JP5893403B2 - 高濃度仕込によるビールテイスト飲料の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高濃度仕込によるビールテイスト飲料の製造方法に関し、より詳細には、ワールプールタンクからの液汁の移送の後に液汁の糖度調整を行うことを特徴とするビールテイスト飲料の製造方法に関する。
従来から、ビールテイスト発酵飲料の生産効率の向上や生産に当たって使用するエネルギーの低減のために高濃度醸造に関する試みが多々なされてきた。高濃度醸造の一つの困難は、高濃度麦汁における発酵遅延の問題や最終製品の香味などの品質に及ぼす影響を無視することができないということである。
この問題を解決する高濃度発酵を実現する方法として、近年、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターおよび該プロモーターの制御下に連結したマルトースパーミアーゼの構造遺伝子を含有する酵母を用いて高濃度麦汁を発酵させ、高濃度ビールを得る方法(特許文献1)や、発酵工程で生じる酢酸を低減するために発酵工程でα−グルコシダーゼを作用させて酢酸生成量を低減させてビールを得る方法(特許文献2)が開発されてきた。しかし、これらの方法では、特殊な酵母や酵素を用いる必要があり、場合によっては、新しい設備を設ける必要が生じるなど、コストや手間が必要であった。
また、高濃度発酵の困難を回避するために、麦汁希釈後に発酵を行う方法(特許文献3)が提案されている。麦汁希釈後に発酵を行う方法では、酵母が高濃度麦汁環境にさらされて最終製品の品質に影響がでることを防ぐために、ワールプールタンクから発酵タンクへの発酵前液の移送中に注水を行う比例注水という手法が採用されてきた。この手法では注水に膨大な時間を要し、仕込間インターバルの長期化や仕込回転率の悪化などが懸念されていた。
そのため、仕込間インターバルの長期化や仕込回転率の悪化が起こらず、最終製品の品質が保たれた、高濃度仕込によるビールテイスト発酵飲料の製造方法が求められていた。
特開平6−245750号公報 特開第2002−253197号公報 国際公開第2007/136257号公報
本発明は、生産効率が向上し、かつ、最終製品の品質が保たれた、高濃度仕込によるビールテイスト飲料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、ビールテイスト発酵飲料の高濃度仕込において、ワールプールタンクから発酵タンクへの発酵前液の移送の後に主として注水を行うことにより発酵前液の糖度を調整することにより、高濃度仕込で問題とされていた発酵遅延および最終製品の品質への影響を回避することができることを見出した。本発明はこのような知見に基づくものである。
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)ビールテイスト飲料の製造方法であって、ワールプールタンクからの液汁の移送の後に注水をすることにより、該液汁の糖度を20%〜70%低減させる、製造方法。
(2)注水の前に液汁に酵母が添加される、上記(1)に記載の製造方法。
(3)発酵に適した温度範囲に温度調整された醸造用水を注水する、上記(2)に記載の製造方法。
(4)ワールプールタンクから液汁を送液するための湯押し設備を利用して注水する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)次仕込の液汁が、注水中に煮沸釜からワールプールタンクへ移送される、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)ワールプールタンクからの送液口を経由せずに注水する、上記(4)または(5)に記載の製造方法。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法により製造されたビールテイスト飲料。
