JP5923458B2 - 釣竿 - Google Patents

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Description

本発明は、釣竿に関し、特に、芯材及び当該芯材に巻回されたバイアス層シートを備える釣竿に関する。
従来、芯材(ソリッド体と呼ばれることもある。)にプリプレグシートを巻回して構成された中実の釣竿が知られている。ソリッド体は、炭素繊維強化樹脂等の各種樹脂やNi−Ti系合金等の各種合金から成り、穂先側に向かって先細となるように形成される。プリプレグシートには、強化繊維が釣竿の軸長方向に配向した所謂ストレート層シート、強化繊維が釣竿の周方向に配向した所謂周方向層シート、及び強化繊維が釣糸の軸方向に対して90°よりも小さい所定の配向角度(通常は30°〜60°程度で45°であることが多い。)で配向したバイアス層シートがある。ストレート層シートは、竿体の曲げ剛性を強化するために設けられ、周方向層シートは、竿体の捩り剛性を強化するために設けられる。バイアス層シートは、ストレート層シートと周方向層シートの中間の性質を有し、竿体の曲げ剛性及び捩り剛性をともに強化することができる。
従来の釣竿においては、ソリッド体の調子を崩すことなく、竿体の曲げ剛性及び捩り剛性を強化するため、ソリッド体の全長に亘ってバイアス層シートが巻回されることがある。ソリッド体は、先細に形成されているため、ソリッド体と同程度の長さを有する単一のバイアス層シートをソリッド体の全長に亘って巻回しようとすると、ソリッド体の長軸方向の位置によって、バイアス層シートの強化繊維の配向方向が変わってしまうという問題が指摘されている。そこで、特開2011−200192号公報においては、バイアス層シートを2つに分割し、その一方(プリプレグP32)を釣竿の先側に配置し、他方(プリプレグP31)を釣竿の根元側に配置することが提案されている。
特開2011−200192号公報
上述した従来の釣竿を製作する際には、バイアス層シートのうちソリッド体に最初に巻き付けられる巻始部と最後に巻き付けられる巻終部とが重なり合うように、バイアス層シートをソリッド体に巻き付ける。当該重なり合った部分(「スパイン」と呼ばれる。)の厚みは、竿体の周方向の他の部分よりも厚くなる。例えば、バイアス層シートを3プライだけ巻回するときには、スパインだけが4プライ分の厚さを有し、スパイン以外の部分は3プライ分の厚さを有することになる。
このように、スパインの影響で竿体の周方向における厚みが一定でないため、曲げられる方向によって竿体の剛性が異なる。つまり、竿体の周方向において、竿体の剛性(特に曲げ剛性)に異方性が生じる。この結果、例えば、特開2013−74847号公報において指摘されているように、リールを釣竿の周方向のどの位置に取り付けるかによって、キャスティング時や魚の取り込み時において竿体の曲がり方が異なることになる。また、スパインとリールの取付位置とが釣竿の周方向においてずれている場合には、キャスティング時や釣糸の巻き取り時に、釣竿が勝手にスパインと竿体の軸心とを結ぶ方向に曲がってしまうという問題が生じる。
従来の釣竿において、単一のバイアス層シートを竿体の全長に亘って巻回する場合は、バイアス層シートの厚さが竿体の全長に亘って略一定の厚さとなる。また、特許文献1に記載のように、バイアス層シートを分割する場合でも、穂先側のバイアス層シート(プリプレグP31)と手元側のバイアス層シート(プリプレグP32)とは、同じ厚さとなるように巻回されている。よって、従来の釣竿においては、スパインの厚さも穂先側と手元側とでほぼ同じ厚さとなっている。竿体は先細に形成されるので、スパインの厚さが穂先側と手元側とで同じ場合には、ソリッド体の径に対するスパインの厚さが穂先側ほど大きくなるため、スパインによる曲げ剛性の異方性の影響は、穂先側においてより顕著に表れることになる。
そこで、本発明は、バイアス層シートを巻回することによって発生するスパインによる竿体の曲げ剛性の異方性を穂先側において緩和することができる釣竿を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、明細書全体を通じて明らかにされる。
本発明の一実施形態に係る釣竿は、先細に形成された棒状の芯材と、前記芯材の先端側にNプライ(Nは任意の自然数)だけ巻かれる第1のバイアス層シートと、その先端が前記第1のバイアス層シートの後端に重なるように、前記芯材にNプライ(NはNより小さな任意の自然数)だけ巻かれる第2のバイアス層シートと、を備える。一実施形態において、前記第2のバイアス層シートは、前記第1のバイアス層シートの実質的にN/N倍の厚みを有する。
