JP2012228225A - 酵母のアルコール発酵及び/又は培養に関する方法 - Google Patents

酵母のアルコール発酵及び/又は培養に関する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】酵母のアルコール発酵及び/又は増殖を効果的に促進する方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る飲料の製造方法は、酵母が資化可能な窒素源及び炭素源を含む発酵前液を調製する発酵前工程と、前記発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う発酵工程と、を含み、前記発酵前工程又は前記発酵工程においてキノコ加工物を添加する。
【選択図】図1A

Description

本発明は、酵母のアルコール発酵及び/又は培養に関する方法に関し、特に、酵母のアルコール発酵及び/又は増殖の促進に関する。
従来、酵母によるアルコール発酵を促進するために、様々な工夫がなされている。例えば、特許文献1には、アルコール発酵用の栄養剤として、エルゴステロール、N-アセチルグルコサミン、ビタミン、核酸、アミノ酸を使用することが記載されている。
特表2009−529903号公報
しかしながら、上記従来技術において、酵母のアルコール発酵及び/又は増殖の促進は、必ずしも十分に達成されていなかった。
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、酵母のアルコール発酵及び/又は増殖を効果的に促進する方法を提供することをその目的の一つとする。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る飲料の製造方法は、酵母が資化可能な窒素源及び炭素源を含む発酵前液を調製する発酵前工程と、前記発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う発酵工程と、を含み、前記発酵前工程又は前記発酵工程においてキノコ加工物を添加することを特徴とする。本発明によれば、酵母のアルコール発酵及び/又は増殖を効果的に促進する飲料の製造方法を提供することができる。
また、前記方法においては、前記キノコ加工物を0.1ppm〜1000ppm添加することとしてもよい。また、前記方法においては、前記発酵前液のエキスは13%以上であることとしてもよい。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る方法は、キノコ加工物を添加することにより、酵母によるアルコール発酵を促進することを特徴とする。本発明によれば、酵母のアルコール発酵及び/又は増殖を効果的に促進する方法を提供することができる。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る方法は、キノコ加工物が添加された培養液中で酵母を培養することを特徴とする。本発明によれば、酵母のアルコール発酵及び/又は増殖を効果的に促進する酵母の培養方法を提供することができる。
本発明によれば、酵母のアルコール発酵及び/又は増殖を効果的に促進する方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るマイタケパウダーを使用した実施例において、発酵開始時の原麦汁エキスが16%の場合に発酵液の外観エキスの変化を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るマイタケパウダーを使用した実施例において、発酵開始時の原麦汁エキスが18%の場合に発酵液の外観エキスの変化を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るマイタケパウダーを使用した実施例において、発酵開始時の原麦汁エキスが16%の場合に発酵液中の酵母数の変化を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るマイタケパウダーを使用した実施例において、発酵開始時の原麦汁エキスが18%の場合に発酵液中の酵母数の変化を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るマイタケパウダーを使用した実施例において、発酵開始時の原麦汁エキスが16%の場合に得られた発泡性アルコール飲料に含まれる酢酸エチルの濃度を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るマイタケパウダーを使用した実施例において、発酵開始時の原麦汁エキスが18%の場合に得られた発泡性アルコール飲料に含まれる酢酸エチルの濃度を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るマイタケパウダーを使用した実施例において、発酵開始時の原麦汁エキスが16%の場合に得られた発泡性アルコール飲料に含まれる酢酸イソアミルの濃度を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るマイタケパウダーを使用した実施例において、発酵開始時の原麦汁エキスが18%の場合に得られた発泡性アルコール飲料に含まれる酢酸イソアミルの濃度を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るアガリクスパウダー及びチャーガパウダーを使用した実施例において、発酵液の外観エキスの変化を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るアガリクスパウダー及びチャーガパウダーを使用した実施例において、発酵液中の酵母数の変化を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るアガリクスパウダー及びチャーガパウダーを使用した実施例において、得られた発泡性アルコール飲料に含まれる酢酸エチルの濃度を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るアガリクスパウダー及びチャーガパウダーを使用した実施例において、得られた発泡性アルコール飲料に含まれる酢酸イソアミルの濃度を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るマイタケパウダーを使用した実施例において、発酵開始時の原麦汁エキスが12%の場合に発酵液の外観エキスの変化を評価した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るマイタケパウダーを使用した実施例において、発酵開始時の原麦汁エキスが12%の場合に発酵液中の酵母数の変化を評価した結果の一例を示す説明図である。
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
本発明の発明者らは、酵母のアルコール発酵及び増殖を促進するための技術的手段について鋭意検討を重ねた結果、キノコ加工物の使用が当該酵母のアルコール発酵及び/又は増殖を効果的に促進することを独自に見出した。本実施形態に係る方法(以下、「本方法」という。)は、このような発明者らによる独自の知見に基づくものである。
本方法は、例えば、酵母が資化可能な窒素源及び炭素源を含む発酵前液を調製する発酵前工程と、当該発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う発酵工程と、を含み、当該発酵前工程又は当該発酵工程においてキノコ加工物を添加する飲料の製造方法である。
この場合、本方法においては、アルコール発酵終了前の任意のタイミングでキノコ加工物を添加する。すなわち、例えば、発酵前液を調製し、当該発酵前液に酵母を添加して発酵液を調製し、アルコール発酵を行う飲料の製造方法において、当該発酵前液(例えば、調製中の発酵前液、又は調製後であって酵母添加前の発酵前液)又はアルコール発酵終了前の当該発酵液(例えば、酵母添加時の発酵前液、又は酵母添加後の発酵液)にキノコ加工品を添加する。具体的に、発酵前液にキノコ加工品を添加する場合、例えば、まず、発酵前工程において、キノコ加工物が添加された発酵前液を調製し、次いで、発酵工程において、当該発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う。
その結果、本方法においては、例えば、キノコ加工物の使用により、当該キノコ加工物を使用しない場合に比べて、発酵工程における酵母の増殖及び/又は代謝を促進し、アルコール発酵を効率よく行うことができる。また、例えば、キノコ加工物の使用により、当該キノコ加工物を使用しない場合に比べて、酵母によるエステル等の香味成分の生成を促進し、香味が向上した飲料を製造することができる。
また、本方法は、例えば、キノコ加工物を添加することにより、酵母によるアルコール発酵を促進する方法である。すなわち、この場合、本方法は、上述のような飲料の製造に限られず、様々な用途のために溶液中で酵母のアルコール発酵を行う際に、当該溶液にキノコ加工物を添加することにより、当該キノコ加工物を添加しない場合に比べて、当該酵母によるアルコール発酵を促進する方法である。
