JP5888221B2 - ステッチ加飾付き内装部品の製造方法 - Google Patents
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Description
この場合、ステッチ加飾部のない、シボ模様のみの内装部品は、図13(a)〜(d)に示すように、基材成形工程、及び表皮成形同時基材接着工程によって製造することができる。
すなわち、図13(a)、(b)に示すように、射出成形機111から射出成形型112に溶融樹脂を注入し、射出成形によって所定の形状に賦形された基材113を形成する(基材成形工程)。そして、図13(c)、(d)に示すように、下面に接着剤を塗布した表皮材114を加熱装置115にて加熱した後に、真空成形型116にセットした基材113に表皮材114を重ね合わせて吸引することで、表皮材114の表面へシボ転写を行いながら基材形状に沿わせる成形と、同時に、表皮材114と基材113とを接着する(表皮成形同時基材接着工程)。このように、ステッチ加飾部のない、シボ模様のみの内装部品であれば、2型2工程で簡単に製造することができる。
すなわち、図14(a)、(b)に示すように、射出成形機111から射出成形型112に溶融樹脂を注入し、射出成形することによって所定の形状に賦形された基材113を形成する(基材成形工程)。また、図14(c)、(d)に示すように、表皮材114を加熱装置115で加熱した後に、真空成形型116にて基材113に相応する形状に表皮材114を賦形するとともに、表皮材114の表面にシボ模様を転写する(表皮成形工程)。その後、図14(e)に示すように、表皮材114の外端を切断したうえ、ミシン117にて糸を縫製して表皮材114にステッチ加飾部を形成する(ステッチ加飾工程)。最後に、図14(f)に示すように、プレス圧着型118の雄型に基材113をセットして塗布機119にて接着剤を基材表面に塗布し、図14(g)に示すように、プレス圧着型118の雌型に吸着した表皮材114を、雄型の基材113に押圧して、表皮材114と基材113とを接着する(基材接着工程)。このように、シボ模様及びステッチ加飾部を有する内装部品を製造するためには、3型4工程を要し、シボ模様のみの内装部品に比べて型数及び工程数が大幅に増加することになっていた。そのため、生産コストが大幅に増大する問題があった。
そのため、本発明者らは、ステッチ加飾部を有する内装部品においても、表皮成形と同時に基材接着を可能とするため、ミシン縫製以外でステッチ加飾部を行う製造方法を鋭意検討してきた。
例えば、ミシン縫製以外でステッチ加飾部を形成する製造方法として、基材(表皮材を含む)の表面に糸を配置し、基材の裏面に当接する一方の電極と、糸を押圧する突起部を形成した他方の電極とを備えた高周波溶着装置を用いて、基材及び糸の少なくとも一方を部分的に溶融させて、糸を基材に対してステッチ模様の縫目に相当する間隔をあけて固着一体化せしめる製造方法が、特許文献1に開示されている。
すなわち、特許文献1の技術は、予め、真空成形型等によって表皮成形と基材接着とを行ってから、表皮付き基材の表面に糸を配置し、上記高周波溶着装置を用いて糸を基材に対してステッチ模様の縫目に相当する間隔をあけて固着一体化せしめる方法である。したがって、ステッチ加飾を含む表皮成形と基材接着とを同時に行えず、ステッチ加飾用に高周波溶着装置が必要となり、表皮成形同時基材接着工程とは別にステッチ加飾工程を追加しなければならないという問題があった。
また、表皮付き基材の表面上に糸を配置し、糸を他方の電極に形成した突起部で基材側に押し込む方法であるので、糸の位置決めが不安定となり、一定の位置にステッチ加飾部を施すことが困難であった。したがって、ステッチ加飾部におけるデザイン上の見栄えが低下しやすいという問題があった。
(1)真空成形型を用いて表皮材を成形すると共に基材表面に前記表皮材を接着するステッチ加飾付き内装部品の製造方法であって、
前記真空成形型は、前記表皮材を成形する型面にステッチ加飾用の糸を挿入する凹溝が形成され、並列した複数の突起部を先端に有する入子を前記凹溝内に移動可能に備え、前記真空成形型を型閉じ状態にして前記表皮材と前記基材とを接着する間に前記入子を移動させて、前記凹溝内に挿入した前記糸を前記突起部によって前記表皮材の内部に押し込むことを特徴とする。
また、真空成形型は、並列した複数の突起部を先端に有する入子を凹溝内に移動可能に備え、真空成形型を型閉じ状態にして表皮材と基材とを接着する間に入子を移動させて、凹溝内に挿入した糸を突起部によって表皮材の内部に押し込むので、真空成形型を用いて表皮材を成形すると同時に基材表面に表皮材を接着する間に、ステッチ加飾部を併せて形成することができる。また、表皮材と基材とを接着する間に、入子を移動させて、ステッチ加飾部を形成するので、ステッチ加飾部を形成するために新たな成形装置を備える必要がなく、ステッチ加飾部の形成によって表皮材成形同時基材接着工程に時間的ロスも生じることがない。
