JP7039142B2 - 飲食品の風味付与ないし増強剤 - Google Patents

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Description

本発明は脱臭されたハーブ原料の加熱処理物を有効成分とする飲食品の風味付与ないし増強剤の製造方法、その製造方法により得られる、飲食品の風味付与ないし増強剤、ならびに、その風味付与ないし増強剤を用いた飲食品の風味付与ないし増強方法に関する。
近年、消費者の嗜好性の多様化により、飲食品等に使用する風味素材、香料その他においてもユニークな素材、天然感あふれる素材が求められている。飲食品に風味を付与ないし増強する方法としては、天然香料や単品の香料化合物を組み合わせた調合香料が広く使用されており、野菜、香辛料、フルーツ、シトラス、茶など様々な調合香料が開発されている(特許文献1~5)。また、近年天然物中に含まれる天然感をもたらす化合物の探索が活発化しており、6,8,10-ウンデカトリエン-3-オン(特許文献6)、フタライド類(特許文献7)、4,7-トリデカジエナール(特許文献8)などが見いだされている。
しかしながら、従来の香料物質等を組み合わせる手法ではその要求に十分対応しきれないのが現状である。そこで従来にない新しい素材に対する要望が高まっている。
ローズマリーは古くから香辛料として広く肉料理などの食品の味や香りづけに用いられる香辛料として知られている(特許文献9)。しかしながら、特許文献9の技術は強い香気を利用したスパイスとしての利用を開示するに過ぎない。一方、ローズマリーは強い酸化防止力があることが知られており、抽出物を精製し、油脂性食品など向けの保存剤(特許文献10)、抗酸化剤(特許文献11~14)、活性酸素消去剤(特許文献15)、退色防止剤(特許文献16)として広く利用されている。なお抗酸化剤等として利用するに際しローズマリーは、非常に強い香気を有するため、前記特許文献10~16においては、脱臭等の方法により臭いを低減し抗酸化成分のみを利用し、飲食品に余計な呈味を付与しないための手段が開示されている。
しかしながら、これらはいずれも香辛料または抗酸化剤としての利用を開示するにすぎず、新たな風味素材を提供するものではない。
特開2005-15684号公報 特開2005-13138号公報 特開2005-15686号公報 特開2004-168936号公報 特開2005-143467号公報 特許第4057639号公報 特開2011-103774号公報 特開2012-178984号公報 特開2007-312751号公報 特開昭55-102508号公報 特開昭56-74177号公報 特開昭57-159874号公報 特開昭58-217584号公報 特開昭59-149982号公報 特開2000-256346号公報 特開2008-259488号公報
本発明が解決しようとする課題は、飲食品に、熟成感、ボディ感、苦味、渋味、甘味などを伴った、複雑かつ心地よい風味を付与ないし増強することができる風味素材を提供することである。
本発明者らは、これらの課題にかんがみ鋭意研究を行ったところ、驚くべきことに、特定のハーブ原料を脱臭し、脱臭後のハーブ原料を水抽出し、抽出液を強く加熱したところ、複雑かつ極めて心地よい風味が生じることを見出し、本発明を完成するに至った。かくして、本発明は以下のものを提供する。
(発明1)
下記(1)~(3)の工程を含む、飲食品の風味付与ないし増強剤の製造方法。
(1)レモンバーム、レモングラス、レモンバーベナ、ペパーミント、ローズマリー、タイム、セージ、オレガノからなる群から選択される1種または2種以上のハーブ原料を脱臭し、脱臭ハーブ原料を得る工程
(2)前記脱臭ハーブ原料を水、または、水と親水性有機溶媒の混合溶媒で抽出し、抽出液を得る工程
(3)前記抽出液を90~180℃にて、10分~5時間加熱し加熱処理物を得る工程
(発明2)
(1)の脱臭方法が、水蒸気蒸留または超臨界、液体もしくは亜臨界炭酸ガス抽出である、発明1に記載の飲食品の風味付与ないし増強剤の製造方法。
(発明3)
(2)の水または水と親水性有機溶媒の混合溶媒で抽出中および/または抽出後に酵素処理を行う、発明1または2に記載の飲食品の風味付与ないし増強剤の製造方法。
(発明4)
酵素が、ペクチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼおよびプロテアーゼから選ばれる1種または2種以上である、発明3に記載の飲食品の風味付与ないし増強剤の製造方法。
