JP5868528B2 - 光起電力装置およびその製造方法、光起電力モジュール - Google Patents

光起電力装置およびその製造方法、光起電力モジュール Download PDF

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Description

本発明は、光起電力装置およびその製造方法、光起電力モジュールに関する。
太陽電池には、入射光を内部に取り込む機能、取り込んだ入射光を電気エネルギーに変換する機能、変換した電気エネルギーを外部に取り出す機能、という3つの基本機能がある。そして、太陽電池においては、その性能を高めるために、3つの基本機能のそれぞれが効率的に実行されるための工夫が成されている。
その一方で、太陽電池では、既存電力とのコスト格差低減のために低コスト化への要求水準も非常に高く、構造や製造方法の簡略化、個々の工程の低コスト化も積極的に行われている。現実問題として、両者が相反する場合には、多少の性能低下を甘受してでも低コスト化の手段を優先することも少なくない。その一例として、不純物の熱拡散によるpn接合の形成時に受光面と反対側の面(基板の裏面)へ形成されたpn接合の取扱いが挙げられる。
ここで、従来の太陽電池の製造方法について説明する。まず、スライス時のダメージの除去およびテクスチャー構造の形成が行われたp型シリコン基板を拡散炉へ投入し、たとえばオキシ塩化リン(POCl)蒸気の存在下で加熱する。これによりp型シリコン基板の表面にリンが熱拡散してp型シリコン基板の表層にn型不純物拡散層が形成され、pn接合が形成される。
つぎに、フッ酸溶液中でp型シリコン基板に形成されたリンガラス層を除去し、さらにpn接合の分離を実施する。その後、n型不純物拡散層上に反射防止膜として窒化シリコン膜(SiN膜)等を形成する。
つぎに、p型シリコン基板の受光面に銀を含んだペーストをスクリーン印刷により印刷する。また、アルミニウムを含んだアルミニウムペーストをp型シリコン基板の裏面のほぼ全面にスクリーン印刷にて印刷した後、銀を含んだ銀ペーストをp型シリコン基板の裏面の一部にスクリーン印刷にて印刷し、乾燥する。その後、焼成処理を実施して受光面側電極と裏面側電極とを得る。
前述の工程の中、pn接合の形成は太陽電池の心臓部とも言うべき極めて重要な工程である。そして、不純物の熱拡散によりpn接合を形成する手法は、pn接合の形成方法として量産性および低コスト性に優れた手法である。その一方で、半導体基板の表面裏面を問わず、半導体基板において露出する全面に不純物が拡散されてしまうことが、ほぼ唯一と言える難点である。
太陽電池にとってpn接合の必要な部分は受光面側であり、側面と裏面にはpn接合は必要ない。そこで、半導体基板の側面や裏面に形成された不純物拡散層を除去または無効化する手法として、様々な方法が提案されている。たとえばp型の半導体基板の裏面に形成された不純物拡散層を除去または無効化する最も代表的な方法は、アルミニウムを含むペーストを半導体基板の裏面に印刷・焼成する方法である。シリコンとアルミニウムとは比較的低温で合金化(アルミニウム合金化)する性質があり、かつアルミニウムはIII族元素である。このため、アルミニウムを含むペーストが、焼成を通じて半導体基板の裏面を再度p型化し、半導体基板の裏面のpn接合を無効化することができる。この方法は実用性に優れた方法であり、現在生産されている多くの結晶系シリコン太陽電池の製造に用いられている。
特開2012−160694号公報
一方、太陽電池の電気エネルギーを外部に取出すためには、銅配線等との外部接続性が電極に求められる。アルミニウム電極にはこの性質が備わっていないため、アルミニウム電極の他に銀電極を半導体基板の裏面側に設けることにより前述の接続性を確保することが多い。しかしながら、半導体基板の裏面側において銀電極が接触する領域はアルミニウムが供給されないため、前述のアルミニウム合金による無効化がなされず、半導体基板の裏面側にpn接合が残存するという問題があった。
ここで、発明者の検討によれば、裏面銀電極の形成部分にpn接合が残存する場合と残存しない場合とでは開放電圧(Voc)において5mV程度の差が生じていることが判明した。太陽電池セルの高光電変換効率化を図る上では、この差は無視できない。
半導体基板の裏面側におけるpn接合の残存を回避する手段として、塗布型拡散による裏面へのpn接合形成の回避や、片面エッチングにより裏面側のpn接合のみを除去する方法等が挙げられる。しかし、これらの方法を実施するためには、巨大な設備が必要となる、付加的に生じる加工コストや材料コストが無視できない等、コストや生産性等の理由で実行を見送られることも多い。したがって、現実には、pn接合が半導体基板の裏面側に残存した状態で太陽電池が生産されている事例が大半である。
また、特許文献1に示される方法も、半導体基板の裏面側におけるpn接合の残存の回避の一例と見なされる。特許文献1では、通称ドーピングペーストと呼ばれる無機シリコン系のペーストであってボロンを含むペーストを用いて、半導体基板の裏面側に拡散濃度の高いP型層の形成を行っている。しかし、特許文献1の前段の内容を参照すると、ドーピングペーストも十分に安価な材料とは言えず、他の従来例と同様、結局用いられない事例が多い。
また、リン(P)拡散の重要な副作用として、リンパッシベーションが挙げられる。これは、ドーパントであるリンが、ドーパント自体としての役割以外に、シリコン結晶中で半導体としての品質を低下させる因子(ライフタイムキラーと総称される)に働き掛けてこれを無効化し、ライフタイムや拡散長などの半導体としての物性を向上させる働きを指す。当然のことながら、リンは半導体基板における拡散中の雰囲気に露出している部分から供給される。したがってこの視点からは、表裏側面を問わず、できるだけ多くの半導体基板の露出面からリンの供給を受けることが好ましい。すなわち、半導体基板の裏面側における拡散濃度の高いP型層の全てがドーピングペーストを用いて形成される方法の場合は、この視点からも不利に働く。
また、理想的には、半導体基板の裏面全面に一旦アルミニウムペーストを印刷・焼成してBSF層を形成し、裏面銀電極が形成される箇所のみ選択的にアルミニウムペーストを除去した後、改めて裏面銀電極を形成するという方法も挙げられる。しかし、この場合は、工程が複雑化する上、焼成された金属ペーストは金属・セラミック類の複雑な混合体であり、その清浄な除去、更にこの除去処理を選択的に行うことは極めて困難である。
この混合体の除去に化学反応を用いる場合は、より工程が複雑化する。また、混合体の除去に研削や研磨などの物理的手法を用いる場合は、結晶性が高く靭性の低い半導体シリコン結晶を基板として用いているため、全体を破損・破壊するリスクが大きくなる。このため、結局は上述のとおり、多少の性能低下を甘受してでも低コスト化の手段が優先される。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、不純物の熱拡散を用いて半導体基板にpn接合が形成される場合の半導体基板の裏面側におけるpn接合の残存による影響が防止または抑制された、光電変換効率に優れた光起電力装置およびその製造方法、光起電力モジュールを得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる光起電力装置は、一面側にn型の不純物元素が拡散されたn型不純物拡散層を有するp型の半導体基板と、前記一面側に形成されて前記n型不純物拡散層に電気的に接続する第1電極と、アルミニウムを含む材料からなるアルミニウム系電極と銀を含む材料からなる銀系電極とを含んで前記半導体基板の他面側に当接して形成された第2電極と、前記半導体基板の他面側の表層における前記銀系電極の下部領域に形成され、p型の不純物元素を前記半導体基板よりも高い濃度で含むp型不純物高濃度部と、前記半導体基板の他面側の表層における前記アルミニウム系電極の下部領域に形成され、p型の不純物としてアルミニウム元素を前記半導体基板よりも高い濃度で含むアルミニウム高濃度部と、を備え、前記半導体基板の他面側における前記銀系電極との接触部分のn型の不純物元素の濃度が、前記n型不純物拡散層におけるn型の不純物元素の濃度よりも低く、前記アルミニウム高濃度部の深さが、前記p型不純物高濃度部の深さよりも深く、前記半導体基板の他面側の面内における前記銀系電極の面積と、前記半導体基板内におけるキャリアの拡散長分だけ前記銀系電極のパターンから前記半導体基板の他面側の面内において外側に拡張した周辺領域の面積との和が、前記半導体基板の他面側の面積の10%以下である。
本発明によれば、不純物の熱拡散を用いて半導体基板にpn接合が形成される場合の半導体基板の裏面側におけるpn接合の残存による影響が防止または抑制された、光電変換効率に優れた光起電力装置が得られる、という効果を奏する。
図1−1は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルを受光面側から見た上面図である。 図1−2は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルを受光面と反対側の面(裏面)側から見た下面図である。 図1−3は、図1−1のA−A方向における太陽電池セルの要部断面図である。 図1−4は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルにおける裏面側電極と、該裏面側電極の形状を拡散長分だけ外側に拡張した周辺領域(拡張領域)を示す平面図である。 図2−1は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造工程を説明するための断面図である。 図2−2は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造工程を説明するための断面図である。 図2−3は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造工程を説明するための断面図である。 図2−4は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造工程を説明するための断面図である。 図2−5は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造工程を説明するための断面図である。 図2−6は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造工程を説明するための断面図である。 図2−7は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造工程を説明するための断面図である。 図2−8は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造工程を説明するための断面図である。 図3は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造工程を説明するためのフローチャートである。 図4は、1枚の太陽電池セル内における高開放電圧V1と低開放電圧V2との比率による太陽電池セル全体の開放電圧(セル開放電圧)を算出した結果を示す特性図である。 図5は、従来の太陽電池セルの構成を示す要部断面図である。 図6は、裏面銀電極の形成部分にpn接合が残存する場合と残存しない場合とにおける太陽電池セルの開放電圧(Voc)の一例を示す特性図である。 図7は、実施の形態2にかかる太陽電池セルの構成を示す図であり、図1−3に対応する要部断面図である。 図8−1は、本発明の実施の形態2にかかる太陽電池セルの製造工程を説明するための断面図である。 図8−2は、本発明の実施の形態2にかかる太陽電池セルの製造工程を説明するための断面図である。 図8−3は、本発明の実施の形態2にかかる太陽電池セルの製造工程を説明するための断面図である。 図9は、本発明の実施の形態2にかかる太陽電池セルの製造工程を説明するためのフローチャートである。 図10は、第1BSF層と第2BSF層とを有する1枚の太陽電池セル内における高開放電圧V1と低開放電圧V2との比率による太陽電池セル全体の開放電圧(セル開放電圧)を算出した結果を示す特性図である。
以下に、本発明にかかる光起電力装置およびその製造方法、光起電力モジュールの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す図面においては、理解の容易のため、各部材の縮尺が実際とは異なる場合がある。各図面間においても同様である。また、平面図であっても、図面を見易くするためにハッチングを付す場合がある。
実施の形態1.
