JP2016026476A - アルコール感の付与剤または増強剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルコール飲料またはノンアルコール飲料に添加することで、アルコール特有の呈味(芳醇さ、ボディ感、コク味、濃厚さ、モルト感など)のボリュームを増強し、アルコール飲料を飲用したときに感じるほてり感や精神の高揚感を付与または増強することができる飲料添加物分野における新たな技術を提供することである。
【解決手段】セイボリーから得られる成分からなるアルコール感の付与または増強剤をノンアルコール飲料またはアルコール飲料に添加する。
【選択図】なし
【解決手段】セイボリーから得られる成分からなるアルコール感の付与または増強剤をノンアルコール飲料またはアルコール飲料に添加する。
【選択図】なし
Description
本発明は、シソ科植物であるセイボリーから得られる成分を含有するアルコール感の付与剤または増強剤、およびこれを含有するアルコール飲料またはノンアルコール飲料に関する。
近年の健康志向の高まりの中で、アルコール摂取量を自己管理する消費者が増加している。また、飲酒運転に対する罰則の強化など道路交通法の改正により、自動車等の運転に従事する者のアルコール摂取に対する関心が高まっている。このような中で、清涼飲料でありながらアルコール感のある飲料および低アルコール含量でありながら飲用時に満足感のあるアルコール飲料への需要が一段と高まっている。
特許文献1はノンアルコール飲料にカプサイシンなどの辛味物質を添加することで、アルコール感を付与する技術が開示されているが、ここでいうアルコール感とはアルコール特有の刺激感と定義されており、アルコール飲料を飲用したときの体のほてり感や高揚感に効果があるとの記載はない。特許文献2には、いわゆるアルコールテイスト飲料を飲む場合でも、通常のアルコール飲料を飲んでいるかの様な食感を得ることができるアルコールテイスト飲料の食感補助品の技術が開示されているが、粘性を持った発明品を口内や咽頭に保有あるいは残留された状態にすることが必要であり、飲料自体に添加して流通させることは出来ない。従来の技術ではアルコールに似た刺激をノンアルコール飲料に付与することは出来ても、アルコール飲料を飲用したときに感じるような体のほてり感や精神の高揚感をノンアルコール飲料の飲用時にも得られるようにすることは出来なかった。
セイボリーはシソ科に属する草本植物であり、主にスパイスとして古くから用いられてきた。また、様々な生理活性を有することも知られており、キダチハッカ(セイボリーの別名)抽出物の冷え性改善作用(特許文献3)、ヒスタミン遊離抑制作用(特許文献4)、などが報告されており、それぞれ血流改善剤、抗アレルギー剤、冷え性改善剤、肥満や糖尿病の予防・改善剤が提唱されている。しかしながら、セイボリーから得られる成分をアルコール飲料またはノンアルコール飲料に添加することで飲用時のアルコール感を付与または増強する効果が得られることはこれまでに知られていなかった。
本発明が解決しようとする課題は、従来の技術では成し得なかった、アルコールを飲用した時のような体のほてり感や精神の高揚感を、ノンアルコール飲料に付与またはアルコール飲料においては増強する、付与剤または増強剤および当該の剤を含有するノンアルコール飲料またはアルコール飲料を提供することである。
本発明者らは汎用性が高く、高い効果を有し、かつ安全性の点でも問題のないノンアルコール飲料にアルコールを飲用した時のほてり感や精神の高揚感を付与し、アルコール飲料においては増強する、アルコール感の付与剤または増強剤を提供すべく鋭意研究を重ねた。その結果、セイボリーに優れたアルコール感の付与作用または増強作用があることを見出し、発明を完成させるに至った。
本発明の付与剤または増強剤をノンアルコール飲料またはアルコール飲料に添加することにより、ノンアルコール飲料またはアルコール飲料のアルコール感を付与または増強することが出来る。本発明で付与または増強されるアルコール感とは、アルコール飲料を飲んだ時に感じる呈味(芳醇さ、ボディ感、コク味、濃厚さ、モルト感など)や、体のほてり感および精神の高揚感である。ここでいう高揚感とは、アルコールを摂取した時に感じる気持ちが高ぶり、興奮した感覚のことである。
本発明のアルコール飲料またはノンアルコール飲料の付与剤または増強剤は、セイボリーの抽出物または該植物の抽出物の処理物を有効成分として含有する。ここで、セイボリーは、シソ科に属し地中海沿岸を原産地とする草本であり、一年生のサマーセイボリー(Satureia hortensis;別名キダチハッカ)と多年生のウインターセイボリー(Satureia montana)がある。
本発明の付与剤または増強剤は、上記原料の各部位(植物全体、葉、花、茎、根、種子など)をそのまま用いても良く、これらを乾燥した乾燥体、もしくは乾燥後粉砕した粉末を用いることもできる。また、これらを溶媒抽出、圧搾、酵素分解、超臨界抽出、濃縮、希釈、固液分離、精製等の公知の技術を単独あるいは組み合わせて得られるエキスあるいは粉末であってもよい。
