以下に、本発明の実施の形態にかかる太陽電池の製造方法および太陽電池を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池の製造方法で形成された太陽電池を示す図であり、(a)は、上面図、(b)は、(a)のA−A断面図である。図2は、同太
陽電池の製造方法を示すフローチャート、図3(a)から(c)および図4(a)から(c)は、同太陽電池の製造方法を示す工程断面図である。
全体の説明に先立ち、まず、本実施の形態1の太陽電池の製造方法の要旨を説明する。本実施の形態1に係る太陽電池の製造工程では、図1(a)および(b)に示すように、結晶系半導体基板として受光面100Aと裏面100Bを有するn型単結晶シリコン基板100を用いる。n型単結晶シリコン基板100の裏面100Bのあらかじめ決定された一部の領域に第1拡散源として高濃度のリンを含有するドーパントペーストからなる高濃度n型不純物拡散源106を形成し、高濃度n型不純物拡散源106から不純物としてリンを拡散させることによって第1不純物拡散層として高濃度n型不純物拡散層107を形成する。このとき、高濃度n型不純物拡散源106の拡散工程中もしくは拡散前に酸素を供給し、高濃度n型不純物拡散源106が形成されていない領域に熱酸化膜108を形成する。この後、熱酸化膜108および高濃度n型不純物拡散源106上に裏面側誘電体層109として窒化シリコン膜を形成する。そして、高濃度n型不純物拡散源106およびその上に位置する部分の裏面側誘電体層109bをリフトオフして開口hを形成することを特徴とする。そしてこの開口hに負電極113が形成される。また受光面100A側にはグリッド電極112Gとバス電極112Bとからなる正電極112が形成される。一方裏面100B側にも受光面側に対向するグリッド電極とバス電極とからなる負電極113が形成される。
本実施の形態の太陽電池の製造方法では、第1拡散源である高濃度n型不純物拡散源106をリフトオフして開口hとなった部分に電極印刷を行うことで、高濃度n型不純物拡散層107上に対して負電極113を自己整合的に形成できるため、位置合わせの必要がなく、位置ずれによる特性低下を防ぐことができる。
これに対し、例えば、従来のように、第1拡散源である高濃度n型不純物拡散源106から不純物を拡散した後に高濃度n型不純物拡散源106を除去すると、高濃度n型不純物拡散層107とその他の部分を識別しづらく、高濃度n型不純物拡散層107に対して電極を位置合わせするのが困難であった。また、位置ずれを防ぐために高濃度n型不純物拡散層107を負電極113よりも広く形成する必要があった。
また、上記製造方法によれば、n型単結晶シリコン基板100を厚さ方向から見たときの、開口hの大きさおよび形状は、高濃度n型不純物拡散層107の大きさおよび形状と同じである。つまり、負電極113は高濃度n型不純物拡散層107上に過不足なく自己整合的に接触するため、高濃度n型不純物拡散層107が負電極113よりも広い領域に形成される場合に比べて、窒化シリコン膜からなる裏面側誘電体層109aおよび高濃度n型不純物拡散層107間の少数キャリアの再結合が抑制される。その結果、太陽電池特性の向上を見込むことができる。なお裏面側誘電体層109のうち、n型不純物拡散源106上の裏面側誘電体層109bをそれ以外の領域の裏面側誘電体層109aと分けて記載しているが、それ以外の領域の裏面側誘電体層109aを単に裏面側誘電体層109ということもある。
また、図1では裏面バス電極は図示していないが、受光面バス電極112Bと裏面バス電極とは、相対向して設けられ、裏面バス電極は受光面バス電極112Bよりも幅広である。かかる構成により、複数の太陽電池セルの受光面側バス電極112Bと裏面側バス電極とをタブ線で接続し、太陽電池モジュールを形成する際、効率よく接続することができる。
また、第1不純物拡散層が形成されない部位には、第1不純物拡散層よりも不純物濃度の低い第2不純物拡散層として低濃度のn型不純物拡散層104を形成してもよい。誘電体層のパッシベーション効果が十分でない場合には、第2不純物拡散層の電界効果によって結晶系半導体基板表面から少数キャリアを遠ざけることで、表面再結合が抑制され、太陽電池特性が向上する。
また、酸素を供給しないプロセスでは、高濃度n型不純物拡散源106が形成されている領域よりも数十μm広い領域まで不純物拡散が行われるが、上記のように拡散温度に到達する前に酸素ガスを導入すると、高濃度n型不純物拡散源106すなわち、高濃度のリンを含有するドーパントペーストで被覆されていない基板表面には熱酸化膜108が形成される。酸素ガスの導入により形成された熱酸化膜108がバリア層として働き、高濃度n型不純物拡散源106の形成された領域以外の領域への不純物拡散が大幅に抑制される。その結果、高濃度n型不純物拡散層107の拡がりを抑制し、幅狭に形成できるとともに、低濃度n型不純物拡散層104の均一性および安定性が向上する。形成した熱酸化膜108は、パッシベーション膜として働くほか、低濃度n型不純物拡散層104の表面近傍に偏析したリンを吸収して表面濃度を低下させるため、n型単結晶シリコン基板100もしくは低濃度n型不純物拡散層104表面の再結合速度を減少させ、開放電圧が向上する。
実施の形態1の工程では、熱酸化膜108の形成後は別途不純物拡散等を行わず、上から誘電体層を形成することで、誘電体層で覆うことになる。このため、熱酸化膜108内には不純物拡散されることなく、パッシベーション効果を維持することができる。このように、高濃度n型不純物拡散源106の拡散工程中に酸化を行う場合、昇温工程中に酸素ガスを導入するだけで、高濃度n型不純物拡散層107と熱酸化膜108を同時に形成できるため、工数の増大なしに、熱酸化膜と誘電体層の積層構造からなる高品質パッシベーション膜を形成することができる。
