JP5920350B2 - 溶融ガラスの製造方法およびガラス製品の製造方法 - Google Patents
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Description
この問題を解決するために、ガラス原料の混合物からなる粒子(造粒体)を気相雰囲気中で加熱し溶かして溶融ガラス粒子とし、次いで溶融ガラス粒子を集積して液体相(溶融ガラス)を形成する気中溶融法と呼ばれる技術が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
例えば、気中溶融炉に供給される造粒体に微細な粒子が含まれていると、該微細な粒子が粉塵となる。また造粒体の強度が不十分であると、搬送中に造粒体の一部が崩壊したり、造粒体表面の粒子が剥がれたりして微粉化し、それらの微粉が粉塵となる。
粉塵は、気中溶融炉内や、造粒体を気流搬送する気流搬送装置内で舞い上がって飛び散りやすいため、気中溶融炉外に排出されやすい。このため、粉塵を形成し易い造粒体が気中溶融炉に供給されると、多量の粉塵が排気径路に入り込むため、フィルタの詰りが生じ易い。また、気中溶融法により得られる溶融ガラスの組成が変動してしまい、溶融ガラスの組成が不均一となりやすい。
前記造粒体が前記ガラス原料としてケイ砂を含み、
(1)前記造粒体を、目開き1mmの篩を用いて篩分けをし、篩を通過した造粒体を乾式によるレーザ回折散乱法で測定した粒度分布曲線において、体積累計メディアン径を表わすD50が80〜800μmであり、
(2)前記造粒体中のケイ砂の平均粒子径が1〜40μmであり、
ただし、
(I):ガラス原料を混合した後該混合物を粉砕することなく造粒して製造される造粒体の場合、ガラス原料として使用するケイ砂を湿式によるレーザ回折散乱法で粒度分布曲線を測定し、得られた粒度分布曲線において体積累計メディアン径を表わすD50を前記ケイ砂の平均粒子径とする。
(II):ガラス原料を混合し、該混合物を粉砕した後造粒して製造される造粒体の場合、製造された造粒体を電子線マイクロアナライザー(EPMA)で観察して、造粒体中のケイ砂を判別し、その粒子径をJIS R 1670に記載されている方法で測定し、該測定により個数基準の粒子径分布を得、これをScwartz−Saltykov法により体積基準の粒子径分布に換算し、得られた体積基準の平均粒子径Daveを前記ケイ砂の平均粒子径とする。
(3)前記造粒体の構成粒子となる非水溶性粒子を湿式によるレーザ回折散乱法で測定した粒度分布曲線において、小粒径側から体積累計10%の粒径を表わすD10と体積累計90%の粒径を表わすD90との比D90/D10が10以上であることを特徴とする。
(5)前記造粒体を乾式によるレーザ回折散乱法で測定した粒度分布曲線におけるピークの数が1つであることが好ましい。
(6)前記造粒体を乾式によるレーザ回折散乱法で測定した粒度分布曲線において、粒径が48μm以下である粒子の含有率が5体積%以下であることが好ましい。
(7)前記造粒体の圧壊強度が1MPa以上であることが好ましい。
また、前記造粒体は、ガラス原料を混合し、該混合物を粉砕した後造粒して製造された造粒体であることも好ましい。この場合、前記造粒体はスプレードライ造粒法で造粒して製造された造粒体であることが好ましい。
また本発明は、本発明の溶融ガラスの製造方法で得られた溶融ガラスを成形し徐冷する、ガラス製品の製造方法を提供する。
本発明において、粒子の平均粒径を表すD50とは、乾式または湿式によるレーザー回折散乱法を用いて測定された粒度分布曲線における、体積累計50%のメディアン径である。
D10とは該粒度分布曲線における、小粒径側から体積累計10%の粒径を表わし、D90とは該粒度分布曲線における、小粒径側から体積累計90%の粒径を表わす。
D1とは該粒度分布曲線における、小粒径側から体積累計1%の粒径を表わし、D99とは該粒度分布曲線における、小粒径側から体積累計99%の粒径を表わす。
粒度分布を測定する際の乾式とは、粉体の試料についてレーザー回折散乱法を用いて粒度分布を測定することを意味する。
粒度分布を測定する際の湿式とは、20℃の水100mLに対して、0.01〜0.1gの割合で粉体試料を分散させた状態で、レーザー回折散乱法を用いて粒度分布を測定することを意味する。
なお、湿式によるレーザ回折散乱法で測定した粒度分布曲線には、前記条件において水に溶解した成分は含まれない。
本発明において、ガラス中の成分はB2O3、SiO2、Al2O3、MgO、CaO、SrO、BaO、Na2O等の酸化物で表し、各成分の含有量は酸化物換算の質量割合(質量%)で表す。また、ガラス組成は固体ガラスのガラス組成をいい、溶融ガラスのガラス組成はその溶融ガラスを固化したガラスのガラス組成で示す。
本発明における溶融ガラスまたはガラス製品は、その組成(ガラス組成)にSiO2が含まれているものであればよく特に限定されない。
例えばSiO2、Na2O、CaOを中心とした組成を有するソーダ石灰ガラス(ソーダライムガラス)でもよく、酸化ケイ素を主成分とし、ホウ素成分を含有するホウケイ酸ガラスでもよい。ホウケイ酸ガラスは、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しない無アルカリのホウケイ酸ガラスでもよく、アルカリ金属酸化物を含有してもよい。なお無アルカリガラスとは、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しないガラスである。具体的にはガラス組成中におけるアルカリ金属酸化物の割合は0.1質量%以下が好ましく、0.02質量%以下が特に好ましい。
以下は好ましいガラス組成の例である。
SiO2:45〜85%、Na2O:1〜25%、CaO:0〜25%、Al2O3:0〜20%、K2O:0〜15%、MgO:0〜10%、が好ましく、
