JP5914655B2 - 改善された脱水反応方法 - Google Patents

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Description

本発明はグリセリンからアクロレイン及び/又はアクリル酸を生産する方法に関するものであり、特定すれば二峰性の細孔構造及び高い細孔容積及び分布を有する担体上に担持された新規触媒系の存在下におけるグリセリンの接触脱水によってアクロレイン及びアクリル酸を調製する方法に関する。本発明はまた、触媒寿命の改善と共に、それぞれ再生可能なアクリル酸及びメタクリル酸を生産するための、ヒドロキシカルボン酸もしくはその誘導体、特に2−ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)もしくは3−ヒドロキシプロピオン酸及び2−ヒドロキシイソ酪酸もしくは3−ヒドロキシイソ酪酸の接触脱水にもたらすことができる、幾つかの改善に関する。
アクロレインはメチオニンの生産に用いられており、またタンパク質補充用として出現した動物補足飼料として用いられるアミノ酸の生産のための誘導体である。アクロレインはアクリル酸合成の中間体であり、メチルビニルエーテルとの反応と、これに続く加水分解を介して、なめし革に広く用いられるグルタルアルデヒドが得られる。
アクリル酸は多くの工業製品に用いられる材料であり、アクリル酸とその誘導体の重合により生産されるポリアクリラート及びポリアクリルアミドなど工業用ポリマーの重要なモノマー及びコモノマーである。アクリル酸の重要な用途の1つは、アクリル酸およびアクリル酸ナトリウムもしくは他のカチオンの混合物の部分的中和により調製される高吸水性樹脂である。実際には、アクリル酸は重合されて、得られるポリアクリル酸が部分的に中和される。これらのポリマーもしくはコポリマーは、汚水処理、洗剤、コーティング材料、ワニス、接着剤、紙、織物及び皮革など様々な分野で広く利用されている。
メタクリル酸及びその誘導体メチルメタクリラートは数多くの重合反応もしくは共重合反応の出発物質である。
メチルメタクリラートは、商標名ALTUGLAS(登録商標)及びPLEXIGLAS(登録商標)として知られており、車産業、家庭用品及び事務用品、輸送、建築物、照明分野など様々な用途に用いられているポリ(メチルメタクリラート)(PMMA)の製造用モノマーである。
メチルメタクリラートはまた、高級メタクリラートの有機合成用の出発物質であり、ポリビニルクロリド用の添加剤として機能するアクリル系エマルジョン及びアクリル樹脂の調製に用いられ、潤滑剤用添加剤として機能するメチルメタクリラート−ブタジエン−スチレンコポリマーなど数多くのコポリマーの製造におけるコモノマーとして、また多くのその他の用途を有し、中でも医学用人工装具、凝集剤、洗浄剤などが挙げられる。アクリル系エマルジョン及び樹脂は塗料、接着剤、紙、繊維及びインク分野などに用途がある。アクリル系樹脂はまた、PMAAと同じ用途を有するプレートの製造において利用される。
アクロレイン及びアクリル酸は、酸素存在下で、触媒を用いてプロピレンを酸化する方法により工業的規模で製造されている。一般的に、この反応は気相で実施される。アクリル酸は通常2段階反応で製造される。第1段階において、アクロレインが豊富な生成物がプロピレンから製造されるが、この段階ではアクリル酸は殆ど製造されない。アクリル酸は第2段階において、アクロレインの選択的酸化により得られる。第1段階で得られるアクロレインの精製は必要としない。
アクロレイン及びアクリル酸の製造に用いられる出発物質は、再生可能なものではなく、化石燃料である石油および天然ガス由来である。しかし、CO排出が関連している地球温暖化影響を減少させるためには、これらを再生可能資源から製造することが非常に重要である。このような変更は工業主要国の責任であり、環境負荷の軽減及び地球温暖化ガスの削減に寄与することができる。
同様に、メタクリル酸もしくはメチルメタクリラートの合成に用いられる原材料も、主に石油由来もしくは合成物起源である。これらの方法は従って大量のCO排出源を含み、その結果として温室効果の増加原因となる。世界的な石油埋蔵量は減少していることから、これらの原材料は次第に底をつくことになる。
グリセリンを接触脱水反応させることによりアクロレインを製造することができることから、バイオディーゼル燃料あるいは油脂化学品の製造において動物もしくは植物油から派生するグリセリンはプロピレンの代替物として考えられている。当該プロセスは従って、より一般的な概念としての環境保護につながる、グリーンケミストリー構想への対応を可能とする。グリセリンはまた、糖の発酵及水素化分解など、いくつかのプロセスにより製造することができる。
アクロレインが第1の段階で製造され、次いで第2の段階でアクリル酸がアクロレインの選択的酸化により得られるので、アクリル酸をグリセリンから製造するためのプロセス経路は、プロピレン酸化プロセスと非常に類似したものである。しかし、脱水反応のプロセスにおいては、プロピレン酸化において使用される触媒とは異なる固体触媒が使用され、また、多量の水はアクロレインが豊富なガスに随伴して、アクリル酸を製造するための第2の段階に供給される。さらに、まったく異なる反応機序により、副生成物の組成は大きく異なる。
アクリル酸は、2−ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)もしくは3−ヒドロキシプロピオン酸などのヒドロキシカルボン酸を脱水することによっても合成される。このようなプロセスは、再生可能な材料からアクリル酸の直接合成することができるという優位性を示す。
例えばバイオマスの発酵により得られる3−ヒドロキシイソ酪酸もしくは2−ヒドロキシイソ酪酸などの再生可能なヒドロキシカルボン酸を脱水することによりメタクリル酸を合成することができる。
従って、化石由来の原材料に頼らず、代わりに原材料としてバイオマスを用いる工業的規模のアクリル酸もしくはメタクリル酸の製造方法を実用化する必要があるように思われる。
出願人はそれ故、アクリル酸もしくはメタクリル酸を高収率で得ることができ、かつ長期にわたり活性を有する、より選択的な触媒を用いる、再生可能資源からのアクリル酸もしくはメタクリル酸の製造の改善を探索してきた。
グリセリンからアクロレインへの脱水反応について数多くの触媒系がすでに研究の主題とされる。
特許US5,387,720は、ハメット酸度により定義される固体酸触媒上で、液相もしくは気相において、340℃までの範囲の温度におけるグリセロールの脱水によりアクロレインを製造するためのプロセスを記載している。この触媒は+2未満、好ましくは−3未満のハメット酸度でなければならない。これらの触媒は、例えば、モルデナイト、モンモリロナイトもしくは酸性ゼオライトなどの天然もしくは合成ケイ素材料;酸化物もしくはケイ素材料などの支持体、例えば一塩基性、二塩基性もしくは三塩基性無機酸で被覆されたアルミナ(Al)もしくは酸化チタン(TiO);γ−アルミナ、ZnO/Al混合酸化物などの酸化物もしくは混合酸化物、あるいはヘテロポリ酸に対応する。
