JP2003169657A - ビールの製造方法 - Google Patents

ビールの製造方法

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JP2003169657A JP2001370130A JP2001370130A JP2003169657A JP 2003169657 A JP2003169657 A JP 2003169657A JP 2001370130 A JP2001370130 A JP 2001370130A JP 2001370130 A JP2001370130 A JP 2001370130A JP 2003169657 A JP2003169657 A JP 2003169657A
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  • Distillation Of Fermentation Liquor, Processing Of Alcohols, Vinegar And Beer (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】消費者の嗜好に合う新たな風味を生み出すこと
の可能なビールの製造方法を提供することにある。 【解決手段】海洋深層水を添加してビールの製造を行う
ことにより、糖化および発酵が促進され、風味の豊かな
ビールを製造することができる。特に、海洋深層水の添
加量を仕込用水に対して0.1重量%以上0.8重量%
以下とすること、および、90℃以上で焙煎および/ま
たは焙燥されたモルトを含む麦芽を使用することによ
り、糖化および発酵を促進させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビールの製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ビールの製造工程において、発酵
を促進させ、あるいは消費者の好みに合う風味を添加す
るために、様々な技術が開発されている。例えば、特開
2000−83646公報には、ビール粕からの抽出物
を発酵工程において添加することにより、発酵を促進さ
せるとともに良好な風味を保持する技術が開示されてい
る。また、特開平9−47276号公報には、平均分子
量200〜4,000のペプチドを麦汁中に添加するこ
とで、新規な香味を有するビールを製造する技術が開示
されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、近年、消費者
の嗜好がますます多様化してきており、新しい風味を有
するビールが求められている。このため、従来のビール
醸造においては用いられなかった原料素材を用いた、今
までにないビールを製造可能な方法の開発が急務であ
る。
【0004】本発明は、上記した事情に鑑みてなされた
ものであり、その目的は、消費者の嗜好に合う新たな風
味を生み出すことの可能なビールの製造方法を提供する
ことにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、消費者の
嗜好に合う新たな風味を生み出すことの可能なビールの
製造方法を開発すべく鋭意研究してきたところ、以下の
知見を見出した。
【0006】海洋深層水(以下、単に「深層水」と称す
ることがある)は太陽光線の届かない海面下200m以
深の深海から取水された水のことをいう。この海洋深層
水は、年間を通じて水質の変動が少なく、表層に存在す
る海水と比して無機塩類が豊富に含まれるという特徴を
備えている。また、微生物がほとんど生息せず、かつ海
洋表層での環境汚染の影響を受けない極めて清浄な水で
あるという特徴も併せて備えている。
【0007】本発明者は、このような性質を備えた海洋
深層水が、酵母の活動の活発化のために無機塩類のバラ
ンスのよい供給が要求されるとともに、発酵に悪影響を
与える雑菌や汚染物の混入が厳しく制限されるビールの
製造にきわめて好適なものであることを見出した。
【0008】しかし、海洋深層水は塩分を多く含むた
め、多量に添加すればビールの風味に影響を及ぼすとと
もに、酵母の活動を阻害すると考えられた。また、海洋
深層水に含まれる無機塩類についても、麦芽に含まれる
糖化酵素、および酵母を活性化するための適正な添加量
の範囲があり、少なすぎたり、多すぎたりすれば充分な
効果が得られないと考えられた。
【0009】このため、本発明者は、海洋深層水の適正
な添加量についてさらに研究を重ね、海洋深層水の添加
割合を仕込用水に対して0.1重量%以上0.8重量%
以下とすることにより、糖化および発酵が促進され、風
味豊かなビールを創製できることを見出した。本発明
