JP2004298109A - アルコール飲料の製造方法及びアルコール飲料 - Google Patents

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Ikuya Yoshida
郁也 吉田
Atsutake Kawamura
篤毅 河村
Yoshihiro Takada
善浩 高田
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  • Distillation Of Fermentation Liquor, Processing Of Alcohols, Vinegar And Beer (AREA)
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Abstract

【課題】酵母以外の微生物、特に担子菌を用いてアルコール発酵を行ったアルコール飲料の製造方法において、比較的低温で、迅速、簡易かつ安価に発酵させることができるアルコール飲料の製造方法、及び該製造方法により得られるアルコール飲料を提供する。
【解決手段】発酵工程が、まず被発酵物に担子菌を添加してなされる第一発酵工程と、該第一発酵工程の開始後に酵母を添加してなされる第二発酵工程と、からなることを特徴とするアルコール飲料の製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルコール飲料の製造方法、及び該方法により製造したアルコール飲料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルコール飲料の製造工程において、発酵段階は、原料の麦汁や果汁からアルコールを生成する点で、極めて重要な段階である。この発酵は、通常、麦芽アルコール飲料(例えばビール、発泡酒)、又はワイン、リキュール若しくはスピリッツ等の果実酒の製造工程においては、酵母のみを添加してなされる単発酵であり、日本酒の製造工程においては、麹菌及び酵母を添加してなされる並行複発酵である。
【0003】
上記単発酵アルコール飲料について、麦芽アルコール飲料の場合は麦芽、或いは麦芽及び副原料からなる澱粉原料を糖化させて得られる麦汁(前記副原料を使用する他の原料として、糖化麦芽液に液糖を加えて麦汁とする場合もある)に、ワインの場合は果物を破砕して得た果汁、或いは該果汁と液糖とからなる被発酵原料(以下、単に果汁と称す。)に、夫々ビール酵母或いはワイン酵母を添加して発酵を行う(以下、この工程を発酵工程と称す。)。
【0004】
酵母は、発酵工程において、アルコール発酵により被発酵物である麦汁又は果汁に含まれる糖をエチルアルコール及び二酸化炭素に分解しつつ、増殖する。この際、添加する酵母の種類を代えることによって、エチルアルコールの生成量、並びに酵母の代謝副産物であるエステル類などの香気成分の種類及び量が変化する。更に、酵母の発酵液に乳酸菌を添加すると、乳酸菌を含有していない酵母の発酵液にはほとんど存在しなかった乳酸エチルなどの更なる香気成分が生成される。従って、発酵工程における酵母の種類、及び、酵母に代えて又は酵母に加えて添加される微生物の種類は、アルコール飲料の香味や色彩を始めとする各種性質に大きく影響を及ぼすものであり、従来から様々な試みがなされてきた。
【0005】
その中で、特許文献1〜4では、酵母に代わる原料として担子菌のみを用いて発酵を行ったアルコール飲料の製造方法、及びそれによって得られたアルコール飲料にかかる発明が開示された。これらの特許文献によると、酵母に代わる原料として担子菌のみをアルコール発酵に用いて製造されたアルコール飲料は、従来の酵母のみをアルコール発酵に用いて製造されたアルコール飲料と比較して、嗅覚的にも味覚的にも全く新規なものであるばかりでなく、酵母では産出できない有用な生理活性物質をも含有したものとなる旨が記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−286273
【特許文献2】
特開2001−286274
【特許文献3】
特開2001−286275
【特許文献4】
特開2001−286276
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明者らがかかる従来の酵母以外の微生物を用いて発酵を行ったアルコール飲料の製造方法について詳細に検討を行ったところ、このような従来方法は、酵母のみを用いて発酵を行ったアルコール飲料を製造する場合と比較して、該微生物の増殖速度が遅く、発酵(培養)に際し高温を要することが明らかになった。このことが原因で、所定のアルコール濃度を得るまでに比較的高い温度で長時間発酵させる必要があるために、単にアルコール飲料の製造コスト面での負担が大きくなるばかりでなく、発酵液の酸化並びに細菌及び野生酵母によるアルコール飲料の汚染の危険性が増加する傾向にあることを本発明者らは見出した。
