JP5888221B2 - ステッチ加飾付き内装部品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ステッチ加飾付き内装部品の製造方法及びステッチ加飾付き内装部品に関する。特に、ステッチ加飾を含む表皮成形と基材接着とを同時に行うステッチ加飾付き内装部品の製造方法及びステッチ加飾付き内装部品に関する。
例えば、自動車の内装部品において、柔らかい材質の表皮材で覆われたインストルメントパネルやコンソールボックス等の表面には、シボ模様及びステッチ加飾部を施すことによって、デザイン上の見栄えを向上し、高級感やソフト感を醸す工夫がなされている。
この場合、ステッチ加飾部のない、シボ模様のみの内装部品は、図13(a)〜(d)に示すように、基材成形工程、及び表皮成形同時基材接着工程によって製造することができる。
すなわち、図13(a)、(b)に示すように、射出成形機111から射出成形型112に溶融樹脂を注入し、射出成形によって所定の形状に賦形された基材113を形成する(基材成形工程)。そして、図13(c)、(d)に示すように、下面に接着剤を塗布した表皮材114を加熱装置115にて加熱した後に、真空成形型116にセットした基材113に表皮材114を重ね合わせて吸引することで、表皮材114の表面へシボ転写を行いながら基材形状に沿わせる成形と、同時に、表皮材114と基材113とを接着する(表皮成形同時基材接着工程)。このように、ステッチ加飾部のない、シボ模様のみの内装部品であれば、2型2工程で簡単に製造することができる。
ところが、シボ模様とステッチ加飾部の両方を形成した内装部品は、図14(a)〜(g)に示すように、基材成形工程、表皮成形工程、ステッチ加飾工程、及び基材接着工程を経て製造されることになる。
すなわち、図14(a)、(b)に示すように、射出成形機111から射出成形型112に溶融樹脂を注入し、射出成形することによって所定の形状に賦形された基材113を形成する(基材成形工程)。また、図14(c)、(d)に示すように、表皮材114を加熱装置115で加熱した後に、真空成形型116にて基材113に相応する形状に表皮材114を賦形するとともに、表皮材114の表面にシボ模様を転写する(表皮成形工程)。その後、図14(e)に示すように、表皮材114の外端を切断したうえ、ミシン117にて糸を縫製して表皮材114にステッチ加飾部を形成する(ステッチ加飾工程)。最後に、図14(f)に示すように、プレス圧着型118の雄型に基材113をセットして塗布機119にて接着剤を基材表面に塗布し、図14(g)に示すように、プレス圧着型118の雌型に吸着した表皮材114を、雄型の基材113に押圧して、表皮材114と基材113とを接着する(基材接着工程)。このように、シボ模様及びステッチ加飾部を有する内装部品を製造するためには、3型4工程を要し、シボ模様のみの内装部品に比べて型数及び工程数が大幅に増加することになっていた。そのため、生産コストが大幅に増大する問題があった。
シボ模様及びステッチ加飾部を有する内装部品を製造するために、型数及び工程数が大幅に増加する要因は、表皮材の成形品にミシン掛けしてステッチ加飾部を施したものを基材に貼り合わせるため、表皮成形工程と基材接着工程とを同一工程で行うことができないからである。
そのため、本発明者らは、ステッチ加飾部を有する内装部品においても、表皮成形と同時に基材接着を可能とするため、ミシン縫製以外でステッチ加飾部を行う製造方法を鋭意検討してきた。
例えば、ミシン縫製以外でステッチ加飾部を形成する製造方法として、基材(表皮材を含む)の表面に糸を配置し、基材の裏面に当接する一方の電極と、糸を押圧する突起部を形成した他方の電極とを備えた高周波溶着装置を用いて、基材及び糸の少なくとも一方を部分的に溶融させて、糸を基材に対してステッチ模様の縫目に相当する間隔をあけて固着一体化せしめる製造方法が、特許文献1に開示されている。