出願WO2006/087084によれば、ハメット酸度H0が−9から−18である強い酸性の固体触媒が、グリセロールからアクロレインへの脱水反応について強力な触媒活性を有し、かつ不活性化が遅い。
WO2009/044081は、酸素、鉄、リン及びアルカリ金属並びに、Al、Si、B、Co、Cr、Ni、V、Zn、Zr、Sn、Sb、Ag、Cu、Nb、Mo、Y、Mn、Pt、Rhを含む群から選択されるアルカリ土類金属及び希土類の複数を含有する触媒の存在下で行われるグリセリン脱水反応を開示している。
WO2009/128555は、ヘテロポリ酸中のプロトンが周期律表の第1族から第16族に属する元素を含む群から選択される元素の複数のカチオンにより交換されている化合物からなる触媒の存在下で行われるグリセリン脱水反応を開示している。
WO2010/046227は酸素、リン並びに、バナジウム、ホウ素及びアルミニウムを含む群から選択される少なくとも1種の元素を含有する触媒の存在下で行われるグリセリン脱水反応を開示している。
WO2007/058221は、固体酸触媒として使用されるヘテロポリ酸の存在下で、気相におけるグリセリンの脱水反応によりアクロレインを製造するためのプロセスを開示している。ヘテロポリ酸はケイタングステン酸、リンタングステン酸及びリンモリブデン酸などの第6族元素の酸である。これらのヘテロポリ酸は二峰性細孔シリカ担体上に担持され、86%の収率でアクロレインを生産する。このグリセリンの脱水反応は、しかしながら、酸化ガスを使用しないがキャリアガスとして窒素流を用いて行われ、炭素堆積の増加が激しく、従って触媒の安定性、活性及び選択性についての経時劣化が問題である。
この特許の好ましい実施例において、ヘテロポリ酸を担持する担体は、30から1500m/gの比表面積、0.5から200μmのマクロ細孔、1から50nmのメソ細孔の、二峰性の細孔サイズ分布、並びに0.3から4cm/gの細孔容積の物性を有する。
文献JP―2010−253374では、経時的なアクロレインの収率を低下させずに、グリセリンを脱水するための触媒が、≧90質量%のシリカを含有し並びに0.1−30nmの細孔径を有するマイクロ細孔及び1−50nmの細孔径を有するナノ細孔を有する非晶質多孔質担体上に担持された、リン並びにアルミニウム、ジルコニウム及びほう素から選択される少なくとも1つの元素並びに/又は希土類元素から選択される少なくとも1つの元素を含有する結晶化した塩を実質的に用いて得られる。
JP−A1−2007−301506は、接触グリセリン脱水におけるグリセリンの転化率及びアクロレインの収率が、800未満のSi/T比(T = Al、B、Ti、Cu、In、Cr、Fe、Co、Ni、Zn、Ga)を有する結晶性メタロシリケートの成型触媒であって、水銀圧入法により測定した容積基準モード径が0.8μmよりも小さい前記成型触媒を用いることにより改善することができることを報告している。
しかしながら、グリセリンからアクロレインを生産するための、先行技術により推奨されている触媒は一般的に、触媒上のコーク形成及び従って触媒の不活性化が原因である、ヒドロキシプロパン、プロパンアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、グリセロールへのアクロレインの付加生成物、グリセロールの重縮合生成物、環状グリセロールエーテルなどの副生成物のみならずフェノールや多環芳香族の形成をもたらす。アクロレイン中の副生成物、特にプロパンアルデヒドの存在は、アクロレインの分離に多くの問題を生じさせて、このことが精製アクロレインの回収をコストの高いものにする、分離及び精製段階を必要とさせる。さらに、アクロレインがアクリル酸を製造するために用いられた場合、存在するプロパンアルデヒドは、特に蒸留によるアクリル酸からの分離が困難なプロピオン酸に酸化される。これらの存在する不純物は、アクリル酸の製造のための、グリセリンの脱水により生産されたアクロレインの用途分野を大きく減少させる。
乳酸(2−ヒドロキシプロピオン酸)は天然生成物であり入手しやすいが、これを脱水して高収率でアクリル酸にすることは、脱水と同時に起きる脱カルボニル化及び脱炭酸の競合が原因となって、困難である。3−ヒドロキシプロピオン酸の脱水は比較的容易に実施されるが、このヒドロキシカルボン酸は入手することができず、発酵により2−ヒドロキシプロピオン酸の塩、例えばアンモニウム塩などを製造し、これをアクリル酸に転化する研究開発が行われている。
以上の既存技術を考慮すると、ヒドロキシカルボン酸及び、エステルもしくは塩などのこれらの誘導体を、脱水反応により、効率的にアクリル酸もしくはメタクリル酸などの不飽和カルボン酸へ転化するプロセスが、なお必要とされている。
意外にも、担体が二峰性の細孔構造のような多孔質支持体である公知の脱水触媒の場合、脱水反応の後、マクロ細孔分布は変化しない反面、メソ細孔分布は減少することが観察されている。従って、コーキングする主な反応部位はメソ細孔にあると考えられ、脱水反応の収率および触媒寿命について細孔容積及び分布の影響が研究されている。
米国特許第5,387,720号明細書 国際公開第2006/087084号 国際公開第2009/044081号 国際公開第2009/128555号 国際公開第2010/046227号 国際公開第2007/058221号 特開2010−253374号公報 特開2007−301506号公報
本発明の1つの目的は、石油由来ではない材料を使用して、より高収率でかつ経時的な収率低下を防ぎながら、アクロレインなどの不飽和アルデヒド、並びに不飽和カルボン酸、特にアクリル酸及びメタクリル酸を製造する方法を提供することである。
出願人は、2から50nmの細孔サイズを有するメソ細孔の細孔容積に対する、50nmを超える細孔サイズを有するマクロ細孔の細孔容積の比が0.5を超える二峰性の細孔担体上に担持された粒子状触媒系が、アクロレインを製造するためのグリセリンの脱水について、当該反応のための既存の触媒の欠点を克服する一方、高性能の触媒活性を有することを見出した。
さらに本発明がグリセリンの脱水反応以外の脱水反応、特にヒドロキシカルボン酸の脱水反応、特にそれぞれ再生可能なアクリル酸及びメタクリル酸を生産するための、2−ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)もしくは3−ヒドロキシプロピオン酸及び2−ヒドロキシイソ酪酸もしくは3−ヒドロキシイソ酪酸の脱水反応にも適用可能であろうことが、出願人にとって明らかになった。
本発明の1つの主題は従って、グリセリンの接触脱水反応によってアクロレインを調製するための方法であって、グリセリンの脱水反応が、多孔質担体に担持されたW含有金属酸化物を含む担持触媒の存在下に実施され、前記多孔質担体がTiO、SiO、Al、ZrO及びNbを含む群から選択される少なくとも1つの金属酸化物を含有し、2nmより大きく50nmより小さい細孔サイズを有するメソ細孔の細孔容積に対する、50nmを下回らない細孔サイズを有するマクロ細孔の細孔容積の比が0.5より大きく、前記多孔質担体の細孔容積が0.30cm/g以上であり、細孔容積は水銀圧入法により測定されることを特徴とする方法である。
