本発明の一実施形態による釣竿を示す模式図である。
図1の釣竿が有する大径竿体と小径竿体との継合構造を模式的に示す断面図である。
図2に示されている継合構造を拡大して示す模式図である。
図1の小径竿体の内周面の形状を示す模式図である。
大径竿体の内周面に対する軸部材の外周面の配置を模式的に示す図である。図5aにおいては釣竿が撓んでいないときの大径竿体の内周面に対する軸部材の外周面の配置が示されている。
大径竿体の内周面に対する軸部材の外周面の配置を模式的に示す図である。図5bにおいては釣竿が撓んだときの大径竿体の内周面に対する軸部材の外周面の配置が示されている。
大径竿体の内周面に対する軸部材の外周面の配置を模式的に示す図である。図5cにおいては釣竿がさらに撓んだときの大径竿体の内周面に対する軸部材の外周面の配置が示されている。
図1の釣竿の製造方法を説明する模式図である。
本発明の他の実施形態による釣竿が有する大径竿体と小径竿体との継合構造を拡大して模式的に示す模式図である。
図7に示された釣竿の継合構造を中心軸の方向に延びる線で切り開いて展開した模式図である。
中心軸に垂直な面で穂先竿を切断した断面を模式的に示す図である。
中心軸に垂直な面で穂先竿を切断した断面を模式的に示す図である。
本発明の一実施形態による釣竿を示す模式図である。
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、各図面において共通する構成要素に対しては同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
図1から図4を参照して、本発明の一実施形態による釣竿1について説明する。図1は、本発明の一実施形態によるインロー継ぎ式の釣竿1の模式図である。図2は、釣竿1における大径竿体の例である手元竿5と小径竿体の例である穂先竿2との継合構造を模式的に示す断面図であり、図3は、図2に示されている継合構造を拡大して示す模式図であり、図4は、図1の穂先竿2の内周面の形状を示す模式図である。
釣竿1は、図示のように、穂先竿2と、この穂先竿2に継合する手元竿5と、を有する。穂先竿2及び手元竿5はいずれも、中心軸Xに沿って延びる中空の管状に形成される。本明細書では、中心軸Xに沿う方向を軸方向又は中心軸方向と呼び、中心軸Xから中心軸Xに垂直に延びる方向を径方向ということがある。穂先竿2は、その後端2a1からその前端2a2まで延びている。手元竿5は、その後端5a1からその前端5a2まで延びている。穂先竿2及び手元竿5は、例えば、炭素繊維に合成樹脂を含浸したプリプレグシートを焼成して管状の焼成体を形成し、この焼成体に研磨処理及び塗装を施すことにより得られる。穂先竿2の製造工程の詳細については後述する。
手元竿5の後端には、グリップ4が設けられている。手元竿5のグリップ4の前方にはリールシート3が設けられている。穂先竿2及び手元竿5の外周面の上端には、複数の釣糸ガイド7が取り付けられている。リールシート3には、不図示のリールが取り付けられる。図示の実施形態では、リールシート3には両軸受型リールが取り付けられる。両軸受型リールは、ベイトリール又はベイトキャスティングリールと呼ばれることもある。両軸受型リールが用いられる場合には、釣糸ガイド7は、図示のように穂先竿2及び手元竿5の外周面の上端に設けられる。他の実施形態において、リールシート3にはスピニングリールが取り付けられてもよい。スピニングリールが用いられる場合には、釣糸ガイド7は、穂先竿2及び手元竿5の外周面の下端に設けられる。本明細書において、釣竿1又は当該釣竿1を構成する穂先竿2及び手元竿5の前後方向に言及する場合には、図1に示されている前後方向を基準とする。
一実施形態において、手元竿5は、その内径が穂先竿2の内径よりも大きくなるように構成される。穂先竿2は小径竿体の例であり、手元竿5は大径竿体の例である。手元竿5の内径及び穂先竿2の内径はそれぞれ、例えば3mm〜15mmの範囲となり、各外径は、5mm〜20mmの範囲となるように形成される。本明細書において説明される穂先竿2及び手元竿5の寸法は例示である。
図3に示されているように、穂先竿2は、その後端2a1付近において、応力緩和層21と、応力緩和層21の外表面に設けられた本体保護層22と、本体保護層22の外表面に設けられた本体層23と、本体層23の外表面に設けられた補強層24と、を備える。応力緩和層21、本体保護層22、本体層23、及び補強層24はいずれも、強化繊維から成る強化繊維束をマトリクス樹脂に含浸させた繊維強化樹脂シートを焼成することで得られる。穂先竿2の製造方法については後述する。
穂先竿2の後端2a1付近においては、その径方向の最も内側に応力緩和層21が配置されている。よって、穂先竿2の後端2a1付近においては、応力緩和層21の内周面21Aが穂先竿2の内周面2bを構成する。応力緩和層21の内周面21Aは、中心軸X方向に対して傾斜して穂先竿2の後端2a1から前方へ延伸する傾斜面21A1と、傾斜面21A1の前端から前方へ中心軸Aと平行に延びる平行面21A2と、を有する。
穂先竿2と手元竿5とは、インロー芯材6を介して、互いと着脱可能に接続される。インロー芯材6は、例えば、炭素繊維に合成樹脂を含浸したプリプレグシートを焼成して管状の焼成体を形成し、この焼成体に研磨処理及び塗装を施すことにより得られる。インロー芯材6は、ほぼ円柱形状の後端部6aと、後端部6aの前側に設けられておりその外周面が中心軸Xに対して第1角度θ1だけ傾斜している傾斜部6bと、この傾斜部6bの前に設けられておりほぼ円柱形状を有する前端部6cと、を有する。前端部6cは、後端部6aよりも小径となるように形成される。インロー芯材6は、その中心軸方向の長さが50mm〜150mmとなり、その後端部6aの外径が3mm〜15mmとなるように形成される。傾斜部6bの外周面が中心軸Xと為す第1角度θ1は、例えば、0.05°から5.0°の範囲とされる。図2に示されている傾斜部6bの外周面の傾きは、傾斜していることを分かりやすく示すために誇張されている。インロー芯材6は中空であってもよく中実であってもよい。本明細書において説明されるインロー芯材6の寸法及び形状は例示である。例えば、インロー芯材6は、その外周面が中心軸Xに対してその後端から前端まで一定の角度で傾斜するように構成されてもよい。
一実施形態において、インロー芯材6は、手元竿5に中心軸X方向の所定の位置まで挿入され、例えば接着により手元竿5の内周面5bに固定される。インロー芯材6は、その一部が手元竿5の前端5a2から前方へ突出するように、手元竿5に対して固定される。手元竿5の前端5a2から突出しているインロー芯材6を穂先竿2に後端2a1から合わせ位置まで挿入することにより、穂先竿2と手元竿5とがインロー芯材6を介して連結される。インロー芯材6は、竿体に挿入される軸部材の例である。他の実施形態において、インロー芯材6は、穂先竿2の継合部2aの内周面2bに接着される。この場合、インロー芯材6は、穂先竿2の後端2a1から後方に突出するように穂先竿2に固定される。インロー芯材6のうちこの穂先竿2の後端2a1から突出している部位を手元竿5に挿入することにより、穂先竿2と手元竿5とがインロー芯材6を介して連結される。
図2においては、インロー芯材6が合わせ位置まで挿入されている。インロー芯材6が合わせ位置に達したときに、手元竿5の前端5a2と穂先竿2の後端2a1との間には隙間が形成される。この隙間の中心軸X方向の長さは、例えば、3mm〜10mmである。この隙間の寸法は例示である。この穂先竿2と手元竿5との間に隙間があるため、釣竿1の使用時に穂先竿2及び手元竿5が曲げられると、インロー芯材6には曲げ応力及び剪断応力が作用する。
インロー芯材6が合わせ位置まで挿入されたとき、インロー芯材6の外表面6eは、応力緩和層21の内周面の傾斜面21A1と平行面21A2との境界にある位置A1において応力緩和層21の内周面に接する。よって、インロー芯材6は、位置A1において応力緩和層21の内周面に支持される。に支持される。この位置A1は、支持位置の例である。インロー芯材6が合わせ位置まで挿入されたとき、位置A1において、インロー芯材6の外径と応力緩和層21の内径とが一致またはほぼ一致する。