また、本方法は、例えば、キノコ加工物が添加された培養液中で酵母を培養する方法である。すなわち、この場合、本方法は、培養液にキノコ加工物を添加することにより、当該キノコ加工物を添加しない場合に比べて、当該培養液中における酵母の増殖を促進する、酵母の培養方法である。また、本方法は、例えば、上述のような飲料の製造又はその他の用途に使用するための酵母及び/又は酒母を製造する方法であることとしてもよい。すなわち、この場合、本方法においては、キノコ加工物を添加することにより、当該キノコ加工物を添加しない場合に比べて、所望の質及び量の酵母及び/又は酒母を早期に製造することができ、又は所定の期間内に酵母及び/又は酒母の製造量を増加させることができる。
本方法において使用するキノコ加工物は、キノコを加工することにより製造される組成物(当該キノコ由来の成分を含む組成物)であれば特に限られない。すなわち、キノコ加工物は、例えば、キノコ粉砕物(キノコを粉砕することにより製造される組成物)又はキノコ抽出物(キノコを水等の溶媒で抽出することにより製造される組成物)である。キノコ加工物は、固体又は液体のいずれであってもよい。すなわち、キノコ加工物は、例えば、粉末状、液状又はペースト状である。具体的に、キノコ加工物は、キノコパウダー、キノコ抽出物及びキノコペーストからなる群より選択される1種以上とすることができる。キノコパウダーは、例えば、乾燥させたキノコを磨り潰すことにより、又はキノコ抽出物を乾燥させることにより、製造される。
具体的に、キノコ加工物は、例えば、マイタケ、シイタケ、アガリクス、チャーガ、エノキ、マツタケ、エリンギ、シメジ、ツクリタケ及びナメタケからなる群より選択される1種以上のキノコの加工物であり、特にマイタケ加工物及びシイタケ加工物からなる群より選択される1種以上を好ましく使用することができる。
本方法において使用する酵母は、アルコール発酵を行う酵母であれば特に限られず、特に醸造用酵母を好ましく使用することができる。
醸造用酵母は、醸造に使用される酵母であれば特に限られず、例えば、ビール酵母、ワイン酵母、清酒酵母、焼酎酵母及びウイスキー酵母からなる群より選択される酵母を使用することができ、特にビール酵母を好ましく使用することができる。
ビール酵母としては、ビールや発泡酒等の発泡性アルコール飲料の製造に使用される酵母であれば特に限られず、例えば、下面発酵酵母又は上面発酵酵母を使用することができ、特に下面発酵酵母を好ましく使用することができる。
下面発酵酵母は、発酵が進行するにつれて溶液中で沈降するものであれば特に限られず、例えば、Saccharomyces pastrianusを好ましく使用することができる。
上面発酵酵母は、発酵が進行するにつれて溶液の表面に上昇して浮遊するものであれば特に限られず、例えば、Saccharomyces cerevisiaeを好ましく使用することができる。
なお、本方法が飲料の製造方法である場合、当該飲料は、酵母によるアルコール発酵を経て製造される飲料であれば特に限られない。
すなわち、本方法は、発泡性飲料の製造方法であることとしてもよい。発泡性飲料は、例えば、炭酸ガスを含有する飲料であって、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性と、を有する飲料である。
本方法は、アルコール飲料の製造方法であることとしてもよい。アルコール飲料は、例えば、エタノールを1体積%以上の濃度で含有する(アルコール分1度以上の)飲料である。
本方法は、発泡性アルコール飲料の製造方法であることとしてもよい。発泡性アルコール飲料は、例えば、エタノールを1体積%以上の濃度で含有する(アルコール分1度以上の)発泡性飲料である。具体的に、発泡性アルコール飲料としては、例えば、ビール、発泡酒、及びビール又は発泡酒に蒸留酒等の他のアルコール飲料を混合して得られる発泡性アルコール飲料からなる群より選択される飲料が挙げられる。
本方法は、非発泡性アルコール飲料の製造方法であることとしてもよい。非発泡性アルコール飲料は、例えば、発泡性飲料が有するような泡特性を有しないアルコール飲料である。具体的に、非発泡性アルコール飲料としては、例えば、ワイン、清酒、焼酎、ウイスキー及びブランデーからなる群より選択される飲料が挙げられる。
本方法は、ノンアルコール飲料の製造方法であることとしてもよい。ノンアルコール飲料は、例えば、エタノールの濃度が1体積%未満(アルコール分1度未満)の飲料である。この場合、本方法は、発泡性ノンアルコール飲料の製造方法であることとしてもよく、非発泡性ノンアルコール飲料の製造方法であることとしてもよい。