本発明はさらに、アクリル酸を調製するための方法であって、本発明によるグリセリンの接触脱水の第1段階及び脱水反応により形成されるアクロレインを含有する気体反応生成物の気相酸化の第2段階を含む方法を提供する。
本発明はさらに、ヒドロキシカルボン酸の接触脱水反応、特にそれぞれ2−ヒドロキシプロピオン酸もしくは3−ヒドロキシプロピオン酸及び2−ヒドロキシイソ酪酸もしくは3−ヒドロキシイソ酪酸の脱水反応により、アクリル酸およびメタクリル酸を調製する方法であって、前記ヒドロキシカルボン酸の脱水反応は多孔質担体上に担持されたW含有金属酸化物を含む担持触媒の存在下において実施され、前記多孔質担体はTiO、SiO、Al、ZrO及びNbを含む群から選択される少なくとも1種の金属酸化物含有し、2nmより大きく50nmより小さい細孔サイズを有するメソ細孔の細孔容積に対する、50nmを下回らない細孔サイズを有するマクロ細孔の細孔容積の比が0.5より大きく、前記細孔容積は水銀圧入法により測定されることを特徴とする方法に関する。
好ましい実施形態は以下の1つ以上の特徴を含む:
(1)担持触媒は、前記W含有金属酸化物に加えて、P、Si、Mo及びVを含む群から選択される少なくとも1つの金属の他の金属酸化物を含む。
(2)水銀圧入法により測定される二元細孔担体の累積細孔容積が0.30cm/gより大きい。
(3)水銀圧入法により測定される二元細孔担体の平均細孔径が30nmより大きい。
(4)水銀圧入法により測定される二元細孔担体の容積基準モード径が50nmより大きい。
(5)担体がTiOで調製されている。
(6)担体が、TiO並びにSiO、Al、ZrO、及びNbから選択される少なくとも1つの金属酸化物の混合物である化合物から調製される。
(7)周期律表第1族から第16族に属する元素から選択される少なくとも1つの元素の塩が触媒の担体以外の化合物に添加されている。
(8)担体以外の化合物は以下の式(I):
Aa Xb Wc Zd Oe (I)
で表され、式中、
Aは周期律表の第1族から第16族の元素から選択されるカチオンであり、
XはP、Si、MoもしくはVであり、
Wはタングステンであり、
ZはTi、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Sn、Bi、Sb、Ce、Mg、Cs及びKから選択される複数の元素であり、
a、b、c及びdは以下の範囲:
0≦a<9、
0≦b≦1、
0<c≦20、
0≦d≦20
を充足し、並びに
eは各元素の酸化数によって定まる値である。
(9)式(I)で表される化合物の量は、W含有金属酸化物及び担体の総重量に対して1から90重量%及び好ましくは3から60重量%である。
上記の方法は以下の(1)から(7)の特徴を単独で、もしくは組み合わせて有していてもよい:
(1)グリセリンの脱水を、酸素ガスの存在下で、例えばWO06/087083もしくはWO06/114506に開示されている条件で実施する。
(2)グリセリンの脱水を、例えばWO07/090990およびWO07/090991に開示されているような、プロピレンを含有するガスの存在下で実施する、即ちグリセリン脱水段階を従来方法のプロピレン酸化反応器下流で行い、主にアクロレイン及び幾らかの残存プロピレンを含有する段階から排出するガスの高温を利用する。
(3)グリセリンの脱水はプレート式熱交換器タイプの反応器又は固定床反応器又は流動床型の反応器又は循環型流動床又は移動床において実施される。
(4)グリセリンからアクリル酸を調製する方法は、本発明によるグリセリンの接触脱水の第1段階及び脱水段階により形成されるアクロレインを含有する気体反応生成物の気相酸化の第2段階を含む。
(5)アクリル酸を調製する方法は、例えばWO08/087315に記述されるように、脱水段階から生じた水及び重質副生成物の部分凝縮及び除去の中間段階を含む。
(6)脱水反応により形成されるアクロレインを含有する気体反応生成物の気相酸化の段階が当該技術分者に周知の方法により実施される。
(7)アクリル酸を調製するための方法は、得られたアクリル酸を、水もしくは溶媒を用いて溶液として回収する段階並びに続いて、得られたアクリル酸を含む溶液を、例えば蒸留及び/又は結晶化を用いて精製する段階をさらに含む。
(8)脱水反応により形成されるアクロレインを含有する気体反応生成物が、例えば、アクリロニトリル製造するためのWO08/113927に記載されるように、アンモ酸化に付される。
(9)ヒドロキシカルボン酸が、メチルもしくはエチルエステルなど、対応するそれらのエステルの形態、又はアンモニウム塩などのそれらの塩の形態で使用される。
(10)アクロレイン又はアクリル酸もしくはメタクリル酸を製造する方法が、酸素含有ガスを用いて脱水触媒を再生する段階をさらに含み、その脱水触媒は即座にもしくは間隔をあけて分離される。
本発明の別の特徴及び優位性は、以降に記載する本発明の実施形態の記載から明らかとなる。
触媒
本発明による多孔質担体の細孔の物性、例えば細孔径及び細孔容積は、Mercury Porosimetry (Pore Master 60−GT, Quanta Chrome Co.)を使用して、水銀表面張力480dyne/cm、水銀接触角140°において水銀注入法により測定される。本明細書に示されるメソ細孔及びマクロ細孔の位置(nm)の値は、水銀侵入法において、水銀が侵入した数量を表す−dV/d(log d)[cm/g]を縦軸に及び細孔径を横軸に有する相関グラフにおいて得られる、それぞれの細孔の極大細孔径の値である。標準試験方法はASTM D 4283−83である。
触媒は二元細孔担体上、即ち二峰性の細孔構造を有する担体上に、担持された触媒である。
即ち、本発明において定義される二元細孔担体においては、メソ細孔について2nmより大きく50nmより小さい細孔サイズの定義、及びマクロ細孔について50nmを下回らない細孔サイズの定義は、各細孔の極大値が位置する細孔径の値を意味する。メソ細孔は2nmより大きく50nmより小さい範囲にあり、好ましくは10から30nmの範囲にある。マクロ細孔は50nmを下回らず、好ましくは50から300nmの範囲にある。
本発明において、2nmより大きく50nmより小さい範囲にあるメソ細孔の細孔容積に対する、50nmを下回らないマクロ細孔の細孔容積の比は0.5より大きい。この比はマクロ細孔容積(50nmを下回らないサイズを有する細孔の容積)をメソ細孔容積(2nmより大きく50nmより小さいサイズを有する細孔の容積)で割ることにより得られる。本発明において、メソ細孔に対するマクロ細孔容積の比は0.5より大きく、好ましくは1.0より大きい。上記の比を選ぶことにより、高収率でアクロレインを製造することができるだけでなく、グリセリンの転化率及びアクロレインの収率の経時的な減少が抑制された、グリセリンの脱水のための長寿命触媒を得ることができる。
