JP5897356B2 - リチウム二次電池用正極活物質の製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池用正極活物質の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法に関するものである。
近年、家庭電器においてポータブル化、コードレス化が急速に進むに従い、ラップトップ型パソコン、携帯電話、デジタルカメラ等の小型電子機器の電源としてリチウムイオン二次電池が実用化されている。このリチウムイオン二次電池については、1980年に水島等によりコバルト酸リチウムがリチウムイオン二次電池の正極活物質として有用であるとの報告がなされて以来、リチウムコバルト複合酸化物に関する研究開発が活発に進められている。
電子機器の高機能化に伴い、更なる電池の高容量化が必要とされている。所定容積の電池を高容量化するためには、充填密度の高い正極活物質を正極として用いることが提案されている。
充填密度の高い正極活物質としては、例えば、下記特許文献1には、リチウム遷移金属複合酸化物に、ストロンチウム、タングステン、アンチモンの少なくとも1種と、モリブデンを含有させたリチウムコバルト系複合酸化物を正極活物質として用いることが提案されている。また、下記特許文献2にはモリブデン、バナジウム、タングステン、ホウ素、フッ素の少なくとも1種の化合物とリチウム原料と遷移金属原料とを混合し、焼成して得られるリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として用いることが提案されている。
また、下記特許文献3には、リチウム複合酸化物をチタン酸ストロンチウムで被覆したリチウム二次電池用正極活物質が提案されているが、特許文献3で得られる正極活物質では、充填密度の高いものが得難い。
特開2007−299668号公報 特開2005−251716号公報 特開2003−17053号公報
近年、リチウム二次電池の高容量化に加え、安全性にも配慮した正極活物質の開発が望まれている。
従って、本発明の目的は、充填密度が高く、リチウム二次電池の安全性、更にはサイクル特性、作動電圧を向上させることが出来るリチウム二次電池用正極活物質工業的に有利な製造方法提供することにある。
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、リチウム化合物、コバルト化合物、及びチタン酸ストロンチウムを含む混合物を焼成して得られた、Sr原子とTi原子を含むリチウムコバルト複合酸化物は、充填密度が高く、また、該リチウムコバルト複合酸化物を正極活物質とするリチウム二次電池は体積当たりの容量が高く、安全性、サイクル特性及び作動電圧にも優れたものになることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明が提供しようとする発明は、リチウム化合物、コバルト化合物、及びチタン酸ストロンチウムを含む混合物を得る原料混合工程、次いで該混合物を焼成してリチウムコバルト複合酸化物を生成させる焼成工程を含むことを特徴とする、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法である。
本発明のリチウム二次電池用正極活物質は、充填密度が高く、リチウム二次電池の安全性、サイクル特性、作動電圧、更には体積当たりの容量を向上させることが出来る。
また、本発明の製造方法によれば、該リチウム二次電池用正極活物質を工業的に有利な方法で提供することが出来る。
実施例3及び実施例4で得られた正極活物質の深さ方向におけるストロンチウム原子の量を表す図である。 実施例3及び実施例4で得られた正極活物質の深さ方向におけるチタン原子の量を表す図である。 実施例7、実施例9及び比較例1で得られた正極活物質からリチウムを引き抜きデインターカレーションした正極活物質の示差熱量変化を示す図。 実施例10、実施例11、実施例13及び比較例1で得られた正極活物質からリチウムを引き抜きデインターカレーションした正極活物質の示差熱量変化を示す図。
以下、本発明を好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明に係るリチウム二次電池正極活物質(以下、単に「正極活物質」と呼ぶこともある。)は、基本的にはリチウム化合物、コバルト化合物及びチタン酸ストロンチウムを含む混合物を焼成することにより生成されるSr原子とTi原子を含有するリチウムコバルト複合酸化物(以下、単に「リチウムコバルト複合酸化物」と呼ぶこともある)からなるものである。
チタン酸ストロンチウムの添加量は、生成されるリチウムコバルト複合酸化物に対して0.01〜2モル%、好ましくは0.05〜1モル%であることがタップ密度が高くなり、また、生成されるリチウムコバルト複合酸化物を正極活物質とするリチウム二次電池は体積当たりの容量が高く、サイクル特性、作動電圧及び安全性にも優れたものになる観点から好ましい。なお、チタン酸ストロンチウムの添加量を上記範囲にする理由はチタン酸ストロンチウムの添加量が0.01モル%より小さくなると正極活物質のタップ密度が低くなり、またリチウム二次電池の安全性、サイクル特性及び作動電圧を向上させる効果が低くなる傾向があり、一方、チタン酸ストロンチウムの添加量が2モル%より大きくなると重量当たりの容量が低下する傾向があるためである。
本発明のリチウムコバルト複合酸化物には、後述するようにチタン酸ストロンチウム以外に添加元素(M)として、更にSr原子やTi原子を含有させることが出来るが、チタン酸ストロンチウムに由来するSr原子の含有量はSr原子換算で0.01〜1.80質量%、好ましくは0.04〜0.90質量%、チタン酸ストロンチウムに由来するTi原子の含有量はTi原子換算で0.005〜1質量%、好ましくは0.02〜0.5質量%とすることが、得られるリチウムコバルト複合酸化物の充填密度が高くなり、また、高容量なリチウム二次電池とすることができ、リチウム二次電池の安全性、サイクル特性及び作動電圧を更に向上させることができる観点から好ましい。