(発明5)
(2)の抽出液を、(3)の加熱前に、さらに、濃縮する工程を含む、発明1~4のいずれかに記載の飲食品の風味付与ないし増強剤の製造方法。
(発明6)
(2)の抽出液を、(3)の加熱前に、さらに、pHを6~12に調整する工程を含む、発明1~5のいずれかに記載の飲食品の風味付与ないし増強剤の製造方法。
(発明7)
発明1~のいずれかに記載の方法により得られる風味付与剤を有効成分とする飲食品の風味付与ないし増強剤。
(発明8)
付与ないし増強される風味が熟成感である、発明に記載の、飲食品の風味付与ないし増強剤。
(発明9)
付与ないし増強される風味がボディ感である、発明に記載の、飲食品の風味付与ないし増強剤。
(発明10)
付与ないし増強される風味が加熱感である、発明に記載の、飲食品の風味付与ないし増強剤。
(発明11)
付与ないし増強される風味が苦味である、発明に記載の、飲食品の風味付与ないし増強剤。
(発明12)
付与ないし増強される風味が渋味である、発明に記載の、飲食品の風味付与ないし増強剤。
(発明13)
付与ないし増強される風味が甘味である、発明に記載の、飲食品の風味付与ないし増強剤。
本発明によれば、特定のハーブを原料として特定の抽出処理を行うことにより、飲食品に、熟成感、ボディ感、苦味、渋味、甘味などを伴った、複雑かつ心地よい風味を付与ないし増強することができる飲食品の風味付与ないし増強剤を提供することができる。また、本発明の飲食品の風味付与ないし増強剤を飲食品に添加することにより、熟成感、ボディ感、苦味、渋味、甘味などを伴った、複雑かつ心地よい風味が付与ないし増強されたユニークな風味の飲食品が提供できる。
特定のハーブ原料>
本発明で使用できる特定のハーブ原料は、レモンバーム、レモングラス、レモンバーベナ、ペパーミント、ローズマリー、タイム、セージ、オレガノである
ーブ原料は生でも良いが、乾燥したものが入手の容易さ、香気が乾燥によりすでに幾分弱まっている点で有利である。すなわち、本発明の工程(1)の脱臭工程を行う事により、本発明の風味付与ないし増強剤が広く様々な飲食品に適用可能となるが、その脱臭の程度をより高め得る、乾燥ハーブ原料を用いることがより好ましい。
ハーブ原料は脱臭または抽出前に、0.1~5mm程度、好ましくは0.5~2mm程度のサイズに細断または粉砕することにより、脱臭の効率および抽出の効率を上げることができる。
<工程(1):脱臭工程>
ーブ原料は本発明の工程(1)として、脱臭工程を行う。
脱臭方法の例としては、水蒸気蒸留による方法、および、超臨界、液体もしくは亜臨界炭酸ガス抽出による方法が例示できる。
水蒸気蒸留による方法としては、カラムを用いた水蒸気蒸留法が例示できる。カラムによる水蒸気蒸留法は、カラムに充填したハーブ原料に水蒸気を通気し、水蒸気に伴われて留出してくる香気成分を水蒸気とともに留出させ、脱臭する方法であり、加圧水蒸気蒸留、常圧水蒸気蒸留、減圧水蒸気蒸留のいずれの蒸留手段も採用することができる。具体的には、例えば、ハーブ原料を仕込んだ水蒸気蒸留釜の底部から水蒸気を吹き込み、上部の留出側から留出させる。留出した蒸気は、蒸気の出口に接続した冷却器で冷却することにより、凝縮物として揮発性香気成分を含有する留出液を回収することもできる。脱臭の程度は、留出液中の精油が低減してきたことや官能的または分析的に香気が弱まってきたことにより確認することができる。具体的には、常圧水蒸気蒸留でハーブ原料1質量部に対し、凝縮した留出液が0.1~10質量部、好ましくは0.2~5質量部程度の量の留出液を得ることにより、適当な脱臭を行うことができる。
水蒸気蒸留を行う際は、ハーブ原料の加熱による酸化劣化を防止するため、窒素ガスなどの不活性ガス及び/又はビタミンCなどの抗酸化剤の存在下で水蒸気蒸留を行うこともできる。
カラムに残った釜残を次の工程(2)の脱臭ハーブ原料として使用する。本発明では、香気を含んだ留出液は不要であるため、使用しない。
超臨界、液体または亜臨界炭酸ガス抽出は、臨界温度(31.0°C)及び臨界圧力(72.9atm)付近あるいはそれを超える流体であって、圧力150Kg/cm以下の超臨界、液体または亜臨界状態の炭酸ガスにより抽出を行う方法である。炭酸ガス抽出の方法としては、ハーブ原料を抽出塔に仕込み、一方で、炭酸ガスを、圧縮機を用いて所定の圧力まで圧縮し、熱交換器を通して所定の温度にし、液体状態、亜臨界状態または超臨界状態にして抽出塔へ導入する方法が例示できる。抽出条件は、圧力150Kg/cm以下で、通常約10℃~約60℃程度の温度範囲で、ハーブ原料1質量部に対し、液体状態、亜臨界状態または超臨界状態の炭酸ガスを2~20質量部/時間で流しながら、約30分~約5時間程度行うことができる。香気成分を含有した炭酸ガス相は、セパレーターに導き、減圧することによって抽出物を炭酸ガスから分離する。脱臭の程度は、分離してくる抽出物の香気を官能的または分析的に低減してきたことより確認することができる。
