JP5868787B2 - カカオ風味飲食品用呈味改善剤 - Google Patents

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本発明はカカオ風味飲食品用呈味改善剤に関する。さらに詳しくは、カカオ風味飲食品、特にココア飲料やココア風味またはチョコレート風味の菓子類に極微量添加することで、ココア飲料やココア風味若しくはチョコレート風味の菓子類が有する、焙煎カカオ豆感、ならびに、濃厚感、味の厚み、ボディ感などのいわゆるコク味を増強し、バランスの改善をはかることのできる、呈味改善剤に関する。
ココアやチョコレートは古くは薬(媚薬)や貨幣としても使用されており、庶民はなかなか口にできない時代もあったが、近代では、誰もが入手できる嗜好品として親しまれて広く一般に飲食されている。一方、近年、缶やペットボトルに充填した、いわゆる容器詰め飲料が各種開発され、自動販売機やコンビニエンスストアーなどでも手軽に入手できる状況となり多くの人々に提供されている。
これらの各種容器詰め飲料の中には、ココア飲料などもそのラインナップの1つとして見受けられることも多い。しかしながら、これらの容器詰め飲料は、大量生産に適応させるため、工業的方法で抽出工程を行い、また長期保存に耐えられるように微生物安定性を高めるため、強い殺菌を行う必要がある。その結果、その工業的製造工程および殺菌工程により、香気の散逸、加熱による香味の劣化、呈味の低下などを伴い、家庭や喫茶店にて調製したココアと比べて十分に満足のいく風味の製品を得ることが極めて困難であった。
また、チョコレートや焼き菓子などの製造工程においても、加熱の工程を伴い、工業生産においては、加熱による香気の飛散や呈味の低下を伴うため、これらの風味向上に関する課題は従来から大きなテーマであった。
このような欠点を解消する手段として、例えば、バリン、ロイシンもしくはイソロイシンと糖類を溶媒中にて加圧条件下で反応させて得られるチョコレート様フレーバー(特許文献1)、バリン、ロイシンもしくはイソロイシンと糖類を水の存在下で加熱反応させた後、アルコール類を添加してさらに熟成させて得られるチョコレート様フレーバー(特許文献2)、穀類蛋白質、カカオ脂、カカオ成分および糖類を混合し、80〜150℃で加熱焙焼した後粉砕して得られるココア様フレーバー(特許文献3)、カカオニブをポリフェノールオキシダーゼの溶液に浸漬処理した後、乾燥、焙焼することにより得られる風味の改良されたカカオニブを加工原料とする方法(特許文献4)、焙炒カカオマスを酸素ガスにより処理する香味の改良法(特許文献5)、チョコレート飲料を製造する際に、湯水の代わりにカカオマスまたはカカオニブの酵素処理抽出液を用いてココア粉を分散するチョコレート飲料の製造法(特許文献6)、カカオニブを高濃度のアルカリで処理した後、熱水で抽出する工程の途中において、酵素処理を行って抽出液を調製し、これを用いてチョコレート飲料を製造する方法(特許文献7)、ココア飲料中にカカオ分として1.5〜3.5重量%と、甘味料、増粘安定剤、ゲル化剤、乳化剤などを加えた調整した、コク味のあるココア飲料(特許文献8)、カカオリカー及び/又はココア粉末を、アミノ酸、糖類及び水と混合した後、80℃〜100℃の温度で加熱する第一工程と、第一工程で得られる加熱生成物に乳及び/又は乳製品を添加して、40℃〜80℃の温度で更に加熱する第二工程とからなることを特徴とするクックドココアフレーバーの製造方法(特許文献9)、1つ以上のクラム成分をプロテアーゼ処理あるいは、乳またはたんぱく質加水分解物により処理し、クラム製造中に成分時間、反応温度、または水分含量を変えることによりフレーバーを増強する方法(特許文献10)、ココア液の酸処理の後にプロテアーゼ処理を含んでなる、酵素処理した未発酵ココア液の製造方法(特許文献11)、カカオ豆から見出された特定のジペプチドと還元糖とをメイラード反応させて得られるチョコレートフレーバー(特許文献12)などが提案されている。
しかしながら、特許文献1、2の発明に記載された反応物は、トップの香りは補強できるが、呈味のボディ感までは付与できなく、また、天然のカカオ豆の抽出物ではないという欠点がある。特許文献3〜5の発明で得られる特徴的な風味を有するカカオマスやカカオニブは、これらの抽出物を呈味改善剤として用いる目的ではないため、カカオ風味飲食品の呈味改善に使用するためには、多量に使用する必要があり、特許文献6、7の発明により得られた酵素処理抽出物も、飲料として用いる目的であるため、カカオ風味飲食品の呈味改善に使用するためには、多量に使用する必要があるものであった。また、特許文献8の発明はココア飲料のコク味を増強する目的であるが、実質は飲料の粘度などのテクスチャーの改良であって、味覚以外の感覚により濃厚感を増強する目的である。また、特許文献9は実質的には反応に際して添加した糖とアミノ酸によるアミノカルボニル反応物であって、カカオ豆の抽出物ではない。特許文献11はチョコレート組成物そのものを製造するための方法であり、カカオ風味飲食品用呈味改善剤を提供するものではない。特許文献12の発明は、実質上は、発酵した生のカカオ豆中のココアフレーバー形成に関与するジペプチド群を特定した報告であり、フレーバーとして応用するためにはさらなる改良を要するものであった。
特開昭50−105866号公報 特開昭50−105867号公報 特開昭54−92662号公報 特開平4−126037号公報 特開平3−15344号公報 特開平7−79749号公報 特開平8−332063号公報 特開平9−313145号公報 特開平11−346707号公報 特開2003−180253号公報 特開2004−517641号公報 特許4288164号公報
