JP5860238B2 - 自動二輪車用空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
従って、そのようなゴム組成物をショルダー部分に用い、グリップ性能を追求した場合、ゴム硬度の低下によって、以下の問題が生じる。
(1)旋回時の腰感の低下
自動二輪車は特に旋回時にトレッドショルダー部にかかる荷重が大きいが、その部分の剛性が低下することにより、旋回時の腰感が低下し、操縦安定性が低下する。
(2)旋回力の低下
自動二輪車の旋回性能を左右する力の要素として、キャンバースラストとコーナリングフォースがあり、これら旋回力は、ゴムの復元力が大きくなるほど増加するので、複素弾性率が高く、正接損失が低く、ゴム硬度の高いゴムの方が有利である。つまり、要求特性が逆であり、旋回力が低下する。
(3)過渡特性の悪化
旋回時、車体を傾け徐々にキャンバー角が増す際、異なるゴム組成物の境界部分では、ゴム硬度等の特性が変化し、過渡特性が悪化する。
従って、旋回時のグリップ性能をさらに改善する場合、これら不利益が障害となる。
本発明の自動二輪車用空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、トレッド部2のタイヤ軸方向端からタイヤ半径方向内方にのびるサイドウォール部3と、サイドウオール部3のタイヤ半径方向内端に位置するビード部4とを具える。また、各ビード部4はその内部にビードコア5が配され、カーカス6がトレッド部2とサイドウォール部3とを通ってビード部4間をのび、ベルト7がカーカス6の半径方向外側かつトレッド部2に配され、トレッドゴム8がベルト7の半径方向外側に配されている。
カーカス6は、少なくとも1枚のカーカスプライ6Aからなり、このカーカスプライ6Aは、トレッド部2とサイドウオール部3とを通ってビード部4間を延びかつ、各ビード部4でビードコア5の廻りを折返されている。そして、その折返し部6bは、ビードエィペックスBaのタイヤ軸方向外面に沿ってタイヤ半径方向外方へ延びている。
なおビードエィペックスBaは、ビードコア5のタイヤ半径方向外側に配され、ビード部4からサイドウォール部3下部までテーパー状に延び、この領域を補強する硬質ゴム部材である。
カーカスプライ6Aは、トッピングゴムでゴム引きされたカーカスコードからなり、カーカスコードはタイヤ赤道Cに対して75〜90度の角度で配されている。カーカス6コードとしては、芳香族ポリアミド、ナイロン、レーヨン、ポリエステルなどの有機繊維コードを用いることができる。なお、軽量化のため、カーカスプライ6Aの枚数を1枚とするのが好ましく、その場合、カーカスコードはタイヤ赤道Cに対して実質的に90度の角度で配する。
ベルト7は、少なくとも1枚のベルトプライからなる。このベルトプライとしては、ゴム引きされた平行配列の補強コードからなるストリップを、補強コードがタイヤ周方向に対して例えば0〜60度の範囲のある所定角度で、所定形状にカットしてなるいわゆるカットプライと、ゴム被覆された1本の補強コードまたは複数本の平行配列された補強コードがタイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋に巻かれてなるいわゆるジョイントレスプライとが挙げられ、要求特性に応じて、それらの一方または両方を組み合わせて使用する。補強コードとしては、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、芳香族ポリアミド等の有機繊維コードが好適であるが、必要に応じてスチールコードも使用しうる。
図1と図2に示されるように、本実施形態のベルト7は、カーカス6に隣接するタイヤ半径方向の内側のベルトプライ7Aとそれより幅広のタイヤ半径方向の外側のベルトプライ7Bとからなる。
トレッドゴム8は、トレッドエッジTE間のトレッド面2aを形成するアウタートレッドゴム9と、該アウタートレッドゴム9のタイヤ半径方向内側に形成されるインナーショルダーゴム10とからなる。
トレッド面2aに沿ってタイヤ軸方向に測ったとき、アウタークラウンゴム9cの幅w1は、トレッド面のトレッドエッジTE間の前記幅Wの30〜80%に形成される必要がある。アウタークラウンゴム9cの幅w1は、前記幅Wの30%未満であると直進走行性能に関与するアウタークラウンゴム9cの配設領域が小さくなり過ぎ、逆に80%を超えると旋回力等に関与するアウターショルダーゴム9sの配設領域が小さくなり過ぎる。このような観点より、前記幅w1は、幅Wの好ましくは40%以上が望ましく、また好ましくは70%以下が望ましい。