本発明に係る正極活物質は、添加するチタン酸ストロンチウムに起因するSr原子が少なくともリチウムコバルト複合酸化物の粒子表面に存在していることも特徴の一つである。
本発明者らによれば、チタン酸ストロンチウムを含有させた混合物を焼成することにより、Sr原子が、リチウムコバルト複合酸化物の粒子内部と、粒子表面の両方に存在し、粒子表面に存在するSr原子が、例えばSrO、SrTiO、SrTi、SrTi10等のストロンチウム化合物として存在するものになることを見出した。そして、添加したSr原子は、タップ密度の向上に特に寄与すること。また、この粒子表面に存在するストロンチウム化合物と粒子内部に存在するSr原子、更にはTi原子の相乗効果でリチウム複合酸化物の結晶表面と結晶内部と両方で結晶の安定化にも寄与し、このため、本発明のリチウムコバルト系複合酸化物を正極活物質として用いたリチウム二次電池は、電池性能、特に高容量で安全性、更にはサイクル性、作動電圧が優れたものとなると本発明者らは推測している。
リチウムコバルト複合酸化物の粒子表面に存在するSr原子は、SrO等の可溶性のストロンチウム化合物と、SrTiO、SrTi、SrTi10等の難溶性のストロンチウム化合物があるが、粒子表面に存在するSr原子は、少なくともSrO等の可溶性のストロンチウム化合物の存在で確認することができる。
この可溶性のストロンチウム化合物の含有量は、Sr原子として0.002〜0.25質量%、好ましくは0.005〜0.1質量%であることがリチウム二次電池が高容量で安全性に優れたものになる観点から好ましい。
本発明において、リチウムコバルト複合酸化物の粒子表面に存在する可溶性のストロンチウム化合物の量は、リチウムコバルト複合酸化物5gを純水50mlに25℃で5分間攪拌下に放置した際に溶出するSr量を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)で定量することで求められるものである。
なお、リチウムコバルト複合酸化物に含有される可溶性のストロンチウム化合物の量は、可溶性のストロンチウム化合物中のSr原子として、リチウムコバルト複合酸化物に含有されるSr原子全量に対して、2.0〜30質量%、好ましくは5〜25質量%である。
一方、リチウムコバルト複合酸化物に含有されたTi原子は、特にリチウム二次電池のサイクル特性、更には作動電圧の向上に寄与し、また、Ti原子は、前述したようにリチウムコバルト複合酸化物の粒子表面に、SrTiO、SrTi、SrTi10等の化合物として存在するものと、粒子内部に存在するものがあると本発明者らは推測している。
リチウムコバルト複合酸化物に含有させるSr原子及びTi原子は、純粋なLiCoOの結晶構造に影響を与えているものと推測している。即ち、純粋なLiCoOのC軸の格子定数は14.050〜14.053オングストロームであるのに対して、本発明の正極活物質では、C軸の格子定数が14.053〜14.065オングストローム、好ましくは14.055〜14.062オングストロームであり、純粋なLiCoOのC軸の格子定数より大きくなる。
このことは、リチウムコバルト複合酸化物の粒子内部に存在するSr原子及びTi原子による影響であると、本発明者らは推測している。
本発明に係る正極活物質は、タップ密度が2.60g/ml以上、好ましくは2.6〜3.1g/mlであり、純粋なLiCoOに比べてタップ密度が大きいことも特徴の一つである。本発明の正極活物質は、この大きなタップ密度を有することにより、充填密度が高くなり、リチウム二次電池の体積当たりの容量を高くすることができる。
なお、前記タップ密度は、正極活物質試料が、特に加圧されることなく自然に混合している状態における充填特性を示すものであり、試料50〜70gをメスシリンダ−入れ、メスシリンダ−を自動T.D測定装置にセットし、測定条件としてタッピング回数500回、タッピング高さ3.2mm、タッピングペ−ス200回/分として求められるものである(ASTM:B527−93,85に準拠)。
本発明の正極活物質において、上記以外の好ましい諸物性としては、レーザー光回折・散乱法で求められる平均粒径が10〜30μm、好ましくは10〜25μmであることが正極活物質としての充填性、リチウム二次電池の容量、サイクル特性、レート特性、安全性、更には正極活物質を塗料化したときのスラリー安定性の観点から好ましい。
本発明の正極活物質のBET比表面積は、0.05〜1m/g、好ましくは0.1〜0.3m/gであることが、リチウム二次電池の安全性を更に向上させ、またサイクル特性、レート特性、更には正極活物質を塗料化したときのスラリー安定性の観点から好ましい。
また、本発明の正極活物質は、残存する炭酸リチウムが0.30質量%以下、好ましくは0.25質量%以下であり、残存する水酸化リチウムが0.15質量%以下、好ましくは0.10質量%以下である。残存する炭酸リチウムと水酸化リチウムが上記範囲にあると、リチウム二次電池のサイクル特性、更には正極活物質を塗料化したときのスラリー安定性の観点から好ましい。
本発明の正極活物質には、リチウム二次電池の種々の性能を向上させることを目的として、更に、Mn、Ni、Mg、Zr、Al、Ti、Ca、Mo、W、Bi、Nb及びFの群から選ばれる1種又は2種以上の添加元素(M)を含有させることができる。これらのうち、添加元素(M)はMg、Zr、Ti、Al、及びFから選ばれる1種又は2種以上であると、リチウム二次電池の体積当たりの容量、サイクル特性、作動電圧、安全性及びレート特性等をより向上させることができる観点から好ましく、特に好ましくは、Mg、Zr、Ti、Al及びFの全ての添加元素(M)を併用して含有させることにより、リチウム二次電池のこれらの性能をバランスよく向上させることができることから好ましい。