よって、本発明によれば、ステッチ加飾部におけるデザイン上の見栄えを維持しつつ、ステッチ加飾を含む表皮成形と基材接着とを同時に行うことができる。
前記真空成形型の下型に設けた型面に、前記凹溝が形成されていることを特徴とする。
なお、真空成形型の下型は、ポーラス状の電鋳型とするのが好ましい。表皮材を下型型面に確実に吸引して表皮材の成形を容易にするとともに、電鋳型の微細孔から糸を吸引して凹溝内に保持し易いからである。
前記突起部は、先端に微小Rが形成された鋭角状の傾斜面を備えることを特徴とする。
また、入子は、鋭角状の突起部と突起部の間が下方に湾曲する湾曲面で形成された連結部を有することが好ましい。突起部と突起部の間を下方に湾曲する湾曲面で形成された連結部とすることによって、ステッチ加飾部を形成するとき、連結部が糸から離間して、突起部の食い込みを、より一層局部的に行うことができる。
前記糸を樹脂製とし、前記入子を前記糸のガラス転移温度以上で融点未満の温度まで加温することを特徴とする。
前記表皮材を2層構造とし、前記基材と接着する第1層はポリプロピレンフォームからなり、前記第1層の上に形成された第2層と前記糸とは、共に熱可塑性エラストマからなることを特徴とする。
まず、本発明に係る実施形態であるステッチ加飾付き内装部品について、自動車のインストルメントパネルの例でその構造を説明する。図1に、本発明に係る実施形態を適用するステッチ加飾付き内装部品の斜視図を示す。図2に、図1のステッチ加飾付き内装部品におけるステッチ加飾部の模式的断面図を示す。
表皮材3は、上下で2層構造をなしている。基材4に接着される第1層31は、3mm程度の厚さを有するポリプロピレンフォーム(PPF)であり、第1層31の上に形成される第2層32は、0.6mm程度の厚さを有するオレフィン系エラストマ(TPO)である。
なお、ステッチ加飾用の糸2は、植物性繊維や合成繊維を用いることもできるが、常温での延伸性の高いオレフィン系、塩化ビニール系、又はスチレン系の熱可塑性エラストマが好ましい。ステッチ加飾用の糸2に着色することで、更にデザイン性を向上させることもできる。
次に、ステッチ加飾付き内装部品の製造方法を説明する。図3に、図1のステッチ加飾付き内装部品の製造工程を表す模式的断面図を示す。
すなわち、図3(a)、(b)に示すように、射出成形機41から射出成形型42に溶融樹脂を注入し、射出成形によって所定の形状に賦形された基材4を形成する(基材成形工程)。そして、図3(c)に示すように、真空成形型5を型開き状態にして、上型51に基材4を取り付ける。上型51は、樹脂製又はアルミ鋳造製である。
また、図3(d)に示すように、上面に接着剤を塗布した表皮材3の外端を加熱装置6の保持部63で水平状に保持し、上下方向から加熱部61、62にて加熱する。加熱装置6は、真空成形型5に隣接して配置されている。
その後、図3(f)に示すように、上型51に取り付けた基材4に表皮材3を重ね合わせて真空成形型5を型閉じ状態にして、下型52から吸引することで、表皮材3の表面へシボ転写を行いながら基材形状に沿わせる成形を行う。また、型閉じ状態に所定の時間保持して、表皮材3と基材4とを接着する。真空成形型5を型閉じ状態にして表皮材3と基材4とを接着する間に、入子53を上昇させて、凹溝521内に挿入したステッチ加飾用の糸2を表皮材3の内部に押し込む。その結果、ステッチ加飾を含む表皮成形と基材接着とを同時に行うことができる(表皮成形同時基材接着工程)。
以上のように、ステッチ加飾部とシボ模様を形成した内装部品を製造する。本製造方法であれば、射出成形型42を有する基材成形工程と真空成形型5を有する表皮成形同時基材接着工程を備えればよく、ステッチ加飾付き内装部品を2型2工程で簡単に製造することができる。
次に、本実施形態におけるステッチ加飾部の成形方法について、詳細に説明する。図4に、図3(c)に示す真空成形型の凹溝を表す部分斜視図を示す。図5に、図3(c)に示す真空成形型の入子を表す部分斜視図を示す。図6に、図5における入子の突起部詳細図を示す。図7に、図3(f)に示す真空成形型の表皮成形時における部分断面図を示す。図8に、図7におけるA部断面図を示す。図9に、図7におけるB部断面図を示す。図10に、図3(f)に示す真空成形型のステッチ加飾成形時における部分断面図を示す。図11に、図10におけるC部断面図を示す。図12に、図10におけるD部断面図を示す。
また、真空成形型5の下型52には、該凹溝521内に挿入したステッチ加飾用の糸2を表皮材3の内部に押し込む入子53を備えている。図4では、入子53が下方に位置した状態である。入子53は、上下方向(矢印Kの方向)にスライドする。入子53のスライド量は、表皮材3の厚さと同程度の長さである。ここで、糸2を表皮材3の内部に押し込むことは、糸2の一部若しくは全部が表皮材3に囲まれた状態、又は、糸2の一部若しくは全部が表皮材3の中に侵入した状態を意味する。