特開昭63−199640号公報
しかしながら、特許文献1の技術には、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1の技術は、予め、真空成形型等によって表皮成形と基材接着とを行ってから、表皮付き基材の表面に糸を配置し、上記高周波溶着装置を用いて糸を基材に対してステッチ模様の縫目に相当する間隔をあけて固着一体化せしめる方法である。したがって、ステッチ加飾を含む表皮成形と基材接着とを同時に行えず、ステッチ加飾用に高周波溶着装置が必要となり、表皮成形同時基材接着工程とは別にステッチ加飾工程を追加しなければならないという問題があった。
また、表皮付き基材の表面上に糸を配置し、糸を他方の電極に形成した突起部で基材側に押し込む方法であるので、糸の位置決めが不安定となり、一定の位置にステッチ加飾部を施すことが困難であった。したがって、ステッチ加飾部におけるデザイン上の見栄えが低下しやすいという問題があった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、ステッチ加飾部におけるデザイン上の見栄えを維持しつつ、ステッチ加飾を含む表皮成形と基材接着とを同時に行うステッチ加飾付き内装部品の製造方法及びステッチ加飾付き内装部品を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係るステッチ加飾付き内装部品の製造方法及びステッチ加飾付き内装部品は、次のような構成を有している。
(1)真空成形型を用いて表皮材を成形すると共に基材表面に前記表皮材を接着するステッチ加飾付き内装部品の製造方法であって、
前記真空成形型は、前記表皮材を成形する型面にステッチ加飾用の糸を挿入する凹溝が形成され、並列した複数の突起部を先端に有する入子を前記凹溝内に移動可能に備え、前記真空成形型を型閉じ状態にして前記表皮材と前記基材とを接着する間に前記入子を移動させて、前記凹溝内に挿入した前記糸を前記突起部によって前記表皮材の内部に押し込むことを特徴とする。
本発明においては、真空成形型は、表皮材を成形する型面にステッチ加飾用の糸を挿入する凹溝が形成されているので、真空成形型において成形される表皮材の一定位置に、ステッチ加飾用の糸を配置することができる。そのため、ステッチ加飾用の糸の位置決めが安定し、表皮材の一定位置に安定してステッチ加飾部を形成することが可能となる。したがって、ステッチ加飾部におけるデザイン上の見栄えを維持することができる。
また、真空成形型は、並列した複数の突起部を先端に有する入子を凹溝内に移動可能に備え、真空成形型を型閉じ状態にして表皮材と基材とを接着する間に入子を移動させて、凹溝内に挿入した糸を突起部によって表皮材の内部に押し込むので、真空成形型を用いて表皮材を成形すると同時に基材表面に表皮材を接着する間に、ステッチ加飾部を併せて形成することができる。また、表皮材と基材とを接着する間に、入子を移動させて、ステッチ加飾部を形成するので、ステッチ加飾部を形成するために新たな成形装置を備える必要がなく、ステッチ加飾部の形成によって表皮材成形同時基材接着工程に時間的ロスも生じることがない。
よって、本発明によれば、ステッチ加飾部におけるデザイン上の見栄えを維持しつつ、ステッチ加飾を含む表皮成形と基材接着とを同時に行うことができる。
(2)(1)に記載されたステッチ加飾付き内装部品の製造方法において、
前記真空成形型の下型に設けた型面に、前記凹溝が形成されていることを特徴とする。