抽出塔に残った釜残を次の工程(2)の脱臭ハーブ原料として使用する。本発明では、香気を含んだ抽出物は不要であるため、使用しない。
<工程(2):抽出工程>
かくして得られた前記脱臭ハーブ原料は、工程(2)として、水、または、水と親水性有機溶媒の混合溶媒で抽出し、抽出液を得る。
抽出に用いる溶媒は、水、または、水と親水性有機溶媒の混合溶媒を使用することができる。親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフランなどを例示できるが、残留溶媒や食品用途での使用を考えると、エタノールが好ましい。水と親水性有機溶媒の混合割合は、特に限定はないが、例えば、質量比で、水:親水性有機溶媒=99.9:0.1~40:60、好ましくは、99.9:0.1~60:40、より好ましくは99.9:0.1~20:80の範囲内を例示することができる。
抽出溶媒の量は任意に設定できるが、例えば、脱臭前のハーブ原料1質量部に対し、溶媒1質量部~50質量部、好ましくは2質量部~25質量部、より好ましくは3質量部~20質量部を例示できる。また、抽出温度も特に限定はないが、例えば、20℃~100℃、好ましくは30℃~90℃、より好ましくは40℃~80℃を例示できる。
抽出方法としても、特に限定はなく、例えば撹拌抽出、カラム抽出、静置抽出などを任意に選択できる。また、抽出時間としても特に限定はなく、例えば、5分~24時間、好ましく10分~10時間、より好ましくは20分~5時間程度を例示できる。
また抽出に際し、抽出溶媒にアスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウムなどの酸化防止剤を加えることもできる。アスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウムの量の限定は特にないが、例えば、脱臭前のハーブ原料に対し、0.01質量%~1質量%程度の範囲内を例示することができる。
抽出後は、撹拌抽出の場合は脱水式遠心分離機による粗分離、カラム抽出や静置抽出など場合は抽出液を抜き取り、その後、例えば10℃~30℃まで冷却して抽出液を得ることができる。抽出液は適宜、濾紙およびセルロースやケイソウ土などの濾過助剤を用いて濾過することもできる。
また、前記の水または水と親水性有機溶媒の混合溶媒で抽出中および/または抽出後に酵素処理を行うこともできる。
使用することのできる酵素としては、特に制限はなく、例えば、糖質分解酵素、プロテアーゼ、リパーゼ、タンナーゼ、クロロゲン酸エステラーゼなどを例示することができる。さらに、糖質分解酵素としては、具体的には、例えば、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、アラビナーゼ、デキストラナーゼ、グルカナーゼ、マンナナーゼ、α-ガラクトシダーゼなどを例示でき、これらを任意で組み合わせて使用することもできる。これらのうち、好ましくはペクチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼまたはプロテアーゼを例示することができる。酵素反応の条件は、酵素の至適pH、温度、時間などの条件に合わせ、任意に選択することができる。
酵素反応後は、通常、60℃~100℃、5分~60分程度の加熱処理により、酵素活性を失活させる。
また、前記抽出液は、濃度調整、工程(3)の加熱処理の効率を高める目的、または、使用した親水性有機溶媒を除去するため、濃縮することもできる。濃縮は任意の方法で行うことができるが、通常は、減圧下、20℃~60℃程度の比較的低い温度で行う。濃縮液の濃度は、親水性有機溶媒の除去、および、工程(3)での加熱処理を考慮すると、屈折糖度(20℃)で5~20°程度とすることが好ましい。
<工程(3):加熱処理>
