JP2010207213A - 玄米を用いたビールテイスト飲料およびその製造方法 - Google Patents

玄米を用いたビールテイスト飲料およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】玄米を原料の1つとして用いたビールテイスト飲料の製造において、玄米由来の好ましくない雑味や後味の悪さを低減させた飲料を得ることを目的とする。
【解決手段】玄米を原料の1つとして用いたビールテイスト飲料の製造方法において、玄米を麦芽とともに仕込釜に投入する。仕込釜に投入する麦芽としては、TN値が1.8以上であり、DP値が280以上である麦芽を用いることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、風味に優れたビールテイスト飲料の製造方法に関し、より詳しくは、玄米を原料の1つとして使用したビールテイスト飲料の製造において、玄米を麦芽とともに仕込釜に投入し、麦芽に内在する麦芽成分や酵素類などとともに蒸煮することによって、玄米由来の好ましくない香味を低減し、風味に優れたビールテイスト飲料を製造する方法に関する。
玄米は白米と比べ、タンパク質、アミノ酸、脂質、ミネラルなどに富み、栄養効果が高いが、酒に雑味、後味の悪さなどの好ましくない影響を及ぼすことが知られており、酒類の原料としてはあまり好まれてはこなかった。ビールの分野でも、主に精白された白米が用いられており、雑味や後味の悪さの原因となる玄米をビールの原料として使用する例は極めて少ない。
特許文献1には、玄米の豊富な栄養素に着目し、玄米を用いて健康志向のビールを製造することが記載されており、その際、玄米を分解しやすくするために、まず玄米を50℃から100℃の間で段階的に昇温して玄米の糖化液を作成し、次いで、麦芽と合併することが記載されている。
特許文献2には、ギャバ(GABA、すなわちガンマアミノ酪酸)を一定量以上含有するアルコール飲料が記載されており、そのような飲料を製造するための原料の1つとして、発芽玄米を用いてもよい旨が記載されている。
特開2008−43279号公報 特開2003−250512号公報
しかしながら、特許文献1にも2にも、玄米がビールに与える雑味、後味の悪さなどの好ましくない影響については一切記載されておらず、玄米を用いた風味に優れたビールテイスト飲料は実現できていなかった。
上記のとおり、玄米は白米に比べて栄養分が高いという利点を有するが、ビールテイスト飲料の原料として使用すると、白米を使用したビールテイスト飲料に比べ、雑味があり、後味の悪い飲料となってしまうという問題があった。本発明は、玄米がビールテイスト飲料に与える好ましくない香味を低減し、雑味がなく、後味のよい、消費者の健康志向にも沿う風味の優れたビールテイスト飲料を製造する方法を提供するものである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、玄米を使用したビールテイスト飲料の製造において、玄米を麦芽とともに仕込釜に投入することにより、玄米がビールテイスト飲料に与える好ましくない香味を低減させ、優れた風味を有するビールテイスト飲料を製造できることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の通りである。
1. 玄米を原料の1つとして使用したビールテイスト飲料の製造方法において、玄米を麦芽とともに仕込釜に投入することを含む、ビールテイスト飲料の製造方法。
2. 仕込釜において、玄米を麦芽とともに80℃以上の温度に加熱することを含む、上記1に記載の製造方法。
3. 仕込釜において、玄米を麦芽とともに90℃以上100℃以下の温度に加熱することを含む、上記1に記載の製造方法。
4. 仕込釜に投入する麦芽に対する玄米の比率が、重量基準で、0.1〜10倍である、上記1〜3のいずれかに記載の製造方法。
5. 仕込釜に投入する麦芽の少なくとも一部が、1.8以上のTN値を有する麦芽である、上記1〜4のいずれかに記載の製造方法。
6. 仕込釜に投入する麦芽の少なくとも一部が、280以上のDP値を有する麦芽である、上記1〜5のいずれかに記載の製造方法。
7. 更に、少なくとも色麦芽を仕込槽に投入することを含む、上記1〜6のいずれかに記載の製造方法。