SiO2:50〜75%、Na2O:1〜20%、CaO:1〜18%、Al2O3:0〜11%、K2O:0〜13%、MgO:0〜8%がより好ましい。
SiO2:40〜85%、Al2O3:1〜25%、B2O3:1〜20%、MgO:0〜10%、CaO:0〜17%、SrO:0〜24%、BaO:0〜30%、R2O(Rはアルカリ金属を表す。):0.1%未満が好ましく、
SiO2:45〜70%、Al2O3:10〜22%、B2O3:5〜16%、MgO:0〜7%、CaO:0〜14%、SrO:0.5〜13%、BaO:0〜15%、R2O(Rはアルカリ金属を表す。):0.1%未満がより好ましい。
SiO2:45〜85%、Al2O3:2〜20%、B2O3:1〜15%、MgO:0〜10%、CaO:0〜10%、SrO:0〜9%、BaO:0〜9%、R2O(Rはアルカリ金属を表す。):2〜15%が好ましく、
SiO2:50〜82%、Al2O3:2〜20%、B2O3:2〜13%、MgO:0〜5%、CaO:0〜9%、SrO:0〜6%、BaO:0〜2%、R2O(Rはアルカリ金属を表す。):4〜15%がより好ましい。
ガラス原料は、溶融ガラスの製造工程中で上記ガラス組成に示される酸化物となり得る化合物である。具体的には、上記ガラス組成に示される酸化物または熱分解等により該酸化物となりうる化合物(塩化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩等)が用いられる。
ガラス原料混合物の組成は、酸化物換算で目的とするガラス組成とほぼ一致するように設計される。酸化ホウ素などの揮発性の成分を含むガラスを製造する場合には、ガラス製造過程における揮発性成分の揮発量を考慮してガラス原料の組成が決められる。例えばホウ素源は、目的とするホウケイ酸ガラスの酸化ホウ素含有量よりも揮発分を考慮した量だけ多い量とする。
造粒体を製造する際、ガラス原料混合物は通常粉体状で用いられる。水溶性である化合物は、予め水に溶解した状態で用いてもよい。
本発明において、20℃の水100mLに溶解する量が1.0g以上である化合物を水溶性成分、1.0g未満である化合物を非水溶性成分という。
[ケイ素源]
ケイ素源は、溶融ガラスの製造工程中でSiO2成分となり得る化合物である。本発明ではケイ素源として少なくともケイ砂を用いる。ケイ素源の全部がケイ砂であることが好ましい。ケイ砂は非水溶性成分である。
ガラス原料混合物中のケイ砂の含有量は40質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましい。上限は、得ようとするガラス組成や、ガラス組成を形成する酸化物となる化合物の種類に応じて決まるが、実質的には70質量%程度である。
アルミニウム源は、溶融ガラスの製造工程中でAl2O3成分となり得る化合物である。酸化アルミニウム、水酸化アルミウム等が好適に用いられる。これらは1種でもよく2種以上を併用してもよい。酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムはいずれも非水溶性成分である。
ホウ素源は、溶融ガラスの製造工程中でB2O3成分となり得る化合物である。オルトホウ酸(H3BO3)、メタホウ酸(HBO2)、四ホウ酸(H2B4O7)等のホウ酸が好適に用いられる。これらの中でも安価で、入手しやすい点から、オルトホウ酸が好ましい。また、ホウ酸と、ホウ酸以外のホウ素源を併用してもよい。ホウ酸以外のホウ素源としては、酸化ホウ酸(B2O3)、コレマナイト等が挙げられる。これらは1種でもよく2種以上を併用してもよい。
これらのうち、水溶性成分であるのはホウ酸、酸化ホウ素、非水溶性成分であるのはコレマナイトである。コレマナイトはホウ素源でありカルシウム源でもある。
マグネシウム源は、溶融ガラスの製造工程中でMgO成分となり得る化合物である。マグネシウムの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物、水酸化物、塩化物、フッ化物が挙げられる。これらは1種でもよく2種以上を併用してもよい。
これらのうち水溶性成分であるのはMgSO4、Mg(NO3)2、MgCl2、非水溶性成分であるのはMgCO3、MgO、Mg(OH)2、MgF2である。MgSO4、Mg(NO3)2、MgCl2は通常は水和物として存在する。これらの水和物はMgSO4・7H2O、Mg(NO3)2・6H2O、MgCl2・7H2Oである。
上記に挙げたマグネシウム源のうち、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、フッ化マグネシウムは清澄剤でもある。
また、ドロマイト(理想化学組成:CaMg(CO3)2)も使用できる。ドロマイトはマグネシウム源でありカルシウム源でもある。ドロマイトは非水溶性成分である。
本発明におけるアルカリ土類金属とは、Sr、Ca、またはBaを指す。アルカリ土類金属源は、溶融ガラスの製造工程中でSrO、CaO、またはBaOとなり得る化合物である。アルカリ土類金属源としては、アルカリ土類金属の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物、水酸化物、塩化物、フッ化物が挙げられる。これらは1種でもよく2種以上を併用してもよい。
これらのうち、水溶性成分であるのは、各アルカリ土類金属の塩化物、硝酸塩、及び水酸化バリウムBa(OH)2・8H2O、水酸化ストロンチウムSr(OH)2・8H2Oであり、非水溶性成分であるのは水酸化カルシウムCa(OH)2、各アルカリ土類金属の炭酸塩、硫酸塩、フッ化物である。酸化物は水と反応して水酸化物を形成する。
アルカリ土類金属の硫酸塩、塩化物、フッ化物は清澄剤でもある。