図1−1〜図1−4は、実施の形態1にかかる光起電力装置である太陽電池セルの構成を示す図であり、図1−1は、受光面側から見た太陽電池セルの上面図、図1−2は、受光面と反対側の面(裏面)側から見た太陽電池セルの下面図、図1−3は、図1−1のA−A方向における太陽電池セルの要部断面図である。図1−4は、裏面側電極と、該裏面側電極のパターン(形状)を拡散長分だけ外側に拡張した周辺領域(拡張領域)の概念を模式的に示す平面図である。
実施の形態1にかかる太陽電池セルは、光電変換機能を有する太陽電池基板であってpn接合13を有する半導体基板1と、半導体基板1の受光面側の面(おもて面)に形成されて受光面での入射光の反射を防止する絶縁膜であるシリコン窒化膜(SiN膜)からなる反射防止膜4と、半導体基板1の受光面側の面(おもて面)において反射防止膜4に囲まれて形成された第1電極である受光面側電極5と、半導体基板1の受光面と反対側の面(裏面)に形成された第2電極である裏面側電極8と、を備える。裏面側電極8は、アルミニウムを含むアルミニウム系電極である裏面アルミニウム電極9と、銀を含む銀系電極である裏面銀電極10と、裏面アルミニウム電極9と裏面銀電極10との接続部である合金部11とを含む。
半導体基板1は、第1導電型層であるp型多結晶シリコン基板2と、半導体基板1の受光面側にリン拡散によって形成された第2導電型層である不純物拡散層(n型不純物拡散層)3と、によりpn接合13が構成されている。なお、半導体基板としてはp型多結晶のシリコン基板に限定されず、p型単結晶のシリコン基板などの結晶系シリコン基板を用いてもよい。
受光面側電極5は、長尺細長の表銀グリッド電極6および表銀バス電極7を含んで例えば櫛形形状に形成され、n型不純物拡散層3に電気的に接続されている。表銀グリッド電極6は、半導体基板1で発電された電気を集電するために受光面に局所的に設けられている。表銀バス電極7は、表銀グリッド電極6で集電された電気を取り出すために表銀グリッド電極6にほぼ直交して設けられている。
一方、半導体基板1の裏面においては、外縁領域の一部を除いた全体にわたってアルミニウム材料からなる裏面アルミニウム電極9が設けられ、また表銀バス電極7と対応する位置に該表銀バス電極7と略同一方向に延在して銀材料からなる裏面銀電極10が設けられている。
また、半導体基板1の裏面においては、図1−4に示すような半導体基板1の面内における裏面銀電極10の形成面積と、半導体基板1内におけるキャリアの拡散長分だけ裏面銀電極10のパターン(形状)を半導体基板1の面内において外側に拡張した周辺領域(拡張領域)10eの面積との和が、半導体基板1の裏面側の面積の10%以下、好ましくは8%以下とされている。図1−4においては、周辺領域(拡張領域)10eの外縁部を破線で示している。本事項については後述する。
半導体基板1の裏面側の表層部における裏面アルミニウム電極9の直下領域には、半導体基板1よりも高濃度でp型不純物元素を含んだp+層(BSF(Back Surface Field)層)12が形成されている。すなわち、BSF12は、アルミニウム元素をp型多結晶シリコン基板2よりも高い濃度で含むアルミニウム高濃度部とされている。p+層(BSF層)12は、BSF効果を得るために設けられ、p型層(p型多結晶シリコン基板2)中の電子が消滅しないようにバンド構造の電界でp型層(p型多結晶シリコン基板2)の電子濃度を高めるようにする。
なお、図中では省略しているが、半導体基板1(n型不純物拡散層3)の受光面側の表面には、テクスチャー構造として微小凹凸が高密度で形成されている。微小凹凸は、受光面において特に反射光の角度を変え、複数回の反射を通じて実質的な反射率を抑え、光を閉じ込める機能を有している。
このように構成された太陽電池セルでは、太陽光が太陽電池セルの受光面側から半導体基板1のpn接合13に照射されると、ホールと電子が生成する。pn接合13の電界によって、生成した電子はn型不純物拡散層3に向かって移動し、ホールはp型多結晶シリコン基板2に向かって移動する。これにより、n型不純物拡散層3には電子が、p型多結晶シリコン基板2にホールが過剰となる結果、光起電力が発生する。この光起電力はpn接合を順方向にバイアスする向きに生じ、n型不純物拡散層3に接続した受光面側電極5がマイナス極となり、BSF層12を介してp型多結晶シリコン基板2に接続した裏面側電極8がプラス極となって、図示はしない外部回路に電流が流れる。
つぎに、このような太陽電池セルの製造方法の一例について図2−1〜図2−8および図3を参照して説明する。図2−1〜図2−8は、実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造工程を説明するための断面図である。図3は、実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造工程を説明するためのフローチャートである。
まず、半導体基板として、例えば民生用太陽電池向けとして最も多く使用されているp型多結晶シリコン基板を用意する(以下、p型多結晶シリコン基板1aと呼ぶ)(図2−1)。ここで、p型多結晶シリコン基板1aの厚さや寸法は特に限定されるものではないが、一例としてp型多結晶シリコン基板1aの厚みは200μm、寸法は150mm×150mmとする。
p型多結晶シリコン基板1aは、溶融したシリコンを冷却固化してできたインゴットをワイヤーソーでスライスして製造するため、表面にスライス時のダメージが残っている(ダメージ層)。この表層のダメージ層は、結晶性が極めて悪く、半導体素子として十分に機能させるためには、除去する必要がある。そこで、まずはこのダメージ層の除去も兼ねて、p型多結晶シリコン基板1aを酸または加熱したアルカリ溶液中、例えば水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して表面をエッチングすることにより、シリコン基板の切り出し時に発生してp型多結晶シリコン基板1aの表面近くに存在するダメージ領域を取り除く(ステップS10)。
また、ダメージ除去と同時に、またはダメージ除去に続いて、p型多結晶シリコン基板1aの受光面側の表面にテクスチャー構造として微小凹凸を高密度に形成する(図示せず)。このようなテクスチャー構造を半導体基板1の受光面側に形成することで、太陽電池セルの表面で光の多重反射を生じさせ、太陽電池セルに入射する光を効率的に半導体基板1の内部に吸収させることができ、実効的に反射率を低減して変換効率を向上させることができる。
なお、本発明は光起電力装置の裏面構造にかかる発明であるので、テクスチャー構造の形成方法や形状については、特に制限するものではない。例えば、イソプロピルアルコール(IPA)を含有させたアルカリ水溶液や主にフッ酸、硝酸の混合液からなる酸エッチングを用いる方法、部分的に開口を設けたマスク材をp型多結晶シリコン基板1aの表面に形成して該マスク材を介したエッチングによりp型多結晶シリコン基板1aの表面にハニカム構造や逆ピラミッド構造を得る方法、或いは反応性ガスエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)を用いた手法など、何れの手法を用いても差し支えない。
つぎに、テクスチャー構造として微小凹凸が高密度で形成されたp型多結晶シリコン基板1aの裏面側に、後述するリンの熱拡散時にp型多結晶シリコン基板1aの裏面におけるリンの拡散を選択的に防ぐマスク層となるガラスペースト層21を選択的に形成する(ステップS20、図2−2)。ガラスペースト層21は、ガラスを主成分とするペースト材料からなる。また、ガラスペースト層21の厚みは、たとえば5μm〜20μm程度とされ、後述するリン拡散処理においてガラスペースト層21を介したp型多結晶シリコン基板1aへのリンの拡散を防止できる。
ガラスペースト層21の形成方法としてはスクリーン印刷法が代表的であるが、スプレー法や塗布法など、印刷物全般に用いられるような、その他の方法でも構わない。本実施の形態においては、p型多結晶シリコン基板1aの裏面におけるリンの拡散を防ぐことが第1の目的であるため、ガラスペースト層21におけるドーパントの含有は必ずしも必要ではない。したがって、ガラスペースト層21においては、ドーパントは無添加とされることが好ましく、或いはドーパントを含有する場合はホウ素(B:ボロン)、アルミニウム(Al)等のp型不純物を含んでいることが好ましい。ただし、p型多結晶シリコン基板1aの裏面にn型の不純物拡散層を形成しないために、リンやヒ素などのn型不純物は含有しないことが好ましい。本実施の形態においては、ガラスペースト層21にはドーパントは無添加とされる。