本発明が解決しようとする課題は、カカオ風味飲食品、特にココア飲料やココア風味若しくはチョコレート風味の菓子類に極微量添加することで、ココア飲料やココア風味若しくはチョコレート風味の菓子類が有する、焙煎カカオ豆感ならびに濃厚感、味の厚み、ボディ感などのいわゆるコク味を増強し、バランスの改善をはかることのできる素材をカカオ豆原料により調製することにある。
本発明者らは、前記課題に鑑み、焙煎カカオ豆の抽出液そのものに何らかの処理を加えることにより、ココア飲料やチョコレートに対して有効な呈味改善剤を得ることができないかと考え、鋭意研究を行ってきた。
従来、ココア飲料等の製造において、レトルト殺菌(121℃、10分程度)やUHT殺菌(135℃、1分程度)は必須の工程であり、この工程により発生する不快臭はいわゆるレトルト臭、加熱殺菌臭などと呼ばれており、好ましくない臭気とされてきた。
したがって、カカオ豆の抽出液を加熱したところで、いわゆる加熱臭が強まるのであって、有効な呈味改善剤ができるということは全く予想されていなかった。
ところが、驚くべきことに、カカオ豆の抽出液を、飲用濃度よりも高い濃度において、高温加熱(Bx50°、130〜140℃、30分程度)を行い、その処理物をココア飲料に添加してみたところ、わずか1ppm程度の添加でも、極めて強い呈味増強効果がある風味素材が得られた。また、カカオ豆を抽出する際、若しくは抽出後にプロテアーゼ処理や糖質分解酵素処理を行ったところ、その効果はさらに強いものとなった。
かくして、本発明は以下のものを提供する。
(1)カカオ豆抽出液を100℃〜180℃にて10分〜5時間加熱処理して得られる加熱処理物からなる、カカオ風味飲食品用呈味改善剤。
(2)カカオ豆抽出液が固形分濃度として屈折糖度(20℃)でBx1°〜Bx80°である前記の呈味改善剤。
(3)カカオ豆抽出液が、プロテアーゼ、リパーゼまたは糖質分解酵素から選ばれる1種または2種以上により処理された酵素処理物である、(1)または(2)の呈味改善剤。
(4)カカオ豆抽出液が焙煎カカオ豆、カカオニブ、カカオリカー、ココアケーキまたはココアパウダー抽出液である、(1)〜(3)のいずれかの呈味改善剤。
(5)単糖、二糖またはオリゴ糖から選ばれる1種または2種以上を添加して加熱処理する、(1)〜(4)のいずれかの呈味改善剤。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の呈味改善剤を含有するカカオ風味飲食品。
(7)カカオ風味飲食品が、ココア飲料、ココア風味若しくはチョコレート風味の菓子類、調製ココア粉末またはチョコレートである(6)のカカオ風味飲食品。
(8)(1)〜(5)のいずれかに記載の呈味改善剤をカカオ風味飲食品に添加することを特徴とする、カカオ風味飲食品の呈味増強方法。
本発明によれば、通常のカカオ豆抽出液を原材料とし、これを加工することによりカカオ風味飲食品の呈味増強に効果のある呈味改善剤を提供することができる。また、本発明の呈味改善剤を、ココア飲料、チョコレート、または、ココア若しくはチョコレート風味の菓子類などに極微量添加することにより、焙煎カカオ豆感、ならびに、濃厚感、味の厚み、ボディ感などのいわゆるコク味を増強させることができる。したがって、カカオ呈味の強いココア飲料、チョコレート、または、ココア若しくはチョコレート風味の菓子類の製造に利用できる他、これらの飲食品製造時において、コストダウンのため原料とするカカオ豆原料の使用量の減量を余儀なくされた場合の風味補正に利用できるものと考えられる。
本発明におけるカカオ豆抽出液とは、カカオ豆原料から水性溶媒にて抽出された液、または、その濃縮液をいう。
本発明に使用するカカオ豆原料は、市場で一般に入手できるものを使用することができる。カカオ豆は、カカオの実が収穫された後、実を割り、種をパルプごと取り出した後、1週間程度発酵させ、その後、110〜150℃で焙煎された後、粗粉砕され、ハスク(外皮)と胚芽が取り除かれるが、この焙煎し粗粉砕されたカカオ豆をカカオニブと呼ぶ。カカオニブを微粒子となるまで磨砕すると、カカオニブにはカカオバターが多量に含まれているため、液状となり、これがカカオリカーと呼ばれる。カカオリカーを圧搾して、カカオバター(油脂)を適度に除いた塊がココアケーキと呼ばれ、ココアケーキを粉砕したものがココアパウダーと呼ばれる。
本発明では、カカオ豆原料として、前記、カカオ豆の加工工程における、カカオニブ、カカオリカー、ココアケーキ、ココアパウダーを使用することができる。これらの内、入手および抽出の容易さから、カカオニブまたはココアパウダーが特に好ましい。
また、必要に応じて、副原料として、例えば、焙煎大麦(麦茶)、焙煎麦芽、焙煎ハトムギ(ハトムギ茶)、焙煎米、焙煎玄米、焙煎発芽米、焙煎ソバの実(ソバ茶)、焙煎トウモロコシ、炒りごま、焙煎キヌア、焙煎アマランサス、焙煎キビ、焙煎ヒエ、焙煎アワ、焙煎大豆などの穀類;セージ、タイム、マジョラム、オレガノ、バジル、ペパーミント、シソ、レモンバーム、ベルベナ、セイボリー、ローズマリー、レモングラス、ブルーベリーリーフ、ベイリーフ、マテ茶、ユーカリリーフ、サッサフラス、サンダルウッド、ニガヨモギ、センブリ、レッドペッパー、シンナモン、カッシャ、スターアニス、ワサビ、ホースラディッシュ、ミズガラシ、マスタード、トンカ豆、フェネグリーク、サンショウ、ブラックペッパー、ホワイトペッパー、オールスパイス、ナツメグ、メース、クローブ、セリ、アンゲリカ、チャービル、アニス、フェンネル、タラゴン、コリアンダー、クミン、ディル、キャラウェー、ガランガ、カルダモン、ジンジャー、ガジュツ、ターメリック(ウコン)、バニラ、ジュニパーベリー、ウインターグリーン、ジャーマンカモミール、ローマンカモミール、菊花、ラベンダー、ハイビスカスフラワー、サフラン、マリーゴールド、オレンジフラワー、マローフラワー、ローズヒップ、サンザシ、リュウガン、クコシ、サンデュー(モウセンゴケ)、オレンジピール、レモンピール、マシュマロールート、チョウセンニンジン、デンシチニンジン、エゾウコギ、ギムネマ、ルイボスティー、シイタケ茶、トチュウ、ドクダミ、ケツメイシ、ハブ茶、アマチャヅル茶、オオバコ茶、桜茶、甘茶、柿の葉茶、昆布茶、松葉茶、明日葉茶、グァバ茶、ビワの葉茶、アロエ茶、ウコン茶、スギナ茶、紅花茶、サフラン茶、コンフリー茶、クコ茶、ヨモギ茶、イチョウ葉茶、カリン茶、桑の葉茶、ゴボウ茶、タラノキ茶、タンポポ茶、ナタマメ茶、ニワトコ茶、ネズミモチ茶、メグスリノキ茶、羅漢果茶などの各種植物の葉、茎、根などを加えてもよい。