は、かかる新規な知見に基づいてなされたものである。
【0010】すなわち、本発明は、麦芽を含む原料と仕
込用水とを混合し、加温して糖化させることにより麦汁
を得る糖化工程と、前記麦汁に酵母を添加して発酵させ
る発酵工程とを経るビールの製造方法であって、前記糖
化工程において、前記仕込用水に海洋深層水を添加する
ことを特徴とする。
【0011】ここで、海洋深層水の添加割合が前記仕込
用水に対して0.1重量%以上0.8重量%以下である
ことが好ましい。添加割合が0.1重量%未満では充分
な糖化および発酵の促進効果が得られず、一方、0.8
重量%を超えると、海洋深層水に含有される塩分により
ビールの風味が損なわれるためである。
【0012】また、本発明のビールの製造方法は、メラ
ノイジンを多く含むモルトを使用して濃色のビールを製
造する場合に、特に好適である。モルトに含まれるメラ
ノイジンが仕込用水中の炭酸水素イオンと結合すること
により、ビールの色調をより濃くする効果、および、糖
化工程での糖化液のpHを適正化する効果が得られるた
めである。
【0013】メラノイジンによる効果を得るためには、
90℃以上で焙煎または焙燥されたモルトを使用するこ
とが有効である。このようなモルトとしては、例えばペ
ールエールモルト、ウィンナ・モルト、ミュンヘンモル
ト、ローストモルト等が挙げられる。これらのモルトの
うち、比較的低温で焙燥されるミュンヘンモルト等は、
単独で、あるいは複数種を混合して使用してもよく、さ
らには、ピルスナーモルト等の低温で焙燥されたモルト
中に配合して使用してもよい。また、比較的高温で焙煎
及び/または焙燥されるローストモルトは、ペールモル
トに配合して使用することができる。
【0014】なかでも、メラノイジンを多く含むロース
トモルトを麦芽中に配合することが有効である。本明細
書中で「ローストモルト」とは、「EBC(Europian B
rewing Convention)により定められた標準分析法に従
って測定された色度が30以上のもの」、または、「発
芽させた大麦を(a)低温(約60℃)で乾燥後、160
℃以上で焙煎すること、(b)55℃〜70℃で蒸し煮し
た後、120℃以上で焙煎すること、あるいは、生の大
麦を220℃以上で焙煎すること、によって得られたも
の」をいう。なお、一般に「キルンド・モルト」または
「クリスタルモルト」等と呼称されるものも、上記の色
度を有するもの、あるいは上記の製法により製造された
ものであれば、本明細書にいう「ローストモルト」に含
まれる。
【0015】
【発明の作用、および発明の効果】本発明によれば、仕
込用水に海洋深層水を添加してビールの製造を行う。こ
の海洋深層水には、糖化酵素であるα−アミラーゼおよ
びβ−アミラーゼの活性化等に役立つとされるカルシウ
ムイオン、糖化や発酵における酵素の作用に大きな意義
をもつとされるカリウムイオンの他、酵母の代謝やビー
ルの風味に影響を与えるナトリウムイオン、塩化物イオ
ン、硫酸イオン等が多く含まれる一方、糖化を妨げ、酵
母の活性を害する銅イオンの含有量は極めて少なく、ビ
ール醸造のために好適である。このため、海洋深層水を
添加してビールの製造を行うことにより、糖化および発
酵が促進され、風味の豊かなビールを製造することがで
きる。
【0016】特に、海洋深層水の添加量を仕込用水に対
して0.1重量%以上0.8重量%以下とすることによ
り、醸造水中のイオンの含有量を、醸造に適する範囲内
でバランスのよいものとすることができる。これによ
り、糖化工程においては、糖化液のpHを適性範囲とし
て、糖化酵素であるα−アミラーゼおよびβ−アミラー
ゼを活性化し、糖化を促進することができる。また、発
酵工程においては、酵母を活性化して糖のアルコールへ
の変換を促進することができる。
【0017】さらに、麦芽としてローストモルトを含む
ものを使用すれば、醸造水に含まれて水の酸性化を抑制
する炭酸水素イオンが、ローストモルトに含まれるメラ
ノイジンと結合して不溶化される。このため、糖化液の
pHを適性範囲に調製することが容易となる。これによ
り、糖化工程の初期からpHを適性範囲に近づけること
ができ、糖化反応をいっそう促進することができる。
【0018】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に
説明する。
【0019】[麦芽としてピルスナーモルトおよびロー
ストモルトを用いた場合の実施例群] <実施例1−1> 1.試験方法 1)原料 麦芽としては、ピルスナーモルト(色度2(EB
C))、およびローストモルト(色度130(EB
C))を用いた。また、仕込用水としては、富山県内で
取水された地下水を使用した。また、海洋深層水として