p型多結晶シリコン基板1aの裏面側におけるガラスペースト層21の形成領域は、後の工程で裏面銀電極10が形成される領域を含む領域とされる。なお、ガラスペースト層21の形成領域は必ずしも裏面銀電極10が形成される領域の全てを含まなくても本実施の形態における効果は得られる。しかし、効果を最大限に得るためには、ガラスペースト層21の形成領域は裏面銀電極10が形成される領域の全てを含むことが好ましい。
ガラスペースト層21は、例えばp型多結晶シリコン基板1aの裏面側において裏面銀電極10の形成用の電極ペーストが印刷形成される電極形成領域に対して、p型多結晶シリコン基板1aの裏面の面方向において該電極形成領域から外側に1mm広げた範囲の領域に形成されることが好ましい。これにより、通常の電極印刷工程において用いられる程度の位置合わせ精度で、ガラスペースト層21が形成された領域内に支障なく、後に裏面銀電極を印刷することができる。なお、電極形成時には、後述するようにガラスペースト層21は除去されている。
なお、ガラスペースト層21の好ましい形成領域としてp型多結晶シリコン基板1aの裏面の面方向において電極形成領域から外側に拡張する幅(拡張幅)は、1mmに限定されない。同様のことは裏面銀電極10の電極形成領域からの拡張幅が0.5mm〜2mmの範囲の場合でも言える。すなわち、電極形成領域からの拡張幅は、0.5mm〜2mmの範囲とされることが好ましい。電極形成領域からの拡張幅が0.5mm未満の場合は、電極印刷工程において、広い面積において高度な印刷位置合わせが求められることになり、位置合わせ処理の負担が大きくなるため好ましくない。一方、電極形成領域からの拡張幅が2mmを超える場合には、ガラスペーストの無駄な使用が無視できなくなり、好ましくない。
つぎに、ガラスペースト層21を100℃〜200℃の温度で乾燥させ、ガラスペースト層21の主な有機成分を離脱させる。さらに、p型多結晶シリコン基板1aを拡散炉に投入し、拡散材料ガスが導入されるまでの加熱の環境下で、有機成分をほぼ完全に離脱させ、無機物化する。これにより、ガラスペースト層21は、シリコン酸化物とほぼ同等の材質になる。
そして、引き続き同じ拡散炉内でn型の不純物であるリン(P)の雰囲気下でp型多結晶シリコン基板1aを加熱して、熱拡散によるpn接合形成を行う。この工程によりp型多結晶シリコン基板1aの表面にリン(P)を拡散させて、n型不純物拡散層3を形成して半導体pn接合13を形成する(ステップS30、図2−3)。本実施の形態では、p型多結晶シリコン基板1aをオキシ塩化リン(POCl)ガス雰囲気中において、例えば800℃〜850℃の温度で加熱することにより、n型不純物拡散層3を形成する。
ここで、p型多結晶シリコン基板1aにおいてシリコン表面が露出した面には、全てn型不純物拡散層3が形成される。したがって、ガラスペースト層21が形成された領域を除き、p型多結晶シリコン基板1aにおける全ての表裏面および側面にn型不純物拡散層3が形成される。すなわち、ガラスペースト層21が形成された領域、すなわち後の工程で裏面銀電極10が形成される電極形成領域を含む部分を除き、リン拡散によるn型不純物拡散層3が形成される。なお、本実施の形態において、ガラスペースト層21の役割はp型多結晶シリコン基板1aの裏面におけるリンの拡散防止であるため、拡散条件はガラスペースト層21によっては特に限定されない。たとえば、n型不純物拡散層3のシート抵抗が30Ω/□〜100Ω/□、好ましくは50Ω/□〜80Ω/□となるようにリン(P)の拡散を制御する。
また、リン拡散では、p型多結晶シリコン基板1aにおいてシリコン表面が露出した面からリンが拡散するため、p型多結晶シリコン基板1a自体のn型不純物濃度も増加して、重要な副作用であるリンパッシベーションが生じる。一方、p型多結晶シリコン基板1aにおいてガラスペースト層21が形成された領域では、リン拡散が行われない。このため、p型多結晶シリコン基板1aにおいてガラスペースト層21が形成された領域、すなわち後の工程で裏面銀電極10が形成される電極形成領域を含む部分のn型不純物濃度は、それ以外の領域のn型不純物濃度よりも低くなる。
ここで、n型不純物拡散層3の形成直後の表面にはリンの酸化物を主成分とするリンガラス(シリコン酸化膜とリン酸化物との混成物)層が形成されているため、該リンガラス層がフッ酸水溶液等を用いて除去される。なお、ガラスペースト層21は、前述のとおり、乾燥および拡散炉内での加熱を経ることにより有機成分が離脱して主にシリコン酸化物からなる無機物に変質している。このため、ガラスペースト層21は、このリンガラス層の除去工程でリンガラス層と同様に除去される(ステップS40、図2−4)。ここで、p型多結晶シリコン基板1aの裏面において、ガラスペースト層21が除去された領域にはn型不純物拡散層3は形成されていない。
つぎに、pn接合13の分離が行われる(ステップS50、図2−5)。n型不純物拡散層3は、p型多結晶シリコン基板1aの表面に一様に形成されるので、おもて面と裏面とは電気的に接続された状態にある。このため、裏面側電極8と受光面側電極5を形成した場合には、裏面側電極8と受光面側電極5とが電気的に接続される。この電気的接続を遮断するため、pn接合13の分離が行われる。これにより、第1導電型層であるp型多結晶シリコン基板2と、該p型多結晶シリコン基板2の受光面側に形成された第2導電型層であるn型不純物拡散層3と、によりpn接合13が構成された半導体基板1が得られる。
pn接合の分離方法としては、例えばプラズマエッチングを用いた端面エッチングやレーザ加工を用いた溶融分離などが代表的である。なお、プラズマエッチングを用いた端面エッチングを実施する場合は、pn接合の分離はこの時点で行われることが好ましい。一方、レーザ加工を用いた溶融分離を実施する場合は、pn接合の分離は電極形成後に実施しても差し支えない。
つぎに、n型不純物拡散層3が形成されたp型多結晶シリコン基板1aの受光面側に、光電変換効率の改善のために、反射防止膜4として例えばシリコン窒化膜(SiN膜)が形成される(ステップS60、図2−6)。反射防止膜4の形成には、例えばプラズマCVD法を使用し、シランとアンモニアの混合ガスを用いて反射防止膜4としてシリコン窒化膜を形成する。反射防止膜4の膜厚および屈折率は、光反射を最も抑制する値に設定する。なお、反射防止膜4として、屈折率の異なる2層以上の膜を積層してもよい。また、反射防止膜4の形成には、スパッタリング法などの異なる成膜方法を用いてもよい。また、反射防止膜4としてシリコン酸化膜を形成してもよい。
つぎに、スクリーン印刷により電極を形成する。まず、受光面側電極5を作製する(焼成前)。すなわち、半導体基板1の受光面の反射防止膜4上に、表銀グリッド電極6と表銀バス電極7との形状に、ガラスフリットを含む電極材料ペーストである銀ペーストをスクリーン印刷によって塗布した後、銀ペーストを乾燥させる(ステップS70、図2−7)。なお、図中では銀ペーストのうち表銀バス電極7形成用の銀ペースト7a部分のみを示している。
つぎに、半導体基板1の裏面側にスクリーン印刷によって、裏面アルミニウム電極9の形状に電極材料ペーストであるアルミニウムペースト9aを塗布し、さらに裏面銀電極10の形状に電極材料ペーストである銀ペースト10aを塗布し、乾燥させる(ステップS80、図2−7)。銀ペースト10aの印刷領域(裏面銀電極10の形成領域)については、後述する。
その後、半導体基板1のおもて面および裏面の電極ペーストを同時に焼成することで、半導体基板1の表側では銀ペースト中に含まれているガラス材料で反射防止膜4が溶融している間に銀材料がシリコンと接触し再凝固する。これにより、受光面側電極5としての表銀グリッド電極6および表銀バス電極7とが得られ、受光面側電極5とn型不純物拡散層3とが電気的に接続する(ステップS90、図2−8)。このようなプロセスは、ファイヤースルー法と呼ばれる。これにより、n型不純物拡散層3は、受光面側電極5と良好な抵抗性接合を得ることができる。