抽出溶媒は主として水であり、抽出時の水、あるいは抽出後の抽出液に対し、酸化防止剤として、ビタミンCまたはアスコルビン酸ナトリウムを焙煎カカオ豆原料に対し、0.01〜5質量%程度添加してもよい。また、必要によっては、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールなどの食品に使用し得る水混和性極性有機溶媒を、溶媒全体に対し、0.1〜60質量%の範囲内で混合して使用することもできる。
抽出に用いる溶媒(水)の量は任意に選択できるが、一般にはカカオ豆原料の2〜50倍量(質量)であり、好ましくは5〜30倍量、より好ましくは10〜20倍量である。抽出の温度及び時間についても任意に定めることができ、特に限定されるものではないが、10〜100℃にて30分〜12時間、特に1〜2時間が好適である。本発明の抽出液を得る操作の方法としては、カラム抽出、バッチ式、ニーダーによる抽出などのいずれでも行うことができる。
また、抽出時および/または抽出後の抽出液に対し、酵素処理を行うこともできる。酵素処理により、澱粉などの多糖類が分解し、抽出液の粘度が低下し、後に記述する濃縮時においても加熱を均一に行うことができ、好適である。この酵素処理に使用することのできる酵素としては、特に制限はなく、例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、糖質分解酵素、タンナーゼ、クロロゲン酸エステラーゼなどを例示することができる。
焙煎カカオ豆中には焙煎後であってもある程度の量のタンパク質が残存していると考えられ、プロテアーゼ処理を行うことにより、後の加熱反応の効果が特に高まる。プロテアーゼは、蛋白質やペプチドのペプチド結合を加水分解する酵素である。本発明で使用可能なプロテアーゼとしては、市販の各種プロテアーゼを挙げることができる。プロテアーゼの使用量は、力価などにより異なり一概には言えないが、通常、焙煎カカオ豆原料の質量を基準として通常、0.01〜100U/g、好ましくは1〜80U/gの範囲内を例示することができる。
また、カカオ豆中には油脂が含まれているが、この油脂をリパーゼによりあらかじめ加水分解しておくことにより、後の加熱反応の効果が特に高まる。本発明で使用可能なリパーゼとしては、特に制限されるものではなく、例えば、アスペルギルス属、ムコール属、キャンディダ属、リゾープス属等の微生物由来リパーゼ、豚の膵臓から得られるリパーゼ、子山羊、子羊、子牛の咽頭分泌線から採取したオーラルリパーゼなどを適宜利用できるが、好ましくは、カカオ脂に構成されている脂肪酸組成からパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸を遊離するリパーゼを使用することが好ましい。リパーゼの使用量は力価などにより異なり一概には言えないが、通常、カカオ原料に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲内を例示することができる。
さらに、カカオ豆中には多糖類が含まれているが、この多糖類を糖質分解酵素によりあらかじめ加水分解しておくことにより、後の加熱反応の効果が特に高まる。糖質分解酵素としては、具体的には、例えば、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、アラバナーゼ、デキストラナーゼ、グルカナーゼ、マンナナーゼ、α−ガラクトシダーゼなどを例示することができる。
これらの内、特に好ましい糖質分解酵素としては、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼを例示することができる。
糖質分解酵素の使用量は、使用する酵素の種類や焙煎カカオ豆中の多糖類の存在量により一概にはいえないが、おおよそ焙煎カカオ豆原料の質量を基準として通常0.1〜1,000U/g、好ましくは1〜100U/gの範囲内、または、製剤中に通常複数種類の酵素が含まれていて活性単位では表しにくいような場合は、焙煎カカオ豆原料に対して通常、0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%の範囲内を例示することができる。
また焙煎カカオ豆にはタンニンやクロロゲン酸を含むものもあるためタンナーゼやクロロゲン酸エステラーゼで分解することも効果的である。タンナーゼは、タンニン中の水酸基に没食子酸がエステル結合しているデプシド結合を加水分解する酵素、例えば、エピガロカテキンガレートをエピガロカテキンと没食子酸に加水分解する酵素である。本発明で使用することのできるタンナーゼとしては、具体的には、例えば、タンナーゼ(500U/g;キッコーマン社製)、タンナーゼ(5,000U/g;キッコーマン社製)、タンナーゼ(500U/g;三菱化学フーズ社製)などを用いることもできる。タンナーゼの使用量は、力価などにより一概には言えないが、通常、焙煎カカオ豆原料の質量を基準として通常0.1〜50U/g、好ましくは0.5〜20U/gの範囲内を例示することができる。