【0008】
そこで、本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、酵母以外の微生物、特に担子菌を用いてアルコール発酵を行ったアルコール飲料の製造方法において、独特の香味、色彩及び有用な生理活性等を有しつつも、比較的低温で、迅速、簡易かつ安価に発酵させることができ、発酵(培養)液の酸化並びに細菌及び野生酵母による汚染を十分に抑制することが可能なアルコール飲料の製造方法、及び該製造方法により得られるアルコール飲料を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、発酵工程において担子菌に加えて酵母をも添加し、更に、酵母を添加する時点を調整することにより、担子菌を用いた場合でも所定のアルコール濃度を得るまでの時間を短縮できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のアルコール飲料の製造方法は、発酵工程が、被発酵物に担子菌を添加してなされる第一発酵工程と、前記第一発酵工程の開始後に酵母を添加してなされる第二発酵工程と、からなることを特徴とするものである。
【0011】
この際、該被発酵物として麦汁を用いることもでき、このような麦汁としては麦芽と資化性の糖類から得られる液糖との混合物であることが好ましい。この場合、本発明のアルコール飲料の製造方法により得られるアルコール飲料は、ビール又は発酵酒等の麦芽アルコール飲料となる。
【0012】
また、該被発酵物が果汁である場合は、本発明のアルコール飲料の製造方法により得られるアルコール飲料は、ワイン、リキュール又はスピリッツ等の果実酒となる。
【0013】
そして、被発酵物として、果汁と資化性の糖類から得られる液糖との混合物を用いることもできる。この場合は、最終的に得られるアルコール飲料は、ワインリキュール又はスピリッツ等の果実酒となる。
【0014】
また、被発酵物として、資化性の糖類から得られる液糖を用いることもできる。この場合は、最終的に雑酒を得ることができる。
【0015】
更に、資化性の糖類から得られる液糖が、フラクトースを主成分とする糖化液であれば、発酵工程において用いられる担子菌の発酵に適した被発酵物を、仕込工程の装置及び条件等を変更させることなく提供することができる。
【0016】
そして、本発明のアルコール飲料は、前記本発明の製造方法により製造されたものであることを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明の一例である、麦芽アルコール飲料の製造方法は、図1に示したように、通常麦芽を含む原料と仕込用水とを混合し、得られた混合物を加温することにより麦芽を糖化させ、前記糖化された麦芽から麦汁を採取する仕込工程と、前記麦汁を発酵させ麦芽アルコール飲料中間品を得る発酵工程と、前記発酵工程で得られた麦芽アルコール飲料中間品(以下、発酵終了液と称す。)を貯蔵する貯酒工程と、前記貯酒工程で得られた麦芽アルコール飲料中間品(以下、貯酒終了液と称す。)をろ過し麦芽アルコール飲料を得るろ過工程と、を含む麦芽アルコール飲料の製造方法において、前記発酵工程が、担子菌を添加してなされる第一発酵工程と、前記第一発酵工程の開始後に酵母を添加してなされる第二発酵工程と、からなることを特徴とするものである。
【0019】
なお、本実施形態の麦芽アルコール飲料は、その製造に用いられる麦芽の使用比率の多少には特に制限されず、麦芽を原料として発酵工程を経て製造されるアルコール飲料であればよい。具体的には、例えばビールや発泡酒が挙げられる。
【0020】
本実施形態の麦芽アルコール飲料の製造方法における第1の工程は、麦芽を含む原料と仕込用水とを混合し、得られた混合物を加温することにより麦芽を糖化させ、前記糖化された麦芽から麦汁を採取する仕込工程である。
【0021】
仕込工程において糖化される麦芽は、既知の麦芽アルコール飲料の製造方法において得られるような、大麦又は小麦に水分と空気を与えて発芽させた後に乾燥して幼根を取り除いたものであることが好ましい。麦芽は麦汁製造に必要な酵素源であると同時に糖化の原料として主要な澱粉源となる。また、麦芽アルコール飲料特有の香味と色彩を与えるため、発芽させた麦芽を焙燥したものを麦汁製造に用いる。
