JP2019010128A - 麦芽とホップに由来する香気を共存させた発酵麦芽飲料 - Google Patents

麦芽とホップに由来する香気を共存させた発酵麦芽飲料 Download PDF

Info

Publication number
JP2019010128A
JP2019010128A JP2018202988A JP2018202988A JP2019010128A JP 2019010128 A JP2019010128 A JP 2019010128A JP 2018202988 A JP2018202988 A JP 2018202988A JP 2018202988 A JP2018202988 A JP 2018202988A JP 2019010128 A JP2019010128 A JP 2019010128A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
malt
hop
chromaticity
dark
fermented
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2018202988A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6790039B2 (ja
Inventor
村上 敦司
Atsushi Murakami
敦司 村上
葉子 野呂
Yoko Noro
葉子 野呂
由美子 川崎
Yumiko Kawasaki
由美子 川崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kirin Co Ltd
Original Assignee
Kirin Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kirin Co Ltd filed Critical Kirin Co Ltd
Priority to JP2018202988A priority Critical patent/JP6790039B2/ja
Publication of JP2019010128A publication Critical patent/JP2019010128A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6790039B2 publication Critical patent/JP6790039B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Abstract

【課題】濃色麦芽に由来するネガティブ香気が低減するとともに、より嗜好性の高い好ましい香気を有する発酵麦芽飲料の提供。【解決手段】濃色麦芽を原料として得られる発酵麦芽飲料であって、色度(EBC)に対するリナロール濃度(ppb)の比率が0.48以上である、発酵麦芽飲料。【選択図】なし