このとき、好ましい方法としては溶媒抽出が挙げられる。用いられる溶媒としては、例えば水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸、酢酸エチル、エーテル、へキサンおよびこれらの混合溶媒等が挙げられ、これらのうち水、エタノールおよびエタノール水溶液(エタノール濃度が10〜90%)が特に好ましい。
用いる溶媒の量は特に限定されるものではないが、通常は植物の乾燥体1質量部に対して0.5〜50質量部、好ましくは1.0〜30質量部、特に好ましくは5.0〜20質量部で用いられる。溶媒量が植物の乾燥体に対して0.5未満の場合は、溶媒の種類によっては抽出が十分でない場合があり、溶媒量が50質量部を超える場合は経済的に有利でない場合がある。
上記抽出操作で得られた抽出物は、香気成分を除去してもよい。抽出物から香気成分を除去する方法としては、溶媒抽出を行う方法(例えば米国特許第3950266号明細書)、超臨界二酸化炭素を用いる方法(例えば特開平3−9985号公報)、合成吸着樹脂を用いる方法(例えば特開2003−105337号公報)などを単独あるいは適宜組み合わせて用いることができる。
また、得られた抽出物を分画してもよい。特に、合成吸着樹脂による分画が好ましい。本発明に用いる合成吸着剤は、一般に不溶性の三次元架橋構造ポリマーであってイオン交換基のような官能基を実質的に持たないものである。本発明に用いる合成吸着剤としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、例えば三菱化学株式会社製の「セパビーズSP70(商品名)」(細孔分布:細孔容積1.6mL/g、比表面積870m2/g、最頻度半径が71Å)や「ダイヤイオンHP20(商品名)」 (細孔分布:細孔容積1.3mL/g、比表面積590m2/g、最頻度半径が260Å)等が使用できるが、これらに限るものではない。
本発明の付与剤または増強剤においては、飲食品用又は医薬用として通常用いられている他の任意成分を含有させて、アルコール飲料またはノンアルコール飲料用組成物とすることができる。用いられる任意成分としては、例えば着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、苦味料、酸味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、可塑剤及び香料などであり、これらを添加して用いることもできる。
本発明の付与剤または増強剤を添加することが出来る飲料にはとくに制限がなく、ノンアルコール飲料でもアルコール飲料でもよく飲料全般に添加することが出来る。例えば、ビール、ビール風味の発泡アルコール飲料(いわゆる新ジャンルビール)、ノンアルコールビール、その他の醸造酒(発泡性)、リキュール(発泡性)、ウイスキー、ノンアルコールウイスキー、日本酒、ノンアルコール日本酒、ワイン、ノンアルコールワイン、カクテル、ノンアルコールカクテル、チューハイ、ノンアルコールチューハイ、果実酒、ノンアルコール果実酒、焼酎、ノンアルコール焼酎、スピリッツ、ノンアルコールスピリッツ、リキュール、ノンアルコールリキュール、低カロリー飲料等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明の効果は、いずれの種類のアルコール飲料やノンアルコール飲料でも得られるが、特に香味やボディ感に欠けた低カロリーや低糖質のアルコール飲料やノンアルコール飲料において顕著である。低カロリー飲料とは、栄養表示基準に基づき、100mlあたりのエネルギーが20kcal以下の飲料であり、低糖質の飲料とは、100mlあたりの糖質が2.5g以下の飲料である。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。また、実施例中の%は、特に記載のない限り、すべて質量%である。
セイボリー乾燥葉を水蒸気蒸留機に2kg仕込み、これに30℃の水を0.67kg均一に散布した後、30分間静置し湿潤させた。湿潤完了後、常圧下でSV(空間速度)50h-1で水蒸気蒸留を行い、1kgの留出液を留出させ、80℃×30秒間で殺菌し、セイボリーエキスを得た(エキス1)。水蒸気蒸留残渣であるセイボリー葉を80℃の水で抽出し、8kg(Brix6.4)の抽出液を得た。この抽出液に活性炭(「太閤S」フタムラ化学(株))を0.26kg投入し、液温5℃で1時間攪拌処理を行なった後、遠心分離と濾過により活性炭を分離・清澄化させ、減圧下で濃縮を行い、濃縮液(Brix20)を0.8kg得た。濃縮液0.8kgにアスコルビン酸を4g配合し溶解させ、次いでエキス1を1kg配合、水を0.2kg配合し攪拌均一化させた。配合により得られたエキスを80℃×30秒間で殺菌し、本発明のアルコール感の付与剤または増強剤を得た。