8. 仕込釜にプロテアーゼを添加しないことを特徴とする、上記1〜7のいずれかに記載の製造方法。
9. 上記1〜8のいずれかに記載の方法で製造されたビールテイスト飲料。
10. ビールテイスト飲料が発酵アルコール飲料であることを特徴とする上記9に記載のビールテイスト飲料。
11. ビールテイスト飲料が日本の酒税法における発泡酒である、上記10に記載のビールテイスト飲料。
本発明によれば、消費者の健康志向に沿う栄養価の高い玄米を用いたビールテイスト飲料において、玄米の有する雑味や後味の悪さが抑えられた、優れた風味を有するビールテイスト飲料を得ることができる。
また、本発明により製造される玄米を用いたビールテイスト飲料は、雑味がなく後味がよいという上記の特徴に加え、従来の白米を用いたビールテイスト飲料に比べて、ふくよかな味わい(味の厚み)が増強されているという利点も有する。
また、本発明のビールテイスト飲料の製法では、玄米を麦芽とともに仕込釜に投入して麦芽由来の酵素類とともに蒸煮するので、玄米由来の成分は、麦芽由来の酵素類により十分に分解され、糖化工程においてプロテアーゼを添加する必要がないという利点を有する。
(玄米)
玄米とは、イネ科の植物のイネの種子である籾(もみ)から籾殻(もみがら)を除去した状態で、まだ精白されていない状態の米をいう。なお、白米とは、玄米を精白することにより、玄米から米糠(こめぬか)を除去して胚乳部分を残したものをいう。
本発明でいう玄米とは、まだ精白されていない状態の米をいい、粉砕、乾燥、その他の加工の有無に制限されない。玄米を粉砕する場合は、当業者に慣用される通常の粉砕機を用いることができる。また、玄米を乾燥する場合は、当業者に慣用される通常の乾燥機を用いることができる。
本発明で用いる玄米は、発芽させたものであっても未発芽のものであってもよい。発芽玄米を用いる場合には、当業者に慣用される方法により玄米を発芽させることができる。例えば、玄米を10〜20℃の水中に一晩浸漬し、水切りし、室温かつ高湿度の状況下で数日間放置することにより、発芽させることができる。本発明においては、発芽工程を必要とする発芽玄米よりも、発芽工程を必要としない未発芽の玄米を用いる方がコストの面から好ましい。
(麦芽)
麦芽とは、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦などの麦類の種子を発芽させて乾燥させ、除根したものをいう。中でも、本発明に用いる麦芽としては、日本のビールテイスト飲料の原料として最も一般的に用いられる麦芽の1つである大麦麦芽を用いることが好ましい。大麦には、二条大麦、六条大麦などの種類があるが、いずれでもよい。また、麦芽の産地も特に限定されるものではない。本発明において、麦芽として、通常麦芽のほか、高タンパク質の麦芽、高酵素力の麦芽、色麦芽なども用いることができる。
(高タンパク質の麦芽)
本発明において、「高タンパク質の麦芽」とは、タンパク質の量が通常の麦芽に比べて多い麦芽をいい、具体的には、TN(全窒素)値が1.8以上である麦芽をいう。TN(全窒素)値は、麦芽におけるタンパク質の量の指標として、ビール・麦芽業界において一般的に用いられる値であり、当業者に周知の方法で容易に測定することができる(例えば、「改訂 BCOJビール分析法 4.5、 ビール酒造組合国際技術委員会(分析委員会)編 財団法人 日本醸造協会」を参照)。高タンパク質の麦芽は、市販されており、当業者が容易に入手することができる。
(高酵素力の麦芽)
本発明において、「高酵素力の麦芽」とは、酵素力(ジアスターゼ力、DPともいう)が通常の麦芽に比べて高い麦芽をいい、具体的には、DP値が280以上の麦芽をいう。酵素力(ジアスターゼ力、DP)値は、麦芽のデンプン分解能の指標として、ビール・麦芽業界において一般的に用いられる値であり、当業者に周知の方法で容易に測定することができる(例えば、「改訂 BCOJビール分析法 4.4.1、 ビール酒造組合国際技術委員会(分析委員会)編 財団法人 日本醸造協会」を参照)。高酵素力の麦芽は、市販されており、当業者が容易に入手することができる。
なお、本願明細書では、高タンパク質の麦芽(TN値が1.8以上)、高酵素力の麦芽(DP値が280以上)に対して、TN値が1.8未満であり、かつDP値が280未満である麦芽を、「一般の麦芽」又は「通常麦芽」と呼ぶこともある。