ここで、低濃度n型不純物拡散層104上もしくは裏面100B上に熱酸化膜を形成すること自体は、高濃度n型不純物拡散層107の形成後にも行うことはできる。しかしながら、高濃度n型不純物拡散層107形成後に酸化を行うと、高濃度n型不純物拡散源106および裏面100Bの間の僅かな隙間から酸素が入り込み、特に高濃度n型不純物拡散層107表面は酸化速度が速く、高濃度n型不純物拡散層107の表面濃度が低下することがある。これにより高濃度n型不純物拡散層107と裏面電極との接触抵抗が増加するため、F.F.特性の低下を招くおそれがある。
一方、高濃度n型不純物拡散層107の形成前もしくは形成中に酸化を行えば、n型不純物拡散源106直下が僅かに酸化されていたとしても、その後の高濃度n型不純物拡散源106からの拡散によって十分リンが供給されるため、形成される高濃度n型不純物拡散層107の表面濃度の低下は生じない。
また、裏面側誘電体層109は高濃度n型不純物拡散源106からの不純物拡散後に形成することができるため、裏面側誘電体層109は900℃以上の高温耐性を有する必要がない。そのため、裏面側誘電体層109として種々の材料を幅広く用いることができ、パッシベーション効果を最大限に得ることができる。ここで、好ましくは、第1拡散源であるリン含有ドーパントペーストからなる高濃度n型不純物拡散源106はn型単結晶シリコン基板100に直接接する。もしくは、ごく薄い5nm以下の酸化シリコン膜などの誘電体層を間に挟んでもよい。第1拡散源と結晶系半導体基板の間に厚い誘電体層が形成されていると、第1拡散源から拡散する不純物が結晶系半導体基板内に十分拡散されず、所望の表面不純物濃度および拡散深さを得ることが難しい。
第1拡散源および第1拡散源上に位置する部分の誘電体層をリフトオフする方法として、ウエットエッチングもしくはレーザー照射を用いることができる。ウエットエッチングを用いることで、受光面側の拡散源であるBSG(ボロンドープシリコンガラス:Boron Silicate Glass)膜などの膜と同時にエッチングすることができ、作業性が良好である。また実施の形態3で後述するが、レーザー照射を行うことにより、エッチング耐性の低い誘電体層の開口も容易に実現可能である。
以下に、添付した図面を参照して、本発明に係る太陽電池の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。図3(a)から(c)および図4(a)から(c)は、実施の形態1に係る太陽電池の製造工程を示す工程断面図である。
まず、n型単結晶シリコン基板100を用意する。結晶シリコン基板は、シリコンインゴットをワイヤーソー等による機械的切断法を用いてカットおよびスライスして製造されるため、表面には汚染あるいはダメージが残存している。そこで、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ溶液を用いたウェットエッチングプロセスにより、n型単結晶シリコン基板100の表面に存在するダメージ層を除去する。その後、n型単結晶シリコン基板100の表面にテクスチャ構造と呼ばれる微小な凹凸構造を形成する。テクスチャ構造の形成には、アルカリ溶液および添加剤を用いる。表面の微小な凹凸構造によって、基板に入射する光が、基板表面で多重反射し、光の反射損失を低減することができる。加えて、光路長の増加により光吸収が増大する。その結果、短絡電流の向上が見込める。なお、図面には簡単のため、テクスチャ構造を示していない。テクスチャ構造形成後に、例えばRCA洗浄、SPM(Sulfuric Acid Hydrogen Peroxide Mixture)洗浄、HPM(Hydrochloric Acid Hydrogen Peroxide Mixture)洗浄を行い、基板表面に付着している有機物あるいは金属汚染等による付着物を取り除く。
次に、図3(a)に示すように、ステップS100で、n型単結晶シリコン基板100の受光面100A上に、p型不純物拡散層103を形成する。n型単結晶シリコン基板100上にBBr3を用いた気相反応あるいは、B2H6を用いた大気圧化学堆積(Air Pressure Chemical Vapor Deposition:APCVD)法等の気相法によってBSG膜を形成した後、拡散炉中でボロンを熱拡散させる。また、イオン注入によって基板内にボロンを打ち込み、その後拡散炉中で熱拡散させてもよい。このとき、形成されたp型不純物拡散層103のシート抵抗は、例えば50以上150Ω/□未満とするのが望ましい。シート抵抗は、拡散層内での少数キャリア再結合あるいは光吸収、電極とのコンタクト抵抗を考慮して決定する。
BSG膜101からなるp型不純物拡散源形成にAPCVDを用いる場合には、BSG膜をn型単結晶シリコン基板100の受光面100Aのみに形成することができる。ただし、基板端面および裏面にもわずかに回り込むため、BSG膜形成後に0.5%以上1.0%未満程度のフッ酸で裏面の回り込み部を除去することが好ましい。また、p型不純物拡散源形成後には、誘電体膜としてNSG(ノンドープシリコンガラス:Non doped Silicate Glass)膜102を形成することが好ましい。NSG膜102がキャップ層の働きをしてBSG膜101からなるp型不純物拡散源中のボロンが気相中に脱離するのを防ぐため、ボロンを効率的に拡散することができる。また、NSG膜102はn型単結晶シリコン基板100裏面100Bにn型不純物拡散層を形成する際の、拡散バリア層としても働く。p型不純物拡散源であるBSG膜101、NSG膜102のそれぞれの膜厚は、例えば30nm以上150nm未満および100nm以上500nm未満である。これらの膜厚は、薄すぎても拡散源およびキャップ層あるいはバリア層としての役割を果たすことができず、厚過ぎると形成および除去が困難となるため、上記範囲とするのが望ましい。