次に、図4を参照して、応力緩和層21の内周面21Aについてさらに説明する。上述したように、内周面21Aは、傾斜面21A1と、平行面21A2と、を有する。この傾斜面21A1は、凹凸構造を有する。図示の実施形態において、傾斜面21A1は、8つの凹部21a1〜21a8と、8つの凸部21b1〜21b8と、を有する。この凹凸構造は、仮想曲線Yを基準として定められる。具体的には、凹部21a1〜21a8は、仮想曲線Yから中心軸Xとは反対側(径方向外側)に向かって凹んでおり、凸部21b1〜21b8は、仮想曲線Yから中心軸Xに向かって突出している。この仮想曲線Yは、インロー芯材6外周面6eよりも径方向外側の領域において支持位置A1と応力緩和層21の内周面21Aの後端にある一端位置A2とを通って中心軸Xに向かって凸となる仮想的な曲線である。凸部21b1〜21b8は、穂先竿2が撓んでいないときには、インロー芯材6と干渉しないように、仮想曲線Yから中心軸Xに向かって突出している。言い換えると、穂先竿2が撓んでいないときには、凸部21b1〜21b8は、インロー芯材6の外表面6eよりも径方向外側にある。凹部21a1〜21a8及び凸部21b1〜21b8は、軸方向において、支持位置A1と一端位置A2との間にある。
図3に示されているように、一端位置A2は、支持位置A1よりも径方向外側に配置されている。中心軸Xを含む面で穂先竿2を切断した場合、支持位置A1と一端位置A2とを結ぶ仮想的な直線は、中心軸Xに対して第1角度θ1よりも大きな第2角度θ2だけ傾斜している。第2角度θ2は、例えば、第1角度θ1よりも大きな角度である。第2角度θ2は、例えば、0.1°から10.0°の範囲とされる。一実施形態において、第2角度θ2は2.0°とされる。
次に、図5aから図5cを参照して、釣竿1の使用時におけるインロー芯材6の外表面6eと穂先竿2の内周面2bの内周面(応力緩和層21の内周面21A)との位置関係について説明する。図5aに示すように、穂先竿2が撓んでいないとき又は穂先竿2の撓みが僅かな場合には、インロー芯材6の外表面6eは、支持位置A1において穂先竿2の内周面2bに支持されているが、それ以外の位置では穂先竿2の内周面2bには接していない。穂先竿2の撓みが大きくなると、図5bに示すように、凸部21b1〜21b8のうち支持位置A1の最も近くにある凸部21b1がインロー芯材6の外表面6eに接する。穂先竿2の撓みが大きくなると、図5cに示すように、凸部21b1〜21b8のうち支持位置A1に対して2番目に近い凸部21b2がインロー芯材6の外表面6eに接する。このように、穂先竿2の撓みが大きくなるにつれて、凸部21b1〜21b8が支持位置A1に近い順にインロー芯材6の外表面6eに接する。凸部21b1〜21b8の形状によっては、穂先竿2が撓んだときに凸部21b1〜21b8のうち2つ以上の凸部が同時にインロー芯材6の外表面6eに接してもよい。
上記のように、インロー芯材6は、穂先竿2の継合部2aの内周面2bに接着されてもよい。この場合、インロー芯材6のうち穂先竿2の後端2a1から突出している部位を手元竿5に挿入することにより、穂先竿2と手元竿5とがインロー芯材6を介して連結される。この場合、手元竿5の内周面5bの先端付近が穂先竿2の内周面2bの後端付近と同様に形成される。具体的には、手元竿5の内周面5bの先端付近に、傾斜面21A1に相当する凹凸構造を有する傾斜面が形成される。穂先竿2の内周面の後端付近に傾斜面21A1を形成し、且つ、手元竿5の内周面の前端付近に傾斜面21A1に相当する凹凸構造を有する傾斜面を形成してもよい。このような凹凸構造を有する傾斜面を穂先竿2と手元竿5の両方に設けることにより、インロー芯材6の破断をさらに抑制することができる。この場合、インロー芯材6は、手元竿5の内周面に接着されてもよいし、穂先竿2の内周面に接着されてもよい。
次に、穂先竿2の製造方法について図6を参照して説明する。穂先竿2を製造するために、まず、マンドレル50及び繊維強化樹脂シート51,52,53,54を準備する。図示のマンドレル50は、先細形状を有している。本明細書において、繊維強化樹脂シート51,52,53,54の幅及び長さについて言及するときには、図6に直交座標として示されているW方向(幅方向)及びL方向(長さ方向)を基準にして説明する。マンドレル50の中心軸は、L方向と平行な方向に延伸している。
繊維強化樹脂シート51,52,53,54は、強化繊維から成る強化繊維束をマトリクス樹脂に含浸させたシート状の複合部材である。繊維強化樹脂シート51,52,53,54に含まれる強化繊維は、例えば、カーボン繊維又はガラス繊維である。繊維強化樹脂シート51,52,53,54に含まれるマトリクス樹脂成分は、例えば、エポキシ樹脂系樹脂、ビスフェノールA系樹脂、ビスフェノールF系樹脂又はこれらの組み合わせである。図示の実施形態において、繊維強化樹脂シート51,52,53,54はいずれも概ね台形形状を有する。繊維強化樹脂シート51,52,53,54の形状は台形には限定されない。
