JP3631995B2 - ビールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビールの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ビールの製造工程において、発酵を促進させ、あるいは消費者の好みに合う風味を添加するために、様々な技術が開発されている。例えば、特開2000−83646公報には、ビール粕からの抽出物を発酵工程において添加することにより、発酵を促進させるとともに良好な風味を保持する技術が開示されている。また、特開平9−47276号公報には、平均分子量200〜4,000のペプチドを麦汁中に添加することで、新規な香味を有するビールを製造する技術が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、近年、消費者の嗜好がますます多様化してきており、新しい風味を有するビールが求められている。このため、従来のビール醸造においては用いられなかった原料素材を用いた、今までにないビールを製造可能な方法の開発が急務である。
【0004】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、消費者の嗜好に合う新たな風味を生み出すことの可能なビールの製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、消費者の嗜好に合う新たな風味を生み出すことの可能なビールの製造方法を開発すべく鋭意研究してきたところ、以下の知見を見出した。
【0006】
海洋深層水(以下、単に「深層水」と称することがある)は太陽光線の届かない海面下200m以深の深海から取水された水のことをいう。この海洋深層水は、年間を通じて水質の変動が少なく、表層に存在する海水と比して無機塩類が豊富に含まれるという特徴を備えている。また、微生物がほとんど生息せず、かつ海洋表層での環境汚染の影響を受けない極めて清浄な水であるという特徴も併せて備えている。
【0007】
本発明者は、このような性質を備えた海洋深層水が、酵母の活動の活発化のために無機塩類のバランスのよい供給が要求されるとともに、発酵に悪影響を与える雑菌や汚染物の混入が厳しく制限されるビールの製造にきわめて好適なものであることを見出した。
【0008】
しかし、海洋深層水は塩分を多く含むため、多量に添加すればビールの風味に影響を及ぼすとともに、酵母の活動を阻害すると考えられた。また、海洋深層水に含まれる無機塩類についても、麦芽に含まれる糖化酵素、および酵母を活性化するための適正な添加量の範囲があり、少なすぎたり、多すぎたりすれば充分な効果が得られないと考えられた。
【0009】
このため、本発明者は、海洋深層水の適正な添加量についてさらに研究を重ね、海洋深層水の添加割合を仕込用水に対して0.1重量%以上0.8重量%以下とすることにより、糖化および発酵が促進され、風味豊かなビールを創製できることを見出した。本発明は、かかる新規な知見に基づいてなされたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、麦芽を含む原料と仕込用水とを混合し、加温して糖化させることにより麦汁を得る糖化工程と、前記麦汁に酵母を添加して発酵させる発酵工程とを経るビールの製造方法であって、前記糖化工程において、前記仕込用水に海洋深層水を添加することを特徴とする。
【0011】
ここで、海洋深層水の添加割合が前記仕込用水に対して0.1重量%以上0.8重量%以下であることが好ましい。添加割合が0.1重量%未満では充分な糖化および発酵の促進効果が得られず、一方、0.8重量%を超えると、海洋深層水に含有される塩分によりビールの風味が損なわれるためである。
【0012】
また、本発明のビールの製造方法は、メラノイジンを多く含むモルトを使用して濃色のビールを製造する場合に、特に好適である。モルトに含まれるメラノイジンが仕込用水中の炭酸水素イオンと結合することにより、ビールの色調をより濃くする効果、および、糖化工程での糖化液のpHを適正化する効果が得られるためである。
【0013】
メラノイジンによる効果を得るためには、90℃以上で焙煎または焙燥されたモルトを使用することが有効である。このようなモルトとしては、例えばペールエールモルト、ウィンナ・モルト、ミュンヘンモルト、ローストモルト等が挙げられる。これらのモルトのうち、比較的低温で焙燥されるミュンヘンモルト等は、単独で、あるいは複数種を混合して使用してもよく、さらには、ピルスナーモルト等の低温で焙燥されたモルト中に配合して使用してもよい。また、比較的高温で焙煎及び/または焙燥されるローストモルトは、ペールモルトに配合して使用することができる。
【0014】