(色麦芽)
本発明において、色麦芽とは、EBC(European Brewing Convention、欧州ビール醸造協議会)にて定められた色度が10以上、好ましくは50以上の麦芽をいう。本発明では、色麦芽を原料の1つとして用いて、飲料の色を調整してもよい。色麦芽のEBC色度の上限は特に限定されないが、色度が高すぎる麦芽を用いると、飲料にややコゲ臭がつくなどの影響がでる場合もあるため、好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下、さらに好ましくは500以下、最も好ましくは200以下のEBC色度の色麦芽を用いるとよい。したがって、色麦芽のEBC色度の範囲は、特に制限されるものではないが、好ましくは10〜2000であり、より好ましくは50〜1000であり、さらに好ましくは、50〜500であり、最も好ましくは50〜200である。EBC色度の測定方法は、当業者に広く知られており、例えば、「改訂 BCOJビール分析法 4.3.8、ビール酒造組合国際技術委員会(分析委員会)編 財団法人 日本醸造協会」を参照することにより、当業者が容易に測定できる。
色麦芽は市販されており、また当業者が周知の方法で容易に製造することができる。様々な製造法があるが、例えば、発芽させた大麦種子を焙燥する工程において、焙燥温度や時間を調整することにより製造することができる。また、色麦芽は、EBC色度が10未満の麦芽を加熱処理することによっても製造することができる。EBC色度が10以上である色麦芽の例としては、ブリュー麦芽(EBC色度10程度)、メラノイジン麦芽(EBC色度50程度)、カラメル麦芽(EBC色度150程度)、黒麦芽(EBC色度1800程度)、ロースト麦芽、チョコレート麦芽、クリスタル麦芽などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(ビールテイスト飲料)
本発明における「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつ飲料をいう。つまり、本発明のビールテイスト飲料は、特に断わりがない場合、酵母による発酵工程を経る経ないにかかわらず、ビール風味の飲料を全て包含する。本発明のビールテイスト飲料の種類としては、例えば、日本の酒税法上の名称における発泡酒、ビール、リキュール類、その他雑酒が含まれ、また、低アルコールの発酵飲料(例えばアルコール分1%未満の発酵飲料)、スピリッツ類、ノンアルコールのビールテイスト飲料、ビールテイストの清涼飲料なども含まれる。
本発明のビールテイスト飲料のアルコール分は特に限定されないが、好ましくは0〜40%(v/v)、より好ましくは1〜15%(v/v)である。特にビールや発泡酒といったビールテイスト飲料として消費者に好んで飲用されるアルコールと同程度の濃度、すなわち、1〜7%(v/v)の範囲であることが望ましいが、特に限定されるものではない。
(ビールテイスト飲料の原料)
本発明でいうところの「ビールテイスト飲料の原料」とは、ビールテイスト飲料を製造するために使用される原料、すなわち、水、穀物、糖類、ホップ、及び各種添加物をいう。穀物としては、例えば、麦(大麦、小麦、ハト麦、ライ麦、エン麦、それらの麦芽など)、米(白米、玄米など)、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、豆(大豆、えんどう豆など)、そば、ソルガム、粟、ひえ、及びそれらから得られたでんぷんなどが挙げられる。糖類としては、穀物由来のでんぷんを酸又は酵素などで分解した市販の糖化液や、市販の水飴などが挙げられる。このとき、糖類の形態としては特に制限されるものではなく、溶液などの液状でも、また、粉末などの固形物状でもよい。また、でんぷんの由来となる穀物の種類、でんぷんの精製方法、及び酵素や酸加水分解などの分解条件等についても特に制限はなく、例えば、酵素分解条件や酸加水分解条件を工夫することによりマルトースの比率を高めた糖類などを用いてもよい。それ以外にも、スクロース、フルクトース、グルコース、マルチュロース、トレハルロース、マルトトリオース及びこれらの溶液(糖液)などを用いることができる。各種添加物としては、タンパク質、タンパク質分解物、苦味料、着色料、酵母エキス、泡形成剤、香料、発酵促進剤などが挙げられる。日本の酒税法及び酒税法施行令では、ビールに使用することのできる原料は、麦芽、ホップ、水及び麦その他の政令で定める物品と規定されており、ビールの原料として政令で定める物品は、麦、米、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、でんぷん、糖類又は財務省令で定める苦味料若しくは着色料と規定されている。
