以下、本発明の実施の形態について、その実施例を図面に基づき説明する。図1は実施例の燃料電池10を構成する単セル15を断面視して概略的に示す説明図、図2はMEAの構成部材の接合の様子をその寸法状態と合わせて模式的に示す説明図である。本実施例の燃料電池10は、図1に示す構成の単セル15を対向するセパレーター25、26で挟持して、この単セル15を複数積層したスタック構造の固体高分子型燃料電池である。
単セル15は、電解質膜20の両側にアノード21とカソード22の両電極を備える。電解質膜20は、固体高分子材料、例えばフッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜であり、湿潤状態で良好な電気伝導性を示す。アノード21およびカソード22は、例えば白金、あるいは白金合金等の触媒を担持した導電性の担体、例えばカーボン粒子(以下、触媒担持カーボン粒子と称する)を、プロトン伝導性を有するアイオノマーで被覆して形成された電極触媒層であり、電解質膜20の両膜面に接合され電解質膜20と共に膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly/MEA)を形成する。通常、アイオノマーは、電解質膜20と同質の固体高分子材料である高分子電解質樹脂(例えばフッ素系樹脂)であり、その有するイオン交換基によりプロトン伝導性を有する。
この他、単セル15は、電極形成済みの電解質膜20を両側から挟持するアノード側ガス拡散層23とカソード側ガス拡散層24とセパレーター25,26を備え、両ガス拡散層は、対応する電極(アノード21またはカソード22)に接合されている。アノード側ガス拡散層23とカソード側ガス拡散層24は、ガス透過性を有する導電性部材、例えば、カーボンペーパやカーボンクロス等のカーボン多孔質体や、金属メッシュや発泡金属等の金属多孔質体によって形成され、たいおうする電極にガスを拡散透過する。本実施例では、電解質膜20とアノード21およびカソード22で形成されるMEAを、アノード側ガス拡散層23とカソード側ガス拡散層24で挟持した状態で単セル15の基幹部位として製造する。よって、MEAに上記の両ガス拡散層を含めた物をMEGA(Membrane-Electrode&Gas. Diffusion Layer Assembly)と、適宜、称することとする。
図2に示すように、MEAの製品形状は、電解質膜20およびアノード21で規定され、アノード21は、電解質膜20と同寸法の矩形形状である。カソード22は、アノード21より縦横とも短くされている。アノード側ガス拡散層23とカソード側ガス拡散層24は、共に矩形形状とされ、アノード側ガス拡散層23はアノード21と、カソード側ガス拡散層24はカソード22と、それぞれ同形状とされている。こうした形状の大小関係から、カソード22は、MEAとしての製品形状に適合し、当該製品形状より小さい電極触媒層形状(以下、適合電極形状と称する)をなして電解質膜20に接合する。また、アノード21は、MEAの製品形状と同一ではあるものの、MEAの製造過程(図5〜図6参照)においては、後述するようにMEAの製品形状より大きい形状で形成されて電解質膜20に接合する。その上で、アノード21は、MEAの製造過程(図7〜図10参照)において、電解質膜20と同一形状に裁断される。アノード21に接合するアノード側ガス拡散層23は、MEAの製造過程においては、後述するようにMEAの製品形状より大きいガス拡散層形状で形成され、アノード21と同様に電解質膜20と同一形状に裁断される。なお、アノード21、アノード側ガス拡散層23等は上記のようにその寸法が相違するが、単セル15としての組み付け状態では、これらはその周囲において図示しないシール部材にて気密にシールされる。
セパレーター25は、アノード側ガス拡散層23の側に、水素を含有する燃料ガスを流すセル内燃料ガス流路47を備える。セパレーター26は、カソード側ガス拡散層24の側に、酸素を含有する酸化ガス(本実施例では、空気)を流すセル内酸化ガス流路48を備える。なお、図には記載していないが、隣り合う単セル15間には、例えば、冷媒が流れるセル間冷媒流路を形成することができる。これらセパレーター25,26は、ガス不透過な導電性部材、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボンや、焼成カーボン、あるいはステンレス鋼などの金属材料により形成されている。
図1では図示していないが、セパレーター25,26の外周近傍の所定の位置には、複数の孔部が形成されている。これらの複数の孔部は、セパレーター25,26が他の部材と共に積層されて燃料電池10が組み立てられたときに互いに重なって、燃料電池10内を積層方向に貫通する流路を形成する。すなわち、上記したセル内燃料ガス流路47やセル内酸化ガス流路48、あるいはセル間冷媒流路に対して、燃料ガスや酸化ガス、あるいは冷媒を給排するためのマニホールドを形成する。
本実施例の燃料電池10は、セパレーター25のセル内燃料ガス流路47からの水素ガスを、アノード側ガス拡散層23で拡散ししつつ、アノード21に供給する。空気については、セパレーター26のセル内酸化ガス流路48からの空気を、カソード側ガス拡散層24で拡散ししつつカソード22に供給する。こうしたガス供給を受けて、燃料電池10は、発電し、その発電電力を外部の負荷に与える。
次に、燃料電池10の製造方法について説明する。図3は燃料電池10の製造手順を示す説明図である。図示するように、燃料電池10を製造するに当たっては、まず、その構成単位である単セル15を作製する。