本発明におけるアルカリ金属とは、Na、K、Liを指す。アルカリ金属源は、溶融ガラスの製造工程中でNa2O、K2O、Li2Oとなり得る化合物である。アルカリ金属源としては、アルカリ金属の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物、水酸化物、塩化物、フッ化物が挙げられる。これらは1種でもよく2種以上を併用してもよい。
これらのうち、フッ化リチウムLiFを除いていずれも水溶性成分である。酸化物は水と反応して水酸化物を形成する。
アルカリ金属の硫酸塩、塩化物、フッ化物は清澄剤でもある。
本発明における造粒体は複数のガラス原料を含む原料組成物を造粒して得られるものである。すなわち、造粒体は、目的とするガラス組成のガラスとなりうる複数のガラス原料を含む、ガラス原料混合物の造粒体である。
造粒に供するガラス原料混合物には、ガラス原料の他に、必要に応じて、副原料として清澄剤、着色剤、溶融助剤、乳白剤等を含有させてもよい。また造粒のために必要な造粒成分として、例えば、バインダー、分散剤、界面活性剤等を含有させてもよい。これらの副原料または造粒成分は公知の成分を適宜用いることができる。
造粒に供するガラス原料混合物の乾燥固形分のうち、ガラス原料が占める割合は90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。100質量%でもよい。
ガラス原料を混合する時点から造粒体を得るまでの工程を以下造粒工程という。あらかじめ必要な粒度にまで粉砕したガラス原料を使用する場合は、造粒工程においてガラス原料混合物を粉砕する必要はない。しかし、ガラス原料の一部でも必要な粒度にまで粉砕されていない場合は、造粒工程においてまずガラス原料混合物を粉砕し、その後に造粒を行う。
造粒法としては、例えば転動造粒法、流動層造粒法、押出造粒法、スプレードライ造粒法、凍結乾燥法などが挙げられる。なかでも、転動造粒法は混合と造粒が連続して行えるために、便利に使用でき、スプレードライ造粒法は大量の原料の造粒を行うことができる。本発明における造粒法としては転動造粒法とスプレードライ造粒法が好ましい。
スプレードライ造粒法は、例えば、ガラス原料混合物に水を供給して、攪拌して原料スラリーを調製し、該原料スラリーをスプレードライヤー等の噴霧手段を用いて、例えば200〜500℃程度の高温雰囲気中に噴霧して乾燥固化させることにより造粒体が得られる。また、必要な粒度にまで粉砕されていないガラス原料を使用する場合には、ボールミル等の粉砕撹拌装置を用い、ガラス原料を混合し、粉砕しながら攪拌してガラス原料混合物とする。粉砕撹拌を水の存在下で行うことによりガラス原料混合物と水からなる原料スラリーが得られ、粉砕撹拌を乾式で行うことにより得られたガラス原料混合物の粉末の場合は、それに水を加えて撹拌し原料スラリーとすることができる。
一方、スプレードライ造粒法などの造粒法においては、造粒工程においてガラス原料粒子の粒度を積極的に変化させる粉砕等の過程を設けて造粒体の大量生産を行うことが容易である。その場合、ガラス原料粒子の粒度分布が造粒工程前と造粒体中では異なることより、造粒体におけるガラス原料粒子の粒度分布はその造粒体を測定することにより得る。したがって、ケイ砂の場合、製造された造粒体を測定対象とし、その造粒体中の粒子からケイ砂粒子を判別して、そのケイ砂粒子の粒度分布を測定する。
後述の条件(1)のD50の測定において、本発明における造粒体を、目開き1mmの篩を用いて篩分けをしたときの回収率は、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。このために、必要であれば、造粒工程で得られた造粒体を、予め篩分けして粗大な粒子を除去したものを、本発明における造粒体とすることが好ましい。このように予め篩分けする際に用いる篩の目開きは1mm以下が好ましく、500μm〜1mmがより好ましい。
なお、篩分けの回収率は、篩分けに供した造粒体の全質量に対する、篩を通過した造粒体の質量の割合(単位:質量%)である。
(1)造粒体を目開き1mmの篩を用いて篩分けをし、篩を通過した造粒体を乾式によるレーザ回折散乱法(以下、乾式の測定法と略記する場合もある。)で測定した粒度分布曲線において、体積累計メディアン径を表わすD50(以下、造粒体のD50という。)が80〜800μmである。
造粒体のD50が80μm以上であると、粉塵となる粒径50μm以下の微細な粒子の含有量が少ないため、粉塵の発生が抑えられやすい。
気中溶融法では、造粒体をバーナー炎中を飛翔させることによってその一部または全部を溶融する。造粒体のD50が800μm以下であると、加熱されたときに溶融しやすい。
また造粒体はバーナー炎中に入射する際に熱衝撃を受け、造粒体の粒径が大きいほど、かかる熱衝撃による破壊が生じやすいと考えられる。造粒体のD50が800μm以下であると、造粒体が気中溶融炉中で壊れにくいため、粉塵の発生が抑えられる。
造粒体のD50の好ましい範囲は90〜800μmであり、100〜700μmがより好ましい。
ケイ砂の平均粒子径が1μm未満であると、そのような微細な粒子にケイ砂を粉砕するためのコストがかかるため好ましくない。また、転動造粒法で造粒する際に、原料の嵩が増大して均一混合が難しくなる場合がある。
一方、ケイ砂の平均粒子径が40μm以下であると、粉塵の原因となる比較的小さい造粒体粒子や単独で存在するケイ砂の含有割合が少ないため、粉塵の発生が抑えられる。
すなわち、造粒体にあっては、複数個のケイ砂粒子が他のガラス原料粒子とともに凝集して1個の造粒体粒子を形成している。このとき、ケイ砂粒子間には液架橋による付着力(粒子と粒子の間に液体の膜ができてお互いに引き合う力)が働いていると考えられる。しかしながら粒径が大きいケイ砂粒子は、かかる付着力では他のケイ砂粒子と一体的に凝集し難いため、ケイ砂粒子を1個しか含まないような、粒径が小さい造粒体粒子が形成されやすい。かかる粒径が小さい造粒体粒子は粉塵の原因となりやすいだけでなく、造粒体粒子間における組成の均一性を低下させるため、造粒体を用いて製造される溶融ガラスの組成の均一性が低下しやすくなる。