【0022】
なお、水を除いた原料中の麦芽の使用比率はビール、発泡酒等の麦芽アルコール飲料の種類に応じて適宜選択され、例えばビールの製造の際には麦芽使用比率が66.7%以上、発泡酒の製造の際には麦芽使用比率が66.7%未満に設定される。また、仕込工程における麦芽と仕込用水との配合比は特に制限されないが、麦芽100重量部に対して仕込み用水300〜350mlであることが好ましい。
【0023】
また、市販または別途調製された適量のモルトエキスを前記麦芽に代えて或いは前記麦芽に加えて用いてもよい。
【0024】
更に、麦芽以外の副原料としては、大麦,小麦、ライ麦、はと麦、ソルガム、燕麦、もち麦若しくはカラス麦等の麦澱粉材料、又は液糖、コーンスターチ、コーングリッツ若しくは米等の非麦澱粉原料、或いはグルコース、フラクトース若しくはマルトース等の液糖などを単独で又は二種以上を組み合わせて適量添加することができる。
【0025】
これらの中で液糖は、後述する発酵工程で添加する担子菌及び酵母が容易に資化可能であるような糖組成であることが好ましく、例えばコーン由来シロップなどを添加することができる。その中でも、フラクトース(果糖)を主成分とする液糖は、これを用いることによって得られる麦汁が、担子菌発酵の原料として適しているので、より好ましい。
【0026】
また、前記仕込用水の種類は特に制限されず、製造する麦芽アルコール飲料の種類に応じて好適な水を用いればよい。
【0027】
仕込工程において、まず、前記麦芽は仕込用水と共に例えば仕込釜に入れられて混合され、該混合物はその温度管理を厳密にするために適度に撹拌される。副原料を用いる場合は、ここで同時に添加混合して撹拌すればよい。前記温度管理は、通常所定の糖化ダイアグラムに基づいて行われ、例えば65〜75℃まで所定速度で昇温した後、該温度で所定の時間一定に保持され、その後再び所定速度で昇温されることが好ましい。このような温度管理によって、麦芽中のアミラーゼによる糖化が進行する。こうして得られた麦芽糖化液をろ過することにより麦汁が得られる。
【0028】
後に行われる発酵工程が担子菌によるものと酵母によるものの二段階からなるにも関わらず、該仕込工程では特に装置、操作及び条件等を変更することなく所望の麦汁を得ることも可能ので、過剰な設備投資及び設計変更等を行う必要がない。
【0029】
なお、仕込工程の後に麦汁煮沸工程が行われてもよい。麦汁煮沸工程は、糖化液を濾過して得られる麦汁にホップを添加し、その混合物を煮沸する工程である。これにより、麦芽発泡飲料特有の香りと苦味とが付与され、また、麦芽の酵素の働きが止められる。糖化液におけるホップの実使用率は0もしくは使用したとしても2.0%以内が好ましい。また、当該混合物の煮沸時間は好ましくは60〜90分間である。
【0030】
本実施形態にかかる第2の工程は、仕込工程により得られた麦汁に担子菌を添加してなされる第一発酵工程と、前記第一発酵工程の開始後に酵母を添加してなされる第二発酵工程と、からなる発酵工程である。
【0031】
まず第一発酵工程は、仕込工程により得られた麦汁に担子菌を添加することにより開始される。ここで添加される担子菌は、真菌類のなかで有性胞子を担子器の外側に形成する一群に含まれるものであって、食用に適したものであれば特に限定されない。その中でも香味、麦汁との相性、入手の容易さ等の観点から、子実体がキノコであるものが好ましく、エノキタケ、ヒラタケ、マスタケ、シイタケ、マンネンタケ、ヤマブシタケ、マイタケ等を挙げることができ、それらのうちエノキタケ、ヒラタケ、マスタケなどが特に好ましい。
【0032】
該担子菌は、発酵工程において、酵母と同様にアルコール発酵をしつつ、すなわち麦汁に含まれる糖をエチルアルコール及び二酸化炭素に分解しつつ増殖し、且つ、従来にない香味、色彩及び有用な生理活性等をも産出する。この中で有用な生理活性としては、例えば、担子菌の発酵により、ガン、疫病及びアレルギー等の予防効果があるといわれているβ−D−グルカンが生成することが挙げられる。また、担子菌の種類によっては、強心作用のあるフラムトキシン(エノキタケ)、血糖降下作用のある多糖ガノデラン(マンネンタケ)、高血圧及び高コレステロール予防効果のあるエリタデニン(シイタケ)、血栓予防効果のある抗トロンビン活性物質、血栓を溶かす効果のある線溶酵素等を含有する麦芽アルコール飲料を得ることができる。
【0033】
担子菌は、麦汁に対し5.0〜20.0重量%添加することが好ましい。特に、担子菌の添加量が5.0重量%を下回ると、担子菌を増殖させるのに長時間を要するため、発酵液の酸化、細菌や野生酵母による汚染の危険性が上昇する傾向にあり好ましくない。