単セル15の作製に当たり、その構成部材を準備する(ステップS100)。図4は準備する電解質膜フィルム20Fとカソード支持フィルムDFの準備の形態を模式的に示す説明図である。図示するように、電解質膜フィルム20Fについては、電解質膜20の上記の高分子電解質樹脂を用いてフィルム状に電解質膜フィルム20Fを形成し、その一方のフィルム面に、アノード21を点在させて形成する。この場合、電解質膜フィルム20Fは、MEAにおける電解質膜20よりも幅広のフィルムとされている。電解質膜フィルム20Fの他方のフィルム面には、剥離可能なバックフィルムBFを貼り付ける。このバックフィルムBFについては、これを、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等のポリエステル系、ポリスチレン等の高分子フィルムによって形成することができる。こうして、電解質膜フィルム20Fをロール状に巻き取った電解質膜フィルムロール20Rを準備する。アノード21は、触媒担持カーボン粒子とアイオノマーとを分散させた触媒インクを適宜な塗工機器にて電解質膜フィルム20Fに間欠的に塗工し、その後の乾燥を経て形成される。アノード21は、図中の側面断面視に示すように、電解質膜フィルム20Fのフィルム幅とほぼ同寸とされ、上記した寸法関係で形成される。以下、アノード21が形成済みでバックフィルムBFが貼り付け済みの電解質膜フィルム20F、およびバックフィルムBFの剥離済みの電解質膜フィルム20Fを、積層済み電解質膜フィルム20Fと称する。
カソード支持フィルムDFは、一方のフィルム面に、カソード22を点在させて形成する。カソード支持フィルムDFは、点在形成済みのカソード22に対して剥離可能であり、カソード22の点在形成済みの状態でロール状に巻き取られ、カソード支持フィルムロールDRとして準備される。このカソード支持フィルムDFは、PETやPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の高分子フィルムによって形成される。カソード22は、上記の触媒インクを適宜な塗工機器にて電解質膜フィルム20Fに間欠的に塗工し、その後の乾燥を経て形成される。カソード22の点在形成に当たっては、図示するようにマスクMを用いて、カソード22の矩形形状をMEAの製品形状より小さい既述した適合電極形状に確定する。この場合、アノード21についても矩形形状を確定するようマスクMを用いることも可能ではあるが、アノード形成対象である電解質膜フィルム20Fの表面損傷回避のためマスクMは使用せず、塗工機器からの間欠塗工でアノード21を形成する。なお、カソード22の形成対象は、後の剥離除去されるカソード支持フィルムDFであることから、マスクMの使用に伴う表面損傷はMEAに影響を与えない。カソード22にあっては、図中の側面断面視に示すように、カソード支持フィルムDFのフィルム幅より狭くされ、上記した寸法関係で形成される。以下、カソード22が形成済みのカソード支持フィルムDFを、積層済みカソード支持フィルムDFと称する。
このように電極触媒層を形成しながら上記の両フィルムロールを準備するほか、電極触媒層が形成済みでロール状に巻き取られた電解質膜フィルムロール20Rやカソード支持フィルムロールDRを購入準備することもできる。また、アノード21に接合するアノード側ガス拡散層23は、導電性で多孔質の基材、例えばカーボンクロスを用いて、MEAの製品形状より大きいガス拡散層形状の矩形サイズで後述するように一枚ずつ準備される。カソード22に接合するカソード側ガス拡散層24にあっては、カーボンクロスを用いて、カソード22と同サイズで一枚ずつ準備される(図示略)。セパレーター25、26については、それぞれセル内燃料ガス流路47、48を有する形態で準備される(図示略)。
こうして準備した積層済み電解質膜フィルム20Fと積層済みカソード支持フィルムDFとからMEAフィルムについても、ステップS100にて作製・準備する。図5は準備すべきフィルム状のMEAにおけるアノード21等の積層の様子をフィルム長手方向の断面とフィルム表裏面から見て示す説明図である。
図5に示すように、MEAは、電解質膜フィルム20Fを挟んでアノード21とカソード22とが向かい合う領域とされ、電解質膜フィルム20Fの長手方向に点在する。MEAの点在の様子は、アノード21およびカソード22の点在の様子と同じである。この場合、アノード21は、塗工機器から電解質膜フィルム20Fへの間欠塗工で形成されることから、塗工開始時と塗工停止時とではエッジ形状が僅かな塗工ムラとなり、この塗工ムラはアノード21の未塗工領域Nsの前後に残る。カソード22は、マスクMを用いる都合上、ほぼ同一形状で点在する。そして、MEAは、カソード22を全て含み、アノード21については塗工ムラを含まないように、カッティングされて(図2参照)、単セル15を構成する。MEAのカッティングの様子については後述する。なお、図5に示すように、カソード支持フィルムDFは、電解質膜フィルム20Fと共に存在するが、後述のMEA製造装置100において剥離される。
本実施形態では、図5に示すようにしてフィルム状のMEAを作製すべく、ステップS100において、MEA製造装置100を用いた。図6はMEA製造装置100の概略構成を各搬送箇所でのフィルムの形態と共に模式的に示す説明図である。このMEA製造装置100は、第1搬送系110と、第2搬送系120と、フィルム接合部130と、フィルム転写圧着部140と、フィルム剥離部150と、半製品回収部160と、制御装置200とを備えている。なお、この図6は、フィルム搬送とフィルム接合、並びにフィルム形態の様子を模式的に示しており、実際の電解質膜フィルム20Fやカソード支持フィルムDF、アノード21およびカソード22の厚みや縦横サイズを反映したものではない。後述する図7についても同様である。