抽出液は次いで、工程(3)の加熱処理を行うが、加熱処理の前に、pH6~pH12に調整することもできる。pH調整の方法は特に問わないが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液を添加する方法、陰イオン交換樹脂と接触させる方法などを例示できるが、例えば水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウムの5~50%程度の水溶液を添加して調整する方法を好ましく挙げることができる。
加熱処理における反応温度としては、90℃~180℃、好ましくは95℃~160℃、より好ましくは100℃~140℃、さらに好ましくは105℃~135℃とすることができ、これらの下限値、上限値を任意に組み合わせた範囲内も本発明の範囲に含まれる。加熱温度が低すぎる場合は、加熱反応が進行しづらく、風味付与ないし増強剤としての効果が出にくい。加熱温度が高すぎる場合は、加熱による変化が大きすぎ、風味付与ないし増強剤としての目的を達成することができない。また、加熱処理における反応時間としては、反応に必要な時間を確保する必要があり、10分~5時間、好ましくは20分~4時間、より好ましくは1時間~2時間とすることができる。反応時間が短すぎる場合は、反応が十分進行せず、風味付与ないし増強剤としての効果が出にくい。反応時間が長すぎる場合は、加熱による変化が大きすぎ、風味付与ないし増強剤としての目的を達成することができない。
なお、本発明では、後の実施例で詳細に述べるが、比較的低い反応温度(90~110℃)では、熟成感を伴った甘さを付与ないし増強できる風味素材が得られ、比較的高い温度(120~140℃)では熟成感を伴った苦味ないし渋味を増強できる風味素材が得られる。
本発明における、加熱処理には、密閉系にて内容物を加熱攪拌できるオートクレーブを使用することが好ましい。オートクレーブの操作としては、内容物として前記抽出液を仕込んだ後、容器を密閉にし、所望により容器のヘッドスペースを不活性ガスにより置換して、または抽出液に不活性ガスを吹き込む方法により、脱酸素条件下に加熱処理を行い、冷却後、釜内から、加熱処理物を回収する。回収物に澱が生じているときは濾過や遠心分離などの処理により、澱を除去することもできる。
本発明の工程(3)の加熱反応では、いわゆるメイラード反応の素材となる糖やアミノ酸の他に食品素材の原料からの抽出液の特有の成分(ビタミン類、水溶性植物繊維、ポリフェノール類、無機質など)が複雑に反応し、呈味増強成分が生成すると考えられる。これは、確認したことでなく、また、このような理論により本発明が限定的に解釈されるものでないが、本発明の呈味改善剤の特有の特性は、上記、また、好ましくは後述する条件下の前記抽出液の加熱処理により、前記のような複雑な反応がおこった結果に基づくものと理解される。当業者に周知のとおり、メイラード反応はアミノカルボニル反応の一種であり、通常、褐色物質を生成する非酵素的反応である。典型的なメイラード反応では、アミノ酸と還元糖が反応し、窒素配糖体を経由してシッフ塩基を形成した後、アマドリ転移によりその反応生成物を生じるまでの初期段階の反応、アマドリ転移生成物等をともなう中期段階の反応、およびかような生成物等の重合および/またはストレッカー分解反応等を伴う、最終段階の反応が関与することが知られているが、本発明にしたがう前記加熱処理では、特に、pHを中性乃至アルカリ性の条件下で当該処理を実施することにより、いずれかの段階で一定の香味または風味成分が生じるものと理解されている。
釜内から回収された加熱処理物はこのまま風味付与ないし増強剤として使用することもできるが、所望により、さらに濃縮、あるいは、デキストリン、化工澱粉、サイクロデキストリン、アラビアガム等の付形剤を添加して、ペースト状とすることができ、さらに、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などの乾燥により粉末状の風味付与ないし増強剤組成物とすることもできる。
かくして得られた風味付与ないし増強剤は飲食品に対し低濃度の添加、0.01質量%~1質量%で、飲食品に熟成感、ボディ感、加熱感、苦味、渋味、甘味などの複雑かつ心地よい風味を付与ないし増強することができる。
なお、本発明でいう熟成感とは、例えば、ウイスキーやバルサミコ酢などが、適切な保存条件において、長年の経時変化を経た、熟成された感覚を意味し、ボディ感とは、飲食品を口に含んだとき、または、飲み込んだ時に口中全体から喉の奥にかけてしばらく持続し、味わいが深いと感じさせる感覚であり、味の骨格がしっかりしていて、かつ、まろやかでふくらみがあり、呈味全体に強さをもたらす感覚である。また、苦味および渋味は、後に尾を引くいやらしい苦味や渋味ではなく、すっきりとしたさわやかな苦味や渋味を有する。また、甘味は、砂糖や高甘味度甘味料のような甘味とは異なるが、呈味のみならず香気からも来る甘味であり、ほんのりと甘く、天然感を感じさせる甘味である。
