JP5894712B2 - 高油脂含有乾燥品 - Google Patents

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Description

本発明は、50%〜90%の油脂分を含み、かつ形状を有した不溶性の蛋白を含む高油脂含有乾燥品に関する。
油脂の乾燥方法は、従来から検討されており、粉末油脂と呼ばれる油脂に賦形剤を添加し、スプレードライヤーで粉末化する技術が知られており、食品業界を中心に、広く普及している。
乾燥品中に高含量の油脂を含ませる技術として、様々なものが知られている。例えば、アラビノガラクタンに油脂を吸着して粉末化する方法(特許文献1)、油脂を乳化後、食物繊維を加えて乾燥し粉末化する方法(特許文献2)
しかし、上記いずれの方法においても、製造されるものは粉末化されたものであり、油脂を連想させるような形状を有した高油脂含有乾燥具材はなく、依然として技術検討がなされている。
特開平5−64544号公報 特開平5−137506号公報
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、50%以上の油脂を含有するものであって、粉末ではなく、大きな形態を取ることができる高油脂含有乾燥品を提供することである。
本発明者は、鋭意検討の結果、油脂を蛋白質と水の混合液中に分散させた水中油滴型の分散液を調製し、次いで乾燥工程を実施することにより、水分を飛ばして、安定な乾燥品を得られることを見いだし、基本的には本発明を完成するに至った。
こうして、第一の発明に係る高油脂含有乾燥品は、蛋白質と油脂とを含むものであって、前記油脂の含量が50%〜90%(好ましくは60%〜90%、更に好ましくは70〜90%)であり、前記乾燥品の大きさが、目開き1.0mmの篩を通過するものが50%以下であり、水に不溶であることを特徴とする。
このとき、乾燥品中油脂粒子径は1μm〜100μm(好ましくは1μm〜50μm、更に好ましくは1μm〜30μm)である。
粉末油脂が目開き1.0mmの篩をパスするのに対して、得られた高油脂含有乾燥品は、1.0mm以上が50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上となるようなものである。また、本発明品は、従来の粉末油脂とは異なり、顆粒状やダイス状などの大きな形態をとる事ができる。
前記蛋白質が、大豆蛋白、鶏卵蛋白、乳蛋白、ゼラチン、コラーゲン、および魚肉蛋白からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。大豆蛋白としては、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白などがあり、特に限定されるものではないが、好ましくは分離大豆蛋白である。乳蛋白としては、乳清蛋白、乳カゼイン、カゼインネートがあり、特に限定されるものではないが、好ましくは、乳清蛋白、カゼインネートである。ゼラチンとしては、牛、豚、鶏、魚の皮または骨由来のゼラチンがあり、特限定されるのではないが、好ましくは分子量が1万以上のものであることが望ましい。コラーゲンは、牛、豚、鶏、魚の皮または骨由来のコラーゲンがあり、特に限定されるものではないが、好ましくは牛、豚、鶏、魚の皮由来のものである。
蛋白質の種類にもよるが、製造適正や油脂粒径等の調整目的で、増粘多糖類を用いることが出来る。増粘多糖類としては、特に限定されるものではないが、例えば、グァーガム、キサンタンガム、カラギナン、マンナン、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、カードラン、アラビアガム、タラガム、カルボキシメチルセルロースなどを例示できる。好ましくは、グァーガム、キサンタンガム、カラギナンである。カラギナンとしては、ラムダ、カッパー、イオタがあり、特に限定されるのではないが、好ましくはラムダである。本発明によれば、増粘多糖類を用いることなく、高油脂含有乾燥品を提供できる。但し、詳細な理由は不明であるが、増粘多糖類を併用ことにより、乾燥品中の油脂の粒子径が小さく揃う傾向や製造適性の向上が認められた。このため、増粘多糖類を併用することにより、より安定した高油脂含有乾燥品を提供でき得る。