本方法において使用される発酵前液及び培養液等の溶液は、酵母が資化可能な窒素源及び炭素源を含む溶液であれば特に限られない。すなわち、酵母としてビール酵母を使用する場合には、例えば、大麦、大麦麦芽、小麦、小麦麦芽及びホップからなる群より選択される1種以上を含む原料を使用して調製された溶液(例えば、ビール又は発泡酒の製造における、いわゆる麦汁に相当する溶液)を使用することができる。
具体的に、本方法が飲料の製造方法である場合、発酵前液の原料は、例えば、大麦、大麦麦芽、小麦及び小麦麦芽からなる群より選択される1種以上を含むこととしてもよい。この場合、原料は、さらにホップを含むこととしてもよく、ホップを含まないこととしてもよい。また、発酵前液の原料は、例えば、大麦、大麦麦芽、小麦及び小麦麦芽を含まないこととしてもよい。この場合、原料は、ホップを含むこととしてもよく、ホップを含まないこととしてもよい。
ホップを使用しない場合、原料は、ホップを含まない代わりに、ハーブを含むこととしてもよい。ハーブの種類は特に限られず、例えば、ローズマリー、コリアンダー、オレンジピール及びカモミールからなる群より選択される1種以上を使用することができる。
また、発酵前液の原料は、大麦、大麦麦芽、小麦、小麦麦芽及びホップからなる群より選択される1種以上に加えて、又はこれらに代えて、他の窒素源及び/又は炭素源を含むこととしてもよい。
窒素源及び/又は炭素源としては、例えば、穀物由来のタンパク質及び/又はペプチドの分解物(例えば、エンドウ、大豆又はコーン由来のタンパク質及び/又はペプチドの分解物)、穀物由来のデンプンの分解物(例えば、コーン等の穀類由来のデンプンを分解し精製して得られた液状の糖類(いわゆる液糖))及び酵母エキス(例えば、酵母から抽出されたタンパク質、ペプチド及び/又はアミノ酸)からなる群より選択される1種以上を使用することができる。
また、本方法において、ビール酵母以外の酵母を使用する場合には、当該酵母のアルコール発酵及び/又は増殖に適した窒素源及び炭素源を適宜選択することができる。すなわち、例えば、本方法において、ワイン酵母、清酒酵母、焼酎酵母、ウイスキー酵母等の醸造用酵母を使用する場合には、ワイン、清酒、焼酎、ウイスキー等の醸造酒の製造に適した穀物由来の原料を使用することができる。
次に、本方法が飲料の製造方法である場合の一例について詳しく説明する。この場合、本方法は、上述のとおり、発酵前工程と発酵工程とを含む。
発酵前工程においては、上述したような原料を使用して発酵前液を調製する。すなわち、まず、酵母が資化可能な窒素源及び炭素源を含む原料の全部又は一部と水とを混合することにより原料液(いわゆるマイシェに相当)を調製する。
次いで、原料が、穀物原料として、大麦、大麦麦芽、小麦、小麦麦芽及びホップからなる群より選択される1種以上及び/又はその他の穀物原料を含む場合には、原料液中で当該穀物原料に含まれるタンパク質及び/又は多糖類を酵素で分解する工程(いわゆる糖化工程)を行う。分解酵素(例えば、プロテアーゼ及び/又はアミラーゼ)としては、穀物原料に含まれる分解酵素を利用してもよいし、予め精製された分解酵素を外的に添加してもよい。
本方法においては、さらに、原料液(例えば、糖化処理後の原料液)(いわゆる麦汁に相当)を濾過し、煮沸する。原料の一部としてホップを使用する場合、この煮沸の際に、当該ホップを添加することとしてもよい。すなわち、例えば、濾過後の原料液にホップを添加し、さらに加熱して当該原料液を煮沸させる。
その後、原料液から不溶性成分を除去し、当該原料液を冷却する。こうして、発酵前工程においては、最終的に、続く発酵工程における酵母の添加に適した無菌状態の冷却された発酵前液(いわゆる冷麦汁に相当)を調製する。
ここで、発酵前工程においてキノコ加工物を添加する場合、例えば、酵母が資化可能な窒素源及び炭素源とキノコ加工物とを含む原料の全部又は一部と水とを混合することにより原料液を調製することとしてもよい。また、糖化工程の開始時、糖化工程中、煮沸開始時、煮沸中、煮沸後の冷却前、冷却後であって酵母の添加前にキノコ加工物を添加することとしてもよい。
また、添加するキノコ加工物の量は、所望の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、発酵前液に対して0.1ppm〜1000ppmのキノコ加工物を添加することが好ましい。キノコ加工物の添加量は、例えば、より好ましくは1ppm〜500ppmであり、特に好ましくは20ppm〜80ppmである。なお、1ppmは、1×10−6g−キノコ加工物/g−発酵前液(0.0001質量%)を示す。
