JP7144194B2 - 麦芽発酵飲料及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、麦芽発酵飲料及び該麦芽発酵飲料の製造方法に関し、特には、飲み応えがあり継続飲用意向も高い麦芽発酵飲料に関するものである。
消費者の嗜好の多様化等により、ビール、発泡酒及び他の麦芽発酵飲料において様々な提案がなされている。米・コーン・スターチ等の穀物や炭水化物は、麦芽発酵飲料の味を調整し、消費者の嗜好に合わせた麦芽発酵飲料を製造するのに役立つことから、麦芽と共に原料として広く使用されている。
例えば、特開2010-207215号公報(特許文献1)は、少なくとも玄米と色麦芽とを原料として用いたビールテイスト飲料を記載する。玄米は、白米に比べ、タンパク質、アミノ酸、脂質、ミネラル等に富み、栄養効果が高いが、酒に雑味、後味の悪さなどの好ましくない影響を及ぼすことが知られているところ、特許文献1によれば、玄米を使用したビールテイスト飲料の製造において、色麦芽を原料の一部として使用することにより、玄米成分の持つビールテイスト飲料に与える好ましくない香味が低減され、優れた風味を有するビールテイスト飲料を製造できるとしている。
また、麦芽発酵飲料の製造工程は、麦芽等の糖化を行う仕込工程と該工程により得られる麦汁の発酵を行う発酵工程を含むものであるが、仕込工程や発酵工程の進め方によっても麦芽発酵飲料の味の調整が可能であり、例えば、糖化を効率よく進行させて外観最終発酵度を高くすることにより、軽くすっきりとした味感を有する麦芽発酵飲料を製造することができる。しかしながら、一般的な原麦汁エキス量で外観最終発酵度を高めると、麦芽発酵飲料の味が水っぽくなり、消費者にまた飲みたいと感じさせることが困難になるという問題があった。
特開2010-207215号公報
このような状況下、本発明の目的は、飲み応えがあり継続飲用意向も高い麦芽発酵飲料を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる麦芽発酵飲料の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、香辛料を原料の一部に用いたことで、ビールの一般的な原麦汁エキス量であるが外観最終発酵度の高い麦芽発酵飲料であっても、水っぽさを感じさせず飲み応えがあり、また継続飲用意向も向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
また、本発明者は、更に検討した結果、香辛料に加えて焙煎米を原料の一部に用いたことで、飲み応えと継続飲用意向を更に向上できることも見出した。特に、継続飲用意向の向上効果は顕著であった。
即ち、本発明の第一の飲料は、麦芽及び香辛料を原料として含む麦芽発酵飲料である。
本発明の第一の飲料の好適例においては、更に焙煎米を原料として含む。
また、本発明の第二の飲料は、麦芽由来成分及び香辛料を含む飲料である。
本発明の第二の飲料の好適例においては、更に焙煎米由来成分を含む。
本発明の第一及び第二の飲料の他の好適例においては、原麦汁エキスが12.5重量%以下である。
本発明の第一及び第二の飲料の他の好適例においては、外観最終発酵度が93%以上である。
本発明の第一及び第二の飲料の他の好適例においては、前記香辛料が、唐辛子、唐辛子抽出物又はカプサイシンを含む。
本発明の第一及び第二の飲料の他の好適例においては、前記焙煎米の米が精米である。
本発明の第一及び第二の飲料の他の好適例においては、ビールテイスト飲料である。
また、本発明の飲料の製造方法は、本発明の第一及び第二の飲料のいずれかの飲料の製造方法であり、少なくとも麦芽及び香辛料を原料として用い、麦芽の糖化を行い、次いで糖化により得られる麦汁の発酵を行う。
