JP5856261B2 - 可溶性ヒアルロニダーゼの大規模生産 - Google Patents

可溶性ヒアルロニダーゼの大規模生産 Download PDF

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Description

[関連出願]
米国仮特許出願第61/068,622号(発明者:David BakerおよびLouis Bookbinder;発明の名称「LARGE-SCALE PRODUCTION OF SOLUBLE HYALURONIDASE」;出願日:2008年3月6日)に基づく優先権の利益を主張する。
本願は、米国特許出願第10/795,095号(発明者:Louis Bookbinder、Anirban KunduおよびGregory I.Frost;発明の名称「SOLUBLE HYALURONIDASE GLYCOPROTEIN (SHASEGP), PROCESS FOR PREPARING THE SAME, USES AND PHARMACEUATICAL COMPOSITIONS COMPRISING THEREOF」;出願日:2004年3月5日;公開番号:米国特許出願公開第20040268425号)の一部継続出願である米国特許出願第11/065,716号(発明者:Louis Bookbinder、Anirban Kundu、Gregory I.Frost、Michael F.Haller, Gilbert A.KellerおよびTyler M.Dylan;発明の名称「SOLUBLE GLYCOSAMINOGLYCANS AND METHODS OF PREPARING AND USING SOLUBLE GLYCOSAMINOGLYCANS」;出願日:2005年2月23日;公開番号:米国特許出願公開第20050260186号)の一部継続出願である米国特許出願第11/238,171号(発明者:Louis Bookbinder、Anirban Kundu、Gregory I.Frost、Michael F.Haller、Gilbert A.KellerおよびTyler M.Dylan;発明の名称「SOLUBLE GLYCOSAMINOGLYCANS AND METHODS OF PREPARING AND USING SOLUBLE GLYCOSAMINOGLYCANS」;出願日:2005年9月27日;公開番号:米国特許出願公開第20060104968号)に関係する。上記各特許出願の内容はその全てが引用により本明細書に組み込まれる。
[発明の分野]
組換えヒトタンパク質を大規模生産するための方法を提供する。
[背景]
ヒアルロニダーゼは、細胞外マトリックスの必須構成要素であり間質障壁の主要構成成分であるヒアルロン酸(ヒアルロナンまたはヒアルロネートとも呼ばれる)を分解する酵素のファミリーである。ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸の加水分解を触媒することによって、ヒアルロン酸の粘度を低下させ、それによって組織透過性を増加させる。そこでヒアルロン酸は、例えば他の薬剤、薬物およびタンパク質と一緒に、それらの分散および送達を強化するための展着剤または分散剤として使用されてきた。ヒアルロニダーゼには他の治療用途および化粧用途もある。治療用途および化粧用途へのヒアルロニダーゼの使用が増加しているので、大量の精製ヒアルロニダーゼが必要とされている。したがって、本明細書に記載する数ある目的には、ヒトヒアルロニダーゼの精製方法を提供することが含まれる。
[概要]
本発明は可溶性ヒアルロニダーゼを生産し精製するための方法を提供する。特に本発明は可溶性rHuPH20を生産し精製するための方法を提供する。また、可溶性rHuPH20を含有する細胞培地および収集細胞培養液も提供する。ここに提供される方法は、あらゆる量の可溶性ヒアルロニダーゼ、例えばrHuPH20を生産し精製するために使用することができる。例えば、本明細書に記載する方法およびステップがスケールアップまたはスケールダウンに馴染むことは、当業者には明白であるだろう。
本明細書に記載する方法は、大量の可溶性rHuPH20を生産し精製するために使用することができる。可溶性rHuPH20を生産するための本明細書に記載する方法は、a)バイオリアクター中の細胞培地に、可溶性rHuPH20をコードする細胞の接種材料を接種して、細胞培養物を作るステップ、ここで、細胞は可溶性rHuPH20をコードする核酸を150〜300コピー含有し、バイオリアクターは少なくとも100リットルの細胞培養物を含有し、細胞培養物100リットルにつき約1010〜1011個の細胞が接種され、細胞は設定温度で培養される;b)細胞に、細胞成長およびピーク細胞密度を増加させ、可溶性rHuPH20合成を増加させるのに十分な量のグルコース、L-アラニル-L-グルタミン、ヒトインスリンおよび酵母エキスを含有する第1フィード培地を供給するステップ、ここで、フィード培地は細胞培養体積の4%の体積で培養物に加えられる;c)細胞に、可溶性rHuPH20合成を増加させ、細胞周期停止を誘発するのに十分な量のグルコース、L-アラニル-L-グルタミン、酵母エキスおよび酪酸ナトリウムを含有する第2フィード培地を供給するステップ、ここで、L-アラニル-L-グルタミンの量は第2ステップにおけるL-アラニル-L-グルタミンの量と比較して減らされ、酵母エキスの量はステップb)における酵母エキスの量と比較して増やされ、フィード培地は細胞培養体積の4%の体積で培養物に加えられ、温度は、ステップa)における温度と比較して、細胞周期停止を増加させ、細胞生存度を増加させ、可溶性ヒアルロニダーゼを安定化するのに十分な温度まで下げられる;d)細胞に、可溶性rHuPH20合成を増加させ、細胞周期停止を増加させるのに十分な量のグルコース、L-アラニル-L-グルタミン、酵母エキスおよび酪酸ナトリウムを含有する第3フィード培地を供給するステップ、ここで、フィード培地は細胞培養体積の4%の体積で培養物に加えられ、L-アラニル-L-グルタミンおよびグルコースの量はステップc)におけるL-アラニル-L-グルタミンおよびグルコースの量と比較して減らされ、酵母エキスおよび酪酸ナトリウムの量はステップc)における酵母エキスおよび酪酸ナトリウムの量と比較して増やされ、温度は、ステップc)における温度と比較して、細胞周期停止を増加させ、細胞生存度を増加させ、可溶性ヒアルロニダーゼを安定化するのに十分な温度まで下げられる;e)細胞に、可溶性rHuPH20合成を増加させ、細胞周期停止を増加させるのに十分な量のグルコース、L-アラニル-L-グルタミン、酵母エキスおよび酪酸ナトリウムを含有する第4フィード培地を供給するステップ、ここで、L-アラニル-L-グルタミンおよびグルコースの量はステップd)におけるL-アラニル-L-グルタミンおよびグルコースの量と比較して減らされ、酪酸ナトリウムの量はステップd)における酪酸ナトリウムの量と比較して減らされ、温度は、ステップd)における温度と比較して、細胞周期停止を増加させ、細胞生存度を増加させ、可溶性ヒアルロニダーゼを安定化するのに十分な温度まで下げられ、フィード培地は細胞培養体積の4%の体積で培養物に加えられる;f)生存度が低下して少なくともまたは約50%を下回るまで細胞を培養するステップ;g)収集細胞培養液を得るステップ;およびh)収集培養液から可溶性rHuPH20を精製するステップを含むことができる。
収集細胞培養液は精製に先だって濾過することができる。いくつかの例では、ステップa)における温度が37℃であり、ステップc)における温度が36.5℃であり、ステップd)における温度が36℃であり、ステップd)における温度が35.5℃である。可溶性rHuPH20精製は、ビーズ状(beaded)架橋アガロースカラムクロマトグラフィー、ビーズ状架橋フェニル置換アガロースカラムクロマトグラフィー、アミノフェニルボロネートカラムクロマトグラフィーおよびヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィーによって達成することができる。
ある例では、可溶性rHuPH20を生産するための方法が、a)バイオリアクター中の細胞培地に、可溶性rHuPH20をコードする細胞の接種材料を接種して、細胞培養物を作るステップ、ここで、細胞は可溶性rHuPH20をコードする核酸を150〜300コピー含有し、バイオリアクターは少なくとも100リットルの細胞培養物を含有し、接種細胞密度は4×105細胞/mLまたはその前後であり、細胞は37℃で培養される;b)細胞に、33g/Lグルコース、32mM L-アラニル-L-グルタミン、16.6g/L酵母エキスおよび33mg/Lインスリンを含有するかその前後の濃度の各成分を含有する第1フィード培地を供給するステップ、ここで、フィード培地は細胞培養体積の4%の体積で培養物に加えられる;c)細胞に、33g/Lグルコース、16mM L-アラニル-L-グルタミン、33.4g/L酵母エキスおよび0.92g/L酪酸ナトリウムを含有するかその前後の濃度の各成分を含有する第2フィード培地を供給するステップ、ここで、フィード培地は細胞培養体積の4%の体積で培養物に加えられ、温度は36.5℃に下げられる;d)細胞に、50g/Lグルコース、10mM L-アラニル-L-グルタミン、50g/L酵母エキスおよび1.8g/L酪酸ナトリウムを含有するかその前後の濃度の各成分を含有する第3フィード培地を供給するステップ、ここで、フィード培地は細胞培養体積の4%の体積で培養物に加えられ、温度は36℃に下げられる;e)細胞に、33g/Lグルコース、6.6mM L-アラニル-L-グルタミン、50g/L酵母エキスおよび0.92g/L酪酸ナトリウムを含有するかその前後の濃度の各成分を含有する第4フィード培地を供給するステップ、ここで、フィード培地は細胞培養体積の4%の体積で培養物に加えられ、温度は36℃に下げられる;f)生存度が低下して少なくともまたは約50%を下回るまで細胞を培養し続けるステップ;g)収集細胞培養液を得るステップ;h)収集細胞培養液を濾過するステップ;およびi)ビーズ状架橋アガロースカラムクロマトグラフィー、ビーズ状架橋フェニル置換アガロースカラムクロマトグラフィー、アミノフェニルボロネートカラムクロマトグラフィーおよびヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーを使ってrHuPH20を収集培養液から精製するステップを含む。
もう一つの例では、可溶性rHuPH20を生産するための方法が、a)バイオリアクター中の細胞培地に、可溶性rHuPH20をコードする細胞の接種材料を接種して、細胞培養物を作るステップ、ここで、細胞は可溶性rHuPH20をコードする核酸を150〜300コピー含有し、バイオリアクターは少なくとも100リットルの細胞培養物を含有し、接種細胞密度は4×105細胞/mLまたはその前後であり、細胞は37℃またはその前後で培養される;b)細胞に、33g/Lグルコース、32mM L-アラニル-L-グルタミン、83.3g/L酵母エキスおよび33mg/Lインスリンを含有するかその前後の濃度の各成分を含有する第1フィード培地を供給するステップ、ここで、フィード培地は細胞培養体積の4%または約4%の体積で培養物に加えられる;c)細胞に、33g/Lグルコース、13mM L-アラニル-L-グルタミン、166.7g/L酵母エキスおよび0.92g/L酪酸ナトリウムを含有するかその前後の濃度の各成分を含有する第2フィード培地を供給するステップ、ここで、フィード培地は細胞培養体積の4%またはその前後の体積で培養物に加えられ、温度は36.5℃に下げられる;d)細胞に、50g/Lグルコース、10mM L-アラニル-L-グルタミン、250g/L酵母エキスおよび1.8g/L酪酸ナトリウムを含有するかその前後の濃度の各成分を含有する第3フィード培地を供給するステップ、ここで、フィード培地は細胞培養体積の4%または約4%の体積で培養物に加えられ、温度は36℃に下げられる;e)細胞に、33g/Lグルコース、6.7mM L-アラニル-L-グルタミン、250g/L酵母エキスおよび0.92g/L酪酸ナトリウムを含有するかその前後の濃度の各成分を含有する第4フィード培地を供給するステップ、ここで、フィード培地は細胞培養体積の4%または約4%の体積で培養物に加えられ、温度は36℃に下げられる;f)生存度が低下して少なくともまたは約50%を下回るまで細胞を培養し続けるステップ;g)収集細胞培養液を得るステップ;h)収集細胞培養液を濾過するステップ;およびi)ビーズ状架橋アガロースカラムクロマトグラフィー、ビーズ状架橋フェニル置換アガロースカラムクロマトグラフィー、アミノフェニルボロネートカラムクロマトグラフィーおよびヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーを使ってrHuPH20を収集培養液から精製するステップを含む。
いくつかの例では、バイオリアクター中の細胞培養物の体積が、200、300、400、500、1000、1500、2000、2500、3000もしくは3500リットルまたはその前後である。いくつかの例では、本明細書に記載する方法を使って、100Lの細胞培養物につき、少なくともまたは約1、5、10、15、20、25、30、35または40グラムの可溶性rHuPH20が生産される。可溶性rHuPH20の比活性は少なくともまたは約80000、100000、120000、140000、160000または180,000単位/mgであることができる。可溶性rHuPH20をコードする細胞は、いくつかの例では、DG44 CHO細胞であることができる。さらに、rHuPH20は、配列番号47に記載の核酸によってコードされうる。
本発明は、5000単位/mLより高い酵素活性、例えば10,000、12,000、14,000、16,000、18,000、20,000、22,000または24,000単位/mLの酵素活性を持つ可溶性rHuPH20を含有する細胞培養培地を提供する。本発明は、5000単位/mLより高い酵素活性、例えば10,000、12,000、14,000、16,000、18,000、20,000、22,000または24,000単位/mLの酵素活性を持つ、可溶性rHuPH20を含有する収集細胞培養液も提供する。
[詳細な説明]
概略
A.定義
B.外観
C.ヒアルロニアダーゼ
1.構造と機能
2.PH20
3.ヒアルロニダーゼの治療用途
a.展着剤としての使用
b.皮下輸液における使用
c.硝子体切除術ならびに眼科的障害および状態における使用
d.遺伝子治療における使用
e.化粧用途
f.臓器移植における使用
g.がん処置における使用
h.脳でのグリコサミノグリカン蓄積の処置における使用
i.心血管疾患でのグリコサミノグリカン蓄積の処置における使用
j.肺疾患における使用
k.他の用途
D.ヒアルロニダーゼ発現細胞
a.3D35M細胞
b.2B2細胞
E.細胞培養の拡大
F.タンパク質生産
G.タンパク質濃度およびバッファー交換
H.精製
1.ビーズ状架橋アガロースカラム
2.ビーズ状架橋フェニル置換アガロースカラム
3.アミノフェニルボロネートカラム
4.ヒドロキシアパタイトカラム
6.ウイルス除去、タンパク質濃縮およびバッファー交換
I.充填
J.モニタリングおよびアッセイ
1.条件のモニタリング
2.可溶性rHuPH20生産のモニタリング
K.実施例
A.定義
別段の定義をしない限り、本明細書において使用する技術用語および科学用語は全て、本発明が属する技術分野の当業者に共通して理解されているとおりの意味を持つ。本明細書の全体にわたって言及する特許、特許出願、出願公開および刊行物、Genbank配列、データベース、ウェブサイトおよび他の公表された資料は、その全てが引用により本明細書に組み込まれる。用語に関する定義が本明細書に複数存在する場合は、この項における定義が優先される。URLまたは他の同様の識別子もしくはアドレスに言及する場合、そのような識別子は変更されることがあり、インターネット上の特定情報は移り変わることがあるが、インターネットを検索することによって等価な情報を見つけ出すことができると理解される。それに言及することは、そのような情報が入手可能であることおよび公に流布されていることの証明になる。
本明細書にいうヒアルロニダーゼはヒアルロン酸を分解する酵素を指す。ヒアルロニダーゼには、細菌ヒアルロニダーゼ(EC4.2.99.1)、ヒル、他の寄生虫、および甲殻類に由来するヒアルロニダーゼ(EC3.2.1.36)、および哺乳類型ヒアルロニダーゼ(EC3.2.1.35)が含まれる。また、ヒアルロニダーゼには、例えば限定するわけではないがマウス、イヌ、ネコ、ウサギ、鳥類、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、魚類、カエル、細菌など、非ヒト由来のもの、ならびにヒル、他の寄生虫、および甲殻類に由来するものが、いずれも含まれる。典型的な非ヒトヒアルロニダーゼとして、ウシ(配列番号10)、スズメバチ(yellow jacket wasp)(配列番号11および12)、ミツバチ(配列番号13)、クロスズメバチ(white-face hornet)(配列番号14)、アシナガバチ(paper wasp)(配列番号15)、マウス(配列番号16〜18、29)、ブタ(配列番号19〜20)、ラット(配列番号21〜23、28)、ウサギ(配列番号24)、ヒツジ(配列番号25)、オランウータン(配列番号26)、カニクイザル(配列番号27)、モルモット(配列番号30)、黄色ブドウ球菌(Staphlococcus aureus)(配列番号31)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)(配列番号32)、およびウェルシュ菌(Clostridium perfringens)(配列番号33)由来のヒアルロニダーゼが挙げられる。典型的なヒトヒアルロニダーゼとして、HYAL1(配列番号34)、HYAL2(配列番号35)、HYAL3(配列番号36)、HYAL4(配列番号37)、およびPH20(配列番号1)が挙げられる。ヒアルロニダーゼには、可溶性ヒトPH20および可溶性rHuPH20も含まれる。
ヒアルロニダーゼへの言及は、前駆体ヒアルロニダーゼポリペプチドおよび成熟ヒアルロニダーゼポリペプチド(シグナル配列が除去されているものなど)、活性を持つその切断型(truncated form)が含まれ、対立遺伝子変異型および種変異型、スプライス変異型によってコードされる変異型、および他の変異型、例えば配列番号1および10〜37に記載の前駆体ポリペプチドまたはその成熟型に対して少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を持つポリペプチドを包含する。例えば、ヒアルロニダーゼへの言及は、配列番号48〜49に記載するヒトPH20前駆体ポリペプチド変異型も包含する。ヒアルロニダーゼには、化学修飾または翻訳後修飾を含有するもの、および化学修飾または翻訳後修飾を含有しないものも含まれる。そのような修飾には、例えばPEG化、アルブミン付加、グリコシル化、ファルネシル化、カルボキシル化、ヒドロキシル化、リン酸化、および当技術分野において知られる他のポリペプチド修飾が含まれるが、これらに限るわけではない。
本明細書にいう可溶性ヒトPH20またはsHuPH20は、発現した時にポリペプチドが可溶性になるような形でC末端のグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)付着部位の全部または一部を欠いている成熟ポリペプチドを包含する。典型的なsHuPH20ポリペプチドとして、配列番号4〜9および45〜46のいずれか一つに記載のアミノ酸配列を持つ成熟ポリペプチドが挙げられる。そのような典型的sHuPH20ポリペプチドの前駆体ポリペプチドはシグナル配列を含む。前駆体の典型例は配列番号3および38〜44に記載するものであり、これらはそれぞれ35アミノ酸のシグナル配列をアミノ酸位置1〜35に含有している。可溶性HuPH20ポリペプチドには、本明細書に記載する生産および精製方法の途中またはその後に分解されたものも含まれる。
本明細書にいう可溶性rHuPH20は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で組換え発現されるヒトPH20の可溶型を指す。可溶性rHuPH20は、シグナル配列を含む配列番号47に記載の核酸によってコードされる。また、その対立遺伝子変異型および他の可溶性変異型であるDNA分子も含まれる。可溶性rHuPH20をコードする核酸は成熟ポリペプチドを分泌するCHO細胞中で発現される。培養培地中に生産された状態ではC末端に不均一性が存在するので、生成物は配列番号4〜9の1つ以上をさまざまな存在比で含みうる分子種の混合物を含む。例えば配列番号48〜49に記載の前駆体ヒトPH20ポリペプチドに対応するものなど、対応する対立遺伝子変異型および他の変異型も含まれる。他の変異型は、それらがヒアルロニダーゼ活性を保持し、可溶性である限りにおいて、配列番号4のいずれかと60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を持つことができる。
本明細書にいう「可溶性rHuPH20発現細胞」は、可溶性rHuPH20を発現させる任意のCHO細胞を指す。典型的な可溶性rHuPH20発現細胞には2B2細胞および3D35M細胞が含まれる。可溶性rHuPH20発現細胞は、配列番号55に記載の配列を含有する核酸が導入されているCHO細胞である。
本明細書にいうヒアルロニダーゼ活性は、ヒアルロニダーゼポリペプチドが示す任意の活性を指す。そのような活性はインビトロおよび/またはインビボで試験することができ、これには例えば、ヒアルロン酸の切断を達成する活性などの酵素活性、分散剤または展着剤として作用する能力、および抗原性などが含まれるが、これらに限るわけではない。ヒアルロニダーゼ活性は、ヒアルロニダーゼポリペプチドが示す任意の活性を指す。
本明細書にいう酵素活性は、ヒアルロン酸などの基質を切断するヒアルロニダーゼの活性(インビトロ酵素アッセイで評価されるもの)を指す。可溶性rHuPH20などのヒアルロニダーゼの酵素活性を決定するためのインビトロアッセイは、当技術分野では知られており、本明細書でも説明する。典型的なアッセイには、切断されていないヒアルロン酸が血清アルブミンと結合した時に形成される不溶性沈殿物を検出することによってヒアルロニダーゼによるヒアルロン酸の切断を間接的に測定する後述の微小濁度(microturbidity)アッセイ(例えば実施例9およびI節を参照されたい)がある。
可溶性rHuPH20に関して本明細書にいう比活性とは、可溶性rHuPH20の量と比較した酵素活性である。比活性は酵素活性(単位/mL)をタンパク質濃度(mg/mL)で割ることによって算出される。
本明細書にいう「少なくとも1つの活性を示す」または「少なくとも1つの活性を保持する」とは、配列番号4〜9に記載の任意の可溶性rHuPH20と比較して、同じ条件下で、変異型可溶性rHuPH20が示す活性を指す。典型的には、配列番号4〜9に記載の可溶性rHuPH20の少なくとも1つの活性を保持するまたは示す変異型可溶性rHuPH20は、配列番号4〜9に記載の可溶性rHuPH20の活性の0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%もしくはそれ以上、またはその前後の活性を保持している。典型的な活性には、ヒアルロニダーゼ活性および酵素活性などがあるが、これらに限るわけではない。
本明細書にいうビーズ状架橋アガロースカラムクロマトグラフィーは、ビーズ状架橋アガロースが充填されたカラムを用いるクロマトグラフィーを指す。ビーズ状架橋アガロースの典型例はQ Sepharose(商標)である。
本明細書にいうビーズ状架橋フェニル置換アガロースカラムクロマトグラフィーは、ビーズ状フェニル置換架橋アガロースが充填されたカラムを用いるクロマトグラフィーを指す。ビーズ状フェニル置換架橋アガロースの典型例はPhenyl Sepharose(商標)である。
本明細書にいうアミノフェニルボロネートカラムクロマトグラフィーは、アミノフェニルボロネートアガロースが充填されたカラムを用いるクロマトグラフィーを指す。
本明細書にいうヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーは、ヒドロキシアパタイトが充填されたカラムを用いるクロマトグラフィーを指す。
本明細書にいう収集された細胞培養液または収集細胞培養液(HCCF)は、細胞をバイオリアクターから収集し、細胞培養培地を細胞、細胞片および他の凝集塊から分離した後に得られる液体を指す。バイオリアクターから収集された細胞培養物を濾過して培養物を清澄化することにより、細胞、細胞片および他の凝集物を除去して収集細胞培養液を残すことができる。
本明細書にいう細胞密度は、所与の体積の培地中にある細胞の数を指す。
本明細書にいう細胞培養物または培養物は、細胞の生存度を維持しまたは細胞を成長させるのに適した条件下で培地に懸濁された細胞集団を指す。
本明細書にいう培地、細胞培地または細胞培養培地は、培養物中の細胞の成長を促進するのに十分な栄養素を含有する溶液を指す。典型的には、これらの溶液は、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、ビタミン、エネルギー源、脂質および/または微量元素を含有する。培地は他の補助剤、例えばホルモン、成長因子および成長阻害剤なども含有することができる。
本明細書にいう天然α-アミノ酸の残基とは、ヒトにおいてアミノアシルtRNA分子がそのコグネートmRNAコドンを特異的に認識することによってタンパク質中に組み込まれる、自然界に見いだされる20種類のα-アミノ酸の残基である。
細胞成長速度、ピーク細胞密度、タンパク質合成または細胞周期停止などのパラメータを増加させる物質に関して、本明細書にいう「を増加させるのに十分な量で」とは、その物質が存在しない場合に観察されるものと比較して、これらのパラメータの一つの増加が達成されるような物質の量を指す。パラメータは物質の存在下および非存在下で評価することができ、当該物質の非存在下と比較してパラメータ(細胞増殖速度、ピーク細胞密度、タンパク質合成または細胞周期停止など)を増加させる物質の量を、決定することができる。物質存在下での成長速度、ピーク細胞密度、タンパク質合成または細胞周期停止は、物質非存在下での成長速度、ピーク細胞密度、タンパク質合成または細胞周期停止と比較して、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%もしくはそれ以上、またはその前後のパーセンテージ、増加させることができる。
本明細書にいう核酸には、DNA、RNA、およびその類似体、例えばペプチド核酸(PNA)、ならびにその混合物が含まれる。核酸は一本鎖または二本鎖であることができる。プローブまたはプライマー(これは、蛍光ラベルまたは放射性ラベルなどの検出可能なラベルなどによって、標識されていてもよい)に関する場合は、一本鎖分子が考えられる。そのような分子は、典型的には、ライブラリーをプローブまたはプライミングするために、その標的が統計的にユニークであるか、または低いコピー数(典型的には、5未満、一般的には3未満)を持つことになるような長さを持つ。一般にプローブまたはプライマーは、関心対象の遺伝子と相補的なまたは同一な配列を持つ少なくとも14、16または30個の連続するヌクレオチドを含有する。プローブおよびプライマーは10、20、30、50、100核酸長(nucleic acids long)またはそれ以上の長さであることができる。
本明細書にいうペプチドは、長さが2〜40アミノ酸であるポリペプチドを指す。
本明細書において、本明細書に記載するさまざまなアミノ酸配列に見いだされるアミノ酸は、その公知の三文字記号または一文字記号(表1)に従って同定される。さまざまな核酸フラグメント中に見いだされるヌクレオチドは、当技術分野で使用される標準的な一文字表記で指定される。
本明細書にいう「アミノ酸」は、アミノ基とカルボン酸基とを含有する有機化合物である。ポリペプチドは2つ以上のアミノ酸を含有する。本明細書に関して、アミノ酸には、20種の天然アミノ酸、非天然アミノ酸およびアミノ酸類似体(すなわちα-炭素が側鎖を持つアミノ酸)が含まれる。
本明細書にいう「アミノ酸残基」は、ポリペプチドのペプチド結合が化学的に消化(加水分解)された時に形成されるアミノ酸を指す。本明細書に記載するアミノ酸残基は「L」異性体型であると考えられる。「D」異性体型の残基は、そのように表記され、ポリペプチドが所望の機能的性質を保持する限り、任意のLアミノ酸残基の代わりにそれを使用することができる。NH2は、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基を指す。COOHは、ポリペプチドのカルボキシル末端に存在する遊離カルボキシル基を指す。J.Biol.Chem., 243:3552-3559 (1969)に記載され、37C.F.R.§1.821〜1.822で採用された標準的ポリペプチド命名法に従って、アミノ酸残基の略号を表1に示す。
表1−対応表
Figure 0005856261
本明細書において式で表されるアミノ酸残基配列は、全て、左から右に、アミノ末端からカルボキシル末端に向かう通常の向きで表されていることに注意すべきである。また、「アミノ酸残基」という表現は、対応表(表1)に挙げたアミノ酸ならびに修飾アミノ酸および異常アミノ酸、例えば37C.F.R.§1.821〜1.822で言及され引用により本明細書に組み込まれるものを包含すると、広く定義される。さらにまた、アミノ酸残基配列の最初または最後にあるダッシュ記号は、1つ以上のアミノ酸残基のさらなる配列へのペプチド結合、アミノ末端基(例えばNH2)またはカルボキシル末端基(例えばCOOH)へのペプチド結合を示すことに注意すべきである。
本明細書にいう「天然アミノ酸」とは、ポリペプチド中に見いだされる20種類のL-アミノ酸を指す。
本明細書にいう「非天然アミノ酸」は、天然アミノ酸に類似する構造を持つが、天然アミノ酸の構造および反応性を模倣するように構造的に修飾されている有機化合物を指す。したがって非天然アミノ酸は、例えば20種類の天然アミノ酸以外のアミノ酸またはアミノ酸類似体を包含し、例えばアミノ酸のD-立体異性体(isostereomer)を含むが、これらに限るわけではない。典型的な非天然アミノ酸は本明細書に記載され、当業者に知られている。
本明細書にいうDNAコンストラクトは、DNAのセグメントが自然界には見いだされない形で組み合わされ隣接して配置されている一本鎖または二本鎖の線状または環状DNA分子である。DNAコンストラクトは、人為的操作の結果として存在し、操作された分子のクローンおよび他のコピーを含む。