キノコ加工物の添加量が0.1ppm未満である場合には、当該キノコ加工物による効果が十分に得られないことがある。キノコ加工物の添加量が1000ppm超である場合には、製造される飲料に好ましくない影響が生じることがある。
また、本方法においては、エキス濃度が比較的高い発酵前液を使用することができる。すなわち、発酵前工程で調製される発酵前液のエキス(以下、「発酵前液エキス」という。)(いわゆる原麦汁エキスに相当)は、例えば、13%以上であることとしてもよい。
一般に、ビール及び発泡酒等の発泡性アルコール飲料の製造においては、原麦汁エキスは13%未満となるように調整される。これは、一般に、原麦汁エキスが13%以上である場合に比べて、13%未満である場合のほうが、酵母による良好なアルコール発酵を簡便に行うことができるためである。
一方、原麦汁エキスを13%以上に高めることにより、例えば、麦汁の体積を低減することができ、及び/又は設備に要するコストを低減することができる。しかしながら、従来、原麦汁エキスの濃度が高い麦汁を使用する場合、酵母のアルコール発酵及び/又は増殖が良好に行われないことがあった。
これに対し、本方法においては、発酵開始時の発酵前液エキスが13%以上であっても、発酵前液にキノコ加工物を添加することにより、当該酵母の良好なアルコール発酵及び/又は増殖を簡便且つ確実に達成することができる。
すなわち、発酵開始時の発酵前液エキスが13%以上であっても、キノコ加工物を使用することにより、当該キノコ加工物を使用しない場合に比べて、酵母のアルコール発酵及び/又は増殖を効果的に促進することができる。
なお、発酵前液エキスは、14%以上であることとしてもよく、15%以上であることとしてもよく、16%以上であることとしてもよく、17%以上であることとしてもよく、18%以上であることとしてもよい。また、本方法において、上述したキノコ加工物による効果は、発酵開始時の発酵前液エキスが13%未満であっても十分に得られる。
発酵工程においては、発酵前工程で調製された発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う。すなわち、例えば、予め温度が所定の範囲内(例えば、0℃〜40℃の範囲)に調整された無菌状態の発酵前液に酵母を添加して発酵液を調製する。発酵開始時の発酵液における酵母数は適宜調節することができ、例えば、1×10cells/mL〜3×10cells/mLの範囲内とすることができ、1×10cells/mL〜3×10cells/mLの範囲内とすることが好ましい。
そして、この発酵液を所定の温度で所定の時間維持することにより発酵を行う。発酵の温度は適宜調節することができ、例えば、0℃〜40℃の範囲内とすることができ、6℃〜15℃の範囲内とすることが好ましい。
ここで、発酵工程においてキノコ加工物を添加する場合、例えば、発酵前液への酵母添加時、又は発酵前液への酵母添加後であってアルコール発酵終了前にキノコ加工物を添加することとしてもよい。
本方法においては、上述のようにしてキノコ加工物が添加された発酵液中で酵母のアルコール発酵を行うことにより、例えば、当該酵母の増殖、発酵前液エキスの切れ、及び/又は当該酵母による香味成分(例えば、エステル)の生成を効果的に促進することができる。すなわち、本方法においては、キノコ加工物の添加により、例えば、酵母の増殖速度、発酵前液エキスの低下速度、及び/又は酵母による香味成分の生成量を効果的に増加させることができる。
発酵工程においては、さらに熟成を行うこととしてもよい。熟成は、上述のような発酵後の発酵液をさらに所定の温度で所定の時間だけ維持することにより行う。この熟成により、発酵液中の不溶物を沈殿させて濁りを取り除き、また、香味を向上させることができる。
こうして発酵工程においては、酵母により生成されたエタノール及び香味成分を含有する発酵後液を得ることができる。発酵後液に含まれるエタノールの濃度は、例えば、1〜20体積%とすることができ、好ましくは、1〜10体積%とすることができ、より好ましくは、3〜10体積%とすることができる。
本方法においては、例えば、上述の発酵工程により得られた発酵後液にろ過や殺菌等の所定の処理を施すことにより、最終的にアルコール飲料、すなわち、発泡性アルコール飲料(例えば、ビール又は発泡酒)又は非発泡性アルコール飲料(例えば、ワイン、清酒)を得ることができる。
また、本方法において、ビール又は発泡酒と蒸留酒とを混合して発泡性アルコール飲料を製造する場合には、本方法は、上述の発酵工程で得られた当該ビール又は発泡酒と蒸留酒とを混合する工程をさらに含むこととしてもよい。
