JP5877084B2 - ベアリング固定構造 - Google Patents

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Description

本発明は、ベアリングのアウタレースの回転を阻止するベアリング固定構造に関する。
従来、変速機内の回転シャフトを支持するベアリングのアウタレースは、これを押圧部材で押さえ、この押圧部材をボルトで変速機のケースに締結することによってケースに固定される。例えば、特許文献1に記載された変速機においては、押え部材でアウタレースの端面を押さえ、その押え部材を2本のボルトでケースに固定するようにしている。
一方、特許文献2には、変速機のケースにベアリングを固定する際に、ベアリングのアウタレースに設けた切欠きをケースに設けた突起に係合させるようにした変速機用のベアリングが記載されている。これによれば、ベアリングが支持する回転シャフトの回転に伴ってアウタレースが回転するのを防止することができる。
特開2010−96337号公報 特開2005−133869号公報
しかしながら、特許文献1の変速機によれば、アウタレースを固定しているボルトの締結力が弱まった場合には、ベアリングの使用環境によってはケース内でアウタレースが回転し、ハウジングを磨耗させる場合がある。アウタレースが回転すると、アウタレースを支持している部分が磨耗して回転シャフトのずれや振動が生じ、回転シャフト上のギアが破損する等の不都合が発生するおそれがある。
一方、特許文献2のベアリングによれば、アウタレースが回転することはないが、アウタレースの軸方向への移動を阻止する対策が施されていないので、ケースからアウタレースが逸脱するおそれがある。そこで、特許文献1及び特許文献2の技術を組み合わせてアウタレースの回転及び逸脱の双方を防止することが考えられる。しかし、特許文献1のようにアウタレースの押え部材を2本のボルトでケースに固定すると、その分のスペースをケース内に確保する必要がある。
そこで、1本のボルトで固定部材をケースに固定し、この固定部材によりアウタレースの回転を阻止し、さらにはベアリングの逸脱を防止することも考えられる。しかし、1本のボルトで固定部材をケースに締結した場合、固定部材が容易に回転し、ボルトが緩み易いという問題がある。
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、ケースに1本のボルトで固定した固定部材により、ボルトに緩みを生じさせることなく、アウタレースの回転を阻止することができるベアリング固定構造を提供することにある。
本発明のベアリング固定構造は、ケース内で回転シャフトをラジアル方向に支持するベアリングのアウタレースに設けられ、該ベアリングの軸線に平行で径方向外方を向いた第1平面と、前記第1平面に対向する湾曲面を有する固定部材と、前記固定部材を、前記ケースに対し、前記軸線に平行な方向に螺合して固定するボルトとを備え、前記湾曲面は、各部分の曲率の中心が前記ボルト側に位置するように湾曲して前記第1平面に対峙し、前記湾曲面は、前記アウタレースが一方向又は他の方向に回転しようとした場合にはその回転方向に応じた異なる箇所で前記第1平面と接して該回転を阻止し、いずれの箇所で接した場合でも、前記固定部材に付与される接触荷重の方向が該固定部材に該ボルトの締付け方向のトルクを与える方向となるように構成されていることを特徴とする。
本発明によれば、回転シャフトの一方向又は他の方向の回転の影響によりアウタレースが一方向又は他の方向に回転しようとした場合には、該回転が固定部材によって阻止される。そのとき、固定部材に付与される接触荷重の方向はボルトの締付け方向のトルクを与える方向である。したがって、固定部材によりアウタレースの回転を確実に阻止できるとともに、ボルトの緩みを防止することができる。
本発明においては、前記アウタレースに設けられ、前記第1平面に垂直に隣接する第2平面と、前記固定部材に設けられ、前記湾曲面に隣接し、前記第2平面に対向する第3平面とを備えていてもよい。これによれば、アウタレースが軸方向に固定部材側へ移動するのを、固定部材の第3平面により阻止することができる。
本発明においては、前記アウタレースは、前記ケースに設けられた凹部に嵌合されて該ケースに固定されており、前記第3平面は、該アウタレースが該凹部から逸脱するのを規制するものであってもよい。
また、本発明においては、前記固定部材が前記ボルトの締付け方向に所定の範囲を越えて回転するのを阻止する回転阻止部材を前記ケースに設けてもよい。これによれば、回転阻止部材を、ケースに固定部材をボルトで取り付けるときの位置決め用に用いることができる。