一方、半導体基板1の裏面側では、アルミニウムペースト9aおよび銀ペースト10aが焼成されて、裏面アルミニウム電極9と裏面銀電極10とが形成され、さらに両者の接続部が合金部11として形成される。また、これと並行して、アルミニウムペースト9aは半導体基板1の裏面のシリコンとも合金化反応を生じ、その再固化の過程でアルミニウムをドーパントとして含んだBSF層12が裏面アルミニウム電極9の直下に形成される(図2−8)。これにより、半導体基板1の裏面側に形成されていた不純物拡散層3をp型の層に反転させて半導体基板1の裏面のpn接合を無効化することができる。BSF層12は、たとえば3μm以上の厚さ(深さ)で形成される。また、本発明の本質とは関係が薄れるが、反り抑制の視点から、BSF層12の厚みは10μm以下であることが好ましい。
一方、半導体基板1の裏面における裏面銀電極10の直下領域では、焼成においてアルミニウムペースト9aが供給されないため、アルミニウムペースト9aとシリコンとの合金化反応が起きず、アルミニウムをドーパントとして含んだBSF層12は形成されない。なお、図中では表銀グリッド電極6の記載を省略している。
焼成は、大気雰囲気中、例えば750〜900℃の範囲で焼成温度が選択されて実施される。焼成温度の選択は、太陽電池セルの構造や電極ペーストの種類を考慮して行われる。
以上のような工程を実施することにより、図1−1〜図1−3に示す本実施の形態にかかる太陽電池セルを作製することができる。なお、電極材料であるペーストの半導体基板1への配置の順番を、受光面側と裏面側とで入れ替えてもよい。
つぎに、実施の形態1における銀ペースト10aの印刷領域(裏面銀電極10の形成領域)について説明する。裏面銀電極10形成用の銀ペースト10aは、半導体基板1の裏面においてガラスペースト層21が形成されていた領域内、すなわちn型不純物拡散層が形成されていない領域内に収まるように印刷される。ただし、以下に述べる理由からも、銀ペースト10aの印刷領域や形状は一定の範囲内に制御されることが好ましい。そして、銀ペースト10aの印刷領域や形状から逆算する形で、上述したガラスペースト層21の印刷領域や形状も一定の範囲内に制御されることが好ましい。
銀電極がシリコン結晶と接続する際、オーミック接続(オーミック接触)が取られるが、この部分は表面再結合速度が極めて大きく、特に開放電圧(Voc)を低減する要因になる。したがって、半導体基板1の裏面にn型不純物拡散層3の残存がないようにしても、その領域や形状によっては、n型不純物拡散層3の残存を無くした効果を相殺してしまいかねない。これを防ぐために、ガラスペースト層21および裏面銀電極10の形成領域や形状に関しての制御を要する。
1枚の太陽電池セル内で開放電圧(Voc)の高い領域(高開放電圧領域)と低い領域(低開放電圧領域)とが混在する場合、太陽電池セル全体の開放電圧(Voc)は並列接続に基づいて考えることができる。また、ダイオードにおける電流と電圧との関係は指数関数に基づくため、太陽電池セル内における低開放電圧領域の比率が小さくても、太陽電池セル全体の開放電圧への影響は小さくない。
図4は、1枚の太陽電池セル内において高開放電圧をV1、低開放電圧をV2とした場合の両者の比率による太陽電池セル全体の開放電圧(セル開放電圧)を算出した結果を示す特性図である。図4においては、低開放電圧領域の面積比率を横軸に、太陽電池セル全体の開放電圧を縦軸に示している。本実施の形態にかかる太陽電池セルの高光電変換効率化のために、太陽電池セル全体の開放電圧は少なくとも高開放電圧と低開放電圧との差(V1−V2)の7割以上の水準、好ましくは8割以上の水準が求められる。図4に従うと、低開放電圧領域の面積比率は、少なくとも10%以下、好ましくは8%以下と求められる。なお、下限については、後述する裏面銀電極10の面積比率を超える必要があるので、2%を超えることが好ましい。形状等との関係もある為、超過の度合いについては特に定めるものではないが、強いて具体的に示すなら1%程度が現実的な値として好ましい。すなわち、2%+1%=3%程度が下限といえる。
ここで、半導体基板1の裏面において裏面銀電極10の印刷(形成)された領域は低開放電圧領域として扱うことができる。しかし、半導体基板1の裏面の面積に対する低開放電圧領域の面積比率は、裏面銀電極10の印刷部分の面積比率を単純には意味しない。低開放電圧領域について考慮する場合、裏面銀電極10の印刷部分を低開放電圧領域として扱うのは当然であるが、裏面銀電極10の印刷部分以外にも、その影響を受ける部分も加えて、低開放電圧領域を考慮する必要がある。ここで、「影響を受ける」とは、太陽電池セル内で発生したキャリア(発生キャリア)が、太陽電池基板(半導体基板1)の半導体材料自身のバルク再結合より早く界面に拡散して再結合することを意味する。したがって、ここでの影響は、発生キャリアが拡散できる距離、すなわちキャリアの拡散長と密接な関連性がある。
昨今の高光電変換効率化を目指す太陽電池セルでは、用いられる単結晶シリコンまたは多結晶シリコンの拡散長(基板拡散長)が大きいことが、事実上の前提条件となっており、少なくとも300μm以上、標準的には500μm以上の拡散長が求められる。以下、例えば基板拡散長が500μmの事例を用いて説明する。
前述の低開放電圧領域の面積比率をより精度良く求めるには、この拡散長を用いるとよい。より具体的には、裏面銀電極10の印刷部分に対して、本事例に関しては、拡散長:500μm分だけ外側に拡張した周辺領域(拡張領域)10eを含めて求めるとよい。すなわち、図1−4に示すように、裏面側電極10と、該裏面側電極10の形状を拡散長分だけ外側に拡張した周辺領域(拡張領域)10eを含めて低開放電圧領域の面積比率を求めるとよい。そして、このようにして求めた低開放電圧領域の面積比率を、上述したように少なくとも10%以下、好ましくは8%以下とする。
裏面銀電極10の印刷部分が、数本の帯状、島状に分割された形状を有する場合は、低開放電圧領域の面積比率は上述した周辺領域10eを含めても裏面銀電極10の印刷部分の面積比率より若干増える程度であり、本実施の形態に適した形状と言える。
一方、裏面銀電極10の印刷部分が、細長い線状形状が多数配列された形状、小さな島状・ドット状の形状が格子状などに多数配置された形状等を有する場合は、個々の裏面銀電極10の単位形状の大きさに対して、拡散長分の拡張領域がそれぞれ付加される。この場合は、裏面銀電極10の印刷部分の面積比率に比べて、裏面銀電極10の印刷部分に周辺領域10eを加えた領域の合計の面積比率が大幅に増加することになり、太陽電池セル全体の開放電圧の低下への影響が大きくなり、本実施の形態には適さない。
以下、上記低開放電圧領域の面積比率について、より直接的な具体例を用いて説明する。ここでは、本実施の形態にかかる太陽電池セルにおける比較的好ましい「裏面銀電極10の印刷部分」の形状の事例としてサンプルAおよびサンプルBを、本実施の形態にかかる太陽電池セルにおいて望ましくない「裏面銀電極10の印刷部分」の形状の事例としてサンプルCおよびサンプルDを示す。
それぞれのサンプルにおいて半導体基板1の裏面に設けられた裏面銀電極10の個別形状の詳細を表1に示す。また、半導体基板1の裏面の面積に対する、「裏面銀電極10の印刷部分」の本体形状領域と、これに「拡散長:500μm分の拡張領域」とを含めた合計領域形状と、のそれぞれの面積比率を表1に併せて示す。半導体基板1のサイズは15cm角とし、半導体基板1の面積は225cmである。サンプルA〜サンプルDの何れも、裏面銀電極10自体の面積比率は5.0%でほぼ統一させた。
Figure 0005868528
表1に示すように、「裏面銀電極10の印刷部分」の本体形状領域に「拡散長:500μm分の拡張領域」を加えた合計領域の面積比率を算出すると、サンプルAおよびサンプルBでは「裏面銀電極10の印刷部分」の本体形状領域と比較して面積比率の増加が1%強の増加で収まっている。一方、サンプルCおよびサンプルDでは、面積比率は30%〜40%程度まで大幅に増加している。したがって、サンプルCおよびサンプルDでは、上述した「影響を受ける」領域により低開放電圧領域の面積比率が大きく、半導体基板1の裏面における表面再結合に起因した開放電圧(Voc)の低減が大きくなる。