本明細書において、2つのタンパク質または核酸間の「類似性」とは、タンパク質のアミノ酸配列間または核酸のヌクレオチド配列間の類縁性を指す。類似性は、残基の配列およびそこに含まれる残基の同一性および/または相同性の度合いに基づくことができる。タンパク質間または核酸間の類似性の度合いを評価するための方法は、当業者には知られている。例えば、配列類似性を評価する一方法では、2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を、それら配列間の同一性が最大レベルになるように整列させる。「同一性」とは、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列が不変である程度を指す。アミノ酸配列の整列では(また、ある程度はヌクレオチド配列の整列でも)、アミノ酸(またはヌクレオチド)の保存的相違および/または頻繁な置換も考慮することができる。保存的相違とは、関与する残基の物理化学的性質が維持されるような相違である。整列はグローバル(配列の全長にわたり、全ての残基を含む、比較配列の整列)またはローカル(配列のうち、最も類似する1または複数の領域だけを含む部分の整列)であることができる。
「同一性」そのものは、当技術分野で認められている意味を持ち、公表された技法を使って算出することができる(例えば「Computational Molecular Biology」Lesk,A.M.編、Oxford University Press、ニューヨーク、1988;「Biocomputing: Informatics and Genome Projects」Smith,D.W.編、Academic Press、ニューヨーク、1993;「Computer Analysis of Sequence Data, Part I」Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.編、Humana Press、ニュージャージー、1994;「Sequence Analysis in Molecular Biology」von Heinje,G.、Academic Press、1987;および「Sequence Analysis Primer」Gribskov,M.およびDevereux,J.編、M Stockton Press、ニューヨーク、1991)を参照されたい)。2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の同一性を測定するための方法はいくつか存在するが、「同一性」という用語は当業者にはよく知られている(Carillo,H.およびLipton,D., SIAM J Applied Math 48:1073 (1988))。
本明細書にいう相同(核酸および/またはアミノ酸配列に関して)は、約25%以上の配列相同性、典型的には、25%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上の配列相同性を意味し、必要であれば正確なパーセンテージを指定することができる。本明細書においては、「相同性」および「同一性」という用語は、別段の表示がない限り、しばしば可換的に使用される。一般に、相同率または同一率を決定するには、最も高度な一致が得られるように配列が整列される(例えば「Computational Molecular Biology」Lesk,A.M.編、Oxford University Press、ニューヨーク、1988;「Biocomputing: Informatics and Genome Projects」Smith,D.W.編、Academic Press、ニューヨーク、1993;「Computer Analysis of Sequence Data, Part I」Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.編、Humana Press、ニュージャージー、1994;「Sequence Analysis in Molecular Biology」von Heinje,G.、Academic Press、1987;および「Sequence Analysis Primer」Gribskov,M.およびDevereux,J.編、M Stockton Press、ニューヨーク、1991;Carilloら (1988) SIAM J Applied Math 48:1073を参照されたい)。配列相同性により、保存されているアミノ酸の数は、標準的な整列アルゴリズムプログラムで決定され、各供給者によって設定されたデフォルトギャップペナルティで使用することができる。実質的に相同な核酸分子は、典型的には、中ストリンジェンシーまたは高ストリンジェンシーで、関心対象の核酸の全長にわたってハイブリダイズする。ハイブリダイズする核酸分子中のコドンの代わりに縮重したコドンを含有する核酸分子も考えられる。
任意の2分子が、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%「同一」または「相同」なヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を持つかどうかは、Pearsonら (1988) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444に記載されているように、「FASTA」プログラムなどの公知コンピュータアルゴリズムを使用し、例えばデフォルトパラメータを使って決定することができる(他のプログラムには、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.ら, Nucleic Acids Research 12(I):387 (1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul,S.F.ら, J Molec Biol 215:403 (1990))がある
;「Guide to Huge Computers」Martin J.Bishop編、Academic Press、サンディエゴ、1994、およびCarilloら (1988) SIAM J Applied Math 48:1073)。例えば、米国国立バイオテクノロジー情報センターデータベースのBLAST機能を使って同一性を決定することができる。他の市販プログラムまたは公に利用可能なプログラムには、DNAStarの「MegAlign」プログラム(ウィスコンシン州マディソン)およびUniversity of Wisconsin Genetics Computer Group(UWG)の「Gap」プログラム(ウィスコンシン州マディソン)などがある。タンパク質分子および/または核酸分子の相同率または同一率は、例えば、GAPコンピュータプログラム(例えばNeedlemanら (1970) J.Mol.Biol. 48:443、SmithおよびWaterman (1981) Adv.Appl.Math. 2:482による改訂版)を使って配列情報を比較することによって決定することができる。簡単に述べると、GAPプログラムは、類似性を、整列させた記号(すなわちヌクレオチドまたはアミノ酸)のうち、類似しているものの数を、それら2つの配列の短い方の配列中の記号の総数で割ったものと定義する。GAPプログラムのデフォルトパラメータには、(1)SchwartzおよびDayhoff編「ATLAS OF PROTEIN SEQUENCE AND STRUCTURE」National Biomedical Research Foundation、353〜358頁(1979)に記載されているように、単項比較マトリックス(一致に対して1の値を、不一致に対して0の値を含有する)およびGribskovら (1986) Nucl.Acids Res. 14:6745の加重比較マトリックス;(2)各ギャップに対して3.0のペナルティおよび各ギャップの各記号に対して0.10の追加ペナルティ;および(3)エンドギャップ(end gap)に対するペナルティなしが含まれうる。
したがって、本明細書で使用する「同一性」または「相同性」という用語は、試験ポリペプチドまたはポリヌクレオチドと基準ポリペプチドまたはポリヌクレオチドとの間の比較を表す。本明細書で使用する「〜に少なくとも90%同一」という用語は、そのポリペプチドの基準核酸配列または基準アミノ酸配列に対する90〜99.99%の同一率を指す。90%以上のレベルの同一性とは、例えば、比較される試験ポリペプチドと基準ポリペプチドの長さが100アミノ酸であるとすると、基準ポリペプチド中のアミノ酸と異なる試験ポリペプチド中のアミノ酸が10%(すなわち100個中10個)を上回らないことを示す。同様の比較を、試験ポリヌクレオチドと基準ポリヌクレオチドの間でも行うことができる。そのような相違は、ポリペプチドの全長にわたってランダムに分布する点突然変異として体現される場合も、許容される最大値までの、例えば100個中10個のアミノ酸相違(約90%の同一性)までの、さまざまな長さを持つ1つ以上の位置にクラスターを形成する場合もありうる。相違は、核酸またはアミノ酸の置換、挿入または欠失と定義される。約85〜90%を上回る相同性または同一性のレベルでは、結果が、プログラムにも設定されたギャップパラメータにも依存しないはずであり、そのような高レベルの同一性は、多くの場合、ソフトウェアに頼らなくても手作業での整列によって、容易に評価することができる。
本明細書にいう、整列された配列とは、相同性(類似性および/または同一性)を使った、ヌクレオチド配列中またはアミノ酸配列中の対応する位置の整列を指す。典型的には、50%以上の類縁性を持つ2つ以上の配列が整列される。整列された一組の配列とは、対応する位置で整列させた2つ以上の配列を指し、RNAに由来する配列、例えばESTおよび他のcDNAを、ゲノムDNA配列と整列させたものを含みうる。
本明細書にいう「プライマー」は、適当な条件下(例えば4つの異なるヌクレオシド三リン酸およびDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼまたは逆転写酵素などの重合剤の存在下)、適当なバッファー中、適切な温度で、テンプレートに基づく(template-directed)DNA合成の開始点として作用することができる核酸分子を指す。一定の核酸分子が「プローブ」としても「プライマー」としても役立ちうることは理解されるだろう。ただしプライマーは伸長のために3'ヒドロキシル基を持つ。プライマーは、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素(RT)-PCR、RNA PCR、LCR、マルチプレックスPCR、パンハンドル(panhandle)PCR、キャプチャ(capture)PCR、発現(expression)PCR、3'および5'RACE、インサイチュー(in situ)PCR、ライゲーションによる(ligation-mediated)PCR、ならびに他の増幅プロトコールなどを含む、さまざまな方法で使用することができる。
本明細書にいう対立遺伝子変異型または対立遺伝子変異は、同じ染色体座を占める遺伝子の2つ以上の代替的形態のいずれかを指す。対立遺伝子変異は突然変異によって自然に発生し、集団内の表現型多型をもたらしうる。遺伝子突然変異はサイレント(コードされるポリペプチドを変化させない)であるか、変化したアミノ酸配列を持つポリペプチドをコードすることができる。「対立遺伝子変異型」という用語は、本明細書では、ある遺伝子の対立遺伝子変異型によってコードされるタンパク質を表すためにも使用される。典型的には、基準型の遺伝子は、ある集団またはある種の単一の基準メンバーから得られるポリペプチドの野生型および/または優勢型をコードする。通例、対立遺伝子変異型(2種間および3種以上の間での変異型を含む)は、同じ種から得られる野生型および優勢型と、典型的には少なくとも80%、90%またはそれ以上のアミノ酸同一性を持つ。また、同一性の度合いは、遺伝子に依存し、比較が種間比較であるか種内比較であるかにも依存する。一般に、種内対立遺伝子変異型は、野生型および/または優勢型と少なくとも約80%、85%、90%または95%またはそれ以上の同一性(野生型および/または優勢型のポリペプチドと96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を含む)を持つ。本明細書における対立遺伝子変異型への言及は、一般に、同じ種内のメンバー間でのタンパク質中の変異を指す。
本明細書にいう「対立遺伝子」は、本明細書では「対立遺伝子変異型」と可換的に使用され、遺伝子またはその一部の代替型を指す。対立遺伝子は相同染色体上の同じ座または位置を占める。ある対象がある遺伝子について2つの同一対立遺伝子を持っている場合、その対象はその遺伝子または対立遺伝子に関してホモ接合であるという。ある対象がある遺伝子について2つの異なる対立遺伝子を持っている場合、その対象はその遺伝子についてヘテロ接合であるという。ある特定遺伝子の対立遺伝子は互いに1個のヌクレオチドが異なる場合または数個のヌクレオチドが異なる場合があり、ヌクレオチドの置換、欠失および挿入を含むことができる。ある遺伝子の対立遺伝子は、突然変異を含有する遺伝子の一形態であることもできる。
本明細書にいう種変異型は、異なる種間(マウスとヒトなどといった異なる哺乳動物種間を含む)のポリペプチド中の変異型を指す。
本明細書にいうスプライス変異型は、2タイプ以上のmRNAをもたらすゲノムDNAの一次転写物の異なるプロセシングによって産生される変異型を指す。
本明細書にいう修飾は、ポリペプチドのアミノ酸配列または核酸分子中のヌクレオチド配列の修飾に関し、それぞれアミノ酸およびヌクレオチドの欠失、挿入および置換を含む。ポリペプチドを修飾する方法は、組換えDNA法を用いる方法など、当業者にとってはルーチンである。
本明細書で使用するプロモーターという用語は、RNAポリメラーゼの結合と転写の開始に備えたDNA配列を含有する、遺伝子の部分を意味する。プロモーター配列は、常にというわけではないが、一般的には遺伝子の5'非コード領域中に見いだされる。
本明細書にいう単離されたまたは精製されたポリペプチドもしくはタンパク質またはその生物活性部分は、そのタンパク質が得られる細胞または組織に由来する細胞性物質または他の夾雑タンパク質を実質的に含まないか、または化学合成された場合は化学的前駆体または他の化学薬品を実質的に含まない。当業者が純度を評価するために使用する薄層クロマトグラフィー(TLC)、ゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの標準的分析方法で決定した場合に調製物が容易に検出できる不純物を含まないと考えられるか、または調製物が十分に純粋であって、さらなる精製を行ってもその物質の物理的および化学的性質(例えば酵素活性および生物学的活性)が検出できるほどには変化しないであろう場合に、調製物は不純物を実質的に含まないと決定することができる。化合物を精製して実質的に化学的に純粋な化合物を製造するための方法は、当業者には知られている。ただし、実質的に化学的に純粋な化合物は、立体異性体の混合物であることができる。そのような場合は、さらなる精製により、化合物の比活性が増加するかもしれない。
細胞性物質を実質的に含まないという用語は、タンパク質がその単離源または組換え生産源となった細胞の細胞性構成要素から分離されているタンパク質の調製物を包含する。ある実施形態において、細胞性物質を実質的に含まないという用語は、約30%未満(乾燥重量で)の非酵素タンパク質(ここでは夾雑タンパク質ともいう)、一般的には約20%未満の非酵素タンパク質または約10%未満の非酵素タンパク質または約5%未満の非酵素タンパク質を含む酵素タンパク質の調製物を包含する。酵素タンパク質が組換え生産される場合、それは培養培地も実質的に含まない。すなわち培養培地は、酵素タンパク質調製物の体積の約20%、10%もしくは5%未満に相当するか、または20%、10%もしくは5%に相当する。
本明細書で使用する、化学的前駆体または他の化学薬品を実質的に含まないという用語は、タンパク質がそのタンパク質の合成に関与した化学的前駆体または他の化学薬品から分離されている酵素タンパク質の調製物を包含する。この用語は、含まれる化学的前駆体または非酵素化学薬品もしくは構成要素が約30%(乾燥重量で)、20%、10%、5%またはそれ以下より少ない酵素タンパク質の調製物を包含する。
本明細書において、例えば合成核酸分子または合成遺伝子または合成ペプチドなどに関していう合成とは、組換え法および/または化学合成法によって製造される核酸分子またはポリペプチド分子を指す。
本明細書にいう発現ベクターは、当該DNAフラグメントの発現を達成する能力を持つプロモーター領域などの調節配列に作動的に連結されたDNAを発現させる能力を持つベクターを包含する。そのような追加セグメントはプロモーター配列およびターミネーター配列を含むことができ、場合によっては、1つ以上の複製起点、1つ以上の選択可能マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなども含むことができる。発現ベクターは一般にプラスミドまたはウイルスDNAから誘導されるか、または両方の要素を含有することができる。したがって、発現ベクターは、適当な宿主細胞に導入された時にクローン化されたDNAの発現をもたらす、プラスミド、ファージ、組換えウイルスまたは他のベクターなどの組換えDNAまたはRNAコンストラクトを指す。適当な発現ベクターは当業者にはよく知られており、真核細胞および/または原核細胞中で複製可能なものや、エピソームとして留まるものまたは宿主細胞ゲノムに組み込まれるものがある。
本明細書にいうベクターは、「ウイルスベクター」または「ウイルス系ベクター」も包含する。ウイルス系ベクターは、細胞中に外来遺伝子を(運搬体またはシャトルとして)導入するためにそれら外来遺伝子に作動的に連結された改変ウイルスである。
本明細書で使用する評価という用語は、試料中に存在するプロテアーゼまたはそのドメインの活性について絶対値を得るという意味での定量的および定性的決定を包含すると共に、活性のレベルを示す指数、比、パーセンテージ、視覚または他の値を得るという意味での定量的および定性的決定も包含するものとする。評価は直接的または間接的であることができ、実際に検出される化学種は、もちろん、加水分解産物そのものである必要はなく、例えばその誘導体または他の何らかの物質であることができる。例えば、SDS-PAGEおよびクーマシーブルーによるタンパク質染色などによる、補体(complement)タンパク質の切断産物の検出。
本明細書にいう組成物は任意の混合物を指す。これは溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性、またはそれらの任意の組み合わせであることができる。本明細書にいうキットは、場合によっては追加の試薬などの他の要素や、それらの組み合わせまたは要素の使用説明書を含む、梱包された組み合わせである。
本明細書にいう「疾患または障害」は、感染、後天的状態、遺伝的状態などを含む(ただしこれらに限るわけではない)原因または状態に起因して、同定可能な症状を特徴とする、ある生物における病理学的状態を指す。
本明細書にいう、ある疾患または状態を持つ対象を「処置する」とは、処置後に、その対象の症状が部分的にまたは完全に軽減すること、または静的状態を保つことを意味する。したがって、処置は、予防、治療および/または治癒を包含する。予防とは、潜在的疾患の防止および/または症状の悪化の防止もしくは疾患の進行の防止を指す。処置は、修飾インターフェロンおよび本明細書に記載する組成物の任意の医薬的使用も包含する。
本明細書にいう医薬有効剤は、任意の治療剤または生物活性剤、例えば限定するわけではないが、麻酔薬、血管収縮薬、分散剤、従来の治療薬(小分子薬および治療タンパク質を含む)を包含する。
本明細書にいう処置は、ある状態、障害もしくは疾患または他の適応の症状を改善させるか他の有益な形で変化させる、任意の方法を意味する。
本明細書にいう患者はヒト対象を指す。
本明細書にいう有効量は、ある疾患または障害の症状を防止、治癒、改善、抑止または部分的に抑止するために必要な治療剤の量である。
本明細書にいう動物は、任意の動物、例えば限定するわけではないが、ヒト、ゴリラおよびサルを含む霊長類;マウスおよびラットなどの齧歯類;ニワトリなどの家禽;ヤギ、ウシ、シカ、ヒツジなどの反芻動物;ブタなどのイノシシ科動物、および他の動物を包含する。非ヒト動物として想定される動物にヒトは含まれない。ここで提供されるヒアルロニダーゼは、任意の供給源、動物、植物、原核生物および真菌に由来する。大半の酵素は動物由来(哺乳動物由来を含む)である。
本明細書にいう対照は、それが試験パラメータで処置されない点以外は、またはそれが血漿試料である場合は、関心対象の状態に冒されていない正常ボランティアから得られたものであることができる点以外は、試験試料と実質的に同一な試料を指す。対照は内部対照であることもできる。
本明細書において使用する「ある」「一つの」および「その」という単数形は、文脈上そうでないことが明らかでない限り、複数の指示物を包含する。したがって、例えば「細胞外ドメイン」を含む化合物への言及は、1つまたは複数の細胞外ドメインを持つ化合物を包含する。
本明細書において、範囲および量は、特定の値または範囲の「前後(または約)」と表現する場合がある。この「前後(または約)」には、まさにその量も包含される。したがって「約5mM」は「約5mM」を意味すると共に「5mM」も意味する。
本明細書で使用する、任意の保護基、アミノ酸および他の化合物の略号は、別段の表示がない限り、その一般的使用法、広く認識されている略号、またはIUPAC-IUB生化学命名委員会((1972) Biochem. 11:1726参照)に従う。
B.概観
本発明は、可溶性ヒアルロニダーゼ、例えば可溶性ヒトヒアルロニダーゼ(可溶性ヒトPH20(sHuPH20)、例えば可溶性rHuPH20を含む)を大規模生産するための方法を提供する。本方法は、典型的には、バイオリアクターを利用して、可溶性ヒアルロニダーゼを産生する細胞、例えばCHO細胞(例:DG44 CHO細胞)を培養する。そのような細胞の典型例は、可溶性rHuPH20を産生する2B2細胞である。バイオリアクター中の細胞培養物の体積は、1Lから5000Lまたはそれ以上にまで及びうるが、典型的には、200、300、400、500、1000、1500、2000、2500、3000もしくは3500リットルまたはその前後である。バイオリアクターの接種に先だって、細胞培養体積を増加させる一連の操作によって細胞を拡大培養して、バイオリアクターの播種に必要な細胞数を生じさせる。典型的には、バイオリアクター中の細胞培養に105〜106細胞/mLを播種するが、これより多くまたは少なく播種することもできる。次に細胞をバイオリアクター中で7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19日間またはそれ以上にわたって、インキュベートする。
このインキュベーション中は、追加の栄養素および補助剤を供給するために、細胞培養物にフィード培地が加えられる。フィード培地に含めることができる典型的な補助剤または栄養素には、グルコース、グルタミンまたはグルタミン代替物、例えばL-アラニル-L-グルタミン、インスリン、および酪酸ナトリウムなどがあるが、これらに限るわけではない。補助剤のタイプおよび量は、細胞成長およびタンパク質生産に影響を及ぼしうる。例えば、細胞成長およびピーク細胞密度を増加させるために、細胞培養物に加えられる第1フィード培地にインスリンおよびグルタミンまたはグルタミン代替物を組み入れることができる。その後のフィード培地は、細胞成長よりもタンパク質生産をより多く促進するように設計することができる。インスリンなどの補助剤は排除するか減量することができ、グルタミンまたはグルタミン代替物、例えばL-アラニル-L-グルタミンも同様である。これに対して、タンパク質合成を強化する酵母エキスなどの補助剤は増量することができる。加えて、細胞周期停止を強化し、したがってタンパク質生産量の増加を強化する補助剤も、含めることができる。そのような補助剤の典型例は酪酸ナトリウムである。
バイオリアクターにおけるタンパク質生産後は、細胞を収集し、精製プロセスの開始に先だって、細胞培養培地中に分泌された可溶性ヒアルロニダーゼ、例えば可溶性rHuPH20を濃縮する。次に、可溶性ヒアルロニダーゼを、濃縮されたタンパク質溶液から、一連の精製ステップを使って精製する。本発明の方法に使用される精製方法の典型例は、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびアフィニティクロマトグラフィーの組み合わせである。次に、精製されたタンパク質を濃縮し、ダイアフィルトレーションに付す。
本明細書に記載する方法を利用すれば、培養培地100Lにつき約0.5〜50グラムの可溶性ヒアルロニダーゼ、例えば可溶性rHuPH20が生産される。いくつかの例では、培養物100Lあたりの可溶性rHuPH20の生産量が、1、2、3、4、5、10、15、20、30、もしくは40グラムまたはそれ以上、またはその前後である。いくつかの例では、精製後の可溶性ヒアルロニダーゼの収率が、精製前の生産量の10〜50%の範囲またはその前後である。例えば、精製後の収率は、精製前の生産量の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%もしくは50%、またはその前後であることができる。一般に、本発明の方法を使って生産される可溶性rHuPH20の比活性は、少なくともまたは約80000、100000、120000、140000、160000または180,000単位/mgである。
C.ヒアルロニダーゼ
ヒアルロニダーゼは、細胞外マトリックスの必須構成要素であり間質障壁の主要構成成分であるヒアルロン酸(ヒアルロナンまたはヒアルロネートとも呼ばれる)を分解する酵素のファミリーである。ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸の加水分解を触媒することによって、ヒアルロン酸の粘度を低下させ、それによって組織透過性を増加させる。そこでヒアルロン酸は、例えば他の薬剤、薬物およびタンパク質と一緒に、それらの分散および送達を強化するための展着剤または分散剤として使用されてきた。
1.ヒアルロニダーゼの構造と機能
ヒアルロニダーゼには3つの一般クラス、すなわち哺乳類ヒアルロニダーゼ、細菌ヒアルロニダーゼ、ならびにヒル、他の寄生虫および甲殻類由来のヒアルロニダーゼがある。哺乳類型ヒアルロニダーゼ(EC3.2.1.35)は、ヒアルロン酸のβ1→4グリコシド結合を例えば四糖および六糖などのさまざまなオリゴ糖長に加水分解するエンド-β-N-アセチル-ヘキソサミニダーゼである。これらは加水分解活性とトランスグリコシダーゼ活性の両方を持ち、ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸、例えばC4-SおよびC6-Sを分解することができる。このタイプのヒアルロニダーゼには、例えばウシ(配列番号10)、スズメバチ(配列番号11および12)、ミツバチ(配列番号13)、クロスズメバチ(配列番号14)、アシナガバチ(配列番号15)、マウス(配列番号16〜18、29)、ブタ(配列番号19〜20)、ラット(配列番号21〜23、228)、ウサギ(配列番号24)、ヒツジ(配列番号25)、オランウータン(配列番号26)、カニクイザル(配列番号27)、モルモット(配列番号30)由来のヒアルロニダーゼおよびヒトヒアルロニダーゼがあるが、これらに限るわけではない。
ヒトゲノムには6つのヒアルロニダーゼ様遺伝子、すなわちHYAL1、HYAL2、HYAL3、HYAL4、HYALP1およびPH20/SPAM1がある。HYALP1は偽遺伝子であり、HYAL3(配列番号36)は既知のどの基質に対しても酵素活性を持つことが示されていない。HYAL4(配列番号37に記載の前駆体ポリペプチド)はコンドロイチナーゼであり、ヒアルロン酸に対してはわずかな活性しか示さない。HYAL1(配列番号34に記載の前駆体ポリペプチド)はプロトタイプの酸性活性酵素であり、PH20(配列番号1に記載の前駆体ポリペプチド)はプロトタイプの中性活性酵素である。HYAL1およびHYAL2(配列番号35に記載の前駆体ポリペプチド)などの酸性活性ヒアルロニダーゼは、一般に、中性pH(すなわちpH7)では触媒活性を欠く。例えばHYAL1はpH4.5を上回るとインビトロで触媒活性をほとんど持たない(Frostら (1997) Anal Biochemistry 251:263-269)。HYAL2はインビトロで極めて低い比活性を持つ酸性活性酵素である。ヒアルロニダーゼ様酵素は、一般にグリコシルホスファチジルイノシトールアンカーによって形質膜に固定されるもの、例えばヒトHYAL2およびヒトPH20(Danilkovitch-Miagkovaら (2003) Proc Natl Acad Sci USA. 100(8):4580-5)と、一般に可溶性であるもの、例えばヒトHYAL1(Frostら, (1997) Biochem Biophys Res Commun. 236(1):10-5)とによって、特徴づけることもできる。ヒアルロニダーゼは、間質障壁の主要構成成分であるヒアルロン酸の加水分解を触媒することにより、ヒアルロン酸の粘度を低下させ、それによって組織透過性を増加させる。抗がん活性および抗発癌活性を示すことも明らかにされている。
いくつかのヒアルロニダーゼのN結合型グリコシル化は、それらの触媒活性および安定性にとって極めて重要でありうる。糖タンパク質を修飾するグリカンのタイプを変化させることは、タンパク質の抗原性、構造のフォールディング、溶解性、および安定性に劇的な影響を持ちうるが、多くの酵素は最適な酵素活性にグリコシル化を必要とするとは考えられていない。ヒアルロニダーゼは、この点でユニークである。N結合型グリコシル化の除去はヒアルロニダーゼ活性のほぼ完全な不活化をもたらしうるからである。そのようなヒアルロニダーゼにとって、活性酵素の生成にはN結合型グリカンの存在が不可欠である。
配列番号1に例示されるヒトPH20には、N82、N166、N235、N254、N368、N393、N490に7つの潜在的N結合型グリコシル化部位がある。ジスルフィド結合がシステイン残基C60とC351の間およびC224とC238の間に形成されてコアヒアルロニダーゼドメインを形成する。しかし、中性酵素触媒活性には、配列番号1のアミノ酸36〜464が最低限に活性なヒトPH20ヒアルロニダーゼドメインを含有するように、カルボキシル末端に追加のシステインが必要である。したがって、N結合型グリコシル化部位N490は、適正なヒアルロニダーゼ活性には必要でない。