本発明の実施形態によって、バイアス層シートを巻回することによって発生するスパインによる竿体の曲げ剛性の異方性を穂先側において緩和することができる釣竿が提供される。
本発明の一実施形態に係る釣竿の構成を模式的に示す側面図。 本発明の一実施形態に係る釣竿を構成するソリッド体及びプリプレグシートを示す模式図。 図1に示した釣竿におけるバイアス層シート同士が重なった部分の拡大断面図。 本発明の他の実施形態に係る釣竿を構成するソリッド体及びプリプレグシートを示す模式図。
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、各図面において共通する構成要素に対しては同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
図1は、本発明の一実施形態に係る釣竿の構成を示す側面図である。図1に示すように、本発明の一実施形態に係る釣竿Rは、竿体1と、リールシート3を介して竿体1に着脱自在に装着されるリール2と、竿体1の基端側に取り付けられたグリップ4と、を備える。竿体1には、少なくとも1つの釣糸ガイドが取り付けられる。図1の例では、竿体1には、釣糸ガイド5−1乃至釣糸ガイド5−4の4個の釣糸ガイドが取り付けられている。リール3から繰り出された不図示の釣糸は、釣糸ガイド5−1乃至釣糸ガイド5−4により竿体1の穂先まで案内される。
図2は、本発明の一実施形態に係る釣竿の芯材となるソリッド体及び当該ソリッド体に巻回されるプリプレグシートを示す模式図である。図2を参照して、本発明の一実施形態に係る釣竿の構成及び製造工程を説明する。
竿体Rを製造する際には、まず、ソリッド体10を準備する。一実施形態において、ソリッド体10は、図示のように、穂先側ほど小径となるようにテーパが施された棒状の部材である。一実施形態において、ソリッド体10は、ガラス繊維や炭素繊維等の強化繊維に合成樹脂を含浸させた繊維強化樹脂やNi−Ti系合金等の各種合金を成形して作製される。本発明におけるソリッド体10は、本明細書で明示されるものに限られず、公知の様々な素材や製法を用いて作製され得る。
続いて、バイアス層シート11及びバイアス層シート12を準備する。一実施形態において、バイアス層シート11は、ガラス繊維や炭素繊維等の強化繊維に合成樹脂を含浸させた繊維強化樹脂製のクロス(バイアス層シート11用クロス)を図2に示すような略台形の形状に裁断することで得られる。バイアス層シート12も、バイアス層シート11と同様に、ガラス繊維や炭素繊維等の強化繊維に合成樹脂を含浸させた繊維強化樹脂製のクロス(バイアス層シート12用クロス)を図2に示すような略台形の形状に裁断することで得られる。本明細書においては、強化繊維としてガラス繊維が用いられている繊維強化樹脂製のクロス又はシートをガラス繊維プリプレグといい、強化繊維として炭素繊維が用いられている繊維強化樹脂製のクロス又はシートをカーボン繊維プリプレグという。
バイアス層シート11及びバイアス層シート12における強化繊維は、ソリッド体10の長手軸方向に対してα°の配向角度で配向している。一実施形態において、この配向角度α°は約45°であるが、これ以外の様々な角度を取り得る。例えば、バイアス層シート11及びバイアス層シート12における強化繊維の配向角度は、20°≦α°≦70°の範囲にある任意の角度をとることができ、他の実施例においては、30°≦α°≦60°の範囲にある任意の角度をとることができ、さらに他の実施例においては40°≦α°≦50°の範囲にある任意の角度をとることができる。
バイアス層シート11及びバイアス層シート12のソリッド体10への巻回は以下のように行われる。まず、ソリッド体10には、バイアス層シート11が巻回される。具体的には、図2に示すように、バイアス層シート11は、その先端側辺11Aがソリッド体10の先端に合致するとともにその巻始辺11Bがソリッド体10の長軸方向と平行になるように位置合わせされた状態で、ソリッド体10にNプライ(Nは任意の自然数)だけ巻回される。バイアス層シート11は、ソリッド体10の基端側ほど幅広に形成されているので、バイアス層シート11はソリッド体10に対して略均一にNプライだけ巻くことができる。バイアス層シート11は、その巻終辺11Cが巻始辺11Bと重なるように巻かれ、この巻終辺11Cと巻始辺11Bとが重なり合う部分がスパインとなる。スパインにおいては、バイアス層シート11が(N+1)プライ巻回されているので、バイアス層シート11の厚さは、スパインにおいて周方向の他の部分よりも厚くなっている。