このように、開放電圧(Voc)を高い水準に維持するためには、裏面銀電極10の単純な面積比率だけではなく、裏面銀電極10の形状をサンプルAおよびサンプルBに例示されるような形状にすることが重要である。したがって、リン拡散を防止するガラスペースト層21を形成する領域も、形状等も含めて裏面銀電極10の条件に沿った領域を設定することが重要である。
一方、裏面銀電極10の元来の役割は、太陽電池セルから電気エネルギーを外部に取出すためのタブ用線材との、物理的接着強度と電気接続との両方を維持することである。したがって、裏面銀電極10においては、タブ用線材との物理的接着強度および電気接続の良好性を確保することも同時に必要である。
ここで、強度とは、裏面銀電極10と太陽電池セル本体である結晶シリコン(半導体基板1の裏面)との物理的接着強度、および裏面銀電極10とタブ用線材との物理的接着強度の両方を指す。ただし、現実的には裏面銀電極10と結晶シリコンとの間の付着強度を指すことが多い。この観点から、裏面銀電極10は、150mm角サイズの太陽電池セルにおいて2本のバス電極として一般的に用いられるバス電極の幅:2mm以上の帯状または島状の形状であり、面積比率は2%以上であることが好ましい。裏面銀電極10の面積比率は2%以上であれば、裏面銀電極10と結晶シリコンとの間の付着強度を確保できる。なお、上限については、前述の低電圧領域より面積比率が小さい必要があるので、10%を超えないことが好ましい。形状等との関係もある為、未満の度合いについては特に定めるものではないが、強いて具体的に示すなら1%程度が現実的な値として好ましい。すなわち、10%−1%=9%、または8%−1%=7%程度が上限といえる。
この場合、形状的には、裏面銀電極10は島状、円形状、矩形状などの表現で表されるような、半導体基板1の面方向において分割された断続的な形状であることが、より好ましい。ここでの円形状は完全な円形に限定されず、略円形状を含む。同様に、ここでの矩形状は完全な矩形に限定されず、略矩形状を含む。また、分割された複数の裏面銀電極10の各々の形状は、同じ形状であってもよく、異なる形状であってもよい。
表1に示したサンプルAおよびサンプルBを基に、面積比率を2%に減らした事例としてサンプルA’、サンプルB’、サンプルB”について説明する。表1の場合と同様に、各サンプルの詳細を表2に示す。表2中、サンプルA’は裏面銀電極10の幅が1.5mm程度である。すなわち、上述した2mm以上という数値を下回り、150mm角サイズの太陽電池セルにおいて2本のバス電極として一般的に用いられるバス電極の幅(2mm以上)よりも細い。
Figure 0005868528
タブ用線材との接着強度は、タブ用線材を引っ張る方向(タブ用線材の長手方向)にかかる応力への強度を論じることが多く、特に裏面銀電極10と結晶シリコン(半導体基板1の裏面)の間の付着強度を考慮する場合、表2中の数値で言えば裏面銀電極10の幅寸法に大きく依存する。これは、裏面銀電極10の幅の大小が、応力の分散に大きく寄与するためである。サンプルA’の場合は、1.52mmの幅では接着強度の確保が不利であり、電極ペーストや焼成条件の制約が厳しくなる。
本事例で示すような2本バス電極を採用した150mm角サイズの太陽電池セルにおいて一般的に用いられるバス電極の幅は2mm以上である。サンプルA’の裏面銀電極10の幅は、これよりも細い。したがって、サンプルA’の条件は、上述したように接着強度の確保が不利であり、電極ペーストや焼成条件の制約が厳しくなる。さらに、裏面銀電極10の幅が細くなることに伴って、タブ用線材の位置合わせの困難性も増加するため、更に生産において不利になる。
これに対して、サンプルB’およびサンプルB”の場合は、裏面銀電極10の幅としてサンプルA’の2倍または4倍近くの幅を確保できており、接着強度の確保およびタブ用線材の位置合わせの余裕の両面で、大幅に有利である。したがって、高い光電変換効率特性を得ながらタブ用線材との付着強度を保つためには、裏面銀電極10は、2mm以上の幅を有し、島状、円形状、略円形状、矩形状、略矩形などの表現で表されるような、半導体基板1の面方向において分割された断続的な形状であることが、より好ましい。
そして、上述した条件を考慮して裏面銀電極10の形成領域を設定し、これに沿ってガラスペースト層21を形成する領域を設定することにより、必要最小限の量のガラスペーストを用いて、半導体基板1の裏面におけるpn接合の残存部分の影響を防止または大きく抑制できる。また、半導体基板1においては、ガラスペースト層21が形成されなかった領域では、リン拡散の重要な副作用であるリンパッシベーションも十分に活用でき、ライフタイムや拡散長などの半導体としての物性を向上させる効果が得られる。
比較のため、従来の太陽電池セルについて説明する。図5は、従来の太陽電池セルの構成を示す要部断面図である。なお、実施の形態1にかかる太陽電池セルと同じ部材については同じ符号を付すことで説明を省略する。また、上面および下面から見た構造は、実施の形態1にかかる太陽電池セルと同じである。
従来の太陽電池セルは、実施の形態1にかかる太陽電池セルと同様に、pn接合13を有する半導体基板1と、反射防止膜4と、受光面側電極5と、裏面側電極8と、を備える。裏面側電極8は、アルミニウムを含む裏面アルミニウム電極9と、銀を含む裏面銀電極10と、裏面アルミニウム電極9と裏面銀電極10との接続部である合金部11とを含む。一方、従来の太陽電池セルは、裏面銀電極10の下部領域にn型不純物拡散層103を有する。
このような従来の太陽電池セルの製造方法について説明する。なお、ここで説明する工程は、シリコン基板を用いた一般的な従来の太陽電池セルの製造方法であるため、特に図示しない。
図5に示した従来の太陽電池セルの製造は、図3に示した実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造工程においてガラスペースト層21の形成を実施しない工程により行われる。すなわち、ダメージ除去およびテクスチャー構造の形成が行われたp型多結晶シリコン基板を拡散炉へ投入し、オキシ塩化リン(POCl)蒸気の存在下で加熱してp型多結晶シリコン基板の表面にリンを拡散させ、p型多結晶シリコン基板の表層にn型不純物拡散層3を形成する。
つぎに、フッ酸溶液中でp型多結晶シリコン基板のリンガラス層を除去し、pn接合の分離を実施して半導体基板1を形成する。その後、n型不純物拡散層3上に反射防止膜4として窒化シリコン膜(SiN膜)を形成する。
つぎに、半導体基板1の受光面に銀を含んだペーストを櫛形にスクリーン印刷により印刷する。また、半導体基板1の裏面のほぼ全面にアルミニウムを含んだアルミニウムペーストをスクリーン印刷にて印刷した後、半導体基板1の裏面の一部に銀を含んだ銀ペーストをスクリーン印刷にて印刷し、乾燥する。その後、焼成処理を実施して受光面側電極5と裏面側電極8とを形成する。以上のようにして、図5に示したように裏面銀電極10の下部領域にn型不純物拡散層103が残存した従来の太陽電池セルが形成される。
図6は、裏面銀電極の形成部分にpn接合が残存する場合と残存しない場合とにおける太陽電池セルの開放電圧(Voc)の一例を示す特性図である。ここで、裏面銀電極の形成部分にpn接合が残存する場合とは、裏面銀電極の下部領域にn型不純物拡散層が残存している場合である。発明者の検討によれば、裏面銀電極の形成部分にpn接合が残存する場合と残存しない場合とでは、図6に示す様に開放電圧(Voc)で5mV程度の差が生じていることが判明した。太陽電池セルの高光電変換効率化を図る上では、この差は無視できない。
一方、実施の形態1にかかる太陽電池セルにおいては、この裏面銀電極の形成部分にpn接合が残存することに起因した開放電圧(Voc)の低下を防止して、光電変換効率の向上が図られている。
上述したように、実施の形態1においては、リン拡散のマスク層であるガラスペースト層21を、半導体基板1の裏面における裏面銀電極10の形成領域を含む領域に形成した後に、リンの熱拡散によるpn接合の形成を行う。このため、ガラスペースト層21の下部領域にはn型不純物拡散層3が形成されない。そして、このn型不純物拡散層3が形成されていない領域に裏面銀電極10を形成する。すなわち、実施の形態1では、半導体基板1の裏面における裏面銀電極10に接触する部分にpn接合が形成されていない、という実質的特徴を有する。また、この場合には、半導体基板1の裏面側における裏面銀電極10との接触部分のn型の不純物元素の濃度が、半導体基板1が元から有するp型不純物元素の濃度よりも低くなる。また、半導体基板1の裏面においてn型不純物拡散層3が形成された領域は、電極の焼成時にアルミニウムをドーパントとして含んだBSF層12となる。これにより、裏面銀電極10の下部領域に残存するn型不純物拡散層3(pn接合)に起因した影響(開放電圧の低下)を防止または大きく抑制できる。