N結合型オリゴ糖はいくつかの主要タイプ(オリゴマンノース型、複合型、ハイブリッド型、硫酸型)に分類され、それらは全て、-Asn-Xaa-Thr/Ser-配列(XaaはProではない)に含まれるAsn残基のアミド窒素を介して取り付けられた(Man)3-GlcNAc-GlcNAc-コアを持つ。-Asn-Xaa-Cys-部位におけるグリコシル化は凝固タンパク質Cについて報告されている。ヒアルロニダーゼがNグリコシド結合とOグリコシド結合の両方を含有しうる場合もある。例えばrHuPH20(本明細書に記載する方法で生産されるもの)はN結合型オリゴ糖だけでなくO結合型オリゴ糖も持つ。
本明細書に記載する方法は、ヒトPH20ヒアルロニダーゼ調製物の可溶性調製物を大量に生産および精製するためのプロセスを提供する。
2.PH20
ヒトPH20(精子表面タンパク質PH20とも呼ばれる)は、上述のように、一般にグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して形質膜に固定されるプロトタイプの中性活性酵素である。これは本来、精子-卵子接着に関与し、ヒアルロン酸を消化することにより、精子が卵丘細胞の層を貫通するのを助ける。PH20 mRNA転写物は通常は翻訳されて、35アミノ酸のシグナル配列をN末端(アミノ酸残基位置1〜35)に含有する509アミノ酸前駆体タンパク質を生じる。したがって成熟PH20ポリペプチドは配列番号2に記載のアミノ酸配列を持つ474アミノ酸ポリペプチドである。
可溶型のヒトPH20(sHuPH20)は、本明細書に記載する方法を使って生産および精製することができる。sHuPH20の生成は関連米国特許出願第10/795,095号、同第11/065,716号および同第11/238,171号(これらの出願ではsHASEGPまたはrHuPH20とも呼ばれている)ならびに下記実施例1および4に記載されている。これらの可溶型はGPI付着部位を欠く成熟PH20ポリペプチドのC末端切断物をコードする核酸を発現させることによって生産することができる。ヒトPH20の可溶型には、本発明が提供する方法を使って生産し精製される可溶性rHuPH20が含まれる。
3.ヒアルロニダーゼの治療用途
さまざまな形態のヒアルロニダーゼが製造され、ヒトでの治療用途について承認されている。例えば、動物由来のヒアルロニダーゼ調製物には、精製ヒツジ精巣ヒアルロニダーゼであるVitrase(登録商標)(ISTA Pharmaceuticals)、およびウシ精巣ヒアルロニダーゼであるAmphadase(登録商標)(Amphastar Pharmaceuticals)などがある。Hylenex(登録商標)(Halozyme Therapeutics)は、可溶性rHuPH20をコードする核酸を含有する遺伝子改変チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって産生されるヒト組換えヒアルロニダーゼである。ヒアルロニダーゼの承認された治療用途には、他の注射薬の吸収および分散を増加させるための佐剤としての使用、皮下輸液(皮下液投与)のための使用、および皮下尿路造影法における放射線不透物質の再吸収を改善するための補助剤としての使用が含まれる。これらの適応の他にも、sHuPH20を含むヒアルロニダーゼは、治療剤または化粧剤として、さらなる疾患および状態の処置に使用することができる。
上述のようにヒアルロニダーゼは、結合組織ならびに臍帯および硝子体液などの一定の特殊組織の細胞間基質に見いだされる多糖であるヒアルロン酸の加水分解によって、結合組織の透過性を修飾する展着または拡散物質である。展着因子が存在しない場合、皮下に注射された薬物、タンパク質、ペプチドおよび核酸などの物質は、非常にゆっくり展着する。しかし、ヒアルロニダーゼの同時注射は迅速な展着を引き起こすことができる。拡散の速度は酵素の量に比例し、拡散の程度は溶液の体積に比例する。注射された薬物および薬剤の吸収および分散は、注射溶液に10〜1000単位のヒアルロニダーゼを加えることによって強化することができる。いくつかの例では、150Uのヒアルロニダーゼが加えられる。ヒアルロニダーゼは、展着剤としての用途を含めて、それ以外にも、複数の用途を持っている。ヒアルロニダーゼは、例えば眼科手術前の局所麻酔における眼球周囲ブロックなどによく使用される。この酵素の存在は追加ブロックの必要をなくし、瞬目麻酔の発現(眼運動の喪失)までの時間を速める。眼球周囲ブロックおよびテノン嚢下ブロックは、眼科手術へのヒアルロニダーゼの最も一般的な応用である。ヒアルロニダーゼは眼瞼形成術やフェイスリフトなどの美容外科における瞬目麻酔も促進することができる。典型的なヒアルロニダーゼの治療用途およびヒアルロニダーゼの化粧用途を以下に述べる。
a.展着剤としての使用
本明細書に記載する方法を使って生産される可溶性rHuPH20などのヒアルロニダーゼは、インビボのさまざまな哺乳動物組織のいずれかへの薬剤および分子の送達を促進または強化するために使用することができる。これは、小分子医薬剤ならびに大分子医薬剤、例えばタンパク質、核酸およびリボ核酸、ならびに核酸、タンパク質、糖質、脂質、脂質ベースの分子および薬物を含む(ただしこれらに限るわけではない)構成要素の組み合わせを含有することができる高分子組成物の拡散を容易にし、したがってその送達を促進するために使用することができる。例えば、直径が約10nm〜約500nmの範囲にある分子および高分子複合体は、間質腔を前もってヒアルロニダーゼに曝露しておくか同時にヒアルロニダーゼに曝露すれば、間質腔を通した送達に劇的な改善を示すことができる(例えば米国特許出願第10/795,095号、同第11/065,716号および同第11/238,171号を参照されたい)。
ヒアルロニダーゼと共に投与することができる医薬用、治療用および化粧用の薬剤および分子の例には、次に挙げるものがあるが、これらに限るわけではない:麻酔薬;代謝拮抗物質、抗新生物剤および他の抗がん剤;抗ウイルス剤;抗感染剤、抗細菌剤および他の抗生物質、抗真菌剤および他の抗感染剤を含む;免疫調整剤;ステロイド性および非ステロイド性抗炎症薬;β遮断薬;交感神経作用薬;ドコサノイド、プロスタグランジンおよびプロスタグランジン類似体;縮瞳薬、コリン作用薬および抗コリンエステラーゼ;抗アレルギー薬および鬱血除去薬;ホルモン剤;成長因子;免疫抑制薬;ワクチンおよびトキソイド;免疫血清;抗体;およびそれらの任意の組み合わせ。ある実施形態では、可溶性rHuPH20がカテプシン、例えばカテプシンLと一緒に投与される。
b.皮下輸液における使用
皮膚の下皮への液体および電解質の注入である皮下輸液は、軽度〜中等度の脱水を起こした成人患者、特に高齢者に適した、有用で簡単な水分補給技法である。安全であり有効であると考えられるが、最も頻繁に起こる有害作用は、軽度の皮下浮腫であり、これは局所マッサージまたは全身性利尿剤によって処置することができる。約3Lを2つの別々の部位に24時間で投与することができる。一般的な注入部位には、胸部、腹部、大腿部および上腕が含まれる。皮下輸液に使用される溶液には、例えば生理食塩水、1/2生理食塩水、グルコース生理食塩水および5%グルコースなどがある。この溶液には塩化カリウムも加えることができる。この溶液へのヒアルロニダーゼの添加は、液体の吸収を強化し、全体的投与速度を増加させることができる。
c.硝子体切除術ならびに眼科的障害および状態における使用
ヒアルロニダーゼは硝子体切除術中の網膜の剥離または裂孔を最小限に抑えるために使用することができる。これは、例えば、硝子体の除去に先だって、硝子体を網膜から分離または「離断」した状態にすることができる。硝子体のそのような離断または分離は、硝子体が除去されるときに網膜のさらなる裂孔または剥離が起こる可能性を最小限に抑えることができる。
ヒアルロニダーゼは、米国特許第5,292,509号に記載の硝子体切除術補助応用を含むさまざまな眼科応用に使用することができる。免疫原性および毒性を最小限に抑えるために、高度に精製されたヒアルロニダーゼ、例えば本明細書に記載する方法によって生産され精製された可溶性rHuPH20の使用が、眼内手術には好ましい。いくつかの例では、硝子体内での停留時間を引き延ばし、限局的取り込みを防止するために、PEG化ヒアルロニダーゼを使用することができる。
ヒアルロニダーゼは、例えば新生血管形成を防止し、網膜にとって毒性な物質の硝子体からのクリアランス速度を増加させることなどによって、眼科的障害を処置および/または防止するために使用することができる。ヒアルロニダーゼは、眼の毒性損傷を引き起こすことなく眼の硝子体液を液化するのに有効な量で投与することができる。硝子体液の液化は硝子体腔からの液体交換速度を増加させる。この交換の増加により、その存在が眼科損傷および網膜損傷を引き起こしうる夾雑物質が、除去される。
ヒアルロニダーゼは術後眼圧を低下させるためにも使用することができる。ヒアルロン酸は、白内障および眼内レンズの外科手術中に、主にスペーサーとして、眼内に使用されてきた。これは、緑内障、硝子体および網膜手術などの他の眼外科手術や、角膜移植にも使用される。術後白内障患者で起こる一般的な副作用は、かなり早期の、時には持続的な、眼内圧の上昇である。そのような状態は、特に緑内障性視神経乳頭変化を起こしている患者では、深刻な場合がある。術後眼圧を低下させるために、手術に先だって、眼にヒアルロニダーゼをヒアルロン酸と同時投与することができる。ヒアルロニダーゼは、手術中のヒアルロン酸の有効性を低下させることも患者における副作用を引き起こすこともなくヒアルロン酸を分解することによって眼内圧を術前レベルまで低下させるのに有効な量で、投与される(米国特許第6,745,776号)。
ヒアルロニダーゼは、線維柱帯からグリコサミノグリカンを除去し、眼内圧を低下させるために緑内障を持つ患者に投与することもでき、また、糖尿病性網膜症、網膜新生血管形成、網膜静脈閉塞、後部硝子体剥離、網膜裂孔、眼外傷などの状態に関連して起こり得る硝子体出血(硝子体中への血液の血管外遊出)の消散を促進するために硝子体に適用することもできる。通例、ゆっくりと消散する硝子体出血の存在は、診断のために硝子体を通して網膜を可視化することが必要な手法および/または増殖性糖尿病性網膜症などの状態の一次処置とされることが多いレーザー光凝固など処置法を、遅延させ、複雑にし、または妨げうる。
d.遺伝子治療における使用
大半の遺伝子送達運搬体のインビボでの効力は、インビトロで観察される効力とは一致しない。グリコサミノグリカンは、多くの細胞タイプへのDNAおよびウイルス系ベクターの導入および拡散を妨害しうる。そのような細胞外マトリックス物質のレベルはこのプロセスをかなり妨害することができる。ヒアルロニダーゼの投与は、細胞外マトリックスに通路を開くことで、遺伝子治療の送達を強化することができる。例えば、インビボでのDNAの形質導入を容易にするために、ヒアルロニダーゼをコラゲナーゼと一緒に投与することができる(Dubenskyら (1984) Proc Natl Acad Sci USA 81(23):7529-33)。ヒアルロニダーゼはアデノ随伴ウイルスを使った遺伝子治療を強化することもできる(Favreら (2000) Gene Therapy 7(16):1417-20)。ヒアルロニダーゼの投与後に開かれる通路は、典型的には、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびDNA複合体(ならびに関心対象である他の治療剤および医薬剤)などの小分子の拡散を強化するサイズを持つ。しかしそれらの小孔は、細胞の移動および運動を促進するほどには大きくない。
いくつかの例では、標的組織内でのウイルスの複製および伝播を容易にするために、ヒアルロニダーゼを発現するようにウイルスを操作することができる。標的組織は、例えば、ウイルスがその腫瘍内で選択的に複製する能力を持つような、がん組織であることができる。ウイルスは、組織特異的プロモーターの下で選択的に複製する非溶解性ウイルスであることもできる。ウイルスが複製するにつれて、ヒアルロニダーゼとウイルス遺伝子との同時発現が、インビボでのウイルスの伝播を容易にしうる。
e.化粧用途
ヒアルロニダーゼは、セルライトの蓄積に関与するグリコサミノグリカンを除去し、リンパ流を促進するために、投与することができる。いくつかの例では、例えば可溶性rHuPH20などのヒトヒアルロニダーゼが、セルライトの処置に使用される。ヒアルロニダーゼは、グリコサミノグリカンの継続的な分解を促進し、それらの回復を防止するために、反復皮下注射によって、または軟膏もしくはクリーム剤の形での経皮送達によって、または注射用徐放性製剤の使用によって投与することができる。
ヒアルロニダーゼは、「豚皮状(pigskin)」浮腫または「橙皮状(orange peel)」浮腫などの状態を処置するためにも使用することができる。ヒアルロニダーゼは、真皮中に蓄積することができて結合水の保持および代謝廃棄物を除去する体液拡散の毛細血管圧迫による緩徐化の保持を担っている、長いムコ多糖鎖の解重合を達成することができる。リポサイトの脂肪過負荷に関連する水および廃棄物のそのような保持が、古典的な「豚皮状」浮腫または「橙皮状」浮腫を構成する。解重合は、ムコ多糖の長い鎖を短い鎖に切断して、結合水および廃棄物の排除と、静脈循環およびリンパ循環の回復とをもたらし、結果的に局所的浮腫を消失させることができる。
f.臓器移植における使用
臓器におけるヒアルロン酸の含有量は炎症と共に増加しうる。ヒアルロン酸濃度の増加は、肺胞炎(Nettelbladtら (1991) Am.Rev.Resp.Dis. 139:759-762)や心筋梗塞(Waldenstromら (1991) J.Clin.Invest. 88(5):1622-1628)など、炎症性免疫学的傷害を特徴とするさまざまな臓器に由来する組織で観察されている。他の例には、腎移植(Ha'llgrenら (1990) J.Exp.Med. 171:2063-2076;Wellsら (1990) Transplantation 50:240-243)、小腸移植(Wallanderら (1993) Transplant.Int. 6:133-137)または心臓移植(Haellgrenら (1990) J Clin Invest 185:668-673)後の同種移植拒絶;またはウイルスに起因する心筋炎(Waldenstrdmら (1993) Eur.J.Clin.Invest. 23:277-282)がある。臓器の移植に関連する間質性浮腫の発生は移植外科の分野では重大な問題を構成する。間質性浮腫を伴う移植片は、その機能が一時的に失われるほどの腫脹を起こし、時には、腫脹が腎臓の破裂を引き起こして、大量出血をもたらすこともある。ヒアルロニダーゼを使って、臓器移植時に蓄積するグリコサミノグリカンを分解することができる。そのようなグリコサミノグリカンの除去は、移植片からの水の除去を促進し、したがって臓器機能を強化する。
g.癌処置における使用
ヒアルロニダーゼは直接的抗発癌作用を持つ。ヒアルロニダーゼはマウスに移植された腫瘍の成長を防止し(De Maeyerら, (1992) Int.J.Cancer 51:657-660)、発癌物質にばく露した時の腫瘍形成を阻害する(Pawlowskiら (1979) Int.J.Cancer 23:105-109)。ヒアルロニダーゼは、脳腫瘍(神経膠腫)の処置において、唯一の治療剤として有効である(WO198802261)。これらの作用に加えて、ヒアルロニダーゼは、固形腫瘍への化学療法剤の浸透を強化するためにも使用することができる。それらは、腫瘍内に抗癌剤と共に注射するか、播種性がんまたは到達困難な(hard to reach)腫瘍の場合は静脈内注射することができる。抗がん剤は、化学療法剤、抗体、ペプチド、または遺伝子治療ベクター、ウイルスまたはDNAであることができる。さらにまた、多剤耐性を獲得している先に化学療法抵抗性であった腫瘍において、感受性を高めるために、腫瘍細胞を細胞周期プールに動員する目的で、ヒアルロニダーゼを使用することもできる(St Croixら, (1998) Cancer Lett September 131(1):35-44)。例えば可溶性rHuPH20などのヒアルロニダーゼは、グリコサミノグリカンを蓄積する腫瘍へのモノクローナル抗体などの生物製剤、サイトカインおよび他の薬物の送達を強化することもできる。
ヒアルロニダーゼは、従来の化学療法に対して抵抗性である腫瘍の感受性を増加させるために使用することもできる。例えば可溶性rHuPH20などのヒアルロニダーゼは、HYAL1欠損に関連する腫瘍を持つ患者に、腫瘍部位周辺での拡散を増加させ(例えば腫瘍部位の中および周辺における化学療法剤の循環および/または濃縮を容易にし)、例えばヒアルロン酸分解によって腫瘍細胞運動性を阻害し、かつ/または腫瘍細胞アポトーシス閾値を低下させるのに有効な量で、投与することができる。これは、腫瘍細胞をアノイキスの状態にし、それが化学療法剤の作用に対する腫瘍細胞の感受性を高める。ヒアルロニダーゼの投与は、膵臓、胃、結腸、卵巣、および乳房の、先に化学療法抵抗性であった腫瘍の応答性を、誘導することができる(Baumgartnerら (1988) Reg.Cancer Treat. 1:55-58;Zankerら (1986) Proc.Amer.Assoc.Cancer Res. 27:390)。
ある例では、非がん細胞と比較して内在性ヒアルロニダーゼ活性が低下しているものを含む、転移がんおよび非転移がんの処置に、ヒアルロニダーゼが使用される。ヒアルロニダーゼは化学療法剤として単独で、または他の化学療法剤と組み合わせて使用することができる。典型的ながんには、小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌、および乳がん、卵巣がん、頭頚部癌、またはヒアルロニダーゼ活性レベルの低下もしくはヒアルロン酸異化作用の減少に関連する他の任意のがんが含まれるが、これらに限るわけではない。
h.脳でのグリコサミノグリカン蓄積の処置における使用
いくつかの脳脊髄病態ではヒアルロン酸レベルが上昇する。脳脊髄ヒアルロン酸のレベルは成人では通常200μg/L未満であるが(Laurentら (1996) Acta Neurol Scand September 94(3):194-206)、髄膜炎、脊柱管狭窄症、頭部外傷および脳梗塞などの疾患では8000μg/Lを超えるレベルにまで上昇しうる。例えば可溶性rHuPH20などのヒアルロニダーゼは、危険な状態にまでレベルが上昇した基質を分解するために利用することができる。
脳内の有効なリンパ管の欠如も、頭部外傷後の生命に関わる浮腫につながりうる。ヒアルロン酸蓄積は、ヒアルロン酸シンターゼによる合成の増加と分解の減少との結果である。ヒアルロン酸の蓄積は、最初は、損傷した組織の含水量を増加させて白血球の血管外遊出を容易にするという有益な目的を果たすが、継続的な蓄積は致死的になりうる。頭部外傷を受けた患者へのヒアルロニダーゼの例えば髄腔内または静脈内投与は、組織ヒアルロン酸蓄積とそれに付随する水を除去するのに役立ちうる。
ヒアルロニダーゼは、脳腫瘍に関連する浮腫、特に多形性膠芽腫に関連するものの処置にも、使用することができる。脳腫瘍に関連する浮腫は腫瘍に隣接する脳の非がん部分におけるヒアルロン酸の蓄積によって起こる。ヒアルロン酸蓄積部位へのヒアルロニダーゼの投与(例えば静脈内注射による投与またはシャントを通した投与)は、これらの部位における過剰なヒアルロン酸を分解することによって、そのような悪性疾患に関連する浮腫を軽減することができる。
i.心血管疾患でのグリコサミノグリカン蓄積の処置における使用
ヒアルロニダーゼはいくつかの心血管疾患の処置に使用することができる。実験的心筋梗塞後の動物モデルにおけるヒアルロニダーゼの投与は、梗塞サイズを減少させることができる(Macleanら (1976) Science 194(4261):199-200)。これが起こりうる機序として提案されているものの一つは、虚血再灌流後に起こるヒアルロン酸蓄積を減少させることによるというものである。梗塞サイズの減少は、リンパ排液の増加および組織酸素化の増加および心筋含水量の減少によって起こると考えられる。
ヒアルロニダーゼは、動脈硬化から来る冠動脈プラークを制限するためにも使用することができる。そのようなプラークはグリコサミノグリカンを蓄積し、マクロファージ接着および泡沫細胞の接着を媒介する(Kolodgieら (2002) Arterioscler Thromb Vasc Biol. 22(10):1642-8)。
j.肺疾患における使用
正常個体から得られる気管支肺胞洗浄液(BAL)中のヒアルロン酸のレベルは、一般に15ng/ml未満である。しかし、BAL中のヒアルロン酸レベルは、呼吸困難の状態では劇的に上昇する(Bjermerら (1987) Br Med J (Clin Res Ed)295(6602):803-6)。肺におけるヒアルロン酸の増加は、好中球応答およびマクロファージ応答を活性化させると共に、酸素拡散およびガス交換を妨げうる。本明細書に記載する方法を使って生産されるような可溶性rHuPH20の精製調製物は、そのような状態を示す患者に、ヒアルロナンレベルを低下させるために、肺送達または静脈内送達によって送達することができる。ヒアルロニダーゼは、グリコサミノグリカンの上昇に関連する他の肺合併症を患っている患者に投与するか、同時送達される他の分子の肺への送達を強化するために投与することができる。
k.他の用途
ヒアルロニダーゼの治療用途のさらなる例では、ヒアルロニダーゼを、ビンカアルカロイドなどの壊死物質の傍静脈注射による局所壊死に対する解毒薬(Fewら (1987) Amer.J.Matern.Child Nurs. 12, 23-26)、ガングリオン嚢胞の処置(Paulら (1997) J Hand Surg. 22(2):219-21)および静脈不全による組織壊死の処置(Elderら (1980) Lancet 648-649)などといった目的に使用することができる。もっともよく見られる手の軟組織塊であり、皮膚の下に感じることができる液体の詰まった嚢である、ガングリオン嚢胞(手首嚢胞、バイブル嚢胞、または背側腱嚢胞ともいう)の処置にも、ヒアルロニダーゼを使用することができる。
ヒアルロニダーゼは、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)を分解することによる脊髄損傷の処置に使用することができる。脊髄損傷後に、CSPGを含有するグリア性瘢痕が、アストロサイトによって産生される。CSPGは軸索成長の阻害に決定的な役割を果たす。さらにまた、CSPGの発現は、中枢神経系(CNS)の傷害後に増加することが示されている。ヒアルロニダーゼは、化学的髄核融解術と呼ばれるプロセスにおいて、椎間板ヘルニアの処置に利用することもできる。ヒアルロニダーゼと類似する基質を切断する酵素であるコンドロイチナーゼABCは、腰椎における椎間板内圧の減少を誘発することができる。椎間板傷害には3つのタイプがある。椎間板膨隆は、椎間板が無傷であるが、隆起しているものである。椎間板突出では、線維性の覆いが引き裂かれ、NPがにじみ出しているが、依然として椎間板にはつながっている。椎間板遊離では、NPのフラグメントが椎間板から解き放され、脊椎管中で遊離している。化学的髄核融解術は典型的には椎間板膨隆および椎間板突出に有効であるが、遊離型椎間板傷害には有効でない。
D.可溶性rHuPH20発現細胞
本明細書に記載する方法は、大量の可溶性rHuPH20を生成させ精製するために使用することができる。可溶性rHuPH20は大規模細胞培養で成長するCHO細胞中で発現される。発現は、配列番号3に記載のアミノ酸の配列(配列番号1に記載の前駆体ヒトPH20ポリペプチドのアミノ酸1〜482に対応する)をコードするヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを使って達成される。翻訳後に35アミノ酸のシグナル配列が切断され、可溶性rHuPH20が培地中に分泌される。ベクターは可溶性rHuPH20コード領域の下流にあるIRES、マウスジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子およびSV40 pA配列も含有する。この発現ベクターをDG44細胞(これは、ジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損性(dhfr-)であり、動物性産物を含まない化学的組成の明確な培地における懸濁培養で成長するように適応させた細胞である)中に導入した。その結果得られる可溶性rHuPH20発現細胞には、下記実施例1および4に記載するものが含まれ、3D35M、2B2、3E10B、1B3、5C1、1G11および2G10細胞と命名された細胞が含まれる。
rHuPH20に似たヒアルロニダーゼの生産には他の細胞を使用することができる。一般に、ヒアルロニダーゼへの重要なN結合型グリコシル化残基の導入に適したタンパク質発現系が使用される。そのような細胞には、例えば酵母細胞、真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞が含まれる。哺乳類発現には、マウス、ラット、ヒト、サル、ニワトリおよびハムスター細胞を含む、多くの細胞株を利用することができる。典型的な細胞株には、CHO(DG44細胞およびCHO-S細胞を含む)、Balb/3T3、HeLa、MT2、マウスNS0(非分泌)および他の骨髄腫細胞株、ハイブリドーマおよびヘテロハイブリドーマ細胞株、リンパ球、線維芽細胞、Sp2/0、COS、NIH3T3、HEK293、293S、2B8、およびHKB細胞などがあるが、これらに限るわけではない。無血清培地に適合した細胞株も利用することができ、これは、分泌されたタンパク質の細胞培養培地からの精製を容易にする。
a.3D35M細胞
可溶性rHuPH20発現細胞の典型例は、下記実施例1ならびに米国特許出願公開第20040268425号、同第20050260186号および同第20060104968号に記載の3D35M細胞である。3D35M細胞は、可溶性rHuPH20を発現させるジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損性(dhfr-)DG44 CHO細胞である。この細胞を、配列番号50に記載のヌクレオチド配列を持つHZ24発現ベクターで形質転換した。このベクターは、配列番号1に記載の完全長ヒトPH20のアミノ酸位置1〜482に対応する482アミノ酸(配列番号3)のポリペプチドをコードする核酸の発現を駆動するCMVプロモーターを含有している。これには35アミノ酸のN末端シグナル配列が含まれている。このベクターは、PH20コード配列後に配列内リボソーム進入部位(IRES)も含有し、その後ろにマウスジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子およびSV40ポリアデニル化配列が続いている。翻訳後に482アミノ酸のポリペプチドがプロセシングを受けて35アミノ酸のシグナル配列が除去され、その結果、可溶性rHuPH20の分泌が起こる。
3D35M細胞の特徴づけにより、可溶性rHuPH20をコードする核酸領域は細胞中に約318コピー/細胞のコピー数で存在することが証明された。本明細書に記載の方法によって3D35M細胞から生産される可溶性rHuPH20は、配列番号4〜9に記載の配列を持つポリペプチドの1つ以上を含みうる分子種の混合物である。これらの分子種の典型的な特徴づけ(実施例11に記載)では、配列番号4に記載の分子種が0.2%の存在量で存在し、配列番号5(配列番号4のアミノ酸1〜446に対応)に記載の分子種が18.4%の存在量で存在し、配列番号6(配列番号4のアミノ酸1〜445に対応)に記載の分子種が11.8%の存在量で存在し、配列番号7(配列番号4のアミノ酸1〜444に対応)に記載の分子種が56.1%の存在量で存在し、配列番号8(配列番号4のアミノ酸1〜443に対応)に記載の分子種が13.6%の存在量で存在した。可溶性rHuPH20調製物のこのような不均一性は、おそらく、本明細書に記載する生産および精製方法時に存在するペプチダーゼによるC末端切断の結果だろう。
3D35M細胞は、メトトレキサートを含むまたはメトトレキサートを含まない細胞培養培地中で成長させることができる。グルタミンなどの追加の補助剤も加えることができる。いくつかの例では、例えば50nM、100nM、500nM、1μM、または2μMのメトトレキサートを含有しヒポキサンチンおよびチミジンを欠く細胞培養培地中で、細胞を成長させる。ある例では、ヒポキサンチンおよびチミジンを含まず、100nMメトトレキサートおよびグルタミンまたはグルタミン代替物、例えばL-アラニル-L-グルタミン(安定化されたジペプチド型のL-グルタミン)を含む培養培地(例えばCD CHO培地、Invitrogen)中、37℃、5〜7%CO2で、3D35M細胞を培養する。3D35M細胞の培養には、CHO細胞に適した他の細胞培養培地、例えば限定するわけではないが、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、イーグル最小必須培地(EMEM)、イスコフ変法イーグル培地(IMEM)、F12およびRPMIなども使用することができる。振とうフラスコ中、このような条件下で成長させた3D35M細胞は、1000単位/mLを超えるヒアルロニダーゼ活性を産生することができる。下記実施例3で述べるようなバイオリアクター中で培養した場合、3D35M細胞は2000単位/mLを超える酵素活性を持つ可溶性rHuPH20を産生することができる。
b.2B2細胞
本明細書に記載する方法でrHuPH20を生産するための可溶性rHuPH20発現細胞の典型例を実施例4に記載し、これを2B2細胞と名付ける。2B2細胞は、3D35M細胞をより高レベルのメトトレキサート(すなわち20μM)に適応させ、その高いメトトレキサート濃度で成長するクローンを選択することによって生成させた。この適応は、この細胞によって産生されるヒアルロニダーゼ活性を増加させた。DG44細胞はジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損性(dhfr-)であり、それゆえにヌクレオシドを作ることができない。3D35M細胞および2B2細胞中に存在する発現ベクターは、PH20遺伝子の他に、マウスジヒドロ葉酸レダクターゼのコード配列も含有している。メトトレキサートは強い競合的ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤である。それゆえに、培養培地中のメトトレキサートの濃度を増加させることにより、ヒアルロニダーゼ発現細胞は、生存可能であり続けるために、より多くのマウスジヒドロ葉酸レダクターゼを産生することを強いられる。これは、例えば遺伝子増幅によって、または組み込まれたDNAの、より高い安定性および生産性を持つ編成への再編成によって、達成することができる。こうして、マウスジヒドロ葉酸レダクターゼの産生量の増加を強いることにより、sHuPH20の産生量の増加ももたらすことができる。2B2細胞と3D35M細胞によって産生される可溶性rHuPH20の酵素活性を比較したところ、典型的には、3D35M細胞と比較して2B2細胞の方が80%〜100%高いことが証明された(例えば下記実施例5参照)。