本発明の風味付与ないし増強剤が添加される飲食品としては、例えば、飲料、アイスクリーム、冷菓、菓子、チョコレート、チューインガム、ビスケット、クッキー、インスタントラーメン、スナック、せんべい、ヨーグルト、ジャム、フルーツプレパレーションなど幅広い形態の飲食品に使用できる。また、飲食品の風味としては例えば、緑茶、抹茶、碾茶、烏龍茶、紅茶などの茶系風味食品;麦茶、玄米茶、茶類と焙煎した穀物類を混合したいわゆる混合茶類の風味を有する食品;無糖コーヒー、加糖コーヒー、ミルクコーヒー、カフェオレ、キャラメルコーヒーなどのコーヒー風味を有する食品;ココア・チョコレート食品;天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果汁入り炭酸飲料、果汁入りアルコール飲料などの果汁系食品;発泡酒、いわゆる第三のビール、ノンアルコールビール風味飲料などのビール風味飲料など様々な飲食品に使用できる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。以下%は特に断りのない限り質量%とする。
(実施例1)
乾燥レモンバーム原料をフェザーミル(スクリーン3mm)にて粉砕した。粉砕した原料500gを3Lガラスカラムに充填し、カラム下部から常圧の水蒸気を500g/Hrの速度で送り込み、水蒸気蒸留を行い、留出液500gおよび脱臭レモンバーム原料を得た(工程(1))。得られた脱臭レモンバーム原料に、55℃軟水4000g(アスコルビン酸ナトリウム0.5g溶解)を投入し、55℃にて2時間静置抽出した(工程(2))。その後抽出液を抜き取り、抽出液3300gを得た。Bx2.52、pH5.51、固形分(Bx換算)83.1g(固形分収率16.8%)であった。抽出液に、Aspergillus niger由来ペクチナーゼ(ポリガラクチュロナーゼ力価(PGU):150,000u/g)を対固形分0.5%(0.831g)、およびAspergillus oryzae由来の中性プロテアーゼを対固形分0.5%(0.4155g)を加え、40℃にて1時間、撹拌反応した。その後90℃まで達温した後、直ちに30℃まで冷却した(Bx2.6°、pH5.30)。ロータリーエバポレーターを用いて、液温40℃を保ちながら、3~4KPaで減圧濃縮し、Bx10.25°の濃縮液796g(pH5.45)を得た。この濃縮液を参考品1とした。ついで、参考品1を30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.5に調整した(参考品1に対し約0.5%添加)。pH調整後、2Lオートクレーブに仕込み、ヘッドスペースを窒素置換後密閉し、135℃まで加熱し、135±2℃にて2.5時間、撹拌反応した(工程(3))。室温まで冷却後、反応液を取り出し、濾紙濾過した後、90℃1分間加熱殺菌した後充填し、本発明品の風味付与ないし増強剤を得た(本発明品1)。
(実施例2~8)
実施例1のレモンバームに替えて、レモングラス、レモンバーベナ、ペパーミント、ローズマリー、タイム、セージ、オレガノについて実施例1と同様の操作を行い、本発明品2~8および参考品2~8(本発明品2~8調製工程途中の加熱処理を行っていない抽出液)を得た。
(比較例1~8)
実施例1において、工程(1)の水蒸気蒸留を行わずに、それ以外は全く同様の操作を行い、比較品1~8を得た。
(実施例9)
本発明品1~8、参考品1~8および比較品1~8を水に0.2質量%添加し、よく訓練されたパネラー(経験年数10年以上)10名により官能評価した。官能評価の方法および評価基準は、熟成感、ボディ感、苦味、渋味、甘味それぞれについて、無添加の水を0点、各参考品を2点とした場合の、各参考品に対しての各本発明品(同一のハーブ原料を用いた参考品と発明品)の評価を、やや弱い:1点、同程度:2点、やや強い:3点、明らかに強い:4点、極めて強い:5点とした。
また、各ハーブ特有の香気については、無添加の水と同程度の香気を0点、各比較品(同一のハーブ原料を用いた比較品と発明品)と同程度の香気を5点とし、各本発明品を1~4点の範囲で点数を付した。
また、各本発明品については、全般的な評価を文言で付した。
これらの平均点および全般的な評価の平均的内容を表1に示す。
Figure 0007039142000001