第1搬送系110は、電解質膜フィルムロール20Rに巻き取られた電解質膜フィルム20Fをフィルム接合部130に送り出す。送り出された電解質膜フィルム20Fは、搬送ポイントP1のフィルム形態に示すように、バックフィルムBFと電解質膜フィルム20Fとが積層し(図4参照)、電解質膜フィルム20Fのフィルム面(上面)にアノード21が点在形成されている。この第1搬送系110は、搬送下流側にフィルム剥離ローラー112を備え、当該ローラーを回転させつつ電解質膜フィルム20FからバックフィルムBFを剥離し、当該剥離したバックフィルムBFを回収ローラー114に巻き取り回収する。よって、第1搬送系110は、積層済み電解質膜フィルム20Fを、バックフィルムBFの側のフィルム面を露出させて、フィルム接合部130に送り出す。また、この第1搬送系110は、後述するフィルム転写圧着部140での第2転写ローラー142の前進と退避タイミングを定めるために用いるアノードセンサー116を備える。このアノードセンサー116は、光反射型の光センサーとして構成され、第1搬送系110から搬送されつつある積層済み電解質膜フィルム20Fにおいて隣り合うアノード21の間の未塗工領域Nsの搬送方向に沿った先端部位と末端部位を、或いは、隣り合う個々のアノード21の搬送方向に沿った先端部位と末端部位を検知し、その信号を制御装置200に出力する。第2搬送系120は、カソード支持フィルムロールDRに巻き取り済みのカソード支持フィルムDF(図4参照)をフィルム接合部130に送り出す。カソード支持フィルムDFは、搬送ポイントP2のフィルム形態に示すように、カソード22が上記の電解質膜フィルム20Fの露出フィルム面に向くようにして、送り出される。MEA製造装置100は、こうして送り出された積層済み電解質膜フィルム20Fと積層済みカソード支持フィルムDFとをフィルム接合部130にて接合させる。
フィルム接合部130は、積層済み電解質膜フィルム20Fにおけるアノード21の露出面(上面)にローラー表面を接触させる接合ローラー131と、積層済みカソード支持フィルムDFの露出面(下面)の側に位置する接合案内ローラー132とを備える。接合ローラー131と接合案内ローラー132の両ローラーは、回転しながら積層済み電解質膜フィルム20Fと積層済みカソード支持フィルムDFをフィルム転写圧着部140に向けて送り出すと共に、この電解質膜フィルム20Fを積層済みカソード支持フィルムDFのカソード22に押し付ける。これにより、積層済み電解質膜フィルム20Fと積層済みカソード支持フィルムDFとは、電解質膜フィルム20Fの露出面にカソード22が密着するようにして、接合する。この接合の様子は、図5および搬送ポイントP3のフィルム形態で示されており、電解質膜フィルム20Fの下面にカソード22が接合し、電解質膜フィルム20Fを挟んで、アノード21とカソード22が対向する。カソード支持フィルムDFにあっては、カソード22に接合したままである。こうしたフィルム接合に関与する第1搬送系110と第2搬送系120およびフィルム接合部130は、積層済み電解質膜フィルム20Fとカソード支持フィルムDFとを搬送しつつ、既述したようにアノード21とカソード22が電解質膜フィルム20Fに接合した状態とし(以下、電極接合済み電解質膜フィルム20Fと称する)、両フィルムを、フィルム転写圧着部140における第1転写ローラー141と第2転写ローラー142の間の転写圧着位置に搬送案内する。この場合、図5に示すようにカソード22がアノード21のほぼ中央位置となるよう電解質膜フィルム20Fを挟んでアノード21に対向するよう、第1搬送系110によるフィルム搬送開始と第2搬送系120によるフィルム搬送開始、および搬送過程のローラー回転速度が、アノードセンサー116のセンサー信号を入力する制御装置200により制御される。
フィルム転写圧着部140は、対向して回転する一対の転写ローラー対を備え、当該ローラー対を、第1転写ローラー141と第2転写ローラー142とで構成する。第1転写ローラー141は、ゴム製のローラー或いは表面がゴムとされたローラーであり、第2転写ローラー142は、金属製のローラーである。この両ローラーは、その対向間隔を電極接合済み電解質膜フィルム20Fとカソード支持フィルムDFの厚みの和よりやや狭くし、この対向箇所をフィルム転写圧着箇所とする。第2転写ローラー142は、図における紙面手前側と紙面奥側のローラー軸両端にて、図示しないし支持腕に回転自在に支持されており、この支持腕ごとフィルム転写圧着箇所から退避可能とされている。このローラー退避については、後述する。この場合、第2転写ローラー142を、ヒーター内蔵の加熱ローラーとすることもでき、制御装置200は、ヒーター制御と回転制御を行って、第2転写ローラー142を、回転させながらローラー表面をフィルムの加熱圧着に適した温度とする。
フィルム転写圧着部140は、接合ローラー131と接合案内ローラー132の下流から案内された電極接合済み電解質膜フィルム20Fとカソード支持フィルムDF(以下、これらフィルムを一体として接合済みフィルムSFと適宜称する)を、上記の両転写ローラーのフィルム転写圧着箇所に案内する。この案内に際しては、図示するように、カソード支持フィルムDFを第1転写ローラー141のローラー表面に接触させる。よって、第1転写ローラー141は、接合済みの電解質膜フィルム20Fとカソード支持フィルムDFのうちのカソード支持フィルムDFを第1転写ローラー141のローラー表面に接触させて、上記接合済みの電解質膜フィルム20Fとカソード支持フィルムDFを上記のフィルム転写圧着箇所に案内する経路を、接合ローラー131と接合案内ローラー132と協働して形成する。そして、第1転写ローラー141と第2転写ローラー142とは、電極接合済み電解質膜フィルム20Fとカソード支持フィルムDFを両面から押圧することによって、電解質膜フィルム20Fにカソード支持フィルムDFのカソード22を転写圧着し、転写圧着済みの両フィルムを、テンションローラー143にてテンションを掛けつつ下流のフィルム剥離部150に搬送する。第1転写ローラー141と第2転写ローラー142の間の転写圧着位置には、アノード21と電解質膜フィルム20F、カソード22およびカソード支持フィルムDFが重なった接合箇所とアノード21の未塗工の未塗工領域Nsとが交互に到着する。制御装置200は、搬送されつつあるアノード21の先端・後端をアノードセンサー116(図6参照)からのセンサー信号により把握した上で、センサー検知箇所から転写圧着位置までの搬送経路長とローラーによる電極接合済み電解質膜フィルム20Fの搬送速度とを勘案して、第2転写ローラー142を進退駆動して、上記のようにカソード22を電解質膜フィルム20Fに転写圧着する。この場合、第2転写ローラー142を加熱ローラーとすれば、電解質膜フィルム20Fにカソード支持フィルムDFのカソード22を加熱圧着できる。