2B2細胞は、20μMメトトレキサートによる選択後に単離された細胞クローンから、最も高い酵素活性を持つ可溶性rHuPH20を産生する細胞株として単離された(例えば実施例4参照)。特徴づけを行ったところ、可溶性rHuPH20をコードする核酸領域は、2B2細胞中に、約206コピー/細胞のコピー数で存在することが観察された。可溶性rHuPH20をコードする核酸領域に特異的なプローブを使った、SpeI、XbaIおよびBamHI/HindIIIで消化したゲノム2B2細胞DNAのサザンブロット解析では、以下の制限消化プロファイルが明らかになった:SpeIで消化したDNAでは1本の主要ハイブリダイズバンド約7.7kbと4本の副ハイブリダイズバンド(約13.9、約6.6、約5.7および約4.6kb);XbaIで消化したDNAでは、1本の主要ハイブリダイズバンド約5.0kbと2本の副ハイブリダイズバンド(約13.9および約6.5kb);BamHI/HindIIIで消化した2B2 DNAを使うと、約1.4kbの単一ハイブリダイズバンドが観察された。
2B2細胞は、メトトレキサートを含むまたはメトトレキサートを含まない細胞培養培地中で成長させることができる。グルタミン、インスリンおよび酵母エキスなどの追加補助剤を加えることができる。いくつかの例では、例えば50nM、100nM、500nM、1μM、2μM、5μM、10μM、20μM、またはそれ以上のメトトレキサートを含有しヒポキサンチンおよびチミジンを欠く細胞培養培地中で、細胞を成長させる。ある例では、ヒポキサンチンおよびチミジンを含まず20μMメトトレキサートおよびグルタミンまたはL-アラニル-L-グルタミン(安定化されたジペプチド型のL-グルタミン)を含む培養培地(例えばCD CHO培地、Invitrogen)中、37℃、5〜7%CO2で、2B2細胞を培養する。2B2細胞の培養には、CHO細胞に適した他の細胞培養培地、例えば限定するわけではないが、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、イーグル最小必須培地(EMEM)、イスコフ変法イーグル培地(IMEM)、F12およびRPMIなども使用することができる。振とうフラスコ中、このような条件下で成長させた2B2細胞は、3000単位/mLを超えるヒアルロニダーゼ活性を産生することができる。下記実施例8で述べるようなバイオリアクター中で培養した場合、2B2細胞は17000単位/mLのヒアルロニダーゼ活性を超える酵素活性を持つ可溶性rHuPH20を産生することができる。
本明細書に記載する方法によって2B2細胞から生産される可溶性rHuPH20は、配列番号4〜9に記載の配列を持つポリペプチド分子種の混合物である。2B2細胞によって産生される可溶性rHuPH20産物の典型的な特徴づけ(実施例11に記載)では、配列番号4に記載の分子種が1.9%の存在量で存在し、配列番号5(配列番号4のアミノ酸1〜446に対応する)に記載の分子種が46.7%の存在量で存在し、配列番号6(配列番号4のアミノ酸1〜445に対応する)に記載の分子種が16.7%の存在量で存在し、配列番号7(配列番号4のアミノ酸1〜444に対応する)に記載の分子種が27.8%の存在量で存在し、配列番号8(配列番号4のアミノ酸1〜443に対応する)に記載の分子種が6.9%の存在量で存在した。3D35M細胞から生産される可溶性rHuPH20について述べたように、2B2細胞から得られる可溶性rHuPH20調製物における不均一性は、本明細書に記載する生産および精製方法時に存在するペプチダーゼによるC末端切断の結果だろう。
E.細胞培養の拡大
本明細書に記載する方法では、大量の可溶性rHuPH20を生産する目的で大量の細胞培養を成長させるために、バイオリアクターを使用する。以下に詳述するように、これらの方法は、細胞拡大培養相、タンパク質生産相、タンパク質濃縮およびバッファー交換相、ならびに精製相を含む。生産相のためのバイオリアクターでの培養に先だって、2B2細胞などの可溶性rHuPH20発現細胞をまず、作業(working)細胞バンク(WCB)またはマスター(master)細胞バンク(MCB)から得られる細胞の部分標本などといった元の接種材料から、より大きな体積へと拡大培養する。拡大培養相における最終的な培養体積は、それに続く生産相で使用されるバイオリアクターの体積に正比例する。典型的には、大きいバイオリアクターは、小さいバイオリアクターよりも大きい拡大培養相の最終培養体積を使って接種される。
可溶性rHuPH20発現細胞は、それぞれが一つ前の培養よりも増加した体積で行われ、それぞれが次の培養に接種材料として使用される、一連の培養によって拡大培養される。そのような細胞の典型例は2B2細胞である。元の接種材料は、典型的には、細胞の純度および同一性ならびに細胞数が明確なものである。これらの細胞は、例えば-20℃、-70℃または-80℃で凍結保存するか、例えば4℃の液体培地中で維持するか、例えば37℃の培養中で維持することができる。いくつかの例では、元の接種材料が、凍結保存されていたマスター細胞バンクまたは作業細胞バンクの部分標本である。そのような場合は、例えば37℃の水浴などで、接種材料を融解する。典型的には、元の細胞接種材料を遠心分離し、適当な細胞培養培地に細胞を再懸濁する。例えば、8mMグルタミンまたはL-アラニル-L-グルタミンおよび20μMメトトレキサートを補足した、CD CHO培地(Invitrogen)または復元された粉末CD CGO AGT(商標)培地(Invitrogen)などの基礎培地に、2B2細胞を懸濁し、続いて培養することができる。もう一つの例では、8mMグルタミンまたはL-アラニル-L-グルタミンおよび100mMメトトレキサートを補足した基礎培地で細胞を成長させることができる。ヒアルロニダーゼ発現細胞の拡大培養には、他の適切な細胞培養培地をどれでも使用することができる。例えば、追加の補助剤を含むまたは追加の補助剤を含まない、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、イーグル最小必須培地(EMEM)、イスコフ変法イーグル培地(IMEM)、F12、RPMI、または他の化学的組成が明確なもしくは化学的組成が不明確な培地中で、細胞を培養することができる。典型的には、細胞を無血清培地中で成長させるが、血清を含有する培地で細胞を成長させることもできる。当業者は、そこにさまざまな栄養素を補足することで可溶性rHuPH20発現細胞を培養する細胞培養培地を作ることができる他の基礎細胞培養培地を使って、細胞培養培地を調製することができるだろう。
細胞接種材料を、体積を増加させて細胞培養を拡大する一連の細胞培養培地の最初の培地に加える。初回接種後に、適当な温度および適当なCO2量の湿潤インキュベータまたはバイオリアクター中で、細胞を拡大培養する。通例、CO2の量は4%〜9%、典型的には6.0%〜8.0%、例えば7.0%であり、温度は35℃〜39℃、典型的には36℃〜38℃、例えば37℃である。例えば2B2細胞および3D35M細胞は、37℃の湿潤インキュベータ中、7%CO2で成長させることができる。このプロセス中は、培養を、例えば90〜130rpmで撹拌することができる。細胞が所望の密度、例えば1.0×106細胞/mLを超える密度(例えば1.5×106細胞/mL〜2.5×106細胞/mLの密度)に到達したら、その細胞培養を使って、より大きな体積の新鮮細胞培養培地を接種する。例えば、細胞は、4×104〜4×106細胞/mL、典型的には2×105〜6×105細胞/mL、例えば4×105細胞/mLの密度で、次の培養に接種することができる。バイオリアクターに例えば4×104〜4×106細胞/mLの播種を行うために、細胞が望ましい体積および細胞密度に拡大培養されるまで、このプロセスを繰り返す。
ある例では、2B2細胞などの可溶性rHuPH20発現細胞を、まず、125mLシェーカーフラスコ中の約20mLの新鮮細胞培養培地に加えて、20〜30mL(典型的には25mL)の培養体積にする。37℃、7%CO2でのインキュベーションおよび1.5×106細胞を超える細胞密度への拡大後に、新鮮培地をフラスコに加えて、細胞培養を40mLに拡大する。1.5×106細胞/mLを超える密度が達成されるまで細胞を再びインキュベートした後、その細胞培養全体(約40mL)を新鮮培地に加えて、125mLスピナーフラスコ中、100mLの培養体積にする。細胞培養全体(約100mL)を、最終培養体積を200mLにするのに十分な量の新鮮培地が入っている250mLスピナーフラスコに移し、次に最終培養体積を800mLにするのに十分な量の新鮮培地が入っている1Lスピナーフラスコに移し、次に最終培養体積を5Lにするのに十分な量の新鮮培地が入っている6Lスピナーフラスコに移し、最後に最終培養体積を32Lにするのに十分な量の新鮮培地が入っている36Lスピナーフラスコに移すことにより、このプロセスを繰り返す。各継代間に、培養が1.5×106細胞/mLを超える密度に到達するまで細胞をインキュベートする。いくつかの例では、最後の36Lスピナーフラスコのインキュベーション後に、さらに高い細胞密度が達成される。例えば36Lスピナーフラスコ中の細胞は、3.55×106細胞/mL〜6.05×106細胞/mLの細胞密度まで拡大培養することができる。タンパク質生産相(例えば実施例8参照)のための400Lバイオリアクター(培養体積300L)に導入する前に、このプロセスを使って、可溶性rHuPH20発現細胞を拡大培養することができる。小さいバイオリアクターには、小さい細胞培養体積と異なる細胞密度を使用することができる。例えば、細胞を1.8×106細胞/mL〜2.5×106細胞/mLの細胞密度で約20Lの体積まで拡大培養してから、それを125Lバイオリアクターに導入することができる。もう一つの例では、可溶性rHuPH20発現細胞を1.5×106細胞/mL〜2.5×106細胞/mLの細胞密度で約800mLの体積まで拡大培養してから、それを5Lバイオリアクターに導入する。
300Lを超える培養体積を持つバイオリアクターに細胞を導入するために、本明細書に記載するどのプロセスとも同じように、当業者は、このプロセスをスケールアップすることができる。例えば、実施例12で述べるような2500Lの培養体積を持つバイオリアクター中に細胞を導入するために、このプロセスをスケールアップすることができる。したがって、本明細書に記載する方法の一例では、融解後に細胞を、125mLシェーカーフラスコ(作業体積20〜30mL、例えば25mL)、250mLシェーカーフラスコ(作業体積45〜55mL、例えば50mL)、1Lシェーカーフラスコ(作業体積190〜210mL、例えば200mL)、2つの2Lシェーカーフラスコ(1フラスコあたりの作業体積350〜450mL、例えば1フラスコあたり400mL)、6つの2Lシェーカーフラスコ(1フラスコあたりの作業体積350〜450mL、例えば1フラスコあたり400mL)、25Lウェーブバイオリアクター(作業体積14〜16L、例えば15L)、100Lウェーブバイオリアクター(作業体積75〜85L、例えば80L)、および600Lシードバイオリアクター(作業体積440〜520L、例えば480L)で、逐次、拡大培養する。
F.タンパク質生産
細胞拡大培養後に、可溶性rHuPH20発現細胞を生産相用のバイオリアクターに移す。この相では、大量の可溶性rHuPH20が細胞培地中に分泌される。この相は、典型的には、バイオリアクター運転時間の前半では細胞成長が最大化され、バイオリアクター運転時間の後半では可溶性rHuPH20生産が最大化されるように設計される。このプロセスを調節するために、生産の全体にわたって、細胞に一連のフィード培地を特定の時点で供給する。また、バイオリアクター条件は、プロセスの全体を通して最適な条件が確実に維持されるように、通例、モニタリングされる。当業者は、タンパク質に関して本明細書に記載する方法を、スケールアップまたはスケールダウンすることができる。さらに、例えば細胞培地、インキュベーション時間、栄養補給プロトコールなどに変更を加えることができる。当業者は、任意の与えられたバイオリアクターおよび細胞タイプについて、適当なタンパク質生産条件を実験的に決定することができる。
本明細書に記載する方法では、さまざまなサイズおよびデザインのバイオリアクターを利用することができる。本明細書に記載する方法では、1L〜5000Lまたはそれ以上の作業体積を持つバイオリアクターを使用することができる。いくつかの例では、5L、36L、125L、400Lまたは3500Lのバイオリアクターを本明細書に記載する方法に使用して、それぞれ約4L、23L、100L、300Lおよび2500Lの体積で細胞を培養する。典型的には、細胞培養培地または細胞を加える前に、バイオリアクターを滅菌する。滅菌はオートクレーブするか、いくつかのバイオリアクターについては他の形で蒸気処理するか、または滅菌溶液、例えば希水酸化ナトリウム、希硝酸もしくは次亜塩素酸ナトリウムなどで処理するこによって、達成することができる。いくつかの例では、バイオリアクターを121℃、20PSIの蒸気で30分間滅菌する。滅菌後に、細胞培養培地をバイオリアクターに加え、滅菌プロセスが有効であったことを保証するために、微生物夾雑物などによる汚染について、ある期間後に評価することができる。
上記拡大培養相で得た細胞培養を、新鮮細胞培養培地が入っている滅菌バイオリアクターに加える。一般に、新鮮細胞培養培地中に104〜107細胞/mL、例えば105〜106細胞/mLの細胞密度で、可溶性rHuPH20発現細胞を接種する。例えば、1×104、5×104、1×105、5×105、1×106、4×106、または1×107細胞/mLの密度で細胞を接種することができる。ある例では、4×105細胞/mLの細胞密度で可溶性rHuPH20発現細胞を接種する。したがって、接種後の総細胞数は、バイオリアクターのサイズおよび細胞密度に依存して、107〜1014個であることができる。例えば、100Lの細胞培養体積は接種後に約109、1010、1011または1012細胞の細胞密度を持つことができる。もう一つの例では、2500Lの細胞培養体積が、接種後に約1010、1011、1012または1013細胞の細胞密度を持ちうる。
使用する接種細胞培養と新鮮培養培地の体積はバイオリアクターのサイズおよび接種材料の細胞密度に依存する。例えば、230Lの新鮮細胞培養培地が入っている400Lバイオリアクターに、約30Lの可溶性rHuPH20発現細胞(例えば2B2細胞)を加えて、総体積を約260L、接種細胞密度を4×105細胞/mL(総細胞数約1011細胞)にすることができる。これは、バイオリアクターに依存して、必要に応じてスケールアップまたはスケールダウンすることができる。例えば、65Lの新鮮細胞培養培地が入っている125Lバイオリアクターに、約20Lの可溶性rHuPH20発現細胞(例えば3D35M細胞)を加えて、総体積を約85L、接種細胞密度を4×105細胞/mL(総細胞数約3.4×1010細胞)にすることができる。もう一つの例では、3500Lバイオリアクターでの生産のために、2B2細胞を新鮮細胞培養培地に加えて、総細胞培養体積を1900〜2300L、例えば2100Lにする。
新鮮細胞培養培地は、細胞成長を促進するのに必要な栄養素を細胞に与えるために、適当な補助剤を含有する。基礎細胞培地に加えることができる補助剤には、グルコース、インスリン、酪酸ナトリウム、酵母エキスおよびグルタミンまたはグルタミン代替物、例えばL-アラニル-L-グルタミンなどがあるが、これらに限るわけではない。いくつかの例では、基礎培地が十分なグルコースを含有し、グルコースを追加する必要がない。別の例では、生産プロセス中に後からグルコースを培地に、例えば後続のフィード培地に加える。培地へのインスリンの添加は、細胞成長を促進し、ピーク細胞密度を増加させうる。グルタミンまたはグルタミン代替物、例えばL-アラニル-L-グルタミンは、細胞周期進行を支えると共に、細胞成長を強化することもできる。当業者は、基礎培地に補足することができる栄養素の量および質を実験的に決定することができる。いくつかの例では、グルタミンまたはグルタミン代替物を、1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、15mMまたは20mMの濃度で、基礎細胞培養培地に加える。インスリンは、例えば0.5mg/L〜50mg/L、例えば1mg/L〜40mg/L、2mg〜30mg/L、または5mg/L〜20mg/Lの濃度で、細胞培養培地に加えることができる。例えば、5mg/Lインスリンおよび8mM L-アラニル-L-グルタミンを補足した基礎細胞培養培地を、可溶性rHuPH20発現細胞を接種する新鮮細胞培養培地として使用することができる。追加の補助剤、例えば抗生物質、抗真菌剤、指示薬、塩類、ビタミン、アミノ酸および成長因子なども加えることができる。
バイオリアクターの個々のパラメータは、タンパク質生産プロセスの全体を通して最適な条件が維持されるように設定することができる。設定することができる具体的パラメータは、使用するバイオリアクターに依存し、温度、pH、溶存酸素、インペラー速度、容器圧、空気散布量および空気オーバーレイなどが含まれうるが、これらに限るわけではない。ある例では、3D35M細胞の100L細胞培養が入っている125Lバイオリアクターの条件を次のように設定する;温度:37℃;溶存酸素:25%±10%;インペラー速度:50RPM;容器圧:3psi;空気散布量:1L/分;空気オーバーレイ:1L/分、pH:7.2。もう一つの例では、260Lの初期細胞培養体積を含んでいる400Lバイオリアクターの条件を次のように設定する;温度:37℃;インペラー速度:40〜55RPM;容器圧:3psi;空気散布量:0.5〜1.5L/分;空気オーバーレイ:1L/分。さらにもう一つの例では、2100Lの初期培養体積を含んでいる3000Lバイオリアクターの条件を次のように設定する;温度:37℃(または36.5℃〜37.5℃);インペラー速度:35RPM(または70〜80RPM);容器圧:5psi(または3〜7psi);空気散布量:12L/分(または11〜13L/分);溶存酸素:25%、または>25%;接種前pH:7.2(またはpH7.1〜7.3);接種後pH:≦7.2(または≦7.3)。当業者は、特定のバイオリアクターにおける特定の可溶性rHuPH20発現細胞の成長について適当な条件を実験的に決定することができる。
可溶性rHuPH20発現細胞は典型的にはバイオリアクター中で10〜25日間培養される。いくつかの例では、可溶性rHuPH20発現細胞をバイオリアクター中で12、13、14、15または16日間培養してから収集する。別の例では、生細胞数(VCC)が特定のレベル、例えば25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%または70%などまで下がった時に、細胞を収集する。ある例では、VCCが30%〜35%である時に、細胞を収集する。もう一つの例では、VCCが50%未満に低下したら24時間以内に細胞を収集する。
バイオリアクター培養中は、細胞をバッチ培養として成長させることができ、この場合は、栄養素を追加することなく、培養物を最後まで成長させる。別の例では、細胞を流加培養として成長させ、全体を通して栄養素およびグルコースを補足するために特定の時点で一連のフィード培地を供給する。いくつかの例では、細胞を接種した細胞培養培地に与えられた栄養素が、接種後3、4、5、6、7日またはそれ以上までに使い果たされる。したがって、追加の栄養素または補助剤の供給は、バッチ培養よりも高いタンパク質収率をもたらすことができる。ある例では、接種後6日目、9日目および11日目にフィード培地が細胞に供給される。もう一つの例では、接種後7日目、9日目および11日目にフィード培地が細胞に供給される。さらにもう一つの例では、接種後5日目、7日目、9日目および11日目にフィード培地が細胞に供給される。バイオリアクター培養物に加えられるフィード培地の体積は、例えば細胞培養体積の0.5%〜20%、例えば1〜20%、2〜15%、3〜10%または4〜5%の範囲に及びうる。いくつかの例では、細胞培養体積の4%に相当する体積のフィード培地が加えられる。
細胞の成長および/または細胞周期を調節するために、フィード培地へのさまざまな補助剤の添加も使用することができる。フィード培地に含めることができる典型的な栄養素および補助剤には、グルタミンまたはグルタミン代替物、例えばL-アラニル-L-グルタミン、インスリン、酵母エキス、グルコースおよび酪酸ナトリウムまたは酪酸ナトリウムなどがあるが、これらに限るわけではない。さらにまた、フィード培地に使用される基礎培地も濃縮することができ、したがって細胞培養中に使い果たされているかもしれない必須アミノ酸などの追加栄養素を供給することができる。フィード培地中の基礎培地は、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍またはそれ以上濃縮することができる。別の例では、基礎培地がそれほど濃縮されないか、バイオリアクター中の細胞培養培地と同じ濃度である。
フィード培地中に含まれる補助剤は、細胞成長およびタンパク質生産を調節するために使用することができる。例えば、細胞培養に加えられる第1フィード培地は、細胞周期進行、細胞成長およびピーク細胞密度を強化する栄養素を含むことができる。後続のフィード培地は細胞成長停止および/またはタンパク質合成を促進することができる。各フィード培地中の各補助剤の量は、例えばフィード培地ごとに増減することなどにより、変動するか、どのフィード培地でも同じであることができる。いくつかの例では、補助剤の量を、あるフィード培地から次のフィード培地へと、例えば10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、300%、400%またはそれ以上、増加させる。別の例では、補助剤の量を、あるフィード培地から次のフィード培地へと、例えば5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上、減少させる。ある例では、ある補助剤をあるフィード培地から省く。別の例では、フィード培地中の補助剤の量が同じであり続ける。当業者は、所望する量の細胞成長およびタンパク質生産を促進するために、各フィード培地について各補助剤の最適な量を、実験的に決定することができる。
フィード培地に含めることができる典型的な補助剤または栄養素には、グルコース、グルタミンまたはグルタミン代替物、例えばL-アラニル-L-グルタミン、インスリン、および酪酸ナトリウムなどがあるが、これらに限るわけではない。加えられる補助剤のタイプおよび量は、細胞成長およびタンパク質生産に影響を及ぼしうる。例えば、細胞成長およびピーク細胞密度を増加させるために、インスリンおよびグルタミンまたはグルタミン代替物を、細胞培養に加えられる第1フィード培地に組み入れることができる。後続のフィード培地は、細胞成長よりもタンパク質生産を促進するために設計することができる。インスリンなどの補助剤は排除するか減量することができ、グルタミンまたはグルタミン代替物、例えばL-アラニル-L-グルタミンも同様である。これに対して、タンパク質合成を強化する酵母エキスなどの補助剤は増量することができる。加えて、細胞周期停止を強化し、したがってタンパク質生産量の増加を強化する補助剤も、含めることができる。そのような補助剤の典型例は酪酸ナトリウムである。
ある例では、インスリンを1つ以上のフィード培地に加える。インスリンの添加は、ピーク細胞密度を、例えば2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%またはそれ以上、増加させうる。インスリンはどのフィード培地にも組み入れることができるが、典型的には、バイオリアクター運転時間の初期相における最大細胞成長を促進するために、初期のフィード培地、例えば第1フィード培地、または第1フィード培地と第2フィード培地に、インスリンを加える。例えば第1フィード培地などのフィード培地は、5mg/L、10mg/L、15mg/L、20mg/L、25mg/L、30mg/L、35mg/L、40mg/L、45mg/L、50mg/L、55mg/L、60mg/Lもしくはそれ以上またはその前後のインスリン量を含有することができる。対照的に、後期フィード培地に加えられるインスリンの量は、減少させるか、完全に省くことができる。
グルタミンまたはグルタミン代替物、例えばL-アラニル-L-グルタミンもフィード培地に加えることができる。いくつかの例では、第1フィード培地に加えられるグルタミンまたはグルタミン代替物の量が、後続のフィード培地に加えられるグルタミンまたはグルタミン代替物の量よりも多い。特定の例では、各後続フィード培地に加えられるグルタミンまたはグルタミン代替物の量が、先のフィード培地に加えられた量よりも減らされる。各フィード培地に加えられる最適な量は、当業者が実験的に決定することができ、例えば1mM、5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mMもしくはそれ以上またはその前後のグルタミンまたはグルタミン代替物濃度を含むことができる。
典型的には、フィード培地に使用される基礎培地にグルコースも補足される。各フィード培地に加えられるグルコースの量は、先のフィード培地と比較して増加または減少させるか、ほぼ一定に保つことができる。いくつかの例では、フィード培地に加えられるグルコースの量が、10g/L、15g/L、20g/L、25g/L、30g/L、35g/L、40g/L、45g/L、50g/L、55g/L、60g/L、75g/L、80g/Lもしくはそれ以上またはその前後である。
また、タンパク質合成を促進する補助剤も含めることができる。そのような栄養素には酵母エキスがあるが、これに限るわけではない。いくつかの例では、バイオリアクター運転時間中に、フィード培地に含まれる酵母エキスの量を増加させる。例えば、第3フィード培地中の酵母エキスの量は、第2フィード培地中の量よりも増やすことができ、その第2フィード培地中の量は第2フィード培地中の量よりも増やすことができる。いくつかの例では、フィード培地に加えられる酵母エキスの量は、5〜1000g/L、例えば10g/L、20g/L、30g/L、40g/L、50g/L、75g/L、100g/L、125g/L、150g/L、175g/L、200g/L、250g/L、300g/L、350g/L、400g/Lもしくはそれ以上またはその前後であることができる。
細胞周期停止を強化し、したがってタンパク質生産を増加させる補助剤も含めることができる。典型的には、そのような補助剤は、運転時間の後期にバイオリアクターに加えられるフィード培地に加えられ、第1フィード培地には含まれない。例えば、細胞周期停止を強化する補助剤を、第2フィード培地と後続のフィード培地に加えることができる。そのような補助剤の典型例は酪酸ナトリウムである。いくつかの例では、フィード培地に加えられる酪酸ナトリウムの量が、0.1g/L〜10g/L、例えば0.2g/L、0.3g/L、0.4g/L、0.5g/L、0.6g/L、0.7g/L、0.8g/L、0.9g/L、1.0g/L、1.1g/L、1.2g/L、1.3g/L、1.4g/L、1.5g/L、1.6g/L、1.7g/L、1.8g/L、1.9g/L、2.0g/L、2.5g/L、3.0g/L、3.5g/Lもしくはそれ以上、またはその前後である。
さらに、タンパク質生産を最適化するために、バイオリアクター条件の任意の1つ以上を、生産相中に変更することができる。ある例では、温度を低下させる。これは細胞周期停止を促進し、細胞の生存を引き延ばし(それによって総タンパク質生産量を増加させ)、分泌されたヒアルロニダーゼの安定化を助けるのに役立ちうる。例えばバイオリアクターの温度は、各栄養補給時に下げることができ、例えば第2栄養補給時には37℃から36.5℃に、第3栄養補給時には36℃に、そして第4栄養補給時に35.5℃に下げることができる。当業者は、適当なフィード培地およびそのフィードを供給すべき時点、ならびにバイオリアクター中の適当な条件を、実験的に決定することができる。
ある例では、接種後6日目、9日目および11日目に、フィード培地を細胞に供給する。もう一つの例では、接種後7日目、9日目および11日目に、フィード培地を細胞に供給する。さらにもう一つの例では、接種後5日目、7日目、9日目および11日目に、フィード培地を細胞に供給する。各時点で供給されるフィード培地は同じであるか異なることができ、限定するわけではないがグルコース、酪酸ナトリウム、インスリン、グルタミンまたはグルタミン代替物および酵母エキスなどの補助剤を含むことができる。例えば400Lバイオリアクター中の260L培養中で成長する2B2細胞には、5日目に、33g/Lグルコース、32mM L-アラニル-L-グルタミン、16.6g/L酵母エキスおよび33mg/Lインスリンを含む10.4Lの4×基礎培地(例えばCD CHO培地)を含有する第1フィードを供給し、7日目に、10.8Lの2×基礎培地(例えばCD CHO培地)、33g/Lグルコース、16mM L-アラニル-L-グルタミン、33.4g/L酵母エキスおよび0.92g/L酪酸ナトリウムを含有する第2フィードを供給し、9日目に、10.8Lの1×基礎培地(例えばCD CHO培地)、50g/Lグルコース、10mM L-アラニル-L-グルタミン、50g/L酵母エキスおよび1.80g/L酪酸ナトリウムを含有する第3フィードを供給し、11日目に、1×基礎培地(例えばCD CHO培地)、33g/Lグルコース、6.6mM L-アラニル-L-グルタミン、50g/L酵母エキスおよび0.92g/L酪酸ナトリウムを含有する第4フィードを供給することができる。これより大きいまたは小さいバイオリアクター中でrHuPH20を生産するために、当業者は、これをそれぞれスケールアップまたはスケールダウンすることができる。さらに、当業者は、細胞成長および/またはタンパク質生産を強化するために培地に加えられる1つ以上の補助剤の量またはタイプを変更することができる。
もう一つの例では、5日目、7日目、9日目および11日目に以下のフィード培地を細胞に供給する:第1フィード培地:基礎培地+33g/Lグルコース+26.6mM L-アラニル-L-グルタミン+83.3g/Lイーストレート(Yeastolate)+33mg/L rHuインスリン;第2フィード:基礎培地+33g/Lグルコース+13.4mM L-アラニル-L-グルタミン+166.7g/Lイーストレート+0.92g/L酪酸ナトリウム;第3フィード:基礎培地+50g/Lグルコース+10mM L-アラニル-L-グルタミン+250g/Lイーストレート+1.8g/L酪酸ナトリウム;第4フィード:基礎培地+33.3g/Lグルコース+6.7mM L-アラニル-L-グルタミン+250g/Lイーストレート+0.92g/L酪酸ナトリウム。
G.細胞培養収集、タンパク質濃度およびバッファー交換