この場合、蒸留酒としては、穀物を原料として製造されたものを好ましく使用することができる。すなわち、例えば、大麦、小麦、米、蕎麦、馬鈴薯、サツマイモ、トウモロコシ及びサトウキビからなる群より選択された1種以上を原料として製造された蒸留酒を使用することができ、特に、大麦及び/又は小麦を原料として製造された蒸留酒を好ましく使用することができる。蒸留酒に含有されるエタノール濃度は、例えば、10〜90体積%の範囲内とすることができる。
また、本方法においては、例えば、発酵工程で得られたアルコール飲料を蒸留することにより、蒸留酒である非発泡性アルコール飲料(例えば、焼酎、ウイスキー、ブランデー)を製造することができる。
また、本方法においては、例えば、上述のようにして得られたアルコール飲料に含まれるエタノールの濃度を低減する処理及び/又は当該アルコール飲料からエタノールを除去する処理を行うことにより、ノンアルコール飲料を製造することもできる。
本方法においては、キノコ加工物を使用することにより、優れた特性を有する飲料を効率よく製造することができる。すなわち、本方法においては、キノコ加工物を使用することにより、当該キノコ加工物を使用しない場合に比べて、飲料に含まれる香味成分の量を効果的に増加させることができる。
香味成分としては、例えば、酵母により生成されるエステルが挙げられる。より具体的に、エステルは、例えば、酢酸エステル及び/又は脂肪酸エステルである。酢酸エステルは、例えば、酢酸エチル、酢酸イソアミル及び酢酸フェネチルからなる群より選択される1種以上であり、酢酸エチル及び/又は酢酸イソアミルであることが好ましい。脂肪酸エステルは、例えば、カプロン酸エチル及び/又はカプリル酸エチルである。
エステル以外の酵母により生成される成分としては、例えば、含硫化合物、ダイアセチル、アルコール及びモノテルペンアルコールからなる群より選択される1種以上が挙げられる。
含硫化合物は、例えば、硫化水素、ジメチルスルファイド、メチルメルカプタン及びエチルメルカプタンからなる群より選択される1種以上である。ダイアセチルは、例えば、2,3ブタンジオン及び/又は2,3ペンタンジオンである。
アルコールは、例えば、高級アルコールである。高級アルコールは、例えば、イソアミルアルコール及び/又はフェネチルアルコールである。モノテルペンアルコールは、例えば、α−テルペネオール、シトロネロール、ネロール及びゲラニオールからなる群より選択される1種以上である。
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
麦芽を含む原料を使用して、糖化を含む常法により発酵前液(麦汁)を調製した。次に、この発酵前液に市販のマイタケパウダー(乾燥させたマイタケを磨り潰して得られた、粉末状のマイタケ加工物)及び酵母を添加してアルコール発酵を行うことにより、発泡性アルコール飲料を製造した。
具体的に、まず、調製した発酵前液2.5Lに対して100mgのマイタケパウダーを添加した。すなわち、マイタケパウダーの添加量は40ppmであった。また、発酵前液としては、原麦汁エキス(発酵前液エキス)が16%又は18%である2種類の麦汁(高濃度麦汁)を調製した。
次に、冷却した発酵前液に下面発酵酵母を添加してアルコール発酵を開始した。約11日間の発酵及び数週間の熟成を行った後、エタノール濃度を5.0v/v%に調整し、ろ過して、最終的に発泡性アルコール飲料(ビール)を得た。エタノール濃度の測定には、アルコール測定器(Alcolyzer Plus、アントンパール社製)を使用した。
このような発泡性アルコール飲料の製造過程において、発酵中の発酵液の外観エキスと浮遊酵母数とをそれぞれ測定した。外観エキスの測定には、市販の密度計(DMA4500、アントンパール社製)を使用した。
また、得られた発泡性アルコール飲料に含まれる酢酸エチル及び酢酸イソアミルの濃度を測定した。これら酢酸エステルの定量には、市販のガスクロマトグラフィー(HP6890、アジレントテクノロジー社製)を使用した。
また、比較例として、マイタケパウダーに代えて、市販の精製されたエルゴステロールを40ppm使用したこと以外は上述の例と同様の条件にて、発泡性アルコール飲料を製造した。さらに、他の比較例として、マイタケパウダーを使用しないこと以外は上述の例と同様の条件にて、発泡性アルコール飲料を製造した。そして、これらの比較例においても、上述の例と同様に、外観エキス、浮遊酵母数及び酢酸エステルの測定を行った。
図1A及び図1Bには、それぞれ発酵開始時の原麦汁エキスが16%及び18%である場合における、外観エキスの変化を測定した結果を示す。図1A及び図1Bにおいて、横軸は発酵日数(発酵開始から経過した日数)を示し、縦軸は各発酵日数における発酵液の外観エキス(%)を示す。