一実施形態において、繊維強化樹脂シート51に含まれる強化繊維の引張弾性率は、繊維強化樹脂シート53に含まれる強化繊維の引張弾性率よりも小さい。一実施形態において、繊維強化樹脂シート51に含まれる強化繊維は、1t/mm2以上、1.5t/mm2以上、2t/mm2以上、3t/mm2以上、4t/mm2以上、5t/mm2以上、6t/mm2以上、7t/mm2以上、8t/mm2以上、9t/mm2以上、又は10t/mm2以上の引張弾性率を有する。一実施形態において、繊維強化樹脂シート53に含まれる強化繊維は、20t/mm2〜30t/mm2、22t/mm2〜28t/mm2、又は23t/mm2〜27t/mm2の弾性率を有する。
一実施形態において、繊維強化樹脂シート51に含まれる強化繊維は、中心軸X周りの周方向に引き揃えられている。一実施形態において、繊維強化樹脂シート51に含まれる強化繊維は、中心軸Xに沿った軸方向に引きそろえられている。繊維強化樹脂シート54は、編み込まれた(例えば、平織りされた)強化繊維を有していてもよい。繊維強化樹脂シート51〜54に含まれる強化繊維の配向方向は、本明細書において説明された方向に限定されるものではない。
繊維強化樹脂シート51と繊維強化樹脂シート52とは、概ね同じ幅及び同じ長さを有する。繊維強化樹脂シート51及び繊維強化樹脂シート52は、例えば、マンドレル50の周囲に1プライだけ巻かれるだけの幅を有する。繊維強化樹脂シート53は、繊維強化樹脂シート51と繊維強化樹脂シート52よりも幅方向及び長さ方向の寸法が大きい。繊維強化樹脂シート53は、例えば、マンドレル50の周囲に3プライだけ巻かれるだけの幅を有する。繊維強化樹脂シート54の長さ方向の寸法は、繊維強化樹脂シート51と繊維強化樹脂シート52の長さ方向の寸法よりも大きく、繊維強化樹脂シート53の長さ方向の寸法よりも小さい。
図6に示されているように、繊維強化樹脂シート51は、その一辺がマンドレル50の中心軸と平行となるように当該マンドレル50に対して配置され、その配置を保ったままマンドレル50の外周面に巻かれる。繊維強化樹脂シート52は、その右端が繊維強化樹脂シート51の右端と揃うように配置され、その配置を保ったまま繊維強化樹脂シート51の外周面に巻かれる。繊維強化樹脂シート53は、その右端が繊維強化樹脂シート52の右端と揃うように配置され、その配置を保ったまま繊維強化樹脂シート52の外周面に巻かれる。繊維強化樹脂シート54は、その右端が繊維強化樹脂シート53の右端と揃うように配置され、その配置を保ったまま繊維強化樹脂シート53の外周面に巻かれる。
このようにマンドレル50に巻かれた繊維強化樹脂シート51,52,53,54を焼成し、焼成後にマンドレル50を除去することによって中空の管状の焼成体が得られる。繊維強化樹脂シート51,52,53,54は、焼成されることによりそれぞれ応力緩和層21、本体保護層22、本体層23、及び補強層24となる。焼成された繊維強化樹脂シート51(応力緩和層21)の内周面は、テーパーリーマ等の工具を用いて切削される。この切削により、応力緩和層21の内周面21Aに傾斜面21A1が形成される。一実施形態においては、穂先竿2の後端2a1から内部に、テーパーリーマをその軸方向が中心軸Xに対してやや傾くように(例えば、0.05°〜2°の範囲内の角度で傾くように)挿入して、応力緩和層21の内周面21Aを切削することにより傾斜面21A1が形成される。応力緩和層21を切削する際に、応力緩和層21の外周面に設けられた本体保護層22の一部が切削されてもよい。ただし、本体保護層22の外周面に設けられた本体層23は切削されないことが望ましい。
以上のようにして得られた中空の管状の焼成体に研磨処理及び塗装を適宜施すことにより穂先竿2が得られる。
続いて、本発明の別の実施形態による釣竿について、図7〜図8を参照して説明する。図7は、本発明の別の実施形態による釣竿における大径竿体と小径竿体との継合構造を模式的に示す断面図であり、図8は、図7に示された釣竿の継合構造を中心軸Xの方向に延びる線で切り開いて展開した模式図である。図7及び図8に示されている実施形態においては、穂先竿2の内周面2b(応力緩和層21の内周面21A)の形状が図1から図4に示した実施形態と異なっている。以下では、図7及び図8を参照して、本発明の別の実施形態による釣竿における穂先竿2の内周面2bの形状について説明する。