は、富山湾内において海面下321mの深海から取水さ
れたものを使用した。
【0020】2)糖化工程 麦芽として、ピルスナーモルトにローストモルトを1重
量%配合したものを用いた。この麦芽をミルにより粉砕
した。仕込用水に、この仕込用水に対して0.1重量%
の海洋深層水を添加したものを醸造水とした。この醸造
水をあらかじめ50℃に加温し、粉砕された麦芽を投入
した。
【0021】麦芽と醸造水との混合液を撹拌しつつ、6
5℃で一定時間保持して、糖化を行わせた(ステップ
1)。次に、この糖化液の温度を72℃まで上昇させ、
一定時間保持して糖化を行わせた(ステップ2)。次い
で、糖化液の温度をさらに76℃に上昇させ、一定時間
保持してさらに糖化を行わせた(ステップ3)。最後
に、糖化液の温度を77度に上昇させて、糖化を終了さ
せた。終了後の糖化液をろ過した後、ろ液を煮沸釜に送
り、ホップを加えて60分間煮沸した。煮沸後、沈殿物
を分取し、上清を冷却して麦汁を得た。
【0022】麦芽投入前の醸造水、各ステップの終了時
の糖化液、ろ過により得られた一番絞りの麦汁、および
煮沸後の麦汁について、それぞれpHを測定した。
【0023】3)発酵工程 前記2)で得られた麦汁に酵母を添加し、10℃前後の
一定温度で発酵を行った。発酵開始後1日毎に、8日目
までの発酵液の糖度を測定した。なお、主発酵が終了し
たと判定した時点で、温度を0℃に低下させた。
【0024】4)後発酵工程およびろ過工程 前記3)で得られた発酵液を貯酒タンクに移し、0℃で
21日間貯留して後発酵を行わせ、ビールを完成させ
た。このビールについて、EBC標準分析法により色度
を測定した。
【0025】<実施例1−2>仕込用水に添加する海洋
深層水を、仕込用水に対して0.2重量%とした他は、
実施例1−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0026】<実施例1−3>仕込用水に添加する海洋
深層水を、仕込用水に対して0.3重量%とした他は、
実施例1−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0027】<実施例1−4>仕込用水に添加する海洋
深層水を、仕込用水に対して0.4重量%とした他は、
実施例1−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0028】<実施例1−5>仕込用水に添加する海洋
深層水を、仕込用水に対して0.5重量%とした他は、
実施例1−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0029】<実施例1−6>仕込用水に添加する海洋
深層水を、仕込用水に対して0.6重量%とした他は、
実施例1−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0030】<実施例1−7>仕込用水に添加する海洋
深層水を、仕込用水に対して0.7重量%とした他は、
実施例1−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0031】<実施例1−8>仕込用水に添加する海洋
深層水を、仕込用水に対して0.8重量%とした他は、
実施例1−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0032】<実施例1−9>仕込用水に添加する海洋
深層水を、仕込用水に対して7重量%とした他は、実施
例1−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0033】<比較例1>海洋深層水を添加しない仕込
用水を醸造水として使用した他は、実施例1−1と同様
にビールを製造し、測定を行った。
【0034】[麦芽としてピルスナーモルトのみを用い
た場合の実施例群] <実施例2−1>麦芽としてピルスナーモルトのみを用
い、仕込用水に添加する海洋深層水を、仕込用水に対し
て0.1重量%として、実施例1−1と同様にビールを
製造し、測定を行った。
【0035】<実施例2−2>仕込用水に添加する海洋
深層水を、仕込用水に対して0.2重量%とした他は、
実施例2−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0036】<実施例2−3>仕込用水に添加する海洋
深層水を、仕込用水に対して0.3重量%とした他は、
実施例2−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0037】<実施例2−4>仕込用水に添加する海洋
深層水を、仕込用水に対して0.4重量%とした他は、