タンパク質生産相に続いて、細胞を収集し、精製プロセスの開始に先だって、細胞培養培地中に分泌された可溶性rHuPH20を濃縮する。この時点で、タンパク質の濃縮に加えて、細胞培養培地を適当なバッファーと交換することもできる。タンパク質濃縮とバッファー交換を達成するシステムおよびプロセスは、当技術分野では複数知られており、それらを本明細書に記載する方法で使用することができる。そのような方法の典型例を以下に説明するが、これらの方法に変更を加えるか、これらの方法を他の有効な方法で置き換えても、満足できるレベルのタンパク質濃縮およびバッファー交換を達成できることは、当業者には理解されるだろう。
細胞をバイオリアクターから収集し、ヒアルロニダーゼを含有する細胞培養液を細胞および細胞片から分離するための細胞除去および清澄化システムによって処理する。そのようなシステムの例は、タンパク質だけを通過させて集めることができる一連のフィルタを含むものである。ヒアルロニダーゼを細胞および細胞片から分離する能力を持つフィルタまたは一連のフィルタはどれでも使用することができる。例えば細胞培養収集物を一連のカプセルフィルタ、例えばポリエーテルスルホンフィルタに通すことができる。これらは、例えば細胞、細胞片、およびウイルスなどのさらに小さい粒子が段階的に除去されるように、順に減少する孔径を持つことができる。いくつかの例では、8.0μm、0.65μm、0.22μmおよび0.22μmの孔径を持つ一連の4つのフィルタを使って、細胞培養を清澄化することにより、収集細胞培養液(HCCF)を得る。本発明の方法において使用することができる細胞除去および清澄化システムのもう一つの例は、一連のフィルタであって、その第1段階では、4つのモジュールを並列に含有して、各モジュールが4〜8μmに分級された珪藻土の層と1.4〜1.1μmに分級された珪藻土の層を含有し、その後にセルロースメンブレンが設けられているものである。第2段階は、0.1〜0.11μmに分級された珪藻土の層と<0.1μmに分級された珪藻土の層を含有し、その後にセルロースメンブレンが設けられている単一のモジュールを含み、第3段階は0.22μmポリエーテルスルホンカプセルフィルタである。
細胞および細胞片がHCCFから分離されたら、HCCF中のタンパク質を典型的には濃縮し、細胞培養培地を適当なバッファーと交換する。タンパク質は、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍またはそれ以上、濃縮することができる。いくつかの例では、タンパク質を10倍濃縮する。別の例では、タンパク質を6倍濃縮する。当技術分野で知られているタンパク質濃縮法はどれでも利用することができる。そのような方法の典型例には、分子量分画(MWCO)フィルタを使ったタンジェンシャルフロー濾過(TFF)システムによる濃縮がある。例えば、清澄化したHCCFを一連の2つの30kDa MWCOスパイラル(spiral)ポリエーテルスルホンフィルタに通して、タンパク質を10倍濃縮する。もう一つの例では、HCCFを一連の4つの30kDa MWCOフィルタに通す。ヒアルロニダーゼの大規模生産、例えば100L培養物および300L培養物などの場合、典型的には、0.5〜5平方メートルの表面積を持つフィルタがこの目的に使用される。いくつかの例では、1.2平方メートルまたは2.8平方メートルの表面積を持つフィルタが使用される。
タンパク質濃縮に続いてバッファー交換を行う。当業者は適当なバッファーを実験的に決定することができる。適切なバッファーの典型例は、10mMヘペス、25mM NaCl、pH7.0バッファー、または10mMトリス、20mM Na2SO4、pH7.5バッファーである。収集、濃縮およびバッファー交換後に、濃縮タンパク質溶液を、典型的には、もう一つのフィルタ、例えば0.22μmカプセルフィルタに通してから、滅菌保存バッグに入れて保存する。
いくつかの例では、残留ウイルス夾雑物があればそれが不活化されるように、濃縮タンパク質溶液を処理する。ウイルス不活化は、当技術分野で知られる任意の方法によって達成することができる。例えば、濃縮タンパク質溶液を10%Triton X-100、3%リン酸トリ(n-ブチル)(TNBP)と混合し、室温で15〜75分間にわたって、1%Triton X-100、0.3%TNBPの最終濃度にすることができる。いくつかの例では、タンパク質をウイルス不活化溶液に30〜45分間曝露する。
H.精製
可溶性rHuPH20は、一連の精製ステップを使って濃縮タンパク質から精製される。多くの精製技法が当技術分野では知られており、本発明の方法ではそれらを利用することができる。そのような方法には、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー(AC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相クロマトグラフィー(RPC)および疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、およびゲル濾過法などのクロマトグラフィー法、またはそれらの任意の組み合わせを含めることができるが、これらに限るわけではない。
本発明の方法に使用される精製方法の典型例は、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびアフィニティクロマトグラフィーの組み合わせである。イオン交換クロマトグラフィーでは、タンパク質の荷電官能基とクロマトグラフィーカラムマトリックスの荷電官能基の間の静電力に基づいて、タンパク質を複雑な溶液または混合物から分離することができる。カチオン交換樹脂は、タンパク質の正に帯電した官能基を引きつける負に帯電した官能基を持ち、アニオン交換樹脂は、タンパク質の負に帯電した官能基を引きつける正に帯電した官能基を持つ。静電力によってマトリックスに結合したタンパク質は、クロマトグラフィーカラム内のバッファー溶液のイオン強度を時間をかけて増加させることによって、溶離させることができる。疎水性相互作用クロマトグラフィーでは、タンパク質を、その疎水性に基づいて、複雑な溶液または混合物から分離することができる。タンパク質を含有する複雑な溶液を、樹脂へのタンパク質の結合を容易にする高塩バッファーで平衡化したクロマトグラフィーカラムに適用する。次に、イオン強度が下がっていく塩勾配移動相をクロマトグラフィーカラムに導入して、結合したタンパク質をマトリックスから遊離させる。あるいは、疎水性相互作用クロマトグラフィーは、不活性二量体やタンパク質の凝集体などといった疎水性不純物を結合し、一方、単量体タンパク質はクロマトグラフィーカラムを比較的妨害することなく素通りさせることにより、単量体タンパク質を複雑な溶液または混合物から分離しうる。アフィニティクロマトグラフィーでは、マトリックスに共有結合されたリガンドまたはリガンド結合物質に対するタンパク質のアフィニティーに基づいて、タンパク質を複雑な溶液から分離することができる。そのリガンドまたはリガンド結合物質に対して弱いアフィニティを持つかアフィニティーを欠く複雑な溶液または混合物中の他のタンパク質は、クロマトグラフィーカラムを妨害されずに素通りし、マトリックスに結合された関心対象のタンパク質を残す。次に、リガンドまたはリガンド結合物質に対するアフィニティーが減少するようにバッファー条件を変更することにより、タンパク質をクロマトグラフィーカラムから溶出させることができる。
ある例では、ビーズ状架橋アガロースカラム、例えばQ Sepharose(商標)カラム(イオン交換クロマトグラフィー)、ビーズ状架橋フェニル置換アガロースカラム、例えばPhenyl Sepharose(商標)カラム(疎水性相互作用クロマトグラフィー)、アミノフェニルボロネートカラム(アフィニティクロマトグラフィー)、そして最後にヒドロキシアパタイトカラム(イオン交換クロマトグラフィー)による逐次的精製によって、可溶性rHuPH20が濃縮タンパク質溶液から精製される。これらのカラムは、ヒアルロニダーゼに関して、それぞれ異なる結合特性を示すので、ビーズ状架橋アガロースカラム(例えばQ Sepharose(商標)カラム)は捕捉ステップになり(すなわち、可溶性rHuPH20は樹脂に結合され、他のタンパク質のいくつかは素通りする)、ビーズ状架橋フェニル置換アガロース(例えばPhenyl Sepharose(商標)カラム)は素通りステップになり(すなわち、可溶性rHuPH20はカラムを素通りし、他のタンパク質のいくつかは捕捉される)、アミノフェニルボロネートカラムはもう一つの捕捉ステップになり、ヒドロキシアパタイトカラムは可溶性rHuPH20をさらに精製するための仕上げステップになる。
使用に先だって、カラムは、通例、滅菌され、平衡化される。滅菌は当技術分野で知られる任意の方法によって、例えば限定するわけではないが、1.0M NaOHによる滅菌などによって、達成することができる。平衡化は、適当なバッファーを、例えば続いてカラムを洗浄するために使用するバッファーまたは負荷前のタンパク質を含んでいるバッファーと類似するバッファーまたは同じバッファーを、カラムに添加することによって達成することができる。当業者は、各カラムの平衡化における使用に適したバッファーを容易に決定することができる。典型的なバッファーを以下に挙げる。各クロマトグラフィーステップの間に、溶出したタンパク質は、夾雑微生物または大きな凝集体があれば除去されるように、例えば0.22μmフィルタなどを通して濾過することができる。いくつかの例では、濾過された溶出液を、次のステップで使用する前に、例えば滅菌保存バッグなどに入れて保存する。カラムクロマトグラフィー後に、精製されたヒアルロニダーゼを、続いてウイルス除去ステップに付し、さらにタンパク質濃縮およびバッファー交換を行って、最終製剤を得ることができる。典型的な精製方法を以下により詳しく説明する。
1.ビーズ状架橋アガロースカラム
収集細胞培養液(HCCF)から得た濃縮タンパク質は、ビーズ状架橋アガロースカラム、例えばQ Sepharose(商標)カラム(これは強陰イオン交換体であり、可溶性rHuPH20を捕捉すると同時に、他のタンパク質は素通りさせる)などに負荷することができる。結合した可溶性rHuPH20は、次に、適当なバッファーを使って溶出させることができる。使用するカラムの寸法は、通例、HCCFから得られた濃縮タンパク質の体積に依存する。例えば、100Lバイオリアクター培養におけるヒアルロニダーゼ発現細胞の培養物から得られた濃縮タンパク質は、高さ20cm、直径14cmで、3Lの樹脂が入っているカラムに、負荷することができる。もう一つの例では、300Lバイオリアクター培養における可溶性rHuPH20発現細胞の培養物から得られた濃縮タンパク質を、高さ29cm、直径20cmで、9Lの樹脂が入っているカラムに負荷することができる。これは、濃縮タンパク質溶液の体積および予想されるタンパク質の量に応じて、必要なだけスケールアップまたはスケールダウンすることができる。例えば、20Lバイオリアクター培養における可溶性rHuPH20発現細胞の培養物から得られる濃縮タンパク質は、高さ28cm、直径7cmで、1.1Lの樹脂が入っているQ Sepharose(商標)カラムに負荷することができ、2500Lバイオリアクター培養における可溶性rHuPH20発現細胞の培養物から得られる濃縮タンパク質は、高さ26cm、直径63cmで、81Lの樹脂が入っているQ Sepharose(商標)カラムに負荷することができる。
タンパク質の負荷に先だって、カラムは通例、平衡化される。平衡化は、1、2、3、4、5、6、7、8、9カラム体積またはそれ以上のバッファーを通すことによって達成することができる。いくつかの例では、平衡化のために、5カラム体積のバッファーをカラムに通す。平衡化に適したバッファーとして、タンパク質を負荷した後にカラムを洗浄するために使用する予定のバッファーと類似するものが挙げられる。例えば、Q Sepharose(商標)カラムなどのビーズ状架橋アガロースカラムは、10mMヘペス、25mM NaCl、pH7.5で平衡化することができる。当業者には理解されるとおり、他の中性pHバッファーも使用することができる。
タンパク質濃縮物の負荷後に、カラムを洗浄し、タンパク質を溶出させる。結合した可溶性rHuPH20を含有するそのようなカラムを洗浄するのに適したバッファーには、例えば10mMヘペス、25mL NaCl、pH7.0;10mMヘペス、50mM NaCl、pH7.0;および10mMトリス、20mM Na2SO4、pH7.5などがある。カラムは1タイプ以上のバッファーで洗浄することができる。例えばカラムを20mM Na2SO4、pH7.5と10mMヘペス、50mM NaCl、pH7.0で洗浄することができる。通例、洗浄は、1、2、3、4、5、6、7、8、9カラム体積またはそれ以上のバッファーを通すことによって達成される。いくつかの例では、5カラム体積のバッファーを使ってカラムを洗浄する。次に、塩濃度が高いバッファー、例えば10mMヘペス、400mM NaCl、pH7.0などを使って、可溶性rHuPH20を溶出させる。いくつかの例では、溶出物をいつ集めるべきかを決定するために、A280での吸光度をモニタリングする。このプロセス中の吸光度は一般に可溶性rHuPH20の存在を示すからである。したがって、ある例では、溶出物を吸光度読み値が0.025になった時に、溶出液を集める。通例、溶出液を適当なフィルタ、例えば0.22μmフィルタを通して濾過してから、例えば滅菌保存バッグなどに入れて保存する。
2.ビーズ状架橋フェニル置換アガロースカラム
ビーズ状架橋アガロースカラムによる精製に続いて、タンパク質溶液を、Phenyl Sepharose(商標)カラムなどのビーズ状架橋フェニル置換アガロースカラムを使った疎水性相互作用クロマトグラフィーに付すことができ、ここでは可溶性rHuPH20がカラムを素通りする一方、他の夾雑タンパク質は捕捉される。本発明の方法で使用されるカラムのサイズは、そのカラムを使って精製されるタンパク質の体積および量に依存して、さまざまでありうる。典型的なサイズには、100Lバイオリアクター培養で成長させた細胞から得られる可溶性rHuPH20の精製に使用される、高さ29cm、直径20cmで、9Lの樹脂を含むカラム、300Lバイオリアクター培養で成長させた細胞から得られるヒアルロニダーゼの精製に使用される、高さ29cm、直径30cmで、19〜21Lの樹脂を含むカラム、および2500Lバイオリアクター培養で成長させた細胞から得られる可溶性rHuPH20の精製に使用される、高さ35cm、直径80cmで、176Lの樹脂を含むカラムなどがある。当業者は、適宜、スケールアップまたはスケールダウンすることができる。
Phenyl Sepharose(商標)カラムなどの滅菌ビーズ状架橋フェニル置換アガロースカラムは、タンパク質の負荷に先だって、例えば5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、0.1mM CaCl2、pH7.0などの適当なバッファーで平衡化することができる。Q Sepharoseカラム精製で得られるタンパク質溶出液にも、硫酸アンモニウム、リン酸カリウムおよびCaCl2が補足される。これらは、最終濃度が例えば約5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムおよび0.1mM CaCl2、pH7.0になるように、タンパク質に補足することができる。タンパク質の負荷に続いて、5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムおよび0.1mM CaCl2、pH7.0もカラムに加え、濾過された素通り画分を、滅菌バッグなどに集める。
3.アミノフェニルボロネートカラム
疎水性相互作用クロマトグラフィーに続いて、そのカラム精製タンパク質を、さらなる精製のために、アミノフェニルボロネートカラムに負荷する。アミノフェニルボロネートリガンドによるクロマトグラフィーは、アフィニティクロマトグラフィーに使用される他の多くのリガンドとは異なる。ほとんどのリガンドがタンパク質上の特定結合部位に非共有結合的相互作用の組み合わせによって結合するのに対し、フェニルボロネートは、主として、1,2-cis-ジオール基と一時的な共有結合を形成することによって相互作用する。ボロネートリガンドは、高度にグリコシル化された可溶性rHuPH20など、適当な基を含有する任意の分子に結合することになる。
本発明の方法で使用されるアミノフェニルボロネートカラムは、そのカラムを使って精製されるタンパク質の体積および量に応じて、さまざまでありうる。典型的なサイズには、100Lバイオリアクター培養で成長させた細胞から得られるヒアルロニダーゼの精製に使用される、高さ29cm、直径20cmで、6.3Lの樹脂を含むカラム、300Lバイオリアクター培養で成長させた細胞から得られるヒアルロニダーゼの精製に使用される、高さ29cm、直径30cmで、19〜21Lの樹脂を含むカラム、および2500Lバイオリアクター培養で成長させた細胞から得られるヒアルロニダーゼの精製に使用される、高さ35cm、直径80cmで、176Lの樹脂を含むカラムなどがある。当業者は、適宜、スケールアップまたはスケールダウンすることができる。アミノフェニルボロネートカラムを平衡化するのに適したバッファーには、例えば、5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、pH7.0を含有するバッファーがある。
Phenyl Sepharoseカラム精製したタンパク質をアミノフェニルボロネートカラムに負荷した後、カラムを適切な洗浄バッファーで洗浄する。典型的な洗浄バッファーには、5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、pH7.0、および20mMビシン、0.5M硫酸アンモニウム、pH9.0、および20mMビシン、100mM NaCl、pH9.0などがあるが、これらに限るわけではない。ある例では、ヒアルロニダーゼが結合しているアミノフェニルボロネートカラムをまず、5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、pH7.0で洗浄し、次に20mMビシン、0.5M硫酸アンモニウム、pH9.0で洗浄し、最後に20mMビシン、100mM NaCl、pH9.0で洗浄する。次に、結合しているヒアルロニダーゼを、例えば50mMヘペス、100mM NaCl、pH7.0で溶出させることができる。当業者は、バッファーの1つ以上に変更を加えても、同様に精製を達成することができる。通例、微生物夾雑物または大きな凝集体があればそれを除去するために、溶出した可溶性rHuPH20を、さらに濾過する。
4.ヒドロキシアパタイトカラム
フェニルボロネートカラムクロマトグラフィーに続いて、可溶性rHuPH20を含有するタンパク質溶液を、最終仕上げステップとして、ヒドロキシアパタイトカラムに負荷する。ヒドロキシアパタイトは、分子式Ca10(PO4)6(OH)2を持つリン酸カルシウムの結晶型である。これは、正に帯電した部分と負に帯電した部分とをどちらも含んでいるので、混合モード(mixed-mode)イオン交換による作用で、緊密に同時精製されるタンパク質を分離するための仕上げステップとして使用することができる。さまざまなヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー媒体が市販されており、この物質の入手可能な形態はどれでも本発明の方法に使用することができる。ヒドロキシアパタイトの例には、粒子を形成するように凝集させ、高温で焼結して安定な多孔性セラミック塊にしたものがあるが、これに限るわけではない。粒径はさまざまであることができ、例えば直径が約1μmから約1,000μmに及びうる。多孔度も、例えば約100Aから約10,000Aまで、さまざまであることができる。
本発明の方法で使用されるヒドロキシアパタイトカラムのサイズは、そのカラムを使って精製されるタンパク質の体積および量に応じて、さまざまであることができる。典型的なサイズには、300Lバイオリアクター培養で成長させた細胞から得られるヒアルロニダーゼの精製に使用される、高さ20cm、直径30cmで、13Lの樹脂を含むカラム、および2500Lバイオリアクター培養で成長させた細胞から得られるヒアルロニダーゼの精製に使用される、高さ23cm、直径80cmで、116Lの樹脂を含むカラムなどがある。当業者は、適宜、スケールアップまたはスケールダウンすることができる。
本明細書に記載する方法の場合、ヒドロキシアパタイトカラムは、5mMリン酸カリウム、200mM NaCl、または5mMリン酸カリウム、200mM NaCl、0.1mM CaCl2、pH7.0で平衡化することができる。これらのような溶液を使った平衡化により、カラムは、部分精製されたヒアルロニダーゼ(これ自体にリン酸カリウムおよびCaCl2がそれぞれ5mMおよび0.1mMの最終濃度になるように補足される)に適合することになる。カラムにタンパク質を負荷した後、結合していない夾雑タンパク質があればそれを除去するために、カラムを、例えば10mMリン酸カリウム、100mM NaCl、0.1mM CaCl2、pH7.0で洗浄することができる。次に、結合している可溶性rHuPH20を適当な溶出バッファーで溶出させることができる。例えば溶出は、70mMリン酸カリウム、pH7.0の添加によって達成することができる。いくつかの例では、溶出液を、例えば0.22μmフィルタで濾過する。
6.ウイルス除去、タンパク質濃縮およびバッファー交換
カラムクロマトグラフィーで得た可溶性rHuPH20は、タンパク質を所望のバッファー中に所望の濃度で製剤化するのに役立つ精製後ステップに付すことができる。タンパク質は、それが夾雑物を含まず、治療薬としての使用に適していることを保証するために、ウイルス除去ステップに付すこともできる。ウイルス除去は、通例、可溶性タンパク質だけを通し、ウイルス(およびサイズがウイルスと同じかそれより大きい他の夾雑物)があればそれらを捕捉するフィルタを使って達成される。そのようなフィルタは市販されており、本発明の方法にはどれでも使用することができる。ウイルス除去に有用なフィルタの孔径には、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、40nm、50nm、60nm、75nmおよび100nmなどがあるが、これらに限るわけではない。ある例では、精製ヒアルロニダーゼを20nmの細孔を持つフィルタで濾過する。例えば蠕動ポンプによって、または圧力タンクを使って、タンパク質をフィルタ内に送り込む。
ウイルス除去に続いて、可溶性rHuPH20を濃縮し、バッファー交換に付す。可溶性rHuPH20は、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍またはそれ以上、濃縮することができる。いくつかの例では、タンパク質を約6倍濃縮する。これにより、例えば0.1mg/mL〜50mg/mLの濃度を得ることができる。いくつかの例では、精製ヒアルロニダーゼが約1mg/mLに濃縮される。他の例では、精製ヒアルロニダーゼが約10mg/mLに濃縮される。当技術分野で知られている任意のタンパク質濃縮方法を利用することができる。そのような方法の典型例には、分子量分画(MWCO)フィルタを使ったタンジェンシャルフロー濾過(TFF)システムによる濃縮がある。例えば精製ヒアルロニダーゼを10kDa MWCOスパイラルポリエーテルスルホンフィルタに通して、タンパク質を10倍濃縮することができる。もう一つの例では、タンパク質を、一連の4つの30kDa MWCOフィルタに通す。ヒアルロニダーゼの大規模生産、例えば100L培養物および300L培養物などの場合、典型的には、0.5〜5平方メートルの表面積を持つフィルタが、この目的に使用される。いくつかの例では、1.2平方メートルまたは2.8平方メートルの表面積を持つフィルタが使用される。
後で例えば治療薬として使用するために所望のバッファー中にタンパク質を製剤化する目的で、一般に、タンパク質濃縮に続いてバッファー交換を行う。当業者は適当なバッファーを実験的に決定することができる。適切なバッファーの典型例は、食塩水溶液バッファー、例えば限定するわけではないが、10mMヘペス、130mM NaCl、pH7.0および10mMヒスチジン、130mM NaCl、pH6.0である。いくつかの例では、滅菌環境下で保存する前に、精製ヒアルロニダーゼをもう一つのフィルタ、例えば0.22μmカプセルフィルタに通すことができる。
I.充填
本明細書に記載する可溶性rHuPH20の生産および精製方法は、精製タンパク質を長期保存および使用のための小さな容器に無菌的に充填する充填ステップも含むことができる。可溶性rHuPH20は、液体製剤として、または例えば凍結乾燥後の粉末として、容器に充填することができる。大規模生産には、例えばタンパク質を容器に移すためのポンプおよび充填体積を測定するための計量ステーションなどを含む自動充填システムが、通例、使用され、それらは広く入手可能である。ただし、手作業による容器の充填または自動充填と手作業による容器の充填の組み合わせも行うことができる。適切な容器には、限定するわけではないが、ガラス製またはプラスチック製バイアル、ブリスター包装、ボトル、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、注射器、ボトル、または他の任意の適切な容器などがある。容器を密封するために、適切な閉じ具または蓋も使用することができる。充填プロセスには、充填に先だって、微生物夾雑物および大きな凝集体または沈殿物を除去するために、まず最初に可溶性rHuPH20をフィルタに通すことを含めることができる。例えば、タンパク質は、適切な容器に分注する前に、0.22μmフィルタで濾過することができる。当業者は、適当な充填体積を決定することができ、これには、例えば0.1mL〜100mLの範囲の体積が含まれうる。いくつかの例では、バイアルに1mL、5mLまたは20mLの可溶性rHuPH20が無菌的に充填される。容器に蓋をするか容器を封鎖した後、その容器を適当な温度で保存することができる。いくつかの例では、容器を急速冷凍して、-15℃〜-35℃で保存する。別の例では、容器を、例えば3℃〜15℃で冷蔵する。通例、液体の長期保存は、分解を最小限に抑えるために、より低い温度で行われる。粉末状の可溶性rHuPH20は、著しい分解を起こさずに室温で長期間保存することができる。
J.モニタリングおよびアッセイ
本明細書に記載する方法は、1つ以上のステップで、各時点における1つ以上の条件、パラメータまたは生成物を測定するモニタリングを行うことができる。これによって最適な条件が全体を通して維持されることを保証することができ、これを使ってプロセスの効率および生産性を評価することもできる。モニタリングは、例えば細胞拡大培養相、タンパク質生産相(すなわちバイオリアクター内)および/またはタンパク質精製段階において、そしてまた、それらの間、またはそれらの前もしくは後の任意の時点で、例えば濃縮/バッファー交換操作または充填中などに、1回以上行うことができる。モニタリングには、pH、温度、体積、汚染、純度、タンパク質濃度、酵素活性、細胞生存度および細胞数の測定などを含めることができるが、これらに限るわけではない。プロセスの全体にわたって条件、パラメータまたは生成物をモニタリングすることに加えて、最終産物として生産される精製可溶性rHuPH20も、例えばタンパク質濃度、酵素活性、不純物、汚染、オスモル濃度、分解、翻訳後修飾および単糖類含有量などに関して、評価し、特徴づけることができる。
1.条件のモニタリング
最適な条件がプロセスの全体を通して維持されることを保証するために、本明細書に記載する方法におけるステップの1つ以上において、条件をモニタリングすることができる。条件が最適範囲内にないことをモニタリングが示した場合は、条件を変更することができる。モニタリングすることができる条件は各プロセスごとに異なる。例えば、細胞培養相(すなわち、細胞拡大培養およびバイオリアクターにおけるタンパク質生産)では、モニタリングすべき条件に、温度、細胞培養pH、細胞培養栄養素(例えばグルコース)、CO2レベルおよびO2レベルなどが含まれるが、これらに限るわけではない。通例、条件は、例えばインキュベータまたはバイオリアクター内の組み込みシステムを使って自動的にモニタリングされる。
タンパク質精製段階では、モニタリングすることができる条件に、pH、伝導度および流速などがあるが、これらに限るわけではない。これらの条件は、1つ以上のカラムクロマトグラフィーステップの前、間および/または後にモニタリングすることができる。例えば、カラムの平衡化、洗浄または溶出に使用されるバッファーをモニタリングすることができる。これは、バッファーを負荷する前またはバッファーがカラムを通過した後に行うことができる。
2.可溶性rHuPH20生産のモニタリング
可溶性rHuPH20生産および可溶性rHuPH20生産に関連するパラメータもプロセスの全体にわたってモニタリングすることができる。これらには、細胞数、細胞生存度、汚染、タンパク質濃度、酵素活性、純度、オスモル濃度、翻訳後修飾などがあるが、これらに限るわけではない。これらのパラメータを評価するための方法はどれでも使用することができる。例えば哺乳動物細胞の生存度は、細胞培養のごく一部を採取し、損傷した細胞膜だけを透過するので死細胞だけを染色するトリパンブルーによる染色を行うことによって評価することができる。細胞は顕微鏡下で可視化することができ、例えば血球計を使って計数することができる。他の方法には、代謝活性を測定することによって細胞生存度を評価することが含まれる。例えば細胞培養の一部を、代謝的に活性な細胞によって有色のホルマザン生成物へと切断されるテトラゾリウム塩(例えばMTT、XTTまたはWST-1)と共にインキュベートすることができる。
特定試料中の可溶性rHuPH20濃度は、当技術分野で周知の方法によって、例えば限定するわけではないが、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA);SDS-PAGE;ブラッドフォード法、ローリー法、および/またはBCA法;UV吸光度、および他の定量可能なタンパク質標識方法、例えば免疫標識法、放射標識法および蛍光標識法ならびに関連する方法などによって、評価することができる。また、分解の存在および程度も、標準的な技法によって、例えばドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、電気泳動したヒアルロニダーゼ含有試料のウェスタンブロッティング、および例えばRP-HPLCなどのクロマトグラフィーによって、測定することができる。ヒアルロニダーゼ含有試料の純度は、例えばSDS-PAGE、RP-HPLC、サイズ排除クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィーおよび等電点電気泳動(IEF)によって評価することができる。可溶性rHuPH20含有試料、例えば精製ヒアルロニダーゼを含有する試料は、シアル酸および単糖類含有量を評価することによって、さらに特徴づけることができる。これは、例えば試料を40%トリフルオロ酢酸で加水分解し、放出された単糖類を蛍光標識し、それらをRP-HPLCで分離することによって達成することができる(実施例10参照)。