本発明のビールテイスト飲料の製造法では、原料の一部として、少なくとも玄米と麦芽とを用い、その他の原料についても必要に応じて適宜用いることができる。
本発明のビールテイスト飲料における麦芽比率(水とホップを除く原料全体に対する麦芽の使用比率、重量比)は、特に限定されないが、好ましくは10〜95%、より好ましくは10〜90%、飲料の飲み応えと喉越しの爽快感のバランスを加味すれば、最も好ましくは15〜66%である。
また、本発明のビールテイスト飲料における、水とホップを除く原料全体に対する玄米の使用比率は、特に制限されないが、重量基準で、0.1〜90%、好ましくは1〜50%、さらに好ましくは5〜30%、最も好ましくは5〜20%である。また、麦芽に対する玄米の使用割合は、好ましくは、重量基準で、0.01〜2倍程度、より好ましくは、0.1〜1倍程度である。
(ビールテイスト飲料の製造)
本発明におけるビールテイスト飲料は、当業者に知られる通常の方法で製造することができる。すなわち、麦(大麦、小麦、麦芽など)、米(白米、玄米など)、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょなどの穀物、でんぷん、糖類、苦味料、又は着色料などの原料を、仕込釜又は仕込槽に投入し、必要に応じてアミラーゼなどの酵素を添加し、糊化、糖化を行なわせ、ろ過し、必要に応じてホップなどを加えて煮沸し、清澄タンクにて凝固タンパクなどの固形分を取り除く。発酵飲料を製造する際には、次いで酵母を添加して発酵を行なわせ、ろ過機などで酵母を取り除いて飲料とする。
本発明において、仕込釜とは、粉砕した原料を水とともに攪拌しながら室温〜100℃以上に保持できる容器のことをいう。仕込釜は当業者に周知の名称であり、煮沸釜、蒸煮釜などと呼ばれることもあるが、本発明では、これらの名称を総じて仕込釜という。仕込釜としては、粉砕した原料を水もしくは適当な温水とともに攪拌しながらある一定の温度で処理できる容器であり、80℃を超える温度、例えば100℃にて煮沸できる容器であれば、その大きさや材質、昇温能力、攪拌機の能力などに制限はない。また、必要に応じて100℃以上の高温に供することができる容器も存在するが、このような容器も仕込釜に含まれる。例えば、仕込釜は、500mLから100kL程度の容量で、1分間あたり2℃以上の昇温の能力を有するように設計されることが多いが、特に制限されるものではない。仕込釜で処理されたマッシュは通常、仕込槽に送られることから、仕込釜の容量は仕込槽の3分の2程度で設計されることも多いが、特に制限されることはない。仕込槽においてある一定の処理を行なったものを仕込釜に投入することもある。材質は、一般に仕込槽と同じ材質のものが多いが、特に制限されるものではない。
本発明において、仕込槽とは、粉砕した原料を水とともに攪拌しながらある一定の温度に保持できる容器をいう。仕込槽は当業者に周知の名称であり、糖化槽などと呼ばれることもあるが、本発明では、これらの名称を総じて仕込槽といい、その大きさや材質、攪拌機の能力などに制限はない。特に100℃にて煮沸できる必要はないが、80℃程度まで昇温できることが望ましい。当然ながら煮沸できる設計でもかまわない。例えば、仕込槽は、500mLから100kL程度の容量で1分間あたり1℃以上の昇温の能力を有するように設計されることが多いが、特に制限されることはない。仕込釜にて処理したものを仕込槽に投入することもできるし、仕込槽にてある一定の処理をしたものの全部または一部を、仕込釜に送ることもできる。また、仕込槽は、濾過機能を有する場合もある。仕込槽の材質は、一般に、銅製、クロムニッケル鋼製、ステンレス製などのものが多いが、特に制限されるものではない。