本発明の飲料の製造方法の好適例においては、更に焙煎米を原料として用い、麦芽と共に焙煎米の糖化を行う。
本発明の飲料の製造方法の他の好適例においては、麦汁の発酵を行う前に前記香辛料を麦汁に加える。
本発明によれば、飲み応えがあり継続飲用意向も高い麦芽発酵飲料を提供することができる。
以下に、本発明の麦芽発酵飲料(本発明の第一の飲料ともいう)を詳細に説明する。本発明の麦芽発酵飲料は、麦芽及び香辛料を原料として含む。本発明の麦芽発酵飲料によれば、香辛料を原料の一部に含むことで、飲み応えがあり継続飲用意向も高い麦芽発酵飲料を提供することができる。
本明細書において「麦芽発酵飲料」とは、少なくとも麦芽を原料として発酵させる工程を経て製造される飲料であるが、この発酵工程を経て得たものにアルコール飲料(蒸留酒類など)を混合して調製される飲料も含まれる。また、本発明の麦芽発酵飲料のアルコールの含有量は特に制限されず、アルコール飲料でもノンアルコール飲料でもよい。本明細書において「ノンアルコール飲料」とは、飲料中のエチルアルコール濃度が、温度15℃の時において原容量百分中に1容量%未満である飲料をいう。
本発明の麦芽発酵飲料は、ビールテイスト飲料であることが好ましい。本明細書において「ビールテイスト飲料」とは、アルコールの含有量とは無関係に、ビールの風味を有する飲料をいう。具体的には、ビール、発泡酒、ノンアルコールビール等を例示することができる。
本発明の麦芽発酵飲料がビールテイストのアルコール飲料である場合、そのアルコール含量は、1~10%であることが好ましい。本明細書において、アルコール含量は、麦芽発酵飲料全体の体積に対する該麦芽発酵飲料に含まれるエチルアルコールの体積の百分率で表され、「%」は「v/v%」と表記することもできる。
本発明の麦芽発酵飲料は、少なくとも麦芽を原料として含む。麦芽は、仕込工程において、麦芽自身の酵素等によって該麦芽中の炭水化物とタンパク質とが分解され、発酵工程において、酵母によって炭水化物の分解生成物からアルコールと二酸化炭素が生成される。本明細書において、麦芽から糖化・発酵により得られる成分を「麦芽由来成分」という。麦芽由来成分としては、例えば、アルコール、二酸化炭素の他、非発酵性の糖、アミノ酸やペプチド等の窒素化合物等が挙げられる。
本発明の麦芽発酵飲料は、更に麦芽以外の穀物や炭水化物を原料として含むことができる。これらは、大部分が、麦芽と同様に、仕込工程において炭水化物とタンパク質とが分解され、発酵工程において炭水化物の分解生成物からアルコールと二酸化炭素を生成できる。具体例としては、大麦、小麦、エン麦等の麦類、米、とうもろこし(コーン)、スターチ、こうりゃん、大豆等の豆類、ばれいしょ等のイモ類等の穀物原料や、液糖や砂糖等の糖質原料が挙げられる。麦芽以外の穀物や炭水化物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、麦芽に加えて他の穀物原料や糖質原料を用いる場合は、麦芽がこれら原料の主成分(最も重量割合の高い成分)であることが好ましい。本発明の麦芽発酵飲料において、原料として含まれる麦芽以外の穀物原料と糖質原料の合計は、麦芽100重量部に対して1~100重量部であることが好ましい。
穀物原料は、細断処理や粉砕処理したものを用いてもよい。穀物原料の細断処理や粉砕処理は、常法により行うことができる。穀物原料の粉砕物としては、麦芽粉砕物、コーンスターチ、コーングリッツ等のように、粉砕処理の前後において通常なされる処理を施したものであってもよい。例えば麦芽粉砕物は、大麦を常法により発芽させ、これを乾燥後、所定の粒度に粉砕することにより、製造することができる。その他、穀物原料としては、凍結乾燥等の乾燥処理をしたものを用いてもよい。また、含有する澱粉の糊化処理を施したものを用いてもよい。穀物原料の種類によっては、予め澱粉を糊化しておくことにより、糖化を効率よく行うことができる。糊化方法は特に限定されるものではなく、蒸す等の常法により行うことができる。