本明細書に記載する方法を使って生産され精製された可溶性rHuPH20は、翻訳後修飾の存在について評価することもできる。そのようなアッセイは当技術分野では知られており、これには、グリコシル化、ヒドロキシル化、およびカルボキシル化を測定するためのアッセイが含まれる。グリコシル化に関する典型的なアッセイでは、糖質分析を、例えばヒドラジン分解またはエンドグリコシダーゼ処理に供した可溶性rHuPH20のSDS page分析によって行うことができる。ヒドラジン分解では、無水ヒドラジンと共にインキュベートすることにより、N結合型およびO結合型グリカンを糖タンパク質から放出させる。一方、エンドグリコシダーゼ放出には、大半のN-グリカンを糖タンパク質から放出させるPNGase Fを使用する。可溶性rHuPH20ポリペプチドのヒドラジン分解またはエンドグリコシダーゼ処理は、発蛍光団または発色団ラベルでタグ付けすることができる還元末端を生成する。標識された可溶性rHuPH20ポリペプチドは蛍光標識糖質電気泳動(FACE)によって分析することができる。グリカン用の蛍光タグは、HPLCによる複雑なグリコシル化パターンの単糖分析、プロファイリングまたはフィンガープリンティングにも使用することができる。典型的なHPLC法には、親水性相互作用クロマトグラフィー、電子相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、およびサイズ排除クロマトグラフィーなどがある。典型的なグリカンプローブには3-(アセチルアミノ)-6-アミノアクリジン(AA-Ac)および2-アミノ安息香酸(2-AA)などがあるが、これらに限るわけではない。糖質部分はグリコシル化ヒアルロニダーゼポリペプチドを認識する特異的抗体を使って検出することもできる。
β-ヒドロキシル化を測定するための典型的アッセイは、アルカリ加水分解に付された可溶性rHuPH20ポリペプチドの逆相HPLC分析を含む(Przysieckiら (1987) PNAS 84:7856-7860)。ヒアルロニダーゼポリペプチドのカルボキシル化およびγ-カルボキシル化は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)分析による質量分析を使って評価することができる(例えばHarveyら J Biol Chem 278:8363-8369、Maumら Prot Sci 14:1171-1180を参照されたい)。
試料中の可溶性rHuPH20の酵素活性は、本明細書に記載する方法におけるどの時点でも評価することができる。ある例では微小濁度アッセイを使って活性を測定する(実施例10参照)。これはヒアルロン酸が血清アルブミンと結合した時に起こる不溶性沈殿物の形成に基づく。活性は、可溶性rHuPH20をヒアルロン酸ナトリウム(ヒアルロン酸)と共に設定された時間(例えば10分間)インキュベートした後、未消化のヒアルロン酸ナトリウムを酸性化血清アルブミンの添加で沈殿させることによって測定される。得られた試料の濁度をさらなる発現期間後に640nmで測定する。ヒアルロン酸ナトリウム基質に対する酵素活性に起因する濁度の低下が、可溶性rHuPH20酵素活性の尺度である。もう一つの例では、可溶性rHuPH20を含有する試料と共にインキュベートした後の残存ビオチン化ヒアルロン酸を測定するマイクロタイターアッセイを使って酵素活性が測定される(例えばFrostおよびStern (1997) Anal.Biochem. 251:263-269、米国特許出願公開第20050260186号を参照されたい)。ヒアルロン酸のグルクロン酸残基上の遊離カルボキシル基をビオチン化し、そのビオチン化ヒアルロン酸基質をマイクロタイタープレートに共有結合させる。可溶性rHuPH20を含有する試料と共にインキュベートした後、アビジン-ペルオキシダーゼ反応を使って残存ビオチン化ヒアルロン酸基質を検出し、活性既知のヒアルロニダーゼ標準品による反応後に得られるものと比較する。酵素活性を測定するための他のアッセイも当技術分野では知られており、本発明の方法において使用することができる(例えばDelpechら, (1995) Anal.Biochem. 229:35-41;Takahashiら, (2003) Anal.Biochem. 322:257-263を参照されたい)。
汚染の存在もモニタリングすることができる。汚染には、例えば微生物汚染(例えばウイルス、細菌およびマイコプラズマ)、微生物産物汚染(例えばエンドトキシン)、または他のプロセス関連不純物などが含まれうるが、これらに限るわけではない。任意の適切な方法またはアッセイを使用することができる。例えばウイルスおよび細菌は、それらが試料中に存在するかどうか、また存在するとすればどんな量で存在するかを決定するために、当技術分野において周知の方法を使って培養することができる。顕微鏡観察も、微生物汚染を検出するために使用することができる。例えば、透過型電子顕微鏡法(TEM)を使って、試料をウイルスまたは細菌の存在について評価することができる。マイコプラズマ検出は、例えば生化学的技法または分子的技法、例えば限定するわけではないがマイコプラズマ特異的核酸を増幅するためのPCR、マイコプラズマ酵素を検出するための生化学的検査、およびマイコプラズマ抗原または核酸を検出するための細胞ベース蛍光アッセイなどを使って、達成することができる。
細菌エンドトキシンなどの微生物産物の存在もモニタリングすることができる。エンドトキシンの存在を検出するための適切なアッセイの例は、リムルス変形細胞溶解物(LAL)アッセイである。2タイプのLALアッセイ、すなわちゲル凝塊タイプと測光法(比色法および比濁法)タイプを使用することができる。LALは、カブトガニ由来の血液細胞(変形細胞)の水性抽出物である。エンドトキシンは、活性化された凝固酵素をもたらす酵素反応のカスケードをトリガーする。細菌エンドトキシンの存在下、高温では、試薬の添加後にLAL試薬が凝固することになる。ゲル凝塊の形成は、エンドトキシンの濃度に比例する。速度論的アッセイでは、LAL中のプロ酵素が、グラム陰性細菌によって産生されたエンドトキシンと接触した時に活性化される。活性化の速度は存在するエンドトキシンの濃度と正比例する。活性化のレベルは、分光光度法で測定される後続の基質反応によって測定することができる。
K.実施例
以下に掲載する実施例は例示を目的とし、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
[実施例1]
可溶性rHuPH20発現細胞株の作製
HZ24プラスミド(配列番号50に記載)を使ってチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞をトランスフェクトした(例えば関連出願第10,795,095号、同第11/065,716号および同第11/238,171号を参照されたい)。可溶性rHuPH20を発現させるためのHZ24プラスミドベクターは、pCIベクターバックボーン(Promega)、ヒトPH20ヒアルロニダーゼのアミノ酸1〜482をコードするDNA(配列番号47)、ECMVウイルス由来の配列内リボソーム進入部位(IRES)(Clontech)、およびマウスジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子を含有する。pCIベクターバックボーンは、ベータ-ラクタマーゼ耐性遺伝子(AmpR)をコードするDNA、f1複製起点、サイトメガロウイルス前初期エンハンサー/プロモーター領域(CMV)、キメライントロン、およびSV40後期ポリアデニル化シグナル(SV40)も含んでいる。可溶性rHuPH20コンストラクトをコードするDNAは、ヒトPH20のネイティブ35アミノ酸シグナル配列のアミノ酸位置1のメチオニンをコードするDNAの前にNheI部位とコザックコンセンサス配列とを含有し、配列番号1に記載のヒトPH20ヒアルロニダーゼのアミノ酸位置482に対応するチロシンをコードするDNAの後に停止コドンを含有し、その後ろに、BamHI制限部位が続いている。したがって、コンストラクトpCI-PH20-IRES-DHFR-SV40pa(HZ24)、CMVプロモーターによって駆動される単一のmRNA種であって、配列内リボソーム進入部位(IRES)によって分離された、ヒトPH20のアミノ酸1〜482(配列番号3に記載)とマウスジヒドロ葉酸レダクターゼのアミノ酸1〜186(配列番号51に記載)とをコードするものをもたらす。
トランスフェクションの準備として、4mMグルタミンおよび18ml/L Plurionic F68/L(Gibco)を補足したDHFR(-)細胞用のGIBCO変法CD-CHO培地で成長させた非トランスフェクトDG44 CHO細胞を、0.5×106細胞/mlの密度でシェーカーフラスコに播種した。細胞を湿潤インキュベート中、5%CO2下、37℃において、120rpmで振とうしながら成長させた。トランスフェクションに先立ち、対数増殖期の非トランスフェクトDG44 CHO細胞を生存度について調べた。
非トランスフェクトDG44 CHO細胞培養の生細胞6千万個をペレット化し、2×トランスフェクションバッファー(2×HeBS:40mMヘペス、pH7.0、274mM NaCl、10mM KCl、1.4mM Na2HPO4、12mMデキストロース)0.7mLに、2×107細胞の密度で再懸濁した。再懸濁した細胞の各アリコートに、0.09mL(250μg)の線状HZ24プラスミド(ClaI(New England Biolabs)と共に終夜消化することによって線状化したもの)を加え、その細胞/DNA溶液を、室温で、間隙0.4cmのBTX(Gentronics)エレクトロポレーションキュベットに移した。陰性対照エレクトロポレーションは、プラスミドDNAを細胞と混合せずに行った。細胞/プラスミド混合物を、330Vおよび960μFまたは350Vおよび960μFのコンデンサ放電でエレクトポレートした。
細胞をエレクトロポレーション後のキュベットから取り出して、4mMグルタミンおよび18ml/L Plurionic F68/L(Gibco)を補足した5mLのDHFR(-)細胞用変法CD-CHO培地に移し、湿潤インキュベータ中、5%CO2下、37℃において、選択圧を加えずに、6穴組織培養プレートのウェルで2日間成長させた。
エレクトロポレーションの2日後に、0.5mLの組織培養培地を各ウェルから除去し、実施例9に記載の微小濁度アッセイを使って、ヒアルロニダーゼ活性の存在について試験した。
Figure 0005856261
トランスフェクション2(350V)で得た細胞を組織培養ウェルから集め、計数し、1mLあたり1×104〜2×104個の生細胞になるように希釈した。5枚の96穴丸底組織培養プレートの各ウェルに、細胞懸濁液を0.1mLずつ移した。4mM GlutaMAX(商標)-I補助剤(GIBCO(商標)、Invitrogen Corporation)を含有しヒポキサンチンおよびチミジン補助剤を含有しないCD-CHO培地(GIBCO)100マイクロリットルを、細胞を含むウェルに加えた(最終体積0.2mL)。
メトトレキサートなしで成長させた5枚のプレートから10個のクローンを同定した。
表2.同定されたクローンのヒアルロニダーゼ活性
Figure 0005856261
6個のHZ24クローンを拡大培養し、単一細胞懸濁液としてシェーカーフラスコに移した。クローン3D3、3E5、2G8、2D9、1E11、および4D10を、左上のウェルの5000細胞から開始して、細胞をプレートの縦方向に1:2希釈し、プレートの横方向に1:3希釈する二次元無限希釈法を使って、96穴丸底組織培養プレートにプレーティングした。培養の初期に必要な成長因子を供給するために1ウェルあたり500個の非トランスフェクトDG44 CHO細胞のバックグラウンドで、希釈クローンを成長させた。50nMメトトレキサートを含有する5枚とメトトレキサートを含有しない5枚で、1サブクローンあたり10枚のプレートを作製した。
クローン3D3は、24個の目に見えるサブクローンを産生した(メトトレキサート処理なしから13個、および50nMメトトレキサート処理から11個)。それら24個のサブクローンのうち8個から得られる上清に、有意なヒアルロニダーゼ活性(>50単位/mL)が測定され、それら8個のサブクローンをT-25組織培養フラスコに拡大培養した。メトトレキサート処理プロトコールから単離されたクローンは、50nMメトトレキサートの存在下で拡大培養した。クローン3D35Mをさらに500nMメトトレキサート中で拡大培養したところ、シェーカーフラスコ中で1,000単位/mL以上を産生するクローンが生じた(クローン3D35M;または第1世代3D35M)。次に、3D35M細胞のマスター細胞バンク(MCB)を調製した。
[実施例2]
3D35M細胞における可溶性rHuPH20をコードする核酸領域のコピー数の決定
3D35M細胞における可溶性rHuPH20をコードする核酸領域のコピー数を定量PCRによって決定した。MCBから得た3D35M細胞から全ゲノムDNAを抽出した。それぞれが約6.6ngのDNA(約100細胞に相当する)を含有する6個の独立したDNAの希釈液を、2つ一組にして、分析用に調製した。テンプレートを含有しない陰性対照と、プラスミドおよび1000個のCHO細胞に相当するDNA(6.6ng)を含有する陽性対照も調製した。反応は、TaqMan Universal PCR Master Mixプロトコール(Applied Biosystems)に従って組み立て、2つ一組にして行った。約5×106コピーから49コピーまでの範囲のプラスミドDNAを表す8個のHZ24プラスミド希釈液を使って標準曲線を作成した。標準品をCHO細胞にCHO対照ゲノムDNA(100細胞相当)に希釈した。HZM3.P1フォワードプライマーおよびHZM3.P2リバースプライマー(それぞれ配列番号52および53に記載)と、蛍光色素6FAM(6-カルボキシフルオレシン)およびTAMRA(6-カルボキシテトラメチルローダミン)を含有するHZM3プローブ(配列番号54)とを使用し、TaqMan(商標)Univeral PCR Master Mixプロトコール(Applied Biosystems)に従って、反応を組み立てた。反応は、以下のサイクリング条件を使用し、2つ一組にして行った:50℃で2分間、95℃で10分間の後、95℃で15秒間および60℃で1分間を40サイクル。各DNA試料についてGAPDHコピー数をアッセイするための標準的定量PCR反応も行った。データは、ABI Prism 7700(商標)Sequence Detection Systemソフトウェア・バージョン1.9(Applied Biosystems)を使って集めた。
1細胞あたりの標的遺伝子コピー数を、6個の3D35MゲノムDNA希釈液について、標準化されたコピー数(GAPDH)に対する標的コピー数(可溶性rHuPH20)の比として算出した。データセットにディクソンのQ外れ値統計検定を適用した。3D35M細胞におけるsHuPH20領域のコピー数は317.87±11.64であることがわかった。
[実施例3]
第1世代可溶性rHuPH20の生産および精製
A.5Lバイオリアクタープロセス
3D35Mのバイアルを融解し、100nMメトトレキサートおよび40mL/L GlutaMAX(商標)-I(Invitrogen;200mM保存液)を補足したCD CHO(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)中で、T-25フラスコから1Lスピナーフラスコまで拡大培養した。細胞を、5L培地中に1mlあたり4×105生細胞の接種密度で、スピナーフラスコから5Lバイオリアクター(Braun)に移した。パラメータは、温度設定値37℃、pH7.2(開始設定値)、溶存酸素設定値25%および空気オーバーレイ0〜100cc/分とした。168時間の時点で、250mlの第1フィード培地(50g/Lグルコースを含むCD CHO)を加えた。216時間の時点で、250mlの第2フィード培地(50g/Lグルコースおよび10mM酪酸ナトリウムを含むCD CHO)を加え、264時間の時点で、250mlの第2フィード培地を加えた。このプロセスにより、1mlあたり1600単位の最終生産能力が、6×106細胞/mlの最大細胞密度で得られた。酪酸ナトリウムを添加したのは、生産の最終段階における可溶性rHuPH20の生産を強化するためである。
3D35Mクローンから得た調整培地をデプスフィルトレーションおよび10mMヘペスpH7.0へのタンジェンシャルフローダイアフィルトレーションによって清澄化した。次に可溶性rHuPH20を、Q Sepharose(Pharmacia)イオン交換クロマトグラフィー、Phenyl Sepharose(Pharmacia)疎水性相互作用クロマトグラフィー、アミノフェニルボロネート(ProMedics)クロマトグラフィーおよびヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー(Biorad、カリフォルニア州リッチモンド)での逐次的クロマトグラフィーによって精製した。
可溶性rHuPH20はQ Sepharoseに結合し、同じバッファー中の400mM NaClで溶出した。溶出液を2M硫酸アンモニウムで最終濃度が500mM硫酸アンモニウムになるように希釈して、Phenyl Sepharose(低置換度(low sub))カラムに通し、次に同じ条件下でフェニルボロネート樹脂に結合させた。硫酸アンモニウムを含まない50mMビシン中、pH9.0で洗浄した後、Phenyl Sepharose樹脂からヘペスpH6.9に可溶性rHuPH20を溶出させた。その溶出液を、5mMリン酸カリウムおよび1mM CaCl2中、pH6.9のセラミックヒドロキシアパタイト樹脂に負荷し、0.1mM CaCl2を含む80mMリン酸カリウム、pH7.4で溶出させた。
得られた可溶性rHuPH20は、微小濁度アッセイ(実施例9参照)によると、65,000単位/mgタンパク質を超える比活性を持っていた。精製可溶性rHuPH20は、Pharmacia 5RPCスチレンジビニルベンゼンカラムから、0.1%TFA/H2Oと0.1%TFA/90%アセトニトリル/10%H2Oの間の勾配によって、24〜26分に単一ピークとして溶出し、SDS電気泳動により単一の幅広い61kDaバンドとして分割されたが、これは、PNGASE-Fで処理すると、鋭い51kDaバンドになった。N末端アミノ酸配列決定により、リーダーペプチドが効率よく除去されていることが明らかになった。
B.100Lバイオリアクター細胞培養への上流細胞培養拡大プロセス
スケールアッププロセスを使って、3D35M細胞の4つの異なるバイアルから可溶性rHuPH20を別々に精製して、sHuPH20の4つの独立したバッチ、HUA0406C、HUA0410C、HUA0415CおよびHUA0420Cを生産した。各バイアルを別々に125Lバイオリアクターまで拡大培養した後、カラムクロマトグラフィーを使って精製した。酵素収率などのパラメータを評価するために、プロセスの全体を通して試料を採取した。以下に掲載する本プロセスの説明では、バイオリアクター開始体積およびフィード培地体積、導入細胞密度、ならびに洗浄体積および溶出体積などについて、代表的な詳細を述べる。正確な数字は各バッチごとにわずかに異なり、それらについては表3〜10に詳述する。
3D35M細胞の4つのバイアルを37℃の水浴で融解し、100nMメトトレキサートおよび40mL/L GlutaMAX(商標)-Iを含有するCD CHOを加え、細胞を遠心分離した。細胞を、20mLの新鮮培地が入っている125mL振とうフラスコに再懸濁し、37℃、7%CO2インキュベータに入れた。細胞を125mL振とうフラスコ中で40mLまで拡大培養した。細胞密度が1.5〜2.5×106細胞/mLに達したら、培養物を125mLスピナーフラスコに100mLの培養体積で拡大した。フラスコを37℃、7%CO2でインキュベートした。細胞密度が1.5〜2.5×106細胞/mLに達したら、培養物を250mLスピナーフラスコに200mLの培養体積で拡大し、フラスコを37℃、7%CO2でインキュベートした。細胞密度が1.5〜2.5×106細胞/mLに達したら、培養物を1Lスピナーフラスコに800mLの培養体積で拡大し、37℃、7%CO2でインキュベートした。細胞密度が1.5〜2.5×106細胞/mLに達したら、培養物を6Lスピナーフラスコに5Lの培養体積で拡大し、37℃、7%CO2でインキュベートした。細胞密度が1.5〜2.5×106細胞/mLに達したら、培養物を36Lスピナーフラスコに20Lの培養体積で拡大し、37℃、7%CO2でインキュベートした。
125Lリアクターを121℃、20PSIの蒸気で滅菌し、65LのCD CHO培地を加えた。使用前に、リアクターを汚染についてチェックした。36Lスピナーフラスコ中の細胞密度が1.8〜2.5×106細胞/mLに達したら、20Lの細胞培養を36Lスピナーフラスコから125Lバイオリアクター(Braun)に移して、最終体積を85L、播種密度を約4×105細胞/mLとした。パラメータは、温度設定値:37℃、pH:7.2、溶存酸素:25%±10%、インペラー速度50rpm、容器圧3psi、空気散布量1L/分、空気オーバーレイ:1L/分とした。細胞数、pH確認、培地分析、タンパク質の生産および貯留を調べるために、リアクターから毎日試料を採取した。運転中に栄養素フィードを加えた。6日目に、3.4Lの第1フィード培地(CD CHO+50g/Lグルコース+40mL/L GlutaMAX(商標)-I)を加え、培養温度を36.5℃に変えた。9日目に、3.5Lの第2フィード(CD CHO+50g/Lグルコース+40mL/L GlutaMAX(商標)-I+1.1g/L酪酸ナトリウム)を加え、培養温度を36℃に変えた。11日目に、3.7Lの第3フィード(CD CHO+50g/Lグルコース+40mL/L GlutaMAX(商標)-I+1.1g/L酪酸ナトリウム)を加え、培養温度を35.5℃に変えた。14日の時点、または細胞の生存度が50%未満に低下した時に、リアクターを収集した。このプロセスにより、800万細胞/mLの最大細胞密度で1600単位/mLの酵素活性を持つ可溶性rHuPH20の生産が得られた。マイコプラズマ、生物汚染度、エンドトキシン、ならびにインビトロおよびインビボのウイルス、ウイルス粒子に関する透過型電子顕微鏡検査(TEM)、ならびに酵素活性を調べるために、収集時に、培養物を試料採取した。
ポリエーテルスルホン媒体を持つ一連の使い捨てカプセルフィルタ(Sartorius)を通して、すなわち最初は8.0μmデプスカプセル、0.65μmデプスカプセル、0.22μmカプセル、最後に0.22μm Sartopore 2000cm2フィルタを通して、100L滅菌保存バッグ中に、100リットルバイオリアクター細胞培養収集物を濾過した。培養物を、スパイラルポリエーテルスルホン30kDa MWCOフィルタ(Millipore)による2回のTFFで10倍濃縮した後、10mMヘペス、25mM Na2SO4、pH7.0で6回のバッファー交換を行い、0.22μm最終フィルタを通して、20L滅菌保存バッグに濾過した。表3に、細胞培養、収集、濃縮およびバッファー交換ステップに関するモニタリングデータを記載する。
表3.細胞培養、収集、濃縮およびバッファー交換ステップに関するモニタリングデータ
Figure 0005856261
Q Sepharose(Pharmacia)イオン交換カラム(樹脂3L、高さ=20cm、直径=14cm)を調製した。pHおよび伝導度の決定ならびにエンドトキシン(LAL)アッセイのために洗浄液試料を集めた。カラムを5カラム体積の10mMトリス、20mM Na2SO4、pH7.5で平衡化した。濃縮しダイアフィルトレーションに付した収集物を、100cm/時間の流速でQカラムに負荷した。カラムを5カラム体積の10mMトリス、20mM Na2SO4、pH7.5および10mMヘペス、50mM NaCl、pH7.0で洗浄した。タンパク質を10mMヘペス、400mM NaCl、pH7.0で溶出させ、0.22μm最終フィルタを通して滅菌バッグ中に濾過した。
次に、Phenyl-Sepharose(Pharmacia)疎水性相互作用クロマトグラフィーを行った。Phenyl-Sepharose(PS)カラム(樹脂9.1L、高さ=29cm、直径=20cm)を調製した。カラムを5カラム体積の5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、0.1mM CaCl2、pH7.0で平衡化した。上で得たタンパク質溶出物に2M硫酸アンモニウム、1Mリン酸カリウムおよび1M CaCl2保存液を補足して、最終濃度をそれぞれ5mM、0.5Mおよび0.1mMにした。タンパク質をPSカラムに100cm/時間の流速で負荷した。5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムおよび0.1mM CaCl2 pH7.0を100cm/時間の速度で加えた。素通り画分を0.22μm最終フィルタを通して滅菌バッグに入れた。
PSで精製したタンパク質を、5カラム体積の5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムで平衡化しておいたアミノフェニルボロネートカラム(ProMedics)(樹脂6.3L、高さ=20cm、直径=20cm)に負荷した。タンパク質を100cm/時間の流速でカラムに通し、カラムを5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、pH7.0で洗浄した。次に、カラムを20mMビシン、100mM NaCl、pH9.0で洗浄し、タンパク質を、50mMヘペス、100mM NaCl pH6.9で溶出させ、滅菌フィルタを通して20L滅菌バッグ中に濾過した。溶出液を、生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。
ヒドロキシアパタイト(HAP)カラム(BioRad)(樹脂1.6L、高さ=10cm、直径=14cm)を5mMリン酸カリウム、100mM NaCl、0.1mM CaCl2 pH7.0で平衡化した。洗浄試料を集め、pH、伝導度およびエンドトキシン(LALアッセイ)について調べた。アミノフェニルボロネートで精製したタンパク質にリン酸カリウムとCaCl2を補足して最終濃度を5mMリン酸カリウムおよび0.1mM CaCl2にし、それを100cm/時間の流速でHAPカラムに負荷した。カラムを5mMリン酸カリウム pH7.0、100mM NaCl、0.1mM CaCl2で洗浄した後、10mMリン酸カリウム pH7.0、100mM NaCl、0.1mM CaCl2 pHで洗浄した。タンパク質を70mMリン酸カリウム pH7.0で溶出させ、0.22μmフィルタを通して5L滅菌保存バッグ中に濾過した。溶出液を生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。
次に、圧力タンクにより、HAPで精製したタンパク質を20nMウイルス除去フィルタに通した。タンパク質をDV20圧力タンクおよびフィルタ(Pall Corporation)に加え、20nmの細孔を持つUltipor DV20フィルター(Pall Corporation)を通して、滅菌20L保存バッグに入れた。濾液を、タンパク質濃度、酵素活性、オリゴ糖、単糖およびシアル酸プロファイリング、ならびにプロセス関連不純物について調べた。次に、10kD分子量分画(MWCO)Sartocon Sliceタンジェンシャルフロー濾過(TFF)システム(Sartorius)を使って、濾液中のタンパク質を1mg/mLに濃縮した。まず最初に、ヘペス/食塩水溶液(10mMヘペス、130mM NaCl、pH7.0)で洗浄することによってフィルタを調製し、pHおよび伝導度を調べるために透過液を試料採取した。濃縮後に、濃縮タンパク質を試料採取し、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。その濃縮タンパク質に対して、最終バッファー:10mMヘペス、130mM NaCl、pH7.0への、6回のバッファー交換を行った。濃縮タンパク質を0.22μmフィルタを通して20L滅菌保存バッグに入れた。タンパク質を試料採取し、タンパク質濃度、酵素活性、遊離スルフヒドリル基、オリゴ糖プロファイリングおよびオスモル濃度について調べた。
表4〜10に、各3D35M細胞ロットについて、上述の各精製ステップに関係するモニタリングデータを記載する。
表4.Q Sepharoseカラムデータ
Figure 0005856261
表5.Phenyl Sepharoseカラムデータ
Figure 0005856261
表6.アミノフェニルボロネートカラムデータ
Figure 0005856261
表7.ヒドロキシアパタイトカラムデータ
Figure 0005856261
表8.DV20濾過データ
Figure 0005856261
表9.最終濃縮データ
Figure 0005856261
表10.最終製剤へのバッファー交換データ
Figure 0005856261
精製し濃縮した可溶性rHuPH20タンパク質を、5mLおよび1mLの充填体積で滅菌バイアルに無菌的に充填した。オペレータ制御(operator controlled)ポンプに0.22μmフィルタを通してタンパク質を入れ、そのポンプを使ってバイアルを重量測定による読み取りで充填した。バイアルをストッパーで閉じ、圧着キャップで固定した。閉じたバイアルを異物粒子について目視検査してから、ラベルを貼った。ラベルを貼った後、液体窒素への1分以内の浸漬によってバイアルを急速冷凍し、≦-15℃(-20±5℃)で保存した。この方法を使った可溶性rHuPH20の生産と精製により、96,000単位/mg〜144,000単位/mgの比活性を持つ約400〜700mgの可溶性rHuPH20が得られた。
[実施例4]
第2世代可溶性rHuPH20の生産
上述の第1世代3D35M細胞株を、さらに高いメトトレキサートレベルに適応させて、第2世代クローンを作出した。樹立メトトレキサート含有培養物から、8mM GlutaMAX(商標)-Iおよび1.0μMメトトレキサートを含有するCD CHO培地に、3D35M細胞を播種した。37℃、7%CO2湿潤インキュベータ中で46日間にわたって細胞を成長させ9回継代することにより、細胞を、より高レベルのメトトレキサートに適応させた。2.0μMメトトレキサートを含む培地が入っている96穴組織培養プレートでの限界希釈法により、増幅された細胞集団をクローンアウト(clone out)した。約4週間後に、クローンを同定し、クローン3E10Bを拡大培養のために選択した。トリパンブルー染色によって細胞生存度を調べ、血球計で計数し、微小濁度アッセイ(下記実施例9で説明)によって酵素活性を調べながら、8mM GlutaMAX(商標)-Iおよび2.0μMメトトレキサートを含有するCD CHO培地中で継代20代にわたって3E10B細胞を成長させた。3E10B細胞株のマスター細胞バンク(MCB)を作製し、凍結し、以後の研究に使用した。
