとしても良い。すなわち、例えば、マトリックスセンサ10に、電極式センサ(電極式の酵素センサ)として機能するセンサ部20と、固体電解質式センサとして機能するセンサ部20と、金属酸化物半導体式センサとして機能するセンサ部20と、水晶振動子式センサとして機能するセンサ部20と、などを備えることによって、マトリックスセンサ10を、検出濃度範囲が異なる複数種類のセンサ部20を備えるものとしても良い。
また、例えば、センサ部20の供給層23に対する気体試料の供給速度を変化させることによって、センサ部20の検出濃度範囲を調整することもできる。この場合、供給速度が速いほど、検出濃度範囲は低濃度側となり、供給速度が遅いほど、検出濃度範囲は高濃度側となる。
また、実施の形態において、検出側メモリ部51(又は本体側メモリ部85)に記憶された判定データは、任意のタイミングで、例えば、ユーザによる操作部70の操作等によって変更できるようにしても良い。
また、実施の形態において、センサ部20の配置の仕方は、5×5の2次元マトリックス状に限ることはなく、マトリックスセンサ10が複数のセンサ部20を有していれば任意である。すなわち、例えば、センサ部20は、X×Yの2次元マトリックス状(XとYは自然数であり、X=Yであっても、X≠Yであっても良い。)に配置されていても良いし、X×Y×Zの3次元マトリックス状(XとYとZは自然数であり、X=Yであっても、X≠Yであっても、Y=Zであっても、Y≠Zであっても、Z=Xであっても、Z≠Xであっても良い。)に配置されていても良い。X×Y×Zの3次元マトリックスの場合は、実施の形態のセンサマトリックス10を積み重ねる等して構成することができる。もちろん、MEMS等の微細加工技術やフォトリソ等の半導体技術を利用して作成することが可能である。
また、実施の形態において、マトリックスセンサ10が有する複数のセンサ部20は、同一基板上に形成された一体的なものに限ることはなく、マトリックスセンサ10が複数のセンサ部20を有しているのであれば、それぞれ別体であっても良い。
また、実施の形態において、各センサ部20を封止する封止部17は、一体的に形成されたものに限ることはなく、対応するセンサ部20を外部から遮断することができるのであれば任意であり、例えば、各センサ部20それぞれに対応して個別に形成されていても良い。
透過膜15も、一体的に形成されたものに限ることはなく、例えば、各センサ部20それぞれに対応して個別に形成されていても良い。
また、実施の形態において、封止部17の除去の仕方は、除去部材31を用いて機械的に除去するものに限ることはなく、指定されたセンサ部20に対応する封止部17を除去することができるのであれば任意であり、例えば、除去部材31以外のものを封止部17に刺し込むことによって、機械的に除去するようにしても良いし、所定の封止部加熱機構を用いて封止部17を焼いたり溶かしたりすることによって、或いは、予め封止部17や封止部17近傍に抵抗体を組み込んで電圧を印加することによって、熱的・電気的に除去するようにしても良いし、所定の封止部移動機構を用いて封止部17を移動(スライド等)させることによって、電気的に除去するようにしても良いし、レーザ等を使用して、その圧力で封止部17を破ったり焼き切ったりして除去するようにしても良い。なお、封止部17を移動させて除去する場合、封止部17を各センサ部20それぞれに対応して個別に形成するのが好ましい。
また、実施の形態において、センサ部20の劣化の判断の仕方は、センサ部20の有効使用期間を用いて判断するものに限ることはなく、センサ部20を封止する封止部17を除去してからの感度の低下の度合いが予め設定された“許容感度範囲”を超えた際に、そのセンサ部20が劣化していると判断できるのであれば任意であり、例えば、定期的に標準試料(検出対象物質の濃度が一定の気体試料)中の検出対象物質を検出して、その際の感度(検出データ(応答電流値))に基づいて判断するようにしても良い。