アウターショルダーゴム9sは、前記トレッド面2aのうち、アウタークラウンゴム9cが形成する中央部分を除く残部を形成するので、トレッド面2aに沿ってタイヤ軸方向に測ったとき、各アウターショルダーゴム9sの幅w2は、前記幅Wの10〜35%である。
なお、前記「ゴム硬度H」は、JIS−K6253に基づきデュロメータータイプAにより測定したデュロメータA硬さである。
またアウターショルダーゴム9sのトレッドエッジ側の端面9seも、タイヤ軸方向内方へ傾斜している。
エッジカバーゴム14は、前記両端面10e、9seと接合するタイヤ軸方向内面14iと、トレッドエッジTEからタイヤ半径方向内方へ延びサイドウォール部3外面のタイヤ半径方向外端部分を形成するタイヤ軸方向外面14oと、それら内面と外面との間を延びるタイヤ半径方向内面14sとからなる略三角形の断面形状を有する。
本発明では、前述のようにインナーショルダーゴム10は、各アウターショルダーゴム9sのタイヤ半径方向内側に位置するが、図1に示すように、該インナーショルダーゴム10と同一のゴム組成物からなりかつ該インナーショルダーゴム10の前記厚さt2より小なる厚さt1を有して前記アウタークラウンゴム9cのタイヤ半径方向内側をタイヤ軸方向に延びる中継ぎゴム11によって両側のインナーショルダーゴム10を接続し、全体としてトレッド部2の実質的全幅をカバーするように構成することができる。このような中継ぎゴム11のゴム厚さt1としては、直進走行と旋回走行とをバランス良く確保する観点よりインナーショルダーゴム10の厚さt2の好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上が望ましく、また好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下が望ましい。
アウタークラウンゴム>インナーショルダーゴム>アウターショルダーゴム
の関係を満たすように設定する。これは直進走行から旋回またはその逆の移行時における過渡特性の改善に役立つ。なお、前記「実質的全幅」とは、トレッド面2aに沿ってタイヤ軸方向に沿って測った前記インナーショルダーゴム10の幅w3が、前記トレッド部2の幅Wの100%の幅を有す場合のみならず、前記幅Wの90%以上の幅を有する場合も含む。
実施形態2では、前述の実施形態1とは異なって前記中継ぎゴム11が無く、図2に示すように、インナーショルダーゴム10は、タイヤ軸方向に分離している。そして、各インナーショルダーゴム10は、そのタイヤ軸方向内端面が、前記アウタークラウンゴム9cのタイヤ軸方向外端面に接している。
インナーショルダーゴム10が薄すぎると補強効果が無いので、その厚さt2は、前記トレッドゴム8の全厚さ(t2+t3)の10%以上、より好ましくは20%以上とするのが望ましい。なお、インナーショルダーゴム10の厚さt2が大きくなると、グリップ性が発揮され難くなるため、前記厚さt2は、全厚さ(t2+t3)の40%以下、より好ましくは35%以下とするのが望ましい。
本実施形態2の場合、中継ぎゴム11による中央部分での剛性の低下が無いので、過渡特性改善の観点からは、実施形態1とは異なり、ゴム硬度が
インナーショルダーゴム>アウタークラウンゴム>アウターショルダーゴム
の関係を満たすように設定することもできるが、直進走行時の耐摩耗性や操縦安定性などの特性改善に重点を置き、ゴム硬度の関係を
アウタークラウンゴム>インナーショルダーゴム>アウターショルダーゴム
の関係を満たすように設定することもできる。
トレッドゴム8の製造方法の一例として、各ゴム組成物を例えばゴム押し出し機及び/又はカレンダーロールで所定断面形状を有するゴムストリップに成形して、それをドラム上で貼り合わせることで形成することができる。
また、形成する目的ゴム部材に比してサイズ、特に幅の小なるゴムテープを多数回重ね巻きすることで形成するいわゆるテープワインド法あるいはストリップワインド法を採用して、各ゴム組成物からなるゴムテープを順次、例えばトロイド状に成形されたカーカスプライ6Aとベルト7とからなる構造体の周囲に直接、巻き重ねることで形成することもできる。なお、過渡特性を小さくするため、中継ぎゴム11においてもゴムテープを隙間なく巻くことが望ましい。
例えば、前記トレッドゴム8のタイヤ半径方向内側で、いわゆるキャップ/ベーストレッド構造におけるベーストレッドゴム8、即ち、キャップトレッドゴム8とカーカス6−ベルト7構造体との間の接着性改善や低内部損失による燃費改善を目的とする比較的低弾性率かつ低正接損失のゴム層を併用することもできる。