図1Aに示すように、原麦汁エキスが16%の発酵前液を使用した場合、エルゴステロールを添加することにより(比較例1−2)、何も添加しない場合に比べて(比較例1−1)、外観エキスが僅かに低下し、僅かな発酵促進効果が得られた。
これに対し、マイタケパウダーを添加した場合(実施例1−1)には、比較例1−1及び比較例1−2に比べて、外観エキスが顕著に低下した。すなわち、マイタケパウダーの使用により、顕著な発酵促進効果が得られた。
また、図1Bに示すように、原麦汁エキスが18%の発酵前液を使用した場合、エルゴステロールを添加することにより(比較例1−4)、何も添加しない場合に比べて(比較例1−3)、外観エキスが増加し、発酵は促進されなかった。
これに対し、マイタケパウダーを添加した場合(実施例1−2)には、比較例1−3及び比較例1−4に比べて、外観エキスが顕著に低下した。すなわち、マイタケパウダーの使用により、顕著な発酵促進効果が得られた。
このように、発酵開始時の原麦汁エキスが16%及び18%と高い場合であっても、マイタケパウダーの添加は、酵母によるアルコール発酵を顕著に促進することが確認された。特に、発酵開始時の原麦汁エキスが18%の場合には、エルゴステロールは発酵促進効果を示さなかったのに対して、マイタケパウダーは顕著な発酵促進効果を示した。
図2A及び図2Bには、それぞれ発酵開始時の原麦汁エキスが16%及び18%である場合における、浮遊酵母数の変化を測定した結果を示す。図2A及び図2Bにおいて、横軸は発酵日数を示し、縦軸は酵母数(×10 cells/mL)を示す。
図2A及び図2Bに示すように、エルゴステロールを添加した比較例1−2及び比較例1−4の酵母数は、何も添加しない比較例1−1及び比較例1−3のそれと大差なかった。
これに対し、マイタケパウダーを添加した実施例1−1及び実施例1−2の酵母数は、比較例1−1〜1−4のそれに比べて顕著に増加した。すなわち、発酵開始時の原麦汁エキスが16%及び18%と高い場合であっても、マイタケパウダーの添加は、酵母の増殖を顕著に促進することが確認された。
図3A及び図3Bには、それぞれ発酵開始時の原麦汁エキスが16%及び18%であった場合において、製造された発泡性アルコール飲料中の酢酸エチル濃度(ppm)を測定した結果を示す。図4A及び図4Bには、それぞれ発酵開始時の原麦汁エキスが16%及び18%であった場合において、製造された発泡性アルコール飲料中の酢酸イソアミル濃度(ppm)を測定した結果を示す。
図3A、図3B、図4A及び図4Bに示すように、エルゴステロールを添加した場合の酢酸エステル濃度(比較例1−2及び比較例1−4)は、何も添加しない場合のそれに比べて(比較例1−1及び比較例1−3)、僅かに増加した。
これに対し、マイタケパウダーを添加した場合(実施例1−1及び実施例1−2)には、比較例1−1〜1−4に比べて、酢酸エステル濃度が顕著に増加した。すなわち、マイタケパウダーの使用により、酵母による酢酸エステルの生成量が顕著に増加した。
このように、発酵開始時の原麦汁エキスが16%及び18%と高い場合であっても、マイタケパウダーの添加は、酵母による酢酸エステルの生成を顕著に促進して、発泡性アルコール飲料の香味を顕著に高めることが確認された。
マイタケパウダーに代えて、市販のアガリクスパウダー又は市販のチャーガパウダーを40ppm使用した以外は、上述の実施例1と同様にして、原麦汁エキスが18%の発酵前液を調製し、アルコール発酵を行って、発泡性アルコール飲料を製造した。
そして、上述の実施例1と同様にして、発酵中の外観エキス及び浮遊酵母数の変化、及び発泡性アルコール飲料に含まれる酢酸エステルの濃度をそれぞれ評価した。
また、比較例として、キノコ加工物を使用しないこと以外は上述の例と同様の条件にて、発泡性アルコール飲料を製造し、外観エキス、浮遊酵母数及び酢酸エステルの測定を行った。
図5には、外観エキスの変化を測定した結果を示す。図5に示すように、アガリクスパウダーを添加した場合(実施例2−1)及びチャーガパウダーを添加した場合(実施例2−2)には、何も添加しない場合(比較例2)に比べて、外観エキスが顕著に低下した。
図6には、浮遊酵母数の変化を測定した結果を示す。図6に示すように、アガリクスパウダーを添加した場合(実施例2−1)及びチャーガパウダーを添加した場合(実施例2−2)には、何も添加しない場合(比較例2)に比べて、酵母数が顕著に増加した。
このように、発酵開始時の原麦汁エキスが18%と高い場合であっても、アガリクスパウダー及びチャーガパウダーの添加は、酵母のアルコール発酵及び増殖を顕著に促進することが確認された。