フィルム転写圧着部140より下流側のフィルム剥離部150は、剥離ローラー151と、搬送ローラー152と、テンションローラー153とを備えている。剥離ローラー151は、搬送ローラー152と対向配置され、テンションローラー153にて搬送経路が変更されたカソード支持フィルムDFを、アノード21から剥離する。剥離後のフィルムの様子は、搬送ポイントP4のフィルム形態に示すように、カソード支持フィルムDFがない状態で、電解質膜フィルム20Fの下面にアノード21が接合し、電解質膜フィルム20Fを挟んで、アノード21とカソード22が向き合う。つまり、フィルム状のMEAフィルムMFが得られることになり、このMEAフィルムMFは半製品回収部160に搬送される。剥離されたカソード支持フィルムDFは、回収ローラー154に巻き取り回収される。
半製品回収部160は、バックフィルム補給ローラーBFRと、搬送ローラー161と、テンションローラー162と、半製品回収ローラー163とを備えている。搬送ローラー161は、MEAフィルムMFを搬送しつつ、バックフィルム補給ローラーBFRから送り出されたバックフィルムBFを、MEAフィルムMFのカソード22に重ね合わせ、この状態で、バックフィルムBFおよびMEAフィルムMFをテンションローラー162に搬送する。テンションローラー162は、経路を屈曲させつつテンションを掛けることで、搬送ポイントP4のフィルム形態のカソード22にバックフィルムBFを接合する。バックフィルムBFの接合済みのMEAフィルムMFは、単セル15(図2参照)に組み込まれる矩形形状ではないので、MEA半製品として半製品回収ローラー163に巻き取り回収される。回収されたMEAフィルムMFは、後述のフィルム裁断装置300にて矩形形状に裁断されてMEAとしてMEGAの作製に用いられるほか、フィルム形態のままMEGAの作製に用いることもできる。なお、フィルム剥離部150と半製品回収部160を省略して、カソード支持フィルムDFが電極接合済み電解質膜フィルム20Fに接合した形態で、テンションローラー143の下流にて巻き取って、MEA半製品とすることもできる。また、ステップS100では、MEA製造装置100にて、アノード21とカソード22とが電解質膜フィルム20Fを挟んで対向して形成済みの電極接合済み電解質膜フィルム20Fを作製・準備するほか、アノード21とカソード22とが電解質膜フィルム20Fを挟んで対向して形成済みの電極接合済み電解質膜フィルム20Fを購入・準備することもできる。
制御装置200は、図示しない各種スイッチやセンサーの入力を受けつつ、既述した各ローラーの回転速度を調整制御するほか、第2転写ローラー142の前後退についてもこれを制御する。なお、第2転写ローラー142を加熱ローラーとする場合には、制御装置200は、第2転写ローラー142の温度についても、これを制御する。
既述したようにしてMEAフィルムMFが得られると、図3のステップS110にて、アノード側ガス拡散層23を含んでMEAの製品形状にMEAフィルムMFを裁断して、一方のアノード側ガス拡散層23を有する矩形形状の半製品MEGAを作製する。図7はフィルム裁断装置300の概略構成を各搬送箇所でのフィルムの形態と共に模式的に示す説明図、図8はフィルム裁断装置300が有する裁断機構400の概略構成を電極接合済み電解質膜フィルム20Fとの関係と合わせて模式的に示す説明図、図9は裁断機構400にてなされるMEAフィルム裁断の様子を示す説明図、図10は裁断機構400におけるカソード22の撮像の様子を示す説明図である。
図7に示すフィルム裁断装置300は、フィルム供給系310と、アノードガス拡散層供給系320と、ガス拡散層接合部330と、ピッチ単位搬入機構部340と、裁断機構400と、ピッチ単位排出巻取部360とを備える。フィルム供給系310は、既述した半製品回収ローラー163に巻き取られた電極接合済み電解質膜フィルム20Fから搬送路下流のフィルム剥離ローラー312にてバックフィルムBFを剥離する。そして、搬送ポイントP10のフィルム形態に示すように、フィルム供給系310は、電極接合済み電解質膜フィルム20Fを、アノード21とカソード22とが対向して点在する形態でガス拡散層接合部330に送り出す。こうして送り出された電極接合済み電解質膜フィルム20Fは、搬送経路下流の第1テンションローラー314と第2テンションローラー316にてテンションが調整された上で、ガス拡散層接合部330に搬送される。また、このフィルム供給系310は、後述するアノードガス拡散層供給系320でのアノード側ガス拡散層23の受け渡しタイミングを定めるために用いるカソードセンサー318を備える。このカソードセンサー318は、光反射型の光センサーとして構成され、フィルム供給系310から搬送されつつある電極接合済み電解質膜フィルム20Fにおいて隣り合うカソード22の搬送方向に沿った先端部位を検知し、その信号を後述の制御装置500に出力する。なお、剥離されたバックフィルムBFは図示しない回収ローラーにて巻き取り回収される。
アノードガス拡散層供給系320は、拡散層吸着テーブル322を、ガス拡散層接合部330の接合ポイント、即ちガス拡散層接合部330の最上流の対向ローラー対334まで進退可能に備える。拡散層吸着テーブル322は、テーブル上面を吸引してアノード側ガス拡散層23を吸着し、この状態で前進し、テーブル上面へのエアー吹出を経てアノード側ガス拡散層23をガス拡散層接合部330に受け渡す。制御装置500は、カソードセンサー318のセンサー信号に基づいて、拡散層吸着テーブル322の前進駆動およびエアー吹出タイミングを制御するので、アノードガス拡散層供給系320は、アノード側ガス拡散層23が電極接合済み電解質膜フィルム20Fのアノード21とその外郭をほぼ揃えるようにして、アノード側ガス拡散層23をガス拡散層接合部330に受け渡す。
ガス拡散層接合部330は、複数対の対向ローラー対334と最下流のフリーローラーとを備え、上流側の対向ローラー対334からその押圧程度および加熱温度を変えながら、アノード側ガス拡散層23をアノード21に接合する。つまり、ガス拡散層接合部330は、対向ローラー対334にてアノード側ガス拡散層23をアノード21にホットプレスして、搬送ポイントP11のフィルム形態に示すように、アノード21とカソード22とが対向して点在した上で、アノード21とアノード側ガス拡散層23とがほぼその外郭が一致するような状態で、電極接合済み電解質膜フィルム20Fをピッチ単位搬入機構部340に送り出す。