カーカスコード材料:ポリエステル
カーカスコード角:90°(対タイヤ赤道)
ベルトプライ数:2枚
ベルトコード材料:スチール
ベルトコード角:+20°、−20゜(対タイヤ赤道)
内圧:290kPa
乗員:ライダー1名のみ
下記仕様にて、リムにリム組みしかつ内圧を充填した上記タイヤを装着した排気量600ccの自動2輪車にて、乾燥アスファルト路タイヤテストコースを走行させ、旋回時の腰感、過渡特性及び旋回グリップ力が、旋回時のふらつき感、キャンバー角を滑らかに変化させ得るか、グリップレベルや限界レベルを基にドライバーの官能により評価された。結果は、旋回時の腰感及び旋回力については、比較例1及び5を100、また旋回グリップ性及び過渡特性については、実施例3及び24を100とする指数で表示された。数値が大きいほど良好である。
リムサイズ:17×MT3.50
内圧:230kPa
室内用のタイヤコーナリング試験機を用い、縦荷重(1.3kN)における上記タイヤのコーナリングパワーが測定され、比較例1を100とする指数で表示された。数値が大きいほどコーナリングパワーの値が高く、旋回力が大きいことを示す。
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
6A カーカスプライ
7 ベルト
8 トレッドゴム
9 アウタートレッドゴム
9c アウタークラウンゴム
9s アウターショルダーゴム
10 インナーショルダーゴム
11 中継ぎゴム
14 エッジカバーゴム
TE トレッドエッジ
Claims (6)
- カーカスのタイヤ半径方向外側に配されるトレッドゴムは、トレッド面を形成するアウタートレッドゴムを含み、
このアウタートレッドゴムが、タイヤ赤道を中心として配され前記トレッド面の中央部を形成するアウタークラウンゴムと、その両側に配されるアウターショルダーゴムとからなり、
トレッド面に沿ってタイヤ軸方向に測ったとき、アウタークラウンゴムの幅が、トレッド面のトレッドエッジ間の幅の30〜80%である自動二輪車用空気入りタイヤであって、
アウタークラウンゴムのゴム硬度は、アウターショルダーゴムのゴム硬度より高く、その硬度差が3〜15度であり、
前記トレッドゴムは、各アウターショルダーゴムのタイヤ半径方向内側に位置する、インナーショルダーゴムを含み、
このインナーショルダーゴムのゴム硬度は、前記アウターショルダーゴムのゴム硬度より高く、かつ
インナーショルダーゴムは、トレッド溝の溝底に達しない厚さを有して、アウターショルダーゴムの実質的全幅に亘って延び、
前記インナーショルダーゴムのゴム硬度は、アウタークラウンゴムのゴム硬度より低く、
前記インナーショルダーゴムは、該インナーショルダーゴムと同一のゴム組成物からなりかつ該インナーショルダーゴムの前記厚さより小なる厚さを有して前記アウタークラウンゴムのタイヤ半径方向内側を延びる中継ぎゴムによって接続されていることを特徴とする自動二輪車用空気入りタイヤ。 - 前記インナーショルダーゴムのゴム硬度と前記アウターショルダーゴムのゴム硬度とのゴム硬度差は、2〜8度である請求項1記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
- 前記インナーショルダーゴムのゴム硬度は、56〜68度であり、
前記アウタークラウンゴムのゴム硬度は、59〜71度である請求項1又は2記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。 - 前記アウタークラウンゴムと前記アウターショルダーゴムとの境界は、タイヤ子午断面において、トレッド面に引いた法線に対して、トレッド面からタイヤ軸方向内方へ傾斜している請求項1乃至3のいずれかに記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
- 前記アウタークラウンゴムと前記アウターショルダーゴムとの境界は、タイヤ子午断面において、トレッド面に引いた法線に対して、10〜40度である請求項4記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
- 前記中継ぎゴムのゴム厚さは、前記インナーショルダーゴムの厚さの15%〜35%である請求項1乃至5のいずれかに記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
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