本発明においては、原料の一部として、少なくとも玄米と麦芽とを用い、玄米を麦芽とともに仕込釜に投入して玄米及び麦芽の糊化及び糖化を行なう。その際、通常、仕込釜において、段階的な昇温を行なう。昇温時の温度や時間については、十分な糊化及び糖化が進む条件であればいずれの条件でも良いが、最高温度としては、80℃以上に昇温することが好ましい。加圧の可能な仕込釜を用いて、100℃以上の温度、例えば、140℃程度まで昇温することも可能である。なお、コストや品質等を考慮した場合、最高温度が90℃以上100℃以下であることが望ましい。
仕込釜中の麦芽に対する玄米の比率は、0.1〜10倍程度が好ましく、0.5〜10倍程度がより好ましく、1〜5倍程度が最も好ましい。
仕込釜における固形分濃度は、高粘度による焦げ付きの防止や作業性を考慮して適宜設定することができる。
本発明では、仕込釜において、玄米を麦芽とともに蒸煮するため、玄米由来の成分が麦芽由来の酵素などにより十分に分解されるので、新たに酵素剤であるプロテアーゼを添加する必要が特にないという利点を有する。
仕込釜にて糖化した玄米及び麦芽は、次いで、麦芽を含有する仕込槽中に混合する。仕込槽では、通常、段階的な昇温を行なう。昇温時の温度や時間については、十分な糖化が進む条件であればいずれの条件でも良いが、最高温度としては、通常、60℃以上80℃以下の温度域に昇温することが好ましい。酵素活性制御や粘度の調整のためには、最高温度が70℃以上80℃以下であることが望ましい。
仕込釜に投入する麦芽に対する仕込槽に投入する麦芽の比率は、重量比で、好ましくは1〜30倍、より好ましくは2〜20倍、最も好ましくは3〜15倍程度である。仕込釜及び仕込槽としては、通常のビールテイスト飲料の製造に用いられる設備を用いることができ、その形式や性能は特に制限されない。
本発明では、玄米とともに仕込釜に投入する麦芽の少なくとも一部として、高タンパク質の麦芽(すなわち、TN値が1.8以上の麦芽)又は高酵素力の麦芽(すなわち、DP値が280以上の麦芽)、あるいは高タンパク質かつ高酵素力の麦芽(すなわち、TN値が1.8以上であり、かつDP値が280以上である麦芽)を用いると、得られるビールテイスト飲料の雑味がより低減され、また、後味がより良くなるので好ましい。高タンパク質の麦芽としては、より好ましくは、TN値が1.9以上、さらに好ましくは1.95以上、最も好ましくは2.0以上の麦芽を用いるとなおよい。また、高酵素力の麦芽としては、より好ましくは、DP値が320以上、更に好ましくは360以上、更に好ましくは370以上、最も好ましくは400以上の麦芽を用いるとなおよい。
製品中の麦芽の使用量の合計に対する高タンパク質の麦芽、高酵素力の麦芽、及び高タンパク質かつ高酵素力の麦芽の使用量の合計の割合は、好ましくは10〜100%であり、より好ましくは20〜100%であり、さらに好ましくは40〜100%であり、最も好ましくは50〜90%である。
仕込釜に、高タンパク質の麦芽、高酵素力の麦芽、又は高タンパク質かつ高酵素力の麦芽を、通常の麦芽(すなわち、TN値が1.8未満であり、かつDP値が280未満である麦芽)とともに投入する場合には、仕込釜中の麦芽の使用量の合計に対する高タンパク質の麦芽、高酵素力の麦芽、及び高タンパク質かつ高酵素力の麦芽の使用量の合計の割合が、重量基準で、10〜100%であることが好ましく、30〜100%がより好ましく、最も好ましくは50%〜100%である。
本発明において、仕込槽に投入する麦芽としては、高タンパク質の麦芽(すなわち、TN値が1.8以上の麦芽)、高酵素力の麦芽(すなわち、DP値が280以上の麦芽)、又は高タンパク質かつ高酵素力の麦芽(すなわち、TN値が1.8以上であり、かつDP値が280以上である麦芽)、或いは通常の麦芽(すなわち、TN値が1.8未満であり、かつDP値が280未満である麦芽)を、単独で、又は適宜混合して用いることができる。