なかでも、メラノイジンを多く含むローストモルトを麦芽中に配合することが有効である。本明細書中で「ローストモルト」とは、「EBC(Europian Brewing Convention)により定められた標準分析法に従って測定された色度が30以上のもの」、または、「発芽させた大麦を(a)低温(約60℃)で乾燥後、160℃以上で焙煎すること、(b)55℃〜70℃で蒸し煮した後、120℃以上で焙煎すること、あるいは、生の大麦を220℃以上で焙煎すること、によって得られたもの」をいう。なお、一般に「キルンド・モルト」または「クリスタルモルト」等と呼称されるものも、上記の色度を有するもの、あるいは上記の製法により製造されたものであれば、本明細書にいう「ローストモルト」に含まれる。
【0015】
【発明の作用、および発明の効果】
本発明によれば、仕込用水に海洋深層水を添加してビールの製造を行う。この海洋深層水には、糖化酵素であるα−アミラーゼおよびβ−アミラーゼの活性化等に役立つとされるカルシウムイオン、糖化や発酵における酵素の作用に大きな意義をもつとされるカリウムイオンの他、酵母の代謝やビールの風味に影響を与えるナトリウムイオン、塩化物イオン、硫酸イオン等が多く含まれる一方、糖化を妨げ、酵母の活性を害する銅イオンの含有量は極めて少なく、ビール醸造のために好適である。このため、海洋深層水を添加してビールの製造を行うことにより、糖化および発酵が促進され、風味の豊かなビールを製造することができる。
【0016】
特に、海洋深層水の添加量を仕込用水に対して0.1重量%以上0.8重量%以下とすることにより、醸造水中のイオンの含有量を、醸造に適する範囲内でバランスのよいものとすることができる。これにより、糖化工程においては、糖化液のpHを適性範囲として、糖化酵素であるα−アミラーゼおよびβ−アミラーゼを活性化し、糖化を促進することができる。また、発酵工程においては、酵母を活性化して糖のアルコールへの変換を促進することができる。
【0017】
さらに、麦芽としてローストモルトを含むものを使用すれば、醸造水に含まれて水の酸性化を抑制する炭酸水素イオンが、ローストモルトに含まれるメラノイジンと結合して不溶化される。このため、糖化液のpHを適性範囲に調製することが容易となる。これにより、糖化工程の初期からpHを適性範囲に近づけることができ、糖化反応をいっそう促進することができる。
【0018】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0019】
[麦芽としてピルスナーモルトおよびローストモルトを用いた場合の実施例群]
<実施例1−1>
1.試験方法
1)原料
麦芽としては、ピルスナーモルト(色度2(EBC))、およびローストモルト(色度130(EBC))を用いた。また、仕込用水としては、富山県内で取水された地下水を使用した。また、海洋深層水としては、富山湾内において海面下321mの深海から取水されたものを使用した。
【0020】
2)糖化工程
麦芽として、ピルスナーモルトにローストモルトを1重量%配合したものを用いた。この麦芽をミルにより粉砕した。
仕込用水に、この仕込用水に対して0.1重量%の海洋深層水を添加したものを醸造水とした。この醸造水をあらかじめ50℃に加温し、粉砕された麦芽を投入した。
【0021】
麦芽と醸造水との混合液を撹拌しつつ、65℃で一定時間保持して、糖化を行わせた(ステップ1)。次に、この糖化液の温度を72℃まで上昇させ、一定時間保持して糖化を行わせた(ステップ2)。次いで、糖化液の温度をさらに76℃に上昇させ、一定時間保持してさらに糖化を行わせた(ステップ3)。最後に、糖化液の温度を77度に上昇させて、糖化を終了させた。
終了後の糖化液をろ過した後、ろ液を煮沸釜に送り、ホップを加えて60分間煮沸した。煮沸後、沈殿物を分取し、上清を冷却して麦汁を得た。
【0022】
麦芽投入前の醸造水、各ステップの終了時の糖化液、ろ過により得られた一番絞りの麦汁、および煮沸後の麦汁について、それぞれpHを測定した。
【0023】
3)発酵工程
前記2)で得られた麦汁に酵母を添加し、10℃前後の一定温度で発酵を行った。発酵開始後1日毎に、8日目までの発酵液の糖度を測定した。なお、主発酵が終了したと判定した時点で、温度を0℃に低下させた。
【0024】
4)後発酵工程およびろ過工程
前記3)で得られた発酵液を貯酒タンクに移し、0℃で21日間貯留して後発酵を行わせ、ビールを完成させた。
このビールについて、EBC標準分析法により色度を測定した。
【0025】
<実施例1−2>
仕込用水に添加する海洋深層水を、仕込用水に対して0.2重量%とした他は、実施例1−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0026】
<実施例1−3>
仕込用水に添加する海洋深層水を、仕込用水に対して0.3重量%とした他は、実施例1−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0027】
<実施例1−4>
仕込用水に添加する海洋深層水を、仕込用水に対して0.4重量%とした他は、実施例1−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0028】