本発明の一実施形態に係るベアリング固定構造を示す断面図である。 図1のベアリング固定構造において固定部材がアウタレースの回転を阻止している様子を示す説明図である。 図1のベアリング固定構造において固定部材がアウタレースの回転を阻止している別の様子を示す説明図である。 図1のベアリング固定構造において、湾曲面が第1平面と接触した姿勢で固定部材の取付けが行われる様子を示す説明図である。 図1のベアリング固定構造において、回転阻止部材を用いて位置決めしながら固定部材を取り付けている様子を示す説明図である。
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1に示すように、実施形態のベアリング固定構造は、ベアリング1のアウタレース2に設けられた第1平面3及び第2平面4と、アウタレース2の回転及び逸脱を阻止する固定部材5と、固定部材5を変速機のケース6に固定するボルト7とを備える。
ベアリング1は、ケース6内で動力を伝達する回転シャフト8を、その一端側においてラジアル方向に支持するニードルベアリングである。第1平面3は、ベアリング1の軸線に平行で径方向外方を向いている。第2平面4は、第1平面3に垂直に隣接し、回転シャフト8の他端側を向いている。
固定部材5は、第1平面3に対向する湾曲面9と、これに垂直に隣接し、第2平面4に対向する第3平面10とを備える。ボルト7は、ベアリング1の軸線に平行な方向に螺合して固定部材5をケース6に固定している。湾曲面9は、各部分の曲率中心がボルト7側に位置するように湾曲して第1平面3に対峙している。
また、湾曲面9は、後述するように、アウタレース2が一方向又は他の方向に回転しようとした場合には、その回転方向に応じた異なる箇所で第1平面3と接して該回転を阻止し、いずれの箇所で接した場合でも、第1平面3が固定部材5に付与される接触荷重の方向が、ボルト7の中心軸線を通る方向又は固定部材5にボルト7の締付け方向のトルクを与える方向となるように構成されている。
ベアリング1は、針状のコロ11と、コロ11を保持する保持器12とを備える。コロ11は、回転シャフト8端部の外周と、アウタレース2との間で転動する。
アウタレース2は、ケース6に設けられた凹部13に嵌合されてケース6に固定されている。第3平面10は、アウタレース2が凹部13から逸脱するのを規制している。ケース6には、固定部材5がボルト7の締付け方向(時計回りの方向)に所定の範囲を越えて回転するのを阻止する回転阻止部材14(図2参照)が設けられる。
図2は、固定部材5がアウタレース2の回転を阻止している様子を、ボルト7の頭部側から見た状態で示す。アウタレース2は、上述のようにケース6の凹部13により支持されているが、回転シャフト8の回転の影響を受けて回転するクリープを生じる場合がある。この回転は、ケース6の凹部13との摩擦を生じて凹部13に摩耗を生じさせたり、摩耗で生じた粉塵がベアリング1における異常な発熱や振動の原因となったりするので、阻止する必要がある。
図2では、アウタレース2が図に向かって反時計回り(Y1方向)に回転しようとした場合にその回転が阻止されている様子が示されている。この場合、アウタレース2は、図2で示される位置まで回転したとき、第1平面3と湾曲面9とが接触位置P1において接触することにより、それ以上の回転が阻止される。
このとき、固定部材5は、湾曲面9を介して、A方向の接触荷重を受ける。この方向は、ボルト7の中心軸線を通る方向又は固定部材5にボルト7の締付け方向(時計回り)のトルクを与える方向である。したがって、接触荷重により固定部材5が反時計回りに回転してボルト7が緩むことはない。
一方、図3では、アウタレース2が時計回り(Y2方向)に回転しようとした場合にその回転が阻止されている様子が示されている。この場合、アウタレース2は、図3で示される位置まで回転したとき、第1平面3と湾曲面9とが接触位置P2において接触し、それ以上の回転が阻止される。
このとき、固定部材5は、第1平面3から湾曲面9を介して、B方向の接触荷重を受ける。この方向は、ボルト7の中心軸線を通る方向又は固定部材5にボルト7の締付け方向のトルクを与える方向である。したがって、この場合も、接触荷重により固定部材5が反時計回りに回転してボルト7が緩むことはない。
このように、アウタレース2がいずれの方向に回転しようとする場合でも、その回転が固定部材5との接触により阻止され、かつボルト7が緩む方向の接触荷重が固定部材5に付与されることはない。ただし、接触時の固定部材5及び第1平面3の双方における接触位置は、アウタレース2が回転しようとする方向によって異なる。すなわち、上述の接触位置P1及びP2は、いずれの回転方向の場合においても、第1平面3及び湾曲面9における回転方向(Y1又はY2方向)とは反対側の位置となる。