ピッチ単位搬入機構部340は、ガス拡散層接合部330と緩衝ゾーンKzを隔てて配設され、最上流のフリーローラーと複数対の対向ローラー対342とを備え、ガス拡散層接合部330から搬送された電極接合済み電解質膜フィルム20Fを、所定のピッチ単位で裁断機構400に搬入搬送する。そして、ピッチ単位搬入機構部340は、最下流の対向ローラー対342をローラー間のニップ圧を調整可能なローラー対として備え、制御装置500は、このニップ圧を、ピッチ単位排出巻取部360における対向ローラー対364のニップ圧と合わせて後述するタイミングで調整する。その上で、ピッチ単位搬入機構部340は、裁断機構400より下流のピッチ単位排出巻取部360でのピッチ単位のフィルム巻き取りと共同して、電極接合済み電解質膜フィルム20Fを所定ピッチ、即ち電解質膜フィルム20Fにおけるカソード22の形成ピッチを単位に、裁断機構400にピッチ搬送(搬入搬送)して、電極接合済み電解質膜フィルム20Fを裁断機構400の後述する裁断ゾーンCzで一旦停止させる。電極接合済み電解質膜フィルム20Fは、ガス拡散層接合部330からは所定の搬送速度で定速搬送され、ピッチ単位搬入機構部340によっては、所定ピッチ単位で搬送される。このため、電極接合済み電解質膜フィルム20Fは、緩衝ゾーンKzにおいて自重で垂れ下がった上で搬送され、ピッチ単位搬入機構部340による所定ピッチ単位での搬送を受ける度に、緩衝ゾーンKzでの垂れ下がりの程度を変えながら、裁断機構400にピッチ単位で搬入搬送されて、裁断機構400の裁断ゾーンで一旦停止することになる。こうした電極接合済み電解質膜フィルム20Fの所定ピッチ単位での搬送により、ガス拡散層接合部330での定速搬送に支障が出ないよう、ガス拡散層接合部330は、その最下流の対向ローラー対334をニップ圧調整可能に備える。
ピッチ単位排出巻取部360は、フィルムテンションを測定するテンションローラー362と、ニップ圧が調整可能な対向ローラー対364と、フィルム巻取回収ローラー366とを備え、ピッチ単位排出巻取部360の検出したフィルムテンションを制御装置500に出力する。制御装置500は、このフィルムテンションに基づいてピッチ単位搬入機構部340の最下流の対向ローラー対342とピッチ単位排出巻取部360のテンションローラー362のニップ圧を調整し、ピッチ単位で搬送済みで裁断ゾーンCzに停止した電極接合済み電解質膜フィルム20Fを、上記の両ローラーにて保持することになる。この際、制御装置500は、ガス拡散層接合部330の最下流の対向ローラー対334についても、そのニップ圧を調整する。
裁断機構400は、図8に示すように、下段テーブル402と上段テーブル404とを4本のシャフト406にて連結して備える。そして、裁断機構400は、電極接合済み電解質膜フィルム20Fの幅方向に沿ったx軸モーター408とフィルム搬送方向に沿ったy軸モーター409とを駆動源とする図示しないxyテーブル構造を、下段テーブル402に内蔵し、上下段のテーブルごと、電極接合済み電解質膜フィルム20Fに対して2次元的に移動可能とする。x軸方向およびy軸方向のテーブル駆動量は、制御装置500にて後述するように規定され、その規定された駆動量で、裁断機構400は、下段テーブル402の下段側裁断刃420と上段テーブル404の上段側裁断刃430とを対向させたまま、両裁断刃を制御装置500の制御下でテーブルごと駆動する。下段側裁断刃420と上段側裁断刃430とは、その対向する領域を電極接合済み電解質膜フィルム20Fの裁断ゾーンCzとする。下段側裁断刃420は、矩形の枠状をなし、図9に示すように、その外周縁を裁断刃421とする。上段側裁断刃430は、下段側裁断刃420がその裁断刃421の外周壁に沿って摺動するよう矩形の枠状をなし、内周壁431を裁断刃421の裁断案内面とする。そして、裁断機構400は、下段側裁断刃420をシリンダー422(図7参照)により、上段側裁断刃430をシリンダー432により、それぞれ個別に上下動させる。この上下の裁断刃の上下動により、裁断機構400は、既述したように一旦停止済みの電極接合済み電解質膜フィルム20Fを矩形形状、即ちMEAの製品形状(製品寸法)に裁断ゾーンCzで裁断する。下段側裁断刃420は、その内部に昇降テーブル424を備える。この昇降テーブル424は、エアーの吸引と吹出が可能な中空のテーブル状とされ、後述の電極接合済み電解質膜フィルム20Fの裁断に合わせて、電極接合済み電解質膜フィルム20Fのアノード側ガス拡散層23をテーブル上面に吸着したりテーブル上面から放出する。上記した裁断刃のxy駆動や上下駆動、並びに昇降テーブル424によるアノード側ガス拡散層23への吸着・放出は、制御装置500にて後述のタイミングで実行される。
また、裁断機構400は、裁断後のMEAを装置外に排出するローダー440を備えるほか、イメージセンサー410を有する。ローダー440は、上下の裁断刃の間の裁断ゾーンCzに対して進退可能に構成され、その下面にフィルム吸着部を複数備える。そして、このローダー440は、制御装置500の制御下での進退駆動とエアーの吸引・放出により、裁断済みのMEAを吸着して裁断ゾーンCzから取り出し、そのMEA、詳しくは、アノード側ガス拡散層23を備えたMEAとしての半製品MEGAを、後述するステップS120(図3参照)におけるMEGAの作製に提供する。ローダー440の駆動タイミング等については、後述する。