また、検出対象物質の濃度を測定する前に、標準試料(検出対象物質の濃度が一定の気体試料)中の検出対象物質を検出し、その際の感度(検出データ(応答電流値))に基づいて、キャリブレーションを行うようにしても良い。この場合、センサ部20が劣化等して、センサ部20の感度が低下していても、そのセンサ部20が検出対象物質を検出できない状態になるまでは、そのセンサ部20を使用して検出対象物質の濃度を測定できるため、本発明のマトリックスセンサを長寿命化することができるとともに、本発明のマトリックスセンサのセンサとしての信頼性を高めることができ、好適である。ここで、センサ部20が検出対象物質を検出できない状態とは、例えば、検出対象物質を供給しても応答電流が上昇しない状態等である。
さらには、実施の形態において、センサ部20が、例えば、金属酸化物半導体式センサや固体電解質式センサなどの場合、同時に同一種類のセンサ部20を複数開封して使用し、一方を使用環境に一定濃度で存在する基準ガスを検知するセンサとすれば、この基準ガスセンサの応答出力が一定値以下になると劣化していると判断することができる。基準ガスは、一酸化炭素、硫化水素などを含む各種のガスで良い。ガス種に応じて、作用電極121と参照電極122との間の印加電圧を設定すれば良い。或いは、センサ部20が、高温で使用するセンサの場合、温度センサを同時に装備し、予めメモリ上に記憶してある温度と寿命の関係データから、演算により劣化を判断することもできる。
また、最初の劣化判断をせずに、同時に複数のセンサ部20を動作させ、検出データの平均から極端に値がずれたものを“故障したセンサ部”として除外することにより劣化を検出する(そのセンサ部20はそれ以降、使用しない)こともできる。
また、実施の形態において、酵素Eが固定された縦孔構造を有する多孔体13は、少なくとも作用電極121の上面に配置されていれば良い。特に、陽極酸化や界面活性剤を使用した金属のめっきなどの方法、或いは、外場により方向性を制御したメソポーラスシリカなど、電極12上に基礎基板11に対して略垂直方向に貫通する細孔13aを有する有機・無機の構造体を直接形成しても良い。例えば、アルミナの陽極酸化により基礎基板11に対して略垂直方向に貫通する陽極酸化アルミナを形成することもできるし、さらに、その細孔の中にさらに小さなナノの細孔径を有するシリカチャンネルの束を形成することもできる。
さらに、実施の形態において、酵素Eは、多孔体13に固定された状態で検出層21に含有されていなくても良く、例えば、多孔体13以外の担体(例えば、カーボンナノチューブやシリカナノチューブなど)に固定された状態で検出層21に含有されていても良いし、電極12に直接固定された状態で検出層21に含有されていても良いし、検出層21を満たす電解液に溶解した状態(遊離酵素の状態)で検出層21に含有されても良い。
また、実施の形態において、電解液は、予め検出層21に含有されていなくても良く、例えば、封止部17が除去された後に検出層21に導入されても良い。この場合、酵素E、電子伝達体、補酵素などを乾燥状態のまま検出層21に予め含有させておき、封止部17が除去された直後に、インクジェットヘッド、ディスペンサ、シリンジ、ピペット等を用いて電解液を供給すると良い。
さらに、実施の形態において、酵素Eは、予め検出層21に含有されていなくても良く、例えば、封止部17が除去された後に検出層21に導入されても良い。
なお、電解液も酵素Eも予め検出層21に含有されない場合には、センサ部20は、封止部17で封止されていなくても良い。この場合、電解液や酵素Eなどの検出層21への導入は、公知のMEMS等の微細加工技術やフォトリソ等の半導体技術などを利用して、マイクロ流路やマイクロポンプをチップ上に直接、或いは、個別に形成して、これらを用いて導入することもできる。