本発明においては、得られるビールテイスト飲料のカラー(色度)を調整するために、麦芽の一部として、EBC色度が10以上の色麦芽を用いてもよい。色麦芽の使用割合は特に限定されないが、通常、麦芽の使用量全体に対して、重量基準で、1〜50%、好ましくは5〜40%、最も好ましくは10〜30%程度である。玄米の糊化・糖化を十分に進ませる必要がある中で、特に発泡酒では麦芽の使用比率に上限があることから、酵素力の低い色麦芽の使い方には留意が必要である。色麦芽を用いる場合には、色麦芽は、玄米などとともに仕込釜に投入してもよいが、仕込槽に投入する方が、玄米由来の雑味や後味の悪さがより低減されるから、好ましい。また、色麦芽は、一般に、その製造工程において加熱又は焙燥処理されており、酵素力が弱い(DP値が低い)ことが多いから、高酵素力の麦芽と組み合わせて用いて酵素力を補うことがより好ましい。よって、色麦芽を用いる場合には、仕込槽に、高酵素力(又は高酵素力かつ高タンパク質)の麦芽とともに、色麦芽を投入することが最も好ましい。この場合の仕込槽中の麦芽全体の使用量の合計に対する色麦芽の使用割合は、好ましくは、重量基準で、1〜100%、より好ましくは、2〜50%、最も好ましくは10〜30%である。
なお、色麦芽を用いる際には、種類の異なる色麦芽を適宜組み合わせて用いてもよいし、一種類の色麦芽を用いてもよい。
(ホップ)
本発明では、必要に応じてホップを用いてもよい。ホップを使用する際には、ビール等の製造に使用される通常のペレットホップ、粉末ホップ、ホップエキスを、所望の香味に応じて適宜選択して使用することができる。また、イソ化ホップ、ヘキサホップ、テトラホップなどのホップ加工品を用いてもよい。
(酵母)
発酵飲料を製造する際には、酵母を用いる。酵母の種類は特に限定されるものではないが、ビールテイスト飲料の醸造に適したビール酵母が好ましい。本発明で用いる酵母は、製造すべき発酵飲料の種類、目的とする香味や発酵条件などを考慮して自由に選択できる。例えばWeihenstephan−34株など、市販のビール酵母を用いることができる。酵母は、酵母懸濁液のまま発酵原液に添加しても良いし、遠心分離あるいは沈降により酵母を濃縮して得たスラリーを発酵原液に添加しても良い。また、遠心分離の後、完全に上澄みを取り除いたものを添加しても良い。酵母の発酵原液への添加量は適宜設定できるが、例えば、5×106cells/ml 〜1×108 cells/ml程度である。
本発明は発酵方法を選ばない。例えばビールテイスト飲料の場合、通常のビールや発泡酒の発酵温度である8〜25℃で、1週間から10日間発酵させてもよい。発酵中の昇温、降温、加圧などについても、特に制限はない。
(その他)
本発明では、必要に応じて、着色料、泡形成剤、香料、発酵促進剤などを用いてもよい。着色料は、飲料にビール様の色を与えるために使用するものであり、カラメル色素などを用いることができる。泡形成剤は、飲料にビール様の泡を形成させるため、あるいは飲料の泡を保持させるために使用するものであり、大豆サポニン、キラヤサポニン等の植物抽出サポニン系物質、コーン、大豆などの植物タンパクおよびペプチド含有物、ウシ血清アルブミン等のタンパク質系物質、酵母エキスなどを適宜使用することができる。香料は、ビール様の風味付けのために用いるものであり、ビール風味を有する香料を適量使用することができる。発酵促進剤は、酵母による発酵を促進させるために使用するものであり、例えば、酵母エキス、米や麦などの糠成分、ビタミン、ミネラル剤などを単独または組み合わせて適量使用することができる。
(容器)
本発明により得られた飲料は、通常の発酵飲料と同様、ビン、缶、樽、またはペットボトル等の密封容器に充填して、容器入り飲料とすることができる。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明を制限するものではない。
[参考例1]
玄米を用いた発泡酒と白米を用いた発泡酒を製造した例を下記に示す。対照品1では白米を、対照品2では玄米を、それぞれ単独で仕込釜に投入し、糖化を行なわせた後、仕込槽中の麦芽と混合した。
具体的には、粉砕した日本産玄米4kgを50℃の温水24Lと同時に仕込釜に入れて、よく攪拌しながら50℃にて30分間保持し、その後80℃にて20分間、100℃にて10分間保持した。一方で、粉砕した高タンパク質かつ高酵素力の北米産二条大麦麦芽(TN値=2.0、DP値=400)7kgを50℃の温水58Lとともに仕込槽に投入し、50℃で10分間保持した。仕込釜中の内容物を仕込槽中に投入し、65℃にて60分間保持し、その後80℃にて5分間保持した後、ろ過を行った。得られた麦汁に、麦芽比率が約24%になるように市販の糖液約18kgを添加し、よく攪拌して原麦汁エキスを約10に調整した麦汁を200L取り、市販の酵母エキス約600gと欧州産ホップ約200gを添加して100分間煮沸を行い、10℃に冷却後、約1kgのビール醸造用酵母を添加して1週間発酵させ、発泡酒(対照品2)を得た。同様に、対照品2における日本産玄米を日本産白米に置き換えた発泡酒(対照品1)を作成し、それぞれを比較評価した。