Description

本発明は、ホップ香気を有する発酵麦芽飲料およびその製法に関する。
高い色度の発泡性麦芽発酵飲料を得るためには、原料としてカラメル麦芽または黒麦芽(以下、まとめて「濃色麦芽」という)が使用される(非特許文献1)。これらの濃色麦芽は、淡色麦芽の通常の製麦方法に高温の焙煎工程を加え、色度を高めることで製造される。濃色麦芽を使用したビールの製造では、一般的に、仕込み工程において濃色麦芽と焙煎していない淡色麦芽とを混合して糖化する。得られたビールには、色の付与と同時に、焙煎で生成されるカラメル香やロースト香も付与されるが、嗜好によっては、醤油様、コゲ様の、甘く重いネガティブな香りと捉えられ、必ずしも望ましいとはいえない。
一方で、ホップはビールに爽快な苦味と香りを付与する。ホップに由来する香りはビールのキャラクター形成に大きな影響を与えている。香気特徴を表現する言葉として、フローラル、スパイシー、シトラス、フルーティー、ホッピー、スパイシー、マスカット等が一般的に用いられている(非特許文献2〜6)。
ホップの使用方法によってホップ香気の強弱を制御することができる。通常ホップは、煮沸中の麦汁に添加するが、よりホップ香気を強調するために、煮沸終了直前、あるいはワーループールタンク静置中に添加し、できるだけ熱を加えないことで実現できる。以上の仕込み工程中でのホップ使用は、「ケトルホッピング」とも言われている。
さらにホップ香気を強調する場合は、「ドライホッピング」と言われる発酵中の低温の若ビールにホップを添加する方法もある(非特許文献7)。このドライホッピングしたビールは、ホップの香味を極端に強調できる一方で、ケトルホッピングしたビールに比べ、香味は、刺激感が強くかつ粗い官能評価上の印象を与える。
さらに、「ドライホッピング」のネガティブな香気を改良しうるホップの使用技術が知られている(特許文献1〜3)。
しかし、麦芽由来の香気とホップ由来の香気の相互作用、さらに具体的には、濃色麦芽使用ビールの醤油様、コゲ様の甘く重いネガティブ香気とホップに由来する香気との相互作用について、これまでに知見は得られていなかった。
ビール醸造技術(宮地秀雄 食品産業新聞社 1999年12月28日発行)、p190−196 T. Kishimoto et al., J. Agric. Food Chem., 54, 8855-8861, 2006 G. T. Eyres et al., J. Agric. Food Chem., 55, 6252-6261, 2007 V. E. Peacock, et al., J. Agric. Food Chem., 28, 774-777, 1980 K. C. Lam et al., J. Agric. Food Chem, 34, 763-770, 1986 V. E. Peacock et al., J. Agric. Food Chem., 29, 1265-1269, 1981 「醸造物の成分」(財団法人日本醸造協会:平成11年12月10日発行)、p.259〜261
特開2013−132272号公報 特開2013−132274号公報 特開2013−132275号公報
本発明は、濃色麦芽に由来するネガティブ香気が低減するとともに、より嗜好性の高い好ましい香気を有する発酵麦芽飲料を提供することを目的とする。
本発明者らは、色度に対するリナロール濃度の割合を所定の範囲に制御することにより、濃色麦芽を使用した発酵麦芽飲料の醤油様、コゲ様の甘く重いネガティブ香気と、ホップに由来する香気を共存させることによって相互作用を発生させ、濃色麦芽由来ネガティブ香気をより嗜好性の高い好ましい香気へ変化させることができることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)濃色麦芽を原料として得られる発酵麦芽飲料であって、色度(EBC)に対するリナロール濃度(ppb)の比率が0.48以上である、発酵麦芽飲料。
(2)色度(EBC)に対するリナロール濃度(ppb)の比率が0.63以上である、前記(1)の発酵麦芽飲料。
(3)リナロール濃度が60ppb以上である、前記(1)または(2)の発酵麦芽飲料。
(4)色度が40EBC以上である、前記(1)〜(3)のいずれかの発酵麦芽飲料。
(5)原料として濃色麦芽およびホップを用いて発酵麦芽飲料を製造する方法であって、濃色麦芽が仕込み工程において添加され、前記ホップが、65℃〜70℃の温度で10〜60分間という条件下で加熱処理され、加熱処理されたホップが酵母添加の直前に添加される、方法。
(6)濃色麦芽が糖化工程において添加される、前記(5)の方法。
(7)濃色麦芽が、カラメル麦芽および/または黒麦芽である、前記(5)または(6)の方法。
(8)ホップが、ハラタウトラディッション種、ミレニアム種、ナゲット種、ヘルスブルッカー種、ペルレ種およびザーツ種からなる群から選択される、前記(5)〜(7)のいずれかの方法。
本発明によれば、濃色麦芽を原料として得られる発酵麦芽飲料において、濃色麦芽に由来する醤油様、コゲ様の甘く重いネガティブ香気(望ましくない香気)を低減させるとともに、より嗜好性の高い好ましい香気を付与することが可能となる。よって、本発明によれば、いわゆる黒ビールに特有のネガティブ香気を低減させ、爽快さを増強することができる。このような発酵麦芽飲料はこれまでに知られていないことから、本発明は需要者から求められる新しいタイプの発酵麦芽飲料を提供できる点で有利である。
発明の具体的説明
本明細書において、「ppb」および「ppm」は、質量/容量(w/v)の濃度を表す。
本明細書において「色度」とは、EBC(European Brewery Convention)法によって測定される色度を意味し、単位は「EBC」である。
本明細書において「濃色麦芽」とは、麦から麦芽を製造する際の焙煎を比較的高い温度(例えば約120℃)で行い、焦がして濃い褐色にした麦芽を意味する。これに対し、「淡色麦芽」とは、麦から麦芽を製造する際の焙煎を80℃程度の温度上昇に抑えて焦がさないように製造された淡い色の麦芽を意味する。
