JP3154322B2 - 中通し釣竿 - Google Patents

中通し釣竿

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JP3154322B2 JP35308395A JP35308395A JP3154322B2 JP 3154322 B2 JP3154322 B2 JP 3154322B2 JP 35308395 A JP35308395 A JP 35308395A JP 35308395 A JP35308395 A JP 35308395A JP 3154322 B2 JP3154322 B2 JP 3154322B2
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誠司 松井
哲男 阿久津
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ダイワ精工株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は大撓みの可能な中通
し釣竿に関する。
【0002】
【従来の技術】糸の絡みを防止できる等の効果から、釣
竿内部に釣糸を挿通させた中通し釣竿が使用されてい
る。穂先竿のように細い径の竿管も内部に釣糸を挿通さ
せる空間を確保し、また釣糸抵抗を低減させる必要のあ
ることから、中通しでない釣竿と比べて一般に竿管外径
が大きく形成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】然しながら、竿管外径
が大きくなれば、それだけ撓み剛性が高くなり、柔軟な
調子の大撓み可能な釣竿が提供できないこととなる。こ
の柔軟さを出すために、弾性率の低い合成樹脂材料を主
体に形成したり、単に竿管の肉厚を薄くしたりすれば強
度不足になる。また、軸長方向強化繊維の層の内外に円
周方向強化繊維を配設して竿管を構成しても、大撓みさ
せた場合は、特に外側の円周方向強化繊維層の伸びが大
きくなり、隣接した円周方向強化繊維間に剥離が生じ易
く、座屈や潰れが生じて破損し易くなる。
【0004】依って本発明は、釣糸の挿通可能な内径を
有しつつ、大撓みの可能な粘り強さのある中通し釣竿を
提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的に鑑みて本発明
は、主に繊維方向が軸長方向に対して略35度から略7
5度に傾斜した方向を指向した傾斜方向層と、該傾斜方
向層の繊維量よりも少ない繊維量を有し、主に繊維方向
が略軸長方向を指向した軸長方向層と、繊維の主たる方
向が略円周方向を指向した内側層とを有した竿管領域を
具備し、該竿管領域の後部に、繊維の主たる方向が略軸
長方向を指向した軸長方向繊維層を追加したことを特徴
とする合成樹脂をマトリックスとし、強化繊維で強化さ
れた中通し釣竿を提供する。繊維量とは、単位長さ当た
りの竿管に含まれる各方向の繊維体積量をいう。
【0006】大撓みさせた場合は、特に外側層の伸びが
大きくなり、外側層として主に繊維を円周方向に指向さ
せていれば、隣接した円周方向繊維間に剥離が生じ易
く、剥離すれば円周方向繊維の耐潰れ強度が発揮し難
い。また、合成樹脂材料を主体に形成したり、単に竿管
の肉厚を薄くしたりすれば強度不足になり、潰れや座屈
を生じ易い。
【0007】そこで本発明では、主に軸長方向を指向し
た軸長方向層の他に、主に繊維方向が軸長方向に対して
略35度から略75度に傾斜した方向を指向し、前記軸
長方向層よりも繊維量の多い傾斜方向層を配設してい
る。これは、繊維方向が傾斜しているため軸長方向成分
が存在し、これが繊維間の剥離に対する抵抗になり、剥
離が防止されると共に、この範囲の傾斜角度の繊維で
は、竿が長手方向に撓んだ際の撓み剛性に寄与する分が
小さく、竿の柔軟性も同時に保持できる。また、こうし
た傾斜方向繊維では円周方向の成分も有しており、潰れ
に対して強い。
【0008】更には、相対的に少ないが軸長方向繊維の
存在のため、竿の塑性曲り変形を押えることができる