イメージセンサー410は、固体撮像素子(CCD/Charge Coupled Device)を用いて構成され、図10に示すように、既述したようにピッチ単位で裁断ゾーンCzに搬入されて一旦停止した電極接合済み電解質膜フィルム20Fのカソード22の各コーナーに対応付けて設置されている。つまり、それぞれのイメージセンサー410は、MEAとしての製品形状に適合して当該製品形状より小さい適合電極形状のカソード22(図2参照)の各コーナーが撮像視野Vpに入るように、裁断ゾーンCzに配設されている。電極接合済み電解質膜フィルム20Fが既述したピッチ単位で搬入搬送されて裁断ゾーンCzに停止し、その上で、カソード22が既述した適合電極形状で形成されていれば、そのカソード22の各コーナーは、撮像視野Vpの中心(センサー撮像原点)に位置するよう、イメージセンサー410が配設されている。そして、このイメージセンサー410は、カソード22の各コーナーの撮像画像を制御装置500に出力する。制御装置500は、各イメージセンサーから入力した撮像画像に基づいて、カソード22の縦横寸法を算出する。従って、マスクMの浮き上がりやインクの塗工不良等により規定の適合電極形状よりカソード22の実際の形状が逸脱すると、そのカソード22の各コーナーは撮像視野Vpに入らなかったり(カソード22_4)、各コーナーが撮像視野Vpに入っても、その縦横寸法が長短相違し得る(カソード22_3)。その一方、適合電極形状のカソード22であれば、その各コーナーは撮像視野Vpに入ることになる(カソード22_1、カソード22_4)。この場合、それぞれのイメージセンサー410に対して(詳しくは、センサー撮像原点に対して)、裁断すべきMEAの製品形状の位置関係は規定済みであることから、制御装置500は、各コーナーが撮像視野Vpに入った適合電極形状のカソード22と裁断すべきMEAの製品形状との位置関係を、イメージセンサーから入力した撮像画像に基づいて演算する。なお、本実施形態では、照明ユニット412にて、イメージセンサー410の撮像視野Vpを照射するので、黒色もしくは黒色に近いカソード22にあっても、イメージセンサー410は、そのコーナー部を撮像視野Vpにて撮像する。
制御装置500は、図示しない各種スイッチやセンサーの入力を受けつつ、既述した各ローラーの回転速度を調整制御するほか、ピッチ単位搬入機構部340とピッチ単位排出巻取部360とによる電極接合済み電解質膜フィルム20Fのピッチ単位での搬入搬送や排出搬送、並びに、電極接合済み電解質膜フィルム20Fの裁断に必要な裁断機構400の各機器の駆動についてもこれを制御する。また、この制御装置500は、図2で説明したMEAの製品形状寸法、即ち下段側裁断刃420と上段側裁断刃430とで規定される縦横寸法の他、MEAとしての製品形状に適合したカソード22の既述した適合電極形状寸法とその許容範囲を予め記憶しており、これら寸法に基づいて、電極接合済み電解質膜フィルム20Fに対する下段側裁断刃420と上段側裁断刃430の位置あわせ制御についても、これを後述のように行う。
次に、上記したフィルム裁断装置300を用いた電極接合済み電解質膜フィルム20Fの裁断手順(図3:ステップS110)について詳述する。図11は電極接合済み電解質膜フィルム20Fの裁断手順をフィルム裁断装置300の機器駆動と合わせて説明する説明図である。
制御装置500は、まず、ピッチ単位搬入機構部340とピッチ単位排出巻取部360とを制御して、ガス拡散層接合部330にてアノード側ガス拡散層23を接合済みの電極接合済み電解質膜フィルム20Fを、裁断機構400の裁断ゾーンCzに搬入搬送する(ステップS210)。この搬入搬送は、既述したように、電極接合済み電解質膜フィルム20Fを、カソード22の形成ピッチをピッチ単位として搬送した上で、一旦停止することになる。これにより、電極接合済み電解質膜フィルム20Fは、裁断ゾーンCzにおいて、カソード22を裁断機構400の430の上段側裁断刃430とし、アノード側ガス拡散層23を下段側裁断刃420の側として、停止状態とされ、ピッチ単位搬入機構部340の対向ローラー対342およびピッチ単位排出巻取部360のテンションローラー362のニップ圧で緊張保持される。なお、ステップS210の搬入搬送は、後述の電極接合済み電解質膜フィルム20Fの裁断後における電極接合済み電解質膜フィルム20Fの排出搬送と同じであることから、裁断実行後においては、続くステップS220から処理が繰り返される。
制御装置500は、次いで、裁断ゾーンCzのイメージセンサー410からの撮像画像を入力する(ステップS220)。この際、それぞれのイメージセンサー410は、撮像視野Vpに入り込んでいるカソード22を撮像し、予め規定されたカソード各コーナー画像とのパターンマッチングを行い、その結果である撮像画像を制御装置500に出力する。この撮像画像の入力を受けた制御装置500は、それぞれのイメージセンサー410のセンサー撮像原点(撮像視野Vpの中心)から各コーナーまでのズレ量を算出し(ステップS230)、この算出した各コーナーのズレ量からカソード22の矩形形状寸法(縦横寸法)を算出する(ステップS240)。その後、制御装置500は、算出したカソード22の寸法が、MEAとしての製品形状に適合したカソード22の既述した許容範囲の適合電極形状寸法に含まれるか否かを判定する(ステップS250)。この寸法算出と寸法判定の様子は、図10に示す通りであり、適合電極形状のカソード22_1やカソード22_2は、いずれもその各コーナーを撮像視野Vpに位置させ、イメージセンサー410は、この各コーナーの撮像画像を制御装置500に出力する。制御装置500は、適合電極形状のカソード22_1やカソード22_2について入力を受けた撮像画像の各コーナーとセンサー撮像原点(撮像視野Vpの中心)とのズレ量を算出し、この算出した各コーナーのズレ量からカソード22の矩形形状寸法(縦横寸法)を算出する。算出した寸法は、適合電極形状に適ったものとなるので、制御装置500は、適合電極形状のカソード22_1やカソード22_2について、いずれもステップS250で肯定判定する。その一方、各コーナーが撮像視野Vpに入るものの、その縦横寸法が規定の適合電極形状より短いカソード22_3については、その算出寸法は、適合電極形状より短寸側に逸脱したものとなる。カソード22のいずれかのコーナーが撮像視野Vpに入らなかったカソード22_4については、その算出寸法は、適合電極形状より長寸側に逸脱したものとなる。よって、制御装置500は、適合電極形状から逸脱したカソード22_3とカソード22_4について、いずれもステップS250で否定判定する。