表1に示した通り、本発明品(ハーブ原料を脱臭後抽出し、加熱処理したもの)は、いずれもバルサミコ酢的な熟成感があり、すっきりとしたさわやかな風味と心地よい渋味があり良好であった。ほんのりとした甘さも感じられ、良好な風味を有していた。また、加熱処理を行わないもの(参考品)と比べいずれも、熟成感、ボディ感、苦味、渋味、甘味が大幅に増していた。また、脱臭を行っていない各比較品と比べると、ハーブ特有の香気が低減しており、様々な食品素材への配合が可能であることが示唆された。
(実施例10)紅茶飲料への添加効果
市販紅茶飲料(香料を使用しないもの)に本発明品1~8をそれぞれ0.05質量%添加し、よく訓練されたパネラー(経験年数10年以上)10名により官能評価を行った。官能評価の方法および評価基準は、熟成感、ボディ感、苦味、渋味、甘味それぞれについて、無添加の紅茶飲料と比べ、悪い:-2、やや悪い:-1点、差無し:0点、やや良い:+1点、良い:+2点、極めて良い+3点とした。その平均点および全体として嗜好性が上がったと回答したパネラーの人数を表2に示す。
Figure 0007039142000002
表2に示した通り、本発明品を添加した紅茶飲料は無添加のものと比べ、熟成感、ボディ感、苦味、渋味、甘味などが良好となった。すなわち、本発明品の添加により、前記官能特性を増強する効果も認められるといえる。特に、熟成感やボディ感を向上させる効果が強く認められた。また、本発明品を添加したものを無添加より良いと評価した人数は、いずれも半数以上であり、全体的な嗜好性が向上したことが認められた。
(実施例11~18)
実施例1~8において、(参考品1~8に対する)工程(3)のオートクレーブ加熱温度および時間を105±2℃、2時間とする以外は実施例1~8と全く同様の操作を行い、本発明品11~18を得た。
(実施例19)
本発明品11~18および参考品1~8を水に0.2質量%添加し、よく訓練されたパネラー(経験年数10年以上)10名により官能評価した。官能評価の方法および評価基準は、熟成感、ボディ感、苦味、渋味、甘味それぞれについて、無添加の水を0点、各参考品を2点とした場合の、各参考品に対しての各本発明品の評価を、やや弱い:1点、同程度:2点、やや強い:3点、明らかに強い:4点、極めて強い:5点とした。
また、各本発明品については、全般的な評価を文言で付した。
これらの平均点および全般的な評価の平均的内容を表3に示す。
Figure 0007039142000003
表2に示した通り、105℃の加熱による本発明品11~18は、いずれもほんのりとした甘さが強く感じられ、良好な風味を有していた。また、熟成感(樽的)があり、すっきりとしたさわやかな風味と心地よい渋味があり良好であった。また、いずれも135℃加熱と同様に、加熱処理を行わないもの(参考品)と比べ、熟成感、ボディ感、苦味、渋味、甘味が大幅に増していた。105℃加熱においては、特に甘味の増加が顕著であった。したがって、様々な食品素材への配合が可能であると考えられた。
(実施例20)混合茶飲料への添加効果
市販混合茶飲料(香料を使用しないもの)に本発明品11~18をそれぞれ0.05質量%添加し、よく訓練されたパネラー(経験年数10年以上)10名により官能評価を行った。官能評価の方法および評価基準は、熟成感、ボディ感、苦味、渋味、甘味それぞれについて、無添加の混合茶飲料と比べ、悪い:-2、やや悪い:-1点、差無し:0点、やや良い:+1点、良い:+2点、極めて良い+3点とした。その平均点および全体として嗜好性が上がったと回答したパネラーの人数を表4に示す。
Figure 0007039142000004
表4に示した通り、本発明品を添加した混合茶飲料は無添加のものと比べ、熟成感、ボディ感、苦味、渋味、甘味などが良好となった。すなわち、本発明品の添加により、前記官能特性を増強する効果も認められるといえる。特に、甘味とボディ感を向上させる効果が強く認められた。また、本発明品を添加したものを無添加より良いと評価した人数は、いずれも半数以上であり、全体的な嗜好性が向上したことが認められた。
(実施例21)加熱処理前のpHの影響
実施例1において、参考品1の加熱処理前におけるpHを、未調整(5.45)、6.0、9.0、10.5または12.0に調整する以外は実施例1と全く同様の操作を行い、本発明品19~23を得た。
本発明品19~23および発明品1、参考品1ならびに比較品1を実施例9と同様の評価基準で官能評価した。