本発明においては、真空成形型の下型に設けた型面に、凹溝が形成されているので、ステッチ加飾用の糸を凹溝内に挿入しやすく、挿入した糸が表皮材の成形中に落下することもない。また、表皮材が下型に設けた型面に当接したとき、表皮材がステッチ加飾用の糸を挿入する凹溝内に自重で入り込む傾向がある。そのため、ステッチ加飾用の糸を表皮材が包み込み、入子の突起部によって糸を表皮材の内部に押し込む際に、糸と表皮材が馴染みやすくなる。したがって、ステッチ加飾部におけるデザイン上の見栄えを、より一層安定して維持することができる。
なお、真空成形型の下型は、ポーラス状の電鋳型とするのが好ましい。表皮材を下型型面に確実に吸引して表皮材の成形を容易にするとともに、電鋳型の微細孔から糸を吸引して凹溝内に保持し易いからである。
(3)(1)又は(2)に記載されたステッチ加飾付き内装部品の製造方法において、
前記突起部は、先端に微小Rが形成された鋭角状の傾斜面を備えることを特徴とする。
本発明においては、突起部は、先端に微小Rが形成された鋭角状の傾斜面を備えるので、ステッチ加飾された糸の縫目を、ミシンで縫製されたように表皮材の内部へ深く押し込むことができる。なお、突起部の先端に形成された微小Rは、半径が0.3〜0.5mm程度で、傾斜面の内角は、5〜15度程度が好ましい。微小Rの半径を0.3〜0.5mm程度で、傾斜面の内角を5〜15度程度とすることによって、表皮材の内部に食い込む糸の傾斜角を、より垂直状態に近づけることができる。これによって、本物のミシン縫製によるステッチ加飾部に近似させることができる。
また、入子は、鋭角状の突起部と突起部の間が下方に湾曲する湾曲面で形成された連結部を有することが好ましい。突起部と突起部の間を下方に湾曲する湾曲面で形成された連結部とすることによって、ステッチ加飾部を形成するとき、連結部が糸から離間して、突起部の食い込みを、より一層局部的に行うことができる。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載されたステッチ加飾付き内装部品の製造方法において、
前記糸を樹脂製とし、前記入子を前記糸のガラス転移温度以上で融点未満の温度まで加温することを特徴とする。
本発明においては、糸を樹脂製とし、入子を糸のガラス転移温度以上で融点未満の温度まで加温するので、ステッチ加飾される樹脂製の糸が溶融しない程度に加熱されて柔軟性を増し、縫目に相当する箇所の表皮材への喰い込みが、より一層容易となる。そのため、ステッチ加飾された糸の縫目を、より一層ミシンで縫製されたように表皮材に内部に押し込むことができる。なお、入子を加温する最適温度は、糸の径及び材質等によって決定するが、糸の径が0.8mm程度で、糸の材質がオレフィン系エラストマであれば、100〜150℃程度が好ましい。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載されたステッチ加飾付き内装部品の製造方法によって製造されたステッチ加飾付き内装部品であって、
前記表皮材を2層構造とし、前記基材と接着する第1層はポリプロピレンフォームからなり、前記第1層の上に形成された第2層と前記糸とは、共に熱可塑性エラストマからなることを特徴とする。
本発明においては、表皮材を2層構造とし、基材と接着する第1層はポリプロピレンフォームからなるので、入子が糸を表皮材の内部に押し込むとき、発砲層からなる第1層が大きく変形して、ステッチ加飾される糸の縫目を表皮材の内部に深く侵入させることができる。また、第1層の上に形成された第2層と糸とは、共に熱可塑性エラストマからなるので、糸の縫目を表皮材の内部に深く侵入させるときでも、第2層と糸の延伸性が同レベルの値で高いので、糸の伸びと、糸と接触する第2層の接触部での伸びとが、互いに釣り合うことができる。その結果、入子が糸を表皮材の内部に押し込むとき、糸が切れたり表皮材が破れたりすることが少ない。
本発明によれば、ステッチ加飾部におけるデザイン上の見栄えを維持しつつ、ステッチ加飾を含む表皮成形と基材接着とを同時に行うステッチ加飾付き内装部品の製造方法及びステッチ加飾付き内装部品を提供することができる。