本発明の正極活物質において、添加元素(M)の含有量は、正極活物質に対して、好ましくは0.03〜5質量%、特に好ましくは0.065〜2.60質量%である。添加元素(M)の含有量が上記範囲にあることにより、重量当たりの放電容量の低減を抑え、且つサイクル特性、レート特性、安全性等の電池性能をいっそう向上させることができる。
また、本発明の正極活物質において、添加元素(M)としてMg、Zr、Ti、Al及びFから選ばれる1種又は2種以上を添加する場合には、Mg原子の含有量は正極活物質に対して、好ましくは0.005〜1質量%、特に好ましくは0.015〜0.35質量%である。Mg原子の含有量が上記範囲にあることにより、サイクル特性、安全性等の電池性能をいっそう向上させることができる。
また、Zr原子の含有量は正極活物質に対して、好ましくは0.005〜1.5質量%、特に好ましくは0.009〜1質量%である。Zr原子の含有量が上記範囲にあることにより、レート特性等の電池性能をいっそう向上させることができる。
また、Ti原子の含有量は正極活物質に対して、好ましくは0.005〜0.5質量%、特に好ましくは0.005〜0.5質量%である。Ti原子の含有量が上記範囲にあることにより、レート特性、作動電圧等の電池性能をいっそう向上させることができる。なお、この添加元素(M)のTi原子は、添加するチタン酸ストロンチウムに由来しないものである。
また、Al原子の含有量は正極活物質に対して、好ましくは0.005〜1.2質量%、特に好ましくは0.03〜0.65質量%である。Al原子の含有量が上記範囲にあることにより、安全性、サイクル特性等の電池性能をいっそう向上させることができる。
また、F原子の含有量は正極活物質に対して、好ましくは0.01〜1質量%、特に好ましくは0.01〜0.25質量%である。F原子の含有量が上記範囲にあることにより、サイクル特性等の電池性能をいっそう向上させることができる。
なお、これら添加元素(M)は、酸化物、複合酸化物、硫酸塩、燐酸塩、フッ化物等の形態でリチウムコバルト複合酸化物の粒子表面に存在していてもよく、リチウムコバルト複合酸化物の粒子内部に固溶して存在していてもよく、更に粒子内部及び粒子表面の両方に存在していてもよい。
以下、本発明に係る正極活物質の製造方法について説明する。
本発明の正極活物質の製造方法は、リチウム化合物、コバルト化合物及びチタン酸ストロンチウムを含む混合物を得る原料混合工程、次いで該混合物を焼成してリチウムコバルト複合酸化物を生成させる焼成工程を含むことを特徴とするものである。
原料混合工程は、リチウム化合物、コバルト化合物及びチタン酸ストロンチウムを混合して、原料混合物を得る工程である。
原料混合工程に係るリチウム化合物は、通常、リチウムコバルト複合酸化物の製造用の原料として用いられるリチウム化合物であれば、特に制限されず、リチウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩及び有機酸塩等が挙げられ、これらのうち、工業的に安価な炭酸リチウムが好ましい。
リチウム化合物の平均粒径は、0.1〜200μm、好ましくは2〜50μmであると、反応性が良好であるため特に好ましい。
原料混合工程に係るコバルト化合物は、通常、リチウムコバルト複合酸化物の製造用の原料として用いられるコバルト化合物であれば、特に制限されず、コバルトの酸化物、オキシ水酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩及び有機酸塩等が挙げられ、この中、酸化コバルトが工業的に入手し易く安価であるため好ましい。また、コバルト化合物は平均粒径が0.5〜40.0μm、好ましくは2.0〜35.0μmであると反応性が良好であるため特に好ましい。特にコバルト化合物の平均粒径が10〜25μm、一層好ましくは15〜25μmのものを用いるとリチウム化合物の過剰率を小さくし、残存するリチウム化合物を低減できるという観点で好ましい。
原料混合工程に係るチタン酸ストロンチウムとしては、工業的に入手可能なものであれば、特に制限されないが、チタン酸ストロンチウムは平均粒径が0.05〜5μmであると反応性が良好であるため特に好ましい。
原料混合工程において、リチウム化合物及びコバルト化合物の混合割合は、原子換算のコバルトのモル数に対する原子換算のリチウムのモル数の比(Li/Co混合モル比)が、0.990〜1.100、好ましくは1.000〜1.080、特に好ましくは1.010〜1.060であることが得られる正極活物質のタップ密度を高くすることができ、粒子径制御、残留する炭酸リチウム及び水酸化リチウムを低減する観点から好ましい。
また、チタン酸ストロンチウムの混合割合は、生成するリチウムコバルト複合酸化物に対して、0.01〜2モル%、好ましくは0.05〜1モル%である。この理由は、前述したように、チタン酸ストロンチウムの添加量が0.01モル%より小さくなると正極活物質のタップ密度が低くなり、またリチウム二次電池の安全性、更にはサイクル特性、レート特性を向上させる効果が低くなる傾向があり、一方、チタン酸ストロンチウムの添加量が2モル%より大きくなると重量当たりの容量が低下する傾向があるためである。
原料混合工程において、リチウム化合物、コバルト化合物及びチタン酸ストロンチウムを混合する方法としては、例えば、リボンミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ナウターミキサー等を用いる混合方法が挙げられる。