本発明によれば、主としてワールプールタンクからの原料液汁の移送の後の注水により原料液汁の糖度を調整することにより、製品の品質への影響を最小限に抑えた上で、高濃度仕込の利点である1仕込当りの製品生産量を増加させることや生産量当りの消費エネルギー量を削減することができる。本発明によれば、また、仕込間インターバルを短縮できるため、時間当りの仕込数(仕込回転率)を向上させることができる。
図1は、実施例1の発酵工程における発酵の進捗と発酵に伴う酵母数の経時変化を示す図である。 図2は、実施例1の発酵工程完了後に回収された酵母の細胞内pH(蛍光光度計により測定した酵母の細胞内pH(ICP)およびフローサイトメーターにより測定した酵母の細胞内pH(FIP))並びにその死滅率を示す図である。なお、ICPおよびFIPともに、いずれも酵母活性を示すデータである。 図3は、本発明における静置工程、移送工程、注水工程および冷却工程の一例を図解するための図である。図中のWPTはワールプールタンクを表し、TWHは醸造湯を表し、TWCは醸造冷水を表し、FTは発酵タンクを表す。図示されていないが、ワールプールタンクは煮沸釜と配管により接続されており、煮沸後の麦汁は煮沸釜からワールプールタンクに移送され、静置される。 図4は、ワールプールタンクからの送液口を経由しないで注水を行う場合の、迂回経路の一例(図中の矢印の経路)を示す図である。
発明の具体的な説明
本発明において、「ビールテイスト飲料」とは、「ビールテイスト発酵飲料」と「ビールテイスト非発酵飲料」を含む意味で用いられる。
本発明において、「ビールテイスト発酵飲料」とは、炭素源、窒素源およびホップ類などを原料とし、通常のビールの製造方法に従いアルコール発酵により製造した場合に得られる、ビールに類似する香味特徴を有するすべての発酵飲料をいう。ビールテイスト発酵飲料としては、例えば、ビール、発泡酒、ビール風味発酵飲料(例えば、酒税法上、「その他の醸造酒(発泡性)(1)」に分類される飲料)が挙げられる。ビールテイスト発酵飲料には、原料に麦汁を用いる発酵麦芽飲料と呼ばれるものが挙げられるが、必ずしも麦汁を用いる必要はない。
本発明において、「ビールテイスト非発酵飲料」とは、炭素源、窒素源およびホップ類などを原料とし、アルコール発酵を行わないで製造することができる非発酵飲料であって、ビールに類似する香味特徴を有するすべての非発酵飲料をいう。例えば、アルコール含量が0%である完全無アルコール麦芽飲料や、麦芽を用いない完全無アルコールビールテイスト飲料等もビールテイスト非発酵飲料に含まれる。
本発明において、ビールテイスト発酵飲料およびビールテイスト非発酵飲料の原料には、下記の炭素源、窒素源、添加物等を用いることができる。麦汁は用いてもよいし、用いなくてもよい。また、麦汁には、未発芽の麦類、例えば、未発芽大麦(エキス化した未発芽大麦を含む)または未発芽小麦(エキス化した未発芽小麦を含む)を用いてもよい。
本発明において、ビールテイスト発酵飲料およびビールテイスト非発酵飲料の炭素源としては、特に限定されないが、米、トウモロコシ、こうりゃん、馬鈴薯、でん粉および糖類(例えば、果糖ブドウ糖液糖などの液糖)の1種または2種以上を使用することができ、これら以外の炭素源を用いることもできる。
本発明において、ビールテイスト発酵飲料およびビールテイスト非発酵飲料の窒素源としては、特に限定されないが、大豆タンパク質、エンドウタンパク質およびトウモロコシタンパク質並びにこれらのタンパク分解産物などの穀物原料の1種または2種以上を使用することができ、これら以外の穀物原料を用いることもできる。
本発明において、ビールテイスト発酵飲料およびビールテイスト非発酵飲料に用いるホップ類としては、特に限定されないが、ビールや発泡酒等の製造に使用される通常のホップ、ペレットホップ、粉末ホップ、ホップエキスを適宜選択して使用することができる。また、それ以外にも、異性化ホップ、ヘキサホップ、テトラホップなどのホップ加工品を用いることもできる。
本発明によるビールテイスト発酵飲料およびビールテイスト非発酵飲料は、必要に応じて、甘味料、酸味料、苦味料等の調味料、pH調製剤などの安定化剤、アルコール、香料、色素、起泡向上剤、泡持ち向上剤、水質調整剤および発酵助成剤などの添加物の1種または2種以上を添加して製造してもよい。