前記油脂は、特に限定されるものでなく、油脂であればなんでもよく、風味や価格の点などから1種類、または2種類以上を組み合わせてもよい。植物性油脂または動物性油脂でもよいし、融点についても限定されるものでない。食品用油脂でもよいし、工業用の油脂でもよい。例えば、米油、ごま油、オリーブ油、パーム油、ショートニング、ラード、バターオイル、極度硬化油などが挙げられる。特に限定されるものではないが製造適正の観点から、融点が、70℃以下が好ましく、50℃以下が更に好ましい。油脂は精製された油脂だけでなく、油脂を高含有しているものでもよい。例えば、チーズ、バター、全卵、卵黄等が挙げられる。この場合は、含有する油脂や蛋白質を加味して配合決定されればよい。
脂質と蛋白質の割合は、脂質が50%〜90%に対して、蛋白質は5%〜50%含有されていることが好ましい。更に好ましくは蛋白質10%〜40%であり、10〜30%が最も好ましい。
また、高油脂含有乾燥品は、即席食品用のものであることが好ましい。即席食品用とは、(1)カップ形状の容器に入れられ、高温の水を入れて数分間処理することで食用となるもの(いわゆるカップ麺、即席スープ、即席穀類など)、(2)沸騰水中にて数分間茹でることで食用となるもの(いわゆるインスタント麺)などが含まれる。即席食品には、ラーメン、うどん、そば、スパゲッティなどの麺類、コーン、ポタージュ、かぼちゃ、トマト、コンソメ、和風コンソメなどのスープ類、味噌汁、豚汁、ごはん類、シリアル類などが含まれるが、本発明の高油脂含有乾燥品は、特にラーメン、スープの具材として、好ましく用いることができる。
第二の発明に係る高油脂含有乾燥品の製造方法は、第一の発明に係る高油脂含有乾燥品を製造する方法であって、(1)水に蛋白質を添加して撹拌し、蛋白質水溶液とする蛋白質水溶液調工程、(2)前記蛋白質水溶液に油脂を添加して撹拌し、水中油滴型分散液を調製する工程、(3)前記分散液を乾燥させることで水分を取り除く乾燥工程を備えたことを特徴とする。
蛋白質に添加する水の割合は、蛋白質及び油脂の種類によって適当なものを設定すればよく、限定されるものではないが、全原料について25質量%〜65質量%であることが好ましい。水の配合量が多い場合には、分散液調整工程までの時間を短くできるが、乾燥工程での時間が長くなる。一方、水の配合量が少ない場合には、乾燥工程での時間を短くできるが、分散液調整工程までの時間が長くなる。
前記乾燥工程においては、マイクロ波加熱乾燥方法または、熱風乾燥を併用することができる。乾燥条件は特に限定されるものではなく、水分が蒸発して乾燥品が得られる条件であればなんでもよい。
本発明によれば、50%以上の油脂を含有するものであって、粉末ではなく、大きな形態を取ることができる高油脂含有乾燥品を提供できる。
本発明の高油脂含有乾燥品は、例えば即席食品用の具材として好適に用いることができる。
ゼラチンと米油から製造した高油脂含有乾燥品(増粘多糖類添加、乾燥前)の顕微鏡写真図である。 ゼラチンと米油から製造した高油脂含有乾燥品(増粘多糖類添加、乾燥後)の顕微鏡写真図である。 コラーゲンと米油から製造した高油脂含有乾燥品(乾燥前)の顕微鏡写真図である。 乳清蛋白と米油から製造した高油脂含有乾燥品(乾燥前)の顕微鏡写真図である。 水への溶解性試験の結果を示す写真図である。(A)実施例3の顆粒状高油脂含有乾燥品、(B)従来の粉末油脂をそれぞれビーカーに入れ、水を注ぎ入れたときの様子を示す。
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施できる。
<試験1:蛋白質の相違、及び増粘多糖類の有無による高油脂含有乾燥品の製造>500mlの金属製計量カップに水を測り取り、蛋白質を加えて攪拌した後、サーモコントローラで50℃に設定した湯浴中で50℃に加温した(蛋白質水溶液調製工程)。ホモミキサーT.K. ROBO MICS(TOKUSHU KIKA KIGYO CO.LTD製)で2分間攪拌し、米油を少量ずつ加えて均一になるまで4分30秒攪拌し、水中油滴型分散液を得た(分散液調整工程)。
そこに増粘多糖類を加える場合は、増粘多糖類を少量ずつ添加して1分間撹拌し、増粘多糖類を併用した分散液とした。それらの分散液をテフロン(登録商標)製のシートに20gをシート状に成形し、マイクロ波加熱乾燥処理(MD)を施した(乾燥工程)。MDの条件は、1.6kW・3.3minとした。それを5mm×5mm縦横カットして顆粒状の高油脂含有乾燥品を得た。