本発明に係る実施形態を適用するステッチ加飾付き内装部品の斜視図である。 図1のステッチ加飾付き内装部品におけるステッチ加飾部の模式的断面図である。 図1のステッチ加飾付き内装部品の製造工程を表す模式的断面図である。 図3(c)に示す真空成形型の凹溝を表す部分斜視図である。 図3(c)に示す真空成形型の入子を表す部分斜視図である。 図5における入子の突起部詳細図である。 図3(f)に示す真空成形型の表皮成形時における部分断面図である。 図7におけるA部断面図である。 図7におけるB部断面図である。 図3(f)に示す真空成形型のステッチ加飾成形時における部分断面図である。 図10におけるC部断面図である。 図10におけるD部断面図である。 従来のステッチ加飾無し内装部品の製造工程を表す模式的断面図である。 従来のステッチ加飾付き内装部品の製造工程を表す模式的断面図である。
次に、本発明に係る実施形態であるステッチ加飾付き内装部品の製造方法及びステッチ加飾付き内装部品について、図面を参照して詳細に説明する。
<ステッチ加飾付き内装部品の構造>
まず、本発明に係る実施形態であるステッチ加飾付き内装部品について、自動車のインストルメントパネルの例でその構造を説明する。図1に、本発明に係る実施形態を適用するステッチ加飾付き内装部品の斜視図を示す。図2に、図1のステッチ加飾付き内装部品におけるステッチ加飾部の模式的断面図を示す。
図1に示すように、ステッチ加飾付き内装部品のインストルメントパネル1は、フロントガラス下端から運転席及び助手席の正面を覆う略L字状断面をした内装部品である。インストルメントパネル1は、運転席及び助手席の正面に位置するため、デザイン上の工夫を凝らした内装部品の顔ともいえる。インストルメントパネル1には、前端がフロントガラスに当接するアッパーパネル部11、車両中央でカーナビやエアコン等の操作部を搭載するセンタークラスタ部12、運転席の正面でスピードメータ等を搭載するメータークラスタ部13、メータークラスタ部13の下方を覆うロアパネル部14、助手席の正面を覆うサイドパネル部15、及びサイドパネル部の下方を覆う収納部16を備えている。
インストルメントパネル1は、全体形状を形成する基材の上に、装飾用の表皮材が接着されている。表皮材には、高級感やソフト感を醸すため、シボ模様が形成されている。また、本革仕様の雰囲気が生じるように、表皮材に糸の縫目に近似したステッチ加飾部17が形成されている。例えば、図1に示すインストルメントパネル1には、アッパーパネル部11と、センタークラスタ部12、メータークラスタ部13、及びサイドパネル部15との境界線に沿ってステッチ加飾部17が形成されている。
図2に示すように、ステッチ加飾部17は、直径0.8〜1.0mm程度のオレフィン系エラストマ(TPO)の糸2を6〜8mm程度の間隔で局部的に表皮材3の内部に食い込ませて形成されている。
表皮材3は、上下で2層構造をなしている。基材4に接着される第1層31は、3mm程度の厚さを有するポリプロピレンフォーム(PPF)であり、第1層31の上に形成される第2層32は、0.6mm程度の厚さを有するオレフィン系エラストマ(TPO)である。
基材4と接着する第1層31はポリプロピレンフォーム(PPF)からなるので、後述する入子が糸2を表皮材3の内部に押し込むとき、発砲層からなる第1層31が大きく変形して、ステッチ加飾される糸2の縫目を表皮材の内部に深く侵入させることができる。また、第1層31の上に形成された第2層32と糸2とは、共にオレフィン系エラストマ(TPO)からなるので、糸2の縫目を表皮材の内部に深く侵入させるときでも、第2層32と糸2の延伸性が同レベルの値で高いので、糸2の伸びと、糸2と接触する第2層32の接触部321での伸びとが、互いに釣り合うことができる。その結果、後述する入子が糸2を表皮材3の内部に押し込むとき、糸2が切れたり表皮材3が破れたりすることが少ない。