本発明におけるビールテイスト発酵飲料およびビールテイスト非発酵飲料の製造は例えば以下のように行うことができる。すなわち、原料に、
−必要に応じて糖化やタンパク分解等の処理を施し(仕込工程)、
−濾過を行って原料液汁を取得し(濾過工程1)、
−煮沸開始前および/または煮沸開始後にホップ等を適量添加し(煮沸工程)、
−ワールプールタンクにて静置して沈殿物を除去し(静置工程)、
−得られた液汁をワールプールタンクから発酵タンク等に移送しながら冷却し(移送工程および冷却工程)、
−ビールテイスト発酵飲料を製造する場合のみ、得られた液汁(発酵前液)に酵母を添加して、アルコール発酵を行わせ(発酵工程)、
−得られた液汁を0℃付近の低温で長時間寝かせることで混濁の原因となるタンパク質を析出させ(貯酒工程)、
−必要に応じて適宜甘味料、酸味料、苦味料等の調味料、希釈水、アルコール、pH調製剤などの安定化剤、香料、色素、起泡向上剤、泡持ち向上剤、水質調整剤および発酵助成剤などの添加物を添加して飲料の香味や品質を整え、
−残存した酵母や不溶成分を完全に取り除いて清澄化して(濾過工程2)、
−最後に、濾過工程の終了した製品を、缶、ビンまたは樽等に充填して(充填工程)、
最終製品とすることができる。
本発明によれば、ビールテイスト飲料の製造方法であって、ワールプールタンクからの液汁の移送の後の注水により、液汁の糖度を20%〜70%低減させる製造方法が提供される。本発明の製造方法は、ワールプールタンクから発酵タンク等への液汁の移送中に一定割合で注水を続ける比例注水による従来の方法と比較して、注水の所要時間を短縮でき、結果として仕込間インターバルを短縮できる点で有利である。
本発明によれば、ワールプールタンクから移送される液汁の糖度は、注水により、例えば、10°P〜24°Pから8°P〜17°Pに低減させることができる。すなわち、本発明では液汁を高濃度で仕込み、液汁の移送後に注水により糖度を低減させることができる。本発明の製造方法がビールテイスト発酵飲料の製造方法である場合には、発酵前液を高濃度で仕込み、ワールプールタンクから発酵タンクへの発酵前液の移送後に注水により糖度を低減させ、発酵を行うことができる。
本発明では、ワールプールタンクからの液汁の移送の後に主として注水を行うが、注水開始の時期は、仕込間インターバルが延長しない範囲内で、ワールプールタンクから発酵タンクへの液汁の移送時において、ワールプールタンクの液量が当初全液量の30〜0%となった時期とすることができる。ここで、ワールプールタンクの液量が当初全液量の30%とは、移送液量がワールプールタンクの当初全液量の70%となったことを指す。また、ワールプールタンクの液量が当初全液量の0%とは、移送液量がワールプールタンクの当初全液量の100%となったこと、すなわち、ワールプールタンクの全液量が空となったこと、を指す。本発明の好ましい態様では、注水開始時期をワールプールタンクからの発酵前液の移送液量がワールプールタンクの当初全液量の100%となったときとすることができる。
本発明によれば、注水には、醸造用水、醸造湯若しくは醸造冷水のいずれか、またはこれらの混合物を用いることができる。注水用の水として、醸造用水、醸造湯または醸造冷水のいずれかを用いる場合には、必要に応じて、水温を調整してから発酵タンク等に注水することができる。注水用の水として、醸造用水、醸造湯または醸造冷水の混合物を用いる場合には、醸造用水、醸造湯または醸造冷水をそれぞれ適量で混合することにより水温を調整することができる。ビールテイスト発酵飲料の製造を行う場合には、醸造用水温は、好ましくは、発酵に適した温度範囲、より好ましくは、発酵温度±1.0℃の範囲に調整することができる。温度調整は、発酵タンクに投入される前の段階で行ってもよいし、目標温度になるように適宜混合率を調整した醸造用水それぞれを温度調整することなく別々に発酵タンクに投入してもよい。
本発明では、「醸造湯」とは、加熱して得られる醸造用水のことを意味する。また、本発明では、「醸造冷水」とは、冷却して得られる醸造用水のことを意味する。加熱や冷却は、当業者に周知の方法により行うことができる。なお、本発明では、「醸造用水」とは、工場でビールの原料を仕込むために用いられる水をいい、飲料水として適切な品質のものである。本発明では、醸造用水は、ビールテイスト発酵飲料の仕込みや注水による糖度調整に用いることができる。