すなわち本発明品19~23および発明品1、参考品1ならびに比較品1を水に0.2質量%添加し、よく訓練されたパネラー(経験年数10年以上)10名により官能評価した。官能評価の方法および評価基準は、熟成感、ボディ感、苦味、渋味、甘味それぞれについて、無添加の水を0点、参考品1を2点とした場合の、参考品1に対しての本発明品の評価を、やや弱い:1点、同程度:2点、やや強い:3点、明らかに強い:4点、極めて強い:5点とした。
また、ハーブ特有の香気については、無添加の水と同程度の香気を0点、比較品1と同程度の香気を5点とし、本発明品を1~4点の範囲で点数を付した。また、本発明品については、全般的な評価を文言で付した。これらの平均点および全般的な評価の平均的内容を表5に示す。
Figure 0007039142000005
表5に示した通り、本発明品19~23は、いずれも、熟成感、ボディ感、苦味、渋味、甘味が感じられ、良好な評価であった。また、pH未調整の本発明品19と比べ、本発明品19~23および本発明品1は、熟成感、ボディ感、苦味、渋味、甘味のいずれについても風味が強く、また、ハーブ特有の香気が弱かった。
(実施例22)加熱処理条件の影響
実施例1において参考品1を工程(3)加熱工程に供し、その加熱温度を145℃、1.5時間、155℃、1時間、または165℃、30分とする以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、本発明品24~26を得た。
本発明品24~26および本発明品1、本発明品11、参考品1ならびに比較品1を実施例9と同様の評価基準で官能評価した。
すなわち本発明品24~26および本発明品1、本発明品11、参考品1ならびに比較品1を水に0.2質量%添加し、よく訓練されたパネラー(経験年数10年以上)10名により官能評価した。官能評価の方法および評価基準は、熟成感、ボディ感、苦味、渋味、甘味それぞれについて、無添加の水を0点、参考品1を2点とした場合の、参考品1に対しての本発明品の評価を、やや弱い:1点、同程度:2点、やや強い:3点、明らかに強い:4点、極めて強い:5点とした。
また、ハーブ特有の香気については、無添加の水と同程度の香気を0点、比較品1と同程度の香気を5点とし、本発明品を1~4点の範囲で点数を付した。また、本発明品については、全般的な評価を文言で付した。これらの平均点および全般的な評価の平均的内容を表6に示す。
Figure 0007039142000006
表6に示した通り、105℃~165℃において、未加熱品(参考品1)に対する加熱処理による、熟成感、ボディ感、苦味、渋味、甘味が増強する効果が明確に確認できた。よって、90~180℃、10分~5時間の加熱処理条件の範囲内では、本発明の効果が得られるものと推定される。
(実施例23)酵素処処理の影響
実施例1において酵素(ペクチナーゼとプロテアーゼ)を添加しない以外は実施例1と全く同様の操作を行い、本発明品27を得た。
本発明品27、本発明品1および参考品1を実施例9と同様の評価基準で官能評価した。
すなわち本発明品27、本発明品1および参考品1を水に0.2質量%添加し、よく訓練されたパネラー(経験年数10年以上)10名により官能評価した。官能評価の方法および評価基準は、熟成感、ボディ感、苦味、渋味、甘味それぞれについて、無添加の水を0点、参考品1を2点とした場合の、参考品1に対しての本発明品の評価を、やや弱い:1点、同程度:2点、やや強い:3点、明らかに強い:4点、極めて強い:5点とした。
なお、ハーブ特有の香気については、評価を行わなかった。無添加の水と同程度の香気を0点、比較品1と同程度の香気を5点とし、本発明品を1~4点の範囲で点数を付した。
また、本発明品については、全般的な評価を文言で付した。これらの平均点および全般的な評価の平均的内容を表7に示す。
Figure 0007039142000007
表7に示した通り、酵素処理を行わなくても、未加熱品を加熱処理することにより、熟成感、ボディ感、苦味、渋味、甘味が増強する効果はあるが、酵素処理を行った本発明品1と比べると、全般に熟成感、ボディ感はやや弱かった。よって、酵素処理は必須ではないが、行った方が本発明の効果が高まることが確認された。
(実施例24)無糖コーヒーへの添加
ブラジル産凍結濃縮コーヒー液(無糖、Bx20°)を解凍後、水にて20倍(質量基準)に希釈し、これをそのまま(無添加)または本発明品1を0.1%添加した後、一般パネラー22名(男性13名、女性9名、30代~50代)に試飲させ、熟成感が好ましい方を選択させた。その結果、本発明品添加を好ましいとした人数は16名であった。