酵素処理条件としては、バッチ式、ニーダーによる抽出などにおいて、焙煎カカオ豆原料の抽出時に酵素を添加する場合は、例えば、焙煎カカオ豆原料1質量部あたり水を通常5〜50質量部、好ましくは10〜20質量部添加し、60〜121℃で2秒〜20分間殺菌した後冷却したものに対し、酵素を添加し、20〜60℃で30分〜24時間酵素処理を行う。酵素処理後、60〜121℃で2秒〜20分間加熱して酵素を失活させた後冷却し、固液分離、濾過することにより、酵素処理された焙煎カカオ豆抽出液を得ることができる。また、カラム抽出、バッチ式、ニーダーによる抽出などにおいて、焙煎カカオ豆原料の抽出後の抽出液に対して酵素を添加する場合は、抽出液に対し酵素を添加し、20〜60℃で30分〜24時間酵素処理を行う。酵素処理後、60〜121℃で2秒〜20分間加熱して酵素を失活させた後冷却し、固液分離、濾過することにより、酵素処理された焙煎カカオ豆抽出液を得ることができる。
また、焙煎カカオ豆抽出液は、前記酵素処理と併せて、または、酵素処理とは別に、抽出時および/または抽出後の抽出液に対し、PVPP(ポリビニルポリピロリドン)および/または活性炭による接触処理を行っても良い。
PVPPはポリフェノール類を吸着する性質があり、焙煎カカオ豆抽出液をPVPPと接触処理することにより、焙煎カカオ豆抽出液中のポリフェノール類含量を低減させることができる。かかるPVPPの使用量は、一般には、焙煎カカオ豆原料の質量を基準として、15〜300質量%、特に30〜150質量%の範囲内とすることができる。PVPPによる接触処理は、焙煎カカオ豆原料の抽出中または抽出液にPVPPを添加し、例えば、10℃〜60℃程度の範囲内の温度で10分〜2時間攪拌処理することにより行うことができる。その後、遠心分離、ろ過等適宜の分離手段を採用して清澄な抽出液とすることができる。これにより、ポリフェノール類を低減させた焙煎カカオ豆抽出液を得ることができる。
活性炭は低極性成分、カフェインやポリフェノール類などを吸着する性質があり、焙煎カカオ豆抽出液を活性炭と接触処理することにより、焙煎カカオ豆抽出液中のカフェインやポリフェノール類含量を低減させることができる。かかる活性炭の使用量は、一般には、焙煎カカオ豆原料の質量を基準として、15〜300質量%、特に30〜150質量%の範囲内とすることができる。活性炭による接触処理は、焙煎カカオ豆原料の抽出中または抽出液に活性炭を添加し、例えば、10℃〜60℃程度の範囲内の温度で10分〜2時間攪拌処理することにより行うことができる。また、抽出液に対する処理であれば、粒状態の活性炭を充填したカラムに、SV=1〜100、好ましくは5〜20の範囲内で通液し、処理することもできる。その後、遠心分離、ろ過等適宜の分離手段を採用して清澄な抽出液とすることができる。これにより、カフェインやポリフェノール類を低減させた焙煎カカオ豆抽出液を得ることができる。
かくして得られた焙煎カカオ豆抽出液はBx1°〜10°程度であり、そのまま加熱処理に供することもできるが、加熱処理に供するときの濃度はある程度高いことが好ましい。
加熱処理に供するときの焙煎カカオ豆抽出液の濃度としては、Bx1°〜Bx80°、好ましくはBx5°〜Bx80°、より好ましくはBx10°〜70°、さらに好ましくはBx20°〜60°、最も好ましくはBx30°〜55°とすることができる。濃度が低すぎる場合は、加熱反応が進行しづらく、加熱の効果が出にくい。また、通常の飲用程度の濃度(Bx0.3〜1°程度)であると、いわゆるレトルト臭、加熱臭が発生することが知られているが、低濃度での加熱処理ではレトルト臭と同様な風味が生じてしまい、呈味改善剤として十分に有効な素材としては得られない。また、濃度が低いことにより、カカオ風味飲食品へ多量の添加が必要になってしまう可能性がある。一方、濃度が高すぎる場合は粘度が高く、均一加熱ができなくなり、焦げ付くなどの弊害が生じる可能性がある。
焙煎カカオ豆抽出液の濃度を高めるための方法としては、減圧濃縮、RO膜濃縮、凍結濃縮などの濃縮手段を採用することができる。
また、濃度を高めるため別の方法として、焙煎カカオ豆抽出液に糖類を添加して濃度を高める方法を採用することもできる。使用する糖類としては、単糖、二糖またはオリゴ糖が好ましく、リボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、ラムノース、ラクトース、マルトース、シュークロース、トレハロース、セロビオース、マルトトリオース、水飴などを例示することができる。糖類の添加量としては、Bx1°〜Bx10°程度のカカオ豆抽出液1質量部に対し、0.01〜2質量部を挙げることができる。
かくして得られたカカオ豆抽出液を、加熱処理する点が本発明の特徴である。加熱処理により、いわゆるメイラード反応の素材となる糖やアミノ酸の他にカカオ豆由来の特有の成分(カテキン類、ポリフェノール類、テオブロミンなど)が複雑に反応し、呈味増強成分が生成すると考えられる。
焙煎カカオ豆抽出液の加熱処理における反応温度としては、100℃〜180℃、好ましくは110℃〜170℃、より好ましくは120℃〜150℃、さらに好ましくは130℃〜140℃とすることができる。温度が低すぎる場合は、加熱反応が進行しづらく、呈味改善剤としての効果が出にくい。温度が高すぎる場合は、加熱による変化が大きすぎ、呈味改善剤としての目的を達成することができないものとなってしまう。
また、加熱処理における反応時間としては、反応に必要な時間を確保する必要があり、10分〜5時間、好ましくは20分〜3時間、より好ましくは30分〜2時間とすることができる。反応時間が短すぎる場合は、反応が十分進行せず、呈味改善剤としての効果が出にくい。反応時間が長すぎる場合は、加熱による変化が大きすぎ、呈味改善剤としての目的を達成することができないものとなってしまう。
本発明において、加熱処理には、密閉系にて内容物を加熱攪拌できるオートクレーブを使用することが好ましい。オートクレーブの操作としては、内容物として前記焙煎カカオ豆抽出液を仕込んだ後、容器を密閉にし、ヘッドスペースの空気をそのまま、あるいは、酸素あるいは不活性ガスにより置換して、引き続き前記条件にて加熱処理を行い、冷却後、釜内から、加熱処理物を回収する。回収物に澱が生じているときは濾過や遠心分離などの処理により、澱を除去することもできる。