他、上記傾斜方向繊維の存在は、捩りに対して強く、穂
先竿のように捩れる竿管では特に強度が向上する。然し
ながら、軸長方向繊維の軸長方向層は傾斜方向層よりも
繊維量が少ないので、撓み剛性の上昇は押えられ、柔軟
性が保持される。撓み剛性に寄与する分の小さな傾斜方
向繊維の傾斜方向層の方は厚めに設定しても撓み剛性の
上昇は押えられ、柔軟性が保持されつつ、潰れや座屈に
対して強い。このように撓み剛性の上昇は押えられるた
め、竿管内径を大き目に設定しても大撓みし易く、傾斜
方向繊維の傾斜方向層を厚くして竿管を厚く形成できる
ことのため、大撓みしても剥離や潰れが防止でき、破損
し難く、粘り強く、後部が先部領域に比較して撓み剛性
が高くなり、略円周方向指向の内側層が存在することに
より、外側層の傾斜方向繊維を少なくできた中通し釣竿
が提供できる請求項2では、主に繊維方向が軸長方向
に対して略35度から略75度に傾斜した方向を指向し
た傾斜方向層と、該傾斜方向層の繊維量よりも少ない繊
維量を有し、主に繊維方向が略軸長方向を指向した軸長
方向層とを有した竿管領域を具備する竿管の先部には傾
斜方向繊維の層を設け、後方部には傾斜方向繊維の層を
設けていないことを特徴とする合成樹脂をマトリックス
とし、強化繊維で強化された中通し釣竿を提供する。傾
斜方向層の繊維方向が傾斜しているため軸長方向成分が
存在し、これが竿が撓んだ際の繊維間の剥離に対する抵
抗になり、剥離が防止されると共に、この範囲の傾斜角
度の繊維では、竿が撓んだ際の撓み剛性に寄与する分が
小さく、竿の柔軟性も同時に保持できる。また、こうし
た傾斜方向繊維では円周方向の成分も有しており、潰れ
に対して強い。更には、相対的に少ないが軸長方向繊維
の存在のため、竿の塑性曲り変形を押えることができる
他、上記傾斜方向繊維の存在は、捩りに対して強く、穂
先竿のように捩れる竿管では特に強度が向上する。然し
ながら、軸長方向繊維の軸長方向層は傾斜方向層よりも
繊維量が少ないので、撓み剛性の上昇は押えられ、柔軟
性が保持される。撓み剛性に寄与する分の小さな傾斜方
向繊維の傾斜方向層の方 は厚めに設定しても撓み剛性の
上昇は押えられ、柔軟性が保持されつつ、潰れや座屈に
対して強い。このように撓み剛性の上昇は押えられるた
め、内径を大き目に設定しても大撓みし易く、傾斜方向
繊維の傾斜方向層を厚くして竿管を厚く形成できること
のため、大撓みしても剥離や潰れが防止でき、破損し難
くて粘り強く、後方部の外径を細径にできた竿管を有す
る中通し釣竿が提供できる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を添付図面に示す形
態例に基づき、更に詳細に説明する。図1は本発明に係
る中通し釣竿の穂先竿の製造方法の説明図である。ま
ず、台形状のプリプレグシートP1の強化繊維Sの主た
る方向が心金10の略円周方向を指向するようにしてテ
ーパ状心金10に2回巻回する。次にこの上に、強化繊
維の主たる方向が略軸長方向を指向するようにして台形
状のプリプレグシートP2を2回巻回する。この上に、
3角形状のプリプレグシートP3を、その先端位置が前
記プリプレグシートP2の途中位置に位置するように、
かつ強化繊維の主たる方向が略軸長方向を指向するよう
に設定して巻回する。また、その上に、他の3角形状の
プリプレグシートP4を、その先端位置が前記プリプレ
グシートP3の途中位置に位置するように、かつ強化繊
維の主たる方向が略軸長方向を指向するように設定して
巻回する。
【0010】更に、台形状のプリプレグシートP5の強
化繊維Sの主たる方向が心金10の軸長方向に対して略
45度の角度θに傾斜するように2回巻回する。この上
に、強化繊維Sの主たる方向が心金10の軸長方向に対
して反対側に略45度傾斜するように他の台形状のプリ
プレグシートP6を2回巻回する。以上の巻回数は例示
であり、他の巻回数を選択できる。但し、シートP2
は、傾斜方向繊維量より少ない繊維量の範囲で巻回数を
選択できる。しかし、成形される穂先竿の後方部は大き