また、実施の形態1においては、半導体基板1の裏面側の面内における裏面銀電極10の面積と、半導体基板1内におけるキャリアの拡散長分だけ裏面銀電極10のパターンから半導体基板1の裏面側の面内において外側に拡張した周辺領域の面積との和を、半導体基板1の裏面側の面積の10%以下とすることにより、低開放電圧領域に起因した太陽電池セル全体の開放電圧の低下を抑制して、太陽電池セル全体の開放電圧を向上させることができる。
また、リンの熱拡散時においては、p型多結晶シリコン基板1aにおけるガラスペースト層21が形成されていない領域では、リン拡散の重要な副作用であるリンパッシベーションも十分に活用でき、ライフタイムや拡散長などの半導体としての物性を向上させる効果が得られる。
また、ガラスペースト層21の形成領域を裏面銀電極10の形成領域から拡散長分だけ外側に拡張した範囲とすることにより、ガラスペーストの使用量を必要最小限の量にすることができる。また、ガラスを主体とした安価なペーストを用いてガラスペースト層21を形成するという簡便な方法を採用しているため、複雑な工程および巨大な設備が不要であり、コストや生産性等の負担が非常に少ない。
したがって、実施の形態1によれば、裏面側のpn接合の残存に起因した特性の低下が防止されて光電変換効率に優れた太陽電池セルが低コストで得られる。
実施の形態2.
実施の形態1では、裏面銀電極の下にpn接合の残存が無いことを主眼にした事例について説明した。しかし、図4を用いて説明したとおり、まだ高開放電圧と低開放電圧との差(V1−V2)の2割〜3割分の改善余地を残している。実施の形態2では、裏面銀電極の下部領域もp型の領域に反転させて、BSF層が形成された事例について説明する。なお、実施の形態1の場合と同じ部材または相当する部分については、特に断らない限り、実施の形態1の場合と同じ符号を用いる。ただし、実施の形態1におけるBSF層12に相当する部分は、後述する第2BSF層31との比較上、第1BSF層12と表示する。
図7は、実施の形態2にかかる光起電力装置である太陽電池セルの構成を示す図であり、図1−3に対応する要部断面図である。実施の形態2にかかる太陽電池セルが実施の形態1にかかる太陽電池セルと異なる点は、裏面銀電極10の直下領域が第2BSF層31とされている点である。したがって、これ以外の構成は実施の形態1にかかる太陽電池セルと同じであるため、詳細な説明は省略する。
実施の形態1にかかる太陽電池セルでは裏面銀電極10の直下領域は、半導体基板と同等のp型不純物濃度を有するp型層とされている。これに対して、実施の形態2にかかる太陽電池セルでは、半導体基板1の裏面側において裏面銀電極10の直下領域が、p型のドーパントが半導体基板1よりも高濃度に拡散された第1導電型不純物高濃度部(不純物拡散層)である第2BSF層31とされている。p型のドーパントとしては、例えばホウ素(ボロン)が拡散されている。
つぎに、このような太陽電池セルの製造方法の一例について図8−1〜図8−3および図9を参照して説明する。図8−1〜図8−3は、実施の形態2にかかる太陽電池セルの製造工程を説明するための断面図である。図9は、実施の形態2にかかる太陽電池セルの製造工程を説明するためのフローチャートである。なお、以下では、実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造工程と異なる部分に注目して説明する。
まず、実施の形態1の場合と同様に、半導体基板として、例えば民生用太陽電池向けとして最も多く使用されているp型多結晶シリコン基板を用意する(以下、p型多結晶シリコン基板1aと呼ぶ)(図8−1)。ここで、p型多結晶シリコン基板1aの厚さや寸法は特に限定されるものではないが、一例としてp型多結晶シリコン基板1aの厚みは200μm、寸法は150mm×150mmとする。
つぎに、実施の形態1の場合と同様に、ダメージ層の除去も兼ねて、p型多結晶シリコン基板1aを酸または加熱したアルカリ溶液中、例えば水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して表面をエッチングすることにより、シリコン基板の切り出し時に発生してp型多結晶シリコン基板1aの表面近くに存在するダメージ領域を取り除く(ステップS10)。
また、ダメージ除去と同時に、またはダメージ除去に続いて、p型多結晶シリコン基板1aの受光面側の表面にテクスチャー構造として微小凹凸を高密度に形成する(図示せず)。
つぎに、テクスチャー構造として微小凹凸が高密度で形成されたp型多結晶シリコン基板1aの裏面側に、ドーピングペースト層32を選択的に形成する(ステップS120、図8−2)。ドーピングペースト層32の主材料は実施の形態1のガラスペースト層21と同様にガラスを主成分とするペースト材料でよいが、p型ドーパントとして機能する元素をドーパントとして混入させる。このような元素としては、後に説明する加熱手順との関係上、特にホウ素(ボロン)が好ましい。
ドーピングペースト層32は、ガラスペースト層21と同様の方法で形成できる。ドーピングペースト層32の形成領域の条件は、実施の形態1において説明したガラスペースト層21の形成領域と同様とされ、少なくとも裏面銀電極10が形成される領域を含む領域とされる。また、ドーピングペースト層32の厚みは、たとえば5μm〜20μm程度とされ、後述するリン拡散処理においてドーピングペースト層32を介したp型多結晶シリコン基板1aへのリンの拡散を防止できる。
実施の形態1におけるガラスペースト層21は、p型多結晶シリコン基板1aの裏面におけるリンの拡散を防ぐことが目的であった。一方、実施の形態2におけるドーピングペースト層32は、pn接合(n型不純物拡散層3)を形成するリンの熱拡散時にp型多結晶シリコン基板1aの裏面におけるリンの拡散を選択的に防ぐマスク層となるとともに、裏面銀電極10の直下領域に第2BSF層31を形成するために設けられる。
つぎに、ドーピングペースト層32を100℃〜200℃の温度で乾燥させ、ドーピングペースト層32の主な有機成分を離脱させる。
その後、実施の形態1の場合と同様に、p型多結晶シリコン基板1aを拡散炉に投入し、リンの熱拡散によるpn接合形成を行う。ここで、実施の形態2では、実施の形態1では例示していない温度制御により、p型多結晶シリコン基板1aにおけるドーピングペースト層32が形成された下部領域への第2BSF層31の形成も同じ工程中で実行する。すなわち、同じ拡散炉内で連続して第2BSF層31と第1BSF層12との形成を実行する。
まず、第1拡散工程として、ホウ素拡散処理を行う。すなわち、p型多結晶シリコン基板1aを拡散炉に投入し、酸化雰囲気中で、例えば800℃〜1100℃の温度加熱する。これにより、ドーピングペースト層32に含有されたホウ素を、p型多結晶シリコン基板1aにおけるドーピングペースト層32が形成された下部領域へ拡散させて、第2BSF層31を形成する。
このホウ素の拡散は、第2BSF層31の形成用の拡散である。このため、pn接合形成用のリンの拡散の深さに対して、同程度またはそれ以上の深さでホウ素を拡散させて第2BSF層31を形成する。この工程での拡散の温度や時間は特に特定するものではないが、シリコン結晶中に対する拡散係数はリンに比べてホウ素の方がやや小さい。また、ホウ素がドーピングペースト層32に含有された状態からの拡散源供給による拡散である。このため、生産性や量産性を考慮する場合、一般的なリン拡散の温度に比べて、50℃〜200℃高い温度で拡散を実行することが好ましい。
p型多結晶シリコン基板1aにおいて、ドーピングペースト層32が形成されていないシリコンの露出面に対しては、リン拡散によるn型不純物拡散層が後述のように圧倒的な雰囲気環境の下で形成される。このため、特段の処理を施さなくても差し支えはないが、ホウ素拡散処理中またはホウ素拡散処理の前に、酸化雰囲気中で5nm〜20nm程度の酸化膜がp型多結晶シリコン基板1aの表面に形成される程度の熱酸化を行って、ドーピングペースト層32からの雰囲気廻り込み等によるホウ素の2次拡散を抑制することが好ましい。