また、原料混合工程において、リチウム化合物、コバルト化合物及びチタン酸ストロンチウム以外に、更に、添加元素(M)を含有する化合物を添加して混合することができる。添加元素(M)を含有する化合物は、前述した添加元素(M)を含有する化合物であり、具体的には、添加元素(M)の酸化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、燐酸塩、ハロゲン化物、有機酸塩等が挙げられる。添加元素(M)を有する化合物は、添加元素(M)を2種以上含む化合物であってもよく、また、1つの添加元素(M)に対して1種類の化合物に限らず、2種以上の種類の異なる化合物を併用して用いてもよい。添加元素(M)を含有する化合物は平均粒径が0.05〜100μm、好ましくは0.1〜90μmであると反応性が良好であるため特に好ましい。
添加元素(M)を含有する化合物としては、マグネシウム原子を有する化合物、チタン原子を有する化合物、ジルコニウム原子を有する化合物、アルミニウム原子を有する化合物、フッ素原子を有する化合物が好ましく、特にMgF、MgO、TiO、ZrO、Al(OH)及びAlFから選ばれる1種又は2種以上を用いることにより、種々の電池性能のいっそうの向上をはかることができる。例えば、MgFはリチウム二次電池の容量維持率、MgOはリチウム二次電池の安全性、TiOはリチウム二次電池の平均作動電圧、ZrOはリチウム二次電池の安全性、レート特性、Al(OH)はリチウム二次電池の安全性、AlFはリチウム二次電池の容量維持率をそれぞれ効果的に向上させることができる。
本発明において、添加元素(M)を含有する化合物は、MgF、MgO、TiO、ZrO、Al(OH)及びAlFの全てを併用して用いることが、リチウム二次電池の上記性能をバランスよく向上させることができる観点から好ましい。
原料混合工程において、添加元素(M)を含有する化合物を混合する場合、添加元素(M)を含有する化合物の混合量は、生成するリチウムコバルト複合酸化物に対して、添加元素(M)が0.03〜5質量%となる混合量が好ましく、0.065〜2.6質量%となるような混合量が特に好ましい。添加元素(M)を含有する化合物の混合量が上記範囲にあることにより、リチウム二次電池の重量当たりの放電容量の低減を抑え、且つ容量維持率、作動電圧、レート特性、安全性等の電池性能を向上させることができる観点から好ましい。
なお、添加元素(M)を含有する化合物として、MgF、MgO、TiO、ZrO、Al(OH)及びAlFから選ばれる1種又は2種以上を用いる場合には、MgFの添加量は生成するリチウムコバルト複合酸化物に対して、0.01〜1モル%、好ましくは0.01〜0.25モル%であり、MgOの添加量は生成するリチウムコバルト複合酸化物に対して、0.01〜2.50モル%、好ましくは0.05〜1.00モル%である。また、TiOの添加量は生成するリチウムコバルト複合酸化物に対して、0.01〜1モル%、好ましくは0.01〜1モル%であり、ZrOの添加量は生成するリチウムコバルト複合酸化物に対して、0.01〜1.50モル%、好ましくは0.10〜1モル%である。Al(OH)の添加量は生成するリチウムコバルト複合酸化物に対して、0.01〜3モル%、好ましくは0.1〜2モル%であり、AlFの添加量は生成するリチウムコバルト複合酸化物に対して、0.01〜1モル%、好ましくは0.01〜0.25モル%である。
なお、原料のリチウム化合物、コバルト化合物、チタン酸ストロンチウムと、必要により添加される添加元素(M)を含有する化合物は、製造履歴は問わないが、高純度リチウムコバルト複合酸化物粉末を製造するために、可及的に不純物含有量が少ないものであることが好ましい。
本発明の正極活物質の製造方法に係る焼成工程は、原料混合工程で得られた、リチウム化合物、コバルト化合物及びチタン酸ストロンチウムと、必要により混合される添加元素(M)を含有する化合物の原料混合物を、焼成することにより、リチウムコバルト複合酸化物を得る工程である。
焼成工程において、原料混合物を焼成して、リチウム化合物、コバルト化合物及びチタン酸ストロンチウムと、必要により混合される添加元素(M)を含有する化合物を反応させる際の焼成温度は、1000〜1100℃、好ましくは1050〜1080℃である。この理由は焼成温度が1000℃未満ではリチウムコバルト複合酸化物のタップ密度が低下する傾向があり、一方、焼成温度が1100℃より高くなると得られる焼成品の焼結が強くなり、非常に硬度が硬く解砕処理、粉砕処理が困難となる傾向があるからである。
また、反応時間は、1〜30時間、好ましくは5〜20時間である。また、焼成雰囲気は、空気中、酸素ガス中等の酸化雰囲気である。
このようにして得られるSr原子とTi原子を含有するリチウムコバルト複合酸化物は、必要に応じて複数回の焼成工程に付してもよい。
焼成後は得られるSr原子とTi原子を含有するリチウムコバルト複合酸化物に対して、必要に応じて解砕処理及び/又は粉砕処理し、更に分級を行ってリチウム二次電池用正極活物質とする。
かくして、得られる本発明の正極活物質は、Sr原子とTi原子を含有したリチウムコバルト複合酸化物からなり、好ましい物性としては、平均粒子が10〜30μm、好ましくは10〜25μmで、タップ密度が2.6g/ml以上、好ましくは2.6〜3.1g/mlで、且つSr原子が少なくともリチウムコバルト複合酸化物の粒子表面に存在するものである。
また、本発明のリチウム二次電池は、本発明の正極活物質を用いたものであり、該リチウム二次電池は、正極、負極、セパレータ、及びリチウム塩を含有する非水電解質からなる。
本発明のリチウム二次電池に係る正極は、例えば、正極集電体上に正極合剤を塗布乾燥等して形成されるものである。正極合剤は、正極活物質、導電剤、結着剤、及び必要により添加されるフィラー等からなる。本発明のリチウム二次電池は、正極に、本発明のリチウム二次電池用正極活物質が均一に塗布されている。このため本発明のリチウム二次電池は、電池性能が高く、特に高容量で安全性が高い。