本発明の麦芽発酵飲料は、更に香辛料を原料として含む。香辛料とは、辛味または香り・色等を付与することができる物質であるが、少なくとも辛味を付与することができる辛味香辛料であることが好ましい。原料の一部として香辛料を用いることで香辛料の刺激によって、麦芽発酵飲料の軽快さを向上させることができるが、驚くべきことに、飲み応えと継続飲用意向をも向上させることができる。
香辛料の具体例としては、唐辛子、胡椒、山椒、生姜、玉ねぎ、にんにく、辛子、山葵、大根等の辛味香辛料が好適に挙げられ、これらの中でも唐辛子が特に好適である。これら香辛料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、香辛料は、乾燥処理、細断処理、粉砕処理、摩砕処理等を施したものを用いてもよい。
また、唐辛子等の天然物に含まれる辛味成分を単離したものを香辛料として用いてもよい。例えば、唐辛子から辛味成分を抽出したものを唐辛子抽出物と称する。抽出方法を例示すると、唐辛子等の天然物を乾燥・粉砕した後、水、有機溶媒(好ましくはエタノール等のアルコール)又はそれらの混合溶媒で抽出を行い、必要に応じて溶媒の留去を行う。
また、辛味成分そのものを香辛料として用いることもできる。この場合、辛味成分は、例えば、合成により得られたものや、抽出物から蒸留により得られたものを使用できる。辛味成分の具体例としては、唐辛子の辛味成分であるカプサイシン、胡椒の辛味成分であるピペリン、山椒の辛味成分であるサンショール、生姜の辛味成分であるジンゲロール、玉ねぎやにんにくの辛味成分である硫化アリル、辛子、山葵、大根の辛味成分であるアリルイソチオシアネート等が挙げられる。
本発明の麦芽発酵飲料において、原料として含まれる香辛料の量は、天然物、抽出物、辛味成分等の形態によって異なるが、香辛料が唐辛子等の天然物である場合、原料として含まれる香辛料の量は、麦芽100重量部に対して0.001~0.1重量部であることが好ましい。また、本発明の麦芽発酵飲料において、香辛料は、唐辛子、唐辛子抽出物又はカプサイシンを含むことが好ましく、香辛料中に占める唐辛子、唐辛子抽出物又はカプサイシンの割合は、50重量%以上が好ましく、90重量%以上が更に好ましく、唐辛子、唐辛子抽出物又はカプサイシンのみであることが特に好ましい。
本発明の麦芽発酵飲料は、上述のとおり米を原料として含むことができるが、焙煎米を原料として含むことが好ましい。本明細書において「焙煎米」とは、焙煎した米であり、焙煎に特有の香り付けが施された米である。香辛料に加えて焙煎米を原料の一部に用いることで、飲み応えと継続飲用意向を更に向上させることができる。特に、継続飲用意向の向上効果は顕著である。
なお、焙煎米も、麦芽と同様に、仕込工程において焙煎米中の炭水化物とタンパク質とが分解され、発酵工程において炭水化物の分解生成物からアルコールと二酸化炭素を生成できる。本明細書において、焙煎米から糖化・発酵により得られる成分を「焙煎米由来成分」という。焙煎米由来成分としては、例えば、アルコール、二酸化炭素の他、非発酵性の糖やアミノ酸やペプチド等の窒素化合物等が挙げられる。
焙煎方法としては、例えば、砂焙煎、釜焙煎、熱風焙煎、ドラム焙煎、遠赤外線焙煎等が挙げられ、バッチ式でも連続式でもよいが、連続式砂焙煎が好ましい。本発明の麦芽発酵飲料において、焙煎米の焙煎度は、L値が30~70であることが好ましい。本明細書において焙煎度を示す「L値」とは、黒のL値を0とし、白のL値を100として、焙煎米の明度を色差計で測定したものである。
本発明の麦芽発酵飲料において、焙煎米の米は、精米であることが好ましい。ここで、精米とは、玄米から糠の全部又は一部を取り除いた米である。本発明の麦芽発酵飲料においては、焙煎米として市販品を使用することができる。