試験に用いた蛋白質は、大豆蛋白、全卵粉末、コラーゲン、乳清蛋白、ゼラチン、卵白粉末であった。試験に用いた増粘多糖類は、グァーガム、キサンタンガム、カラギナン(ラムダ)であった。表1には、各蛋白質における高油脂含有乾燥品の検討と増粘多糖類を併用した実験の配合を示した。また、表2はその結果を示した。
また、表3は、増粘多糖類の種類の検討を行った。表4はその結果を示す。表5は、各種油脂の融点を示す。
実施例1〜5の結果によれば、各蛋白質において70%以上の油脂を含有すると共に安定した乾燥品を提供できた(なお、本明細書中において、実施例は、全て本発明の権利範囲に含まれる)。また、実施例4、5より増粘多糖類を併用することで、成形性が向上し、製造適正が向上した。
実施例6、7、8より増粘多糖類は、グァーガム以外のものでも同様の効果が得られることを確認した。
実施例1の米油を表5に示す各種油脂に代替した試験を行った。極度硬化油については、湯浴の温度設定を80℃に設定した。いずれの油脂においても、高油脂含有乾燥品を得ることができた。
<顕微鏡による油脂粒子径の確認>
油脂粒子径の範囲は、顕微鏡観察を行うことで決定している。しかし、高油脂含有乾燥品は、油脂粒子径の顕微鏡観察が行いにくい場合がある。そのため、顕微鏡観察が可能であった乾燥前の生地と乾燥後の高油脂含有乾燥品の、油脂粒子径の確認を行った。
油脂粒子径の測定方法は、顕微鏡で油脂を確認できるポイントで写真撮影を行い、油脂粒子の大きさの平均と思われる10点の直径を測定し、その最小値と最大値との範囲をその油脂粒子径の範囲として表に示した。
乾燥前の顕微鏡写真(図1)と乾燥後の顕微鏡写真(図2)とを比較すると、乾燥によって、油脂粒子径に変化がないことが判った。これより、乾燥前の調製液中の油脂粒子径の顕微鏡観察結果をもって乾燥品中の油脂粒子径とすることが確認された。
また、実施例3(図3)、実施例(図4)において乾燥前の調整液中の油脂粒子径を測定した結果を油脂粒子径の範囲とした。なお、図には示さないが、その他の蛋白質(大豆蛋白、全卵粉末)を用いた場合にも、油脂の粒子径が約1μm〜100μmの乾燥品が観察された。
<油脂の配合量の違いによる影響>
表7には、高油脂含有乾燥品の配合を示した。なお、製品中の油含量(%)は表6の各原料の固形分と脂質含量より計算した。
実施例7は、乾燥品中に90.1%の米油を含む高油脂含有乾燥品を製造できた。また、比較例1は、調製液を調整中にオイルオフが確認され、乾燥品として生産、供給するには不適であった。比較例2は、乾燥品として製造が可能であるが、油脂含量が50%以下であった。この場合、本発明の高油脂含有含有品には該当しなかった。
<他の蛋白質素材の検討1>
他の蛋白質素材として、スケソウダラすり身(魚肉蛋白)を用いて、高油脂含有乾燥品を製造した。
スケソウダラすり身(魚肉蛋白)100gに食塩3gを加えて、フードプロセッサーで塩ずりを行い、そこに米油85gを少量ずつ加え均一分散させたものを、直径1.5cmにデポジット成形した後、マイクロ波加熱乾燥して高油脂含有乾燥品を製造した。乾燥品における油脂含量は75.2%であった。
表8には、高油脂含有乾燥品の配合を示した。なお、製品中の油含量(%)は表9の各原料の固形分と脂質含量より計算した。表10には、その結果を示した。
<他の蛋白質素材の検討2>
他の蛋白質素材として、ナチュラルチーズ、カゼインナトリウム、ゼラチンを用いて、高油脂含有乾燥品を製造した。
表11には、高油脂含有乾燥品の配合を示した。
表11に示す配合の原料を用いて、試験1に記載の手順に従い高油脂含有乾燥品を製造し、目開き5mmのスクリーンを設置したオシレータで粉砕し、脂質含量が60.8%を含む顆粒状高油脂含有乾燥品が製造できた。製品中の脂質含量(%)は表12の各種原料の固形分、脂質含量より計算した。表13にはその結果を示した。
<顆粒状高油脂含有乾燥品の製造>
実施例3の配合を用い、試験1の方法で作った生地をシート状に成形後、マイクロ波加熱乾燥したものを、5mm×5mm縦横にカットすることにより顆粒状高油脂含有乾燥品を得た。
<粒度分布試験>