【0034】
第一発酵工程において、担子菌による発酵を行う際は、静置状態で行ってもよいが、その場合は発酵に伴う温度上昇が局部的に発生し得る。従って、より的確に温度管理して且つ効率よく発酵させたい場合は、回転式振とう機、タンク内に付随した撹拌機、循環ポンプなどを用いて発酵液を流動させるとよい。更に、担子菌が好気条件下でも発酵することが可能である場合は、発酵液を流動させると共に、空気又は酸素を該発酵液に注入することもできる。上記発酵液の流動並びに空気等の注入は、担子菌を最適に増殖させるが、一方で発酵液の酸化を促進させてしまうので、担子菌の増殖程度及び発酵液の酸化具合を考慮して適宜連続的に或いは間欠的に行うことが好ましい。
【0035】
また、第一発酵工程における温度は、通常の酵母を使用して発酵させる際の上限温度である15℃以上に設定され、15〜25℃で管理されることが好ましい。15℃より低い温度では、担子菌が発酵を行うことができないか、できたとしても担子菌の増殖速度が著しく遅くなるため、麦芽アルコール飲料の製造効率が低下し、又は発酵液の酸化が進んでしまうおそれがあり、更には、比較的低温でも増殖する細菌や野生酵母の増加による汚染の危険もある。温度が25℃よりも高い場合は、担子菌による発酵で得られるべき独特の香味を得ることができず、むしろ雑味が強くなる傾向となり、また、雑菌も増加する傾向となる。
【0036】
そして、第一発酵工程の所要時間は、担子菌の種類、発酵温度、若しくは目標とする香味付けの程度などにより適宜設定されるため、特には限定されないものの、例えば3〜6日間が好ましい。第一発酵工程がこれより短い時間で行われると、担子菌による発酵が十分に行われず、所望の香味等を得られないまま第一発酵工程が終了し易くなる傾向にある。また、第一発酵工程がこれより長い時間行われると、発酵液の酸化、細菌や野生細胞の増殖による汚染の危険性が高くなる傾向にあり、製造コストも増加してしまう。
【0037】
次に、第二発酵工程は、上記第一発酵工程で得られた従来にない香味、色彩、生理活性等を付与された糖分を含む液(以下、発酵中間液と称す。)に対して、酵母を添加すると共に、発酵温度を酵母によるアルコール発酵に適した温度に設定することにより開始される。従って、担子菌による発酵が行われている最中に酵母を添加する場合は、第二発酵工程で酵母によるアルコール発酵と共に担子菌による発酵も同時に行われていることとなる。
【0038】
第二発酵工程の開始時期、すなわち酵母を発酵中間液に添加する時期は、担子菌の種類、発酵温度、若しくは目標とする香味付けの程度、色彩、有用な生理活性などにより適宜設定されるため、特には限定されない。従って、酵母は、例えば官能検査により担子菌に特徴的な所望の風味が確認された時点、或いは、高性能液体クロマトグラフィーなどの分析機器を用いて、有用な生理活性物質の存在が確認された時点などに添加される。
【0039】
更に、第二発酵工程の開始時期は、酵母によるアルコール発酵が有効に行われることも基準にして決定される。すなわち、前述したように、担子菌は酵母と比較して、所定のエチルアルコール濃度を得るためのアルコール発酵に長時間を要する傾向にある。従って、担子菌よりも酵母にアルコール発酵を行わせる方が工程の短縮化に繋がる。そこで、例えば、発酵液比重の測定により、担子菌による糖分の消費程度が所望の程度になっていることが確認された時点で直ちに酵母を添加し、酵母によるアルコール発酵を行うことが好ましい。
【0040】
上記事情を勘案して、担子菌によって従来にない香味、色彩、生理活性等が発酵中間液に付与され、且つ、酵母がエチルアルコールを最大限に生成すべく可能な限り多くの糖分が発酵中間液に残存している時点で酵母を添加することがより好ましい。
【0041】
酵母の種類は、麦汁中の糖分を代謝してアルコールや二酸化炭素等を産生するいわゆるアルコール発酵が可能なビール用培養酵母であれば特に制限されず、具体的には、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・ウバルム等が挙げられる。
【0042】
また、酵母の添加量は特に限定はないが、前記発酵中間液に対して0.5〜3.0重量%であることが好ましい。通常の麦芽アルコール飲料においては、酵母の添加量は麦汁に対して0.5〜1.0重量%であるところ、本実施形態にかかる麦芽アルコール飲料では、発酵液の酸化、細菌や野生酵母による汚染を防ぐ品質管理の観点より、及び製造効率の観点より、上記通常の麦芽アルコール飲料における酵母の添加量よりも多めに添加することが好ましい。