また、実施の形態において、電極12は、三極構造(作用電極121、参照電極122及び対向電極123の三極構造)に限るものではなく、例えば、参照電極122を設けない二極構造(作用電極121及び対向電極123の二極構造)であっても良い。
また、実施の形態において、検出データ取得部40が備えるポテンショスタット回路42は、シングルチャンネルのポテンショスタット回路に限るものではなく、マルチチャンネルのポテンショスタット回路であっても良い。
また、実施の形態において、センサ部20それぞれに温度センサと温度調整素子(例えば、ヒータ膜やペルチェ素子など)とを備え、指定されたセンサ部20の温度制御が行えるよう構成しても良い。この場合、検出時の温度管理ができるため、検出精度を向上させることができる
また、実施の形態において、電極12の一部(例えば、参照電極122及び/又は対向電極123)を、基礎基板11の上面ではなく、透過膜15の下面(透過膜15の基礎基板11と対向する側の面)にスパッタ法等により形成しても良い。
また、実施の形態において、酵素Eが溶解する電解液を担体(ガラス繊維等)に保持させて、その担体を検出層21(作用電極121上)に配置し、そして、基礎基板11の上面に作用電極121を形成するとともに、その担体に参照電極122及び対向電極123を形成しても良い。この場合、必ずしも多孔体13や透過膜15を備える必要はない。
また、実施の形態において、センサ部20の構成は、検出対象物質の種類に応じて適宜変更可能である。
具体的には、検出層21に含有される生体物質は、酵素Eに限るものではなく、検出対象物質と選択的に反応する生体物質であれば任意である。具体的には、検出対象物質と選択的に反応する生体物質としては、例えば、酵素E等の生体触媒、抗原、抗体、脂質、細胞、菌、DNA、糖鎖等を用いることができる。
さらに、検出層21に含有される反応物質は、生体物質に限ることはなく、検出対象物質と選択的に反応する物質であれば任意である。具体的には、検出対象物質と選択的に反応する物質としては、例えば、上記生体物質、金属触媒、有機触媒、無機触媒、各種ポリマー、ポリマーコンプレックス、ポリイオンコンプレックス、吸光物質、蛍光物質等を用いることができる。特に、金属触媒としては、白金、パラジウム、ニオブ、イリジウム、タンタル、ニッケル、鉄、コバルト、ベリリウム、タングステン、ロジウム、ジルコニウム、銅、モリブデン、チタン、ルテニウム、タリウムなどの金属又はこれらの合金、さらには、酸化スズSnO、酸化亜鉛ZnO、酸化第二鉄Fe、四三酸化鉄Fe、アルミナAl、酸化マグネシウムMgO、酸化チタンTiO、ニ酸化モリブデンMnO、三酸化モリブデンMnO、酸化ニッケルNi、酸化クロムCrなどのいずれかの酸化物或いは多孔質金属酸化物、又はこれらの複合酸化物を用いることができる。検出層21に含有される反応物質の種類は、1種類であっても良いし、複数種類であっても良い。
なお、検出層21を満たす電解液は、検出層21に含有される反応物質の種類に応じて、適宜変更可能である。具体的には、検出層21に含有される反応物質が金属触媒(金属酸化物等)である場合は、金属酸化物半導体式センサなど、センサの検出方法によっては、電解液を入れてはいけない。また、検出層21及び供給層23(透過膜15と封止部17との間の部分)を窒素等の気体で満たすと良い場合もある。
また、検出素子は、電極12に限るものではなく、検出対象物質と、検出対象物質と選択的に反応する反応物質と、の反応に伴う所定の変化(例えば、物質変化、色変化、吸熱変化、発熱変化、質量変化、抵抗変化、容量変化等)を検出して電気信号に変換できるのであれば任意である。具体的には、検出素子としては、例えば、電極(過酸化水素電極、溶存酸素電極、電気伝導度電極、イオン電極、酸化還元電位電極、櫛型電極、並行平板電極等)、半導体、受光素子、感熱素子、圧電素子、サーミスタ、カンチレバー、イオン感応性電界効果型トランジスタ(ISFET)、水晶振動子(QCM)、弾性表面波(SAW:surface acoustic wave)デバイス等を用いることができる。