実施例2−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0038】<実施例2−5>仕込用水に添加する海洋
深層水を、仕込用水に対して0.5重量%とした他は、
実施例2−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0039】<実施例2−6>仕込用水に添加する海洋
深層水を、仕込用水に対して0.6重量%とした他は、
実施例2−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0040】<実施例2−7>仕込用水に添加する海洋
深層水を、仕込用水に対して0.7重量%とした他は、
実施例2−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0041】<実施例2−8>仕込用水に添加する海洋
深層水を、仕込用水に対して0.8重量%とした他は、
実施例2−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0042】<実施例2−9>仕込用水に添加する海洋
深層水を、仕込用水に対して7重量%とした他は、実施
例2−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0043】<比較例2>海洋深層水を添加しない仕込
用水を醸造水として使用した他は、実施例2−1と同様
にビールを製造し、測定を行った。
【0044】[官能検査] <実施例3>大阪府内において、一般消費者から無作為
に選ばれたパネラー25名が、上記実施例1−8(深層
水を0.8%添加)、および比較例1(深層水添加な
し)と同様にして製造されたビールを試飲し、評価を行
った。評価は、コク、フルーティー、甘味、香り、麦芽
風味、苦味の各項目について、それぞれ0(なし)から
10(強い)までの10段階で評点をつけることにより
行った。また、福井県内、富山県内、および東京都内で
も、それぞれ78名、64名、39名のパネラーが同様
に官能検査を行った。
【0045】2.結果と考察 1)仕込用水、深層水、および醸造水中に含まれる成分 表1には、仕込用水および深層水に含まれる成分の含有
量を、表2には、所定量の深層水を添加した醸造水に含
まれる成分の含有量を示した。なお、表2には、通常の
ビールの製造に使用される醸造水に含まれる成分の管理
値(醸造水管理値)を併せて示した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】表1より、本実施例で使用した深層水に
は、糖化酵素であるα−アミラーゼおよびβ−アミラー
ゼの活性化等に役立つとされるカルシウムイオン、糖化
や発酵における酵素の作用に大きな意義をもつとされる
カリウムイオンの他、酵母の代謝やビールの風味に影響
を与えるナトリウムイオン、塩化物イオン、硫酸イオン
等が多く含まれる一方、糖化を妨げるとともに酵母の活
性を害する銅イオンの含有量は極めて少なく、ビール醸
造のために好適であることがわかる。
【0049】また、これらのイオンは、過剰に含まれれ
ばかえって糖化・発酵作用や風味に悪影響を及ぼす可能
性もあるため、表2に示した醸造水管理値の範囲内であ
ることが望ましい。表2によれば、適量の深層水を仕込
用水に添加して醸造水を調製することにより、醸造水中
のイオンの含有量が、醸造水管理値の範囲内でバランス
のよいものとなっているといえる。
【0050】2)糖化および発酵の促進効果 表3には、麦芽としてピルスナーモルトにローストモル
トを配合したものを使用した場合の、糖化工程における
麦芽投入前の醸造水、各ステップの終了時の糖化液、一
番絞りの麦汁、および煮沸後の麦汁についてのpHを示
した。また、図1には、ステップ1から煮沸後までの糖
化液および麦汁のpHの変化を示した。
【0051】表4には、麦芽としてピルスナーモルトの
みを使用した場合における、糖化工程における麦芽投入
前の醸造水、各ステップの終了時の糖化液、一番絞りの
麦汁、および煮沸後の麦汁についてのpHを示した。ま
た、図4には、ステップ1から煮沸後までの糖化液およ
び麦汁pHの変化を示した。
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】表4および図2より、麦芽としてピルスナ
ーモルトのみを使用した場合において、ステップ1では
糖化液および麦汁のpHは、5.98〜5.96の範囲
にあり、深層水を添加した場合と添加しない場合でほと
んど差がなかった。一方、ステップ2の糖化液について
は、深層水を添加しない場合のpHが5.85であった
のに対して、深層水を添加した場合には5.84〜5.