なお、官能評価は、訓練されたパネラー5名で次の4段階で評価した。
味の厚み:
4 深い味の厚みが感じられる
3 味の厚みが感じられる
2 味の厚みがあまり感じられない
1 味の厚みが感じられない
雑味:
4 雑味が感じられない
3 雑味があまり感じられない
2 雑味を感じる
1 雑味を非常に強く感じる
後味:
4 後味の悪さが感じられない
3 後味の悪さがあまり感じられない
2 後味の悪さを感じる
1 後味の悪さを非常に強く感じる
パネラー5名の評価結果を集計し、その平均値が1以上2未満の場合を×、2以上3未満の場合を△、3以上4以下の場合を○と表現し、3段階評価にして最終評価とした。結果を表1に示す。なお、表における「米比率」及び「麦芽比率」とは、水及びホップを除く原料全体に対する、各成分の使用比率(重量比)を示す。
Figure 2010207213
玄米を使用した発泡酒は、白米を使用した発泡酒に比べ、味の厚みが感じられる一方で、雑味、後味の悪さなどの好ましくない特徴を有しており、ビールテイスト飲料の原料として玄米を用いるためには、改善が必要であることが示された。玄米がビールテイスト飲料に与える好ましくない香味を低減し、風味に優れたビールを製造するために、以下の実験を行った。
玄米を用いた発泡酒を製造した例を下記に示す。
粉砕した高タンパク質かつ高酵素力の北米産二条大麦麦芽(TN値=2.0、DP値=400)1kg、粉砕した日本産玄米4kg、及び50℃の温水15Lを仕込釜に入れて、よく攪拌しながら50℃にて30分間保持し、その後80℃にて10分間、100℃にて10分間保持した。一方、粉砕した高タンパク質かつ高酵素力の北米産二条大麦麦芽(TN値=2.0、DP値=400)6kgを50℃の温水30Lとともに仕込槽に投入し、50℃で10分間保持した。仕込釜中の内容物を仕込槽中に混合し、65℃にて60分間保持し、その後80℃にて5分間保持した後、ろ過を行った。得られた麦汁に、麦芽比率が約24%になるように市販の糖液約18kgを添加し、良く攪拌して原麦汁エキスを約10に調整した麦汁を200L取り、市販の酵母エキス約600gと欧州産ホップ約200gを添加して100分間煮沸を行い、10℃に冷却後、約1kgのビール醸造用酵母を添加して1週間発酵させ、発泡酒(発明品2)を得た。
同様に、発明品2における日本産玄米を日本産白米に置き換えて作成した発泡酒(対照品3)、発明品2において仕込釜中に投入した高タンパク質かつ高酵素力の北米産二条大麦麦芽を一般的な北米産二条大麦麦芽(TN値=1.7、DP値=220)に置き換えて作成した発泡酒(発明品1)、発明品2において高タンパク質かつ高酵素力の北米産二条大麦麦芽を一般的な北米産二条大麦麦芽(TN値=1.7、DP値=220)に置き換えて作成した発泡酒(発明品3)をそれぞれ作成し、それぞれを参考例1にて作成した対照品1および2と比較評価した。なお、官能評価は、参考例1に記載の方法にて行った。
Figure 2010207213
参考例1の対照品2にて確認された、玄米を使用した発泡酒のもつ雑味、後味の悪さなどの好ましくない香味は、仕込釜に、玄米とともに麦芽を投入することにより(発明品1)感じにくくなることが分かった。また、仕込釜における固形分濃度は参考例1の場合よりも高濃度であったが、問題なく処理することができた。
これにより、仕込釜において玄米とともに麦芽を使用することによって、玄米がビールテイスト飲料に与える好ましくない香味を低減させ、風味に優れたビールを製造できることが示された。さらに、仕込釜に玄米と共に使用する麦芽を、高タンパク質かつ高酵素力の麦芽(TN値=2.0、DP値=400)とすることにより(発明品2)、さらに雑味を低減させ、後味をより良くさせることができることがわかった。また、仕込槽中の高タンパク質かつ高酵素力の麦芽(TN値=2.0、DP値=400)を、一般的な麦芽(TN値=1.7、DP値=220)に置き換えた場合(発明品3)でも、同様の結果が得られた。
実施例1に記載の方法に従って発泡酒を作成した。仕込釜に用いる麦芽として、TN値、DP値がそれぞれ異なる種々の麦芽を選択し、発泡酒(発明品4〜8)を作成した。参考例1にて作成した対照品2と比較評価を行った。なお、官能評価は参考例1に記載の方法にて行った。