本発明のリチウム二次電池に係る正極合剤に含有される正極活物質の含有量は、70〜100質量%、好ましくは90〜98質量%が望ましい。
本発明のリチウム二次電池に係る正極集電体としては、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導体であれば特に制限されるものでないが、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、チタン、焼成炭素、アルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀を表面処理させたもの等が挙げられる。これらの材料の表面を酸化して用いてもよく、表面処理により集電体表面に凹凸を付けて用いてもよい。また、集電体の形態としては、例えば、フォイル、フィルム、シート、ネット、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発砲体、繊維群、不織布の成形体などが挙げられる。集電体の厚さは特に制限されないが、1〜500μmとすることが好ましい。
本発明のリチウム二次電池に係る導電剤としては、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導材料であれば特に限定はない。例えば、天然黒鉛及び人工黒鉛等の黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、或いはポリフェニレン誘導体等の導電性材料が挙げられ、天然黒鉛としては、例えば、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛及び土状黒鉛等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。導電剤の配合比率は、正極合剤中、1〜50質量%、好ましくは2〜30質量%である。
本発明のリチウム二次電池に係る結着剤としては、例えば、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフロオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体またはその(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体またはその(Na+)イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体またはその(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体またはその(Na+)イオン架橋体、ポリエチレンオキシドなどの多糖類、熱可塑性樹脂、ゴム弾性を有するポリマー等が挙げられ、これらは1種または2種以上組み合わせて用いることができる。なお、多糖類のようにリチウムと反応するような官能基を含む化合物を用いるときは、例えば、イソシアネート基のような化合物を添加してその官能基を失活させることが好ましい。結着剤の配合比率は、正極合剤中、1〜50質量%、好ましくは5〜15質量%である。
本発明のリチウム二次電池に係るフィラーは、正極合剤において正極の体積膨張等を抑制するものであり、必要により添加される。フィラーとしては、構成された電池において化学変化を起こさない繊維状材料であれば何でも用いることができるが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、ガラス、炭素等の繊維が用いられる。フィラーの添加量は特に限定されないが、正極合剤中、0〜30質量%が好ましい。
本発明のリチウム二次電池に係る負極は、負極集電体上に負極材料を塗布乾燥等して形成される。本発明のリチウム二次電池に係る負極集電体としては、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導体であれば特に制限されるものでないが、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、アルミニウム、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀を表面処理させたもの及びアルミニウム−カドミウム合金等が挙げられる。また、これらの材料の表面を酸化して用いてもよく、表面処理により集電体表面に凹凸を付けて用いてもよい。また、集電体の形態としては、例えば、フォイル、フィルム、シート、ネット、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発砲体、繊維群、不織布の成形体などが挙げられる。集電体の厚さは特に制限されないが、1〜500μmとすることが好ましい。
本発明のリチウム二次電池に係る負極材料としては、特に制限されるものではないが、例えば、炭素質材料、金属複合酸化物、リチウム金属、リチウム合金、ケイ素系合金、錫系合金、金属酸化物、導電性高分子、カルコゲン化合物、Li−Co−Ni系材料、LiTi12等が挙げられる。炭素質材料としては、例えば、難黒鉛化炭素材料、黒鉛系炭素材料等が挙げられる。金属複合酸化物としては、例えば、Sn(M11-p(M2qr(式中、M1はMn、Fe、Pb及びGeから選ばれる1種以上の元素を示し、M2はAl、B、P、Si、周期律表第1族、第2族、第3族及びハロゲン元素から選ばれる1種以上の元素を示し、0<p≦1、1≦q≦3、1≦r≦8を示す。)、LiFe23(0≦t≦1)、LiWO2(0≦t≦1)等の化合物が挙げられる。金属酸化物としては、GeO、GeO2、SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb23、Pb34、Sb23、Sb24、Sb25、Bi23、Bi24、Bi25等が挙げられる。導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等が挙げられる。