8mM GlutaMAX(商標)-Iおよび4.0μMメトトレキサートを含有するCD CHO培地中で3E10B細胞を培養することによって、この細胞株の増幅を続けた。12回目の継代後に、細胞を研究用細胞バンク(RCB)としてバイアル中で凍結した。RCBのバイアルを1本融解し、8.0μMメトトレキサートを含有する培地で培養した。5日後に、培地中のメトトレキサート濃度を16.0μMに増加させ、次いで18日後に20.0μMに増加させた。20.0μMメトトレキサートを含有する培地における8回目の継代培養から得た細胞を、4mM GlutaMAX(商標)-Iおよび20.0μMメトトレキサートを含有するCD CHO培地が入っている96穴組織培養プレートでの限界希釈法によってクローンアウトした。5〜6週間後にクローン1B3、2B2および5C1を同定した。3D35Mの9回目の継代培養から得た細胞も、8mM GlutaMAX(商標)-Iおよび20.0μMメトトレキサートを含有するCD CHO培地が入っている96穴組織培養プレートでの限界希釈法によってクローンアウトし、クローン1G11、2E10および2G10を同定した。
1B3、2B2、5C1、1G11、2E10および2G10のそれぞれの細胞培養物を、250mLシェーカーフラスコ中の50mLの体積に4×105細胞/mLの密度で播種した。細胞の成長速度と生産能力を決定するために、培養物を、10〜14日間、追加フィードを加えずに、成長させ、衰退させた。定期的に試料を採取し、ヒアルロニダーゼ活性についてアッセイした(表11および12)。
表11.1B3、2B2および5C1細胞のヒアルロニダーゼ活性
Figure 0005856261
表12.1B3、2B2および2E10細胞のヒアルロニダーゼ活性
Figure 0005856261
4つの細胞株(2B2、2G10、1G11および2E10)を、いずれも250mLシェーカーフラスコ中の50mLの体積に4×105細胞/mLの密度で播種する研究で比較した。50g/Lグルコース、40g/L酵母エキスおよび1.1g/L酪酸ナトリウムを補足したCD CHO培地を含有するフィード培地を使って、全ての細胞株に、8日目に10%(v/v)フィードおよび5%フィードを与えた。15日目に細胞を収集した。試料を定期的に採取し、可溶性rHuPH20酵素活性についてアッセイした(表13)。
表13.2E10、1G11、2G10および2B2細胞のヒアルロニダーゼ活性
Figure 0005856261
他の細胞(例えば2G10細胞)も良好な酵素生産能力を示したが、バッチ条件でも流加条件でも、2B2細胞の培養物の方が高い酵素活性を示したので、20.0μMメトトレキサートを含有する培地での拡大培養には、2B2細胞株を選択した。11回目の継代後に、2B2細胞を研究用細胞バンク(RCB)としてバイアル中で凍結した。
[実施例5]
3E10B細胞および2B2細胞で生産された可溶性rHuPH20の酵素活性
3E10B細胞および2B2細胞によって生産された可溶性rHuPH20を、微小濁度アッセイ(実施例9)を使って酵素活性についてアッセイした。3E10B細胞および2B2細胞バンクの凍結バイアルを融解し、細胞を、湿潤インキュベータ中、成長培地(8mM GlutaMAX(商標)-Iと、3E10B細胞には2.0μMメトトレキサート、2B2細胞には20.0μMメトトレキサートとを含むCD CHO培地)において、37℃、6%CO2で、別々に2代にわたって継代培養した。125mLエルレンマイヤーフラスコ(Corning)中の成長培地20mLに5×105細胞/mLの密度で細胞を接種し、約100rpmの速度で回転するシェーカープラットフォームを持つ湿潤インキュベータ中、37℃、6%CO2で、8日間成長させた。8日目および10日目に、生産相を開始させるために、50g/Lグルコース、50g/L酵母エキス、および2.2g/L(20mM)酪酸ナトリウムを補足したCD CHO培地を含有する5%v/vフィード培地を、培養物に供給した。生産相中は、8日目(190時間)、10日目(240時間)、14日目(332時間)、15日目(258時間)、16日目(382時間)および18日目(427時間)に、培養物を試料採取し、生存度をゼロまで下降させた。次に、試料をヒアルロニダーゼ活性について分析した。
表14および15に、各時点における3E10B細胞と2B2細胞の生存度(生細胞密度(VCD)および生存百分率)ならびに活性(単位/フラスコ)を記載する。2B2細胞によって生産される可溶性rHuPH20の酵素活性は、3E10B細胞によって生産されるものよりも、一貫して高かった。例えば、8日目に、2B2細胞によって生産された可溶性rHuPH20の酵素活性は、3E10B細胞によって生産されたものよりも69%高かった(2484単位/mLと1469単位/mL)。同様の傾向が生産相の全体にわたって観察された。細胞培養物の生存度は同じような速度で下降した。細胞の生産速度を算出したところ、3E10B細胞は、8日目に、0.23ピコグラム/細胞/日(pcd)の可溶性rHuPH20を生産し、15日目には0.38pcdを生産することがわかった。これに対し、2B2細胞は、8日目に0.46ピコグラムpcdの可溶性rHuPH20を生産し、15日目に0.69pcdを生産した。これは、8日目および15日目の3E10Bによる生産よりも、それぞれ100%および82%高かった。次に、2B2細胞のマスター細胞バンク(MCB)を、以降の研究のために調製した。
表14.クローン3E10Bの生存度および活性
Figure 0005856261
表15.クローン2B2の生存度および活性
Figure 0005856261
[実施例6]
2B2細胞の遺伝的安定性試験
A.2B2細胞における可溶性rHuPH20をコードする核酸領域のコピー数の決定
2B2細胞における可溶性rHuPH20をコードする核酸領域のコピー数をPCRによって決定した。MCBの2B2細胞2×107個から、QIAamp DNeasyキット(Qiagen)を使って、全ゲノムDNAを抽出した。陰性対照としてDG-44 CHO細胞からもゲノムDNAを抽出した。抽出されたDNAの純度をアガロースゲル電気泳動とUV分光測光法で確認した。(高分子量DNAに対して)DNAのフラグメントを作製するために、ゲノムDNAを超音波処理によってせん断した。これによって、より正確なピペッティングおよびテンプレート到達性が確保された。2B2細胞とDG-44細胞から6つの独立したゲノムDNA希釈液(約1000細胞/μlに相当する希釈液)を調製し、2つ一組にして2つのアッセイで、すなわち、可溶性rHuPH20プラスミドDNAをコードする核酸領域に特異的な配列を標的とし増幅する標的アッセイと、GAPDH配列を標的とし増幅する内在対照とで、分析した。内在対照は結果を標準化するための基準として使用した。標的アッセイには、DG-44 CHOゲノムDNAに混合した既知量のHZ24プラスミドの段階希釈液から作成される標準曲線を含めた。内在対照には、HZ24プラスミドDNAと混合したDG-44 CHOゲノムDNAの段階希釈液から作成される標準曲線を含めた。哺乳類ゲノムのサイズを3×109塩基対であると仮定した。各アッセイには陰性対照(テンプレートなし)および陽性対照(標的アッセイにはHZ24プラスミドDNA、内在対照標準化アッセイには宿主細胞DNA)を含めた。HZM3.P1フォワードプライマーおよびHZM3.P2リバースプライマー(それぞれ配列番号52および53に記載)と、蛍光色素6FAM(6-カルボキシフルオレシン)およびTAMRA(6-カルボキシテトラメチルローダミン)を含有するHZM3プローブ(配列番号54)とを使って、反応を調製した。Applied Biosystems Prism(登録商標)7900 Sequence Detection Systemを使って、標準的なサイクリング条件(50℃で2分、95℃で10分、95℃で15秒および60℃で1分を40サイクル)で、試料を増幅した。
1細胞あたりの標的遺伝子コピー数を、2B2ゲノムDNAの6つの希釈液について、標準化されたコピー数(GAPDH)に対する標的コピー数の比として算出した。データセットにディクソンのQ外れ値統計検定を適用した。2B2細胞における可溶性rHuPH20プラスミドをコードする核酸領域のコピー数は206.61±8.35であることがわかった。
B.mRNA配列分析
2B2細胞中でHZ24プラスミドから生成されるPH20 mRNAの配列を決定した。MCBから得た2B2細胞2×107個からRNeasyミニキット(Qiagen)を使ってRNAを抽出した。混入しているDNAを除去するために試料をDNase Iで処理し、RNAの純度をアガロースゲル電気泳動とUV分光測光法で確認した。SuperScript(商標)逆転写酵素(Invitrogen)を用いる逆転写反応と、逆転写酵素を欠く対照反応とを、抽出したRNAならびにオリゴd(t)プライアーおよびランダムプライマーを使って行った。次に、得られたcDNA産物をPCR増幅におけるテンプレートとして使用した。2つの異なるプライマー対セット、すなわちAP01/AP03とAP10/AP12を使用した。AP01/AP03は1719塩基対領域が増幅されるように設計し、プライマー対AP10/AP12は、より大きい領域(1811塩基対)が増幅されて3'端のリバース鎖配列が得られるように設計した。表5にプライマーの配列を記載する。各PCR反応には、単一プライマー対照、テンプレートとして逆転写酵素対照(上述)を使用しない陰性対照、および対照プライマーと対照テンプレートとを使った陽性対照を含めた。増幅産物をアガロースゲル電気泳動によって可視化し、予想されるサイズであることを確認した後、過剰のプライマーおよびdNTP類を除去するためにゲル抽出またはEXOSAP(USB)で精製した。
精製した産物を、BigDye(登録商標)Terminator v1.1サイクルシークエンスキット(Applied Biosystems)と表16に記載のプライマーとを使って配列決定した。配列データをアセンブルし、導き出されたコンセンサス配列(配列番号55)を、Sequencherソフトウェア・バージョン4.1.2(Gene Code Corporation)を使って基準配列と比較した。全部で1449塩基対の配列データが生成した。この配列は、位置1131における1塩基対の相違(これは予想されるシトシンIの代わりにチミジン(T)であることが認められた)を除いて、基準配列(配列番号47)と同一であることがわかった。これはサイレント突然変異であり、アミノ酸配列には影響しない。
表16.PCR増幅用および配列決定用のプライマー
Figure 0005856261
C.2B2細胞のサザンブロット分析
構造地図を得るために2B2細胞に対してサザンブロット分析を行った。1×107個の2B2細胞および1×107個の対照DG-44細胞から、Maxwell 16(登録商標)システム(Promega)を使って、全DNAを抽出した。抽出されたDNAおよびHZ24プラスミド対照コンストラクトをアガロースゲル電気泳動で純度について評価した。2B2細胞およびDG-44細胞から得たDNAならびにHZ24プラスミド対照をSpeI、XbaIで消化し、BamHI/HindIIIを使って二重消化を行った。HZ24プラスミド対照に対してもう一つのBamH I/Hind消化を行い、約1.4kbをゲル抽出によって精製し、α-32Pで放射標識することにより、標識プローブを作製した。それぞれ約10μgの消化した2B2 DNAおよびDG-44 DNA、ならびに250pgのHZ24プラスミドDNAを含む10μgのDG-44 DNAを、アガロースゲルで電気泳動した。電気泳動後のゲルを撮像してから、サザンブロット転写を行った。ナイロンメンブレンを標識プローブとハイブリダイズさせた後、室温で30分間洗浄し、次に、55℃で30分間の洗浄を2回行った。最初のオートラジオグラフを24時間露光し、目視検査した。さらに長い露光が必要であると判断されたので、2回目のオートラジオグラフは、より暗い露出のハイブリダイズバンドが得られるように、3日間露光した。フィルムを現像した後、AlphaImager(登録商標)(Alpha Innotech)を使ってバンドのサイズを測定した。
DG-44陰性対照消化物にはハイブリダイズバンドが観察されず、HZ24消化物には予想されるサイズの単一ハイブリダイズバンドが観察された(BamHI/HindIII消化物:約1.4kb;SpeI消化物:約6.6kb;XbaI消化物:約6.5kb)。SpeIで消化した2B2 DNAを使用すると、約7.7kbの主要ハイブリダイズバンド1本と4本の副ハイブリダイズバンド(約13.9、約6.6、約5.7および約4.6kb)が観察され、XbaIで消化した2B2 DNAを使用すると、約5.0kbの主要ハイブリダイズバンド1本と2本の副ハイブリダイズバンド(約13.9および約6.5kb)が観察され、BamHI/HindIIIで消化した2B2 DNAを使用すると、約1.4kbの単一ハイブリダイズバンドが観察された。BamHI/HindIII消化物に単一の約1.4kbハイブリダイズバンドが存在することから、プローブされた領域内に大きな配列挿入や配列欠失はないことが示された。XbaIおよびSpeI単独消化物から得られた結果は、2B2細胞のゲノムにはHZ24プラスミドの組込み部位が複数あることを示している。
[実施例7]
30Lバイオリアクター細胞培養における第2世代可溶性rHuPH20の生産
400Lバイオリアクター(培養体積300L)にスケールアップするための最適なプロセスを決定する目的で、36Lバイオリアクター(30L培養体積)を使って2B2細胞から可溶性rHuPH20を生産し、精製した。4つの別々の36Lバイオリアクター運転を、下記A〜Dの各項に詳述する。
A.可溶性rHuPH20ロット056-099および056-100の生産および特徴づけ
2B2のバイアル(1×107細胞)を融解し、20μMメトトレキサートおよび40mL/L GlutaMAX(商標)-I(Invitrogen)を補足したCD CHO(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)中、継代8代にわたって、37℃、7%CO2で培養した後、それを600mLに拡大培養した。1週間後に、その培養を、メトトレキサートを含まない40mL/L GlutaMAX(商標)-Iを補足したCD CHO培地中、5Lに拡大培養した。その5L培養物を、1LのGlutaMAX(商標)-Iおよび30mLの硫酸ゲンタマイシンを補足した25LのCD CHO培地が入っている36Lバイオリアクターに、3.6×105細胞/mLの初期播種密度で接種した。バイオリアクターの撹拌設定値は75RPM;温度:37℃;pH:7.15;溶存酸素:30%に設定した。バイオリアクターには、Applikonコントローラで制御された濾過空気オーバーレイおよび空気/酸素/CO2散布を供給した。
培養物には、バイオリアクター運転時間の全体を通して7回、接種後161、184、237、256、280、304および328時間の時点で、栄養を供給した。フィード培地は蠕動ポンプを通してバイオリアクター中に濾過した。運転時間の全体にわたる各フィード培地の内容物およびバイオリアクターフィードパラメータをそれぞれ表17および表18に記載する。
表17.フィード培地処方
Figure 0005856261
表18.バイオリアクターパラメータ
Figure 0005856261
バイオリアクターを収集し、それぞれ8μm、0.65μm、0.45μmおよび0.22μmの孔径を持つ一連のカプセルフィルタ(Sartorius)を含むシステムで濾過した。蠕動ポンプを使って収集を行ったところ、約5時間で完了し、約32Lの収集細胞培養液(HCCF)が得られた。HCCFに、EDTAとTrisを最終濃度がそれぞれ10mM、pH7.6になるように補足した。次に、HCCFを2〜8℃で保存してから、濃縮し、バッファー交換に付した。
タンパク質を濃縮するために、30kDaのMWCOを持つ2.5ft2 Milliporeスパイラル型カートリッジを、まず最初に、150mM NaCl、10mMヘペス、10mM EDTA、pH7.5中で平衡化した。15LのHCCFを15倍濃縮して1Lにした。濃縮物を150mM NaCl、10mMヘペス、10mM EDTA、pH7.5バッファーで10回バッファー交換し、保持液を0.2μmカプセルを通して2L保存バッグに濾過して、最終体積を1.1Lにした。次に保持液を2〜8℃で保存した。
次に、濃縮しバッファー交換したタンパク質溶液を、Q Sepharoseカラム、Phenyl Sepharoseカラム、アミノフェニルカラムおよびヒドロキシアパタイトカラムによるカラムクロマトグラフィーで精製した。各クロマトグラフィーステップの前後にタンパク質溶液中のヒアルロニダーゼ単位を評価し、それらを使って各ステップの収率を決定した。
簡単に述べると、1.1Lのカラムベッドを持つQ Sepharoseカラムを、使用に先だって、2.8Lの1.0N NaOHで衛生化し、0.1N NaOH中に保存した。次に、2.5Lの10mMヘペス、400mM NaCl、pH7.0で浄化し、4.1Lの滅菌注射用水(SWFI)ですすぎ、2.5Lの10mMヘペス、25mM NaCl、pH7.0で平衡化した。バッファー交換したタンパク質(170,160単位/mLで1L)をカラムに負荷した。素通り画分は479単位/mLで1Lであったことから、ほぼ全ての生成物が樹脂に結合したことが示された。カラムを4Lの10mMヘペス、25mM NaCl、pH7.0および4.2Lの10mMヘペス、50mM NaCl、pH7.0で洗浄した。次に、生成物を3.0Lの10mMヘペス、400mM NaCl、pH7.0に溶出させて、49,940単位/mLで3Lを得て、それを0.2μmフィルタで濾過した。
2.1Lのカラムベッドを持つPhenyl Sepharoseカラムを、使用に先だって、4.8Lの1.0N NaOHで衛生化し、0.1N NaOH中に保存した。次に、それを5.0LのSWFIですすぎ、4.6Lの5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムで浄化し、6.8LのSWFIで再びすすいだ。次に、カラムを5.5Lの5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム中で平衡化した。Q Sepharoseカラムからの溶出液に、10.3mLの1Mリン酸二水素カリウム、10.3mLの1Mリン酸水素カリウムおよび0.42mLの1mL CaCl2を加えた。次にこれをカラムに負荷し、素通り画分とチェイス(chase)(1Lの5mMリン酸カリウム、0.5mM硫酸アンモニウム)とを集めて、20,030単位/mLで7.4Lを得た。生成物を0.2μmフィルタで濾過した。
1.8Lのカラムベッドを持つアミノフェニルボロネートカラムを、使用に先だって、4.5Lの1.0N NaOHで衛生化し、0.1N NaOH中に保存した。次に、それを3.9LのSWFIですすぎ、4.2Lの5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムで浄化し、4.0LのSWFIで再びすすいだ。次にカラムを7.5Lの5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムで平衡化した。Phenyl Sepharoseカラムから得られた素通り画分の物質を、硫酸アンモニウムを最終濃度が0.5Mになるように補足してから、アミノフェニルボロネートカラムに負荷した。カラムを6.5Lの5mMリン酸カリウム pH7.0で洗浄し、次に7.8Lの20mMビシン、pH9.0で洗浄し、次に9.0Lの20mMビシン、100mM NaCl、pH9.0で洗浄した。生成物を4.8Lの50mMヘペス、100mM NaCl、pH7.0で溶出させて、22,940単位/mLで4.8Lを得て、それを0.2μmフィルタで濾過した。
0.8Lのカラムベッドを持つヒドロキシアパタイトカラムを、使用に先だって、2.7Lの1.0N NaOHで衛生化し、0.1N NaOH中で保存した。カラムを2.1Lの200mMリン酸カリウム、pH7.0で中和してから、2.2Lの5mMリン酸カリウム、100mM NaCl中で平衡化した。アミノフェニルボロネートカラムからの溶出液に、9.1mLの1Mリン酸二水素カリウム、9.1mLの1Mリン酸水素カリウムおよび0.452mLの1mL CaCl2を加えた。次にこれをカラムに負荷したところ、素通り画分は10単位/mLで4.5Lであったことから、可溶性HuPH20の良好な結合が示された。カラムを3.3Lの5mMリン酸カリウム、100mM NaCl、0.5M硫酸アンモニウム、pH7.0で洗浄し、次に2.9Lの10mMリン酸カリウム、100mM NaCl、0.5M硫酸アンモニウム、pH7.0で洗浄した。生成物を1.0Lの70mMリン酸カリウム、pH7.0で溶出させたところ、130,000単位/mLで1Lが得られ、それを0.2μmフィルタで濾過した。
精製された生成物を、130mM NaCl、10mMヘペス、pH7.0中で平衡化しておいた2.5ft2 Millipore 30kDa MWCOカートリッジを使って濃縮した。生成物を74mLに濃縮し、130mM NaCl、10mMヘペス、pH7.0バッファーで10回バッファー交換した後、0.2μmフィルタで濾過した。A280測定を行ったところ、タンパク質濃度は11.3mg/mLであることが示された。9.6mLの130mM NaCl、10mMヘペス、pH7.0バッファーを追加して、タンパク質濃度を10mg/mLにした(ロット056-99)。この10mg/mLタンパク質溶液の10mLをバッファーで希釈して、1mg/mL溶液を得た(ロット056-100)。どちらの溶液も0.2μmフィルタで濾過した。
製剤化した製品を10mLおよび1mLのガラスバイアルに充填した。その総合計は761mgの可溶性rHuPH20になった。バイアルを-80℃で凍結してから、-20℃に移して保存した。次にロット056-99および056-100を活性と純度について特徴づけた。ロット056-99および056-100は、1,350,786単位/mLおよび129,982単位/mLの酵素活性と、130,00単位/mgおよび124,00単位/mgの比活性(酵素活性とタンパク質濃度から算出)を示した。可溶性rHuPH20試料の純度を、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)およびアニオン交換クロマトグラフィーで決定した。RP-HPLCによる決定では、これら2つのロットの純度は約95%であると観測された。SECによる決定では、これら2つのロットの純度は約99%であると観測された。エンドトキシンレベルは、ロット056-99および056-100について、それぞれ≦0.5EU/mLおよび0.1EU/mLであることがわかった。オスモル濃度は、ロット056-99および056-100について、それぞれ271mOsm/kgおよび291mOsm/kgであると測定された。
B.可溶性rHuPH20生産量を増加させるための変更:バイオリアクターバッチ2B2-20K.5
上記A項で述べた方法に変更を加えた。これらの変更は、生成物収率を増加させ、製造の効率とスケーラビリティを改善しようとしたものである。下記の製造ステップには、研究用細胞バンクから得た凍結細胞の融解、連続培養における細胞の拡大培養、流加バイオリアクターシステムの稼働、細胞培養液の収集および清澄化、ならびにバルク生成物の濃縮およびバッファー交換が含まれる。変更には、例えば、細胞の成長速度および生成物発現レベルを増加させるためのバイオリアクター培地への組換えヒトインスリンの添加が含まれる。また、フィードの数も7から5に減らした。他の変更も上述した方法に加えた。
2B2のバイアル(1×107細胞)を融解し、20μMメトトレキサートおよび40mL/L GlutaMAX(商標)-I(Invitrogen)を補足したCD CHO(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)で培養した後、それを、メトトレキサートを含まず40mL/L GlutaMAX(商標)-Iを補足したCD CHO培地中で、100mL、450ml、次いで4.5Lに拡大培養した。800LのGlutaMAX(商標)-I、30mLの硫酸ゲンタマイシンおよび100mgの組換えヒトインスリンを補足した20LのCD CHO培地が入っている36Lバイオリアクターに、3.6Lの2B2培養物を、4.3×105細胞/mLの初期播種密度で接種した。バイオリアクターの撹拌設定値を80RPM;温度:37℃;pH:7.15;溶存酸素:25%に設定した。バイオリアクターには、Applikonコントローラで制御された濾過空気オーバーレイおよび空気/酸素/CO2散布を供給した。
培養物には、13日間のバイオリアクター運転時間の全体を通して5回、接種後117、143、196、235、および283時間の時点で、栄養を供給した。フィード培地は蠕動ポンプを通してバイオリアクター中に濾過した。運転時間の全体にわたる各フィード培地の内容物およびバイオリアクターフィードパラメータをそれぞれ表19および表20に記載する。
表19.フィード培地処方
Figure 0005856261
表20.バイオリアクターパラメータ
Figure 0005856261
バイオリアクターを収集し、分級された粒径を持つ珪藻土の層を含有する一連のMilliporeポッドフィルタD0HC(0.5m2)およびA1HCスタックを含むシステムで濾過してから、カプセルフィルタ(Sartorius Sartobran 300)を通して、50L保存バッグ中に最終的な濾過を行った。蠕動ポンプを使って収集を行ったところ、約2時間で完了し、約30Lの収集細胞培養液(HCCF)が得られた。28LのHCCFに、EDTAとTrisを最終濃度がそれぞれ10mM、pH7.5になるように補足した。残り2LのHCCFは、Tris/EDTAの添加が濃縮/バッファー交換ステップに及ぼす効果を評価するために、Tris/EDTAを加えないでおいた。次に、HCCFを2〜8℃で保存してから、濃縮し、バッファー交換に付した。
タンパク質を濃縮するために、30kDaのMWCOを持つ0.1m2 Millipore Pellicon 2バイオマックスAスクリーンカセットを、まず最初に、20mM Na2SO4、10mMトリス、pH7.5中で平衡化した。2LのHCCF(Tris/EDTAを含むものと、Tris/EDTAを含まないもの)を10倍濃縮し、20mM Na2SO4、10mMトリス、pH7.5バッファーで10回バッファー交換した。タンパク質レベルをA260での吸光度によって測定した。次に残りのHCCF(約26.5L)を濃縮し、バッファー交換に付した。30kDaのMWCOを持つ2つの0.1m2 Millipore Pellicon 2バイオマックスAスクリーンカセットをTFFシステムに組み立てて、20mM Na2SO4、10mMトリス、pH7.5中で平衡化した。HCCFを2.5Lまで約10倍に濃縮し、20mM Na2SO4、10mMトリス、pH7.5で10回バッファー交換した。保持液を0.2μm減圧フィルタで1Lおよび500mL保存バッグ中に濾過し、最終体積を2.6Lにした。次に保持液を2〜8℃で保存した。濃縮およびバッファー交換プロセス中に採取した試料をRP-HPLCで分析して、試料に添加したTris/EDTAの効果を決定した。Tris/EDTAの添加は、より効率のよい加工ステップを助長することが認められた。
C.可溶性rHuPH20ロット056-122および056-123(バイオリアクターバッチ2B2-20K.6)の生産および特徴づけ
C項で上述した変更を製造ステップに組み入れて、2つの可溶性rHuPH20ロット、すなわちロット056-122および056-123を、生産し、精製した。下記のプロセスには、研究用細胞バンクHZ24-2B2から得た凍結細胞の融解;連続培養における細胞の拡大培養;36L流加バイオリアクターシステムの30L規模での稼働;バルク生成物の細胞除去、清澄化、およびバッファー交換;4ステップカラムクロマトグラフィー;ならびに製剤化、充填、および仕上げ操作が含まれる。
2B2のバイアル(1×107細胞)を融解し、20μMメトトレキサートおよび40mL/L GlutaMAX(商標)-I(Invitrogen)を補足したCD CHO(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)中、37℃、7%CO2で培養した後、それを、メトトレキサートを含まず40mL/L GlutaMAX(商標)-Iを補足したCD CHO培地中で、400mLに拡大培養し、次いで4.4Lに拡大培養した。800LのGlutaMAX(商標)-I、100mgの組換えヒトインスリンおよび30mLの硫酸ゲンタマイシンを補足した20LのCD CHO培地が入っている36Lバイオリアクター(Bellco 1964シリーズ)に、上記4L培養物を、4.9×105細胞/mLの初期播種密度で接種した。バイオリアクターの撹拌設定値を80RPM;温度:37℃;pH:7.15;溶存酸素:25%に設定した。バイオリアクターには、Applikon ADI 1030コントローラで制御された濾過空気オーバーレイおよび空気/酸素/CO2散布を供給した。
培養物には、13日間のバイオリアクター運転時間の全体を通して4回、接種後127、163、208および 時間の時点で、栄養を供給した。フィード培地は蠕動ポンプを通してバイオリアクター中に濾過した。バイオリアクターの温度設定値は、7日目に37℃から36.5℃に、9日目に36.0℃に、最後に11日目に35.5℃に下げた。運転時間の全体にわたる各フィード培地の内容物およびバイオリアクターフィードパラメータをそれぞれ表21および表22に記載する。
表21.フィード培地処方
Figure 0005856261
表22.バイオリアクターパラメータ
Figure 0005856261
バイオリアクターを収集し、分級された粒径を持つ珪藻土の層を含有する一連のMilliporeポッドフィルタD0HC(0.5m2)およびA1HC(0.1m2)スタックを含むシステムで濾過してから、カプセルフィルタ(Sartorius Sartobran 300)を通して、20L保存バッグ中に最終的な濾過を行った。蠕動ポンプを使って収集を行ったところ、約1時間で完了し、約34Lの収集細胞培養液(HCCF)が得られた。これは29Lのバイオリアクター体積に加えて約5LのPBSチェイスを含む。HCCFに、EDTAとTrisを、最終濃度がそれぞれ10mMになり、最終pHがpH7.5になるように補足した。次に、HCCFを2〜8℃で保存してから、濃縮し、バッファー交換に付した。