本発明によれば、注水の量は、ワールプールタンク中の液汁の糖度に応じて決定することができる。高濃度仕込時の液汁の糖度を、目標とする液汁の糖度に調整するための量は、当業者であれば容易に求めることができる。具体的には、糖度が目標とする糖度のX倍である場合には、注水により、液汁の量がX倍となるように注水を行うことができる(ここで、Xは1より大きい整数とする)。
本発明によれば、注水の速度は、釜とポンプの能力で適宜調整することができる。注水時間を短縮し、仕込間インターバルを短縮する観点から、注水速度は高速であることが好ましい。
本発明によれば、仕込間インターバルを短縮するために、次仕込の液汁を注水中に煮沸釜からワールプールタンクへ移送してもよい。この場合、注水は次の仕込液をワールプールタンクからの送液開始までに完了させることができる。例えば、注水開始から1時間以内に完了させることができ、好ましくは、注水開始から20分以内に完了させることができる。
本発明によれば、注水用の設備としては、注水専用の設備を使用することができる。本発明の注水用の設備は、所望の注水速度が達成される送液能力を備えていることが好ましい。
本発明によれば、設備改造の費用や手間を削減する観点から、既存の湯送り用の設備またはその一部を使用してもよい。湯送り用の設備を本発明の注水用の設備として使用する場合には、所望の注水速度が達成される送液能力を備えたポンプを適用することで、既存設備を活用しながらも、高速な注水が可能となる。この目的のために、特に限定されないが、前記送液能力を備えたポンプを湯送り用のポンプとして用いることができる。湯送りと注水は連続して行うこともできる。
本発明を限定するものではないが、本発明による湯送り設備を活用した注水設備の一例を図3に図解する。図4のように、注水用の水がワールプールタンクに逆流する可能性を低減すること等を目的として、ワールプールタンクの送液口を迂回したバイパス経路(矢印で示される経路)を経由して注水を行ってもよい。
本発明では、「ワールプールタンクの送液口」とは、液汁を発酵タンク等に送液するためにワールプールタンクに設置された液汁の送出口を意味する。
本発明の製造方法がビールテイスト発酵飲料の製造方法である場合には、酵母は、注水前または注水中の高濃度発酵前液に添加することができるが、発酵前液における酵母の混合性を向上させる観点から、注水前の高濃度発酵前液に添加することが好ましい。
本発明によれば、本発明の製造方法により製造されたビールテイスト飲料が提供される。
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1:高濃度仕込および大量注水による、麦芽を用いないビールテイスト発酵飲料の製造
本実施例では、本発明の高濃度仕込(1.33倍)および大量注水の方法を用いて、大豆タンパク、液糖およびホップを原料としたビールテイスト発酵飲料を製造し、評価した。
(1)ビールテイスト発酵飲料の製造
加圧式の煮沸釜に、原料である大豆タンパクと市販のプロテアーゼを投入し、2時間攪拌することにより大豆タンパク分解液を調製した。その後、市販の液糖を加えて昇温させ、原料液汁の温度が115〜120℃になった時点から20〜30分煮沸を続けて、メイラード反応物を得た。
別途、煮沸釜にて市販の液糖と湯を混合したところに、上記メイラード反応物を添加し、さらにホップを加えて20〜40分間煮沸した。
煮沸終了後に、醸造用水を加えて蒸発量を補ってからワールプールタンクで発酵前液を静置し、ホップ残渣等の沈殿物を除去して発酵前液を得た(対照1)。高濃度発酵前液は、仕込量(120kL)を変えずに使用原料量を33%増量させて、上記と同様に調製した(試験1)。なお、煮沸直前の麦汁の糖度は、対照1が17.0°Pであり、試験1が22.6°Pであった。
煮沸後の麦汁は、発酵前液の調製のため、10〜15℃まで冷却(麦冷)し、ビール酵母を添加した。