8に低下していた。また、ステップ3の糖化液について
も、深層水を添加しない場合のpHが5.79であった
のに対して、深層水を添加した場合には5.77〜5.
73に低下していた。
【0055】ここで、糖化酵素であるα−アミラーゼお
よびβ−アミラーゼの活性化のためには、おおよそpH
5.8〜5.4が適性範囲であり、pH5.6付近で糖
化を行わせることが最も好ましいと考えられている。本
実施例においては、深層水を添加することにより、糖化
液のpHを低下させ、糖化反応のための最適範囲に近づ
けることができることが分かった。
【0056】このように糖化液のpHが低下した理由は
明らかではないが、深層水中に含まれるカルシウム等の
イオンにより、酵素の働きが活発化されたことによるも
のと考えられる。
【0057】一方、表3および図1より、麦芽としてロ
ーストモルトを使用した場合においては、ステップ2の
糖化液については、深層水を添加しない場合のpHが
5.85であったのに対して、深層水を添加した場合に
は5.8〜5.74となり、上記したピルスナーモルト
のみの場合と比べて、さらに最適pHに近づいていた。
また、ステップ3の糖化液についても、深層水を添加し
ない場合のpHが5.79であったのに対して、深層水
を添加した場合には5.77〜5.61に低下してい
た。これは、醸造水に含まれる炭酸水素イオンが、ロー
ストモルトに含まれるメラノイジンと結合して不溶化さ
れたことによるものと考えられる。すなわち、本実施例
に用いた醸造水には、仕込用水由来の炭酸水素イオンが
多量に含まれており、この炭酸水素イオンには水の酸性
化を抑制する緩衝作用があるため、pHの低下を妨げ
る。しかし、ローストモルトに含まれるメラノイジンに
よってこれを取り除くことにより、pHを低下させて糖
化反応のための最適範囲に調整することが容易となった
と考えられる。
【0058】このように、深層水とローストモルトの相
乗効果によって、糖化工程の初期からpHを低下させ、
糖化反応を促進できることが分かった。
【0059】特に、深層水の添加量が0.1%〜0.8
%の場合には、ステップ3においてpHは5.70〜
5.61となり、良好な値を示していた。逆に、深層水
の添加量を7%に増大させると、pHは5.77までし
か低下しなかった。これは、深層水にナトリウムイオ
ン、カリウムイオン、カルシウムイオン等のアルカリイ
オンが多く含まれることから、多量に添加すれば醸造水
のpHがアルカリ側に傾いてしまうためであると考えら
れる。
【0060】さらに、得られた麦汁の糖度は、深層水を
添加しない場合が12.3%であったのに対して、深層
水を添加した場合には12.4〜12.6%であった
(表5参照)。これより、深層水の添加によって糖化が
促進されたことがわかった。
【0061】表5および図3には、麦芽としてピルスナ
ーモルトにローストモルトを配合したものを使用した場
合の、発酵工程における糖度の変化を示した。
【0062】
【表5】
【0063】表5および図3より、深層水を添加した場
合には、添加しなかった場合と比べて、糖度の低下が早
くなっていた。このことは、糖のアルコールへの変換が
促進されていることを示しており、深層水によって酵母
が活性化されているといえる。なお、詳細にはデータは
示さないが、深層水を添加しなかった場合には、主発酵
が7日で終了したのに対し、0.1%添加した場合に
は、主発酵が6.5日で終了し、発酵期間を0.5日短
縮できることが分かった。さらに、深層水を0.2%以
上添加した場合には、主発酵が6日で終了しており、発
酵期間を1日短縮できることが分かった。
【0064】さらに、発酵開始8日目のアルコール度
は、深層水を添加しなかった場合には5%であった。こ
れに対して、深層水を添加した場合には5.5%となっ
ていた。このことからも、深層水の添加によって糖のア
ルコールへの変換が促進されたことが分かった。
【0065】3)ビールの色度 表6および図4には、麦芽としてピルスナーモルトにロ
ーストモルトを配合したものを使用した場合、およびピ
ルスナーモルトのみを使用した場合の、完成したビール
の色度を示した。
【0066】
【表6】
【0067】表6および図4より、深層水を添加した場