第2BSF層31の形成後、第2拡散工程として、温度を750〜900℃に下げて同拡散炉内でリン拡散を行う。この工程によりp型多結晶シリコン基板1aの表面にリン(P)を拡散させて、n型不純物拡散層3を形成して半導体pn接合を形成する。この工程でのリンの雰囲気濃度は圧倒的に濃くされ、前述の酸化膜を乗り越えてリン拡散が進み、pn接合13n型不純物拡散層3)も問題なく形成される(ステップS130、図8−3)。ただし、それでも酸化膜によりリン拡散の抑制効果が若干は働くので、一般的な処理に比べると、温度・時間・雰囲気濃度のうちの何れかまたは複数を、高濃度拡散側に調整することが好ましい。このような調整として、例えば、温度を数℃〜十℃程度高温にする、拡散ガス雰囲気中のリン化合物の分圧を数〜数十mmHg程度増加させる等が挙げられる。
一方、p型多結晶シリコン基板1aにおいてドーピングペースト層32が形成された部分では、ドーピングペースト層32が酸化膜に比べて十分な厚さを有している。このため、ドーピングペースト層32によりリンの到達が十分に防止され、第2BSF層31が維持される。
なお、リン拡散の加熱において、厳密にはホウ素も拡散が進行する。ただし、前述のとおり、ホウ素はリンに比べて拡散係数が小さいため、前述のホウ素拡散時に比べると拡散の進行は十分小さく、特別の配慮を必要としない。また仮に、無視できないほどホウ素拡散が進行したとしても、むしろBSF機能が増進する方向に働くので、多くの場合は特段考慮しなくても差し支えない。特に厳密なBSFプロファイルが要求される場合に限り、リン拡散の加熱を含めて全体の加熱条件を考慮することが好ましい。
ホウ素拡散処理およびリン拡散処理の加熱により、ドーピングペースト層32の有機成分をほぼ完全に離脱し、ドーピングペースト層32は無機物化する。これにより、ドーピングペースト層32は、リン拡散処理後にシリコン酸化物とほぼ同等の材質になる。
ここで、n型不純物拡散層3の形成直後の表面にはリンの酸化物を主成分とするリンガラス(シリコン酸化膜とリン酸化物との混成物)層が形成されているため、該リンガラス層がフッ酸水溶液等を用いて除去される。なお、ドーピングペースト層32は、前述のとおり、乾燥および拡散炉内での加熱を経ることにより有機成分が離脱して主にシリコン酸化物からなる無機物に変質している。このため、ドーピングペースト層32は、このリンガラス層の除去工程でリンガラス層と同様に除去される(ステップS140)。ここで、p型多結晶シリコン基板1aの裏面において、ドーピングペースト層32が除去された領域にはn型不純物拡散層3は形成されておらず、第2BSF層31が形成されている。
これ以降は、実施の形態1の場合と同様にpn接合分離(ステップS50)〜焼成(ステップS90)の工程を実施することにより、図7に示す実施の形態2にかかる太陽電池セルが得られる。半導体基板1の裏面において裏面アルミニウム電極9が配された部分には、実施の形態1の場合と同様に第1BSF層12が形成される。また、裏面銀電極10の形状、形成面積の条件は実施の形態1に準ずる。
ここで、第1BSF層12は、第2BSF層31の形成方法とは根本的に異なる方法で形成される。すなわち、第1BSF層12は、アルミニウムとシリコンとの合金反応、およびこれに伴う溶融と再固化を通じて形成される。したがって、第1BSF層12は、第2BSF層31に比べて厚く(深く)形成され、一般的には3μm以上の厚さ(深さ)で形成される。
本来、BSF層は同型の導電型同士で濃度が変化する構造を用いて、半導体基板の裏面の一部機能を事実上肩代わりするように機能し、実質的な裏面再結合速度を低減させる。したがって、裏面銀電極10の下部領域にもBSF層を形成すれば、実施の形態1の場合よりも更に高光電変換効率化を図ることができる。また、この構造に一定の条件を設ければ、改善効果をより顕著にすることができる。このため、実施の形態2においては、半導体基板1の裏面側において裏面銀電極10の直下領域に、p型のドーパントが半導体基板1よりも高濃度に拡散された不純物拡散層である第2BSF層31を形成している。
第1BSF層12と第2BSF層31との厚み(深さ)や不純物濃度プロファイルは異なり、その効果も厳密には同一ではない。しかし、何れもBSF層として十分に機能するものであり、製法の簡便さや生産性の高さを含めて考慮すれば、十分なメリットが得られる効果を導くことができる。
領域により異なる不純物濃度プロファイルが混在する場合、この領域がBSF層か否かに関わらず、面積比率に対する関係性は、基本的には図4と同様である。ただし、実施の形態2にかかる太陽電池セルの場合は、第1BSF層12と第2BSF層31とを有することにより、図10に示すように低開放電圧V2の高さが図4に比べて低開放電圧V2’まで底上げされ、低開放電圧領域の面積比率が同じ場合でも高い開放電圧Vocを得ることを可能にする。したがって、実施の形態2にかかる太陽電池セルは、実施の形態1にかかる太陽電池セルよりも高い開放電圧Vocを得ることが可能となる。図10は、第1BSF層12と第2BSF層31とを有する1枚の太陽電池セル内における高開放電圧V1と低開放電圧V2との比率による太陽電池セル全体の開放電圧(セル開放電圧)を算出した結果を示す特性図である。
表3に、第2BSF層31の不純物濃度プロファイルに対する実施の形態2にかかる太陽電池セルの開放電圧Vocの変化をシミュレーションにより求めた結果を示す。表3における開放電圧Vocの単位は[mV]である。不純物濃度のピーク濃度は3条件とした。不純物濃度プロファイルの基本形状は、形成メカニズムの近似モデルとして用いられる3種類、すなわち溶融再結晶化に対応する均一型(深さに因らず濃度が一定)と、固体拡散に対するエラー関数(補正誤差関数(erfc))およびガウシアン分布の3種類を用いた。裏面再結合速度は、裏面銀電極10との接触を想定し、十分に大きい値として1×10cm/秒を用いた。また、表3中、深さ0における数値は、第2BSF層31の無い状態、すなわち実施の形態1にかかる太陽電池セルの場合に相当する。また、半導体基板のp型不純物濃度は、4.7×1015cm−3(比抵抗=3Ωcm)とした。
なお、表中の数値の中には、各元素の固溶度や形成メカニズムの性質を考慮すると、現実にはほぼ不可能と言えるものも含まれているが、あくまで数値計算上の比較として、現実性の乏しい背景の計算結果も敢えて表記する。
Figure 0005868528
表3から分かるように、不純物濃度プロファイルの形状によらず、深い深さ(大きな厚み)で高い開放電圧Vocの計算結果が得られている。固体拡散の場合は、深い(厚い)プロファイル形成は生産性の視点から長時間の加熱を要するため実用的ではなく、深さ1μm程度が現実的な上限である。深さ1μmの場合は、深さ3μmの場合と深さ0の場合との開放電圧Vocの差の約7割程度の数値が得られている。
一方、第2BSF層31の深さが浅い場合は、不純物濃度プロファイルの基本形状の種類による優劣はあるが、第2BSF層31の深さが概ね0.3μmあれば、深さ3μmの場合と深さ0の場合との開放電圧Vocの差の約5割前後の数値が得られる。0.3μm未満の深さでも改善効果は期待できるが、効果の低減が目立つようになる上、その対価として見合う他要素(コストや生産性)でのメリットも得られ難い。したがって、第2BSF層31の深さは0.3μm〜1μmの範囲であることがより好ましい。
裏面銀電極の面積比率については、高光電変換効率側に推移することを尤度と捉えて、面積比率を大きくする方向に図ることも一応は可能だが、コストや生産性で有利に働く効果があるとは言えず、望ましい方向性ではない。裏面銀電極の面積比率は、実施の形態1で述べた範囲と同様とし、より高い開放電圧Vocを得るようにすることが、より好ましい。