なお、ステッチ加飾用の糸2は、植物性繊維や合成繊維を用いることもできるが、常温での延伸性の高いオレフィン系、塩化ビニール系、又はスチレン系の熱可塑性エラストマが好ましい。ステッチ加飾用の糸2に着色することで、更にデザイン性を向上させることもできる。
<ステッチ加飾付き内装部品の製造方法>
次に、ステッチ加飾付き内装部品の製造方法を説明する。図3に、図1のステッチ加飾付き内装部品の製造工程を表す模式的断面図を示す。
本実施形態に係るステッチ加飾付き内装部品は、図3(a)〜(f)に示すように、基材成形工程、及び表皮成形同時基材接着工程によって製造することができる。
すなわち、図3(a)、(b)に示すように、射出成形機41から射出成形型42に溶融樹脂を注入し、射出成形によって所定の形状に賦形された基材4を形成する(基材成形工程)。そして、図3(c)に示すように、真空成形型5を型開き状態にして、上型51に基材4を取り付ける。上型51は、樹脂製又はアルミ鋳造製である。
また、真空成形型5の下型52には、表皮材3を成形する型面522にステッチ加飾用の糸2を挿入する凹溝521が形成され、該凹溝521内に挿入したステッチ加飾用の糸2を表皮材3の内部に押し込む入子53を備えている。ステッチ加飾用の糸2は、凹溝521内に挿入する。型面522には、シボ模様が刻設されている。下型52は、ポーラス電鋳製である。入子53は、工具鋼等を機械加工して作製する。
また、図3(d)に示すように、上面に接着剤を塗布した表皮材3の外端を加熱装置6の保持部63で水平状に保持し、上下方向から加熱部61、62にて加熱する。加熱装置6は、真空成形型5に隣接して配置されている。
次に、図3(e)に示すように、表皮材3は、加熱された状態で保持部63によって真空成形型5の下型52上へ移送される。
その後、図3(f)に示すように、上型51に取り付けた基材4に表皮材3を重ね合わせて真空成形型5を型閉じ状態にして、下型52から吸引することで、表皮材3の表面へシボ転写を行いながら基材形状に沿わせる成形を行う。また、型閉じ状態に所定の時間保持して、表皮材3と基材4とを接着する。真空成形型5を型閉じ状態にして表皮材3と基材4とを接着する間に、入子53を上昇させて、凹溝521内に挿入したステッチ加飾用の糸2を表皮材3の内部に押し込む。その結果、ステッチ加飾を含む表皮成形と基材接着とを同時に行うことができる(表皮成形同時基材接着工程)。
以上のように、ステッチ加飾部とシボ模様を形成した内装部品を製造する。本製造方法であれば、射出成形型42を有する基材成形工程と真空成形型5を有する表皮成形同時基材接着工程を備えればよく、ステッチ加飾付き内装部品を2型2工程で簡単に製造することができる。
<ステッチ加飾部の成形方法>
次に、本実施形態におけるステッチ加飾部の成形方法について、詳細に説明する。図4に、図3(c)に示す真空成形型の凹溝を表す部分斜視図を示す。図5に、図3(c)に示す真空成形型の入子を表す部分斜視図を示す。図6に、図5における入子の突起部詳細図を示す。図7に、図3(f)に示す真空成形型の表皮成形時における部分断面図を示す。図8に、図7におけるA部断面図を示す。図9に、図7におけるB部断面図を示す。図10に、図3(f)に示す真空成形型のステッチ加飾成形時における部分断面図を示す。図11に、図10におけるC部断面図を示す。図12に、図10におけるD部断面図を示す。
図4に示すように、真空成形型5の下型52には、表皮材3を成形する型面522にステッチ加飾用の糸2を挿入する凹溝521が形成されている。凹溝521の幅は、ステッチ加飾用の糸2の直径と同程度である。凹溝521は、下型52の型面522に形成されている。また、下型52は、ポーラス状の微細な吸引孔を有する電鋳型である。下型52は、図示しない真空ポンプに連結されている。