<実施例1−5>
仕込用水に添加する海洋深層水を、仕込用水に対して0.5重量%とした他は、実施例1−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0029】
<実施例1−6>
仕込用水に添加する海洋深層水を、仕込用水に対して0.6重量%とした他は、実施例1−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0030】
<実施例1−7>
仕込用水に添加する海洋深層水を、仕込用水に対して0.7重量%とした他は、実施例1−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0031】
<実施例1−8>
仕込用水に添加する海洋深層水を、仕込用水に対して0.8重量%とした他は、実施例1−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0032】
<参考例1−9>
仕込用水に添加する海洋深層水を、仕込用水に対して7重量%とした他は、実施例1−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0033】
<比較例1>
海洋深層水を添加しない仕込用水を醸造水として使用した他は、実施例1−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0034】
[麦芽としてピルスナーモルトのみを用いた場合の実施例群]
<実施例2−1>
麦芽としてピルスナーモルトのみを用い、仕込用水に添加する海洋深層水を、仕込用水に対して0.1重量%として、実施例1−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0035】
<実施例2−2>
仕込用水に添加する海洋深層水を、仕込用水に対して0.2重量%とした他は、実施例2−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0036】
<実施例2−3>
仕込用水に添加する海洋深層水を、仕込用水に対して0.3重量%とした他は、実施例2−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0037】
<実施例2−4>
仕込用水に添加する海洋深層水を、仕込用水に対して0.4重量%とした他は、実施例2−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0038】
<実施例2−5>
仕込用水に添加する海洋深層水を、仕込用水に対して0.5重量%とした他は、実施例2−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0039】
<実施例2−6>
仕込用水に添加する海洋深層水を、仕込用水に対して0.6重量%とした他は、実施例2−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0040】
<実施例2−7>
仕込用水に添加する海洋深層水を、仕込用水に対して0.7重量%とした他は、実施例2−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0041】
<実施例2−8>
仕込用水に添加する海洋深層水を、仕込用水に対して0.8重量%とした他は、実施例2−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0042】
<参考例2−9>
仕込用水に添加する海洋深層水を、仕込用水に対して7重量%とした他は、実施例2−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0043】
<比較例2>
海洋深層水を添加しない仕込用水を醸造水として使用した他は、実施例2−1と同様にビールを製造し、測定を行った。
【0044】
[官能検査]
<実施例3>
大阪府内において、一般消費者から無作為に選ばれたパネラー25名が、上記実施例1−8(深層水を0.8%添加)、および比較例1(深層水添加なし)と同様にして製造されたビールを試飲し、評価を行った。評価は、コク、フルーティー、甘味、香り、麦芽風味、苦味の各項目について、それぞれ0(なし)から10(強い)までの10段階で評点をつけることにより行った。また、福井県内、富山県内、および東京都内でも、それぞれ78名、64名、39名のパネラーが同様に官能検査を行った。
【0045】
2.結果と考察
1)仕込用水、深層水、および醸造水中に含まれる成分
表1には、仕込用水および深層水に含まれる成分の含有量を、表2には、所定量の深層水を添加した醸造水に含まれる成分の含有量を示した。なお、表2には、通常のビールの製造に使用される醸造水に含まれる成分の管理値(醸造水管理値)を併せて示した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