次に、バイアス層シート11が巻回されたソリッド体10にバイアス層シート12を巻回する。具体的には、図2に示すように、バイアス層シート12は、ソリッド体10に巻回されたバイアス層シート11の後端側辺11Dにバイアス層シート12の先端側辺12Aが若干重なるように配置されるとともにその巻始辺12Bがソリッド体10の長軸方向と平行になるように位置合わせされた状態で、ソリッド体10にNプライ(NはNより小さな任意の自然数)だけ巻回される。このバイアス層シート11の後端側辺11Dとバイアス層シート12の先端側辺12Aとが重なりあった部分には、図3に示すように、釣糸ガイド(図3の例では釣糸ガイド6−2)が取り付けられる。バイアス層シート12は、バイアス層シート11と同様に、その巻終辺12Cが巻始辺12Bと重なるように巻かれるので、この巻終辺12Cと巻始辺12Bとが重なり合う部分がスパインとなる。
図3に例示されているように、バイアス層シート11の1プライ分の厚さT(バイアス層シート11が裁断されるバイアス層シート11用クロスの厚さに相当する。)は、バイアス層シート12の1プライ分の厚さT(バイアス層シート12が裁断されるバイアス層シート12用クロスの厚さに相当する。)よりも薄い。つまり、TとTとの間には、T<Tの関係が成り立つ。T、T、N及びNの値は、ソリッド体10に巻かれたバイアス層シート11の全体の厚さ(N×T)と、ソリッド体10に巻かれたバイアス層シート12の全体の厚さ(N×T)とが実質的に等しくなるように定められる。つまり、バイアス層シート12は、バイアス層シート11の実質的にN/N倍の厚みを有する。図3に示した例では、バイアス層シート11は2プライ分、バイアス層シート12は1プライ分、それぞれソリッド体10に巻かれており(つまり、N=2、N=1)、T1をT2の概ね2分の1とすることで、(N×T)と(N×T)の値が等しくなるようにしている。
このように、(N×T)と(N×T)とを実質的に等しい値とすることにより、ソリッド体10に巻回されたバイアス層シート11の全体の厚さ(Nプライ分の厚さ)とソリッド体10に巻回されたバイアス層シート12の全体の厚さ(Nプライ分の厚さ)とが等しくなるので、バイアス層シート11及びバイアス層シート12を巻回した後の竿体1の長軸方向における曲げ剛性の分布は、ソリッド体10の曲げ剛性の分布と概ね等しくなる。これにより、ソリッド体10の材質やテーパを調整して得られる釣竿Rの調子が、バイアス層シート11及びバイアス層シート12によって崩れることを防止できる。すなわち、ソリッド体10の設計時に定められた調子が、バイアス層シート11及びバイアス層シート12の影響で意図したものからずれてしまうことを防止できる。
以上から明らかなように、バイアス層シート11の全体の厚さ(N×T)及びバイアス層シート12の全体の厚さ(N×T)は厳密に等しい必要はない。つまり、本明細書においては、バイアス層シート11の全体の厚さ(N×T)とバイアス層シート12の全体の厚さ(N×T)が厳密に一致していなくとも、両者の厚さの差によって生じるソリッド体10の調子の変化が釣り人に感知できない程度である限り、そのような厳密に一致しない(N×T)と(N×T)との関係も「(N×T)と(N×T)とが実質的に等しい」という。具体的には、(N×T)と(N×T)との差が(N×T)の15%以内であれば、(N×T)と(N×T)とは実質的に等しいと評価し得る。
本発明の実施形態によれば、穂先側に配置されるバイアス層シート11の1プライの厚さが手元側に配置されるバイアスシート層12の1プライの厚さよりも薄いので、バイアス層シート11に形成されるスパインを、バイアス層シート12に形成されるスパインよりも薄くすることができる。これにより、ソリッド体10の穂先側と手元側にバイアス層シートを巻回して、ソリッド体10を全長に亘ってバイアス層シートで覆う場合に、スパインによって生じる曲げ剛性の異方性を、穂先側において緩和することができる。
一実施形態においては、バイアス層シート11を、ガラス繊維プリプレグとし、バイアス層シート12を、カーボン繊維プリプレグとすることができる。ガラス繊維プリプレグはカーボン繊維プリプレグに比べて剛性が低いため、穂先側に配置されるバイアス層シート11をガラス繊維プリプレグとすることにより、竿体1の穂先をより柔軟にすることができる。