また、真空成形型5の下型52には、該凹溝521内に挿入したステッチ加飾用の糸2を表皮材3の内部に押し込む入子53を備えている。図4では、入子53が下方に位置した状態である。入子53は、上下方向(矢印Kの方向)にスライドする。入子53のスライド量は、表皮材3の厚さと同程度の長さである。ここで、糸2を表皮材3の内部に押し込むことは、糸2の一部若しくは全部が表皮材3に囲まれた状態、又は、糸2の一部若しくは全部が表皮材3の中に侵入した状態を意味する。
図4、図5に示すように、入子53には、上端にステッチ加飾用の糸2を表皮材に押し込む鋭角状の突起部531が縫目に相応する位置に所定の間隔を空けて、並列状に形成されている。入子53は、鋭角状の突起部531と突起部531の間が下方に湾曲する湾曲面で形成された連結部532を有する。また、図6に示すように、突起部531の先端531aには、半径Rが0.3mm程度の微小Rが形成されている。また、鋭角状に形成された突起部531の傾斜面531bの内角θは、5〜15度程度が好ましい。突起部531の連結部532の湾曲面中央に対する高さは、3mm程度で、突起部531の間隔は、6〜8mm程度が好ましい。
図7、図8、図9に示すように、上型51に取り付けた基材4に表皮材3の第1層31、第2層32を重ね合わせて型閉じ状態にした段階では、入子53は下方に位置している。入子53に備える突起部531の先端531aが、ステッチ加飾用の糸2に当接している。型閉じ当初の段階では、ステッチ加飾用の糸2は、表皮材3の内部に押し込まれていない。そのため、真空成形型5の下型52から吸引することで、表皮材3の第2層32の表面へ確実にシボ転写が行なわれ、かつ、基材形状に沿わせる成形が行われる。また、真空成形型5は、型閉じ状態に所定の時間保持して、表皮材3と基材4とを接着する。所定の型閉じ時間は、50〜100秒程度である。
図10、図11、図12に示すように、型閉じ状態を保持している間に、入子53を上方に移動し、ステッチ加飾部17の成形を行う。鋭角状の突起部531が縫目21に相応する位置で上昇することによって、ステッチ加飾された糸2の縫目21は、ミシンで縫製されたように表皮材3の内部へ深く押し込まれていく。このとき、入子53は、糸2のガラス転移温度以上で融点未満の温度まで加温されている。具体的には、糸2の径が0.8mm程度で、糸2の材質がオレフィン系エラストマであるので、入子53を加温する温度は、100〜150℃程度が好ましい。加温された入子53に当接する糸2は、柔軟性が増して縫目21の先端で鋭角状に屈曲する。
また、表皮材3は2層構造であり、基材4と接着する第1層31は、発砲層からなるポリプロピレンフォーム(PPF)である。そのため、入子53が糸2の縫目21を表皮材3の内部に押し込むとき、発砲層からなる第1層31の押し込み部311が大きく変形する。また、第2層32と糸2とは、共にオレフィン系エラストマからなるので、糸2の縫目21を表皮材3の内部に深く侵入させるときでも、第2層32と糸2の延伸性が同レベルの値で高いので、糸2の縫目21と、糸2の縫目21と接触する第2層32の接触部321とが、互いに均等に伸びて、引張応力が釣り合う状態に保たれている。表皮材3の内部に食い込んだ糸2の縫目21は、表皮材3のアンカー効果によって食い込んだ位置に拘束されている。
また、入子53は、鋭角状の突起部531と突起部531の間が下方に湾曲する湾曲面で形成された連結部532を有する。そのため、ステッチ加飾部17を形成するとき、連結部532が継目21の渡り部22から離間して、突起部531の食い込みが、より一層局部的に行われている。また、連結部532が、糸2の縫目21間の渡り部22を押圧しないので、糸2の変形が少ない。