本発明のリチウム二次電池に係るセパレータとしては、大きなイオン透過度を持ち、所定の機械的強度を持った絶縁性の薄膜が用いられる。耐有機溶剤性と疎水性からポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマーあるいはガラス繊維あるいはポリエチレンなどからつくられたシートや不織布が用いられる。セパレーターの孔径としては、一般的に電池用として有用な範囲であればよく、例えば、0.01〜10μmである。セパレターの厚みとしては、一般的な電池用の範囲であればよく、例えば5〜300μmである。なお、後述する電解質としてポリマーなどの固体電解質が用いられる場合には、固体電解質がセパレーターを兼ねるようなものであってもよい。
本発明のリチウム二次電池に係るリチウム塩を含有する非水電解質は、非水電解質とリチウム塩とからなるものである。本発明のリチウム二次電池に係る非水電解質としては、非水電解液、有機固体電解質、無機固体電解質が用いられる。非水電解液としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の非プロトン性有機溶媒の1種または2種以上を混合した溶媒が挙げられる。
本発明のリチウム二次電池に係る有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキサイド誘導体又はこれを含むポリマー、ポリプロピレンオキサイド誘導体又はこれを含むポリマー、リン酸エステルポリマー、ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエチレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のイオン性解離基を含むポリマー、イオン性解離基を含むポリマーと上記非水電解液の混合物等が挙げられる。
本発明のリチウム二次電池に係る無機固体電解質としては、Liの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩、硫化物等を用いることができ、例えば、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N−LiI−LiOH、LiSiO4、LiSiO4−LiI−LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4−LiI−LiOH、P25、Li2S又はLi2S−P25、Li2S−SiS2、Li2S−GeS2、Li2S−Ga23、Li2S−B23、Li2S−P25−X、Li2S−SiS2−X、Li2S−GeS2−X、Li2S−Ga23−X、Li2S−B23−X、(式中、XはLiI、B23、又はAl23から選ばれる少なくとも1種以上)等が挙げられる。
更に、無機固体電解質が非晶質(ガラス)の場合は、リン酸リチウム(Li3PO4)、酸化リチウム(Li2O)、硫酸リチウム(Li2SO4)、酸化リン(P25)、硼酸リチウム(Li3BO3)等の酸素を含む化合物、Li3PO4-u2u/3(uは0<u<4)、Li4SiO4-u2u/3(uは0<u<4)、Li4GeO4-u2u/3(uは0<u<4)、Li3BO3-u2u/3(uは0<u<3)等の窒素を含む化合物を無機固体電解質に含有させることができる。この酸素を含む化合物又は窒素を含む化合物の添加により、形成される非晶質骨格の隙間を広げ、リチウムイオンが移動する妨げを軽減し、更にイオン伝導性を向上させることができる。
本発明のリチウム二次電池に係るリチウム塩としては、上記非水電解質に溶解するものが用いられ、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiB10Cl10、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(CF3SO22NLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、四フェニルホウ酸リチウム、イミド類等の1種または2種以上を混合した塩が挙げられる。
また、非水電解質には、放電、充電特性、難燃性を改良する目的で、以下に示す化合物を添加することができる。例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グライム、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N−置換オキサゾリジノンとN,N−置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ポリエチレングルコール、ピロール、2−メトキシエタノール、三塩化アルミニウム、導電性ポリマー電極活物質のモノマー、トリエチレンホスホンアミド、トリアルキルホスフィン、モルフォリン、カルボニル基を持つアリール化合物、ヘキサメチルホスホリックトリアミドと4−アルキルモルフォリン、二環性の三級アミン、オイル、ホスホニウム塩及び三級スルホニウム塩、ホスファゼン、炭酸エステル等が挙げられる。また、電解液を不燃性にするために含ハロゲン溶媒、例えば、四塩化炭素、三弗化エチレンを電解液に含ませることができる。また、高温保存に適性を持たせるために電解液に炭酸ガスを含ませることができる。
本発明のリチウム二次電池は、体積当たりの容量が高く、安全性、サイクル特性及び作動電圧にも優れたリチウム二次電池であり、電池の形状はボタン、シート、シリンダー、角、コイン型等いずれの形状であってもよい。