水銀圧入法で測定して細孔容積(累積細孔容積又は総細孔容積)が0.30cm/g以上であるという特徴も、本発明においてやはり重要である。上記の細孔容積、好ましくは0.30cm/gを超える細孔容積を有する多孔質担体を使用することにより、グリセリンの転化率及びアクロレインの収率の経時的な減少を抑制することができる、グリセリンの脱水のための長寿命触媒を得ることができる。
水銀圧入法により測定される平均細孔径が30nmより大きいという特徴もまた本発明にとって重要である。平均細孔径は中央細孔径又は細孔が円筒状であると仮定した細孔径である。累積細孔容積が同じである場合、平均細孔径が30nmより大きくないか又は30nmより小さいと、マクロ細孔の細孔容積が減少し、メソ細孔の細孔容積が増加する。メソ細孔の細孔容積の増加により比表面積が増加する場合、グリセリンの転化率は優位に増加すると考えられていた。しかし実際問題として、メソ細孔の細孔容積の減少の結果による、メソ細孔内に発生する生成物の材料輸送の効率低下に起因するであろうコーキングの加速により、触媒活性の低下は急速に進行する。
従って、メソ細孔の細孔容積はまた、材料輸送の効率の増加の観点から及び主要な反応部位と考えられるメソ細孔におけるコーキングに起因する触媒寿命の低下を防ぐ観点からも、本発明による方法において触媒寿命を延ばす重要な要因の一つである。しかしながら、平均細孔径、とりわけマクロ細孔の細孔径の増加により機械的強度が低下する危険を避けるため、30nmから100nmの平均細孔径を選択することが有利である。
本発明においては、水銀圧入法によって測定される、二元細孔担体の容積基準モード径が50nmを越えることもまた重要である。用語「容積基準モード径」は水銀が侵入する量が最も多い細孔の極大細孔径を意味する。本発明において、多孔質担体中、容積の極大値を有する細孔径は50nmより大きい。例えば、メソ細孔及びマクロ細孔の双方を有する二元細孔担体の場合、マクロ細孔の細孔容積がメソ細孔の細孔容積よりも大きい時、マクロ細孔の最大ピークが50nmよりも大きい細孔径に位置し、メソ細孔の細孔容積がマクロ細孔の細孔容積よりも大きい時は、メソ細孔の最大ピークが50nmよりも小さい細孔径に位置する。本発明による多孔質担体については、前者が好ましい。即ち、メソ細孔の細孔容積に対するマクロ細孔の細孔容積の比が1.0より大きく、並びに容積基準モード径が50nmより大きいことが好ましい。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、窒素吸着のBET法により測定される多孔質担体の比表面積は10から1000m/g、好ましくは20から500m/gであり、より好ましくは30から200m/gである。比表面積の増加により、担持触媒の高分散を増強して活性を改善することができる。しかし、グリセリンの脱水反応の場合、グリセリンの反応性が非常に高く、また担体自身が活性を有することも多いため、担体自身による逐次反応及び並行反応が起きる。このような反応を避けるため、触媒上の活性種の量を増やす必要がある。従って、好ましい比表面積は30から100m/gである。
担体および触媒は、顆粒、粉末、ペレット、リング、三つ葉状、四葉状など制限なく任意の形状を有してよい。気相反応の場合、触媒は必要に応じて成型助剤を用いて、球体、円筒体、中空円筒体、三つ葉形状体(孔あり、孔なし)、四葉形状体(孔あり、孔なし)もしくは棒状体に成型することができる。触媒を担体および場合により成型助剤と共に成型することも可能である。三つ葉状もしくは四葉状などの形状を使用して、反応中の圧力低下を低減させる、より大きなサイズの触媒粒を得ることが可能である。球体形状の成型触媒の粒子径は、例えば固定床触媒については1から10mmであり、ならびに流動床触媒については1mmを超えない粒子径である。
触媒の調製
二元細孔担体上に担持される成分としてのW含有金属酸化物中のタングステン源は特に制限されず、パラタングステン酸もしくはそのアンモニウム塩、メタタングステン酸もしくはそのアンモニウム塩、タングステン酸もしくはそのアンモニウム塩、酸化タングステン、塩化タングステン、又はタングステンエトキシド及びヘキサカルボニルタングステンなどの有機タングステン化合物などの任意の材料であってもよい。
触媒は、二元細孔担体上に担持されるべき任意成分として上記W含有金属酸化物に加えて、P、Si、Mo及びVを含む群から選択される少なくとも1つの金属の、他の金属酸化物を含んでいてもよい。この場合、金属酸化物の原材料は、好ましくは上記元素を含むヘテロポリ酸である。
ここで、ヘテロポリ酸を簡単に説明する。
タングステン及びモリブデンのイオンは水中でオキソ酸になり、得られるオキソ酸が重合して高分子のポリオキソ酸を形成する。この場合、同種のオキソ酸が重合されるだけでなく、周りの別のオキソ酸も重合され、結果として2種以上のオキソ酸からなるポリ酸が形成される。これを、多核構造を有する「ヘテロポリ酸」と称する。中心のオキソ酸を形成する原子は「ヘテロ原子」と呼ばれ、中心のオキソ酸を取り囲んでオキソ酸を形成する原子は「ポリ原子」と呼ばれる。ヘテロ原子はケイ素、リン、ヒ素、硫黄、鉄、コバルト、ホウ素、アルミニウム、ゲルマニウム、チタニウム、ジルコニウム、セリウム及びクロムであってもよい。この中でも、リン及びケイ素が好ましい。ポリ原子はモリブデン、タングステン、バナジウム、ニオブ及びタンタルであり得る。本発明において、少なくともタングステンは常に含有される。従って、グリセリンの脱水において使用される好ましいヘテロポリ酸はリンタングステン酸及びケイタングステン酸である。ヘテロポリ酸はリン又はケイ素をヘテロ原子として、及びモリブデン及びタングステンをポリ原子として含む混合配位型並びにモリブデンとタングステンの混合配位型であり得る。ヘテロポリ酸はケギン型、ドーソン型及びアンダーソン型などの異なる構造を有することが知られている。ヘテロポリ酸は一般的に700から8、500といった高い分子量を有する。この二量体も存在し、本発明に含まれる。
触媒は二元細孔担体に担持される任意の成分として、上記のW含有金属酸化物及び場合によりP、Si、Mo及びVを含む群から選択される少なくとも1つの元素の、他の金属酸化物に加えて、元素周期律表の第1族から第16族に属するカチオンを含む群から選択される少なくとも1つのカチオンを含んでいてもよい。
元素周期律表の第1族から第16族に属するカチオンは、元素の酸性塩及び酸性オニウム塩であってもよい。前記酸性塩はナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、クロム、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、ガリウム、タリウム、ゲルマニウム、すず、鉛、ビスマス及びテルルの塩であってもよい。前記酸性オニウム塩はアミン塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩およびスルホニウム塩であってもよい。前記酸性塩及び前記酸性オニウム塩の原料は、金属もしくはオニウムの硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、酸化物およびハロゲン化物であり得る。上記の例は単に例示したものであり本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。金属もしくはオニウム塩の量は、Wの重量に対して、及びWに加えて場合によりP、Si、Mo及びVから選択される少なくとも1つの元素の重量に対して、0.01から60重量%、好ましくは0.01から30重量%である。