以上のように、真空成形型5を用いて表皮材3を成形すると同時に基材表面に表皮材3を接着する際、ステッチ加飾部17の形成が併せて行われている。その際、ステッチ加飾部17のデザイン上の見栄えは、ミシン縫製と同程度に維持されている。
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、真空成形型5は、表皮材3を成形する型面522にステッチ加飾用の糸2を挿入する凹溝521が形成されているので、真空成形型5において成形される表皮材3の一定位置に、ステッチ加飾用の糸2を配置することができる。そのため、ステッチ加飾用の糸2の位置決めが安定し、表皮材3の一定位置に安定してステッチ加飾を施すことが可能となる。したがって、ステッチ加飾部17におけるデザイン上の見栄えを維持することができる。
また、真空成形型5は、並列した複数の突起部531を先端に有する入子53を凹溝521内に移動可能に備え、真空成形型5を型閉じ状態にして表皮材3と基材4とを接着する間に入子53を移動させて、凹溝521内に挿入した糸2を突起部531によって表皮材3の内部に押し込むので、真空成形型5を用いて表皮材3を成形すると同時に基材4表面に表皮材3を接着する間に、ステッチ加飾部17を併せて形成することができる。また、表皮材3と基材4とを接着する間に、入子53を移動させて、ステッチ加飾部17を形成するので、ステッチ加飾部17を形成するために新たな成形装置を備える必要がなく、ステッチ加飾部17の形成によって表皮材成形同時基材接着工程に時間的ロスも生じることがない。
なお、真空成形型5の下型52は、ポーラス状の電鋳型である。したがって、表皮材3を下型52の型面522に確実に吸引して表皮材3の成形を容易にするとともに、電鋳型の微細な吸引孔から糸2を吸引して凹溝521内に保持し易い。
また、入子53は、鋭角状の突起部531と突起部531の間が下方に湾曲する湾曲面で形成された連結部532を有するので、ステッチ加飾部17を形成するとき、連結部532が糸から離間して、突起部531の食い込みを、より一層局部的に行うことができる。また、連結部532が、糸2の縫目21間の渡り部22を押圧しないので、糸2の変形(扁平化)を低減してステッチ加飾部の見栄えを向上することができる。
上記実施形態では、自動車のインストルメントパネル1に適用したが、これに限ることはない。例えば、ステッチ加飾付き内部部品であるコンソールボックスやドアトリム等の各種内装部品に適用することができる。
また、上記実施形態では、入子53を糸2のガラス転移温度以上で融点未満の温度(100〜150℃程度)まで加温することとしたが、これに限ることはない。例えば、入子53の突起部531を糸2の融点と同等、又は融点以上の温度まで加温することもできる。これによって、糸2と表皮材3との溶着を可能とし、接合強度を高めることができる。
2 糸
3 表皮材
4 基材
5 真空成形型
6 加熱装置
17 ステッチ加飾部
21 縫目
22 渡り部
31 第1層
32 第2層
51 上型
52 下型
53 入子
521 凹溝
522 型面
531 突起部
531b 傾斜面
Claims (4)
- 真空成形型を用いて表皮材を成形すると共に基材表面に前記表皮材を接着するステッチ加飾付き内装部品の製造方法であって、
前記真空成形型は、前記表皮材を成形する型面にステッチ加飾用の糸を挿入する凹溝が形成され、並列した複数の突起部を先端に有する入子を前記凹溝内に移動可能に備え、前記真空成形型を型閉じ状態にして前記表皮材と前記基材とを接着する間に前記入子を移動させて、前記凹溝内に挿入した前記糸を前記突起部によって前記表皮材の内部に押し込むことを特徴とするステッチ加飾付き内装部品の製造方法。 - 請求項1に記載されたステッチ加飾付き内装部品の製造方法において、
前記真空成形型の下型に設けた型面に、前記凹溝が形成されていることを特徴とするステッチ加飾付き内装部品の製造方法。 - 請求項1又は請求項2に記載されたステッチ加飾付き内装部品の製造方法において、
前記突起部は、先端に微小Rが形成された鋭角状の傾斜面を備えることを特徴とするステッチ加飾付き内装部品の製造方法。 - 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載されたステッチ加飾付き内装部品の製造方法において、
前記糸を樹脂製とし、前記入子を前記糸のガラス転移温度以上で融点未満の温度まで加温することを特徴とするステッチ加飾付き内装部品の製造方法。
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