さらに、センサ部20は検出素子を備えていなくても良い。この場合の検出法としては、例えば、センサ部20(マトリックスセンサ10)の外部から、光学的検出法等によって、化学発光、吸光、蛍光、プラズモン現象等を検出することにより、検出対象物質を検出する方法等を用いることができる。
また、センサ部20は、電極式の酵素センサとして機能するものに限ることはなく、検出対象物質を検出できるセンサであれば任意である。検出対象物質を検出できるセンサとしては、例えば、電気化学式センサ、固体電解質式センサ、触媒燃焼式センサ、金属酸化物半導体式センサ、電界効果型トランジスタ式センサ、水晶振動子式センサ、電極式センサ、イオン感応性電界効果型トランジスタ(ISFET)式センサ、光学式センサ等が挙げられる。
ここで、電気化学式センサは、例えば、電解液中に溶け込んだ検出対象物質の反応に伴い発生する電流を検出することで、検出対象物質を検出するセンサである。
また、固体電解質式センサは、例えば、固定電解質で隔てられた両側の濃度差(検出対象物質の濃度の差)に伴い発生する起電力を検出することで、検出対象物質を検出するセンサである。
また、触媒燃焼式センサは、例えば、貴金属(白金やパラジウムなど)をコートした白金線を300℃〜400℃に加熱しておくと、白金線にコートされた貴金属に接触した検出対象物質はその貴金属の触媒作用で燃焼するが、この燃焼に起因する温度変化に伴う抵抗変化を検出することで、検出対象物質を検出するセンサである。
また、金属酸化物半導体式センサは、例えば、n型半導体表面に大気中で吸着していた酸素は、n型半導体と検出対象物質との相互作用によって、n型半導体表面から除去されるが、この除去に伴うn型半導体の抵抗変化を検出することで、検出対象物質を検出するセンサである。
また、電界効果型トランジスタ式センサは、例えば、電界効果型トランジスタ(FET)のゲート部に感応膜(検出対象物質と選択的に反応する感応膜)をコートしておき、検出対象物質の感応膜中への拡散に伴うドレイン電流の変化を検出することで、検出対象物質を検出するセンサである。
また、水晶振動子式センサは、例えば、検出対象物質が水晶振動子(QCM)の表面に付着・乖離することに伴う重量変化を、水晶振動子の周波数変化として検出することで、検出対象物質を検出するセンサである。また、水晶振動子式センサとしては、水晶振動子の表面に、検出対象物質と選択的に反応する感応膜(有機感応膜や無機感応膜)や検出対象物質と選択的に反応する生体物質(生体物質が固定された担体であっても良い。)などを固定したものも知られている。
同様に、カンチレバー式センサは、例えば、検出対象物質とカンチレバー表面との相互作用により生じる表面応力の変化を、カンチレバーのたわみ量(変位量)により検出するというものであるが、カンチレバーが検出対象物質に接触させる前後において、カンチレバーの変位量を測定することにより、検出対象物質を検出するセンサである。
また、電極式センサは、例えば、金属やカーボンなどの電極に電圧を印加して、検出対象物質を電気化学的に酸化したり還元したりすることで生じる拡散電流を測定することで、検出対象物質を検出するセンサである。電極式センサとしては、例えば、電極(過酸化水素電極、溶存酸素電極、電気伝導度電極、イオン電極、酸化還元電位電極等)と、検出対象物質と選択的に反応する感応膜(有機感応膜や無機感応膜)や検出対象物質と選択的に反応する生体物質(生体物質が固定された担体であっても良い。)などと、を組み合わせたもの等が知られている。具体的には、例えば、溶存酸素電極と微生物固定膜とを組み合わせることにより、微生物固定膜の酸素消費量から微生物の呼吸活性を検出することで、有害物質(検出対象物質)を検出する電極式のバイオセンサが知られている。