触媒は含浸法など、任意の公知技術により調製することができる。材料として、触媒の活性成分を構成する各金属元素の硝酸塩、アンモニウム塩、水酸化物、酸化物、酸を使用することができ、限定はされない。W含有金属酸化物を担持する触媒もまた、任意の公知技術により調製することができる。実際には、まず、W及びWに加えて場合によりP、Si、Mo及びVから選択される元素を含む化合物を含有する水溶液を調製する。ヘテロポリ酸の場合も、まずその水溶液を調製する。又は、これらの水溶液はヘテロポリ酸中に吸着水及び結晶水の形態で含有される水を、減圧下もしくは加熱乾燥により部分的もしくは完全に除去した後に調製することもできる。
得られたW含有金属酸化物の水溶液をTiO2、SiO2、Al3、ZrOおよびNbを含む群から選択される少なくとも1つの金属酸化物を含む担体に加える。場合により、元素周期律表の第1族から第16族に属する元素の金属もしくはオニウムのハロゲン化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩、水酸化物を含む化合物を含有する水溶液を加える。得られた混合物を、ろ過するか又は減圧下で乾燥して固体を得、これを最終的に焼成する。
元素周期律表の第1族から第16族に属する元素の金属もしくはオニウムの塩の添加は、W及びWに加えて場合によりP、Si、Mo及びVから選択される元素を含有する化合物を含む水溶液を多孔質担体に加えた後、加える前もしくは加えている間に行うことができる。
焼成及び乾燥は各触媒成分の担体への添加に引き続いて実施するか、又はすべての触媒成分が添加した後に実施することができる。
一実施形態において、触媒の調製は、担体と触媒の活性成分溶液との接触、乾燥及び得られた固体混合物の焼成の、複数のサイクルを含む。接触は細孔容積含浸もしくは過剰溶液含浸の手法により実施することができる。複数回の接触手法は各段階で異なる溶液を用いて実施することができる。
焼成は空気中もしくは窒素、ヘリウム及びアルゴンなどの不活性ガス下で又は空気と不活性ガスの混合ガス雰囲気下で実施することができる。有利には焼成は操作が容易にできる、空気雰囲気下で実施する。焼成のための炉は特に限定されず、マッフル炉、ロータリーキルン、流動床炉が使用できる。焼成はグリセリンの脱水反応に使用される反応管においても実施することができる。
400から900℃の焼成温度の選定も本発明の別の重要な特徴である。実際、脱水反応において、単位時間あたりのコークの形成もしくは沈着は非常に大きく、そのため触媒の寿命は短く、その結果、触媒再生が要求される回数は多くなる。再生は、燃焼によりコークを除去するための十分な熱量を発生する酸素含有ガスの循環により実施することができる。低温においては十分なコークの燃焼及び除去が期待できない。低温で触媒の焼成が行われたとしても、触媒は結局のところ反応及び再生段階の間高温にさらされる。従って、低温で焼成された触媒の場合、反応の初期と再生後では性能が異なる可能性がある。
何回かの反応及び再生のサイクル後、初期反応の時と同じもしくは一定の性能を実現するために、従って反応及び再生の操作を容易にするために焼成をより高い温度で実施することが有利である。リンタングステン酸及びケイタングステン酸などのヘテロポリ酸の場合、その構造は約350℃で分解し始め、この温度より高く加熱されるとヘテロポリ酸の構造は失われていくこととなる。リンタンスグテン酸の場合には、リン及びタングステンの酸化物又はヘテロポリ酸以外の複合酸化物に変わる。リンタンスグテン酸などのヘテロポリ酸をWの原材料として使用することが適切であるが、本発明の特徴の1つである、焼成温度が400から900℃であるために、ヘテロポリ酸の構造は示さない。焼成温度は好ましくは450から800℃であり、焼成時間は好ましくは0.5から10時間である。
グリセリンの脱水
本発明によるグリセリンの脱水反応は気相もしくは液相で実施することができ、気相が好ましい。気相反応は、固定床、流動床、循環型流動床及び移動床など様々な反応器において実施することができる。この中でも、固定床もしくは流動床が好ましい。触媒の再生は反応器の外で行うことができる。再生のために触媒を反応器系から取り出す場合、空気もしくは酸素含有ガス中で燃焼する。触媒の再生はまた、反応期間と再生期間のサイクルを設けて、反応器内で実施することもできる。再生期間の間、空気もしくは酸素含有ガスを反応器内に注入する。好ましくは、2つ以上の反応器を並行して使用し、任意の時間に反応器の一部を反応モードで使い、一部を再生モードで使う。
液相反応の場合、固体触媒を用いる液体反応のための一般的な反応器を用いることができる。グリセリン(290℃)とアクロレイン及びアクリル酸の沸点の差が大きいので、反応を比較的低い温度で行い、連続的にアクロレインを留出させるようにするのが好ましい。
アクロレインとアクリル酸を、気相におけるグリセリンの脱水により製造するための反応温度は、好ましくは200℃から450℃である。グリセリンの沸点が高いため、もし温度が200℃を下回ると、グリセリンや反応生成物の重合や炭化により触媒寿命が短くなる可能性がある。逆にもし温度が450℃を上回ると、並行反応や逐次反応が増加して、アクロレインとアクリル酸の選択率が低下する可能性がある。従って、より好ましい反応温度は250℃から350℃である。触媒再生は、250℃から450℃、好ましくは290℃から370℃の反応器温度において実施される。
圧力は特に限定しないが、好ましくは5気圧より低く、より好ましくは3気圧を下回る。
高圧においては、気化したグリセリンが凝縮し、高圧により炭素堆積が促進されて、触媒寿命を短くする可能性がある。
原料ガスの供給量は、好ましくは空間速度GHSV(標準温度圧力におけるガス流量と触媒の体積との比として定義される、ガス時間空間速度)として500から10,000h−1である。もしGHSVが500h−1を下回ると逐次反応により選択率が低下する可能性がある。逆に、もしGHSVが10,000h−1を超えると転化率が減少する可能性がある。
液相反応の反応温度は、好ましくは150℃から350℃である。高温では転化率は改善されるものの選択率が減少する可能性がある。反応圧力は特に限定しないが、必要に応じ3気圧から7気圧の加圧条件で行うことができる。
グリセリンの原料はグリセリンの水溶液の形で容易に入手可能である。本発明においては、グリセリンもしくはグリセロールを使用することができる。
反応器に供給されるガスは、グリセロール、水、酸素と不活性ガス、例えば窒素、アルゴン、CO、CO、を含む。