ケイ砂の平均粒子径の好ましい範囲は3〜40μmであり、5〜30μmがより好ましい。
(I):ガラス原料を混合した後該混合物を粉砕することなく造粒して製造される造粒体の場合、ガラス原料として使用するケイ砂を湿式によるレーザ回折散乱法で粒度分布曲線を測定し、得られた粒度分布曲線において体積累計メディアン径を表わすD50を前記ケイ砂の平均粒子径とする。なお、粒径近似のデータ処理を行う場合は、円相当径として実施する。
したがって、造粒体の製造に用いるケイ砂を、湿式の測定法によるD50が1〜40μmとなるように調整し、そのケイ砂を使用することによって、前記条件(2)を満たす造粒体が得られる。
前記のように、ガラス原料混合物の粉砕過程を含む造粒工程で製造された造粒体の場合は、ガラス原料として使用するケイ砂の粒度分布と、造粒体中のケイ砂の粒度分布とは違ったものになる。このような場合は、造粒体を電子線マイクロアナライザー(EPMA)で観察して、造粒体中のケイ砂を判別し、その粒子径を、JIS R 1670に記載されている方法で測定する。この方法で測定される粒度分布は個数基準であるため、Scwartz−Saltykov法を用いて体積基準の粒度分布に換算する。これより得られる体積基準の平均粒子径Daveは、造粒体粒子中のケイ砂の体積累計メディアン径(D50)とみなすことができる。
具体的には、造粒体から任意に取り分けた3〜5個の造粒体粒子について、電子線マイクロアナライザー(EPMA)によるカラーマッピング図と通常の電子顕微鏡像との比較から、電子顕微鏡像中のケイ砂粒子を特定し、約100個のケイ砂粒子に対して、JIS R 1670(ファインセラミックスのグレインサイズ測定方法)に規定された方法で円相当径(粒子径)を測定する。次に、Schwartz−Saltykov法を用いて、得られた円相当径の分布(粒子径分布)から球体(粒子)の直径の分布を算出する。さらに球体(粒子)の直径から球体(粒子)の体積を求めることによって体積基準の粒子径分布に換算する。以下の式に従って体積基準の平均粒子径Daveを算出する。
Dave=Σ(球体の直径×体積)/Σ(球体の体積)
なお、Scwartz−Saltykov法は、下記文献(2)に記載されており、公知である。
文献(2):水谷惟恭、他、「セラミックプロセシング」 pp.195−201 技報堂出版 1985.
測定対象のガラス原料混合物としては、ガラス原料混合物を粉砕することなく造粒して造粒体を製造する場合は造粒前のガラス原料混合物であればよく、ガラス原料混合物を粉砕した後造粒して造粒体を製造する場合は粉砕後かつ造粒前のガラス原料混合物を測定対象として使用する。さらに、ガラス原料混合物を粉砕することなく造粒して造粒体を製造する場合は、混合する前の原料のうち非水溶性の原料を個々に湿式によるレーザ回折散乱法で測定して、その測定結果とガラス原料混合物の組成よりガラス原料混合物のD90/D10を算出することができる。また、さらに、造粒体中のバインダー成分が水溶性である場合は、造粒体を水に分散させて水溶性成分を溶解させ、残った非水溶性の粒子が水に分散した状態でレーザ回折散乱法で粒度分布曲線を測定し、同じようにD90/D10を求めることもできる。
このようにして得られる粒度分布曲線は造粒体の構成粒子のうち非水溶性の原料粒子のみの粒度分布曲線に相当する。以下、該D90/D10を、造粒体の構成粒子のD90/D10という。
造粒体の構成粒子のD90/D10の値が大きいほど、粒度分布曲線における粒子径の分布が広く、微粒と粗粒の粒子径の差が大きいことを意味する。造粒体の構成粒子に粗粒と微粒が存在すると、個々の造粒体粒子において粗粒の間に微粒が充填されて、造粒体粒子の密度が向上しやすくなる。造粒体粒子の密度が向上すると、造粒体粒子の強度が向上しやすい。
本発明において、造粒体の構成粒子のD90/D10の値が10以上であると、このような粗粒と微粒が存在することによる造粒体粒子の密度向上効果が十分に得られやすい。
造粒体の構成粒子のD90/D10の値の上限は特に限定されないが、前記条件(1)の造粒体のD50を満たすのが容易である点で、該D90が500μm以下であることが好ましい。
造粒体の構成粒子のD10〜D90の値の好ましい範囲は0.5〜500μmであり、1〜300μmがより好ましい。
例えば噴霧乾燥に供されるスラリー中に存在する、非水溶性成分の粒度分布曲線におけるD90/D10が10以上となるように調整すればよい。
また、各非水溶性原料についてそれぞれ湿式によるレーザー回折散乱法で粒度分布曲線を測定し、得られた各粒度分布曲線と、全非水溶性原料の合計のうちの各非水溶性原料の含有比率とから、ガラス原料混合物のうち全非水溶性原料の合計についての粒度分布曲線を算出することができる。したがって、ガラス原料等の原料の混合の際に上記粒度分布曲線におけるD90/D10が10以上となるように調整することによって、前記条件(3)を満たすことができる。
本発明において、造粒体の、水銀圧入法で測定した嵩密度とは、水銀圧入法によって測定した細孔容積の値を用いて下式(i)、(ii)により算出される値である。
式(i)中の材料密度は、造粒体を構成する物質の密度であり、ここでは造粒に用いた各原料それぞれの組成物の密度の文献値と、各原料の構成比率から計算によって混合物の密度を求め、材料密度とした。
本発明において、下記の条件(X)で測定した粒度分布曲線において、ピークの数が1つであれば、条件(5)を満たすものとする。
条件(X):1〜1500μmの範囲におけるレンジの分解能(分割数)が少なくとも50以上であること。
したがって、かかる2つめのピークが無く、粒度分布曲線におけるピークの数が1つであると、粉塵が良好に抑制されやすい。
