JP5075221B2 - 発泡性アルコール飲料、及びその製造方法 - Google Patents
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Description
次いで、仕込み工程では、乾燥した麦芽を細かく粉砕し、温水を加えて麦汁を生成し、これを濾過してからホップなどを加えて麦汁を煮沸する。麦芽は細かく粉砕することで、糖化・発酵し易いようになる。また、粉砕した麦芽を温水中に浸すことで、麦芽自身の酵素の働きで蛋白質などを糖化し、甘い麦汁が作られる。
その後、熟成を終えた発泡性アルコール飲料は、フィルターで濾過し、酵母滓などを取り除いた後、ビン詰め等してから温水で熱殺菌を行うといった製品化工程を経ることにより飲用できるようになる。
このスピルリナは、多細胞性で青緑色を呈する藍藻類の一種であり、ビタミンB群等の豊富なビタミンや、カリウムやマグネシウム等のミネラルのほか、タンパク質、アミノ酸、食物繊維、及びカロテノイドやクロロフィル、フィコシアニンといった植物性色素を含む。また、スピルリナは、消化吸収性も良いので、バランスよく栄養を補給するための食品として用いられていると共に、がん予防、消化器疾患改善、肝臓病改善、糖尿病改善、貧血改善、肥満解消に効果・効用があるとされている。ゆえに、このスピルリナを用いることで、視覚に与える印象に富んだ鮮やかな色彩を呈すると共に、多くの栄養素を含む発泡性アルコール飲料を提供することができると考えられる。
これにより、野菜等の多くの食物を意識して摂取することなく、日常の自然な飲食行為である飲酒という形によって、多くの栄養素(有効成分)を視覚的に楽しみながら容易に摂取することができる。
本発明において「発泡性アルコール飲料」とは、ビール風味を有するアルコール飲料を意味する。また、このビール風味を有するアルコール飲料は、たとえば、原料として麦芽を使用するビールや発泡酒のほか、原料として麦芽を使用せず、代わりに、とうもろこしやサトウキビ、テンサイといった糖化可能な穀物の何れか1以上からなる代替品を用いる第三のビールや新ジャンルと称されるビール風発酵飲料が挙げられる。
また、本発明においてスピルリナは、乾燥前の泥状の非乾燥物を、たとえば、ミキサー等で粉砕して予め細胞壁を破壊したものや、乾燥することで細胞壁の強度を弱めたスピルリナ原末とすると望ましい。さらに、スピルリナは、乾燥した粉末状のスピルリナ(スピルリナ原末)をそのまま用いても構わないが、乾燥した粉末状物を水又は湯に浸漬して細胞壁を破壊もしくは細胞壁の強度を弱めたものを用いるものとすると望ましい。
具体的には、たとえば、乾燥することによって細胞壁の強度が弱くなったスピルリナを、粉砕した麦芽の糊化処理のために仕込み釜に投入する湯の一部で溶かして30分ほど待ち、その後、50℃前後の湯と共に粉砕した麦芽が入った仕込み釜へ投入すると良い。スピルリナは水溶性が高いが、それでも細胞壁を破壊して内部の成分を溶出させることが、独特の色と香りを出すために肝要である。なお、麦芽の粉砕中に、ある程度細胞壁を弱めるか破壊したスピルリナを投入するようにしても良い。
本実施の形態のスピルリナ入りビールは、通常のビールの製造方法と同様に、製麦工程、仕込み工程、発酵(醸造)工程といった三つ工程を経て製造される。
図1又は図2に示すように、製麦工程は、浸麦処理、発芽処理、焙燥処理、熟成処理からなる。また、仕込み工程は、粉砕処理、糊化処理、糖化処理、濾過(麦汁循環)処理、煮沸処理、冷却処理からなる。そして、発酵工程は、発酵(前発酵)処理、熟成(後発酵)処理、濾過処理、追濾過処理からなる。以下、それぞれの工程について述べる。
図2に示すように、まず、主原料となる大麦を水に浸漬し(浸麦)、十分に水を吸わせる(浸麦処理)。具体的に浸麦は、たとえば、浸麦タンク内において30〜60時間行い、重量比40〜50%の水分を吸収させる。
次いで、浸麦した大麦を発芽させ、麦芽を生成する(発芽処理)。大麦は、発芽することで種子中に含まれる不活性の糖化酵素(アミラーゼ)が活性化する。この糖化酵素がほどよく生成されたところで乾燥させて発芽を止める。具体的に発芽は、たとえば、40℃前後の発芽床にて4〜7日間行う。