また、p型不純物拡散源としてのBSG膜101の形成にBBr3気相反応を用いる場合には、BSG膜が受光面100Aだけではなく裏面100B側にも形成されるため、受光面100AのBSG膜上に熱酸化膜あるいは窒化膜によるバリア層を形成した後、裏面側のBSG膜をフッ酸で除去した後、p型不純物拡散層103をフッ硝酸あるいは水酸化ナトリウム等の処理剤で片面除去する。ここで、窒化膜は、例えばシランガスおよび窒素ガスもしくはアンモニアガスを用いたプラズマCVD法により形成することができる。なお、これらのバリア層は、後のリン拡散時にバリア層としても働くため、50nm以上の厚さで形成しておくことが好ましい。
次に、図3(b)に示すように、ステップS101で、n型単結晶シリコン基板100の裏面100B上に、低濃度n型不純物拡散層104を形成する。まずn型単結晶シリコン基板100の裏面100Bの自然酸化膜をフッ酸で除去する。基板上にPOCl3気相反応あるいは、PH3を用いたAPCVD等の気相法によってPSG(リンドープシリコンガラス:Phosphorus Silicate Glass)膜105を形成した後、拡散炉中でリンを熱拡散させる。その後、PSG膜105を、フッ酸を用いて完全に除去する。例えば、POCl3気相反応によってPSG膜105を形成する場合には、基板を拡散炉内に導入し、窒素ガスを流しながら拡散温度まで昇温する。リンの場合、拡散温度は例えば750℃以上900℃未満である。拡散温度に達したらPOCl3をバブリングさせて窒素ガス、酸素ガスと合流させ、炉内に導入する。例えば1から60分程度温度を維持して、PSG膜105を形成と同時にリンを拡散させる。その結果、低濃度n型不純物拡散層104が形成される。ここで、低濃度n型不純物拡散層104のシート抵抗は、100Ω/□以上400Ω/□以下とするのが好ましい。
次に、ステップS102で、形成された低濃度n型不純物拡散層104上の一部に高濃度n型不純物拡散源106を櫛形パターン状に形成し、乾燥させる。高濃度n型不純物拡散源106の形成方法には、スクリーン印刷法、インクジェットプリント法等の成膜方法を用いることができる。拡散源の乾燥は、例えばコンベア式リフロー炉で200℃10分間行う。高濃度n型不純物拡散源106のパターン幅は、最終的に電極開口幅となるため、20μm以上100μm未満であることが好ましい。また、高濃度n型不純物拡散源106の膜厚は、例えば1μm以上20μm未満である。高濃度n型不純物拡散源106の櫛形パターン間のピッチは、例えば0.3mm以上3.0mm未満である。
次に、図3(c)に示すように、ステップS103で、乾燥後、n型単結晶シリコン基板100を拡散炉に導入し、窒素ガスを流しながら900℃以上1100℃未満の温度まで昇温し、窒素ガスおよび酸素ガス混合雰囲気下で一定時間保持することにより、高濃度n型不純物拡散源106の直下に高濃度n型不純物拡散層107が形成されるとともに、高濃度n型不純物拡散源106が形成されていない領域に、熱酸化膜108が形成される。酸素ガス流量は、例えば窒素ガスおよび酸素ガスからなる混合ガスの全体ガス流量の10%以上80%以下、望ましくは、10%以上40%未満である。酸素ガス流量の増加につれて、低濃度n型不純物拡散層104上に熱酸化膜108が形成される速度は増加する。熱酸化膜108は低濃度n型不純物拡散層104の表面および表面近傍に存在するリンを吸収し、表面濃度を低下させるため、酸素ガス流量が多すぎると低濃度n型不純物拡散層104の電界効果を弱めることになる。そのため、酸素ガス流量は全体の10%以上40%未満とするのが望ましい。熱処理時間は、例えば、1分から60分である。このとき、高濃度n型不純物拡散層107のシート抵抗は、電極との接触抵抗等の抵抗を考慮して、例えば5Ω/□以上50Ω/□以下とする。なお、実施の形態1では窒素ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたが、酸素ガスとアルゴンガスなどの不活性ガスとの混合ガスを用いてもよく、酸素ガスの含有量が上記値を満足していればよい。
また、酸素ガスの供給は、昇温工程で開始してもよく、かつ拡散温度到達以前に供給を停止してもよい。拡散温度到達後も酸素の供給を継続すると、低濃度拡散層上への酸化膜形成が進行すること、そして拡散源から気相中に拡散するリンが酸化されて基板表面に付着するリン原子量が減少すること、等によって低濃度拡散層への拡散源からのリン拡散を抑制することができる。ただし、低濃度拡散層の表面リン濃度が低下しすぎる恐れもある。このため、酸素の供給を途中で停止してもよい。不純物拡散源の元素の拡散特性に応じて、酸素の供給、停止のタイミングを調整することで所望の拡散プロファイルを得ることが可能となる。