本発明者らの知見によれば、粉塵の大きさは概ね50μm以下である。したがって粒子径が48μm以下である造粒体、または造粒体が壊れて生じた48μm以下の微粒は粉塵の原因となりやすい。
したがって、粉塵の発生をより良好に抑えるためには、造粒体中の、粒径が48μmである粒子の含有率が5体積%以下であることが好ましく、3体積%以下がより好ましく、ゼロが最も好ましい。
本発明において、造粒体の圧壊強度の値は、造粒体から任意に取り分けた50〜100個の造粒体粒子について、JIS R 1639−5に準じた方法で圧壊強度を測定して得られる値(単位:MPa)の平均値である。
該圧壊強度が1MPa以上であると、気中溶融法による溶融ガラスの製造過程で造粒体の破壊が生じ難く、粉塵の原因となる微粒子の発生が抑えられやすい。
例えば、気中溶融法においては、造粒体搬送(空気搬送)時の粒子同士の衝突による造粒体の破壊、通路壁との衝突による造粒体の破壊、造粒体がバーナー炎中に入射した時の、急激な温度変化(熱衝撃)による造粒体の破壊等が起こり得ると考えられるが、造粒体の圧壊強度が1MPa以上であると、これらを良好に防止できる。
該造粒体の圧壊強度は2MPa以上がより好ましく、3MPa以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、現実的には20MPa以下程度である。
本発明の溶融ガラスの製造方法は気中溶融法である。すなわち造粒体を、気相雰囲気中で前記造粒体粒子の少なくとも一部分を溶融させて溶融ガラス粒子を形成し、溶融ガラス粒子を集積して溶融ガラスとする。
概略、まず造粒体を気中溶融装置の高温の気相雰囲気中に導入する。気中溶融装置は公知のものを使用できる。次いで、気中溶融装置内で溶融した溶融ガラス粒子を集積してある量の溶融ガラスとする。気中溶融装置から取り出した溶融ガラスは成形に供される。溶融ガラス粒子を集積する方法としては、例えば、気相雰囲気中を自重で落下する溶融ガラス粒子を、気相雰囲気の下部に設けた耐熱容器に受けて集積する方法が挙げられる。
なお造粒体粒子の少なくとも一部分を溶融させるとは、個々の造粒体を対象として、その一個の造粒体の一部または全部を溶融させることをいう。造粒体粒子の一部分が溶融した状態とは、例えば(一個の)造粒体の表面が溶融し中心部が充分に溶融していない状態が挙げられる。この例の場合に(一個の)溶融ガラス粒子は、粒子の全体が溶融されておらず、中心に充分に溶融していない部分が存在している。しかし充分に溶融していない部分が存在した場合であっても、その粒子が集積して溶融ガラスとなる過程で加熱されるので、成形に供する際には均質な溶融ガラスが得られる。
気中溶融法では、個々の造粒体をそれぞれ気相雰囲気中で溶融して溶融ガラス粒子とすることが好ましい。一部の造粒体は気相雰囲気中で充分に溶融しなかったとしても、大部分の造粒体を気相雰囲気中でそれぞれ溶融ガラス粒子とすることが好ましい。本発明では、気相雰囲気中で充分に溶融しなかった粒子を含め、気相雰囲気中で生成する粒子を溶融ガラス粒子という。
本発明のガラス製品の製造方法は、本発明の溶融ガラスの製造方法で得られた溶融ガラスを成形し徐冷することを特徴とする。なおガラス製品とは、室温で固体状であり実質的に流動性を有していないガラスが、一部または全部に用いられた物品を言い、例えばガラス表面が加工されてなるもの等を含む。
具体的には、まず前記溶融ガラスの製造方法で得た溶融ガラスを、目的の形状に成形した後、徐冷する。その後、必要に応じて後加工工程において切断や研磨など、公知の方法で後加工を施すことによりガラス製品が得られる。
成形はフロート法、ダウンドロー法、フュージョン法等の公知の方法で行うことができる。フロート法は、溶融スズ上で溶融ガラスを板状に成形する方法である。
徐冷も公知の方法で行うことができる。
粒度分布曲線の測定において、乾式の測定法では、レーザー回折・散乱式粒径・粒度分布測定装置(マイクロトラックMT3200:商品名、日機装株式会社製)を用い、湿式の測定法では、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA−950V2:商品名、堀場製作所社製)を用いた。なお、粒径近似のデータ処理は、円相当径として実施した。
下記実施例等のスプレードライ造粒法で造粒体を製造した場合は、造粒前にガラス原料混合物の粉砕があるため、前記(II)で平均粒子径Daveを求め、これを造粒体中のケイ砂の平均粒子径とした。電子線マイクロアナライザーは、島津製作所製、EPMA−1610(商品名)を用いた。
転動造粒法で造粒体を製造した場合は、前記(I)でガラス原料として用いるケイ砂のD50を測定して、それを造粒体中のケイ砂の平均粒子径とした。
なお、上記ケイ砂の平均粒子径を以下いずれもD50と表す。
スプレードライ造粒法で造粒体を製造した場合は、噴霧乾燥に供されるスラリー中の粒子(溶解していない粒子)について、湿式の測定法により粒度分布曲線を測定し、D10、D50、D90、およびD90/D10を求めた。
転動造粒法で造粒体を製造した場合は、ガラス原料のうちの非水溶性成分について、それぞれ湿式の測定法により粒度分布曲線を測定し、得られた各粒度分布曲線と、ガラス原料における各非水溶性成分の組成(含有比率)とから、ガラス原料のうち非水溶性粒子のみの合計についての粒度分布曲線を算出し、該粒度分布曲線におけるD10、D50、D90、およびD90/D10を求めた。
造粒体を目開き1mmの篩を用いて篩分けをし、篩を通過した造粒体を乾式の測定法により、前記条件(X)で造粒体の粒度分布曲線を測定し、得られた粒度分布曲線から造粒体のD50を求めた。
[(d)48μm以下の粒子の含有率]、[(e)ピークの数]