その後、焙燥した麦芽を熟成する(熟成処理)。具体的に熟成は、たとえば、サイロ内で1ヶ月程度行う。
次いで、図1に示すように、熟成した麦芽を細かく粉砕する。具体的に粉砕は、粉砕機で行う(粉砕処理)。
粉砕した麦芽は、一部を温水に浸し糊化する(糊化処理)。具体的に糊化は、たとえば、仕込み釜内で、45℃から100℃の温度範囲の温水に1時間程度浸すことにより行う。本発明では、粉砕した麦芽の糊化処理段階においてスピルリナを加えるものとすると望ましい。この段階でスピルリナを加えることで、スピルリナの細胞膜を効率良く破壊して、内部に含まれる色素成分や、ビタミン、グルコースを溶出させ、その後の発酵工程において、酵母による発酵が行い易くできる。
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なお、本発明においては、副原料としてさらに、カラメル焙燥大麦や、コーンスターチ、コーングリッツ等を加えるものとしても良い。
さらに、麦汁に、ホップと仕込み水とを加えて煮沸する(煮沸処理)。具体的に煮沸は、たとえば、煮沸釜内で100℃の温度にて、ホップを数回に分けて加えながら1時間程度行う。麦汁は、ホップを加えて煮沸することで、独特の苦みや香りをつけるとともに糖化を停止させる。この場合のホップは、苦味を加えるためのホップペレットと、香りを調節するためのホップエキスを併せて用いても良い。
冷やされた麦汁は、発酵タンクへ送られ、ビール酵母を加えて発酵を行う(発酵処理)。この発酵は、一次発酵(主発酵)と二次発酵(追発酵)とからなり、一次発酵では、所謂若ビールを作る。具体的に発酵は、たとえば、5〜10℃の温度範囲において、3〜10日程度一次発酵を行った後、3〜5日程度二次発酵を行う。なお、発酵に用いる酵母には、およそ20℃前後の常温で発酵させ、苦みと香りの強い発泡性アルコール飲料になる上面発酵酵母や、6〜15度の比較的低温で発酵させ、味がおだやかな発泡性アルコール飲料になる下面発酵酵母などがある。また、発酵前液(麦汁)に、香料、色素、起泡・泡持ち向上剤、水質調整剤などを適宜加えても良い。
さらに、本発明においては、熟成した麦汁の濾過、すなわち、発酵した麦汁の熟成後に行う酵母を除去する濾過処理後に、スピルリナの残留汚濁物質を除去し(追濾過処理)、スピルリナ入りビール(発泡性アルコール飲料)とする。この追濾過は、珪藻土濾過に加えて、遠心分離濾過や、微小穴シートフィルター等、異なった濾過材を併用した多重濾過を行う。
そして、このスピルリナ入りビールは、ビン詰め等してから低温にて貯蔵する。
[実施例1]
本実施例では、水を除いた原料として、モルト(淡色麦芽)75.4質量%、カラメル・モルト(焙燥麦芽)1.3質量%、米(インディカ種)3.8質量%、さとうきび由来の砂糖16.2質量%、椰子由来の砂糖1.1質量%、ホップエキス(アロマ用)0.1質量%、ホップペレット1.7質量%、ドライ・イースト(酵母)0.4質量%、及び乾燥スピルリナ粉末0.8質量%を用いた。なお、原料において、ホップペレットの配合量は、アルファ酸値=1で換算した。
そして、これを濾過してスピルリナ入りビールを調製し、5〜7℃前後に冷却し、官能試験の標品1とした。
また、表2の結果より、本発明の発泡性アルコール飲料は、見た目において鮮やかさや美しさ、おしゃれな印象を与えると共に、鮮やかな緑色を呈したものとなっていることから、エコな印象を与えるものであることが分かる。
次に、スピルリナの投入時期が、仕込み工程の糊化処理段階もしくは糖化液の生成処理段階が望ましいことを確認するため、本実施例では、スピルリナの投入を発酵工程においてビール酵母を加える時期と同じにして、ビール酵母と一緒にスピルリナを投入した。すなわち、スピルリナの投入時期を糊化処理段階より遅らせる以外は上記実施例1と同様に発泡性アルコール飲料を調製し、5〜7℃前後に冷却し、官能試験の標品2とした。