【0043】
更に、第二発酵工程で酵母を添加される発酵中間液は、酵母を添加される前に担子菌の菌体を分離除去されていてもよく、或いは、酵母を添加される際に担子菌の菌体を残存させたままの状態であってもよい。上述したように、第二発酵工程は、酵母によるアルコール発酵に適した温度で行われるため、実質的に酵母主体によるアルコール発酵のみが行われる。また、担子菌自体が酵母によるアルコール発酵を阻害することはない。従って、第二発酵工程において、担子菌が発酵液に混在していても何ら問題は生じない。なお、担子菌が発酵液から分離除去されても特段の不都合はない。
【0044】
第二発酵工程での温度は、酵母によるアルコール発酵に適した温度であれば、特に限定はされず、通常15℃以下であり、8〜10℃であることが好ましい。
【0045】
本実施形態にかかる第3の工程は、前記発酵工程で得られた発酵終了液を貯蔵する貯酒工程である。
【0046】
貯酒工程では、アルコール発酵の終了した発酵終了液が密閉タンクに移され、貯蔵される。貯蔵条件については基本的に既知の条件と変わらず、例えば貯蔵温度は0〜2℃が好ましく、貯蔵時間が30〜90日間であることが好ましい。発酵終了液の状態では香味が荒いため、本貯酒工程により残存エキスの再発酵と熟成が行われ香味を整えられる。
【0047】
本実施形態にかかる第4の工程は、前記貯酒工程で得られた貯酒終了液をろ過して不純物を除去するろ過工程である。
【0048】
ろ過条件は、基本的に既知の条件と同様であり、例えばろ過助材として珪藻土、PVPP(ポリビニルポリピロリドン)、シリカゲル、セルロースパウダー等が用いられ、温度は0±1℃で行われる。
【0049】
こうして本実施形態の麦芽アルコール飲料が得られる。この際、得られた麦芽アルコール飲料の香味のバランスを考慮して、適宜香料或いは活性炭等を添加することができる。更にエチルアルコール濃度を調整するために、従来から知られている方法により、仕込工程、発酵工程の微生物添加前或いは貯酒工程などで水を添加することもできる。
【0050】
そして該麦芽アルコール飲料はそのまま、または無菌ろ過や加熱処理を行った後、タンク詰め、たる詰め、ビン詰め又は缶詰めされ市場に出荷される。
【0051】
本実施形態の麦芽アルコール飲料の製造方法は、担子菌による発酵により、従来にない香味、色彩及び有用な生理活性等を達成することができる。更に酵母をも添加することで、その製造工程の短縮化を図ることができ、製造コストの低減にも繋がる。また、原料として最適な糖組成を有する液糖を添加することにより、仕込工程の装置及び条件等を特に変更しなくても、発酵工程で所望の発酵終了液を製造することができる。
【0052】
また本実施形態の麦芽アルコール飲料は、上記製造方法により得られる。該麦芽アルコール飲料は、水を除いた原料中の麦芽の使用比率によりビール又は発泡酒に区別されるが、いずれの場合においても、従来にない香味、色彩及び有用な生理活性を有することができる。更に、本発明の麦芽アルコール飲料は、従来の麦芽アルコール飲料と混合されることもでき、それによっても新たな香味及び色彩等を有することもできる。本実施形態の麦芽アルコール飲料と従来の麦芽アルコール飲料との混合比は、それらの麦芽アルコール飲料の種類によって適宜決められる。
【0053】
以上は、一例として本発明をビール、発泡酒等の麦芽アルコール飲料に適用して説明したが、本発明のアルコール飲料の製造方法は麦芽アルコール飲料以外の雑酒、ワイン等の果実酒、甘味果実酒、リキュール又はスピリッツなどにも同様に適用可能である。
【0054】
この場合、被発酵原料としては、果実酒、リキュール、スピリッツ等では、果汁、又は果汁と資化性の糖類から得られる液糖との混合物を用い、該資化性の糖類から得られる液糖はフラクトースを主成分とする糖化液であることが好ましい。また、雑酒では、資化性の糖類から得られる液糖、好ましくはフラクトースを主成分とする糖化液、を被発酵原料として使用することができる。
【0055】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下に詳述する実施例及び比較例では、400Lスケールの醸造設備によって低アルコールの発泡酒を製造した。
【0056】
(実施例1)
<仕込及び麦汁煮沸工程>
原料として、麦芽17.0kg、主成分がフラクトースである液糖54.0kgを用いた。まず、粉砕した麦芽及び液糖を100Lのお湯を張った仕込釜中に入れて煮込み、糖化させ麦汁を得た。続いて該麦汁をろ過漕に張り込みつつろ過した後、煮沸釜でホップ0.3kgを添加して煮沸し、その後麦汁冷却機で冷却し約350Lの麦汁を得た。なお得られた麦汁は、水を添加してエキス濃度が6.9%となるように調整された。