反応器に供給される、グリセロールに対する水の重量比は、20/1から1/20、好ましくは5/1から1/2、最も好ましくは4/1から1/1である。
本発明の方法において供給される混合ガス中のグリセリンの濃度は、1から30モル%、好ましくは1から12モル%、より好ましくは3から10モル%である。グリセリンの濃度が高すぎると、グリセリンエーテルの生成、または得られたアクロレイン及びアクリル酸と原料グリセリンとの間の望ましくない反応、のような問題が起こり得る。グリセリンを留去するために必要な温度は高められる。
本発明のグリセリンの脱水反応は、酸素もしくは空気などの酸素含有ガスの存在下で実施するのが有利である。酸素の濃度は1から10モル%、好ましくは2から7モル%である。
ヒドロキシカルボン酸の脱水反応
2−ヒドロキシプロピオン酸もしくは3−ヒドロキシプロピオン酸および2−ヒドロキシイソ酪酸もしくは3−ヒドロキシイソ酪酸などのヒドロキシカルボン酸の脱水反応は、気相もしくは液相において、固定床、流動床、循環型流動床及び移動床など様々な反応器において実施することができる。中でも、固定床もしくは流動床が好ましい。
脱水反応温度は一般的には100℃から400℃、好ましくは200℃から350℃であり、ならびに圧力はおよそ0.5から5気圧である。
気相反応は通常、液相反応よりも高温を必要とする。
窒素もしくはリサイクルガスなどの不活性ガスをヒドロキシカルボン酸と一緒に供給原料中に含有させることが可能であり、また好ましいことが多い。
アクリル酸を製造するための、2−ヒドロキシプロピオン酸もしくは3−ヒドロキシプロピオン酸の脱水反応において、分圧は一般的に1から10%、好ましくは2から6%である。
メタクリル酸を製造するための、2−ヒドロキシイソ酪酸もしくは3−ヒドロキシプイソ酪酸の脱水反応において、分圧は一般的に1から20%、好ましくは2から10%である。
ヒドロキシカルボン酸の転化に要する時間は様々である。気相における反応は一般的に液相における運転の時よりも早く、数秒以内に起きる一方、液相においては約1時間から約6時間を要する。気相における接触時間は通常0.1〜15秒、普通は2〜4秒である。
本発明による脱水触媒の量はかなり変化し、また重要ではない。
本発明の方法においては、改善された触媒を用いることにより、アクロレイン、アクリル酸もしくはメタクリル酸がより高い生産性及びより長い稼働時間で生産され得るように、より長い運転期間にわたり脱水反応を実施することができる。
触媒寿命の改善により、触媒反応及び触媒再生サイクルの効率を改善することが可能であり、従って複雑な操作を簡便にすることができ、工業プラントにとって非常に有益である。主に固定床反応器における触媒寿命の延長により、各反応器の運転サイクルが長くなり連続運転に必要な反応器の数は減少する。これは重要な資本コスト削減に貢献する。再生間隔が延びることもあることから、触媒寿命が長くなることは、触媒のより完全な再生を行うか、あるいは好ましくは触媒再生を低い平均温度で行うかなど、再生パラメータの最適化の自由度も上がるものとなる。高温処理による触媒劣化を制限するため、低温の触媒再生が好ましい。触媒反応サイクルと同じ時間内で、二元細孔触媒は、250から350℃の温度において効率的に再生できることが見いだされている。
触媒を流動床で使用する場合、再生は内在する再生装置もしくは外付けの再生装置を使って連続的に行うことができる。寿命が延長された二元細孔触媒を用いることにより、より小さな再生装置を使用することができる。
最後に、反応器技術に関わらず、寿命が延長された触媒には、触媒反応サイクルの間、原料と共に供給すべき酸素の必要量は少なくなる。その結果、特に吸収装置など下流の装置における可燃性の問題が減少される。
アクリル酸の製造
グリセリンの接触脱水から得られたアクロレインは、当該技術分野で公知の方法によりさらに酸化されて、アクリル酸が製造される。
一実施形態において、グリセリンからアクリル酸を調製する方法は、脱水段階から生じた水及び重質副生成物の部分凝縮及び除去の中間段階を含む。
前記の中間段階は、アクロレイン及びすべての非凝縮性ガスを含む流体を、アクリル酸を生じるアクロレインの酸化のための段階に送る前に、存在する水及び重質副生成物のほとんどを除去することが目的である。この水の部分凝縮は、アクリル酸を生成するためのアクロレインの酸化触媒の損傷を防ぎ、また後続の段階における大量の水の除去を防いで、コストの増大及びアクリル酸の損失の回避を可能にする。さらに、グリセロールの脱水の間に形成される「重質」不純物の一部を除去ことができ、精製操作を容易にすることができる。
この中間段階は、蒸発器を具備するかもしくは具備していない吸収塔、一つまたは複数の熱交換器、一つまたは複数の凝縮器、デフレグメーター、及び水性流体の部分凝縮を実施することができる当業者に周知の装置の任意機器を含む、凝縮プラントである別の装置で実施される。
操作は、アクロレインが豊富な流体が、アクロレインが豊富な気相とアクロレインが少ない水相に分離されるような条件で実施される。
流体中に存在する水の20から95%、好ましくは40から90%が液体流体中に除去され、アクロレインが豊富な相は一般的に、流体中に存在していた元々のアクロレインの80%を超え、好ましくは90%を超えるアクロレインを含む。これは、一般的には温度を60℃から120℃の温度に低下させることにより得られる。
本発明によるアクリル酸を調製するための方法は、得られたアクリル酸を、水もしくは溶媒を用いて溶液として回収する段階並びに続いて、得られたアクリル酸を含む溶液を精製する段階、例えば低沸点及び高沸点物質を除去するための蒸留段階及び/又はアクリル酸を結晶化することによりこれを精製する結晶化段階をさらに含む。
こうして得られたアクリル酸は、公知の方法により、水溶性のポリマーとしてもしくは水吸収性の樹脂として、例えばポリアクリル酸もしくは塩を製造するために使用することができる。
ここで、例示的な実施例を参照しながら本発明を詳細に説明するが、本発明が下記実施例に記載されるものに限定されてはならない。
下記実施例および比較例において、%はモル%を意味する。
触媒の調製
[実施例1]
グリセリンの脱水反応用のPW/TiO触媒を以下のように調製した。
13.2gのリンタンスグテン酸(日本無機化学工業株式会社)を100mlの純水に溶解してリンタンスグテン酸の水溶液を得た。別途、100gのアナターゼTiOペレット(Saint−Gobain ST 31119:径3.2mm×長さ5mm、48.2m/g、0.36cm/g、細孔容積比=1.4)を磁製皿に置き、ここに前記リンタンスグテン酸の水溶液を添加した。これを2時間放置した後、リンタンスグテン酸の水溶液を、120℃で10時間乾燥させ、続いて大気圧において500℃で3時間焼成した。
[実施例2]
TiOとしてアナターゼTiOペレット(Saint―Gobain ST 31119:径3.2mm×長さ5mm、29.2m/g、0.30cm/g、細孔容積比=1.5)を用いる他は、実施例1を繰り返した。
[実施例3]