ここで、電極式センサのうち、電極と酵素(生体物質)とを組み合わせたものが、実施の形態のセンサ部20(電極式の酵素センサ)に対応する。
また、ISFET式センサは、例えば、半導体又は絶縁性基板上に電界効果型トランジスタや貴金属電極を設置し、この上にイオン感応性膜を配置したセンサであり、液中のpH計測用の独立したセンサとして用いることもできるし、さらにイオン感応性膜の上に検出対象物質と選択的に反応する生体物質(生体物質が固定された担体であっても良い。)を固定化することでバイオセンサとして用いることもできる。具体的には、例えば、全血又は生体表面から浸出させた浸出液のような溶液中に存在する特定の有機物(検出対象物質)が、酵素の触媒作用により化学反応をした時に生じる水素イオン濃度又は電子濃度の変化を検出することで、特定の有機物を検出するISFET式のバイオセンサが知られている。
また、光学式センサは、例えば、識別素子(検出対象物質と選択的に反応する生体物質など)により検出対象物質を捕らえ、化学発光、吸光、蛍光、表面プラズモン現象等を利用して光信号の変化を検出することで、検出対象物質を検出するセンサである。
ここで、センサ部20が触媒燃焼式センサや金属酸化物半導体式センサなどとして機能する場合は、必ずしも封止部センサ部20を封止部17で封止する必要がないが、常温でも空気中の物質(ガス)が吸着したりすれば感度は落ちるので、封止部17で封止する方が好ましい。
また、センサ部20が触媒燃焼式センサや金属酸化物半導体式センサなどとして機能する場合は、必ずしも隔壁部14を備える必要はないが、電気的なクロストークの防止や使用部周辺への熱拡散の防止などの観点から、隔壁部14を備えるのが好ましい。
なお、触媒燃焼式センサや金属酸化物半導体式センサなどは素子を高温で使用するため、小型にすると使用による電極劣化或いは触媒の剥離や亀裂などの発生が顕著である。したがって、これらを本発明のマトリックスセンサにすることで、センサとしての寿命を大幅に増加することができる。
そして、上記のようにセンサ部20の構成を適宜変更することによって、マトリックスセンサ10を、酸素ガス、一酸化炭素ガス、硫化水素ガス、窒素化合物、メタンガス、アンモニア、アルコールなどの有害ガス、ホルムアルデヒド、ダイオキシン、アスベスト、有機リン系農薬、カルバメート系農薬などの有害物質、ウイルス、花粉、細菌などの有害生体物質、火薬、麻薬、爆弾などから流出するガス成分等の、所望の検出対象物質を検出するためのセンサとして用いることができる。
また、実施の形態において、マトリックスセンサ10により検出可能な検出対象物質の種類は、1種類に限ることはなく、マトリックスセンサ10に、検出可能な検出対象物質が異なる複数種類のセンサ部20を備えることによって、マトリックスセンサ10を複数種類の検出対象物質を検出できるよう構成しても良い。
また、実施の形態において、各センサ部20を、リアクタやフローセルと組み合わせたり、マイクロ流路やマイクロリアクタ中の流路内に形成したりしても良い。
また、実施の形態において、マトリックスセンサ10が備えるセンサ部20の供給層23に供給される試料は、気体試料に限ることはなく、液体試料であっても良い。
また、実施の形態において、マトリックスセンサ10が備える全てのセンサ部20が劣化した後に、検出部2(マトリックスセンサ10)を交換するよう報知したが、マトリックスセンサ10が備える全てのセンサ部20が指定された後であれば、その報知のタイミングは任意である。
また、実施の形態において、本体部4の筐体4aに着脱自在な検出部2は、少なくともマトリックスセンサ10を備えていれば任意であり、例えば、マトリックスセンサ10のみを備えていても良いし、マトリックスセンサ10に加えて、封止除去部30、検出データ取得部40、検出側メモリ部51、制御部70、操作部81、表示部82、スピーカ部83及びバイブレータ部84のうちの少なくとも1つを備えていても良い。