試験1については、麦冷し、ビール酵母を添加した後、高濃度発酵前液に注水し、糖度調整を行った。具体的には、糖度調整のための注水は、湯送りのための注水ラインを用い、冷却後の高濃度発酵前液に対して行った。注水量は、注水前の液汁の仕上り糖度から必要な注水の合計量を算出し、そこから湯送りに用いた湯量を減じて求めた。結果、試験1における注水量は、約40kLであった。注水開始時期はワールプールタンク中の発酵前液が空になった時点とした。大量注水は、冷却目標温度に調整した醸造用水を用い、ワールプールタンクに取り付けられた湯送り用ラインを用いて80kL/hの高流速で行った。従って、本実施例では、注水は約30分で完了した。
その後、常法に従って、さらに発酵、貯蔵、濾過を行い、アルコール製品(対照1および試験1)を得た。得られたアルコール製品の成分分析結果は表1に示される通りであった。なお、表1中の原麦汁糖度(OE)は発酵前の発酵前液の糖度である。
表1に示されるように、エステル(酢酸エチルや酢酸イソアミル)およびアセトアルデヒドなどについての濃度は、対照1と試験1との間で大きな差は認められず、試験1のビールテイスト飲料の製造方法は、発酵性に影響を与えないことが示された。このように、本実施例では、麦芽を用いないビールテイスト発酵飲料の製造において、発酵工程や製品品質に大きな悪影響を与えることなく、高濃度仕込と大量注水による糖度調整が可能であったことが示された。また、官能評価では、製品の香味や味には若干の変化が認められたものの、製品として許容される範囲内であることが確認された(データ省略)。
(2)酵母の活性状況の確認
本実施例では、発酵用の酵母は、大量注水の前に麦汁に添加されたため、一時的であっても高濃度発酵前液にさらされることとなった。そのため、高濃度発酵前液への暴露による、酵母の生理的状態や最終製品の品質への影響が懸念された。そこで、発酵の進捗を確認するために、主発酵の際の発酵液糖度の経時変化をモニタリングし、また、発酵用の酵母の生理的状態を確認するために、発酵液中の酵母数の経時変化、回収酵母の細胞内pH(ICP)、回収酵母の細胞内pH(FIP)および回収酵母の死滅数をモニタリングした。モニタリング結果は、図1および2に示されるとおりであった。
図1に示されるように、発酵液は時間経過と共に順調に糖度を低下させた。また、対照1と試験1とでは、糖度の経時変化にはほとんど差が見られなかった。また、発酵液中の酵母数は、時間経過と共に減少していったが、対照1と試験1とでは、その経時変化にほとんど差が見られなかった(図1)。また、図2に示されるように、回収酵母のICP、FIPおよび死滅数は、対照1および試験1とでほとんど差が見られなかった。
このことから、本実施例において、酵母は、一時的に高濃度発酵前液にさらされることとなったにも関わらず、驚くべきことに発酵工程の進捗や酵母の生理的状態にはほとんど影響が無かったことが示された。高速注水により酵母の高濃度発酵前液への暴露時間が短縮したこと、および高濃度発酵前液への短時間の暴露が酵母に許容されたためであると考えられる。
以上のように、本実施例では麦芽を用いないビールテイスト発酵飲料の製造において高濃度仕込と注水を行ったが、仕込間インターバルに影響はなく、注水が次仕込の遅れにつながることはなかった。結果として、仕込液の濃縮の程度に応じた生産効率の向上と使用エネルギーの低減効果が認められた。また、本実施例では高濃度発酵前液へ酵母を添加したが、酵母の活性状況にほとんど影響は認められず、また、最終製品の品質への影響はほとんど認められなかった。すなわち、本実施例では最終製品の品質を損なわずに高濃度仕込による生産効率の向上と使用エネルギーの低減を達成できることが示された。
実施例2:高濃度仕込および大量注水による、麦芽を用いたビールテイスト発酵飲料の製造
本実施例では、本発明の高濃度仕込(1.33倍および2倍)および大量注水の方法を用いて、ビールテイスト発酵飲料を製造し、評価した。