穂先竿2の内周面2bは、中心軸X方向に対して傾斜して後端2a1から前方へ延伸する傾斜面2b1と、傾斜面2b1の前端の位置P1から位置P2まで延びる応力緩和面2b2と、位置P2から位置P3まで延びる円筒面2b3と、を有する。位置P1は、穂先竿2の後端2a1から中心軸Xに沿って前方へL1だけ移動した位置を示し、位置P2は、位置P1から中心軸Xに沿って前方へL2だけ移動した位置を示す。位置P3は、中心軸X上において位置P2と穂先竿2の前端2a2との間にある任意の位置である。長さL1は、例えば、1mm〜30mmの範囲の長さとされる。一実施形態において、長さL1は、1mm〜5mmの範囲とされる。長さL2は、長さL1以下の長さとされる。位置P1から前方へ延びる応力緩和面2b2が長くなると(位置P1を起点とした長さL2が大きくなると)、穂先竿2において応力緩和面2b2が占める割合が大きくなる。応力緩和面2b2は薄肉化されているため、長さL2が大きくなると穂先竿2の後端付近の強度が不足するおそれがある。長さL2を長さL1以下の長さとすることで、穂先竿2が強度不足となることを防止できる。
傾斜面2b1は、中心軸Xに対して第1角度θ1よりも大きな第2角度θ2だけ傾斜してP1まで延びている。言い換えると、支持位置A1と一端位置A2とを結ぶ仮想的な直線は、中心軸Xに対して第1角度θ1よりも大きな第2角度θ2だけ傾斜している。傾斜面2b1は、傾斜面21A1と同様に、一または複数の凹凸を有している。
円筒面2b3は、位置P2から位置P3まで中心軸X方向と平行又はほぼ平行に延伸する。円筒面2b3の中心軸X方向に対する傾きが第1角度θ1よりも小さい場合には、円筒面2b3は中心軸X方向とほぼ平行に延伸するといえる。穂先竿2は、後端から前端に向かって先細りとなるように構成されてもよい。この場合、穂先竿2の外周面は中心軸X方向と所定角度だけ傾いて延びる。円筒面2b3は、穂先竿2の外周面と平行に延伸してもよい。
応力緩和面2b2は、穂先竿2の内周面2bのうち傾斜面2b1と円筒面2b3との間の部位である。応力緩和面2b2は、傾斜部121a,121b,121c,121dと、非傾斜部122と、を有している。説明の便宜上、傾斜部121a,121b,121c,121dを総称して傾斜部121と呼ぶことがある。傾斜部121と非傾斜部122との間の境界123aは、傾斜面2b1と応力緩和面2b2との間の境界123bから後方に向かって凸となる波形を有している。境界123bは、中心軸X周りの周方向に延びている。本明細書においては、境界123aを応力緩和境界と呼び、境界123bを合わせ位置境界(又は、支持位置境界)と呼ぶことがある。
傾斜部121は、その後端において傾斜面2b1と連続している。つまり、傾斜部121の後端は位置P1にある。傾斜部121の各々は、位置P1から中心軸Xに沿って前方に延びている。各傾斜部121の前端は、互いに異なっていてもよい。図示の実施形態においては、上記のように傾斜部121a,121b,121c,121dの4つの傾斜部が設けられており、このうち傾斜部121aが円筒面2b3との境界である位置P1まで延びている。傾斜部121aは、4つの傾斜部のうちで最も前方まで延伸している。傾斜部121b、傾斜部121c、及び傾斜部121dは、位置P1から、位置P1と位置P2との間にある位置まで延伸している。
傾斜部121の各々は、傾斜面2b1と同様に、中心軸Xに対して第1角度θ1よりも大きな第2角度θ2だけ傾斜している。傾斜部121は、中心軸X周りの周方向の位置によって中心軸X方向と為す角度が異なっていてもよい。例えば、傾斜部121aが中心軸X方向と為す角度は傾斜部121bが中心軸X方向と為す角度と異なっていてもよい。また、傾斜部121aが周方向の位置B1において中心軸X方向と為す角度は、傾斜部121aが周方向の位置B2において中心軸X方向と為す角度と異なっていてもよい。つまり、傾斜部121aが中心軸X方向と為す角度は、周方向の位置によって異なっていてもよい。このことは、傾斜部121b,121c,121dにも同様に当てはまる。傾斜部121が中心軸に対して為す角度は、傾斜面2b1が中心軸に対して為す角度と同じであってもよいし異なっていてもよい。