く撓ませる必要がなければ、逆に軸長方向繊維を傾斜方
向繊維よりも多くなるように巻回してもよい。
【0011】以上のプリプレグシートP1,P2,P
3,P4,P5,P6は強化繊維がカーボン繊維であ
り、35wt%程のエポキシ樹脂を含浸させている。プ
リプレグシートP3とP4を除いて、カーボン繊維が1
0g/m2 程度の薄いシートを使用している。繊維は穂
先の柔らかい調子の竿では、30g/m2 程度以下のシ
ートが好ましく、硬い調子の竿では100g/m2 程度
未満が好ましい。プリプレグシートP3は、シートP2
よりも縦弾性率の高いカーボン繊維を用いており、ま
た、プリプレグシートP4は、シートP3よりも更に縦
弾性率の高いカーボン繊維を用いている。特に柔軟さを
求められる穂先竿の先部領域の軸長方向繊維となるプリ
プレグシートP2の強化繊維Sの縦弾性率は30ton
/mm2 以下が好ましい。
【0012】こうして巻回後に、加圧加熱して焼成され
た図2の穂先竿12の先部領域の矢視線C−Cによる横
断面を図3に示し、後部の矢視線D−Dによる横断面を
図4に示す。図3に示す中間層L2は軸長方向繊維層で
あり、その内側層L1は円周方向繊維層であり、外側の
K1とK2からなる層L3は傾斜方向繊維層である。こ
のように穂先竿12の先部領域は軸長方向繊維が傾斜方
向繊維に比較して少ないため、曲げ剛性が小さく柔軟で
ある。また、内側層L1の円周方向繊維の存在と、外側
層L3の傾斜方向繊維の存在によって潰れ破壊に対して
強く、更には、穂先竿が大撓みした際に、外側層L3の
傾斜方向繊維の軸長方向成分の存在によって、繊維間剥
離が防止できる。更には、少ないながらも中間層L2の
軸長方向繊維の存在によって、大撓みした場合の穂先竿
の塑性変形曲りが防止される。
【0013】本発明は穂先竿に限らず、中竿等の他の竿
管でもよい。また、円周方向繊維の内側層L1が存在し
ていれば、外側層L3の傾斜方向繊維を少なくできる。
また、傾斜方向繊維は、この形態のようにプラスマイナ
スの両方向に傾斜していれば、何れの方向にも偏りがな
く穂先竿が撓むことができ、好ましいが、一方の傾斜方
向繊維K1、又はK2の層だけでもよい。
【0014】また、図5に示す次の形態のように軸長方
向繊維層の内側に傾斜方向繊維層が存在してもよいが、
大撓みした際の潰れを防止するためには、傾斜方向繊維
が外側に存在した方が好ましい。なお、傾斜方向繊維層
L3の樹脂含浸率は軸長方向繊維層L2と同等以上に設
定するのが好ましく、更には、好ましくは30wt%以
上に設定する。また、軸長方向繊維と傾斜方向繊維とは
線膨張率が同じである同材料が好ましく、線膨張率の異
なるカーボン繊維とガラス繊維との組合せ等では成形時
に曲りが発生して好ましくない。傾斜角度θは35度〜
75度程度に設定する。
【0015】図4は図2の矢視線D−Dによる横断面で
あり、中層L2’がプリプレグシートP2,P3,P4
に対応する軸長方向繊維層J1,J2,J3を有してお
り、穂先竿の先部領域に比較して撓み剛性が高い。然し
ながら、穂先竿12の後方部は必ずしも大きく撓む必要
はないため、このように軸長方向繊維を多くしたり高弾
性な繊維を使用して、後述の図5に示す場合の形態のよ
うに、傾斜方向繊維の層を無くしたり薄くしてもよく、
結果的に穂先竿の後方部の外径を細径にし、軽量で高剛
性にすることができる。
【0016】図5は本発明に係る他の形態の穂先竿の製
造方法を示している。図示していないが、心金10の上
側には、直径が6ミクロン程度のカーボン繊維を300
0本程度束にして捩った螺旋状の釣糸ガイドが巻装され
ており、その上から、繊維が夫々逆方向に45度程傾斜
した略台形状のプリプレグシートP11とP12とを心
金10の先部領域に巻回する。その上から、前記プリプ
レグシートP11,P12を超える長さであって、繊維
が略軸長方向に指向した台形状のプリプレグシートP1
3を巻回し、このシートP13の先方部を除いた軸長方
向位置に三角形の頂点を位置させ、シートP13の巻回
終了位置付近から繊維が略軸長方向に指向した三角形状