表1より、本実施例で使用した深層水には、糖化酵素であるα−アミラーゼおよびβ−アミラーゼの活性化等に役立つとされるカルシウムイオン、糖化や発酵における酵素の作用に大きな意義をもつとされるカリウムイオンの他、酵母の代謝やビールの風味に影響を与えるナトリウムイオン、塩化物イオン、硫酸イオン等が多く含まれる一方、糖化を妨げるとともに酵母の活性を害する銅イオンの含有量は極めて少なく、ビール醸造のために好適であることがわかる。
【0049】
また、これらのイオンは、過剰に含まれればかえって糖化・発酵作用や風味に悪影響を及ぼす可能性もあるため、表2に示した醸造水管理値の範囲内であることが望ましい。表2によれば、適量の深層水を仕込用水に添加して醸造水を調製することにより、醸造水中のイオンの含有量が、醸造水管理値の範囲内でバランスのよいものとなっているといえる。
【0050】
2)糖化および発酵の促進効果
表3には、麦芽としてピルスナーモルトにローストモルトを配合したものを使用した場合の、糖化工程における麦芽投入前の醸造水、各ステップの終了時の糖化液、一番絞りの麦汁、および煮沸後の麦汁についてのpHを示した。また、図1には、ステップ1から煮沸後までの糖化液および麦汁のpHの変化を示した。
【0051】
表4には、麦芽としてピルスナーモルトのみを使用した場合における、糖化工程における麦芽投入前の醸造水、各ステップの終了時の糖化液、一番絞りの麦汁、および煮沸後の麦汁についてのpHを示した。また、図4には、ステップ1から煮沸後までの糖化液および麦汁pHの変化を示した。
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
表4および図2より、麦芽としてピルスナーモルトのみを使用した場合において、ステップ1では糖化液および麦汁のpHは、5.98〜5.96の範囲にあり、深層水を添加した場合と添加しない場合でほとんど差がなかった。一方、ステップ2の糖化液については、深層水を添加しない場合のpHが5.85であったのに対して、深層水を添加した場合には5.84〜5.8に低下していた。また、ステップ3の糖化液についても、深層水を添加しない場合のpHが5.79であったのに対して、深層水を添加した場合には5.77〜5.73に低下していた。
【0055】
ここで、糖化酵素であるα−アミラーゼおよびβ−アミラーゼの活性化のためには、おおよそpH5.8〜5.4が適性範囲であり、pH5.6付近で糖化を行わせることが最も好ましいと考えられている。本実施例においては、深層水を添加することにより、糖化液のpHを低下させ、糖化反応のための最適範囲に近づけることができることが分かった。
【0056】
このように糖化液のpHが低下した理由は明らかではないが、深層水中に含まれるカルシウム等のイオンにより、酵素の働きが活発化されたことによるものと考えられる。
【0057】
一方、表3および図1より、麦芽としてローストモルトを使用した場合においては、ステップ2の糖化液については、深層水を添加しない場合のpHが5.85であったのに対して、深層水を添加した場合には5.8〜5.74となり、上記したピルスナーモルトのみの場合と比べて、さらに最適pHに近づいていた。また、ステップ3の糖化液についても、深層水を添加しない場合のpHが5.79であったのに対して、深層水を添加した場合には5.77〜5.61に低下していた。これは、醸造水に含まれる炭酸水素イオンが、ローストモルトに含まれるメラノイジンと結合して不溶化されたことによるものと考えられる。すなわち、本実施例に用いた醸造水には、仕込用水由来の炭酸水素イオンが多量に含まれており、この炭酸水素イオンには水の酸性化を抑制する緩衝作用があるため、pHの低下を妨げる。しかし、ローストモルトに含まれるメラノイジンによってこれを取り除くことにより、pHを低下させて糖化反応のための最適範囲に調整することが容易となったと考えられる。
【0058】
このように、深層水とローストモルトの相乗効果によって、糖化工程の初期からpHを低下させ、糖化反応を促進できることが分かった。
【0059】
特に、深層水の添加量が0.1%〜0.8%の場合には、ステップ3においてpHは5.70〜5.61となり、良好な値を示していた。逆に、深層水の添加量を7%に増大させると、pHは5.77までしか低下しなかった。これは、深層水にナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等のアルカリイオンが多く含まれることから、多量に添加すれば醸造水のpHがアルカリ側に傾いてしまうためであると考えられる。
【0060】
さらに、得られた麦汁の糖度は、深層水を添加しない場合が12.3%であったのに対して、深層水を添加した場合には12.4〜12.6%であった(表5参照)。これより、深層水の添加によって糖化が促進されたことがわかった。
【0061】