本発明の麦芽発酵飲料において、原料として含まれる焙煎米の量は、麦芽100重量部に対して1~100重量部であることが好ましい。
本発明の麦芽発酵飲料がビールテイスト飲料である場合、本発明の麦芽発酵飲料は、ホップを原料として含むことが好ましい。ホップとは、ビールテイスト飲料にビールの風味及び苦味を付与する原料として通常使用される。なお、ホップは、ホップ加工品として用いることもできる。ホップ加工品とは、上記ホップを種々加工して得られたホップ製品をいう。ホップ加工品には、例えば、ホップを乾燥しただけの乾燥毬花、ホップをペレット状にしたホップペレット、ホップを有機溶媒や炭酸ガスで抽出したホップエキス、ホップをイソ化させたイソ化ホップエキス等が含まれる。
本発明の麦芽発酵飲料は、苦味価(B.U)が10以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましい。また、苦味価(B.U)は、50以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましい。苦味価は、例えば、EBC(European Brewery Convention)のAnalytica-EBC標準法に従い、測定することができる。
本発明の麦芽発酵飲料は、飲用水を原料として含む。本発明の麦芽発酵飲料には、必要に応じて、果実(果汁や果実の乾燥物、果実からの抽出物も含まれる)、野菜(野菜汁や野菜の乾燥物、野菜からの抽出物も含まれる)、甘味料、色素、香料等、麦芽発酵飲料に香り、味又は色を付けることが可能な材料を原料として含んでもよい。また、本発明の麦芽発酵飲料には、必要に応じて、pH調整剤(重曹など)、ビタミン類、ペプチド、アミノ酸、水溶性食物繊維、酸化防止剤、安定化剤、乳化剤等、食品分野で通常用いられている原料や食品添加物を原料として用いてもよい。
本発明の麦芽発酵飲料は、原麦汁エキスの値について特に制限されるものではないが、原麦汁エキスが15重量%以下であることを例示することができ、12.5重量%以下であることが好ましい。また、本発明の麦芽発酵飲料において、原麦汁エキスは、8重量%以上であることを例示することができ、10重量%以上であることが好ましい。一般に、原麦汁エキス値を高くすることで、麦芽発酵飲料の飲み応えを高めることができ、また、原麦汁エキス値を低くすることで、麦芽発酵飲料の軽快さを高めることができる。
本明細書において、原麦汁エキスは、糖化処理後の麦汁中に含有されているエキスであり、「BCOJビール分析法(日本醸造協会発行、ビール酒造組合編集、2004年11月1日改訂版)」に記載された方法により、求めることができる。
本発明の麦芽発酵飲料は、外観最終発酵度の値について特に制限されるものではないが、外観最終発酵度が90%以上であることを例示することができ、93%以上であることが好ましい。一般に、外観最終発酵度を高くすることで、麦芽発酵飲料の軽快さを高めることができる。なお、例えば原麦汁エキスが12.5重量%以下であるような一般的なビールの原麦汁エキス程度以下である麦芽発酵飲料において、外観最終発酵度を高くしすぎると、水っぽさが顕著になる場合があるが、本発明の麦芽発酵飲料においては、外観最終発酵度が93%以上である場合であっても、水っぽさを感じさせず飲み応えがある麦芽発酵飲料を提供することができる。また、本発明の麦芽発酵飲料において、外観最終発酵度は、105%以下であることを例示することができ、102%以下であることが好ましい。
本発明において、外観最終発酵度とは、発酵前の液に含まれる全糖濃度のうち、酵母がアルコール発酵の栄養源として消費できる糖濃度の占める割合を意味する。例えば、原材料として麦芽を用いた麦芽発酵飲料の外観最終発酵度「Vs end」は、下記式(1)により、求めることができる。