通常の方法に従って、仕込槽に注入されたpH調製済みの湯に麦芽および大麦を投入し、市販の酵素剤を添加して糖化を施し、糖化液を得た。その後、得られた糖化液を麦汁濾過槽にて濾過して麦汁を得た。麦汁は、煮沸釜に移し、水飴とホップを添加して60分〜70分煮沸した。煮沸終了後に、醸造用水を加えて蒸発量を補ってからワールプールタンクで麦汁を静置し、トリューブやホップ残渣等の沈殿物を除去して麦汁を得た(対照2、対照3)。高濃度麦汁は、仕込量を変えずに使用原料量だけを33%増量(濃度1.33倍(試験2))して、または100%増量(濃度2倍、(試験3))して上記と同様に調製した。なお、煮沸直前の麦汁の糖度は、対照2が12°P、対照3が12°P、試験2が16°P、試験3が24°Pであった。また、仕込量は、対照2と試験2では120kLであり、対照3と試験3では2kLであった。試験3では仕込麦汁2kLのうち1kLをこれ以降の試験に用いた。
煮沸後の麦汁は、発酵前液の調製のため、10〜15℃まで冷却(麦冷)し、ビール酵母を添加した。
試験2および試験3については、麦冷し、ビール酵母を添加した後、高濃度発酵前液に注水し、糖度調整を行った。具体的には、糖度調整のための注水は、湯送りのための注水ラインを用い、冷却後の高濃度発酵前液に対して行った。注水量は、注水前の液汁の仕上り糖度から必要な注水の合計量を算出し、そこから湯送りに用いた湯量を減じて求めた。結果、試験2における注水量は約40kLであり、試験3における注水量は約1kLであった。注水開始時期はワールプールタンク中の発酵前液が空になった時点とした。大量注水は、冷却目標温度に調整した醸造用水を用い、ワールプールタンクに取り付けられた湯送り用ラインを用いて100kL/hの高流速で行った。
その後、常法に従って、さらに発酵、貯蔵、濾過を行い、アルコール製品(対照2および試験2並びに対照3および試験3)を得た。得られたアルコール製品の成分分析結果は表2および表3に示される通りであった。なお、表2および表3中の原麦汁糖度(OE)は発酵前の発酵前液の糖度である。
表2および表3に示されるように、エステル(酢酸エチルや酢酸イソアミル)およびアセトアルデヒドなどについての濃度は、対照2と試験2との間、および対照3と試験3との間で大きな差は認められず、試験2および試験3の発酵麦芽飲料の製造方法は、発酵性に影響を与えないことが示された。すなわち、本実施例により、1.33倍濃縮(4仕込満量化を3仕込満量化に変更した場合に対応)だけでなく2倍濃縮(4仕込満量化を2仕込満量化に変更した場合に対応)の麦汁を用いた場合でも、発酵麦芽飲料の製造において、発酵工程や製品品質に大きな悪影響を与えることなく、高濃度仕込と大量注水による糖度調整が可能であったことが示された。また、官能評価では、製品の香味や味には若干の変化が認められたものの、製品として許容される範囲内であることが確認された(データ省略)。
以上のように、本実施例では発酵麦芽飲料の製造において高濃度仕込と注水を行ったが、仕込間インターバルに影響はなく、注水が次仕込の遅れにつながることはなかった。結果として、仕込液の濃縮の程度に応じた生産効率の向上と使用エネルギーの低減効果が認められた。また、本実施例では高濃度発酵前液へ酵母を添加したが、最終製品の品質への影響はほとんど認められなかった。すなわち、本実施例では最終製品の品質を損なわずに高濃度仕込による生産効率の向上と使用エネルギーの低減を達成できることが示された。

Claims (5)

  1. ビールテイスト飲料の製造方法であって、ワールプールタンクからの液汁の移送の後に注水をすることにより、該液汁の糖度を20%〜70%低減させ、該注水の前に液汁に酵母が添加される、製造方法。
  2. 発酵に適した温度範囲に温度調整された醸造用水を注水する、請求項1に記載の製造方法。
  3. ワールプールタンクから液汁を送液するための湯押し設備を利用して注水する、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 次仕込の液汁が、注水中に煮沸釜からワールプールタンクへ移送される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. ワールプールタンクからの送液口を経由せずに注水する、請求項3または4に記載の製造方法。
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