目開き1.0mmの篩分けを行い、粒度分布の測定を行った。
顆粒状高油脂含有乾燥品と粉末油脂を目開き1.0mmの篩別測定をおこなった。顆粒状高油脂含有乾燥品は目開き1.0mmの篩を18%パスするのに対して粉末油脂は目開き1.0mmの篩を100%パスした。表11には、目開き1.0mm篩別後の割合を示した。
<水への溶解性試験>
実施例3の顆粒状高油脂含有乾燥品と粉末油脂を200mlビーカーにそれぞれ1.0g入れ、水を150gそれぞれ注ぎ、2分経過後の固形物の有無を確認した(図5)。
高油脂含有乾燥品は、水中に入れたときに水中に浮き形状は保たれ、水不溶性であった。一方粉末油脂は、水への溶解性は良く、均一分散され、O/Wの白濁乳化液となった。
<即席食品への応用>
次に、本実施形態の高油脂含有乾燥品を即席食品用として用いたときの試験結果を示す。
即席カップ麺の上に実施例1、2、3、4、5、10、11の配合で、試験1の方法にて作製した高油脂含有乾燥品および油脂含量70%の粉末油脂を麺の上に別添の具材とともに各2g加え、90℃の水を注ぎ入れ、蓋をして3分後に以下の点における評価を行った。3分後の復元性(湯戻り不良があるか否か)、水への溶解性(形状が保たれているかどうか)、水中に浮いて存在するかどうか、また、食味(食感)が良いかどうかを表16における官能評価基準にて10人のパネラーにて官能評価を行い、その平均点を示した。これらの評価結果を表15に示した。
また、即席カップスープの素に実施例1、2、3、4、5、10、11の配合で、試験1の方法にて、カット幅を3mm×3mmに変更して作製した高油脂含有乾燥品および油脂含量70%の粉末油脂を各1g加え、90℃の水を注ぎ入れ、1分後に以下の点における評価を行った。1分後の復元性(湯戻り不良があるか否か)、水への溶解性(形状が保たれているかどうか)、水中に浮いて存在するかどうか、また、食味(食感)が良いかどうかを表16における官能評価基準にて10人のパネラーにて官能評価を行い、その平均点を示した。これらの評価結果を表17に示した。
このように本実施形態によれば、50%以上の油脂を含有すると共に安定した乾燥品を提供できた。
この高油脂含有乾燥品は、即席食品用の具材として、好適に用いることができることが分かった。
なお、本発明は、油脂/蛋白質水溶液の分散液を乾燥するものであるが、この蛋白質は単一に分離されたものだけでなく、複合状態であっても分散液を調製できれば、特に限定することなく使用することができる。

Claims (7)

  1. 蛋白質と油脂とを含むものであって、前記油脂の含量が50%〜90.1%、前記蛋白質の含量が9.9%〜50%、油脂粒子径が1μm〜100μmである乾燥品であって、前記乾燥品の形状が、1.0mm以上が50%以上であり、水に不溶であることを特徴とする高油脂含有乾燥品。
  2. 前記蛋白質が、大豆蛋白、鶏卵蛋白、乳蛋白、ゼラチン、コラーゲンおよび魚肉蛋白からなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の高油脂含有乾燥品。
  3. 増粘多糖類を0〜5%含むことを特徴とする請求項1または2に記載の高油脂含有乾燥品。
  4. 水に浮遊することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の高油脂含有乾燥品。
  5. 前記高油脂含有乾燥品が、即席食品用のものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の高油脂含有乾燥品。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか一つに記載の高油脂含有乾燥品の製造方法であって、
    (1)水に蛋白質を添加して撹拌し、蛋白質水溶液とする蛋白質水溶液調製工程、(2)前記蛋白質水溶液に油脂を添加して撹拌し、水中油滴型分散液を調製する工程、(3)前記分散液を乾燥させることで水分を取り除く乾燥工程を備えたことを特徴とする高油脂含有乾燥品の製造方法。
  7. 前記乾燥工程が、マイクロ波加熱乾燥処理であることを特徴とする請求項6に記載の高油脂含有乾燥品の製造方法。
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