TiOとしてアナターゼTiOペレット(Saint―Gobain ST 31119:径3.2mm×長さ5mm、35.6m/g、0.33cm/g、細孔容積比=1.1)を用いる他は、実施例1を繰り返した。
実施例2および3の累積細孔容積、細孔容積の比及び平均細孔径は本発明の範囲内にある。
[実施例4]
TiOとしてアナターゼTiOペレット(Saint―Gobain ST 31119:径3.2mm×長さ5mm、39.9m/g、0.36cm/g、細孔容積比=1.3)を用いる他は、実施例1を繰り返した。
[実施例5]
TiOとしてアナターゼTiOペレット(Saint―Gobain ST 31119:径3.2mm×長さ5mm、45.6m/g、0.36cm/g、細孔容積比=1.4)を用いる他は、実施例1を繰り返した。
[実施例6]
グリセリンの脱水反応用のW/TiO触媒を以下のように調製した:
12.2gのメタタンスグテン酸アンモニウム(日本無機化学工業株式会社)を100mlの純水に溶解してメタタンスグテン酸アンモニウムの水溶液を得た。別途、100gのアナターゼTiOペレット(Saint−Gobain ST 31119:径3.2mm×長さ5mm、48.2m/g、0.36cm/g、細孔容積比=1.4)を磁製皿に置き、ここに前記メタタンスグテン酸アンモニウムの水溶液を添加した。これを2時間放置した後、メタタンスグテン酸アンモニウムの水溶液を、120℃で10時間乾燥させ、続いて大気圧において500℃で3時間焼成した。
[実施例7]
TiOとしてアナターゼTiOリング(Saint―Gobain ST 31119:径4.5mm×長さ5mm、54m/g、0.32cm/g、細孔容積比=0.5)を用いる他は、実施例1を繰り返した。
[実施例8]
TiOとしてアナターゼTiO三つ葉形(Saint―Gobain ST 31119:径4.5mm×長さ5mm、53m/g、0.40cm/g、細孔容積比=0.9)を用いる他は、実施例1を繰り返した。
[実施例9]
TiOとしてアナターゼTiO四葉形(Saint―Gobain ST 31119:径4.5mm×長さ5mm、54m/g、0.38cm/g、細孔容積比=0.9)を用いる他は、実施例1を繰り返した。
[比較例1]
比較例1において、本発明の特許請求の範囲外である試料を調製し、評価した。
TiOとしてアナターゼTiOペレット(堺化学CS−300S:径3.0mm、75m/g、0.40cm/g、細孔容積比=0.4)を用いる他は、実施例1を繰り返した。
比較例1は、メソ細孔に対するマクロ細孔の細孔容積の比が0.4であり、0.5を上回るという本発明の要求を外れるため、本発明の特許請求の範囲外である。実際、メソ細孔の細孔容積が大きいため、平均細孔径が23.2nmと小さく、30nmを超えるという本発明の要求から外れている。
[比較例2]
TiOとしてアナターゼTiOペレット(堺化学CS−300S:径3.5mm、52m/g、0.32cm/g、細孔容積比=0.3)を用いる他は、実施例1を繰り返した。
比較例1及び2の触媒は実施例1、4及び5と同等、もしくはより高い細孔容積及び比表面積を有している。
[比較例3]
TiOとしてアナターゼTiOペレット(Saint−Gobain ST 31119:径3.2mm×長さ5mm、42.4m/g、0.26cm/g、細孔容積比=1.6)を用いる他は、実施例1を繰り返した。
この比較例3の触媒は実施例1及び5と類似の比表面積、平均細孔径及び細孔容積を有し、物性において求められる範囲を満たしているが、0.26cm/gの細孔容積は、0.30cm/gより大きいという本発明の特許請求の範囲を外れている。
[比較例4]
TiOとしてアナターゼTiOペレット(Saint−Gobain ST 31119:径3.2mm×長さ5mm、42.4m/g、0.26cm/g、細孔容積比=1.6)を用いる他は、実施例6を繰り返した。
比較例4と実施例6を比べることにより、担体が酸化タングステンのみからなる金属酸化物を担持する場合のTiOの物性の違いを、他のW含有金属酸化物との比較において評価することができる。実際、比較例4の担体は実施例6と同等の比表面積、平均細孔径及び細孔容積の比を有し、物性において求められる範囲を満たしているが、比較例3におけるPW/TiOの場合のように、0.26cm/gの細孔容積は、0.30cm/gより大きいという本発明の特許請求の範囲を外れている。
これらの触媒の特性を表1にまとめる。
Figure 0005914655
触媒の反応性
触媒を、流通型固定床反応器を常圧で操作して評価試験を行った。30cmの触媒をSUS反応管(20mm径)に充填した。50重量%のグリセリン水溶液を330℃に加熱した気化器内で予熱し、得られるガス化したグリセリンを23.4g/hrの流量で空気と共に直接触媒床に供給した。触媒を含む反応器を290℃に加熱した。供給流体は、グリセリン:酸素:窒素:水=4.7モル%:2.8モル%:68.5モル%:24.0モル%、の組成を有する。GHSVは2,020h−1であった。
生成物をコンデンサーで凝縮液として回収し、ガスクロマトグラフ(Agilent 7890A、DB−WAXカラム)によりすべての成分の定量分析を行った。ガスクロマトグラフにより各生成物のファクターを補正して、供給グリセリン、残存グリセリン及び生成物の絶対量を求め、次の式により、原材料の転化率(グリセリンの転化率)、目標とする物質の選択率(アクロレイン選択率)、目的とする物質の収率(アクロレイン収率)を計算した。
原料の転化率(%)=(反応した原料のモル数/供給した原料のモル数)×100
目的物質の選択率(%)=(得られた目的物質のモル数/反応した原料のモル数)×100
目的物質の収率(%)=(得られた目的物質のモル数/供給した原料のモル数)×100
数時間ごとに定量分析を実施して、反応時間19時間と反応時間43時間で、グリセリンの転化率とアクロレインの収率を比較した。
結果を表2に示す。
Figure 0005914655
実施例7の触媒も下記の条件で試験した。
供給原料流体Iの組成は次の通りである。グリセリン:酸素:窒素:水=6.0モル%:2.0モル%:61.3モル%:30.7モル%。GHSVは2,020h−1であった。19時間操作後のアクロレイン収率は73.5%である。
実施例2および3の累積細孔容積、細孔容積の比及び平均細孔径は本発明の範囲内である。比較例と比べて比表面積が低いにもかかわらず、これらの触媒が高いグリセリンの転化率及び高いアクロレインの収率並びに、グリセリンの転化率及びアクロレインの収率の減少の低下を示すことが明らかである。
比較例1及び2の触媒は実施例1、4及び5と同等もしくはより高い細孔容積及び比表面積を有するが、触媒活性はより速く低下している(19時間と43時間との間のグリセリンの転化率及びアクロレインの収率における比較)。触媒の寿命が細孔容積の比及び平均細孔径によって影響されることが示される。
比較例3を見ると、グリセリンの転化率及びアクロレインの収率の経時劣化が比表面積の比、平均細孔径及び細孔容積の比に加えて、累積細孔容積によっても影響されることが示される。