プリプレグシートP14を巻回する。最後に、繊維が軸
長方向に指向した台形状のプリプレグシートP15を軸
長方向の後半領域に巻回する。
【0017】プリプレグシートP11,P12は夫々3
回ずつ巻回し、プリプレグシートP13は先端が1回
で、後端は4回巻回する。プリプレグシートP14は先
端が0回で、後端を2回巻回し、プリプレグシートP1
5は先端が0回で、後端は3回巻回する。これらの巻回
数は1例であり、最初の形態例の説明の場合のように、
他の巻回数を選択できる。また、全てのシートはカーボ
ン繊維に樹脂量が35wt%であり、シートP11,P
12は繊維が30g/m2 程度、シートP13は繊維が
50g/m2 程度、シートP14は繊維が110g/m
2 程度、シートP15は繊維が150g/m2 程度であ
る。
【0018】この形態例でも、図1から図4の形態例の
場合と同様に、大撓みの可能な粘り強い穂先竿ができ
る。内周に螺旋状釣糸ガイドが一体化されており、また
外側に傾斜方向繊維の層が位置することが好ましいこと
を除けば、その他は第1の形態例とほぼ同様である。ま
た各形態例とも、隣接したシートを仮に貼り合わせて1
枚のシートの如くして巻回作業を行ってもよい。また、
引揃えシートの場合は、巻回作業中に繊維がばらけるこ
とを防止するために、ガラス繊維のスクリムシートを貼
着していてもよい。螺旋状釣糸ガイドは、カーボン繊
維、ガラス繊維等の無機繊維や、アラミド繊維、ポリエ
ーテルイミド繊維、チラノ繊維等の有機繊維等を組み合
わせて束状として合成樹脂を含浸したもの、更には、捩
ったものでもよい。また、本発明の積層構造は、中通し
釣竿でなく、その他の外通しの釣竿(穂先は中実でよ
い)にも応用できる。
【0019】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明に
よれば、釣糸の挿通可能な内径を有しつつ、大撓みの可
能な粘り強さのある中通し釣竿を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に係る中通し釣竿の第1の製造方
法を示す図である。
【図2】図2は図1の方法によって製造された穂先竿の
側面図である。
【図3】図3は図2の矢視線C−Cによる断面図であ
る。
【図4】図4は図2の矢視線D−Dによる断面図であ
る。
【図5】図5は本発明に係る中通し釣竿の第2の製造方
法を示す図である。
【符号の説明】
12 穂先竿 L1 内側層(円周方向繊維層) L2 中間層(軸長方向繊維層) L3 外側層(傾斜方向繊維層)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A01K 87/00 630 A01K 87/00 610

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主に繊維方向が軸長方向に対して略35
    度から略75度に傾斜した方向を指向した傾斜方向層
    と、 該傾斜方向層の繊維量よりも少ない繊維量を有し、主に
    繊維方向が略軸長方向を指向した軸長方向層と、 繊維の主たる方向が略円周方向を指向した内側層とを有
    した竿管領域を具備し、 該竿管領域の後部に、繊維の主たる方向が略軸長方向を
    指向した軸長方向繊維層を追加したことを特徴とする合
    成樹脂をマトリックスとし、強化繊維で強化された 中通
    し釣竿。
  2. 【請求項2】 主に繊維方向が軸長方向に対して略35
    度から略75度に傾斜した方向を指向した傾斜方向層
    と、 該傾斜方向層の繊維量よりも少ない繊維量を有し、主に
    繊維方向が略軸長方向を指向した軸長方向層とを有した
    竿管領域を具備する 竿管の先部には傾斜方向繊維の層を
    設け、後方部には傾斜方向繊維の層を設けていないこと
    を特徴とする合成樹脂をマトリックスとし、強化繊維で
    強化された中通し釣竿。
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