以上のように、真空成形型5を用いて表皮材3を成形すると同時に基材表面に表皮材3を接着する際、ステッチ加飾部17の形成が併せて行われている。その際、ステッチ加飾部17のデザイン上の見栄えは、ミシン縫製と同程度に維持されている。
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、真空成形型5は、表皮材3を成形する型面522にステッチ加飾用の糸2を挿入する凹溝521が形成されているので、真空成形型5において成形される表皮材3の一定位置に、ステッチ加飾用の糸2を配置することができる。そのため、ステッチ加飾用の糸2の位置決めが安定し、表皮材3の一定位置に安定してステッチ加飾を施すことが可能となる。したがって、ステッチ加飾部17におけるデザイン上の見栄えを維持することができる。
また、真空成形型5は、並列した複数の突起部531を先端に有する入子53を凹溝521内に移動可能に備え、真空成形型5を型閉じ状態にして表皮材3と基材4とを接着する間に入子53を移動させて、凹溝521内に挿入した糸2を突起部531によって表皮材3の内部に押し込むので、真空成形型5を用いて表皮材3を成形すると同時に基材4表面に表皮材3を接着する間に、ステッチ加飾部17を併せて形成することができる。また、表皮材3と基材4とを接着する間に、入子53を移動させて、ステッチ加飾部17を形成するので、ステッチ加飾部17を形成するために新たな成形装置を備える必要がなく、ステッチ加飾部17の形成によって表皮材成形同時基材接着工程に時間的ロスも生じることがない。
また、本実施形態によれば、真空成形型5の下型52に設けた型面522に、凹溝521が形成されているので、ステッチ加飾用の糸2を凹溝521内に挿入しやすく、挿入した糸2が表皮材3の成形中に落下することもない。また、表皮材3が下型52に設けた型面522に当接したとき、加熱装置6によって加熱されて柔軟性が増した表皮材3は、ステッチ加飾用の糸2を挿入する凹溝521内に自重で入り込む傾向がある。そのため、表皮材3がステッチ加飾用の糸2を包み込み、入子53の突起部531によって糸2を表皮材3の内部に押し込む際に、糸2と表皮材3が馴染みやすくなる。したがって、ステッチ加飾部17におけるデザイン上の見栄えを、より一層安定して維持することができる。
なお、真空成形型5の下型52は、ポーラス状の電鋳型である。したがって、表皮材3を下型52の型面522に確実に吸引して表皮材3の成形を容易にするとともに、電鋳型の微細な吸引孔から糸2を吸引して凹溝521内に保持し易い。
また、本実施形態によれば、入子53には、糸2を表皮材3の内部に押し込む鋭角状の突起部531が縫目21に相応する位置に所定の間隔を空けて形成されているので、ステッチ加飾された糸2の縫目21を、ミシンで縫製されたように表皮材3の内部へ深く押し込むことができる。なお、突起部531の先端531aには、半径Rが0.3mm程度の微小Rが形成され、鋭角状に形成された傾斜面の内角は、5〜15度程度が好ましい。突起部の先端に微小Rを形成し、鋭角状に形成された傾斜面531bの内角θは、5〜15度程度であるので、表皮材3に食い込む糸2の傾斜角を垂直状態に近づけることができる。これによって、本物のミシン縫製によるステッチ加飾に近似させることができる。
また、入子53は、鋭角状の突起部531と突起部531の間が下方に湾曲する湾曲面で形成された連結部532を有するので、ステッチ加飾部17を形成するとき、連結部532が糸から離間して、突起部531の食い込みを、より一層局部的に行うことができる。また、連結部532が、糸2の縫目21間の渡り部22を押圧しないので、糸2の変形(扁平化)を低減してステッチ加飾部の見栄えを向上することができる。
また、本実施形態によれば、入子53を糸2のガラス転移温度以上で融点未満の温度(100〜150℃程度)まで加温するので、ステッチ加飾される糸2が溶融しない程度に加熱されて柔軟性を増し、縫目21に相当する箇所の表皮材3への喰い込みが、より一層容易となる。そのため、ステッチ加飾された糸2の縫目21を、より一層ミシンで縫製されたように表皮材3の内部に押し込ませることができる。