その後、図4(a)に示すように、ステップS104で、熱酸化膜108および高濃度n型不純物拡散源106の上に裏面側誘電体層109を形成する。裏面側誘電体層109は、低濃度n型不純物拡散層104のパッシベーション膜として働き、その材料は例えば窒化シリコン、窒酸化シリコン、酸化アルミニウム、非晶質シリコン、微結晶シリコン等の誘電体層である。また、裏面側誘電体層109は、複数の膜の積層構造であってもよい。例えばプラズマCVD法を用いて窒化シリコン膜を形成してもよい。窒化シリコン膜は反射防止膜として働くとともに、窒化シリコン膜を形成する際に注入された水素が、n型単結晶シリコン基板100と酸化シリコン膜の界面に存在する未結合手等の欠陥を終端し、パッシベーション効果を向上させることができる。そのため、少数キャリアの再結合が抑制され、太陽電池特性が向上する。
また、裏面側誘電体層109は、高濃度n型不純物拡散源106から不純物を拡散した後に形成されるため、裏面側誘電体層109は非晶質シリコン膜、微結晶シリコン膜等の熱耐性が900℃以下の材料からも選択することができる。したがって、パッシベーション効果が最大限になるように裏面側誘電体層109を選択できるため、太陽電池特性の向上に有利である。
次に、図4(b)に示すように、ステップS105で、高濃度n型不純物拡散源106およびその上に位置する裏面側誘電体層109bをフッ酸を用いたウエットエッチングにより除去し、リフトオフにより開口する。高濃度n型不純物拡散源106は、裏面側誘電体層109aに比べ10から50倍程度の厚さを持つため、裏面側誘電体層109bの下に位置していても、フッ酸と容易に接触することができる。裏面側誘電体層109として、n型不純物拡散源106よりもエッチングレートの低い材料、例えば窒化シリコン膜を選択すれば、高濃度n型不純物拡散源106は容易に除去される。同時に、その上に位置する裏面側誘電体層109bもリフトオフされ、開口hが形成される。このとき、裏面側誘電体層109の厚さは、n型不純物拡散源106除去後に、パッシベーション効果を維持できる膜厚以上が残存するよう設定しておく。例えば、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層構造の場合、フッ酸処理後の総膜厚が70から90nm程度になるように設定する。また、このとき、受光面上に堆積しているp型不純物拡散源としてのBSG膜101およびNSG膜102もフッ酸で同時に除去する。
次に、図4(c)に示すように、ステップS106で、受光面100Aのp型不純物拡散層103の上に受光面側誘電体層110および反射防止膜111を形成する。受光面側誘電体層110として、例えば酸化膜または、原子層堆積法(Atomic LayerDeposition:ALD)あるいはCVD法により形成する酸化アルミニウム膜等の誘電体層を用いることができる。特に酸化アルミニウム膜は負の固定電荷を有しており、p型不純物拡散層に対して優れたパッシベーション効果を発揮することが知られている。酸化アルミニウム膜の膜厚は、例えば2nm以上50nm未満である。
受光面側誘電体層110の上には、反射防止膜111を形成する。反射防止膜111として、例えばプラズマCVD法で形成した窒化シリコン膜を用いる。酸化アルミニウム膜の厚さに応じて、太陽光スペクトルに対して最適な膜厚、例えば30nm以上80nm未満程度に設計する。
最後に、ステップS107により、n型単結晶シリコン基板100の受光面100Aおよび裏面100Bに正電極112および負電極113を形成し、図1(a)および(b)に示した太陽電池が形成される。受光面100A側の正電極112は金属粒子およびガラス粒子を含んだペーストをスクリーン印刷法等の塗布法によって櫛形パターン状に塗布し、乾燥させる。裏面100B側の負電極113は、銀を含んだペーストを開口hに塗布および乾燥させる。ペーストの乾燥は、例えば乾燥オーブン中で200℃10分程度で行う。乾燥後、正電極112および負電極113を800℃程度の高温で同時に熱処理し、焼成する。このとき、正電極112のペーストはガラス粒子を含んでいるため、焼成により金属が受光面側誘電体層110あるいは反射防止膜111を貫通し、p型不純物拡散層103に電気的に接続する。一方、負電極113のペーストはガラス粒子を含まないため、高温で焼成しても金属は誘電体層を貫通しない。そのため、裏面100Bの電極ペーストが裏面側誘電体層109a上に形成されても、その部分で特性が低下するおそれはない。したがって、裏面100Bの電極ペーストは開口hよりも広い範囲に塗布することができ、また裏面100B全面に塗布してもよく、これにより負電極113を高濃度n型不純物拡散層107上に位置合わせすることなく形成することができる。また、ペースト使用量を考慮すると、開口hより左右最大100μmはみ出す程度、好ましくは左右10μm前後はみ出すように形成するとよい。はみ出し程度は、印刷機の精度によって適宜変化させてよい。以下に、従来の電極位置合わせ方法を記し、本実施の形態の効果について従来との比較を行う。
従来の裏面電極形成においては、高濃度n型不純物拡散層のパターン上に電極マスクのパターンを印刷機のアライメント機能で合わせ、誘電体層の上からペーストを塗布および乾燥し、高温焼成によって誘電体層を貫通させることで、電極を高濃度n型不純物拡散層に接続していた。しかし、まず高濃度n型不純物拡散層の視認性が悪いと、高濃度n型不純物拡散層のパターンに電極パターンが一致せず、位置ずれが生じることがあった。また、印刷機のアライメント機能で正確に位置合わせができたとしても、ペーストの特性あるいは印刷マスクの伸び等の原因によって高濃度n型不純物拡散層のパターンから電極パターンがずれたりはみ出したりする可能性があった。また、そのようなずれを防ぐために高濃度n型不純物拡散層を電極よりも左右5μmから50μm程度広めに形成すると、高濃度n型不純物拡散層と誘電体層間のキャリア再結合が増加し、特性が低下するといった問題があった。