式(1) Vs end(%)=100×(P-Es end)/P
ここで、式(1)中、「Es end」は、酵母が消費可能な残存糖分を酵母添加によって全て消費させた場合の、麦芽発酵飲料の外観エキスを示す。外観エキスは、例えば、「BCOJビール分析法(日本醸造協会発行、ビール酒造組合編集、2004年11月1日改訂版)」に記載されるように、下記式(2)によって求めることができる。
式(2) Es end=-460.234+662.649×SGEA-202.414×SGEA
ここで、式(2)において、SGEAは、ガス抜き麦芽発酵飲料の比重である。また、式(1)中、「P」は、原麦汁エキスであり、「BCOJビール分析法(日本醸造協会発行、ビール酒造組合編集、2004年11月1日改訂版)」に記載された方法により、求めることができる。尚、原材料として麦芽以外の原料を用いた麦芽発酵飲料の外観最終発酵度も、上述した方法に準じて、求めることができる。また、外観エキス「Es end」は、原麦汁エキス「P」よりも大きな値になることがあるため、外観最終発酵度が100%を超える場合があることにも留意されたい。外観最終発酵度は、例えば、糖化条件、原料を糖化させる際の酵素の使用有無、及び、原材料の種類や配合量などを調整することにより、制御することができる。例えば、糖化時間を長くすれば、酵母が使用する事ができる糖濃度を高めることができ、外観最終発酵度を高めることができる。
本発明の麦芽発酵飲料中において、糖質含量は、1~4g/100mlであることを例示することができる。本明細書において、糖質とは、食物繊維ではない炭水化物をいう。
本発明の麦芽発酵飲料中において、アミノ酸濃度は、アミノ態窒素(A-N)として5~20mg/100mLであることを例示することができる。
なお、アミノ態窒素(A-N)とは、アミノ態窒素の濃度[mg/100mL]を意味し、例えばニンヒドリン法(ビール酒造組合:ビール分析法、8.18(1990))により分析することができる。
本発明の麦芽発酵飲料は、通常、二酸化炭素を含有する発泡性飲料であるが、非発泡性飲料であってもよい。
本発明の麦芽発酵飲料は、その種類に応じてpHを適宜設定できるが、そのpHは、例えば2.5~5.0の範囲に調整される。
なお、原料である麦芽は、最終飲料において「麦芽由来成分」として存在していることから、本発明の第一の飲料である麦芽発酵飲料を、麦芽由来成分及び香辛料を含む飲料として表現することができる。即ち、本発明の第二の飲料は、麦芽由来成分及び香辛料を含む飲料である。また、原料として使用できる焙煎米は、最終飲料において「焙煎米由来成分」として存在していることから、本発明の第二の飲料は、麦芽由来成分、焙煎米由来成分及び香辛料を含む飲料であることが好ましい。
本発明の第二の飲料における他の実施態様は、本発明の麦芽発酵飲料の説明において記載されているとおりである。具体的に例を挙げれば、本発明の第二の飲料は、ビールテイスト飲料であることが好ましい。また、本発明の第二の飲料において、原麦汁エキスは12.5重量%以下であることが好ましい。本発明の第二の飲料において、外観最終発酵度は93%以上であることが好ましい。本発明の第二の飲料において、香辛料は、唐辛子、唐辛子抽出物又はカプサイシンを含むことが好ましい。本発明の第二の飲料において、焙煎米の米は精米であることが好ましい。
次に、本発明の飲料の製造方法を詳細に説明する。本発明の飲料の製造方法は、少なくとも麦芽及び香辛料を原料として用い、麦芽の糖化を行い、次いで糖化により得られる麦汁の発酵を行う。本発明の飲料の製造方法は、上述した本発明の第一及び第二の飲料を製造できる方法であり、飲み応えがあり継続飲用意向も高い麦芽発酵飲料を提供することができる。