合には、ビールの色が濃色化していることがわかる。こ
れは、上述のように、ローストモルトに含まれるメラノ
イジンが醸造水に含まれる炭酸水素イオンと結合するこ
とによって濃色化することによるものと考えられる。し
たがって、本発明の製造方法は、主として濃色のビール
を製造する場合に好ましく適用できるものであるといえ
る。
【0068】4)官能検査 表7には、深層水を0.8%添加して製造されたビール
についての、官能検査における評価を示した。表8に
は、深層水を添加せずに製造されたビールについての、
官能検査における評価を示した。また、図5には、両者
の評価の比較を表すグラフを示した。
【0069】
【表7】
【0070】
【表8】
【0071】表8および図5より、深層水を添加しない
ビールについては、コクが非常に強く、甘味がやや強い
ものの、苦味、麦芽風味および香りが弱いビールとなっ
ていた。一方、表7および図5より、深層水を0.8%
添加して製造されたビールについては、コク、甘味、香
り、麦芽風味および苦味のバランスがとれた、風味のよ
いビールとなっていることがわかった。
【0072】以上の結果から明らかなように、海洋深層
水を添加してビールの製造を行うことにより、糖化およ
び発酵が促進され、風味の豊かなビールを製造すること
ができる。さらに、ローストモルトを配合した麦芽を使
用することにより、糖化および発酵をいっそう促進する
ことができる。
【0073】なお、本発明の技術的範囲は、上記した実
施形態によって限定されるものではなく、均等の範囲に
まで及ぶものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】麦芽としてピルスナーモルトにローストモルト
を配合したものを使用した場合の、糖化工程におけるス
テップ1から煮沸後までの糖化液および麦汁のpHの変
化を示すグラフ
【図2】麦芽としてピルスナーモルトのみを使用した場
合の、糖化工程におけるステップ1から煮沸後までの糖
化液および麦汁のpHの変化を示すグラフ
【図3】麦芽としてピルスナーモルトにローストモルト
を配合したものを使用した場合の、発酵工程における糖
度の変化を示すグラフ
【図4】麦芽としてピルスナーモルトにローストモルト
を配合したものを使用した場合、およびピルスナーモル
トのみを使用した場合の、深層水の添加量と色度との関
係を示すグラフ
【図5】深層水を0.8%添加して製造されたビール、
および、深層水を添加せずに製造されたビールについて
の、官能検査における評価の比較を示すグラフ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古米 保 富山県射水郡小杉町太閣山9丁目3−1− 232

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 麦芽を含む原料と仕込用水とを混合
    し、加温して糖化させることにより麦汁を得る糖化工程
    と、前記麦汁に酵母を添加して発酵させる発酵工程とを
    経るビールの製造方法であって、 前記糖化工程において、前記仕込用水に海洋深層水を添
    加することを特徴とするビールの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記海洋深層水の添加量が前記仕込用水
    に対して0.1重量%以上0.8重量%以下であること
    を特徴とする請求項1に記載のビールの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記麦芽が90℃以上で焙煎及び/また
    は焙燥されたモルトを含むことを特徴とする請求項1ま
    たは請求項2に記載のビールの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記麦芽がローストモルトを含むことを
    特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のビー
    ルの製造方法。
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