一方、本実施の形態では、ペーストを開口hよりも広い範囲に塗布することによって、高濃度n型不純物拡散層107の上に、負電極113を位置合わせすることなく形成することができる。また、負電極113を開口hより広く形成しても、負電極113は裏面側誘電体層109aを貫通する形状でないため、開口hをはみ出した電極下で再結合が増加することはなく、開放電圧低下のおそれが小さい。更に、高濃度n型不純物拡散層107と開口hは基板の厚さ方向から見て同じ位置、形状、および大きさであるため、高濃度n型不純物拡散層を負電極よりも広めに形成する従来の方法に比べると、高濃度n型不純物拡散層107の、基板の裏面方向から見たときの面積を抑えることができる。その結果、開放電圧が向上する。
また、従来の方法では、高濃度n型不純物拡散層を形成する工程と、その上に電極を合わせる工程の、2つの工程においてばらつきが生じる可能性があり、ばらつきが重畳することによって大きなずれが生じることがあった。しかしながら、本実施の形態の自己整合プロセスによれば、高濃度n型不純物拡散層の形成時にばらつきが生じても、実際に形成されたパターンの通りに開口および電極形成が行われるため、ばらつきが二重に生じることがなく、安定した位置合わせ精度および特性が得られる。
また、負電極113として、低温焼成銀ペーストを用いてもよい。リフトオフ工程でコンタクト領域の誘電体層が除去されているため、負電極113の焼成工程で誘電体層を貫通させる必要がない。このため、低温で焼成することができ、裏面側誘電体層109のパッシベーション性能を維持することができる。この場合には、正電極112を先に印刷および焼成した後、負電極113の印刷および乾燥を行って電極を形成する。具体的には、開口hを形成した後、受光面100Aに金属粒子およびガラス粒子を含んだペーストを印刷および乾燥する。続いて受光面100Aのペーストを800℃程度の高温で焼成し、p型不純物拡散層103と正電極112を接続する。正電極112の形成後に、高濃度n型不純物拡散層107の露出部に低温焼成銀を印刷し、200℃程度の低温で乾燥させることにより、負電極113を形成する。
以上のように実施の形態1では、高濃度不純物拡散層である第1不純物拡散層上に電極を自己整合的に形成し、拡散中に形成された熱酸化膜と、拡散後に形成された誘電体層との積層構造体をパッシベーション膜として用いるため、パッシベーション効果を最大限に引き出し、変換効率の高い太陽電池の製造方法を得ることができるという効果を奏する。熱酸化膜は拡散に先立ち形成しても良い。
実施の形態2.
以下に、実施の形態2について図面を参照して説明する。図5は、本発明の実施の形態2にかかる太陽電池の製造方法で形成された太陽電池を示す断面図である。なお、上面図は図1(a)と同様である。図6は、同太陽電池の製造方法を示すフローチャート、図7(a)および(b)は、同太陽電池の製造方法を示す工程断面図である。図8は、拡散ステップS103における、拡散炉の温度プロファイルを示す図である。プロセスの大部分は実施の形態1と同様であり、低濃度n型不純物拡散層104を形成せず、n型単結晶シリコン基板100の裏面直上に誘電体層である熱酸化膜108を形成する点が異なる。
本実施の形態では、受光面100Aにp型不純物拡散層103を形成した後、低濃度n型不純物拡散層を形成するステップS101を実施することなく、図7(a)に示すように、ステップS102で裏面100Bに高濃度n型不純物拡散源106を形成する。
そして、図7(b)に示すように、ステップS102で基板を拡散炉内に導入し、酸素を流して酸化膜を形成した後、高濃度n型不純物拡散源106から不純物を拡散する。たとえば、拡散時間は1から60分間である。このときの酸素ガス流量は、望ましくは全体ガス流量の80%以上100%未満である。実施の形態2においても、例えば窒素ガスおよび酸素ガスからなる混合ガスとした。
本実施の形態の拡散工程においては、タイムチャートを図8に実線aで示したように、温度と雰囲気を切り替えながら昇温と、加熱と、降温と、を行う。まず待機温度T0に予熱してある熱処理炉内に、裏面100B側に高濃度の第1不純物拡散源であるリン含有ドーパントペーストからなる高濃度n型不純物拡散源106を形成したn型単結晶シリコン基板100を投入し、窒素を供給しながら酸化温度T1まで昇温する。裏面100B側への熱酸化膜108の成膜雰囲気は、第1の温度である酸化温度T1で、窒素から酸素へ供給を切り替えてあらかじめ決められた一定時間t0維持し、雰囲気を酸素に置換するとともに、第1の工程である酸化工程を実施する。実施の形態2では、酸化温度T1は、800℃としたが、酸化温度T1は、700℃から1100℃の温度帯が用いられ、時間t0は1分から20分程度とする。好ましくは、酸化温度T1は、700℃から850℃とするのがよい。この酸化温度T1が700℃に満たないと酸化速度が遅く、850℃を超えると、裏面が十分に酸化膜で被覆される前に拡散が進み、裏面への付着物の形成を免れえないことがある。また、この酸化温度T1は一定温度で実施することで、安定して確実に裏面100Bを覆う熱酸化膜108を形成することができる。