発酵麦芽飲料
本発明の発酵麦芽飲料は、濃色麦芽を原料として得られる発酵麦芽飲料であり、色度(EBC)に対するリナロール濃度(ppb)の比率、すなわちリナロール濃度(ppb)/色度(EBC)、が0.48以上、好ましくは0.63以上であることを特徴とする。
本発明の発酵麦芽飲料中のリナロール(Linalool)の濃度は、質量分析計付きガスクロマトグラフィー(GC/MS)により測定することができる。このGC/MS分析は、具体的には、次のように実施することができる。まず、発酵麦芽飲料中の香気成分をC18固相カラムで抽出し、ジクロロメタン溶出画分を分析用試料として用いる。定量は内部標準法によって行い、内部標準物質にはボルネオール(Borneol)を用い、分析用試料中25ppbになるよう添加する。GC/MSにおけるホップ香気成分の分析条件は、後述の実施例に記載の表1に従うことができる。
本発明の効果は、後述の実施例においても実証されているように、0.48以上のリナロール濃度(ppb)/色度(EBC)を有するサンプルにおいて広く認められている。
よって、リナロール濃度(ppb)/色度(EBC)の上限値は特に制限されるものではないが、好ましくは5、より好ましくは3、さらに好ましくは2.5とされる。
また、本発明の効果は、後述の実施例においても実証されているように、60ppb以上のリナロール濃度を有するサンプルにおいて広く認められている。よって、本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の発酵麦芽飲料におけるリナロール濃度は60ppb以上とされる。リナロール濃度の上限値は特に制限されるものではないが、好ましくは500ppb、より好ましくは400ppbとされる。
さらに、本発明の効果は、後述の実施例においても実証されているように、40EBC以上の色度を有するサンプルにおいて広く認められている。よって、本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の発酵麦芽飲料の色度は40EBC以上とされる。色度の上限値は特に制限されるものではないが、好ましくは300EBC、より好ましくは200EBCとされる。
本発明において「発酵麦芽飲料」とは、炭素源、窒素源および水などを原料として酵母により発酵させた飲料であって、原料として少なくとも麦芽を使用した飲料を意味する。
このような発酵麦芽飲料としては、ビール、発泡酒、リキュール(例えば、酒税法上、「リキュール(発泡性)(1)」に分類される飲料)などが挙げられる。本発明による発酵麦芽飲料は、好ましくは、原料として少なくとも水、ホップ、および麦芽(濃色麦芽を含む)を使用した発酵麦芽飲料とされる。
発酵麦芽飲料の製造
本発明の発酵麦芽飲料は、濃色麦芽の配合量を調節することによって色度を調整するとともに、リナロールを所定の濃度となるように添加することにより製造することができる。
リナロールの供給源は特に限定されるものではなく、市販のもの、合成して得られたもの、あるいは天然物から単離・精製されたものいずれを用いてもよい。また、リナロールの供給源として、ホップ抽出物を用いることもできる。例えば、常法により製造された、特定の色度を有する発酵麦芽飲料に、ホップ抽出物を混合することにより、本発明の発酵麦芽飲料を製造することができる。
本発明の発酵麦芽飲料は、また、濃色麦芽を原料の一部として発酵麦芽飲料を醸造する際に、所定の条件下で加熱処理されたホップを酵母添加の直前に添加することにより製造することができる。このような製法は過去に報告されておらず、よって、本発明の他の態様を構成する。従って、本発明の他の態様によれば、原料として濃色麦芽およびホップを用いて発酵麦芽飲料を製造する方法が提供され、該方法では、濃色麦芽が仕込み工程(特に糖化工程)において添加され、前記ホップが、65℃〜70℃(特に約65℃)の温度で10〜60分間という条件下で加熱処理され、加熱処理されたホップが酵母添加の直前に添加される。
具体的には、本発明の発酵麦芽飲料は、少なくとも水、麦芽(濃色麦芽および淡色麦芽の混合物)、およびホップを含んでなる発酵前液を発酵させることにより製造することができる。例えば、麦芽(濃色麦芽および淡色麦芽の混合物)等の醸造原料から調製された麦汁(発酵前液)に、加熱処理されたホップおよび発酵用ビール酵母を添加して発酵を行い、所望により発酵液を低温にて貯蔵した後、ろ過工程により酵母を除去することにより、本発明の発酵麦芽飲料を製造することができる。
上記製造手順において、麦汁の製造は常法に従って行うことができる。例えば、醸造原料と水の混合物を糖化し、濾過して麦汁を得、その麦汁を煮沸し、煮沸した麦汁を冷却することにより麦汁を調製することができる。
使用する濃色麦芽の種類は特に制限されるものではないが、好ましくはカラメル麦芽、黒麦芽、またはこれらの混合物とされる。
使用するホップとしては、リナロールを比較的高濃度で含むものであればよく、特に制限されないが、例えば、ハラタウトラディッション種、ミレニアム種、ナゲット種、ヘルスブルッカー種、ペルレ種およびザーツ種が挙げられ、特に好ましくはハラタウトラディッション種とされる。
本発明による発酵麦芽飲料の製造方法では、ホップ、麦芽以外に、米、とうもろこし、こうりゃん、馬鈴薯、でんぷん、糖類(例えば、液糖)等の酒税法で定める副原料や、タンパク質分解物、酵母エキス等の窒素源、香料、色素、起泡・泡持ち向上剤、水質調整剤、発酵助成剤等のその他の添加物を醸造原料として使用することができる。また、未発芽の麦類(例えば、未発芽大麦(エキス化したものを含む)、未発芽小麦(エキス化したものを含む))を醸造原料として使用してもよい。得られた発酵麦芽飲料は、(i)減圧若しくは常圧で蒸留してアルコールおよび低沸点成分を除去するか、あるいは(ii)逆浸透(RO)膜にてアルコールおよび低分子成分を除去することによって、非アルコール発酵麦芽飲料とすることもできる。