造粒体を、乾式の測定法により、前記条件(X)で造粒体の粒度分布曲線を測定し、得られた粒度分布曲線から造粒体の48μm以下の粒子の含有率(単位:%)、ピークの数を求めた。
[(f)造粒体の嵩密度]
水銀圧入法による造粒体の嵩密度の測定は、水銀ポロシメータ(Thermo Fisher Scientific社製、製品名:PASCAL 140/440)を用いて行った。
[(g)造粒体の圧壊強度]
得られた造粒体から任意に取り分けた30〜50個の造粒体粒子について、JIS R 1639−5に準じた方法で圧壊強度(単位:MPa)を測定し、平均値を求めた。
測定装置には、粉粒体硬度測定器(セイシン企業社製、ベターハードネステスター BHT500)を用いた。
図1に示す構成の気中溶融炉1に、1時間当り10〜70Nm3の搬送空気とともに、1時間当り40〜150kgの投入量で造粒体2を供給して溶融ガラス3を製造した。煙道4からガスとともに排出され、バグフィルター及び、バグフィルターに通じる排気ダクト(図示せず)中に付着した粉塵を回収した。図中符号5は気中溶融バーナーを示す。溶融ガラスの製造は、ソーダライムガラスの場合は雰囲気温度1500〜1550℃、ホウケイ酸ガラスの場合は雰囲気温度1600〜1660℃で実施し、所定時間ごとに粉塵を回収して量を測定した。造粒体の供給量は、造粒体の供給速度と時間から求めた。さらに、造粒体の供給量に対する粉塵量の割合(単位:質量%)を求め、粉塵発生率とした。
また、一部の造粒体に対しては、図1と同様の構造を有する小型の試験炉で、1時間当り1〜3Nm3の搬送空気とともに、1時間当り2〜7kgの投入量で造粒体を供給し、溶融試験を行って投入量に対する粉塵量の割合を求めた後、予め算出しておいた試験炉と気中溶融炉1の粉塵発生量の関係式を用い、気中溶融炉1での粉塵量の割合に換算して粉塵発生率を求めた。
表1、2に、各例におけるガラス原料の組成(単位:質量%。四捨五入の有効数字の関係で合計が100にならない場合もある。)を示す。各ガラス原料の、造粒工程に供する前の平均粒径(D50)も合わせて示す。該造粒工程前のD50は湿式の測定法により求めた値である。
表1はソーダライム系ガラスの例であり、いずれの例も目標のガラス組成は、
SiO2:72質量%、Al2O3:1.8質量%、Na2O:13.1質量%、K2O:0.4質量%、MgO:4.0質量%、CaO:8.4質量%である。
SiO2:59.7質量%、Al2O3:17.4質量%、B2O3:8.0質量%、MgO:3.2質量%、CaO:4.0質量%、SrO:7.6質量%である。
[造粒法]
造粒法としては、スプレードライ造粒法(表にはSと記載する。)、レーディゲミキサによる転動造粒法(表にはLと記載する。)、またはアイリッヒミキサによる転動造粒法(表にはEと記載する。)のいずれかで行った。
実施例1と2は異なる日に同じ条件で実施した例である。良好な再現性が得られた。
すなわちケイ石を主成分とした直径50〜70mmの球石が容積の約50%になるように収容された容量約8m3のボールミル容器に、表1に示す組成のガラス原料を1.5トン、媒体として3μmのフィルターを通した水1トンを投入し、16時間粉砕混合を行って原料スラリーを調製した。
得られた原料スラリーを、アトマイザー方式のスプレードライヤーを用いて、入口温度260℃、出口温度170℃の条件にて、1時間におよそ100kgの造粒体が得られる速度にて噴霧乾燥を実施した。
得られた造粒体に対して、目開き500μmの篩を通して篩分けを行った。篩を通過した造粒体(回収率100質量%)について、上記(a)〜(h)の測定を行った。結果を図2、3および表3に示す。図2、3の粒度分布曲線において、横軸は粒径(単位:μm)、縦軸は頻度(単位:体積%)である(以下、同様)。
容量130Lのレーディゲミキサ(中央機工社製)に、表1に示す組成のガラス原料30kgを投入し、ショベル回転数160rpm、チョッパー回転数1750rpmにて3分間を混合した。その後、バインダーとしてポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する。)(中京油脂社製、製品名:セルナWF−804)を、固形分として2質量%含むように調整した水溶液を4.1kg((ガラス原料+水溶液)に対する水溶液の重量比で12質量%相当)を約30秒かけて投入し、ショベル、チョッパー回転数は前記と同条件のまま16分間攪拌して造粒を行った。
得られた造粒体をステンレス製の容器に入れ、熱風乾燥機中120℃で約12時間乾燥した。さらに、乾燥後の造粒体に対して、目開き1mmの篩を通して篩分けを行った。篩を通過した造粒体(回収率95質量%)について、上記(a)〜(h)の測定を行った。結果を図4および表3に示す。
アルミナで内張りした容量200Lのボールミル容器に、直径20mmのアルミナ球を容積の約50%になるように収容した。それに、表2に示す組成のガラス原料100kgと、媒体として3μmのフィルターを通した水100kgを投入し、さらにポリアクリル酸アンモニウム塩系の分散剤(中京油脂社製、製品名:セルナD305)をガラス原料に対して0.5質量%添加した後、4時間粉砕混合を行って原料スラリーを得た。
得られた原料スラリーを、加圧ノズル方式のスプレードライヤーを用いて、入口温度500℃の条件にて噴霧乾燥を実施した。
得られた造粒体に対して、目開き1mmの篩を用いて篩分けを行った。篩を通過した造粒体(回収率100質量%)について、上記(a)〜(h)の測定を行った。結果を図5および表3に示す。
ケイ石を主成分とした直径50〜80mmの球石が容積の約50%になるように収容された容量約20m3のボールミル容器に、表2に示す組成のガラス原料を5トン、媒体として3μmのフィルターを通した水5トンを投入し、さらにポリアクリル酸アンモニウム塩系の分散剤(東亞合成社製、製品名:アロンA−6114)をガラス原料に対して0.5質量%添加した後、12時間粉砕混合を行った。得られたスラリーに水を5トンを追加して希釈し、スプレードライ用の原料スラリーを調整した。