熱処理炉内に投入されたn型単結晶シリコン基板100は雰囲気中に含まれる酸素によって表面が酸化される。該酸化は、受光面100A側はp型不純物拡散源であるBSG膜101とNSG膜102に覆われているために、膜に覆われていない裏面100B側で選択的に進行する。本実施の形態2では熱処理炉において、高濃度のn型拡散源からの不純物拡散が生じる前に熱処理炉内に酸素を供給し、裏面100Bへの意図しない横方向への不純物拡散を防止するための熱酸化膜108を形成する工程が含まれる。そのため、実施の形態1に比べて工程時間は増加するが、n型不純物拡散源からの意図しない不純物拡散の抑制効果が向上するほか、所望の熱酸化膜108の形成温度あるいは膜厚を選択することができる。
なお、酸化工程は第1の温度T1においては、同一温度に維持したが、酸素供給開始後昇温し、拡散温度である第2の温度T2への昇温工程で実施してもよい。変形例としてタイムチャートを図8に破線bで示す。この場合は工程の短縮化が可能となるが、雰囲気が酸素で完全に置換される前に昇温を開始するため、基板間あるいは基板面内で酸化膜厚あるいはリン濃度にムラが生じ易い。
続いて第2の温度である拡散温度T2まで昇温し、例えば窒素、アルゴンなどの不活性ガスを含む雰囲気中で加熱し一定の時間t1維持し、第2の工程である拡散工程を実施する。本実施の形態では、拡散温度T2は、950℃としたが、拡散温度T2は、800℃から1100℃の温度帯が用いられ、時間t1は1分から60分程度とする。
前述のように、熱酸化膜108が裏面100Bに選択的に形成された後、高濃度n型不純物拡散源106からの不純物拡散が進行するような温度、例えば900℃から1100℃、に到達させ、所望の高濃度n型不純物拡散層107を形成する。この時の第2の温度T2は不純物の種類によって決定される。
そして不純物拡散が終了した後に、第3の工程では酸素の供給を止め、再び窒素雰囲気下で降温を開始する。
上記プロセスにより、n型不純物拡散源106の位置する部分以外には不純物を拡散させることなく、パッシベーション膜としての熱酸化膜108を形成することができる。この構造はPERL(Passivated Emitter and Rear Locally diffused)と呼ばれる構造であり、パッシベーション膜のパッシベーション効果が高い場合には、負電極113直下である高濃度n型不純物拡散層107以外には不純物が拡散されていない方が、拡散層内での少数キャリア再結合を防げるため、開放電圧の向上に有効である。また、n型不純物拡散源106以外の部分には拡散層が形成されないため、n型単結晶シリコン基板100の端面あるいは受光面100Aに不純物が回り込みにくく、p型不純物拡散層の反転が起こりにくい。したがって、リーク電流を減少させることができるため、信頼性が向上する。
そして、実施の形態1と同様、最後に、n型単結晶シリコン基板100の受光面100Aおよび裏面100Bに正電極112および負電極113を形成し、図5に示した太陽電池が形成される。
本実施の形態では、特に熱酸化膜108の存在により、横方向への拡散が抑制され、第1不純物拡散層である高濃度n型不純物拡散層107は、n型単結晶シリコン基板100の裏面100Bの一部から、受光面100A方向に伸びる。そして負電極113が開口h内で高濃度n型不純物拡散層107にコンタクトするとともに、裏面100B上を覆う裏面側誘電体層109aである窒化シリコン膜の一部上に突出する。
実施の形態3.
以下に、実施の形態3について図面を参照して説明する。図9は、本発明の実施の形態3にかかる太陽電池の製造方法を示すフローチャートである。実施の形態1と大部分は同様であり、n型不純物拡散源のリフトオフステップS105に代えて、n型不純物拡散源レーザー開口ステップS105Sを用い、レーザー照射により全面もしくは一部除去する点のみ異なるため、プロセスの詳細は省略する。
実施の形態3においては、n型不純物拡散源106およびその上に位置する裏面側誘電体層109bを、ウエットエッチングに代えてレーザー照射により全面もしくは一部除去することを特徴とする。n型不純物拡散源レーザー開口ステップS105Sでは、裏面側誘電体層109を形成した後、n型不純物拡散源106に対してレーザーを照射する。このとき、n型不純物拡散源106すなわちリン含有ドーパントペーストに対して選択的にエネルギー吸収が生じる波長のレーザーを選択する。これにより、n型不純物拡散源106が選択的に除去され、その上に位置する裏面側誘電体層109bも除去されることになり、高濃度n型不純物拡散層107が露出する。実施の形態1と同様に、高濃度n型不純物拡散層107が露出した開口部に電極印刷を行う。印刷ペーストは、開口部より左右最大100μmはみ出す程度、好ましくは左右10μm前後はみ出すように形成するとよい。
レーザーとしては、例えばYAGレーザー、YVO4レーザー、CO2レーザーを用いることができる。また、レーザーの種類、エネルギー密度、パルス発振周波数、照射時間を調整することにより、n型単結晶シリコン基板100にダメージを与えることなく、開口することができる。ウエットエッチングの場合には、フッ酸等のエッチャントに対する耐性の高い材料を裏面側誘電体層109として用いることになるが、レーザー照射の場合には、エッチャント耐性の低い材料、たとえば酸化シリコン膜あるいは酸化アルミニウム膜も単膜で用いることができる。
この方法によれば、ウエットエッチングで他の層が劣化するのを防ぐことができるためより信頼性の向上をはかることができる。なお、実施の形態3では、レーザ照射により高濃度n型不純物拡散源106に対してエネルギー吸収が生じる波長のレーザ照射で高濃度n型不純物拡散源106を除去するとともにその上層の裏面側誘電体層109bを同時除去するものであるが、本明細書ではこれも広義のリフトオフ工程とする。
実施の形態4.