以下の実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
分析法1(色度)
以下の実施例において、飲料の色度はEBC(European Brewery Convention)法(色度の単位は「EBC」)によって測定した。
分析法2(リナロール濃度)
以下の実施例において、飲料中のリナロール濃度は、質量分析計付きガスクロマトグラフィー(GC/MS)によって算出した。
具体的には、サンプル中の香気成分をC18固相カラムで抽出し、ジクロロメタン溶出画分をGC/MSに供した。定量は内部標準法を用いた。内部標準物質にはボルネオール(Borneol)を用い、試料中25ppbになるよう添加した。GC/MSにおけるホップ香気成分の分析条件は以下のとおりである。
定量値は、基本的にppbを単位とする濃度として算出した。
分析法3(イソα酸濃度)
以下の実施例において、飲料中のイソα酸の濃度は、EBC(European Brewery Convention)法によって測定した。具体的には、以下に示す条件での高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた。
まず、HPLC分析のための試料を調製するため、試飲サンプル10mlに1mlの3N塩酸を加えた後、20mlのイソオクタンを加え、振とうした後に静置した。得られた溶液は、水溶層とイソオクタンから成る有機溶媒層の2層に分離し、イソオクタン有機溶媒層から10mlを採取した。採取した有機溶媒層の液体を、窒素ガス噴霧下で完全に乾燥させて固化した。これに、内部標準物質として、βフェニルカルコン12mgを加えたリン酸メタノール溶液(リン酸:メタノール=40ml:400ml)を1ml加え、溶解したものをHPLC分析用試料とした。HPLCの分析条件は、以下の通りである。
HPLC用逆相カラム(Nucleosil 100-5, C18;4.0×250mm;Agilent Technologies社製)を用い、蒸留水27%、メタノール72%、およびリン酸1%からなる移動相Aと、メタノール99.0%およびリン酸1.0%からなる移動相Bを、1ml/分の一定流速で、運転開始から10分までを移動相Aを100%、10分から40分の間に移動相Aから移動相Bに置換し、40分以降を移動相B100%で送液し、270nmの吸光度を測定した。ここで、イソα酸の同属体成分が異なるピークとして検出されるため(「醸造物の成分」(財団法人日本醸造協会:平成11年12月10日発行)、p.250〜259)、全ピークの総和面積を求めた。定量値は、基本的にppmを単位とする濃度として算出した。
分析法4(官能評価)
以下の実施例において、飲料の官能評価は3名の訓練されたパネラーによって行われた。官能評価では、甘く、重い香気印象を、1(感じない)、2(少し感じる)、3(感じる)、4(やや強く感じる)および5(強く感じる)の5段階で評価した。ホップ香気が加わることで得られた爽快さも、1(感じない)、2(少し感じる)、3(感じる)、4(やや強く感じる)および5(強く感じる)の5段階で評価した。総合的な官能評価は、表3の通り、4段階で行った。
実施例1:市販品へのホップ抽出物添加試験
本実施例では、発酵麦芽飲料の色度およびホップ香気成分と該飲料の風味との関係を解明するため、濃色麦芽を用いて製造された市販の発泡性発酵麦芽飲料に様々な量のホップ抽出物を添加し、各サンプルについて、色度およびリナロール濃度を測定し、官能評価を行った。
(1)ホップ抽出物の製造
フローラル香を有するドイツ産ハラタウトラディッション(Hopsteiner社)のペレット40gを1Lの水に加え、室温で3時間撹拌抽出した。ろ紙でろ過した後、糖度10度になるように糖(グルコース、シュークロース、マルトースなど)を加え、80℃で20分保持した。その後、10℃まで冷却した後、ビール醸造用酵母を加え、20℃で発酵させた。ダイアセチル等のオフフレーバーの消失を官能評価で確認した後、発酵液を冷却して0℃に1日置き、ろ紙でろ過した後、常圧蒸留によって回収し、ホップ抽出物を製造した。
(2)色度が100EBC以上の発酵麦芽飲料についての試験
濃色麦芽を使用した市販の発泡性発酵麦芽飲料(色度180EBC)に、上記(1)において製造したホップ抽出物を様々な濃度で添加し、各サンプルについて官能評価を行った。また、各サンプルについて、色度およびリナロール濃度を測定した。その結果を表4に示す。
対照の市販品は、醤油様、コゲ様の香気が強く、甘く、重い香気印象であった。そこにホップ抽出物を添加し、ホップ由来のホップ香気を添加したところ、添加量が増えるにしたがって、表4に示した通り、甘く、重い香気が減り、爽快さが増加し、好ましい香味印象を得た。
対照となる市販品そのものの官能評価結果では、甘く、重い香気が5と強く、爽快さがなく、総合評価は好ましくないとの結果となった。
ホップ抽出物を添加した試験区1では、甘く、重い香気が3と感じる程度に減り、爽快さも3(感じる)との結果となり、総合評価は好ましいとの結果となった。また、試験区1では、ホップ抽出物の添加によってホップに由来する香気成分リナロールの濃度が79.2ppbとなり、対照の5.1ppbに比べて著しく増加していた。
試験区2では、さらにホップ抽出物の添加量を増やした。その結果、甘く、重い香気が3と感じる程度であったが、爽快さが4となり、総合評価はより好ましいとの結果となった。また、試験区2では、ホップ抽出物の添加によってホップに由来する香気成分リナロールの濃度が101.1ppbとなった。
試験区3および4では、さらにホップ抽出物の添加量を増やした。その結果、甘く、重い香気が2と弱くなる半面、爽快さは4または5となり、総合評価はより好ましいとの結果となった。また、試験区3および4では、ホップ抽出物の添加によってホップに由来する香気成分リナロールの濃度がそれぞれ173.6ppb、288.7ppbとなった。