釜内から回収された加熱処理物はこのまま呈味改善剤として使用することもできるが、所望により、さらに濃縮、あるいは、デキストリン、化工澱粉、サイクロデキストリン、アラビアガム等の賦形剤を添加して、ペースト状とすることができ、さらに、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などの乾燥により粉末状の呈味改善剤組成物とすることもできる。
また呈味改善剤組成物とするに際し、組成物中に穀物フレーバーなどの天然または調合香料を添加することもできる。
かくして得られた呈味改善剤あるいは呈味改善剤組成物は、各種カカオ風味飲食品に0.1ppm〜1%程度添加することにより、焙煎カカオ豆感ならびに濃厚感、味の厚み、ボディ感などのいわゆるコク味を増強し、かつ、バランスの改善をはかることができる。なお、焙煎カカオ豆感とは、カカオ豆独特の呈味を形成する感覚であって、添加することにより、実際に使用したカカオ豆の量より多くカカオ豆を使用したと感じさせる飲み応えのある感覚である。また、味の厚みとは、飲食品を口に含んだとき、または、飲み込んだ時に口中全体から喉の奥にかけてしばらく持続し、味わいが深いと感じさせるような感覚である。また、ボディ感とは、味の骨格がしっかりしていて、かつ、まろやかでふくらみがあり、呈味全体に強さをもたらすような感覚である。また、バランスとは焙煎カカオ豆の呈味バランスを意味し、苦味、渋味、甘味、の他前述の味の厚み・ボディ感、焙煎カカオ豆感などが良好に調和した感覚を意味する。
本発明の呈味改善剤あるいは呈味改善剤組成物が添加されるカカオ風味飲食品としては、例えば、ペットボトル、缶または紙容器に充填されたココア飲料、チョコレートドリンクなどの飲料類;チョコレート類;ココア風味またはチョコレート風味を付与したアイスクリーム、ソフトクリームまたはシャーベットなどの冷菓類;ココア風味またはチョコレート風味を付与したビスケット、クッキー、せんべい、饅頭、クリーム内包菓子、パンなどを例示することができる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。
(実施例1)
5Lカラムに粗粉砕(3mm)した焙煎カカオニブ2500gを仕込み、95℃熱水8750gをカラム上部から送り込み、2時間かけて抽出し(2187.5gずつ、4回に分けて、仕込み後30分ホールディング後抜き取りを繰り返す)カラム下部より抽出液を抜き取り、この抽出液を、20℃に冷却後、800Gにて5分間遠心分離を行い、上清7655g(Bx4.2°)得た。これにスミチームC(新日本化学工業社製のセルラーゼ)0.32g(対Bx換算固形分0.1%)およびプロテアーゼM(アマノエンザイム社製:5500U/g)0.32g(対Bx換算固形分0.1%)を加え、15分間攪拌した。その後、40℃にて8時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃にて10分間殺菌した後、30℃まで冷却して酵素処理液を得、酵素処理液を減圧濃縮し、Bx50°の濃縮液(参考品1)625.8gを得た。
参考品1(500g)を1Lオートクレーブに仕込み、密閉した後、攪拌しながら加熱し、約30分かけて昇温し、135±2℃にて1時間加熱した、30℃まで冷却後、内容物を取り出し、200メッシュサランにて濾過して、呈味改善剤(本発明品1:476.1g、Bx20°)を調製した。
(実施例2)
ココアパウダー(脂肪分10〜12%)1質量部、砂糖6質量部、食塩0.05質量部、レシチン0.01質量部、カラギーナン0.3質量部を粉体混合し、これに牛乳25質量部を加え良く混練した。これに水を加え、全体を100質量部とした後、95℃2分加熱殺菌後、25℃まで冷却し、ココア飲料を調整した(参考品2)。
参考品2に対し、本発明品1を下記表1に示す量添加し、良く訓練された10名のパネラーにて官能評価を行った。評価方法および評価基準は参考品1をコントロールとして、焙煎カカオ豆感、コク味およびバランスについて官能評価をおこなった。評価基準は10点満点で採点し、焙煎カカオ豆感およびコク味については、コントロールと比べ変化なし:0点、わずかに強い:2点、やや強い:4点、強い:6点、明らかに強い8点、非常に強い10点として、また、ココア飲料としてのバランスの良さについて、コントロールと比べ差無し:0点、わずかに良い:2点、やや良い:4点、明らかに良い:6点、非常に良い:8点、極めて良い10点として官能評価を行った。その平均点を表1に示す。なお、焙煎カカオ豆感とは、カカオ豆独特の呈味を形成する感覚であって、添加することにより、実際に使用したカカオ豆の量より多くカカオ豆を使用したと感じさせる飲み応えのある感覚である。また、コク味とは濃厚感、味の厚み、ボディ感などの総合的な感覚である。また、バランスとは焙煎カカオ豆の呈味バランスを意味し、苦味、渋味、甘味、の他前述の味の厚み・ボディ感、焙煎カカオ豆感などが良好に調和した感覚を意味する。
Figure 0005868787
表1に示した通り、ココア飲料(参考品2)に本発明品1を添加したものは、わずか0.2ppmの添加でも焙煎カカオ豆感、コク味がわずかに増強し、またバランスがわずかに改善された。また、さらに添加量を増やし10ppm〜100ppmの添加では添加量の増加と共に、焙煎カカオ豆感およびコク味が増強し、バランスが良好となり、100ppmの添加では明らかに良いという評価であった。
(実施例3)
5Lカラムに粗粉砕(3mm)した焙煎カカオニブ2500gを仕込み、95℃熱水8750gをカラム上部から送り込み、2時間かけて抽出し(2187.5gずつ、4回に分けて、仕込み後30分ホールディング後抜き取りを繰り返す)カラム下部より抽出液を抜き取り、この抽出液を、20℃に冷却後、800Gにて5分間遠心分離を行い、上清7638g(Bx4.3°)得た。この上清を減圧濃縮し、Bx50°の濃縮液(参考品3)617.5gを得た。