【0057】
<発酵工程>
続いて、該麦汁に担子菌であるエノキタケ5.7質量%を添加し、間欠的に空気を注入しつつ連続的に回転振とうすることによって該エノキタケによる発酵を行った。なお、エノキタケによる発酵は約20℃の温度で4日間行い、その後、官能検査で香味、色彩等を確認した。そして、得られた発酵中間液の温度を15℃以下に調整した後にビール用培養酵母を約2.0質量%添加し、酵母による発酵を3日間、静置して行った。
【0058】
<貯酒及びろ過工程>
得られた発酵終了液はその後、通常行われる貯酒工程と同じ条件で貯蔵された後、ろ過工程を経て、麦芽アルコール飲料(発泡酒)として完成した。
【0059】
(実施例2〜3)
上記実施例1に用いた担子菌をヒラタケ又はマスタケに代え、その他の条件は実施例1と同一にして、麦芽アルコール飲料を製造した。
【0060】
(実施例4〜6)
上記実施例1〜3に用いた原料のうち、フラクトースを主成分とする液糖をそれぞれマルトースを主成分とする液糖に代え、その他の条件は実施例1と同一にして、麦芽アルコール飲料を製造した。
【0061】
(比較例1,2)
上記実施例1,4の製造方法において、担子菌による発酵工程を省略し、その他の条件は実施例1と同一にして、麦芽アルコール飲料を製造した。
【0062】
<担子菌の効果確認試験>
冷却後の麦汁、担子菌による発酵で得られた発酵中間液及び最終的に得られた麦芽アルコール飲料について、それらの比重を測定してエキス濃度を導出し、pH及びアルコール濃度を測定した。また、それぞれの麦芽アルコール飲料の香味、色彩等を15人の検査者による官能検査により確認した。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
Figure 2004298109
【0064】
表1から明らかなとおり、担子菌を用いた発酵により得られた発泡酒は、概して果実的な香りを有していた。更に、担子菌による発酵ではアルコール生成量が少量であるものの、その後の酵母による発酵で、最終的には十分な量のアルコールが得られることが分かった。また、麦汁に添加する液糖をフラクトースを主成分とするものにすれば、発泡酒のアルコール濃度が概して高めになる傾向にあり、担子菌の種類によってその傾向の程度が異なることも確認された。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のアルコール飲料の製造方法によれば、発酵工程において担子菌と酵母とを併用し、且つ、それらを添加する時点を調整することにより、独特の香味、色彩及び生理活性等を有しつつも、比較的低温で、迅速、簡易かつ安価に発酵させることができ、発酵(培養)液の酸化並びに細菌及び野生酵母による汚染を十分に抑制することが可能なアルコール飲料を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる麦芽アルコール飲料の製造方法の手順を簡略に示す工程図である。

Claims (8)

  1. 発酵工程が、被発酵物に担子菌を添加してなされる第一発酵工程と、前記第一発酵工程の開始後に酵母を添加してなされる第二発酵工程と、からなることを特徴とするアルコール飲料の製造方法。
  2. 被発酵物が麦汁であることを特徴とする請求項1記載のアルコール飲料の製造方法。
  3. 被発酵物が果汁であることを特徴とする請求項1記載のアルコール飲料の製造方法。
  4. 麦汁が、麦芽と資化性の糖類から得られる液糖との混合物であることを特徴とする請求項2記載のアルコール飲料の製造方法。
  5. 被発酵物が、果汁と資化性の糖類から得られる液糖との混合物であることを特徴とする請求項1記載のアルコール飲料の製造方法。
  6. 被発酵物が、資化性の糖類から得られる液糖であることを特徴とする請求項1記載のアルコール飲料の製造方法。
  7. 前記資化性の糖類から得られる液糖が、フラクトースを主成分とする糖化液であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のアルコール飲料の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のアルコール飲料の製造方法により得られるアルコール飲料。
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