図9及び図10も参照して、応力緩和面2b2についてさらに説明する。図9は、穂先竿2を中心軸Xに垂直であり位置B1を通る面で切断した断面を示す図であり、図10は、穂先竿2を中心軸Xに垂直であり位置C1を通る面で切断した断面を示す図である。中心軸Xに沿う方向において、位置C1は位置B1よりも前方にある。
上記のように、傾斜部121aは、中心軸Xに対して第1角度θ1より大きな角度で傾斜している一方で、非傾斜部122は、中心軸Xと平行またはほぼ平行に延びている。したがって、応力緩和面12b2は、図9の断面図に示されているように、周方向における位置B1と位置B2との間、位置B3と位置B4との間、及び位置B5と位置B6との間にある傾斜部121aにおいて穂先竿2の径方向外側に向かって凹む。同様に、図6に示されている断面においても、応力緩和面2b2は、周方向における位置C1と位置C2との間及び位置C3と位置C4との間において穂先竿2の径方向外側に向かって凹む。
釣竿1の使用時には、穂先竿2は図9の下方に向かって曲がるので、穂先竿2の下側の部位が圧縮される。穂先竿2のうち圧縮されるのは、穂先竿2の下端を中心として所定角度範囲内にある部位である。穂先竿2の下端は図8における0°の位置を示す。この0°の位置を中心として±30°の領域に特に圧縮力が作用する。穂先竿2の下端から周方向に±30°の範囲にある領域を圧縮領域R1という。
図示の実施形態において、釣糸ガイド7は穂先竿2(及び手元竿5)の上端に設けられているので、圧縮領域R1は、中心軸X周りの周方向において釣糸ガイド7の取付位置と反対側にある。図8に即して説明すれば、釣糸ガイド7は、周方向における180°の位置に設けられ、圧縮領域R1は、0°の位置を中心として±30°の位置にある。スピニングリールが使用される他の実施例においては、釣糸ガイド7は、周方向における0°の位置に設けられるので、圧縮領域R1は、釣糸ガイド7と同じく穂先竿2の下側に設けられる。
傾斜部121a,121b,121c,121dのうちの少なくとも一つは、この圧縮領域R1に設けられる。図示の実施形態では、傾斜部121aが圧縮領域R1内に設けられている。傾斜部121aは、その全部が圧縮領域R1内に設けられてもよいし、その一部が圧縮領域R1内に設けられてもよい。
このように、応力緩和面2b2は、非傾斜部122と、この傾斜部122から穂先竿2の径方向に凹んでいる傾斜部121aとを有している。応力緩和面2b2における傾斜部121aの形状及び配置は図示したものには限定されない。
図示の実施形態において、非傾斜部122の一部は、位置P2から位置P1まで延びている。言い換えると、非傾斜部122の一部の後端は、中心軸X方向において位置P1に位置している。中心軸X方向の位置P1における非傾斜部122の周方向長さ(図8における長さb1+b2+b3+b4に相当する。)の応力緩和面2b2の内周面の周方向における全長(図8における長さaに相当する。)に対する比は、0.5以上とされる。つまり、(b1+b2+b3+b4)/aは0.5以上(百分率で表せば50%以上)とされる。
上記のように、一実施形態における穂先竿2の製造のためには、炭素繊維に合成樹脂を含浸したプリプレグシートを焼成して管状の焼成体が作成される。穂先竿2の傾斜面2b1及び応力緩和面2b2は、この管状の焼成体の内周面を例えばテーパーリーマ等の工具を用いて加工することにより得られる。一実施形態においては、穂先竿2の内部に、テーパーリーマをその軸方向が中心軸Xに対してやや傾くように(例えば、0.05°〜2°の範囲内の角度で傾くように)挿入して、穂先竿2の内周面を削ることにより傾斜面2b1を形成し、その後、より小径のリーマ(例えば、ピンリーマ)を用いて、穂先竿2の内周面の傾斜面2b1よりも奥にある領域を削ることにより傾斜部121aを形成してもよい。他の実施形態においては、まずピンリーマを用いて穂先竿2の内周面を削ることにより傾斜部121aに相当する細溝を形成し、次にテーパーリーマを用いて穂先竿2の内周面を当該細溝よりも浅く削ることにより、傾斜面2b1及び傾斜部121aを形成してもよい。このようにして、傾斜面2b1、及び、傾斜部121aが設けられた応力緩和面2b2を形成することができる。傾斜面2b1と傾斜部121aはどちらを先に形成してもよいし、両者を一度に形成してもよい。