本発明の飲料の製造方法は、少なくとも麦芽及び香辛料を原料として用いるものであるが、焙煎米を原料として含むことが好ましい。香辛料に加えて焙煎米を原料の一部に用いることで、飲み応えと継続飲用意向を更に向上させることができる。特に、継続飲用意向の向上効果は顕著である。また、麦芽発酵飲料がビールテイスト飲料である場合、本発明の飲料の製造方法は、ホップを原料として含むことが好ましい。
なお、本発明の飲料の製造方法に原料として使用できる物質は、本発明の麦芽発酵飲料の説明において記載したとおりである。
本発明の飲料の製造方法は、麦芽の糖化を行う工程(仕込工程という)を含む。仕込工程では、原料である麦芽と、必要に応じて使用される他の穀物原料や糖質原料の澱粉質から麦汁を調製する。仕込工程では、麦芽や他の穀物原料や糖質原料と、温水とを仕込槽に加えて混合してマイシェを調製する。ここで、麦芽や他の穀物原料は、細かく砕いた形状で使用されることが好ましい。マイシェの調製は、常法により行うことができ、例えば、40~60℃で20~90分間保持することにより行うことができる。また、必要に応じて、他の原料や、糖化酵素やプロテアーゼ等の酵素剤等を添加してもよい。本発明において、糖化酵素とは、澱粉質を分解して糖を生成する酵素を意味し、麦芽自身にも含まれるものであるが、例えば、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルナラーゼ等がある。
本発明の飲料の製造方法においては、麦芽と共に焙煎米の糖化を行うことが好ましい。本発明の飲料の製造方法が焙煎米を原料として用いる場合、焙煎米は、通常、仕込工程において麦芽と共に仕込槽に加えられる。
その後、該マイシェを徐々に昇温して所定の温度で一定期間保持することにより、麦芽由来の酵素やマイシェに添加した酵素を利用して、澱粉質を糖化させる(糖化処理)。糖化処理時の温度や時間は、用いる酵素の種類やマイシェの量、目的とする麦芽発酵飲料の品質等を考慮して、適宜決定することができ、例えば、60~72℃にて30~90分間保持することにより行うことができる。糖化処理後、76~78℃で10分間程度保持した後、マイシェを麦汁濾過槽にて濾過することにより、固形分が除去された麦汁を得る。その他、麦芽の一部、他の穀物原料や糖質原料の一部又は全部、及び温水を仕込釜に加えて混合して調製したマイシェを、糖化処理した後、前述の仕込槽で糖化させたマイシェと混合したものを、麦汁濾過槽にて濾過することにより麦汁を得てもよい。
上記仕込工程においては、糖化処理後の麦汁を煮沸する(煮沸処理)。なお、原麦汁エキス量を調整するため、煮沸処理を行う前に水を麦汁に加えてもよい。麦芽発酵飲料がビールテイスト飲料である場合、通常、得られた麦汁を煮沸釜に移し、ホップを加えて煮沸する。ホップは、煮沸開始から煮沸終了前であればどの段階で混合してもよい。また、必要に応じて、ホップ以外の原料を麦汁に加えることもできる。煮沸した麦汁を、ワールプールと呼ばれる沈殿槽に移し、煮沸により生じたホップ粕や凝固したタンパク質等を除去した後、プレートクーラーにより適切な発酵温度まで冷却する。該発酵温度は、通常8~15℃である。
本発明の飲料の製造方法は、香辛料を原料として用いるが、香辛料は、糖化・煮沸・発酵等の処理を受ける必要がないため、香辛料を添加するタイミングは任意であるものの、麦汁の発酵を行う前に香辛料を麦汁に加えることが好ましい。例えば、糖化処理後の麦汁に香辛料を加えることが好ましく、煮沸処理後の麦汁に香辛料を加えることが更に好ましい。