これらの結果は、濃色麦芽由来の醤油様、コゲ様の香気が強く、甘く、重い香気との印象が、ホップ由来香気を強調することによって、爽快さを伴った好ましい香気へ変化したことを示す。
(3)色度が100EBC未満の発酵麦芽飲料についての試験
色度を100未満に低減させた場合の試験を行うため、濃色麦芽を使用していない発泡性発酵麦芽飲料(色度6EBC)を色度180EBCの発泡性発酵麦芽飲料に混ぜてサンプルを作製し、上記(1)において製造したホップ抽出物を様々な濃度で添加し、各サンプルについて官能評価を行った。また、各サンプルについて、色度およびリナロール濃度を測定した。その結果を表5に示す。
試験区5は、色度を50台に調整したのみで、ホップ抽出物を添加していないサンプルである。試験区5では、醤油様、コゲ様の風味を感じ、甘く、重い香気は3と感じる一方、爽快さが1(感じない)と評価され、総合評価として好ましくないと評価された。また、試験区5では、ホップに由来する香気成分リナロールの濃度は3.2ppbであった。
試験区6および7では、色度を40から50台に調整するとともに、異なる量のホップ抽出物を添加した。その結果、両試験区ともに、甘く、重い香気が2と弱くなる半面、爽快さは4となり、総合評価はより好ましいとの結果となった。また、試験区6および7では、ホップ抽出物の添加によって、ホップに由来する香気成分リナロールの濃度がそれぞれ64.1ppb、105.8ppbとなった。
試験区8および9では、色度を80から90台に調整するとともに、異なる量のホップ抽出物を添加した。その結果、甘く、重い香気が2と弱くなる半面、爽快さは4または5となり、総合評価はより好ましいとの結果となった。また、試験区8および9では、ホップ抽出物の添加によって、ホップに由来する香気成分リナロールの濃度がそれぞれ86.8ppb、197.7ppbとなった。
これらの結果によれば、発酵麦芽飲料の色度を100EBC未満に調整するだけでは、濃色麦芽由来の醤油様、コゲ様の香気が強く、甘く、重い香気との印象があることが分かった。さらに、ホップ由来香気を強調することによって、爽快さを伴った好ましい香気へ変化することが明らかとなった。
(4)まとめ
上記の(2)および(3)で得られた表4および表5のデータを、リナロール(ppb)/色度(EBC)の順に並べ替えて、以下の表6を作成した。
その結果、総合評価が好ましいとなるのは、リナロール濃度/色度が0.48以上のサンプルであり、さらに好ましい結果となるのはリナロール濃度/色度が0.63以上のサンプルであった。また、興味深いことに、リナロール濃度が60ppb以上のサンプルにおいて好ましい官能評価結果が得られることが分かった。さらに、表6によれば、好ましいサンプルに関するこれらの基準は、色度が40EBC以上のサンプルに対して広く適用できることが分かる。
実施例2:発酵麦芽飲料に60ppb以上のリナロール濃度を与えるための製法の検討
実施例1で述べたように、リナロール濃度が60ppb以上、かつリナロール濃度(ppb)/色度(EBC)が一定の値以上という条件下において、濃色麦芽を原料とする発酵麦芽飲料の甘く、重い香気が減り、爽快さが増加し、好ましい香味印象を得ることができた。そこで、発酵麦芽飲料に60ppb以上のリナロール濃度を付与できるホップの使用条件を検討した。
(1)試飲サンプルの調製
試飲サンプルは、次のように調製した。まず、淡色麦芽に濃色麦芽を混ぜ、通常のインフュージョン糖化を行った。麦汁糖度12.5度に調整した仕込麦汁(麦芽使用比率100%)をサンプルとして煮沸試験に用いた。電気ヒーターで麦汁を加温煮沸し、煮沸強度は一定で、60分間で蒸発率が10%となるようにコントロールして行った。その後、90℃で60分間、麦汁を静置した(ワールプール静置を想定)。ろ紙でろ過した後、氷水で冷却した麦汁にビール酵母を添加し、1週間主発酵、4日間後発酵を行なった。得られたサンプルを試飲用貯酒サンプルとした。
ホップ品種としては、ドイツ産ハラタウトラディッション(Hopsteiner社)を使用した。ホップの使用量は、1〜4g/Lの濃度とした。添加前に、ホップは、添加量の10倍量の蒸留水と混合した後、65℃で10分間〜60分間、恒温水槽で処理し、直ちに氷水中で15℃まで冷却した。このように前処理したホップは、酵母添加の直前に仕込み液(発酵前液)に添加した。また、対照として、麦汁静置中に未処理のホップを添加する試験区も設けた。
(2)分析結果
上記(1)で得られた試飲サンプルについて、リナロール濃度およびイソα酸濃度の測定、および官能評価を行った。麦汁静置中に未処理のホップを添加した試験区の分析結果を表7に、前処理したホップを発酵前液に添加した試験区の分析結果を表8に示す。
ホップを麦汁静置中に添加した場合(表7)、60ppb以上のリナロール濃度を得るためには3g/L程度のホップが必要となる。一方で、静置中の麦汁は90℃程度の熱を持つため、ホップのα酸がイソα酸に異性化し、3g/Lのホップを用いた場合にはイソα酸が106ppmと異常に高くなり、飲用は困難となる。
これに対し、酵母添加直前にホップを添加した場合(表8)、60ppb以上のリナロール濃度を得るためには、1.5g/Lのホップ使用量で十分である。表7に比べてホップの使用量が少なくなるのは、酵母添加直前の低温(15℃)での添加のため、香気成分の揮発が起こらないことが原因と考えられる。また、低温ではホップのα酸がイソα酸に異性化しないため、1.5g/Lのホップ使用量でイソα酸が4.5ppm程度となった。このイソα酸濃度は、ホップに若干含まれるイソα酸に起因するものと考えられる。イソα酸濃度は、ホップ使用量4g/Lでも16.5ppmと、十分許容できる範囲にあることを確認した。
以上の分析結果から、ホップを麦汁静置中に添加する場合、ホップ香気の強度を増加させようとすると苦み成分であるイソα酸も同時に増加するため、香味を設計・制御する上では極めて大きな制約が生ずることが分かる。一方で、酵母添加直前でのホップ添加の場合は、このような制約を大幅に緩和することができるものと考えられる。