また、本実施形態によれば、表皮材3を2層構造とし、基材4と接着する第1層31はポリプロピレンフォーム(PPF)からなるので、入子53が糸2を表皮材3の内部に押し込むとき、発砲層からなる第1層31が大きく変形して、ステッチ加飾される糸2の縫目21を表皮材3の内部に深く侵入させることができる。また、第1層31の上に形成された第2層32と糸2とは、共にオレフィン系エラストマからなるので、糸2の縫目21を表皮材3の内部に深く侵入させるときでも、第2層32と糸2の延伸性が同レベルの値で高いので、糸2の縫目21と、糸2の縫目21と接触する第2層32の接触部321とが、互いに均等に伸びて、引張応力が釣り合う状態に保つことができる。その結果、入子53が糸2を表皮材3の内部に押し込むとき、糸2の縫目21が切れたり、第2層32の接触部321が破れたりすることが少ない。
上述した実施形態は、本発明の要旨を変更しない範囲で変更することができる。
上記実施形態では、自動車のインストルメントパネル1に適用したが、これに限ることはない。例えば、ステッチ加飾付き内部部品であるコンソールボックスやドアトリム等の各種内装部品に適用することができる。
また、上記実施形態では、入子53を糸2のガラス転移温度以上で融点未満の温度(100〜150℃程度)まで加温することとしたが、これに限ることはない。例えば、入子53の突起部531を糸2の融点と同等、又は融点以上の温度まで加温することもできる。これによって、糸2と表皮材3との溶着を可能とし、接合強度を高めることができる。
本発明は、特にステッチ加飾を含む表皮成形と基材接着とを同時に行うステッチ加飾付き内装品の製造方法及びステッチ加飾付き内装品として利用できる。
1 インストルメントパネル(ステッチ加飾付き内装部品)
2 糸
3 表皮材
4 基材
5 真空成形型
6 加熱装置
17 ステッチ加飾部
21 縫目
22 渡り部
31 第1層
32 第2層
51 上型
52 下型
53 入子
521 凹溝
522 型面
531 突起部
531b 傾斜面

Claims (4)

  1. 真空成形型を用いて表皮材を成形すると共に基材表面に前記表皮材を接着するステッチ加飾付き内装部品の製造方法であって、
    前記真空成形型は、前記表皮材を成形する型面にステッチ加飾用の糸を挿入する凹溝が形成され、並列した複数の突起部を先端に有する入子を前記凹溝内に移動可能に備え、前記真空成形型を型閉じ状態にして前記表皮材と前記基材とを接着する間に前記入子を移動させて、前記凹溝内に挿入した前記糸を前記突起部によって前記表皮材の内部に押し込むことを特徴とするステッチ加飾付き内装部品の製造方法。
  2. 請求項1に記載されたステッチ加飾付き内装部品の製造方法において、
    前記真空成形型の下型に設けた型面に、前記凹溝が形成されていることを特徴とするステッチ加飾付き内装部品の製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載されたステッチ加飾付き内装部品の製造方法において、
    前記突起部は、先端に微小Rが形成された鋭角状の傾斜面を備えることを特徴とするステッチ加飾付き内装部品の製造方法。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載されたステッチ加飾付き内装部品の製造方法において、
    前記糸を樹脂製とし、前記入子を前記糸のガラス転移温度以上で融点未満の温度まで加温することを特徴とするステッチ加飾付き内装部品の製造方法。
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