続いて、図4を参照して、本発明の他の実施形態に係る釣竿を説明する。図4は、本発明の他の実施形態に係る釣竿の芯材となるソリッド体及び当該ソリッド体に巻回されるプリプレグシートを示す模式図である。図4に示す実施形態においては、3つのバイアス層シート14、15、16を備える点で、2つのバイアス層シートを備える図2の実施形態と異なる。一実施形態において、バイアス層シート14の1プライ分の厚さは、バイアス層シート15の1プライ分の厚さよりも薄く、バイアス層シート15の1プライ分の厚さは、バイアス層シート16の1プライ分の厚さよりも薄い。
図4の実施形態において、バイアス層シート14、15、16の1プライ分の厚さはそれぞれT’、T’、T’であり、バイアス層シート14、15、16がソリッド体10に対してそれぞれN’プライ、N’プライ、N’プライだけ巻回される(N’、N’、及びN’は任意の自然数である。)。このとき、T’、T’、T’、N’、N’、及びN’の値は、(N’×T’)、(N’×T’)、及び(N’×T’)の値がいずれも実質的に等しくなるように定められる。例えば、T3’がT1’の3倍でありT1’の2倍である場合には、バイアス層シート14、15、16の巻回数をそれぞれ3プライ、2プライ、1プライとすることができる(6プライ、4プライ、2プライでもよい)。「実質的に等しい」の意味は、図2の実施形態の説明において説明した通りである。
また、図4の実施形態において、バイアス層シート16の内側には、ストレート層シート17が巻かれている。つまり、バイアス層シート16は、ストレート層シート17を介してソリッド体10に巻かれている。ストレート層シート17は、ソリッド体10の長軸方向に対して略平行に配向した強化繊維を含有する繊維強化樹脂製である。このように、ストレート層シート17を手元側に配置することにより、竿体Rの手元側における曲げ剛性をより強化することができる。
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
例えば、プリプレグシートの素材、形状、及び配置は、本明細書及び添付図面に例示したものに限られず、様々な素材、形状のプリプレグシートをソリッド体10の様々な位置に配置することができる。また、本明細書で説明したプリプレグシートの一部を省略してもよく、本明細書で具体的に説明していないプリプレグシートを追加することもできる。例えば、図2に示した実施例において、ストレート層シート17と同様のプリプレグシートをバイアス層シート12の内側又は外側に配置することができる。
また、プリプレグシートの種類は、本明細書に明記されたものに限られない。例えば、竿体Rの長軸方向に対して強化繊維が略直交する周方向層シートを用いることもできる。
R 釣竿
1 竿体
5−1〜5−4 釣糸ガイド
10 ソリッド体
11、12、14,15,16 バイアス層シート
17 ストレート層シート

Claims (5)

  1. 先細に形成された棒状の芯材と、
    前記芯材の先端側にNプライ(Nは任意の自然数)だけ巻かれる第1のバイアス層シートと、
    その先端が前記第1のバイアス層シートの後端に重なるように、前記芯材にNプライ(NはNより小さな任意の自然数)だけ巻かれる第2のバイアス層シートと、
    を備え、
    前記第2のバイアス層シートは、前記第1のバイアス層シートの実質的にN/N倍の厚みを有する、
    釣竿。
  2. 前記第1のバイアス層シートは、ガラス繊維プリプレグから成る、請求項1に記載の釣竿。
  3. 前記第2のバイアス層シートは、カーボン繊維プリプレグから成る、請求項1又は2に記載の釣竿。
  4. その先端が前記第2のバイアス層シートの後端に重なるように、前記芯材にNプライ(NはNより小さな任意の自然数)だけ巻かれる第3のバイアス層シートをさらに備え、
    前記第3のバイアス層シートは、前記第1のバイアス層シートの実質的にN/N倍の厚みを有する、
    請求項1から3のいずれか1項に記載の釣竿。
  5. 前記第1のバイアス層シートと前記第2のバイアス層シートとが重なる位置に、釣糸を案内する釣糸ガイドが取り付けられた、請求項1から4のいずれか1項に記載の釣竿。
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