検出部2がマトリックスセンサ10のみを備える場合は、本体部4に、封止除去部30や検出データ取得部40を備える必要がある。
検出部2が制御部70を備える場合は、本体部4に、制御部70を備えなくても良い。検出部2に封止除去部30、検出データ取得部40、検出側メモリ部51、操作部81、表示部82、スピーカ部83又はバイブレータ部84を備える場合も同様である。
また、本発明の物質検出装置は、携帯電話機に限ることはなく、携帯可能な電子機器(携帯端末)であれば任意である。すなわち、本発明の筐体(筐体4a)は、携帯可能な電子機器の筐体であれば任意である。
また、検出部2が、マトリックスセンサ10に加えて、封止除去部30、検出データ取得部40、検出側メモリ部51、制御部70、操作部81、表示部82、スピーカ部83及びバイブレータ部84を備える場合、本発明の筐体(筐体4a)は、例えば、携帯可能な電子機器の筐体に限ることはなく、所定の携帯物(例えば、文房具や財布、カードホルダーなど)であっても良い。
また、検出報知手段及び交換報知手段は、表示部82、スピーカ部83及びバイブレータ部84のうちの少なくとも1つであれば良い。
本発明の携帯電話機の正面図である。 本発明の携帯電話機の背面図である。 本発明の携帯電話機の側面図である。 本発明の携帯電話機の機能的構成を示すブロック図である。 検出部の内部構造を模式的に示す図である。 マトリックスセンサの平面斜視図である。 図6のVII−VII線における断面図である。 マトリックスセンサが備える基板であって、電極が形成された基板の平面図である。 マトリックスセンサが有するセンサ部の特定の仕方を説明するための図である。 検出データ取得部の駆動回路を示す図である。 マトリックスセンサが備える作用電極に接続されたアドレシング可能な能動素子を示す回路図である。 図11に示す能動素子の一例を示す回路図である。 図11に示す能動素子の一例を示す回路図である。 図11に示す能動素子の一例を示す回路図である。 本発明の携帯電話機による検出対象物質の濃度の測定に関する処理を説明するための第1フローチャートである。 本発明の携帯電話機による検出対象物質の濃度の測定に関する処理を説明するための第2フローチャートである。 変形例1における、マトリックスセンサが備える基板であって、電極が形成された基板の平面図である。 変形例1における、検出データ取得部の駆動回路を示す図である。 変形例2における、マトリックスセンサの平面斜視図である。 図19のXX−XX線における断面図である。 変形例2における、マトリックスセンサが備える基板であって、電極が形成された基板の平面図である。
符号の説明
1 携帯電話機(物質検出装置)
4a 筐体
10 マトリックスセンサ
11 基礎基板(基板)
12 電極(検出素子)
13 多孔体
13a 細孔
14 隔壁部
17 封止部
20 センサ部
30 封止除去部(除去手段)
40 検出データ取得部(取得手段)
51 検出側メモリ部(種類記憶手段、判定データ記憶手段)
82 表示部(検出報知手段、交換報知手段)
83 スピーカ部(検出報知手段、交換報知手段)
84 バイブレータ部(検出報知手段、交換報知手段)
71 CPU(劣化判断手段、指定手段、算出手段、濃度判断手段、判定手段)
731 劣化判断プログラム(劣化判断手段)
732 センサ部指定プログラム(指定手段)
735 濃度算出プログラム(算出手段)
736 濃度判断プログラム(濃度判断手段)
737 濃度レベル判定プログラム(判定手段)
E 酵素(反応物質(生体物質))

Claims (5)

  1. 持ち運び可能な筐体と、
    2次元又は3次元マトリックス状に配置された複数のセンサ部と、前記複数のセンサ部それぞれを外部から遮断する封止部と、を有し、前記筐体に着脱自在なマトリックスセンサと、