市販のビール、ノンアルコールビール、ビール風味の発泡アルコール飲料(いわゆる新ジャンルビール)、ワイン、ノンアルコールワイン、カクテル、ノンアルコールカクテル、チューハイ、ノンアルコールチューハイ、梅酒、ノンアルコール梅酒、ウイスキー、ノンアルコールウイスキー、日本酒、ノンアルコール日本酒に、本発明品を0.1%添加し、それぞれの飲料を、10名の良く訓練されたパネラーにより、官能評価を行った。評価項目は、熟成感、ボディ感(コク、濃厚さ)、芳醇さ、およびビール系飲料についてはモルト感を、無添加をコントロールとして評価し、それぞれ1:非常に弱い、2:かなり弱い、3:少し弱い、4:どちらともいえない、5:少し強い、6:かなり強い、7:非常に強いとして採点した。その平均点を表1に示す。
表1に示したとおり、本発明品を添加した飲料は無添加のものと比べ、熟成感、芳醇さのいずれの評価も点数が高く、また、ボディ感が増し、ビール系飲料では適度なモルト感が付与され、風味が良好で、中でもチューハイにおける柑橘の風味が増強したという評価であり、大きな改善効果があった。
市販のビール、ノンアルコールビール、ビール風味の発泡アルコール飲料(いわゆる新ジャンルビール)、ワイン、ノンアルコールワイン、カクテル、ノンアルコールカクテル、チューハイ、ノンアルコールチューハイ、梅酒、ノンアルコール梅酒、ウイスキー、ノンアルコールウイスキー、日本酒、ノンアルコール日本酒に、本発明品を0.1%添加し、それぞれの飲料を10名の良く訓練されたパネラーにより、官能評価を行った。評価項目は、アルコール飲料を飲用したときの体のほてり感について、VAS(Visual Analog Scale)を用いて、0cmが全く感じない、10cmが非常に感じるとして、無添加および添加した飲料を飲用した5分後の感覚が0〜10cmの間のどの位置にあるかを記入し評価した。0cmを起点として測定した平均の長さを表2に示す。
市販のビール、ノンアルコールビール、ビール風味の発泡アルコール飲料(いわゆる新ジャンルビール)、ワイン、ノンアルコールワイン、カクテル、ノンアルコールカクテル、チューハイ、ノンアルコールチューハイ、梅酒、ノンアルコール梅酒、ウイスキー、ノンアルコールウイスキー、日本酒、ノンアルコール日本酒に、本発明品を0.1%添加し、それぞれの飲料を10名の良く訓練されたパネラーにより、官能評価を行った。評価項目は精神の高揚感について、VAS(Visual Analog Scale)を用いて、0cmが全く感じない、10cmが非常に感じるとして、無添加および添加した飲料を飲用した5分後の感覚が0〜10cmの間のどの位置にあるかを記入し評価した。精神の高揚感とは、気持ちが高ぶり、興奮した感覚と定義した。0cmを起点として測定した平均の長さを表3に示す。
表2および表3に示したとおり、本発明品を添加した飲料は無添加のものと比べ、ほてり感や高揚感のいずれも評価が高く、大きな改善効果があった。
本発明により、風味に優れ、アルコールを飲用した時のほてり感や精神の高揚感が付与または増強されたノンアルコール飲料またはアルコール飲料を提供することが出来る。さらに、低カロリーや低糖質のノンアルコール飲料またはアルコール飲料に利用された場合には、健康と嗜好性が両立されるという、産業上、非常に高い価値を有するものとなる。
Claims (10)
- セイボリーから得られる成分を有効成分としてなることを特徴とするノンアルコール飲料またはアルコール飲料のアルコール感の付与剤または増強剤。
- ノンアルコール飲料が、ノンアルコールビール、ノンアルコールワイン、ノンアルコールカクテル、ノンアルコールチューハイ、ノンアルコール果実酒、ノンアルコールウイスキー、ノンアルコール日本酒、ノンアルコール焼酎、ノンアルコールブランデーであり、アルコール飲料がビール、その他の醸造酒、リキュール、スピリッツ、ワイン、ウイスキー、ブランデー、日本酒、焼酎、発泡酒、カクテル、チューハイ、果実酒であることを特徴とする請求項1に記載の剤。
- セイボリーから得られる成分が、セイボリーの抽出物または抽出物を更に精製処理して得た精製物および/またはその精製残渣であることを特徴とする請求項1に記載の剤。
- 請求項3に記載の剤が、濃縮物、ペースト状物、乾燥物、乳化物、液状物、希釈物から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の剤。
- 請求項1から4のいずれか1項に記載の剤を含有することを特徴とするノンアルコール飲料またはアルコール飲料。
- ノンアルコール飲料またはアルコール飲料に請求項1から4のいずれか1項に記載の剤を添加することを特徴とするノンアルコール飲料またはアルコール飲料の製造方法。
- 請求項6に記載の製造方法によって製造された、アルコール飲料の飲用時に特有のアルコール感、ほてり感、精神の高揚感が付与または強化されたノンアルコール飲料またはアルコール飲料。
- 請求項6に記載の製造方法によって製造された、アルコール飲料に特有の香味を維持または改善し、その香味とボディ感との総合テイストに優れたノンアルコール飲料またはアルコール飲料。
- ノンアルコール飲料またはアルコール飲料が低カロリー飲料である、請求項6に記載のノンアルコール飲料またはアルコール飲料の製造方法。
- 請求項9に記載の製造方法によって製造された低カロリーノンアルコール飲料または低カロリーアルコール飲料。
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