以下に、実施の形態4について図面を参照して説明する。図10は、本発明の実施の形態4にかかる太陽電池の製造方法で形成された太陽電池を示す図であり、(a)は、上面図、(b)は、(a)のB−B断面図である。図11は、同太陽電池の製造方法を示すフローチャート、図12(a)から(c)および図13(a)から(c)は、同太陽電池の製造方法を示す工程断面図である。
実施の形態4は、n型単結晶シリコン基板100に代えてp型単結晶シリコン基板200を用いたプロセスである。そのため、導電型が実施の形態1と逆になっている点以外はほぼ同様であり、詳細な説明は省略する。実施の形態4の太陽電池の製造方法では、図12(a)に示すように、p型単結晶シリコン基板200の受光面200A側に第2導電型半導体層であるn型不純物拡散層203を形成する。そして図12(b)に示すように、p型単結晶シリコン基板200の裏面200B上に、低濃度p型不純物拡散層204を形成するための、p型不純物拡散源205を形成する。この後、高濃度p型不純物拡散源206を櫛形パターン状に形成し、乾燥後、拡散炉に入れる。そして、図12(c)に示すように窒素ガスおよび酸素ガス混合雰囲気下で高濃度p型不純物拡散源206から不純物を拡散することにより高濃度p型不純物拡散層207および熱酸化膜208を形成する。そして、図13(a)に示すように、高濃度p型不純物拡散源206の上から裏面側誘電体層209を形成する。この後、図13(b)に示すように、高濃度p型不純物拡散源206上の裏面側誘電体層209bおよび高濃度p型不純物拡散源206をリフトオフし開口hを形成する。高濃度p型不純物拡散源206上以外の裏面側誘電体層209aは残留している。そして図13(c)に示すように、受光面200Aにパッシベーション膜としての誘電体層210、および窒化シリコン膜からなる反射防止膜211を形成する。そして最後にリフトオフにより得られた、開口hに正電極213を形成するとともに、受光面200A側に負電極212を形成し、図10(a)および(b)に示した太陽電池が形成される。そして受光面200A側にはグリッド電極212Gとバス電極212Bとからなる負電極212が形成される。一方裏面200B側にも受光面200A側に対向するグリッド電極とバス電極とからなる正電極213が形成される。
次に、実施の形態4に係る太陽電池の製造工程において、実施の形態1と異なる点を以下に詳細に説明する。図12(a)に示すように、ステップS200により、p型単結晶シリコン基板200の受光面200A上には、n型不純物拡散層203を形成する。この工程では、POCl3を用いた気相反応あるいは、PH3を用いたAPCVD法によってPSG膜201を形成した後、リンを熱拡散させる。また、イオン注入によってリンを打ち込み、熱拡散させてもよい。
p型単結晶シリコン基板200の裏面200B上には、図12(b)に示すように、ステップS201により、低濃度p型不純物拡散層204を形成する。この工程では、BBr3気相反応、B2H6を用いたAPCVD等の気相成長法によってp型不純物拡散源205としてのBSG膜を形成した後、ボロンを熱拡散させる。
BSG膜をフッ酸で除去した後、ステップS202により、形成された低濃度p型不純物拡散層204上の一部に高濃度p型不純物拡散源206を形成する。そして、図12(c)に示すように、ステップS203により、拡散炉中で熱拡散することによって高濃度p型不純物拡散層207を形成する。このときも、実施の形態1から3と同様、拡散炉内に酸素を導入し熱酸化膜を形成する。
その後、図13(a)に示すように、ステップS204により、低濃度p型不純物拡散層204および高濃度p型不純物拡散源206の上に裏面側誘電体層209を形成する。裏面側誘電体層209は、低濃度p型不純物拡散層204上の裏面側誘電体層209aおよび高濃度p型不純物拡散源206の上の裏面側誘電体層209bとで構成されている。p型不純物拡散層に対しては、負の固定電荷を持つ酸化アルミニウム膜が特に高いパッシベーション効果を有しており、例えばALD法で形成した酸化アルミニウム膜とプラズマCVD法で形成した窒化シリコン膜の積層構造とする。
続いて、図13(b)に示すように、高濃度p型不純物拡散源206をリフトオフ開口する、ステップS205により、高濃度p型不純物拡散源206およびその上に位置する裏面側誘電体層209bをウエットエッチングにより除去する。ここで高濃度p型不純物拡散源206上以外の裏面側誘電体層209aは残留する。
次に、図13(c)に示すように、ステップS206により、受光面のn型不純物拡散層203上に誘電体層210を形成する。誘電体層210として、例えば酸化シリコン膜を用いる。誘電体層210の上には、窒化シリコン膜等の反射防止膜211を形成する。
最後に、ステップS207により、p型単結晶シリコン基板200の受光面200Aおよび裏面200Bにそれぞれ負電極212および正電極213を形成し、図10(a)および(b)に示した太陽電池が形成される。負電極212として銀およびガラス粒子を含むペースト、正電極213としてアルミニウム、もしくはアルミニウムと銀を含むペーストを使用する。
本実施の形態においても実施の形態1と同様の効果を奏功するが、p型単結晶シリコン基板200を用いたp型セルの場合にはn型セルに比べ、基板が安価であるため、製造コストを低減することができるという利点がある。
実施の形態5.