本発明の飲料の製造方法は、更に、仕込工程により得られる麦汁の発酵を行う工程(発酵工程という)を含む。発酵工程では、冷却した麦汁又は必要に応じて香辛料等の任意の原料を加えた麦汁に、酵母を加えて発酵タンクに移し、発酵を行う。発酵温度は、通常8~15℃であり、その期間は3日間から10日間が好ましい。発酵に用いる酵母は特に限定されるものではなく、麦汁中の糖質をアルコールと二酸化炭素に分解できる酵母であれば使用できるが、通常、酒類の製造に用いられる酵母の中から適宜選択して用いることができる。例えば、麦芽発酵飲料がビールテイスト飲料である場合、ビール酵母を用いることができる。なお、上面発酵酵母であってもよく、下面発酵酵母であってもよい。発酵工程後の発酵液を濾過することにより酵母等を除去して、麦芽発酵飲料を製造することができる。
本発明の飲料の製造方法は、発酵工程により得られる発酵液を熟成させる工程(貯酒工程)を含むことができる。貯酒工程では、発酵工程により得られる発酵液を、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させる。熟成後の発酵液を濾過することにより酵母等を除去して、麦芽発酵飲料を製造することができる。
本発明の飲料の製造方法においては、所望のアルコール濃度とするために、発酵工程又は貯酒工程により得られる発酵液の濾過前又は濾過後に適量の加水を行って希釈してもよい。また、本発明の飲料の製造方法においては、発酵工程又は貯酒工程により得られる発酵液の濾過前又は濾過後に、炭酸ガスや麦芽発酵飲料に香り、味又は色を付けることが可能な材料を添加してもよい。
本発明の飲料の製造方法においては、発酵工程又は貯酒工程により得られる発酵液の濾過前又は濾過後に、アルコール含有蒸留液を混和して、リキュール類等としてもよい。ここで、アルコール含有蒸留液とは、蒸留操作により得られたアルコールを含有する溶液である。該アルコール含有蒸留液は、可食性のものであれば、特に限定されるものではなく、一般に蒸留酒に分類されるものを用いることができる。該アルコール含有蒸留液として、例えば、スピリッツ、ウィスキー、ブランデー、ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン、焼酎等がある。呈味に対する影響が少なく、麦芽感等を損なうおそれが小さいため、該アルコール含有蒸留液は、スピリッツであることがより好ましい。
本発明の製造方法により得られる麦芽発酵飲料は、瓶、缶、樽等の容器に充填・密封することにより、容器詰飲料として提供することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
<試験品の調製例>
(サンプルA)
・仕込工程
粉砕した麦芽40kg、粉砕した白米10kg、温水を原料として仕込槽に加えて混合してマイシェを調製した。次いで、糖化を行った後、76℃で酵素を失活させ、得られた液(麦汁)を濾過した。濾過後、麦汁を煮沸釜に入れ、200Lになるように水を加えた後、ホップを適量添加した。ホップ添加後90分煮沸し、180Lの麦汁を得た。その後、湯を加え200Lになるように液量を再調整した後、ワールプール(旋回分離槽)で固液分離を行った。固液分離後、熱交換器によって麦汁を冷却した。
・発酵工程
仕込工程において得られた麦汁に、酵母を加えて発酵タンクに移し、発酵を行った。発酵後の発酵液を濾過により清澄化し、1.2倍の容量に希釈後、容器に充填し、ビールテイスト飲料(サンプルA)を製造した。なお、サンプルAは、原麦汁エキスが12質量%であり、外観最終発酵度が95%であり、アルコール含量が6%であり、pHが4.4であった。
(サンプルB)
仕込工程において、煮沸後の麦汁に唐辛子5gを加えた以外は、サンプルAの調製例と同様にして、原麦汁エキスが12質量%であり、外観最終発酵度が95%であり、アルコール含量が6%であり、pHが4.4であるビールテイスト飲料(サンプルB)を製造した。
(サンプルC)