(実施例25)バニラアイスクリームへの添加
下記処方(表8)に従って、乳脂肪約10質量%のアイスクリーム生地を調製した。次いで、このアイスクリーム生地をそのまま(無添加)または本発明品1を0.1%添加した後、常法に従いバニラアイスクリームを調製した。
Figure 0007039142000008
これらのアイスクリームを、一般パネラー20名(男性11名、女性9名、30代~50代)に試食させ、熟成感が好ましい方を選択させた。その結果、本発明品添加を好ましいとした人数は15名であった。
(実施例26)オレンジ果汁入り飲料への添加
市販オレンジ果汁入り飲料(果汁10%)をそのまま(無添加)または本発明品1を0.05%添加した後、一般パネラー19名(男性11名、女性8名、30代~50代)に試飲させ、ボディ感が好ましい方を選択させた。その結果、本発明品添加を好ましいとした人数は14名であった。
(実施例27)ノンアルコールビール風味飲料への添加
下記処方(表9)に従って、本発明品を無添加(本発明品の代わりに水を添加)または本発明品1を0.05%添加したノンアルコールビール風味飲料を調製した。
Figure 0007039142000009
これらのノンアルコールビール風味飲料を、一般パネラー20名(男性16名、女性4名、30代~50代)に試飲させ、熟成感が好ましい方を選択させた。その結果、本発明品添加を好ましいとした人数は18名であった。
(実施例28)ポテトチップスへの添加
本発明品1(Bx10°)にデキストリン10質量%を加えて溶解し、次いで常法にて噴霧乾燥し、粉末状の風味付与ないし増強剤を得た(本発明品28)
市販、ポテトチップス(塩)をそのまま(無添加)または本発明品28を0.1%添加した後、一般パネラー23名(男性11名、女性12名、30代~50代)に試食させ、ボディ感が好ましい方を選択させた。その結果、本発明品添加を好ましいとした人数は18名であった。

Claims (13)

  1. 下記(1)~(3)の工程を含む、飲食品の風味付与ないし増強剤の製造方法。
    (1)レモンバーム、レモングラス、レモンバーベナ、ペパーミント、ローズマリー、タイム、セージ、オレガノからなる群から選択される1種または2種以上のハーブ原料を脱臭し、脱臭ハーブ原料を得る工程
    (2)前記脱臭ハーブ原料を水、または、水と親水性有機溶媒の混合溶媒で抽出し、抽出液を得る工程
    (3)前記抽出液を90~180℃にて、10分~5時間加熱し加熱処理物を得る工程
  2. (1)の脱臭方法が、水蒸気蒸留または超臨界、液体もしくは亜臨界炭酸ガス抽出である、請求項1に記載の飲食品の風味付与ないし増強剤の製造方法。
  3. (2)の水または水と親水性有機溶媒の混合溶媒で抽出中および/または抽出後に酵素処理を行う、請求項1または2に記載の飲食品の風味付与ないし増強剤の製造方法。
  4. 酵素が、ペクチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼおよびプロテアーゼから選ばれる1種または2種以上である、請求項3に記載の飲食品の風味付与ないし増強剤の製造方法。
  5. (2)の抽出液を、(3)の加熱前に、さらに、濃縮する工程を含む、請求項1~4のいずれかに1項に記載の飲食品の風味付与ないし増強剤の製造方法。
  6. (2)の抽出液を、(3)の加熱前に、さらに、pHを6~12に調整する工程を含む、
    請求項1~5のいずれかに1項に記載の飲食品の風味付与ないし増強剤の製造方法。
  7. 請求項1~のいずれか1項に記載の方法により得られる風味付与ないし増強剤を有効成分とする飲食品の風味付与ないし増強剤。
  8. 付与ないし増強される風味が熟成感である、請求項に記載の、飲食品の風味付与ないし増強剤。
  9. 付与ないし増強される風味がボディ感である、請求項に記載の、飲食品の風味付与ないし増強剤。
  10. 付与ないし増強される風味が加熱感である、請求項に記載の、飲食品の風味付与ないし増強剤。
  11. 付与ないし増強される風味が苦味である、請求項に記載の、飲食品の風味付与ないし増強剤。
  12. 付与ないし増強される風味が渋味である、請求項に記載の、飲食品の風味付与ないし増強剤。
  13. 付与ないし増強される風味が甘味である、請求項に記載の、飲食品の風味付与ないし増強剤。
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