上記のように、インロー芯材6は、穂先竿2の継合部2aの内周面2bに接着されてもよい。この場合、インロー芯材6のうち穂先竿2の後端2a1から突出している部位を手元竿5に挿入することにより、穂先竿2と手元竿5とがインロー芯材6を介して連結される。この場合、手元竿5の内周面5bの先端付近が穂先竿2の内周面2bの後端付近と同様に形成される。具体的には、手元竿5の内周面5bの先端付近に、傾斜面2b1及び応力緩和面2b2に相当する凹凸構造が形成される。
穂先竿2の内周面の後端付近に傾斜面2b1及び応力緩和面2b2を形成し、且つ、手元竿5の内周面の前端付近に傾斜面2b1及び応力緩和面2b2に相当する凹凸構造を形成してもよい。このような凹凸構造を穂先竿2と手元竿5の両方に設けることにより、破断をさらに抑制することができる。この場合、インロー芯材6は、手元竿5の内周面に接着されてもよいし、穂先竿2の内周面に接着されてもよい。
次に、図11を参照して、本発明の他の実施形態による釣竿101について説明する。図11は、本発明の他の実施形態による釣竿101における継合構造を模式的に示す断面図である。
釣竿101は、並継式の釣竿である。釣竿101は、手元竿102と、この手元竿102の穂先端に継合される穂先竿105と、を有する。穂先竿105は、手元竿102よりも小径に構成される。手元竿102は、穂先竿2と同様に、応力緩和層21と、応力緩和層21の外表面に設けられた本体保護層22と、本体保護層22の外表面に設けられた本体層23と、本体層23の外表面に設けられた補強層24と、を備えてもよい。
穂先竿105の外周面105aは、手元竿102の前端から内部に合わせ位置まで挿入されたときに、手元竿102の前端よりも後方にある支持位置において、穂先竿105の外周面105aが手元竿102の内周面に接する。この支持位置において、穂先竿105の外径と手元竿102の内径とが一致またはほぼ一致する。図11の実施形態においては、穂先竿105の後端部(手元竿102に近い側の端部)が竿体に挿入される軸部材に相当する。
手元竿102の内周面102bは、図3及び図4に示されている穂先竿2の内周面2b(応力緩和層21の内周面21A)と同様に構成される。すなわち、手元竿102の内周面102bは、応力緩和層21の内周面21Aと同様に、凹凸構造を有する傾斜面21A1に相当する傾斜面と、その傾斜面から中心軸Xに平行に延びる平行面と、を有する。手元竿102の内周面102bの凹凸構造は、例えば、図4に示されている傾斜面21A1の凹凸構造と同様に複数の凹部(例えば、8つの凹部21a1〜21a8)と、複数の凸部(例えば、8つの凸部21b1〜21b8)と、を有してもよい。図示は省略しているが、穂先竿105の外周面105aには、インロー芯材6の傾斜部6bと同様の傾斜部が設けられる。
図11には、手元竿102と穂先竿105の2本の竿のみが図示されているが、並継式の釣竿は3本以上の竿体が継合されたものでもよい。並継式の釣竿を構成する各竿体は、手元竿102と穂先竿105との継合構造と同様の継合構造を用いて継合され得る。
続いて、上記実施形態が奏する作用効果について説明する。上記の一実施形態における釣竿1は、中空の穂先竿2と、この穂先竿2の内周面2b(応力緩和層21の内周面21A)に支持位置A1において支持されるインロー芯材6と、を備えている。穂先竿2の内周面2b(応力緩和層21の内周面21A)には、軸方向における支持位置A1と一端位置A2との間において、仮想曲線Yから中心軸Xに向かって突出する凸部21b1〜21b8を有している。よって、図5a〜図5cを参照して説明したように、穂先竿2が撓んだときに、この凸部21b1〜21b8がインロー芯材6の外表面6eと接するようになる。これにより、インロー芯材6は、穂先竿2が撓んだときに、軸方向において支持位置A1の1点だけで応力緩和層21の内周面21Aに支持されるのではなく、凸部21b1〜21b8の少なくとも一部によっても支持される。これにより、穂先竿2の内周面2bからインロー芯材6に対して作用する応力を中心軸X方向の1点(支持位置A1)に集中させるのではなく、中心軸X方向において拡がりを持った範囲に分散させることができる。これにより、インロー芯材6の破断を抑制することができる。