Claims (8)

  1. 濃色麦芽を原料として得られる発酵麦芽飲料であって、色度(EBC)に対するリナロール濃度(ppb)の比率が0.48以上である、発酵麦芽飲料。
  2. 色度(EBC)に対するリナロール濃度(ppb)の比率が0.63以上である、請求項1に記載の発酵麦芽飲料。
  3. リナロール濃度が60ppb以上である、請求項1または2に記載の発酵麦芽飲料。
  4. 色度が40EBC以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発酵麦芽飲料。
  5. 原料として濃色麦芽およびホップを用いて発酵麦芽飲料を製造する方法であって、
    濃色麦芽が仕込み工程において添加され、
    前記ホップが、65℃〜70℃の温度で10〜60分間という条件下で加熱処理され、加熱処理されたホップが酵母添加の直前に添加される、方法。
  6. 濃色麦芽が糖化工程において添加される、請求項5に記載の方法。
  7. 濃色麦芽が、カラメル麦芽および/または黒麦芽である、請求項5または6に記載の方法。
  8. ホップが、ハラタウトラディッション種、ミレニアム種、ナゲット種、ヘルスブルッカー種、ペルレ種およびザーツ種からなる群から選択される、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
JP2018202988A 2018-10-29 2018-10-29 麦芽とホップに由来する香気を共存させた発酵麦芽飲料 Active JP6790039B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018202988A JP6790039B2 (ja) 2018-10-29 2018-10-29 麦芽とホップに由来する香気を共存させた発酵麦芽飲料