仕込工程において、粉砕した白米10kgに代えて粉砕した焙煎米10kgを用いた以外は、サンプルAの調製例と同様にして、原麦汁エキスが12重量%であり、外観最終発酵度が95%であり、アルコール含量が6%であり、pHが4.4であるビールテイスト飲料(サンプルC)を製造した。なお、使用した焙煎米は、精米を焙煎したものであり、焙煎方式は連続式砂焙煎であり、焙煎度はL=53であった。
(サンプルD)
仕込工程において、粉砕した白米10kgに代えて粉砕した焙煎米10kgを用いた以外は、サンプルBの調製例と同様にして、原麦汁エキスが12重量%であり、外観最終発酵度が95%であり、アルコール含量が6%であり、pHが4.4であるビールテイスト飲料(サンプルD)を製造した。なお、使用した焙煎米は、サンプルCと同一の焙煎米であった。
<官能評価>
調製されたビールテイスト飲料について、訓練された5名のパネリスト(女性20代:1名、男性20代:1名、女性30代:1名、男性30代:1名、男性40代:1名)により、「軽快さ」、「飲み応え」及び「継続飲用したいか」を1点から5点の5段階で評価した。パネリストの平均点を表1に示す。
・「軽快さ」については、点数が低いほど軽快でなく、点数が高いものほど軽快であることを示す。
・「飲み応え」については、点数が低いほど飲み応えがなく、点数が高いものほど飲み応えがあることを示す。
・「継続飲料したいか」については、点数が低いほど継続飲用意向が低く、点数が高いものほど継続飲用意向が高いことを示す。
Figure 0007144194000001
<試験結果>
表1から以下のことが分かる。
・サンプルBは、麦芽、白米及び唐辛子を原料として含む麦芽発酵飲料であるが、サンプルAと比較して軽快さを向上させ、更には飲み応えと継続飲用意向をも向上させることができる。
・サンプルCは、麦芽及び焙煎米を原料として含む麦芽発酵飲料であるが、サンプルAと比較して飲み応えを向上できるものの、軽快さ及び継続飲用意向を低下させている。
・サンプルDは、麦芽、焙煎米及び唐辛子を原料として含む麦芽発酵飲料であるが、サンプルAと比較して、飲み応え及び継続飲用意向を向上させることができる。サンプルCの結果から分かるように、焙煎米の使用は継続飲用意向を低下させる傾向にあるが、香辛料を原料として含む麦芽発酵飲料に焙煎米を使用した場合、香辛料に由来する継続飲用意向の向上効果より大きな継続飲用意向の向上効果を得ることができる。

Claims (11)

  1. 麦芽及び香辛料を原料として含み、外観最終発酵度が93%以上である、麦芽発酵飲料。
  2. 更に焙煎米を原料として含む、請求項1に記載の麦芽発酵飲料。
  3. 麦芽由来成分及び香辛料を含み、外観最終発酵度が93%以上である麦芽発酵飲料。
  4. 更に焙煎米由来成分を含む、請求項3に記載の飲料。
  5. 原麦汁エキスが12.5重量%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料。
  6. 前記香辛料が、唐辛子、唐辛子抽出物又はカプサイシンを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の飲料。
  7. 前記焙煎米の米が精米である、請求項1~のいずれか一項に記載の飲料。
  8. ビールテイスト飲料である、請求項1~のいずれか一項に記載の飲料。
  9. 少なくとも麦芽及び香辛料を原料として用い、
    麦芽の糖化を行い、次いで糖化により得られる麦汁の発酵を行う、請求項1~のいずれか一項に記載の飲料の製造方法。
  10. 更に焙煎米を原料として用い、麦芽と共に焙煎米の糖化を行う、請求項に記載の飲料の製造方法。
  11. 麦汁の発酵を行う前に前記香辛料を麦汁に加える、請求項又は10に記載の飲料の製造方法。
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