以下に、実施の形態5について、図面を参照して説明する。図14は、本発明の実施の形態5にかかる太陽電池の製造方法で形成された太陽電池を示す図であり、(a)は、上面図、(b)は、(a)のC−C断面図である。図15は、同太陽電池の製造方法を示すフローチャート、図16(a)から(c)および図17(a)から(c)は、同太陽電池の製造方法を示す工程断面図である。
実施の形態5においては、エミッタ層を裏面に、裏面電界層を受光面に配したバックエミッタ構造を作製することを特徴とする。実施の形態1とは、各層を形成する面が異なるだけであるため、詳細な説明は省略する。図15のフローチャートも同様である。実施の形態5の太陽電池の製造方法では、図16(a)に示すように、n型単結晶シリコン基板100の裏面100B側に第2導電型半導体層であるp型不純物拡散層103を形成する。そして図16(b)に示すように、n型単結晶シリコン基板100の受光面100A上に、低濃度n型不純物拡散層104を形成する。この後、n型不純物拡散源106を形成し、図16(c)に示すように、窒素および酸素混合雰囲気下でn型不純物拡散源106から不純物を拡散することにより高濃度n型不純物拡散層107および熱酸化膜108を形成する。そして、図17(a)に示すように、n型不純物拡散源106の上から受光面側誘電体層として実施の形態1から4で説明した裏面側誘電体層109を形成する。n型不純物拡散源106の上には、高濃度n型不純物拡散源106上の裏面側誘電体層109b、熱酸化膜108上には高濃度n型不純物拡散源106上以外の裏面側誘電体層109aが形成されている。この後、図17(b)に示すように、高濃度n型不純物拡散源106上の受光面側誘電体層として実施の形態1から4で説明した裏面側誘電体層109bおよびn型不純物拡散源106をリフトオフし開口hを形成する。n型不純物拡散源106上以外の受光面側誘電体層として実施の形態1から4で説明した裏面側誘電体層109aは残留している。そして図17(c)に示すように、裏面100Bにパッシベーション膜としての誘電体層として実施の形態1から4で説明した受光面側誘電体層110、および窒化シリコン膜からなる反射防止膜111を形成する。そして最後に裏面100B側に正電極112を形成するとともに、受光面100A側の、リフトオフにより得られた開口hに負電極113を形成し、図14(a)および(b)に示した太陽電池が形成される。このようにして受光面100A側にはグリッド電極113Gとバス電極113Bとからなる負電極113が形成される。一方裏面100B側にも受光面100A側に対向するグリッド電極とバス電極とからなる正電極112が形成される。
本実施の形態においても実施の形態1と同様の効果を奏功するが、エミッタ層を裏面に形成するため、エミッタ層上に形成するグリッド電極の遮光ロスを考慮しなくて済む。従って、グリッド電極を狭ピッチ化することができ、エミッタ層の高抵抗化が実現できるため、パッシベーション効果を向上させることができるという利点がある。また、n型の裏面電界層を受光面に配す場合、高濃度層が電極より広く形成された場合に比べ、本発明による構造においては光吸収ロスが少ないため、短絡電流の向上につながる。また負電極の形成方法としては、銀ペーストによる印刷法以外に光めっき法を用いることができる。この場合、受光面側に位置する負電極を細線化することができるため、遮光ロスが低下し、短絡電流を向上させることができるという利点がある。
なお、前記実施の形態1から5においては、開口hの形状は、図18に裏面側を示すように、受光面側に位置する正電極112,負電極212と平行に、受光面側に位置する正電極112、負電極212と同程度の幅でライン状に形成されている。そして裏面側に位置する負電極113、正電極213は、受光面側に位置する正電極112、負電極212の幅よりも若干幅広のライン状をなすように形成されている。図18のA−A断面図が、図1(b),図5,図10(b)に相当する。
また、前記実施の形態1から5においては、図19に変形例を示すように、開口hの形状は、受光面側に位置する正電極112、負電極212と平行に、正電極112、負電極212と同程度の直径を有するドット状パターンが間隔を隔ててライン状に配列されて形成されていてもよい。そして裏面側に位置する負電極113、正電極213は、正電極112、負電極212の幅よりも若干幅広のライン状をなすように形成されている。図19のA−A断面図が、図1(b),図5,図10(b)に相当する。
かかる構成によれば、高濃度n型不純物拡散層107が、断面ドット状をなすように、配列されている。また、第1不純物拡散層である高濃度n型不純物拡散層107は、基板の裏面100Bの一部から、受光面100A方向に伸長する。そして裏面側に位置する負電極113が開口h内で高濃度n型不純物拡散層107にコンタクトするとともに、裏面100B上を覆う裏面側誘電体層109aである窒化シリコン膜の一部上に突出する。この際、各コンタクトからの集電を容易にするため、電極をライン状に形成し、各コンタクトを電気的に接続する。これにより、一度の印刷で集電電極を形成できる。なお、実施の形態1から4の場合、裏面電界層が受光面とは反対側に形成されるため、電極を裏面全面に形成してもよい。
従って、高濃度拡散層すなわちn型不純物拡散層107の面積を小さくすることができる。これにより高濃度部による再結合損失を抑制することができ、特性の向上につながる。
また、図19に示す断面ドット状の高濃度n型不純物拡散層107が基板の裏面100B全体に分布された、ドット状の負電極113が開口h内で高濃度n型不純物拡散層107にコンタクトするとともに、裏面100B上を覆う裏面側誘電体層109aである窒化シリコン膜の一部上に突出するように形成する一方で、同一面側である裏面100B上にp型不純物拡散層にコンタクトする正電極を形成した背面取出し型の太陽電池構造を得ることも可能である。
以上説明してきたように、実施の形態1から5によれば、高濃度不純物層の拡散工程において、拡散炉中に酸素を供給するだけで、容易に信頼性の高い選択ドープ構造を形成することができる。拡散温度あるいは、拡散雰囲気などの拡散条件に応じて、酸化雰囲気を調整することで、拡散制御と、酸化条件を制御することができるため、極めて作業性が良好でかつ高精度の電極コンタクト構造を得ることが可能となる。このため、高効率の太陽電池を提供することが可能となる。
なお、前記実施の形態1から5においては、結晶系半導体基板として、n型単結晶シリコン基板100およびp型単結晶シリコン基板200を用いたが、単結晶シリコンに限らず多結晶シリコンあるいは微結晶シリコンでもよい。さらには、SiCなどのシリコン系基板、GaAsなどの化合物半導体基板でもよい。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。