参考品3(500g)を1Lオートクレーブに仕込み、密閉した後、攪拌しながら加熱し、約30分かけて昇温し、135±2℃にて1時間加熱した、30℃まで冷却後、内容物を取り出し、200メッシュサランにて濾過して、呈味改善剤(本発明品2:459.2g、Bx50°)を調製した。
(実施例4)
5Lカラムに粗粉砕(3mm)した焙煎カカオニブ2500gを仕込み、95℃熱水8750gをカラム上部から送り込み、2時間かけて抽出し(2187.5gずつ、4回に分けて、仕込み後30分ホールディング後抜き取りを繰り返す)カラム下部より抽出液を抜き取り、この抽出液を、20℃に冷却後、800Gにて5分間遠心分離を行い、上清7678g(Bx4.2°)得た。これにスミチームC(新日本化学工業社製のセルラーゼ)0.32g(対Bx換算固形分0.1%)、プロテアーゼM(アマノエンザイム社製:5500U/g)0.32g(対Bx換算固形分0.1%)およびスミチーム(新日本化学工業社製のグルコアミラーゼ)0.32g(対Bx換算固形分0.1%)を加え、15分間攪拌した。その後、40℃にて8時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃にて10分間殺菌した後、30℃まで冷却して酵素処理液を得、酵素処理液を減圧濃縮し、Bx50°の濃縮液(参考品4)632.4gを得た。
参考品4(500g)を1Lオートクレーブに仕込み、密閉した後、攪拌しながら加熱し、約30分かけて昇温し、135±2℃にて1時間加熱した、30℃まで冷却後、内容物を取り出し、200メッシュサランにて濾過して、呈味改善剤(本発明品3:481.1g、Bx50°)を調製した。
(実施例5)
5Lカラムに粗粉砕(3mm)した焙煎カカオニブ2500gを仕込み、95℃熱水8750gをカラム上部から送り込み、2時間かけて抽出し(2187.5gずつ、4回に分けて、仕込み後30分ホールディング後抜き取りを繰り返す)カラム下部より抽出液を抜き取り、この抽出液を、20℃に冷却後、800Gにて5分間遠心分離を行い、上清7594g(Bx4.2°)得た。これにスミチーム(新日本化学工業社製のグルコアミラーゼ)0.32g(対Bx換算固形分0.1%)、プロテアーゼM(アマノエンザイム社製:5500U/g)0.32g(対Bx換算固形分0.1%)およびリパーゼA−10D(ナガセケムテックス社製)0.16g(対Bx換算固形分0.05%)を加え、15分間攪拌した。その後、40℃にて8時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃にて10分間殺菌した後、30℃まで冷却して酵素処理液を得、酵素処理液を減圧濃縮し、Bx50°の濃縮液(参考品5)637.5gを得た。
参考品5(500g)を1Lオートクレーブに仕込み、密閉した後、攪拌しながら加熱し、約30分かけて昇温し、135±2℃にて1時間加熱した、30℃まで冷却後、内容物を取り出し、200メッシュサランにて濾過して、呈味改善剤(本発明品4:485.3g、Bx50°)を調製した。
(実施例6)
参考品2に、参考品1、3〜5または本発明品1〜4を10ppm添加し、良く訓練された10名のパネラーにて官能評価を行った。評価方法および評価基準は、実施例2と同じとした。その平均点を表2に示す。
Figure 0005868787
表2に示した通り、ココア飲料(参考品2)に対し、高温加熱処理を行っていない参考品1または3〜5を添加したものは、いずれも無添加品と比べ差がなかったが、高温加熱処理を行った本発明品1〜4を添加したものは、いずれも焙煎カカオ豆感、コク味、バランスの評価が良好であった。酵素処理を全く行っていない本発明品2を参考品2に10ppm添加したものでは、無添加の参考品2よりはコク味、バランスともやや改善されていたが、酵素処理を行ってから加熱処理を行った本発明品1、3、4を添加したものの方が、酵素処理を行っていない本発明品2と比較し、さらに焙煎カカオ豆感、コク味がアップし、バランスが改善された。これらの内では、特に、酵素処理としてセルラーゼ、プロテアーゼおよびリパーゼを併用して処理した本発明品4が最も良好であった。
(実施例7)
5Lカラムに粗粉砕(3mm)した焙煎カカオニブ2500gを仕込み、95℃熱水8750gをカラム上部から送り込み、2時間かけて抽出し(2187.5gずつ、4回に分けて、仕込み後30分ホールディング後抜き取りを繰り返す)カラム下部より抽出液を抜き取り、この抽出液を、20℃に冷却後、800Gにて5分間遠心分離を行い、上清7594g(Bx4.2°)得た。これにスミチーム(新日本化学工業社製のグルコアミラーゼ)0.32g(対Bx換算固形分0.1%)、プロテアーゼM(アマノエンザイム社製:5500U/g)0.32g(対Bx換算固形分0.1%)およびリパーゼA−10D(ナガセケムテックス社製)0.16g(対Bx換算固形分0.05%)を加え、15分間攪拌した。その後、40℃にて8時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃にて10分間殺菌した後、30℃まで冷却して酵素処理液を得た。
この酵素処理液を減圧濃縮し、Bx5°の濃縮液、Bx10°の濃縮液およびBx30°の濃縮液をそれぞれ調製した。それぞれの濃縮液500gを1Lオートクレーブに仕込み、密閉した後、攪拌しながら加熱し、約30分かけて昇温し、135±2℃にて1時間加熱した、30℃まで冷却後、内容物を取り出し、200メッシュサランにて濾過して、以下の呈味改善剤を調製した。
本発明品5:Bx5°
本発明品6:Bx10°
本発明品7:Bx30°
(実施例8)