本発明のリチウム二次電池の用途は、特に限定されないが、例えば、ノートパソコン、ラップトップパソコン、ポケットワープロ、携帯電話、コードレス子機、ポータブルCDプレーヤー、ラジオ、液晶テレビ、バックアップ電源、電気シェーバー、メモリーカード、ビデオムービー等の電子機器、自動車、電動車両、ゲーム機器、電動工具等の民生用電子機器が挙げられる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
{実施例1〜9}
表1に示したCo原子とLi原子のモル比となるように四酸化三コバルト(平均粒径25.0μm)、炭酸リチウム(平均粒径7.0μm)を秤量し、更にチタン酸ストロンチウム(平均粒径0.9μm)を表1に示す割合となるように乾式で家庭用ミキサーを用いて60秒間十分に混合し原料混合物を得た。次いで得られた原料混合物をアルミナ製の鉢で表1に示す温度と時間で大気中で焼成した。焼成終了後、該焼成物を粉砕、分級してSr原子とTi原子を含有するリチウムコバルト複合酸化物を得、これを正極活物質試料とした。
{比較例1〜2}
表1に示したCo原子とLi原子のモル比となるように四酸化三コバルト(平均粒径25.0μm)、炭酸リチウム(平均粒径7.0μm)を秤量し、乾式で家庭用ミキサーを用いて60秒間十分に混合し原料混合物を得た。次いで得られた原料混合物をアルミナ製の鉢で表1に示す温度と時間で大気中で焼成した。焼成終了後、該焼成物を粉砕、分級してリチウム遷移金属複合酸化物を得、これを正極活物質試料とした。
Figure 0005897356
注)SrTiOの添加量は、生成されるリチウムコバルト複合酸化物に対するモル%を示す。
<正極活物質試料の物性評価>
実施例及び比較例で得られた正極活物質試料について、平均粒径、BET比表面積、タップ密度、水に溶出するストロンチウム量、C軸の格子定数及び残存するLiOH及びLiCO含有量を求めた。また、その結果を表2に示す。
<平均粒径>
平均粒径はレーザー回折・散乱法により測定した。
<タップ密度>
タップ密度は、JIS−K−5101に記載された見掛密度又は見掛比容の方法に基づいて、50mlのメスシリンダーにサンプル50〜70gを入れ、ユアサアイオニクス社製、DUAL AUTOTAP装置にセットし、タッピング回数500回、タッピング高さ3.2mmでタップし、容量を読み取り見かけ密度を算出し、タップ密度とした。
<C軸の格子定数の大きさ>
格子定数は正極活物質試料を線源としてCuKα線を用いてX線回折(XRD)分析により得た回折パターンを用いてリートベルト解析することにより、格子定数、構造パラメータを精密化して求めた。リートベルト解析は、X線回折パターンを用い、この中に含まれている情報を抽出するために、実測で得られた回折パターンと、結晶構造モデルから予想される回折パターンとをフィティングすることにより結晶構造に関するパラメータの精密化を行う方法である。
<水に溶出するSr量の評価>
正極活物質試料5gを純水100mlに5分間25℃で分散させ、粒子表面からSr原子を溶出させ、該溶液中のSrの量を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)により定量した。
<残存するLiOH及びLiCO含有量の評価)
正極活物質試料15g、純水100gをビーカーに計り採りマグネチックスターラーを用いて5分間分散させる。次いでこの分散液をろ過し、そのろ液30mlを自動滴定装置(型式COMTITE−2500)にて0.1N−HClで滴定し残留LiOH及びLiCOを算出した。
<XPS測定>
実施例3及び実施例4で得られた正極活物質試料についてエックス線光電子分光(XPS)分析により、表面をアルゴンでエッチングしていき、深さ方向でSrピークとTiピークを測定したその結果を図1及び図2に示す。
なお、エッチング条件は以下のとおりである。
エッチング条件
使用イオン銃;中性粒子除去機構付低エネルギー差動排気型フローティングイオン銃
イオン種;Ar+イオン
エクストラクター電流; 2μA
加速電圧;5.0 kV
エッチングレート;1.84 nm/min (SiO換算)
Figure 0005897356
{実施例10}
表3に示したCo原子とLi原子のモル比となるように四酸化三コバルト(平均粒径25.0μm)、炭酸リチウム(平均粒径7.0μm)を秤量し、更にチタン酸ストロンチウム(平均粒径0.9μm)、TiO(平均粒径0.2μm)、ZrO(平均粒径0.5μm)、を表3に示す割合となるように乾式で家庭用ミキサーを用いて60秒間十分に混合し原料混合物を得た。次いで得られた原料混合物をアルミナ製の鉢で1080℃で5時間で大気中で焼成した。焼成終了後、該焼成物を粉砕、分級してSr原子とTi原子を含有するリチウムコバルト複合酸化物を得、これを正極活物質試料とした。
{実施例11〜13}
表3に示したCo原子とLi原子のモル比となるように四酸化三コバルト(平均粒径25.0μm)、炭酸リチウム(平均粒径7.0μm)を秤量し、更にチタン酸ストロンチウム(平均粒径0.9μm)、MgF(平均粒径22.6μm)、MgO(平均粒径3.1μm)、TiO(平均粒径0.2μm)、ZrO(平均粒径0.5μm)、Al(OH)(平均粒径1.6μm)、AlF(平均粒径82.2μm)、を表3に示す割合となるように乾式で家庭用ミキサーを用いて60秒間十分に混合し原料混合物を得た。次いで得られた原料混合物をアルミナ製の鉢で1080℃で5時間で大気中で焼成した。焼成終了後、該焼成物を粉砕、分級してSr原子とTi原子を含有するリチウムコバルト複合酸化物を得、これを正極活物質試料とした。
Figure 0005897356
<リチウムコバルト複合酸化物の物性評価>