得られた原料スラリーを、加圧ノズル方式のスプレードライヤーを用いて、入口温度500℃の条件にて、1時間におよそ800kgの造粒体が得られる速度にて噴霧乾燥を実施した。
得られた造粒体に対して、目開き1mmの篩を用いて篩分けを行った。篩を通過した造粒体(回収率100質量%)について、上記(a)〜(h)の測定を行った。結果を図6、7および表3に示す。
容量75Lのアイリッヒミキサ(R08、日本アイリッヒ社製)に、表2に示す組成のガラス原料50kgを投入し、パン回転数24rpm、ロータ回転数500rpmにて30秒間原料を混合した。その後、バインダーとしてPVAを固形分として2質量%含むように調整した水溶液7.1kg((ガラス原料+水溶液)に対する水溶液の重量比で12質量%相当)を投入するとともに、ロータ回転数を1680rpmに上げて15分間造粒を実施した。
得られた造粒体をステンレス製の容器に入れ、熱風乾燥機中120℃で約12時間乾燥した。さらに乾燥後の造粒体に対して、目開き1mmの篩を通して篩分けを行った。篩を通過した造粒体(回収率90質量%)について、上記(a)〜(h)の測定を行った。結果を図8、9および表3に示す。
予め、表2に示した配合割合の塩化マグネシウム6水塩と硫酸マグネシウム7水塩の5倍量(塩化マグネシウム17.5kg、硫酸マグネシウム6kg)を68.2kgの水に溶かした液を用意した。
次に、表2に示すガラス原料のうち塩化マグネシウム6水塩、硫酸マグネシウム7水塩を除いた原料476.5kgを、容量750Lのアイリッヒミキサ(日本アイリッヒ社製、製品名:RV15)に投入し、パン回転数10rpm、ロータ回転数250rpmにて30秒間混合した。これに前記塩化マグネシウム6水塩と硫酸マグネシウム7水塩を溶解した液(固形分23.5kg、水68.2kg)91.7kg(ガラス原料合計500kgに対して水分量12質量%)を投入するとともに、ロータ回転数を860rpmに上げて15分間造粒を実施した。さらにロータ回転数を230rpmに落とし、2分間の整粒操作(造粒体の粒径、粒形を整える)を実施した後、造粒体を容器から取り出して乾燥機にて残留水分量が2%以下になるまで乾燥した。乾燥後の造粒体に対して、目開き1mmの篩を通して篩分けを行った。篩を通過した造粒体(回収率80質量%)について、上記(a)〜(h)の測定を行った。結果を図10および表3に示す。
本例では、実施例1〜3と比べてケイ砂のみ粒度の粗い(D50=56.6μm)原料を使用した。
容量1200Lのレーディゲミキサ(中央機工社製)に、表1に示す組成のガラス原料250kgを投入し、ショベル回転数115rpm、チョッパー回転数1750rpmにて3分間原料を混合した。その後、バインダーとしてPVA(中京油脂社製、製品名:セルナWF−804)を固形分として5質量%含むように調整した水溶液27.5kgを約30秒かけて投入し、ショベル、チョッパー回転数は前記と同条件のまま10分間攪拌し、造粒を行った。
得られた造粒体をステンレス製の容器に入れ、熱風乾燥機中120℃で約12時間乾燥を実施した。さらに、乾燥後の造粒体に対して、目開き1mmの篩を通して篩分けを行った。篩を通過した造粒体(回収率90質量%)について、上記(a)〜(h)の測定を行った。結果を図11および表3に示す。
ケイ石を主成分とした直径50〜70mmの球石が容積の約50%になるように収容された容量約8m3のボールミル容器に、表2に示す組成のガラス原料を1.1トン、媒体として3μmのフィルターを通した水1.6トンを投入し、さらにポリカルボン酸アンモニウム塩系の分散剤(中京油脂社製、製品名:セルナD305)をガラス原料に対して0.5質量%添加した後、1時間混合を行って原料スラリーを調製した。
得られた原料スラリーを、アトマイザー方式のスプレードライヤーを用いて、入口温度300℃、出口温度160℃の条件にて、1時間におよそ55kgの造粒体が得られる速度にて噴霧乾燥を実施した。得られた造粒体に対して目開き500μmの篩を通して篩分けを行った。篩を通過した造粒体(回収率100質量%)について、上記(a)〜(h)の測定を行った。結果を図12および表3に示す。
ケイ石を主成分とした直径50〜80mmの球石が容積の約50%になるように収容された容量約20m3のボールミル容器に、表2に示す組成のガラス原料5トン、媒体として3μmのフィルターを通した水5トンを投入し、さらにポリアクリル酸アンモニウム塩系の分散剤(東亞合成社製、製品名:アロンA−6114)をガラス原料に対して0.5質量%添加した後、8時間粉砕混合を行って原料スラリーを調製した。
比較例3では、得られた原料スラリーに水2.5トンを追加して希釈したものをスプレードライ用のスラリーとした。
比較例4では得た原料スラリーに水を5トン追加して希釈したものをスプレードライ用のスラリーとした。
得られたスプレードライ用のスラリーを、加圧ノズル方式のスプレードライヤーを用いて、入口温度500℃の条件にて、1時間におよそ800kgの造粒体が得られる速度にて噴霧乾燥を実施した。得られた造粒体に対して、目開き1mmの篩を通して篩分けを行った。篩を通過した造粒体(回収率100質量%)について、上記(a)〜(h)の測定を行った。結果を図13、14および表3に示す。
容量1200Lのレーディゲミキサ(中央機工社製)に、表2に示す組成のガラス原料350kgを投入し、ショベル回転数115rpm、チョッパー回転数1750rpmにて3分間原料を混合した。その後、バインダーとしてPVA(中京油脂社製、製品名:セルナWF−804)を固形分として5質量%含むように調整した水溶液39kgを約30秒かけて投入し、ショベル、チョッパー回転数は前記と同条件のまま10分間攪拌し、造粒を行った。