実施例2と同様に、参考品2に、本発明品4〜7を固形分換算(Bxを使用)で、本発明品1の10ppm添加に相当する量添加し、良く訓練された10名のパネラーにて官能評価を行った。評価方法および評価基準は、実施例2と同じとした。その平均点を表3に示す。
Figure 0005868787
表3に示した通り、加熱処理における濃度が高いものほどココア飲料への添加による、焙煎カカオ豆感およびコク味の増強効果、バランスの改善効果が高いが、Bx5°の低濃度(本発明品5)でもかなりの改善効果がみられた。
(実施例9)
水80Kgにココアパウダー(脂肪分10〜12%)4Kgを投入し、80℃にて5分間殺菌し、45℃まで冷却した。これにスミチーム(新日本化学工業社製のグルコアミラーゼ)40g(対ココアパウダー1%)、プロテアーゼM(アマノエンザイム社製:5500U/g)20g(対ココアパウダー0.5%)およびリパーゼA−10D(ナガセケムテックス社製)20g加え、(対ココアパウダー0.5%)を加え、15分間攪拌した。その後、40℃にて8時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃にて10分間殺菌した後、30℃まで冷却、さらに95%(W/W)エタノール80Kgを添加して、30℃にて1時間、攪拌抽出した後、バスケット型遠心分離機にて不溶性固形分の大部分を除いた後、800Gにて5分間遠心分離を行い、上清145.32Kg(固形分0.66%)を得た。
この抽出液を減圧濃縮し、Bx30°の濃縮液、Bx40°の濃縮液、Bx50°の濃縮液をそれぞれ調製した。それぞれの濃縮液500gを1Lオートクレーブに仕込み、密閉した後、攪拌しながら加熱し、約30分かけて昇温し、下記温度にて下記時間加熱した、30℃まで冷却後、内容物を取り出し、200メッシュサランにて濾過して、以下の呈味改善剤を調製した。
本発明品8:Bx30°、加熱温度:150±2℃、30分
本発明品9:Bx40°、加熱温度:140±2℃、1時間
本発明品10:Bx50°、加熱温度:130±2℃、2時間
(実施例10)
実施例2と同様に、参考品2に、本発明品8〜10を固形分換算(Bxを使用)で、本発明品1の10ppm添加に相当する量添加し、良く訓練された10名のパネラーにて官能評価を行った。評価方法および評価基準は、実施例2と同じとした。その平均点を表4に示す。
Figure 0005868787
表4に示した通り、原料として、ココアパウダーを使用した本発明品8〜10も、原料としてカカオニブを使用した本発明品1と同様に、ココア飲料への添加による、焙煎カカオ豆感、コク味の増強およびバランスの改善効果が見られた。また、Bx30°の濃度で、150℃、30分加熱のもの(本発明品8)、Bx40°の濃度で、140℃、1時間加熱のもの(本発明品9)およびBx50°の濃度で、130℃、2時間加熱のもの(本発明品10)の呈味改善効果の差はそれほど大きくはないが、高濃度であれば、やや低温でも長時間の反応により高い効果が得られることが認められた。
(実施例11)
20Lカラムに粗粉砕(3mm)した焙煎カカオニブ10Kgを仕込み、95℃熱水35Kgをカラム上部から送り込み、2時間かけて抽出し(8.75Kgずつ、4回に分けて、仕込み後30分ホールディング後抜き取りを繰り返す)カラム下部より抽出液を抜き取り、この抽出液を、20℃に冷却後、800Gにて5分間遠心分離を行い、上清30.4Kg(Bx4.2°)得た。これにスミチーム(新日本化学工業社製のグルコアミラーゼ)1.28g(対Bx換算固形分0.1%)、プロテアーゼM(アマノエンザイム社製:5500U/g)1.28g(対Bx換算固形分0.1%)およびリパーゼA−10D(ナガセケムテックス社製)0.64g(対Bx換算固形分0.05%)を加え、15分間攪拌した。その後、40℃にて8時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃にて10分間殺菌した後、30℃まで冷却して酵素処理液を得、酵素処理液を減圧濃縮し、Bx50°の濃縮液(参考品6)2550gを得た。
濃縮液(参考品6)を500gずつ小分けし、それぞれ1Lオートクレーブに仕込み、密閉した後、攪拌しながら加熱し、約30分かけて昇温し、110±2℃、120±2℃、135±2℃、150±2℃、170±2℃にて1時間加熱した、30℃まで冷却後、内容物を取り出し、200メッシュサランにて濾過して、各呈味改善剤を調製した。
本発明品4:135±2℃
本発明品11:110±2℃
本発明品12:120±2℃
本発明品13:150±2℃
本発明品14:170±2℃
(実施例12)
実施例2と同様に、参考品2に、参考品6、本発明品4または11〜14を10ppm添加し、良く訓練された10名のパネラーにて官能評価を行った。評価方法および評価基準は、実施例2と同じとした。その平均点を表5に示す。
Figure 0005868787
表5に示した通り、参考品2に未加熱のカカオニブ抽出液である参考品6を10ppm添加したココア飲料の官能評価は、参考品2と全く差がなかった。それに対し、参考品2に加熱処理品である本発明品をそれぞれ10ppm添加した飲料は、いずれも参考品2と比べ焙煎カカオ豆感、コク味が増強し、バランスも明らかに改善された。これらの中で、特に本発明品4は良好であり、次いで本発明品13、14が良好であった。また、本発明品12、11のいずれにも効果が見られたため、加熱温度としては100℃〜180℃程度の範囲内では加熱による効果が出るものと考えられる。
参考品2にはココアパウダーが1%含まれているため、参考品2の中のココア由来可溶性固形分は0.25%程度と予想されるが、参考品6、本発明品4または11〜14はそれぞれBx50°あるため、それぞれ10ppm添加した場合のBxの増加は0.0005°の計算になる。したがって、参考品2に、これらの発明品等を添加した場合のBxの増加は元のBxに対しわずか0.2%の増加にしかならない。したがって、単なる焙煎カカオニブのエキスである参考品6を参考品2に10ppm添加しても、無添加品と官能的に差がないことは、十分予想される範囲内であると考えられる。