Figure 2010207213
この結果、仕込釜にて使用する麦芽としては、一般的な麦芽に比べ、高タンパク質かつ高酵素力の麦芽のほうが、良好な結果が得られた。これにより、玄米とともに仕込釜中に投入する麦芽として、高タンパク質かつ高酵素力の麦芽を用いると、より風味に優れたビールテイスト飲料を得ることができることがわかった。
発泡酒においては、ある種の色麦芽を使用して発泡酒製品のカラーを調整することがある。このような色麦芽と玄米を使用した発泡酒の製造例を下記に示す。
粉砕した高タンパク質かつ高酵素力の北米産二条大麦麦芽(TN値=2.0、DP値=400)1kg、粉砕した日本産玄米4kg、及び50℃の温水15Lを仕込釜に入れて、よく攪拌しながら50℃にて30分間保持し、その後80℃にて10分間、100℃にて10分間保持した。一方で、粉砕した高タンパク質かつ高酵素力の北米産二条大麦麦芽(TN値=2.0、DP値=400)5kg、粉砕した欧州産色麦芽(EBC色度150程度)1kg、及び50℃の温水30Lを仕込槽に投入し、50℃で10分間保持した。仕込釜中の内容物を仕込槽に混合し、65℃で60分間保持し、その後80℃で5分間保持した後、ろ過を行った。得られた麦汁に、麦芽比率が24%になるように市販の糖液約18kgを添加し、良く攪拌して原麦汁エキスを約10に調整した麦汁を200L取り、市販の酵母エキス約600gと欧州産ホップ約200gを添加して100分間煮沸を行い、10℃に冷却後、約1kgのビール醸造用酵母を添加して1週間発酵させ発泡酒(発明品10)を得た。
同様に、発明品10において仕込釜に用いた粉砕した高タンパク質かつ高酵素力の北米産二条大麦麦芽(TN値=2.0、DP値=400)を欧州産色麦芽(EBC色度150程度)に置き換え、仕込槽に用いた粉砕した欧州産色麦芽(EBC色度150程度)を粉砕した高タンパク質かつ高酵素力の北米産二条大麦麦芽(TN値=2.0、DP値=400)に置き換えて作成した発泡酒(発明品9)を作成した。実施例1にて作成した発明品3とともに、それぞれを比較評価した。なお、官能評価は、参考例1に記載の方法にて行った。
Figure 2010207213
色麦芽の使用によって、発泡酒の色度を調整することが可能であった。また、このときに、色麦芽は、仕込釜に投入するよりも、仕込槽に投入するほうが、結果が良好であった。

Claims (11)

  1. 玄米を原料の1つとして使用したビールテイスト飲料の製造方法において、玄米を麦芽とともに仕込釜に投入することを含む、ビールテイスト飲料の製造方法。
  2. 仕込釜において、玄米を麦芽とともに80℃以上の温度に加熱することを含む、請求項1に記載の製造方法。
  3. 仕込釜において、玄米を麦芽とともに90℃以上100℃以下の温度に加熱することを含む、請求項1に記載の製造方法。
  4. 仕込釜に投入する麦芽に対する玄米の比率が、重量基準で、0.1〜10倍である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 仕込釜に投入する麦芽の少なくとも一部が、1.8以上のTN値を有する麦芽である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 仕込釜に投入する麦芽の少なくとも一部が、280以上のDP値を有する麦芽である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 更に、少なくとも色麦芽を仕込槽に投入することを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 仕込釜にプロテアーゼを添加しないことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の方法で製造されたビールテイスト飲料。
  10. ビールテイスト飲料が発酵アルコール飲料であることを特徴とする請求項9に記載のビールテイスト飲料。
  11. ビールテイスト飲料が日本の酒税法における発泡酒である、請求項10に記載のビールテイスト飲料。
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