なお、アウタレース2の回転が上述のようにして阻止される間、アウタレース2がケース6の凹部13から逸脱する方向への力を受けたとしても、第2平面4に対向する第3平面10により、その方向へのアウタレース2の移動が阻止されるので、アウタレース2が凹部13から逸脱する方向に変位するおそれはない。
固定部材5をケース6にボルト7で取り付ける際には、ボルト7の座面との摩擦力により、固定部材5がボルト7の締付け方向(時計回り)に回転する。このため、図4に示すように、そのときのアウタレース2の位置に応じた接触位置P3において第1平面3と湾曲面9とが接触した姿勢で、固定部材5の取付けが行われる。
あるいは、ボルト7の締付けに際し、図5に示すように、回転阻止部材14に当たるまで固定部材5を回転させることにより、固定部材5を取付け位置に位置決めするようにしてもよい。この場合、湾曲面9の形状及び寸法は、この取付け位置に固定部材5を取り付けた状態において、アウタレース2の回転を阻止したときの接触荷重の方向が、上述のように、ボルト7の中心軸線を通る方向又は固定部材5にボルト7の締付け方向のトルクを与える方向となるように設定される。
なお、このような方向の接触荷重を生じさせる湾曲面9は、例えば、曲率の中心が、図2の湾曲面9側からボルト7の中心軸に向かって該中心軸よりも左側に位置するような曲面で湾曲面9を構成することにより得られる。
以上のように、本実施形態によれば、アウタレース2に第1平面3及び第2平面4を設け、固定部材5をボルト7でケース6に締結するだけで、第1平面3及び湾曲面9の作用により、アウタレース2の一方向及び他の方向への回転を阻止することができる。
また、その際に、生じる接触荷重の方向が、ボルト7の中心軸線を通る方向又は固定部材5にボルト7の締付け方向のトルクを与える方向であるため、ボルト7に緩みが生じるのを防止することができる。さらに、第2平面4及び第3平面10の作用により、アウタレース2がケース6の凹部13から逸脱するのを防止することができる。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、本発明が適用されるベアリングは、インナレースを有するものであってもよい。また、ベアリングは、ニードルベアリングに限らず、ボールベアリング等であってもよい。また、ボルトは、ノックボルトであってもよい。
1…ベアリング、2…アウタレース、3…第1平面、4…第2平面、5…固定部材、6…ケース、7…ボルト、8…回転シャフト、9…湾曲面、10…第3平面、13…凹部、14…回転阻止部材。

Claims (4)

  1. ケース内で回転シャフトをラジアル方向に支持するベアリングのアウタレースに設けられ、該ベアリングの軸線に平行で径方向外方を向いた第1平面と、
    前記第1平面に対向する湾曲面を有する固定部材と、
    前記固定部材を、前記ケースに対し、前記軸線に平行な方向に螺合して固定するボルトとを備え、
    前記湾曲面は、各部分の曲率の中心が前記ボルト側に位置するように湾曲して前記第1平面に対峙し、
    前記湾曲面は、前記アウタレースが一方向又は他の方向に回転しようとした場合にはその回転方向に応じた異なる箇所で前記第1平面と接して該回転を阻止し、いずれの箇所で接した場合でも、前記固定部材に付与される接触荷重の方向が該固定部材に該ボルトの締付け方向のトルクを与える方向となるように構成されていることを特徴とするベアリング固定構造。
  2. 前記アウタレースに設けられ、前記第1平面に垂直に隣接する第2平面と、
    前記固定部材に設けられ、前記湾曲面に隣接し、前記第2平面に対向する第3平面とを備えることを特徴とする請求項1に記載のベアリング固定構造。
  3. 前記アウタレースは、前記ケースに設けられた凹部に嵌合されて該ケースに固定されており、前記第3平面は、該アウタレースが該凹部から逸脱するのを規制していることを特徴とする請求項2に記載のベアリング固定構造。
  4. 前記固定部材が前記ボルトの締付け方向に所定の範囲を越えて回転するのを阻止する回転阻止部材を前記ケースに設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のベアリング固定構造。
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