それに対し、本発明品を添加したものではいずれも焙煎カカオ豆感およびコク味が増強し、バランスが改善されており、高温での加熱による作用により、風味改善に極めて有効な新たな成分が生成しているものと考えられる。
(実施例12)
5Lカラムに粗粉砕(3mm)した焙煎カカオニブ2500gを仕込み、95℃熱水8750gをカラム上部から送り込み、2時間かけて抽出し(2187.5gずつ、4回に分けて、仕込み後30分ホールディング後抜き取りを繰り返す)カラム下部より抽出液を抜き取り、この抽出液を、20℃に冷却後、800Gにて5分間遠心分離を行い、上清7594g(Bx4.2°)得た。これにスミチーム(新日本化学工業社製のグルコアミラーゼ)0.32g(対Bx換算固形分0.1%)、プロテアーゼM(アマノエンザイム社製:5500U/g)0.32g(対Bx換算固形分0.1%)およびリパーゼA−10D(ナガセケムテックス社製)0.16g(対Bx換算固形分0.05%)を加え、15分間攪拌した。その後、40℃にて8時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃にて10分間殺菌した後、30℃まで冷却して酵素処理液(Bx4.2°)を得た。
酵素処理液500gに無水結晶ぶどう糖458g(対抽出液91.6%)添加し、加糖カカオ抽出液(Bx50°)を得た。
この加糖カカオ抽出液500gを1Lオートクレーブに仕込み、密閉した後、攪拌しながら加熱し、約30分かけて昇温し、135±2℃にて1時間加熱した、30℃まで冷却後、内容物を取り出し、200メッシュサランにて濾過して、呈味改善剤(本発明品15:492g、Bx50°)を調製した。
(実施例13)
ココアパウダー(脂肪分10〜12%)1Kg、砂糖6Kg、食塩50g、レシチン10g、カラギーナン300g、脱脂粉乳0.5Kg、全脂粉乳1Kgを粉体混合し、これに水を加え、全体を100Kgとし、70℃まで加温して、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて均質化し、これを小分けし、無添加のものと、本発明品4、本発明品10または本発明品15をそれぞれ10ppmずつ添加したものを調製し、137℃、30秒間加熱殺菌後、88℃まで冷却し500mlペットボトルに充填し、2分保持後、室温(25℃)まで冷却し、ペットボトル入りココア飲料とした。それぞれのココア飲料はエキス無添加のものをコントロールとして良く訓練された10名のパネラーにて評価した。評価方法および評価基準は、実施例2と同じとした。その平均点を表6に示す。
Figure 0005868787
表6に示した通り、カカオニブ抽出液、ココアパウダー抽出液、加糖したカカオニブ抽出液のそれぞれの加熱品である本発明品4、10、15をそれぞれ10ppm添加した飲料は、いずれも無添加品と比べ、焙煎カカオ豆感およびコク味が増強し、バランスも改善されていた。また、加糖したカカオニブ抽出液の加熱処理品は、カカオ由来成分のみを濃縮し加熱した本発明品4や10と比べて、添加による風味改善効果はやや劣るものの、明らかに改善効果は見られた。
(実施例14)
カカオマス550g、ココアバター550g、全脂粉乳740g、砂糖1600g(合計3440g)を50〜60℃で20分間混合してチョコレートペーストを得た、さらに、コロイドミルを用いて微粒子化してチョコレートマスを得た。これにさらにココアバター170g、レシチン15g、バニリン1.8gを加え、良く混合した後、これを小分けして、無添加のものと、本発明品4、本発明品10または本発明品15をそれぞれ100ppmずつ添加したものを調製し、それぞれを55℃にて16時間精練した。精練後に、テンパリングを行い、成型してミルクチョコレートを調整した。それぞれのミルクチョコレートはエキス無添加のものをコントロールとして良く訓練された10名のパネラーにて評価した。評価方法および評価基準は、実施例2と同じとした。その平均点を表7に示す
Figure 0005868787
表6に示した通り、カカオニブ抽出液、ココアパウダー抽出液、加糖したカカオニブ抽出液のそれぞれの加熱品である本発明品4、10、15をそれぞれ10ppm添加したミルクチョコレートは、いずれも無添加品と比べ、焙煎カカオ豆感およびコク味が増強し、バランスも改善されていた。

Claims (6)

  1. カカオ豆原料の水による抽出液であって、固形分濃度として屈折糖度(20℃)でBx40°〜Bx80°であるカカオ豆抽出液を100℃〜180℃にて10分〜5時間加熱処理することによる、カカオ風味飲食品用呈味改善剤の製造方法
  2. カカオ豆抽出液が、プロテアーゼ、リパーゼまたは糖質分解酵素から選ばれる1種または2種以上により処理された酵素処理物である、請求項1記載の呈味改善剤の製造方法
  3. カカオ豆抽出液が焙煎カカオ豆、カカオニブ、カカオリカー、ココアケーキまたはココアパウダー抽出液である、請求項1または2に記載の呈味改善剤の製造方法
  4. 単糖、二糖またはオリゴ糖から選ばれる1種または2種以上を添加して加熱処理する、請求項1〜のいずれか1項に記載の呈味改善剤の製造方法
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法により得られた呈味改善剤をカカオ風味飲食品に添加することを特徴とする、カカオ風味飲食品の呈味増強方法。
  6. カカオ風味飲食品が、ココア飲料、ココア風味若しくはチョコレート風味の菓子類、調製ココア粉末またはチョコレートである請求項5に記載のカカオ風味飲食品の呈味増強方法。
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