実施例10〜13で得られたリチウムコバルト複合酸化物について、平均粒径、タップ密度、水に溶出するストロンチウム量及び残存するLiOH及びLiCO含有量を上記した方法により求めた。また、その結果を表4に示す。
Figure 0005897356
以下のようにして、電池性能試験を行った。
<リチウム二次電池の作製>
実施例7、9〜13及び比較例1で得られた正極活物質96質量%、黒鉛粉末2質量%、ポリフッ化ビニリデン2質量%を混合して正極剤とし、これをN−メチル−2−ピロリジノンに分散させて混練ペーストを調製した。該混練ペーストをアルミ箔に塗布したのち乾燥、プレスして直径15mmの円盤に打ち抜いて正極板を得た。
この正極板を用いて、セパレーター、負極、正極、集電板、取り付け金具、外部端子、電解液等の各部材を使用してコイン型リチウム二次電池を製作した。このうち、負極は金属リチウム箔を用い、電解液にはエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートの1:1混練液1リットルにLiPF61モルを溶解したものを使用した。
次いで、得られたリチウム二次電池の性能評価を行った。その結果を、表5に示す。
<電池の性能評価>
作製したコイン型リチウム二次電池を室温で下記試験条件で作動させ、下記の電池性能を評価した。
(評価A)
(1)サイクル特性評価の試験条件
先ず、0.5Cにて4.45Vまで2時間かけて充電を行い、更に4.45Vで3時間電圧を保持させる定電流・定電圧充電(CCCV充電)を行った。その後、0.2Cにて2.7Vまで定電流放電(CC放電)させる充放電を行い、これらの操作を1サイクルとして1サイクル毎に放電容量を測定した。このサイクルを20サイクル繰り返した。
(2)初期放電容量(重量当たり)
サイクル特性評価における1サイクル目の放電容量を初期放電容量とした。
(3)初期放電容量(体積当たり)
正極板作製時に計測された電極密度と初期放電容量(重量当たり)の積により算出した。
(4)容量維持率
サイクル特性評価における1サイクル目と20サイクル目のそれぞれの放電容量(重量当たり)から、下記式により容量維持率を算出した。
容量維持率(%)=(20サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
(5)平均作動電圧
サイクル特性評価における20サイクル目の平均作動電圧を平均作動電圧とした。
(評価B;安全性の評価)
輿石、喜多、和田(平成13年11月21日〜23日開催 第42回 電池討論会 講演要旨集、462〜463頁)、太田、大岩、石垣ら(平成13年11月21日〜23日開催 第42回 電池討論会 講演要旨集、470〜471頁)、特開2002−158008号公報及び特開2003−221235号公報の電池の熱安定性評価方法に基づいて、実施例及び比較例で調製した正極活物質を用いたリチウム二次電池を、正極に対して定電流電圧(CCCV)充電により0.5Cで5時間かけて、4.45Vまで充電した後、アルゴン雰囲気下でリチウム二次電池を分解し、リチウムを引き抜きデインターカレーションした正極活物質を含有する正極板を取り出した。次いで、この取り出した各正極板から正極活物質を5.0mg削り取り、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートの1:1混練液1リットルにLiPF61モルを溶解した液5.0μmlと一緒に示差走査熱量測定(DSC)用密閉式セル(SUSセル)に封入し、昇温速度2℃/minにて示差走査熱量測定装置(SIIエポリードサービス社製、形式DSC6200)にて示差熱量変化を測定した。また180℃〜220℃の範囲における発熱量の総和S(J/g)を求めた。 この発熱量の総和S(J/g)の値が小さい方が、熱安定性、即ち電池安全性が優れていることを示す。実施例7、実施例9〜11及び実施例13の示差熱量変化の結果を図1〜2に示す。この図1〜2の縦軸の熱量は、測定した正極活物質の重さで割った値を用いた。
Figure 0005897356
本発明のリチウム二次電池用正極活物質は、充填密度が高く、リチウム二次電池の安全性、サイクル特性、作動電圧、更には体積当たりの容量を向上させることが出来る。
また、本発明の製造方法によれば、該リチウム二次電池用正極活物質を工業的に有利な方法で提供することが出来る。

Claims (4)

  1. リチウム化合物、コバルト化合物、及びチタン酸ストロンチウムを含む混合物を得る原料混合工程、次いで該混合物を焼成してリチウムコバルト複合酸化物を生成させる焼成工程を含むことを特徴とする、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
  2. チタン酸ストロンチウムの添加量が生成するリチウムコバルト複合酸化物に対して0.01〜2モル%であることを特徴とする、請求項記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
  3. 原料混合工程に、更にMn、Ni、Mg、Zr、Ti、Al、Ca、Mo、W、Bi及びFの群から選ばれる1種又は2種以上の添加元素(M)を含有する化合物を1種又は2種以上で添加することを特徴とする、請求項1又は2の何れか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
  4. 添加元素(M)を含有する化合物が、MgF2、MgO、TiO2、ZrO2、Al(OH)3及びAlF3から選ばれることを特徴とする、請求項記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
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