官能試験は、50人のパネラーが、上記標品1と上記標品2とを比較し、色、味、香りについて評価を行った。評価結果を表5乃至表7に示す。
次に、副原料としてインディカ米が含まれることで、フルーティな香りを一層引き立てることができることを確認するため、本実施例では、インディカ種の米を全量ジャポニカ種へ置き換える以外は上記実施例1と同様に発泡性アルコール飲料を調製し、5〜7℃前後に冷却し、官能試験の標品3とした。
官能試験は、50人のパネラーが、上記標品1と上記標品3とを比較し、味、香り、フルーティさ(フルーティであるか否か)について評価を行った。評価結果を表8乃至表10に示す。
次に、副原料として米を加えることにより、フルーティな香りを引き立てることができることを確認するため、本実施例では、副原料として米を加えない以外は上記実施例1と同様に発泡性アルコール飲料を調製し、5〜7℃前後に冷却し、官能試験の標品4とした。
官能試験は、50人のパネラーが、上記標品1と上記標品4とを比較し、味、香り、フルーティさ(フルーティであるか否か)について評価を行った。評価結果を表11乃至表13に示す。
次に、副原料の一部として椰子由来の砂糖が含まれることで、スピルリナによる酸味を和らげることができることを確認するため、本実施例では、副原料として用いる砂糖を全量さとうきび由来の砂糖とする以外は上記実施例1と同様に発泡性アルコール飲料を調製し、5〜7℃前後℃に冷却し、官能試験の標品5とした。
官能試験は、50人のパネラーが、上記標品1と上記標品5とを比較し、味、香り、フルーティさ(フルーティであるか否か)について評価を行った。また、評価は、複数回答有りで行った。評価結果を表14乃至表16に示す。
次に、発酵工程における酵母の量が、スピルリナを含んでいない発泡性アルコール飲料(一般的な淡色ビール)で用いる量より少なく、かつ、発酵工程における熟成(後発酵)の期間が、スピルリナを含んでいない発泡性アルコール飲料(一般的な淡色ビール)での期間より長いことが望ましいことを確認するため、本実施例では、酵母の量を、スピルリナを含んでいない発泡性アルコール飲料で用いられている量と同量である0.48質量%とし、かつ、熟成の期間を、スピルリナを含んでいない発泡性アルコール飲料で行われている期間であって、上記標品1の熟成期間よりも10日少ない30日で行った。すなわち、上記実施例1(標品1)に比して、酵母の量を増やすと共に、熟成の期間を短くする以外は上記実施例1と同様に発泡性アルコール飲料を調製し、5〜7℃前後℃に冷却し、官能試験の標品6とした。
官能試験は、50人のパネラーが、上記標品1と上記標品6とを比較し、色、味、香りについて評価を行った。評価結果を表17乃至表19に示す。
次に、発酵工程における熟成(後発酵)の温度が、スピルリナを含んでいない発泡性アルコール飲料(一般的な淡色ビール)での温度より低く、かつ、発酵工程における熟成(後発酵)の期間が、スピルリナを含んでいない発泡性アルコール飲料(一般的な淡色ビール)での期間より長いことが望ましいことが望ましいことを確認するため、本実施例では、熟成の温度を、スピルリナを含んでいない発泡性アルコール飲料で行われている温度である1〜3℃とし、かつ、熟成の期間を、スピルリナを含んでいない発泡性アルコール飲料で行われている期間であって、上記標品1の熟成期間よりも10日少ない30日で行った。すなわち、上記実施例1(標品1)に比して、熟成の温度を高くすると共に、熟成の期間を短くする以外は上記実施例1と同様に発泡性アルコール飲料を調製し、5〜7℃前後に冷却し、官能試験の標品7とした。
官能試験は、50人のパネラーが、上記標品1と上記標品7とを比較し、色、味、香りについて評価を行った。評価結果を表20乃至表22に示す。