図7及び図8には、それぞれ最終的に製造された発泡性アルコール飲料中の酢酸エチル濃度(ppm)及び酢酸イソアミル濃度(ppm)を測定した結果を示す。図7及び図8に示すように、アガリクスパウダーを添加した場合(実施例2−1)には、比較例2に比べて、酢酸エステル濃度が顕著に増加した。すなわち、アガリクスパウダーの使用により、酵母による酢酸エステルの生成量が顕著に増加した。
このように、発酵開始時の原麦汁エキスが18%と高い場合であっても、アガリクスパウダーの添加は、酵母による酢酸エステルの生成を顕著に促進して、発泡性アルコール飲料の香味を顕著に向上することが確認された。なお、チャーガパウダーを使用した場合(実施例2−2)には、酢酸エステル濃度の増加は見られなかった。
上述の実施例1と同様にして、マイタケパウダーを20ppm、40ppm又は80ppm添加した、原麦汁エキスが12%の発酵前液を調製し、アルコール発酵を行って、発泡性アルコール飲料を製造した。そして、上述の実施例1と同様にして、発酵中の外観エキス及び浮遊酵母数を評価した。
また、比較例として、マイタケパウダーに代えて、エルゴステロールを40ppm使用したこと以外は上述の例と同様の条件にて、発泡性アルコール飲料を製造した。さらに、他の比較例として、マイタケパウダーを使用しないこと以外は上述の例と同様の条件にて、発泡性アルコール飲料を製造した。そして、これらの比較例においても、上述の例と同様に、外観エキス及び浮遊酵母数の測定を行った。
図9には、発酵開始時の原麦汁エキスが12%であった場合における、外観エキスの変化を測定した結果を示す。図9に示すように、40ppmのエルゴステロールを添加することにより(比較例3−2)、何も添加しない場合に比べて(比較例3−1)、外観エキスが僅かに低下し、僅かな発酵促進効果が得られた。
これに対し、20ppm(実施例3−1)、40ppm(実施例3−2)及び80ppm(実施例3−3)のマイタケパウダーを添加した場合には、いずれも比較例3−1及び比較例3−2に比べて、外観エキスが顕著に低下した。
すなわち、エルゴステロール(比較例3−2)よりも少ない20ppmのマイタケパウダーを使用した場合であっても、顕著な発酵促進効果が得られた。さらに、マイタケパウダーの添加量が増加するに伴い、発酵促進効果も増加した。このように、発酵開始時の原麦汁エキスが12%である場合であっても、マイタケパウダーの添加は、酵母によるアルコール発酵を顕著に促進することが確認された。
図10には、発酵開始時の原麦汁エキスが12%である場合における、浮遊酵母数の変化を測定した結果を示す。図10に示すように、エルゴステロールを添加した比較例3−2の酵母数は、何も添加しない比較例3−1に比べて僅かに増加した。すなわち、発酵開始時の原麦汁エキスが12%の場合には、エルゴステロールの添加は、上述した原麦汁エキスが16%及び18%の場合に比べて、酵母の増殖を促進した。
一方、マイタケパウダーを添加した実施例3−1〜3−3の酵母数は、比較例3−1のそれに比べて顕著に増加した。すなわち、発酵開始時の原麦汁エキスが12%の場合においても、マイタケパウダーの添加は、上述した原麦汁エキスが16%及び18%の場合と同様、酵母の増殖を顕著に促進した。なお、この酵母の増殖促進効果は、マイタケパウダーの添加量が20ppm超であった実施例3−1(40ppm)及び実施例3−3(80ppm)において特に顕著であった。

Claims (5)

  1. 酵母が資化可能な窒素源及び炭素源を含む発酵前液を調製する発酵前工程と、
    前記発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う発酵工程と、
    を含み、
    前記発酵前工程又は前記発酵工程においてキノコ加工物を添加する
    ことを特徴とする飲料の製造方法。
  2. 前記キノコ加工物を0.1ppm〜1000ppm添加する
    ことを特徴とする請求項1に記載の飲料の製造方法。
  3. 前記発酵前液のエキスは13%以上である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の飲料の製造方法。
  4. キノコ加工物を添加することにより、酵母によるアルコール発酵を促進する
    ことを特徴とする方法。
  5. キノコ加工物が添加された培養液中で酵母を培養する
    ことを特徴とする方法。
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