制御装置500は、ステップS250での肯定判定に続き、ステップS230で算出した各コーナーのズレ量に基づいて、下段側裁断刃420および上段側裁断刃430の位置是正量を算出する(ステップS260)。つまり、適合電極形状のカソード22_1であれば、そのズレ量はほぼゼロであることから、位置是正量はゼロとなる。これに対し、同じ適合電極形状であっても、各コーナーがズレているカソード22_2については、下段側裁断刃420と上段側裁断刃430に対するこのズレの解消を図るべく、下段側裁断刃420および上段側裁断刃430の位置是正量が算出される。こうして位置是正量を算出すると、制御装置500は、この位置是正量に基づいて下段テーブル402(図8参照)のx軸モーター408とy軸モーター409とを駆動制御して、下段側裁断刃420と上段側裁断刃430とを実際のカソード22に対して位置合わせする(ステップS270)。次いで、制御装置500は、シリンダー422とシリンダー432とを駆動制御して、下段側裁断刃420の上昇と上段側裁断刃430の降下とを図り、電極接合済み電解質膜フィルム20Fを、その下面のアノード側ガス拡散層23と共に、製品形状に裁断する(ステップS280)。この際、制御装置500は、下段側裁断刃420に組み込み済みの昇降テーブル424を下段側裁断刃420と同期して上昇させて、電極接合済み電解質膜フィルム20Fを吸着して下支えする。この下支えにより、電極接合済み電解質膜フィルム20Fは、不用意なシワや延びを起こすことなく、裁断される。
ステップS280での裁断に続き、制御装置500は、裁断済みのMEA、詳しくは、アノード側ガス拡散層23を接合済みの半製品MEGAの排出受け渡しを行った後(ステップS290)、ピッチ単位搬入機構部340による電極接合済み電解質膜フィルム20Fの既述したピッチ単位での搬送とピッチ単位排出巻取部360による巻き取り回収を行う(ステップS300)。図12は裁断済みのMEAである半製品MEGAの排出受け渡しの様子と電極接合済み電解質膜フィルム20Fの巻き取り回収の様子を示す説明図である。制御装置500は、ステップS280での裁断の際に、下段側裁断刃420と上段側裁断刃430とをそれぞれ原位置に復帰させるので、この裁断刃復帰に合わせて、ローダー440を裁断ゾーンCzに入り込ませ(図9、図12(A)参照)、ローダー440下面のフィルム吸着部に裁断済みMEAを吸着する。その後、昇降テーブル424(図9参照)の裁断済みMEAの吸着を解放して、当該MEAをローダー440だけで吸着し、ローダー440を図示しないMEGA作製ゾーンに搬出して受け渡す(図12(B)参照)。この受け渡しに伴って、ステップS300でのピッチ単位での搬送が行われることから、図12(c)に示すように、裁断済み箇所の電解質膜フィルム20Fについては、フィルム幅両端側で長手方向に繋がって裁断ゾーンCzからピッチ単位で排出搬送される。そして、ピッチ単位排出巻取部360では、電解質膜フィルム20Fは、フィルム幅両端側で長手方向に繋がった形態でピッチ単位で巻き取り回収される。その一方、裁断ゾーンCzに未到達であった部位の電極接合済み電解質膜フィルム20Fは、新たに裁断を受けるべく、図12(c)に示すように、ピッチ単位で裁断ゾーンCzに搬入搬出されることになる。
ステップS250にて、カソード22の算出寸法が適合電極形状寸法より逸脱して否定判定すると、制御装置500は、既述したステップS260〜S290をスキップして裁断を行うことなく、ステップS300での既述したピッチ単位での搬送と巻き取り回収を行う。図13はカソード22の形状が不適切であるとして裁断を行わなかった場合の電極接合済み電解質膜フィルム20Fの搬送とその巻き取り回収の様子を示す説明図である。カソード22の形状逸脱により電極接合済み電解質膜フィルム20Fの裁断を行わない場合は、図13に示すように、下段側裁断刃420と上段側裁断刃430およびローダー440を駆動することなくピッチ単位での搬送を行うので、製品形状のMEAへの裁断がなられないまま、電極接合済み電解質膜フィルム20Fは、裁断済みの箇所に連続したフィルム状の状態で裁断ゾーンCzから排出搬送される。そして、ピッチ単位排出巻取部360では、電解質膜フィルム20Fは、フィルム状のままピッチ単位で巻き取り回収される。その一方、裁断ゾーンCzに未到達であった部位の電極接合済み電解質膜フィルム20Fは、裁断実行時と同様に、新たに裁断を受けるべく、図12(c)に示すように、ピッチ単位で裁断ゾーンCzに搬入搬出されることになる。
図3のステップS120では、その詳細工程である上記のステップS290にて、製品形状(図2参照)で裁断済みのMEAに、アノード21および電解質膜20と同寸のアノード側ガス拡散層23を接合済みの矩形状の半製品MEGAが得られる。よって、ステップS120に続くステップS130では、得られた矩形状の半製品MEGAのカソード22の側に、カソード22と同形状に形成済みのカソード側ガス拡散層24を、ホットプレス等の手法にて接合し、MEAをその両側でアノード側ガス拡散層23とカソード側ガス拡散層24で挟持した矩形状のMEGAを得る。こうして得た矩形状のMEGAについては、これを、他の燃料電池製造ラインに出荷したり、当該ライン用の材料として販売等することもできる。
次いで、このMEGAをセパレーター25とセパレーター26とで挟持して単セル15を作製し(ステップS130)、所定数の単セル15を積層してスタック状に組み立て、これを積層方向に締結する(ステップS140)。これにより、図1に示した燃料電池10が得られる。