比較例4と実施例6を比較することにより、多孔質担体がタングステン酸化物のみからなる金属酸化物を担持する場合、グリセリンの転化率及びアクロレインの収率の経時的な劣化が、物性の範囲によっても影響されることが示される。
実施例7から9を見ると、例えばリング状、三つ葉状もしくは四葉状などの担体/触媒の形状が、長期間にわたり高い転化率及び収率を維持することが示される。
これらの実施例および比較例の結果から、以下の結論が得られる:
(1)TiO、SiO、Al、ZrOおよびNbを含む群から選択される少なくとも1つの金属酸化物を含有し、2nmよりも大きく50nmよりも小さい細孔サイズを有するメソ細孔の細孔容積に対する、50nmを下回らない細孔サイズを有するマクロ細孔の細孔容積の比が0.5よりも大きい二元細孔担体上に、W含有金属酸化物及び場合によりP、Si、Mo及びVから選択される少なくとも1つの元素を含有する他の金属酸化物を含む触媒が担持した場合、19時間及び43時間の反応時間後のグリセリンの転化率及びアクロレインの収率に実質的な差異はなく、触媒寿命が改善される。
(2)担体が二元細孔のような多孔質支持体であり、及び0.3cm/gを超える高い細孔容積を有する公知の触媒の場合、グリセリンの転化率及びアクロレインの収率に経時的な減少は認められず、長い触媒寿命が期待され得る。さらに、細孔容積が増加する場合、機械的強度が簡単に失われるような危険がある。より高い細孔容積の優位性そしてそのためより長い触媒寿命の優位性は、本発明によるメソ細孔に対するマクロ細孔の細孔容積の比そしてそのため平均細孔径と容積基準モード径の求められるすべてが満足された場合にのみ得られ、触媒寿命が改善されることになる。
(3)換言すれば、W含有金属酸化物及び場合によりP、Si、Mo及びVから選択される少なくとも1つの元素を含有する他の金属酸化物を含む触媒が、TiO、SiO、Al、ZrOおよびNbを含む群から選択される少なくとも1つの金属酸化物を含有する二元細孔担体上に担持し、特に二峰性の細孔構造を有する二元細孔TiO担体が、2nmよりも大きく50nmよりも小さい細孔サイズを有するメソ細孔の細孔容積に対する、50nmを下回らない細孔サイズを有するマクロ細孔の細孔容積の比が0.5より大きく、特に1.0より大きく、30nmより大きい平均細孔径及び50nmより大きい容積基準モード径を有し、前記多孔質担体の細孔容積が0.30cm3/g以上である場合、本発明から外れる物性を有するTiOと比べて、グリセリンの転化率及びアクロレインの収率を損ねることなく触媒活性の経時的な低下又は触媒の寿命を改善することが可能である。

Claims (13)

  1. グリセリンの接触脱水反応によりアクロレインを調製する方法であって、グリセリンの脱水反応は多孔質担体上に担持されたW含有金属酸化物を含む担持触媒の存在下に実施され、前記多孔質担体はTiO、SiO、Al、ZrO及びNbを含む群から選択される少なくとも1種の金属酸化物を含有し、2nmよりも大きく50nmよりも小さい細孔サイズを有するメソ細孔の細孔容積に対する、50nmを下回らない細孔サイズを有するマクロ細孔の細孔容積の比が0.5を上回り、水銀圧入法により測定される前記多孔質担体の細孔容積は、0.30cm/g以上であることを特徴とする、方法。
  2. 担持触媒が、前記W含有金属酸化物に加えて、P、Si、Mo及びVを含む群から選択される少なくとも1つの金属の他の金属酸化物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 水銀圧入法により測定される前記多孔質担体の細孔容積が、0.30cm/gを超えることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
  4. 水銀圧入法により測定される前記多孔質担体の平均細孔径が、30nmを超えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 水銀圧入法により測定される前記多孔質担体の容積基準モード径が、50nmを超えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 担体がTiOから調製されているか、又はTiO並びにSiO、Al、ZrO、及びNbから選択される少なくとも1種の金属酸化物の混合物である化合物から調製されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 周期律表第1族から第16族に属する元素から選択される少なくとも1つの元素の塩が、触媒の担体以外の化合物に添加されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 担持触媒中の担体以外の化合物が下記式(I):
    Aa Xb Wc Zd Oe (I)
    で表され、式中、
    Aは周期律表第1族から第16族の元素から選択されるカチオンであり、
    XはP、Si、MoもしくはVであり、
    Wはタングステンであり、
    ZはTi、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Sn、Bi、Sb、Ce、Mg、Cs及びKから選択される複数の元素であり、
    a、b、c及びdは以下の範囲:
    0≦a<9、
    0≦b≦1、
    0<c≦20、
    0≦d≦20
    を充足し、並びに
    eは各元素の酸化数によって定まる値である
    ことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 式(I)により表され、担体上に担持される前記金属酸化物の量が、前記担体に対して1から90重量%であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
  10. グリセリンからアクリル酸を調製する方法であって、請求項1から9のいずれか一項に記載のグリセリンの接触脱水の第1段階及び脱水反応により形成されるアクロレインを含む気体反応生成物の気相酸化の第2段階を含む、方法。
  11. 脱水段階から生じた水及び重質副生成物の、部分凝縮及び除去の中間段階を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
  12. 得られたアクリル酸を、水もしくは溶媒を用いて溶液として回収する段階並びに続いて、得られたアクリル酸を含む溶液を、例えば蒸留及び/又は結晶化を用いて精製する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
  13. グリセリンからアクリロニトリルを調製する方法であって、請求項1から9のいずれか一項に記載のグリセリンの接触脱水の第1段階及び脱水反応により形成されるアクロレインを含有する気体反応生成物のアンモ酸化の第2段階を含む、方法。
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