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018202988A JP6790039B2 (ja) 2018-10-29 2018-10-29 麦芽とホップに由来する香気を共存させた発酵麦芽飲料

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014240421A Division JP6661266B2 (ja) 2014-11-27 2014-11-27 麦芽とホップに由来する香気を共存させた発酵麦芽飲料

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019010128A true JP2019010128A (ja) 2019-01-24
JP6790039B2 JP6790039B2 (ja) 2020-11-25

Family

ID=65227561

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018202988A Active JP6790039B2 (ja) 2018-10-29 2018-10-29 麦芽とホップに由来する香気を共存させた発酵麦芽飲料

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6790039B2 (ja)

Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003169657A (ja) * 2001-12-04 2003-06-17 Iki Iki Ji-Beer:Kk ビールの製造方法
JP2008043292A (ja) * 2006-08-21 2008-02-28 Suntory Ltd 着色麦芽を用いた麦芽使用飲料の製造方法
JP2008245606A (ja) * 2007-03-30 2008-10-16 Asahi Breweries Ltd フルフリルチオールを高濃度に含有する発酵アルコール飲料およびその製造方法
JP2011139699A (ja) * 2009-12-11 2011-07-21 Sanei Gen Ffi Inc 風味向上剤
JP2013132275A (ja) * 2011-12-27 2013-07-08 Kirin Brewery Co Ltd ホップ香気を強調した発酵麦芽飲料の製造方法
JP2013132274A (ja) * 2011-12-27 2013-07-08 Kirin Brewery Co Ltd スパイシーでフルーティーなホップ香気を強調した発酵麦芽飲料
JP2013132272A (ja) * 2011-12-27 2013-07-08 Kirin Brewery Co Ltd フルーティーなホップ香気を強調した発酵麦芽飲料
JP2013188160A (ja) * 2012-03-13 2013-09-26 Sapporo Breweries Ltd 麦芽飲料およびその製造方法、ならびに不快な香味のマスキング方法
JP2014000010A (ja) * 2012-06-15 2014-01-09 Asahi Breweries Ltd 低アルコール発酵麦芽飲料の製造方法