得られた造粒体をステンレス製の容器に入れ、熱風乾燥機中120℃で約12時間乾燥した。さらに、乾燥後の造粒体に対して、目開き1mmの篩を通して篩分けを行った。篩を通過した造粒体(回収率90質量%)について、上記(a)〜(h)の測定を行った。結果を図15および表3に示す。
容量250Lのアイリッヒ・インテンシブミキサ(日本アイリッヒ社製)に、表2に示す組成のガラス原料170kgを投入し、パン回転数18rpm、ロータ回転数300rpmにて2分間混合した。その後、バインダーとしてPVA(中部サイデン社製、製品名:バンスターPX25)を5質量%含む水溶液25kgを投入するとともに、ロータ回転数を1000rpmに上げて約8分間造粒を実施した。その後、ロータ回転数を再度300rpmに落として2分間整粒操作(造粒体の粒径、粒形を整える)を行った。
得られた造粒体をステンレス製の容器に入れ、熱風乾燥機中120℃で約8時間乾燥を実施した。さらに乾燥後の造粒体に対して、目開き1mmの篩を通して篩分けを行った。篩を通過した造粒体(回収率90質量%)について、上記(a)〜(h)の測定を行った。結果を図16および表3に示す。
これに対して、比較例1は、構成粒子中のケイ砂のD50が56.6μmと大きい例である。造粒体中における粒径48μm以下の粒子の含有量が高く、粒度分布曲線には2つのピークが現れた。この造粒体を用いて溶融ガラスを製造したところ、粉塵が比較的多く発生した。
比較例2〜4は、造粒体の構成粒子のD90/D10の値が10より小さい例である。造粒体の嵩密度が低く、造粒体粒子の強度が低かった。また造粒体中の粒径48μm以下の粒子の含有量が高い。この造粒体を用いて溶融ガラスを製造したところ、粉塵が多く発生し、頻繁な粉塵の処理が必要であった。
比較例5、6は、構成粒子中のケイ砂のD50が44.5μmと大きい例である。造粒体中における粒径48μm以下の粒子の含有量は低いが、粒度分布曲線には2つのピークが現れた。この造粒体を用いて溶融ガラスを製造したところ、粉塵が多く発生し、頻繁な粉塵の処理が必要であった。
なお、2011年7月19日に出願された日本特許出願2011−157767号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
2 造粒体、
3 溶融ガラス、
4 煙道、
5 気中溶融バーナー。
Claims (10)
- ガラス原料混合物の造粒体を、気相雰囲気中で前記造粒体粒子の少なくとも一部分を溶融させて溶融ガラス粒子を形成し、前記溶融ガラス粒子を集積して溶融ガラスを形成する、溶融ガラスの製造方法であって、前記造粒体が前記ガラス原料としてケイ砂を含み、
(1)前記造粒体を目開き1mmの篩を用いて篩分けをし、篩を通過した造粒体を乾式によるレーザ回折散乱法で測定した粒度分布曲線において、体積累計メディアン径を表わすD50が80〜800μmであり、
(2)前記造粒体中のケイ砂の平均粒子径が1〜40μmであり、
ただし、
(I):ガラス原料を混合した後該混合物を粉砕することなく造粒して製造される造粒体の場合、ガラス原料として使用するケイ砂を湿式によるレーザ回折散乱法で粒度分布曲線を測定し、得られた粒度分布曲線において体積累計メディアン径を表わすD50を前記ケイ砂の平均粒子径とする。
(II):ガラス原料を混合し、該混合物を粉砕した後造粒して製造される造粒体の場合、製造された造粒体を電子線マイクロアナライザー(EPMA)で観察して、造粒体中のケイ砂を判別し、その粒子径をJIS R 1670に記載されている方法で測定し、該測定により個数基準の粒子径分布を得、これをScwartz−Saltykov法により体積基準の粒子径分布に換算し、得られた体積基準の平均粒子径Daveを前記ケイ砂の平均粒子径とする。
(3)前記造粒体の構成粒子となる非水溶性粒子を湿式によるレーザ回折散乱法で測定し、得られた粒度分布曲線において、小粒径側から体積累計10%の粒径を表わすD10と体積累計90%の粒径を表わすD90との比D90/D10が10以上である、
ことを特徴とする溶融ガラスの製造方法。 - 前記造粒体の、水銀圧入法で測定した嵩密度が50%以上である、請求項1記載の溶融ガラスの製造方法。
- 前記造粒体を乾式によるレーザ回折散乱法で測定した粒度分布曲線におけるピークの数が1つである、請求項1または2に記載の溶融ガラスの製造方法。
- 前記造粒体を乾式によるレーザ回折散乱法で測定した粒度分布曲線において、粒径が48μm以下である粒子の含有率が5体積%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶融ガラスの製造方法。
- 前記造粒体の圧壊強度が1MPa以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶融ガラスの製造方法。
- 前記造粒体が、ガラス原料を混合した後該混合物を粉砕することなく造粒して製造された造粒体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶融ガラスの製造方法。
- 前記造粒体が、転動造粒法で造粒して製造された造粒体である、請求項6に記載の溶融ガラスの製造方法。
- 前記造粒体が、ガラス原料を混合し、該混合物を粉砕した後造粒して製造された造粒体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶融ガラスの製造方法。
- 前記造粒体が、スプレードライ造粒法で造粒して製造された造粒体である、請求項8に記載の溶融ガラスの製造方法。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の溶融ガラスの製造方法で得られた溶融ガラスを成形し徐冷する、ガラス製品の製造方法。
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