以上説明したように、本実施形態のフィルム裁断装置300は、裁断機構400の裁断ゾーンCzにピッチ単位で搬入搬送されて停止した電極接合済み電解質膜フィルム20Fに形成済みのカソード22の形状を、各コーナーごとのイメージセンサー410にて撮像した上で、その撮像画像を、カソード22に対して求められる適合電極形状と対比して、カソード22の形状適否を判定する(ステップS220〜250;図10)。そして、既に形成済みのカソード22の形状が所定の許容範囲内で適合電極形状と一致してカソード形状が適正と判定した場合に限って、下段側裁断刃420および上段側裁断刃430によるMEAの製品形状への裁断を実行する(ステップS250肯定判定〜S280)。このため、本実施形態のフィルム裁断装置300は、形状が適正と判定されたカソード22の形成箇所での裁断を受けた電解質膜フィルム20Fを裁断ゾーンCzからピッチ単位で排出搬送すると共に、形状が不適正と判定されたカソード22の形成箇所の電解質膜フィルム20Fについては、MEAへの製品形状への裁断を行わないまま、裁断済み箇所の電解質膜フィルム20Fに連続したフィルム状の状態で裁断ゾーンCzからピッチ単位で排出搬送する。よって、本実施形態のフィルム裁断装置300によれば、形状適正なカソード22に対応したMEAしか裁断してMEGAの作製に用いないことから、MEAへの裁断後の仕分けをそもそも必要としない。この結果、本実施形態のフィルム裁断装置300によれば、仕分け確度の低下をそもそも来さないばかりか、仕分けに伴う機器構成や作業工程も不要となり、MEA裁断とその後のMEGA作製の簡便化を図ることができる。換言すれば、本実施形態によれば、裁断後の仕分けを必要としないが故に仕分け確度の低下を来すことが無く、仕分けに伴う機器構成や作業工程も不要なフィルム裁断装置300を提供できる。
また、本実施形態のフィルム裁断装置300では、カソード22の形状適否を、カソード22の各コーナーに対応したイメージセンサー410の撮像画像に基づいて行い、その撮像に際しては、電解質膜フィルム20Fを一旦停止させる。よって、本実施形態のフィルム裁断装置300によれば、カソード22についての電極触媒層形状の適否判定を簡便化できると共に、イメージセンサー410から得た撮像結果に基づいた電極触媒層の形状適否の判定精度を高めることができる。
また、本実施形態のフィルム裁断装置300では、電解質膜フィルム20Fをその上下から裁断する下段側裁断刃420と上段側裁断刃430の上下段裁断刃を、裁断ゾーンCzにおいて電解質膜フィルム20Fに対してxy軸方向に移動可能に備え(図8)、その上で、上下段裁断刃を、イメージセンサー410の撮像したカソード22の撮像結果に基づいて、電解質膜フィルム20Fに対して位置合わせする(ステップS260〜S280)。よって、本実施形態のフィルム裁断装置300によれば、電解質膜フィルム20FからMEA、詳しくはアノード側ガス拡散層23を有する半製品MEGAを精度良く裁断できると共に、イメージセンサー410の撮像結果を形状適否判定と裁断刃の位置合わせに兼用でき、機器構成の簡略化や処理工程の簡便化を図ることができる。
また、本実施形態では、カソード22については、MEAの製品形状より小さい適合電極形状で電解質膜フィルム20Fに形成し(図5参照)、アノード21とアノード側ガス拡散層23については、これらを、MEAの製品形状より大きい形状で電解質膜フィルム20Fに形成した。よって、本実施形態のフィルム裁断装置300によれば、裁断後のMEA、詳しくはアノード側ガス拡散層23を有する半製品MEGAにおいて、カソード22を製品形状より小さい適合電極形状のまま残し、アノード21とアノード側ガス拡散層23については、これらを製品形状と同形状で残すことができる。
この他、本実施形態のフィルム裁断装置300では、裁断機構400にてMEAの裁断を図る前に、アノード側ガス拡散層23を、電解質膜フィルム20Fに既に形成済みのアノード21に、MEAの製品形状より大きい形状で接合する。よって、電解質膜フィルム20Fは、裁断機構400の裁断ゾーンCzにて、電解質膜フィルム20Fより剛性に勝るアノード側ガス拡散層23にて下支えされた状態で、裁断を受ける。この結果、本実施形態のフィルム裁断装置300によれば、アノード側ガス拡散層23の下支えによりフィルムの伸びやシワが抑制された状態で、電解質膜フィルム20Fを裁断できるので、形状適否の判定精度向上と上下裁断刃の正確な位置合わせと相まって、高い形状精度でMEAを裁断作製できる。
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、或いは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
また、上記の実施形態では、裁断機構400での製品形状への裁断対象を、アノード21とカソード22に加えアノード側ガス拡散層23を接合済みの電極接合済み電解質膜フィルム20Fとしたが、アノード側ガス拡散層23を接合しないままの電極接合済み電解質膜フィルム20Fを、既述したように製品形状に裁断するようにすることもできる。この場合には、図7において、アノードガス拡散層供給系320を省略すればよい。この場合、バックフィルムBFをフィルム供給系310にて剥ぎ取らないようにして、このバックフィルムBFごとMEA形状に裁断し、その後に、裁断済みのバックフィルムBFを剥離するようにもできる。そして、製品形状に裁断済みの矩形状のMEAに対して、図3のステップS120にて、それぞれ矩形状に形成済みのアノード側ガス拡散層23とカソード側ガス拡散層24とを接合して、MEGAを形成すればよい。
この他、上記の実施形態では、電解質膜フィルム20Fにおけるアノード21の形成ピッチと、カソード支持フィルムDFにおけるカソード22の形成ピッチを揃えて、アノード21とカソード22が一体一で対応するようにしたが、これに限らない。図14はMEAの作製過程で複数のカソード22にアノード21を対応付けた形態を説明する説明図である。図示するように、この形態では、隣り合う二つのカソード22に対して、電解質膜フィルム20Fを挟んでアノード21が対向するよう、アノード21を電解質膜フィルム20Fに形成する。こうしてアノード21とカソード22とが接合した電極接合済み電解質膜フィルム20Fであっても、裁断機構400の裁断ゾーンCzにピッチ単位で搬入搬送される個々のカソード22について、ステップS220の撮像画像入力を行い、その上で、ステップS230以降の処理を実行すればよい。アノード21を帯状に電解質膜フィルム20Fに形成した形態でも同様である。
また、上記の実施形態では、裁断ゾーンCzにおけるMEA裁断を下段側裁断刃420と上段側裁断刃430にて行ったが、矩形形状でのレーザー照射が可能なレーザー裁断機器や、レーザー照射位置を縦横の2次元的に走査可能なレーザー裁断機器にて、電極接合済み電解質膜フィルム20Fを裁断ゾーンCzにて裁断することもできる。こうしたレーザー裁断であれば、裁断ゾーンCzにおいて、電解質膜フィルム20Fを搬送したままMEAの製品形状に裁断できる。