上記の一実施形態において、穂先竿2は、その最内層に強化繊維を含む応力緩和層21を有し、応力緩和層21よりも径方向外側に強化繊維を有する本体層23を有している。この応力緩和層21に含まれる強化繊維の引張弾性率は、本体層23に含まれる強化繊維の引張弾性率よりも小さいので、傾斜面21Aを形成するために応力緩和層21を切削しても、穂先竿2の軸方向における曲げプロファイルに与える影響が小さい。言い換えると、応力緩和層21を設けることにより、穂先竿2の曲げプロファイルに大きな影響を与えることなく、穂先竿2の内周面に傾斜面を形成することができる。
上記の一実施形態においては、穂先竿2が撓んでいないときには、凸部21b1〜21b8は、インロー芯材6の外表面6eよりも径方向外側にある。これにより、インロー芯材6を穂先竿2の内周面と干渉させることなく、インロー芯材6を所定の合わせ位置まで穂先竿2に挿入することができる。
上記の一実施形態において、インロー芯材6が挿入される穂先竿2の内周面2bは、その後端付近に、傾斜面2b1と、応力緩和面2b2と、円筒面2b3と、を有している。この応力緩和面2b2は、傾斜部121a,121b,121c,121dと、非傾斜部122と、を有している。傾斜面121及び傾斜部121a,121b,121c,121dは、中心軸X方向に対してインロー芯材6の外周面の傾斜角度よりも大きな傾斜角度を為して延びているのに対して、非傾斜部122は中心軸X方向と平行に又はほぼ平行に延びている。インロー芯材6を穂先竿2の内周面2bに嵌め合わせると、合わせ位置境界123bにおいて、穂先竿2の内周面2bがインロー芯材6に接する。このように、穂先竿2は、境界123bにおいてインロー芯材6に支持される。釣竿1の使用時に穂先竿2及び手元竿5が撓むと、合わせ位置境界123bにおいてだけでなく応力緩和境界123aにおいても穂先竿2の内周面2bがインロー芯材6と接するようになる。応力緩和境界123bは、中心軸X方向の後端側に向かって凸となる波形の形状を有するので、穂先竿2の内周面2bからインロー芯材6に作用する応力は、合わせ位置境界123bが配置されている中心軸X方向の位置P1においてだけでなく、この位置P1から中心軸X方向の後方にシフトした位置においても作用する。つまり、穂先竿2の内周面2bからインロー芯材6に対して作用する応力を中心軸X方向の1点(P1の位置)ではなく中心軸X方向において拡がりを持った範囲に分散させることができる。例えば、図8には応力緩和境界123a上に存在する位置A、位置B1、位置C1,及び位置Dが示されており、この位置A、位置B1、位置C1,及び位置Dは中心軸X方向の異なる位置に配置されている。穂先竿2が撓む前には、穂先竿2の内周面2bは合わせ位置境界123bにおいてインロー芯材6と接している。穂先竿2及び手元竿5が撓むと応力緩和境界123bが合わせ位置境界123bに近い部位から順にインロー芯材6に接するようになる。従来の継合構造においては、応力緩和面2b2に相当する構成を備えていないため、インロー芯材に対する応力は穂先竿2の後端において軸方向の1点に集中的に作用し、このことがインロー芯材の破壊の原因となっている。これに対して、上記の実施形態においては、応力緩和面2b2により、インロー芯材6への応力が中心軸X方向において分散して作用するので、インロー芯材の破壊を抑制することができる。
図11に示されている並継式の釣竿101における継合構造においても同様の理由により手元竿102の内周面から穂先竿105へ作用する応力を中心軸方向において分散させることができる。これにより、穂先竿105の破壊を抑制することができる。
上記の一実施形態において、中心軸X方向の位置P1における非傾斜部122の周方向長さの応力緩和面2b2の内周面の周方向における全長に対する比は、0.5以上とされる。これにより、インロー芯材6または穂先竿105への応力を中心軸方向において分散させつつ、合わせ位置となる位置P1(支持位置A1)においてはインロー芯材6または穂先竿105を確実に保持することができる。
上記の作用効果は、傾斜部121a,121b,121c,121dのうち圧縮領域R1に存在するものによって特に発揮される。傾斜部121a,121b,121c,121dのうち圧縮領域R1外にあるものは省略されてもよい。
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。