    前記複数のセンサ部のうちの、所定のセンサ部を指定する指定手段と、
    前記指定手段により指定されたセンサ部に対応する前記封止部を除去する除去手段と、
    前記指定手段により指定されたセンサ部による検出データを取得する取得手段と、
    前記取得手段により取得された検出データに基づいて、検出対象物質の濃度を算出する算出手段と、
    前記算出手段により算出された検出対象物質の濃度が所定の閾値以上であるか否か判断する濃度判断手段と、
    前記濃度判断手段により検出対象物質の濃度が所定の閾値以上であると判断された場合に、当該検出対象物質が検出された旨を報知する検出報知手段と、
    前記マトリックスセンサを交換するよう報知する交換報知手段と、
    前記センサ部が劣化しているか否か判断する劣化判断手段と、
    を備え、
    前記指定手段は、前記劣化判断手段によりセンサ部が劣化していると判断された場合に、未指定のセンサ部を指定し、
    前記交換報知手段は、前記指定手段により前記複数のセンサ部の全てが指定された場合に、前記マトリックスセンサを交換するよう報知し、
    前記センサ部は、所定の検出素子と、少なくとも前記検出対象物質が透過する透過膜と、前記検出素子と前記透過膜との間に形成された検出層と、を有し、
    前記複数のセンサ部のうちの少なくとも一のセンサ部における前記検出素子と前記透過膜との間の距離、他のセンサ部における前記検出素子と前記透過膜との間の距離と異ならせることによって、検出濃度範囲が異なる複数種類のセンサ部を備えるものとなるよう構成したことを特徴とする携帯型の物質検出装置。
  2. 請求項1に記載の携帯型の物質検出装置において、
    前記マトリックスセンサは、基板と、前記基板上に、2次元又は3次元マトリックス状に配置された前記複数のセンサ部と、前記基板上に配置され、前記センサ部同士を隔てる隔壁部と、前記センサ部の前記基板と対向する側の面を封止することによって、前記複数のセンサ部それぞれを外部から遮断する前記封止部と、を備え、
    前記センサ部は、前記基板上に配置された前記検出素子と、前記検出素子上に配置され、少なくとも前記基板に対して略垂直方向に貫通する細孔を有する多孔体と、前記多孔体の細孔の内部に担持され、検出対象物質と選択的に反応する反応物質と、を有し、前記検出素子により前記反応に伴う所定の変化を検出することを特徴とする携帯型の物質検出装置。
  3. 請求項1又は2に記載の携帯型の物質検出装置において、
    前記センサ部により検出可能な検出対象物質の種類を記憶する種類記憶手段を備え、
    前記検出報知手段は、前記検出対象物質が検出された旨を報知するとともに、前記種類記憶手段に記憶された当該検出対象物質の種類を報知することを特徴とする携帯型の物質検出装置。
  4. 請求項1〜3の何れか一項に記載の携帯型の物質検出装置において、
    前記検出対象物質の濃度レベルを判定するための判定データを記憶する判定データ記憶手段と、
    前記濃度判断手段により検出対象物質の濃度が所定の閾値以上であると判断された場合に、前記算出手段により算出された当該検出対象物質の濃度と、前記判定データ記憶手段に記憶された判定データと、に基づいて、当該検出対象物質の濃度レベルを判定する判定手段と、
    を備え、
    前記検出報知手段は、前記検出対象物質が検出された旨を報知するとともに、前記判定手段により判定された当該検出対象物質の濃度レベルを報知することを特徴とする携帯型の物質検出装置。
  5. 請求項1〜4の何れか一項に記載の携帯型の物質検出装置において、
    当該物質検出装置は、携帯電話機であることを特徴とする携帯型の物質検出装置。
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