上述したように、実施の形態2によれば、ドーピングペースト層32を用いたホウ素拡散により第2BSF層31を半導体基板1の裏面における裏面銀電極10の形成領域を含む領域に形成した後に、ドーピングペースト層32をリン拡散のマスク層としてリンの熱拡散によるpn接合の形成を行う。このため、ドーピングペースト層32の下部領域にはn型不純物拡散層3が形成されず、第2BSF層31が形成される。そして、この第2BSF層31が形成された領域に裏面銀電極10を形成する。また、半導体基板1の裏面においてn型不純物拡散層3が形成された領域は、電極の焼成時にアルミニウムをドーパントとして含んだBSF層12となる。これにより、半導体基板1の裏面に残存するpn接合部分に起因した影響(開放電圧の低下)を防止または大きく抑制できる。
また、実施の形態2においては、半導体基板1の裏面側の面内における裏面銀電極10の面積と、半導体基板1内におけるキャリアの拡散長分だけ裏面銀電極10のパターンから半導体基板1の裏面側の面内において外側に拡張した周辺領域の面積との和を、半導体基板1の裏面側の面積の10%以下とすることにより、低開放電圧領域に起因した太陽電池セル全体の開放電圧の低下を抑制して、太陽電池セル全体の開放電圧を向上させることができる。
また、リンの熱拡散時においては、p型多結晶シリコン基板1aにおけるドーピングペースト層32が形成されていない領域では、リン拡散の重要な副作用であるリンパッシベーションも十分に活用でき、ライフタイムや拡散長などの半導体としての物性を向上させる効果が得られる。
また、ドーピングペースト層32の形成領域を裏面銀電極10の形成領域から拡散長分だけ外側に拡張した範囲とすることにより、ドーピングペーストの使用量を必要最小限の量にすることができる。また、ガラスを主体とした安価なペーストを用いてドーピングペースト層32を形成し、リン拡散と連続してホウ素拡散処理を実施するという簡便な方法を採用しているため、複雑な工程および巨大な設備が不要であり、コストや生産性等の負担が非常に少ない。
したがって、実施の形態2によれば、裏面側のpn接合の残存に起因した特性の低下がより防止されて、より光電変換効率に優れた太陽電池セルが低コストで得られる。
また、上記の実施の形態で説明した構成を有する太陽電池セルを複数形成し、隣接する太陽電池セル同士を電気的に直列または並列に接続することにより、信頼性、光電変換効率に優れた太陽電池モジュールが実現できる。この場合は、たとえば隣接する太陽電池セルの一方の裏面銀電極10と他方の受光面側電極5とを電気的に接続すればよい。
以上のように、本発明にかかる光起電力装置およびその製造方法は、裏面銀電極の下部領域に残存する不純物拡散層の影響の防止または抑制に有用である。
1 半導体基板、1a p型多結晶シリコン基板、2 p型多結晶シリコン基板、3 n型不純物拡散層、4 反射防止膜、5 受光面側電極、6 表銀グリッド電極、7 表銀バス電極、7a 銀ペースト、8 裏面側電極、9 裏面アルミニウム電極、9a アルミニウムペースト、10 裏面銀電極、10a 銀ペースト、10e 周辺領域、11 合金部、12 p+層(BSF(Back Surface Field)層),第1BSF層、13 pn接合、21 ガラスペースト層、31 第2BSF層、32 ドーピングペースト層、103 n型不純物拡散層。

Claims (12)

  1. 一面側にn型の不純物元素が拡散されたn型不純物拡散層を有するp型の半導体基板と、
    前記一面側に形成されて前記n型不純物拡散層に電気的に接続する第1電極と、
    アルミニウムを含む材料からなるアルミニウム系電極と銀を含む材料からなる銀系電極とを含んで前記半導体基板の他面側に当接して形成された第2電極と、
    前記半導体基板の他面側の表層における前記銀系電極の下部領域に形成され、p型の不純物元素を前記半導体基板よりも高い濃度で含むp型不純物高濃度部と、
    前記半導体基板の他面側の表層における前記アルミニウム系電極の下部領域に形成され、p型の不純物としてアルミニウム元素を前記半導体基板よりも高い濃度で含むアルミニウム高濃度部と、
    を備え、
    前記半導体基板の他面側における前記銀系電極との接触部分のn型の不純物元素の濃度が、前記n型不純物拡散層におけるn型の不純物元素の濃度よりも低く、
    前記アルミニウム高濃度部の深さが、前記p型不純物高濃度部の深さよりも深く、
    前記半導体基板の他面側の面内における前記銀系電極の面積と、前記半導体基板内におけるキャリアの拡散長分だけ前記銀系電極のパターンから前記半導体基板の他面側の面内において外側に拡張した周辺領域の面積との和が、前記半導体基板の他面側の面積の10%以下であること、
    を特徴とする光起電力装置。
  2. 前記半導体基板の他面側における前記銀系電極との接触部分のn型の不純物元素の濃度が、前記半導体基板におけるp型の不純物元素の濃度よりも低いこと、
    を特徴とする請求項1に記載の光起電力装置。
  3. 前記p型不純物高濃度部の深さが0.3μm以上、1.0μm以下であること、
    を特徴とする請求項1に記載の光起電力装置。
  4. 前記アルミニウム高濃度部の深さが3μm以上であること、
    を特徴とする請求項3に記載の光起電力装置。
  5. 前記銀系電極は、前記半導体基板の他面側の面内において断続的な形状で複数個に分割されてなり、
    前記複数個に分割された銀系電極の面積の合計が、前記半導体基板の他面側の面積の2%以上であること、
    を特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の光起電力装置。
  6. 前記断続的な形状が、島状、円形状、矩形状のうちのいずれか1つまたは複数であること、
    を特徴とする請求項5に記載の光起電力装置。
  7. p型の半導体基板の表面にn型の不純物元素を拡散して前記半導体基板の表面にn型不純物拡散層を形成する第1工程と、
    前記n型不純物拡散層に電気的に接続する第1電極を前記半導体基板の一面側に形成する第2工程と、
    アルミニウムを含む材料からなるアルミニウム系電極と銀を含む材料からなる銀系電極とを含む第2電極を前記半導体基板の他面側に当接させて形成するとともに、前記半導体基板の他面側に形成された前記n型不純物拡散層の導電型を反転させる第3工程と、
    を含み、
    前記第1工程では、n型の不純物元素を含まないマスク層を前記半導体基板の他面側における前記銀系電極の形成領域を含む領域であって前記銀系電極の形成領域から0.5mm以上2mm以下の拡張幅で外側に広げた範囲の領域に形成した状態でn型の不純物元素を含むガスを用いた熱拡散を実施することにより、前記半導体基板における前記マスク層の下部領域以外の領域に前記n型不純物拡散層を形成し、
    前記第3工程では、前記銀系電極を前記半導体基板の他面側における前記n型不純物拡散層が形成されていない領域に形成すること、
    を特徴とする光起電力装置の製造方法。
  8. 前記マスク層が、p型の不純物元素を含むドーピングマスク層であり、
    前記第1工程では、前記半導体基板の他面側における前記ドーピングマスク層の下部領域に前記ドーピングマスク層からp型の不純物元素を熱拡散させて、p型の不純物元素を前記半導体基板よりも高い濃度で含むp型不純物高濃度部を形成した後に、前記n型不純物拡散層を形成すること、
    を特徴とする請求項7に記載の光起電力装置の製造方法。
  9. 800℃以上、1100℃以下の温度で前記半導体基板の加熱を行うことにより前記ドーピングマスク層からp型の不純物元素を熱拡散させる第1拡散工程の後に、750℃以上、900℃以下の温度で前記半導体基板の加熱を行うことにより前記n型の不純物元素を熱拡散させて前記n型不純物拡散層を形成する第2拡散工程を行うこと、
    を特徴とする請求項8に記載の光起電力装置の製造方法。
  10. 前記第1拡散工程では、酸素を含有して前記半導体基板の熱酸化反応が生じる環境で加熱処理を行うことにより前記半導体基板の表面に酸化膜を形成すること、
    を特徴とする請求項9に記載の光起電力装置の製造方法。
  11. 前記マスク層は、ガラスを主体とするペーストにより形成されること、
    を特徴とする請求項7から10のいずれか1つに記載の光起電力装置の製造方法。
  12. 請求項1から6のいずれか1つに記載の光起電力装置の2つ以上が電気的に直列または並列に接続されてなること、
    を特徴とする光起電力モジュール。
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