次に、発酵工程における酵母の量が、スピルリナを含んでいない発泡性アルコール飲料(一般的な淡色ビール)で用いる量より少ないと共に、発酵工程における熟成(後発酵)の温度が、スピルリナを含んでいない発泡性アルコール飲料(一般的な淡色ビール)での温度より低く、かつ、発酵工程における熟成(後発酵)の期間が、スピルリナを含んでいない発泡性アルコール飲料(一般的な淡色ビール)での期間より長いことが望ましいことを確認するため、本実施例では、酵母の量を、スピルリナを含んでいない発泡性アルコール飲料で用いられている量と同量である0.48質量%とし、また、熟成の温度を、スピルリナを含んでいない発泡性アルコール飲料で行われている温度である1〜3℃とし、かつ、熟成の期間を、スピルリナを含んでいない発泡性アルコール飲料で行われている期間であって、上記標品1の熟成期間よりも10日少ない30日で行った。すなわち、上記実施例1(標品1)に比して、酵母の量を増やし、熟成の温度を高くし、熟成の期間を短くする以外は上記実施例1と同様に発泡性アルコール飲料を調製し、5〜7℃前後℃に冷却し、官能試験の標品8とした。
官能試験は、50人のパネラーが、上記標品1と上記標品8とを比較し、色、味、香りについて評価を行った。評価結果を表23乃至表25に示す。
Claims (9)
- 麦芽、ホップ、水、及び非抽出物のスピルリナを主原料とし、麦芽の糊化、糊化した麦芽による糖化液の生成、糖化液からの穀皮除去による麦汁の作成、ホップを加えた麦汁の煮沸、酵母を加えた麦汁の発酵、発酵した麦汁の熟成、熟成した麦汁の濾過、といった処理を含む発泡性アルコール飲料の製造方法であって、
前記麦芽の糊化処理段階において、もしくは前記糊化した麦芽による糖化液の生成処理段階までに、前記スピルリナを加えることを特徴とする発泡性アルコール飲料の製造方法。 - 麦芽代替品、ホップ、水、及び非抽出物のスピルリナを主原料とし、麦芽代替品の糊化、糊化した麦芽代替品による糖化液の生成、糖化液からの穀皮除去による麦芽代替品汁の作成、ホップを加えた麦芽代替品汁の煮沸、酵母を加えた麦芽代替品汁の発酵、発酵した麦芽代替品汁の熟成、熟成した麦芽代替品汁の濾過、といった処理を含む発泡性アルコール飲料の製造方法であって、
前記麦芽代替品は、とうもろこし、サトウキビ、テンサイといった糖化可能な穀物の何れか1以上からなり、
前記麦芽代替品の糊化処理段階において、もしくは前記糊化した麦芽代替品による糖化液の生成処理段階までに、前記スピルリナを加えることを特徴とする発泡性アルコール飲料の製造方法。 - 前記麦芽又は前記麦芽代替品の糊化処理段階において、インディカ米をさらに加えることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡性アルコール飲料の製造方法。
- 前記麦芽又は前記麦芽代替品の糊化処理段階において、椰子由来の砂糖をさらに加えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の発泡性アルコール飲料の製造方法。
- 前記スピルリナとして、予め細胞壁を破壊した非乾燥物を用いることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の発泡性アルコール飲料の製造方法。
- 前記スピルリナとして、乾燥して細胞壁の強度を弱めた粉末状物をそのまま用いることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の発泡性アルコール飲料の製造方法。
- 前記スピルリナとして、乾燥した粉末状物を水又は湯に浸漬して細胞膜を破壊もしくは細胞膜の強度を弱めたものを用いることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の発泡性アルコール飲料の製造方法。
- 前記熟成した麦汁又は前記麦芽代替品汁の濾過処理後に、スピルリナの残留汚濁物質を除去する追濾過処理をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の発泡性アルコール飲料の製造方法。
- 請求項1乃至8の何れか1項に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする発泡性アルコール飲料。
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