Patent Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003169657A (ja) * 2001-12-04 2003-06-17 Iki Iki Ji-Beer:Kk ビールの製造方法
JP2008043292A (ja) * 2006-08-21 2008-02-28 Suntory Ltd 着色麦芽を用いた麦芽使用飲料の製造方法
JP2008245606A (ja) * 2007-03-30 2008-10-16 Asahi Breweries Ltd フルフリルチオールを高濃度に含有する発酵アルコール飲料およびその製造方法
JP2011139699A (ja) * 2009-12-11 2011-07-21 Sanei Gen Ffi Inc 風味向上剤
JP2013132275A (ja) * 2011-12-27 2013-07-08 Kirin Brewery Co Ltd ホップ香気を強調した発酵麦芽飲料の製造方法
JP2013132274A (ja) * 2011-12-27 2013-07-08 Kirin Brewery Co Ltd スパイシーでフルーティーなホップ香気を強調した発酵麦芽飲料
JP2013132272A (ja) * 2011-12-27 2013-07-08 Kirin Brewery Co Ltd フルーティーなホップ香気を強調した発酵麦芽飲料
JP2013188160A (ja) * 2012-03-13 2013-09-26 Sapporo Breweries Ltd 麦芽飲料およびその製造方法、ならびに不快な香味のマスキング方法
JP2014000010A (ja) * 2012-06-15 2014-01-09 Asahi Breweries Ltd 低アルコール発酵麦芽飲料の製造方法

Non-Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
COLOR CHEMISTRY:RED AND WHITEBEER FOR ST.GEORGE'S , JPN6018029642, ISSN: 0004363213 *
MBAA TQ, vol. 51, no. 2, JPN6018029640, January 2014 (2014-01-01), pages 33 - 41, ISSN: 0004363212 *
STANDARD REFERENCE METHOD,掲載時期:2007年6月10日<URL: HTT, JPN6018029645, ISSN: 0004363214 *
ビール醸造技術, JPN6018029647, 28 December 1999 (1999-12-28), pages 190 - 195, ISSN: 0004363216 *
日本醸造協会誌, vol. 第104巻,第3号, JPN6018029646, 2009, pages 157 - 169, ISSN: 0004363215 *

Also Published As

Publication number Publication date
JP6790039B2 (ja) 2020-11-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5420629B2 (ja) フルーティーなホップ香気を強調した発酵麦芽飲料
JP5420630B2 (ja) スパイシーでフルーティーなホップ香気を強調した発酵麦芽飲料
JP6661266B2 (ja) 麦芽とホップに由来する香気を共存させた発酵麦芽飲料
JP6294660B2 (ja) 発酵麦芽飲料
JP6282463B2 (ja) 発酵麦芽飲料
JP2018110589A (ja) 発酵麦芽飲料
WO2013099535A1 (ja) ホップ香気を強調した発酵麦芽飲料の製造方法
JP2015154746A (ja) 発酵麦芽飲料
JP6267500B2 (ja) ホップ香気を強調し、かつ渋味を低減した発酵麦芽飲料およびその製法
JP6420044B2 (ja) 発酵麦芽飲料
JP6138025B2 (ja) ホップ香気を強調し、かつ渋味を低減した発酵麦芽飲料
JP6294661B2 (ja) 発酵麦芽飲料
JP6947528B2 (ja) 発酵アルコール飲料及びその製造方法
JP6790039B2 (ja) 麦芽とホップに由来する香気を共存させた発酵麦芽飲料
WO2023276444A1 (ja) 低アルコールビールテイスト飲料
JP6498421B2 (ja) 複数の麦芽に由来する香気を共存させた発酵飲料
JP6571311B2 (ja) 発酵麦芽飲料
JP6420045B2 (ja) 発酵麦芽飲料
JP6278699B2 (ja) 発酵麦芽飲料
JP6371070B2 (ja) 発酵麦芽飲料
JP7245187B2 (ja) 発酵麦芽飲料の製造方法
JP6381924B2 (ja) 発酵麦芽飲料
JP6284360B2 (ja) 発酵麦芽飲料
JP6823144B1 (ja) ビールテイスト飲料
JP6823145B1 (ja) ビールテイスト飲料

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20181128

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20181128

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20190723

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190823

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20191017

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191218

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200512

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200615

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20201009

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20201104

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6790039

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250