表5および図3には、麦芽としてピルスナーモルトにローストモルトを配合したものを使用した場合の、発酵工程における糖度の変化を示した。
【0062】
【表5】
【0063】
表5および図3より、深層水を添加した場合には、添加しなかった場合と比べて、糖度の低下が早くなっていた。このことは、糖のアルコールへの変換が促進されていることを示しており、深層水によって酵母が活性化されているといえる。なお、詳細にはデータは示さないが、深層水を添加しなかった場合には、主発酵が7日で終了したのに対し、0.1%添加した場合には、主発酵が6.5日で終了し、発酵期間を0.5日短縮できることが分かった。さらに、深層水を0.2%以上添加した場合には、主発酵が6日で終了しており、発酵期間を1日短縮できることが分かった。
【0064】
さらに、発酵開始8日目のアルコール度は、深層水を添加しなかった場合には5%であった。これに対して、深層水を添加した場合には5.5%となっていた。このことからも、深層水の添加によって糖のアルコールへの変換が促進されたことが分かった。
【0065】
3)ビールの色度
表6および図4には、麦芽としてピルスナーモルトにローストモルトを配合したものを使用した場合、およびピルスナーモルトのみを使用した場合の、完成したビールの色度を示した。
【0066】
【表6】
【0067】
表6および図4より、深層水を添加した場合には、ビールの色が濃色化していることがわかる。これは、上述のように、ローストモルトに含まれるメラノイジンが醸造水に含まれる炭酸水素イオンと結合することによって濃色化することによるものと考えられる。したがって、本発明の製造方法は、主として濃色のビールを製造する場合に好ましく適用できるものであるといえる。
【0068】
4)官能検査
表7には、深層水を0.8%添加して製造されたビールについての、官能検査における評価を示した。表8には、深層水を添加せずに製造されたビールについての、官能検査における評価を示した。また、図5には、両者の評価の比較を表すグラフを示した。
【0069】
【表7】
【0070】
【表8】
【0071】
表8および図5より、深層水を添加しないビールについては、コクが非常に強く、甘味がやや強いものの、苦味、麦芽風味および香りが弱いビールとなっていた。一方、表7および図5より、深層水を0.8%添加して製造されたビールについては、コク、甘味、香り、麦芽風味および苦味のバランスがとれた、風味のよいビールとなっていることがわかった。
【0072】
以上の結果から明らかなように、海洋深層水を添加してビールの製造を行うことにより、糖化および発酵が促進され、風味の豊かなビールを製造することができる。さらに、ローストモルトを配合した麦芽を使用することにより、糖化および発酵をいっそう促進することができる。
【0073】
なお、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態によって限定されるものではなく、均等の範囲にまで及ぶものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】麦芽としてピルスナーモルトにローストモルトを配合したものを使用した場合の、糖化工程におけるステップ1から煮沸後までの糖化液および麦汁のpHの変化を示すグラフ
【図2】麦芽としてピルスナーモルトのみを使用した場合の、糖化工程におけるステップ1から煮沸後までの糖化液および麦汁のpHの変化を示すグラフ
【図3】麦芽としてピルスナーモルトにローストモルトを配合したものを使用した場合の、発酵工程における糖度の変化を示すグラフ
【図4】麦芽としてピルスナーモルトにローストモルトを配合したものを使用した場合、およびピルスナーモルトのみを使用した場合の、深層水の添加量と色度との関係を示すグラフ
【図5】深層水を0.8%添加して製造されたビール、および、深層水を添加せずに製造されたビールについての、官能検査における評価の比較を示すグラフ
Claims (3)
- 麦芽を含む原料と仕込用水とを混合し、加温して糖化させることにより麦汁を得る糖化工程と、前記麦汁に酵母を添加して発酵させる発酵工程とを経るビールの製造方法であって、
前記糖化工程において、前記仕込用水に海洋深層水を前記仕込用水に対して0.1重量%以上0.8重量%以下の割合で添加することを特徴とするビールの製造方法。 - 前記麦芽が90℃以上で焙煎及び/または焙燥されたモルトを含むことを特徴とする請求項1に記載のビールの製造方法。
- 前記麦芽がローストモルトを含むことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のビールの製造方法。
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JP2003169657A (ja) | 2003-06-17 |
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