タンパク質を濃縮するために、30kDaのMWCOを持つ7.0ft2 Sartorius Sartocon 2クロスフローカセットを、まず最初に、20mM Na2SO4、10mMトリス、pH7.5中で平衡化した。34LのHCCFを3Lに10倍濃縮し、20mM Na2SO4、10mMトリス、pH7.5バッファーで10回バッファー交換した。保持液を0.2μmカプセルフィルタを通して5L保存バッグ中に濾過して、最終体積を3.0Lにした。次に保持液を2〜8℃で保存した。
次に、濃縮しバッファー交換したタンパク質溶液を、Q Sepharoseカラム、Phenyl Sepharoseカラム、アミノフェニルカラムおよびヒドロキシアパタイトカラムによるカラムクロマトグラフィーで精製した。各クロマトグラフィーステップの前後にタンパク質溶液中のヒアルロニダーゼ単位を評価し、それらを使って各ステップの収率を決定した。
簡単に述べると、1.1Lのカラムベッド(直径7cm、高さ28cm)を持つQ Sepharoseカラムを、使用に先だって、2.1Lの1.0N NaOHで衛生化し、0.1N NaOH中に保存した。次に、それを、2.5Lの10mMヘペス、400mM NaCl、pH7.0で浄化し、4.5Lの滅菌注射用水(SWFI)ですすぎ、4.3Lの10mMヘペス、25mM NaCl、pH7.0で平衡化した。バッファー交換したタンパク質(94,960ヒアルロニダーゼ単位/mLで3L)をカラムに負荷した。素通り画分および第1洗浄液は、75ヒアルロニダーゼ単位/mLで5830mLであったことから、生成物のほとんど全て(99.8%)が樹脂に結合することが示された。カラムを4.2Lの10mMヘペス、25mM NaCl、pH7.0および4.6Lの10mMヘペス、50mM NaCl、pH7.0で洗浄した。次に生成物を2.9Lの10mMヘペス、400mM NaCl、pH7.0に溶出させて、96,080単位/mLの2880mLを得て、それを0.2μmフィルタで濾過した。
2.2Lのカラムベッド(高さ28cm、直径10cm)を持つPhenyl Sepharoseカラムを、使用に先だって、5.0Lの1.0N NaOHで衛生化し、0.1N NaOH中に保存した。次に、それを4.5LのSWFIですすぎ、4.6Lの5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムで浄化し、6.8LのSWFIで再びすすいだ。次に、カラムを4.6Lの5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム中で平衡化した。Q Sepharoseカラムからの溶出液に、9.6mLの1Mリン酸二水素カリウム、9.6mLの1Mリン酸水素カリウムおよび0.4mLの1mL CaCl2を加えた。次にこれをカラムに負荷し、素通り画分とチェイス(5mMリン酸カリウム、0.5mM硫酸アンモニウム)とを集めて、36,280単位/mLで6905mLを得た。生成物を0.2μmフィルタで濾過した。
2.2Lのカラムベッド(高さ29cm、直径10cm)を持つアミノフェニルボロネートカラムを、使用に先だって、3.8Lの1.0N NaOHで衛生化し、0.1N NaOH中に保存した。次に、それを5.0LのSWFIですすぎ、5.0Lの5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムで浄化し、5.0LのSWFIで再びすすいだ。次にカラムを5.0Lの5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムで平衡化した。Phenyl Sepharoseカラムから得られた素通り画分の物質を、アミノフェニルボロネートカラムに負荷した。カラムを9.9Lの5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、pH7.0で洗浄し、次に9.7Lの20mMビシン、0.5M硫酸アンモニウム、pH9.0で洗浄し、次に9.9Lの20mMビシン、100mM NaCl、pH9.0で洗浄した。生成物を5.0Lの50mMヘペス、100mM NaCl、pH7.0で溶出させて、48,400単位/mLで4460mLを得て、それを0.2μmフィルタで濾過した。
1.1Lのカラムベッド(直径7cm、高さ28cm)を持つヒドロキシアパタイトカラムを、使用に先だって、2.7Lの1.0N NaOHで衛生化し、0.1N NaOH中で保存した。カラムを2.1Lの200mMリン酸カリウム、pH7.0で中和してから、2.2Lの5mMリン酸カリウム、100mM NaCl中で平衡化した。アミノフェニルボロネートカラムからの溶出液に、11.2mLの1Mリン酸二水素カリウム、11.2mLの1Mリン酸水素カリウムおよび0.45mLの1mL CaCl2を加えた。次に、これをカラムに負荷した後、3.5Lの5mMリン酸カリウム、100mM NaCl、0.5M硫酸アンモニウム、pH7.0で洗浄し、次に3.5Lの10mMリン酸カリウム、100mM NaCl、0.5M硫酸アンモニウム、pH7.0で洗浄した。生成物を1.4Lの70mMリン酸カリウム、pH7.0で溶出させたところ、152,560単位/mLで1260mLが得られ、それを0.2μmフィルタで濾過した。
精製された生成物を、130mM NaCl、10mMヘペス、pH7.0中で平衡化しておいた0.05ft2 Millipore 30kDa MWCOカートリッジを使って濃縮した。生成物を1.04/mg/mLの1250mLから120mLに濃縮し、130mM NaCl、10mMヘペス、pH7.0バッファーで10回バッファー交換した後、0.2μmフィルタで濾過した。A280測定を行ったところ、残った118mlの可溶性rHuPH20濃度は11.45mg/mLであることが示された。17mLの130mM NaCl、10mMヘペス、pH7.0バッファーを追加して、タンパク質濃度を10mg/mLにした(ロット056-122)。この10mg/mLタンパク質溶液の10mLをバッファーで希釈して、1mg/mL溶液を得た(ロット056-123)。どちらの溶液も0.2μmフィルタで濾過した。
製剤化した製品を10mLおよび1mLのガラスバイアルに充填した。その総合計は1308mgの可溶性rHuPH20になった。バイアルを-80℃で凍結してから、-20℃に移して保存した。次にロット056-122および056-123を活性と純度について特徴づけた。ロット056-122および056-123は、1,376,992単位/mLおよび129,412単位/mLの酵素活性と、136,900単位/mgおよび124,400単位/mgの比活性(酵素活性とタンパク質濃度から算出)を示した。可溶性rHuPH20試料の純度をSDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)およびアニオン交換クロマトグラフィーで決定した。RP-HPLCによる決定では、これら2つのロットの純度は約96.2%であると観測された。SECによる決定では、これら2つのロットの純度は約99%であると観測された。エンドトキシンレベルは、ロット056-122および056-123について、それぞれ≦0.8EU/mLおよび0.09EU/mLであることがわかった。オスモル濃度は、ロット056-122および056-123について、それぞれ265mOsm/kgおよび256mOsm/kgであると測定された。各ロットのpHは7.2だった。
D.30Lバイオリアクター細胞培養における第2世代可溶性rHuPH20の生産プロセスの再現性
プロセスの再現性を実証するために、バッチ2B2-20K.6に関して上述したプロセスを後続のバッチに使用した。カラムクロマトグラフィーステップの直前にウイルス不活化ステップを組み入れることにより、プロセスを少しだけ変更した。
2B2細胞のバイアル(1×107細胞)を融解し、20μMメトトレキサートおよび40mL/L GlutaMAX(商標)-I(Invitrogen)を補足したCD CHO(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)中、37℃、7%CO2で、継代7代にわたって培養した後、それを、メトトレキサートを含まず40mL/L GlutaMAX(商標)-Iを補足したCD CHO培地中で、400mLに拡大培養し、次いで4.4Lに拡大培養した。800mLのGlutaMAX(商標)-I、100mgの組換えヒトインスリンおよび300mgの硫酸ゲンタマイシンを補足した20LのCD CHO培地が入っている36Lバイオリアクター(Bellco 1964シリーズ)に、3Lの培養物を、4.7×105細胞/mLの初期播種密度で接種した。バイオリアクターの撹拌設定値を80RPM;温度:37℃;pH:7.15;溶存酸素:25%に設定した。バイオリアクターには、Applikon ADI 1030コントローラで制御された濾過空気オーバーレイおよび空気/酸素/CO2散布を供給した。
培養物には、13日間のバイオリアクター運転時間の全体を通して4回、接種後127、163、208および 時間の時点で、栄養を供給した。フィード培地は蠕動ポンプを通してバイオリアクター中に濾過した。バイオリアクターの温度設定値は、7日目に37℃から36.5℃に、9日目に36.0℃に、最後に11日目に35.5℃に下げた。運転時間の全体にわたる各フィード培地の内容物およびバイオリアクターフィードパラメータをそれぞれ表23および表24に記載する。
表23.フィード培地処方
Figure 0005856261
表24.バイオリアクターパラメータ
Figure 0005856261
バイオリアクターを収集し、分級された粒径を持つ珪藻土の層を含有する一連のMilliporeポッドフィルタD0HC(0.5m2)およびA1HC(0.1m2)スタックを含むシステムで濾過してから、カプセルフィルタ(Sartorius Sartobran 300)を通して、20L保存バッグ中に最終的な濾過を行った。蠕動ポンプを使って収集を行ったところ、約75分で完了し、約30Lの収集細胞培養液(HCCF)が得られた。これは28Lのバイオリアクター体積に加えて約2LのPBSチェイスを含む。HCCFに、EDTAとTrisを、最終濃度がそれぞれ10mMになり、最終pHがpH7.5になるように補足した。次に、HCCFを2〜8℃で保存してから、濃縮し、バッファー交換に付した。
タンパク質を濃縮するために、3×1.0ft2 Sartocon Sliceクロスフローカセット(30kDa MWCO)を含むSartorius Sliceシステムを、まず最初に、20mM Na2SO4、10mMトリス、pH7.5中で平衡化した。30リットルのHCCFを3Lに10倍濃縮し、20mM Na2SO4、10mMトリス、pH7.5バッファーで10回バッファー交換した。濃縮中の平均流量は115mL/分であり、平均膜間圧は16psigだった。ダイアフィルトレーション中の平均流量は150mL/分であり、平均膜間圧は15psigだった。保持液を0.2μm減圧フィルタシステムを通して5L保存バッグ中に濾過して、最終体積を3.0Lにした。次に保持液を2〜8℃で保存した。
SWFI中の10%w/w Triton X-100、35 w/wリン酸トリブチルの濾過溶液を、濃縮しバッファー交換した室温のタンパク質2.15Lと共に、ガラス製スピナーフラスコ中、30〜40rpmで撹拌して混合することにより、ウイルスの不活化を行った。45分後に、そのタンパク質溶液をQ Sepharoseカラムに負荷した(後述のとおり)。負荷には24分を要したので、界面活性剤への曝露時間は合計69分になった。
1.1Lのカラムベッド(直径7cm、高さ28cm)を持つQ Sepharoseカラムを、使用に先だって、2.1Lの1.0N NaOHで衛生化し、0.1N NaOH中に保存した。次に、それを、2.5Lの10mMヘペス、400mM NaCl、pH7.0で浄化し、4.5Lの滅菌注射用水(SWFI)ですすぎ、4.5Lの10mMヘペス、25mM NaCl、pH7.0で平衡化した。バッファー交換したウイルス不活化タンパク質(133,040ヒアルロニダーゼ単位/mLで2385mL)をカラムに負荷した。カラムを4.5Lの10mMヘペス、25mM NaCl、pH7.0および4.5Lの10mMヘペス、50mM NaCl、pH7.0で洗浄した。次に生成物を2.5Lの10mMヘペス、400mM NaCl、pH7.0に溶出させて、133,680単位/mLで2500mLを得て、それを0.2μmフィルタで濾過した。
2.2Lのカラムベッド(高さ28cm、直径10cm)を持つPhenyl Sepharoseカラムを、使用に先だって、5.0Lの1.0N NaOHで衛生化し、0.1N NaOH中に保存した。次に、それを6.0LのSWFIですすぎ、4.6Lの5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム中で平衡化した。カラムを溶出させるために、9.6mLの1Mリン酸二水素カリウム、9.6mLの1Mリン酸水素カリウムおよび0.4mLの1mL CaCl2を加えた。次にこれをカラムに負荷し、素通り画分とチェイス(5mMリン酸カリウム、0.5mM硫酸アンモニウム)とを集めて、43,840単位/mLで6450mLを得た。生成物を0.2μmフィルタで濾過した。
2.2Lのカラムベッド(高さ29cm、直径10cm)を持つアミノフェニルボロネートカラムを、使用に先だって、3.5Lの1.0N NaOHで衛生化し、0.1N NaOH中に保存した。次に、それを5.0LのSWFIですすぎ、9.0Lの5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムで平衡化した。Phenyl Sepharoseカラムから得られた素通り画分の物質を、アミノフェニルボロネートカラムに負荷した。カラムを9.9Lの5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、pH7.0で洗浄し、次に9.9Lの20mMビシン、0.5M硫酸アンモニウム、pH9.0で洗浄した。生成物を4.4Lの50mMヘペス、100mM NaCl、pH7.0で溶出させて、33,840単位/mLの4389mLを得て、それを0.2μmフィルタで濾過した。
1.1Lのカラムベッド(直径7cm、高さ28cm)を持つヒドロキシアパタイトカラムを、使用に先だって、2.1Lの1.0N NaOHで衛生化し、0.1N NaOH中で保存した。カラムを3.6Lの200mMリン酸カリウム、pH7.0で中和してから、3.2Lの5mMリン酸カリウム、100mM NaCl中で平衡化した。アミノフェニルボロネートカラムからの溶出液に、11mLの1Mリン酸二水素カリウム、11mLの1Mリン酸水素カリウムおよび0.44mLの1mL CaCl2を加えた。次に、これをカラムに負荷した後、4.8Lの5mMリン酸カリウム、100mM NaCl、0.5M硫酸アンモニウム、pH7.0で洗浄し、次に3.8Lの10mMリン酸カリウム、100mM NaCl、0.5M硫酸アンモニウム、pH7.0で洗浄した。生成物を1.5Lの70mMリン酸カリウム、pH7.0で溶出させたところ、114,320単位/mLで1500mLが得られ、それを0.2μmフィルタで濾過した。
精製された生成物を、130mM NaCl、10mMヘペス、pH7.0中で平衡化しておいた0.05ft2 Millipore 30kDa MWCOカートリッジを使って濃縮した。生成物を0.961mg/mLの1500mLから125mLに濃縮し、130mM NaCl、10mMヘペス、pH7.0バッファーで10回バッファー交換した後、0.2μmフィルタで濾過した。A280測定を行ったところ、残った122mlのタンパク質濃度は11.431mg/mLであることが示された。17.5mLの130mM NaCl、10mMヘペス、pH7.0バッファーを追加して、タンパク質濃度を10mg/mLにした(ロット056-135)。この10mg/mLタンパク質溶液の10mLをバッファーで希釈して、1mg/mL溶液を得た(ロット056-136)。どちらの溶液も0.2μmフィルタで濾過した。
製剤化した製品を5mLおよび1mLのガラスバイアルに充填した。その総合計は1324mgの可溶性rHuPH20になった。バイアルを-80℃で凍結してから、-20℃に移して保存した。次にロット056-135および056-136を活性と純度について特徴づけた。ロット056-135および056-136は、1,301,010単位/mLおよび127,661単位/mLの酵素活性と、121,600単位/mgおよび127,700単位/mgの比活性(酵素活性とタンパク質濃度から算出)を示した。可溶性rHuPH20試料の純度をSDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)およびアニオン交換クロマトグラフィーで決定した。RP-HPLCによる決定では、これら2つのロットの純度は93.5%〜93.7%であると観測された。SECによる決定では、これら2つのロットの純度は99%より高いと観測された。エンドトキシンレベルは、ロット056-135および056-136について、それぞれ≦0.84EU/mLおよび0.09EU/mLであることがわかった。オスモル濃度は、ロット056-135および056-136について、それぞれ255mOsm/kgおよび260mOsm/kgであると測定された。各ロットのpHは7.2だった。
[実施例8]
A.300Lバイオリアクター細胞培養における第2世代可溶性rHuPH20の生産
上記実施例7に詳述した生産および精製方法を、400Lバイオリアクターを使った生産のためにスケールアップした。2B2細胞のバイアル(1×107細胞)を融解し、20μMメトトレキサートおよび8mM GlutaMAX(商標)-I(Invitrogen)を補足したCD CHO(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)中で、シェーカーフラスコから36Lスピナーフラスコまで拡大培養した。簡単に述べると、細胞のバイアルを37℃の水浴で融解し、培地を加え、細胞を遠心分離した。細胞を、20mLの新鮮培地が入っている125mL浸透フラスコに再懸濁し、37℃、7%CO2のインキュベータに入れた。細胞を125mL振とうフラスコ中で40mLまで拡大培養した。細胞密度が1.5×106細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を125mLスピナーフラスコに100mLの培養体積で拡大した。フラスコを37℃、7%CO2でインキュベートした。細胞密度が1.5×106細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を250mLスピナーフラスコに200mLの培養体積で拡大し、フラスコを37℃、7%CO2でインキュベートした。細胞密度が1.5×106細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を1Lスピナーフラスコに800mLの培養体積で拡大し、37℃、7%CO2でインキュベートした。細胞密度が1.5×106細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を6Lスピナーフラスコに5000mLの培養体積で拡大し、37℃、7%CO2でインキュベートした。細胞密度が1.5×106細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を36Lスピナーフラスコに32Lの培養体積で拡大し、37℃、7%CO2でインキュベートした。
400Lリアクターを121℃の蒸気で30分間滅菌し、8mM GlutaMAX(商標)-Iおよび5mg/L rHuインスリンを補足した230mLのCD CHO培地を加えた。使用前に、リアクターを汚染についてチェックした。約30Lの細胞を36Lスピナーフラスコから400Lバイオリアクター(Braun)に、1mlあたり4.0×105生細胞の接種密度および260Lの総体積で移した。パラメータは温度設定値:37℃;インペラー速度40〜55RPM;容器圧:3psi;空気散布量0.5〜1.5L/分;空気オーバーレイ:3L/分とした。細胞数、pH確認、培地分析、タンパク質の生産および貯留を調べるために、リアクターから毎日試料を採取した。また、運転中に栄養素フィードを加えた。120時間(5日目)の時点で、10.4Lの第1フィード培地(4×CD CHO+33g/Lグルコース+160mL/L GlutaMAX(商標)-I+16.6g/Lイーストレート+33mg/L rHuインスリン)を加えた。168時間(7日目)の時点で、10.8Lの第2フィード(2×CD CHO+33g/Lグルコース+80mL/L GlutaMAX(商標)-I+33.4g/Lイーストレート+0.92g/L酪酸ナトリウム)を加え、培養温度を36.5℃に変えた。216時間(9日目)の時点で、10.8Lの第3フィード(1×CD CHO+50g/Lグルコース+50mL/L GlutaMAX(商標)-I+50g/Lイーストレート+1.80g/L酪酸ナトリウム)を加え、培養温度を36℃に変えた。264時間(11日目)の時点で、10.8Lの第4フィード(1×CD CHO+33g/Lグルコース+33mL/L GlutaMAX(商標)-I+50g/Lイーストレート+0.92g/L酪酸ナトリウム)を加え、培養温度を35.5℃に変えた。フィード培地の添加は生産の最終段階における可溶性rHuPH20の生産を劇的に強化することが観察された。14日の時点で、または細胞の生存度が40%未満に低下した時に、リアクターを収集した。このプロセスにより、1200万細胞/mLの最大細胞密度で17,000単位/mlの最終生産能力が得られた。マイコプラズマ、生物汚染度、エンドトキシンならびにインビトロおよびインビボのウイルス、ウイルス粒子に関するTEM、ならびに酵素活性を調べるために、収集時に、培養物を試料採取した。
それぞれが4〜8μmに分級された珪藻土の層と1.4〜1.1μmに分級された珪藻土の層とを含有し、その後にセルロースメンブレンが設けられている、並列した4つのMillistak濾過システムモジュール(Millipore)に、培養物を蠕動ポンプで通し、次に、0.4〜0.11μmに分級された珪藻土の層と、<0.1μmに分級された珪藻土の層とを含有し、その後にセルロースメンブレンが設けられている、第2の単一のMillistak濾過システム(Millipore)に通し、次に0.22μm最終フィルタを通して、350Lの容量を持つ滅菌使い捨てフレキシブルバッグ中に入れた。その収集細胞培養液に10mM EDTAおよび10mMトリスをpHが7.5になるように補足した。培養物を、4つのSartoslice TFF 30kDa分子量分画(MWCO)ポリエーテルスルホン(PES)フィルタ(Sartorius)を使用するモデル(model)タンジェンシャルフロー濾過(TFF)装置で10倍濃縮した後、10mMトリス、20mM Na2SO4、pH7.5で10回のバッファー交換を行い、0.22μm最終フィルタを通して、50L滅菌保存バッグに濾過した。
濃縮しダイアフィルトレーションに付した収集物を、ウイルスに関して不活化した。ウイルス不活化に先だって、10%Triton X-100、3%リン酸トリ(n-ブチル)(TNBP)の溶液を調製した。濃縮しダイアフィルトレーションに付した収集物を、Qカラムで精製する直前に、36Lガラス反応容器中で、1%Triton X-100、0.3%TNBPに1時間曝露した。
B.第2世代sHuPH20の精製
Q Sepharose(Pharmacia)イオン交換カラム(樹脂9L、H=29cm、D=20cm)を調製した。pHおよび伝導度の決定ならびにエンドトキシン(LAL)アッセイのために洗浄液試料を集めた。カラムを5カラム体積の10mMトリス、20mM Na2SO4、pH7.5で平衡化した。濃縮しダイアフィルトレーションに付した収集物を、ウイルス不活化後に、100cm/時間の流速でQカラムに負荷した。カラムを、5カラム体積の10mMトリス、20mM Na2SO4、pH7.5および10mMヘペス、50mM NaCl、pH7.0で洗浄した。タンパク質を10mMヘペス、400mM NaCl、pH7.0で溶出させ、0.22μm最終フィルタを通して滅菌バッグに濾過した。溶出液試料を生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。この交換の最初と最後にA280吸光度を読み取った。
次にPhenyl-Sepharose(Pharmacia)疎水性相互作用クロマトグラフィーを行った。Phenyl-Sepharose(PS)カラム(樹脂19〜21L、H=29cm、D=30cm)を調製した。洗浄液を集め、pH、伝導度およびエンドトキシン(LALアッセイ)を調べるために試料を採取した。カラムを5カラム体積の5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、0.1mM CaCl2、pH7.0で平衡化した。上で得たタンパク質溶出液に2M硫酸アンモニウム、1Mリン酸カリウムおよび1M CaCl2保存液を補足して、最終濃度をそれぞれ5mM、0.5Mおよび0.1mMにした。タンパク質を100cm/時間の流速でPSカラムに負荷した。5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムおよび0.1mM CaCl2 pH7.0を100cm/時間の速度で加えた。素通り画分を0.22μm最終フィルタを通して滅菌バッグに入れた。生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性を調べるために素通り画分の試料を採取した。
アミノフェニルボロネートカラム(ProMedics;樹脂21L、H=29cm、D=30cm)を調製した。洗浄液を集め、pH、伝導度およびエンドトキシン(LALアッセイ)を調べるために試料を採取した。カラムを5カラム体積の5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムで平衡化した。PSで精製したタンパク質を100cm/時間の流速でアミノフェニルボロネートカラムに負荷した。カラムを5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、pH7.0で洗浄した。カラムを20mMビシン、0.5M硫酸アンモニウム、pH9.0で洗浄した。カラムを20mMビシン、100mM塩化ナトリウム、pH9.0で洗浄した。タンパク質を50mMヘペス、100mM NaCl、pH6.9で溶出させ、滅菌フィルタを通して滅菌バッグに入れた。溶出した試料を生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。
ヒドロキシアパタイト(HAP)カラム(BioRad;樹脂13L、H=20cm、D=30cm)を調製した。洗浄液を集めて、pH、伝導度およびエンドトキシン(LALアッセイ)を調べた。カラムを5mMリン酸カリウム、100mM NaCl、0.1mM CaCl2、pH7.0で平衡化した。アミノフェニルボロネートで精製したタンパク質を、最終濃度が5mMリン酸カリウムおよび0.1mM CaCl2になるように補足し、100cm/時間の流速でHAPカラムに負荷した。カラムを5mMリン酸カリウム、pH7、100mM NaCl、0.1mM CaCl2で洗浄した。次にカラムを10mMリン酸カリウム、pH7、100mM NaCl、0.1mM CaCl2で洗浄した。タンパク質を70mMリン酸カリウム、pH7.0で溶出させ、0.22μm滅菌フィルタを通して滅菌バッグに入れた。溶出した試料を生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。
次に、HAPで精製したタンパク質をウイルス除去フィルタに通した。滅菌したVirosartフィルタ(Sartorius)を、まず、2Lの70mMリン酸カリウム、pH7.0で洗浄することによって調製した。使用前に、pHおよび伝導度を調べるために、濾過バッファーを試料採取した。HAPで精製したタンパク質を蠕動ポンプで20nMウイルス除去フィルタに通した。70mMリン酸カリウム、pH7.0中の濾過されたタンパク質を0.22μm最終フィルタを通して滅菌バッグに入れた。ウイルス濾過された試料をタンパク質濃度、酵素活性、オリゴ糖、単糖およびシアル酸プロファイリングについて調べた(下記実施例9〜10に記載のとおり)。
次に、10kD分子量分画(MWCO)Sartocon Sliceタンジェンシャルフロー濾過(TFF)システム(Sartorius)を使って、濾液中のタンパク質を10mg/mLに濃縮した。フィルタを、まず、10mMヒスチジン、130mM NaCl、pH6.0で洗浄することによって調製し、pHおよび伝導度を調べるために透過液を試料採取した。濃縮後に、濃縮タンパク質を試料採取して、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。濃縮タンパク質に、最終バッファー:10mMヒスチジン、130mM NaCl、pH6.0への6回のバッファー交換を行った。バッファー交換後に、0.22μmフィルタを通して濃縮タンパク質を20L滅菌保存バッグに入れた。タンパク質を試料採取し、タンパク質濃度、酵素活性、遊離スルフヒドリル基、オリゴ糖プロファイリングおよびオスモル濃度について調べた(下記実施例9〜10に記載のとおり)。
次に、滅菌濾過したバルクタンパク質を、30mL滅菌テフロンバイアル(Nalgene)中に、20mLずつ、無菌的に分注した。次にバイアルを急速冷凍し、-20±5℃で保存した。この方法を使った可溶性rHuPH20の生産および精製により、約11グラムおよび15グラムが、95,000単位/mg〜120,000単位/mgの比活性で得られた。
C.第1世代および第2世代sHuPH20の生産および精製の比較
300Lバイオリアクター細胞培養における第2世代可溶性rHuPH20の生産および精製には、100Lバイオリアクター細胞培養における第1世代可溶性rHuPH2の生産および精製(実施例4に記載)と比較して、プロトコールにいくつかの変更が含まれていた。表25に、これらの方法における、単純なスケールアップ変更以外の典型的な相違点を説明する。
表25.100Lと300Lのバイオリアクター細胞培養法を使って行われた第1世代および第2世代の可溶性rHuPH20の生産および精製における典型的相違点
Figure 0005856261
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[実施例9]
可溶性rHuPH20の酵素活性の決定
細胞培養、精製画分および精製溶液などの試料中の可溶性rHuPH20の酵素活性は、ヒアルロン酸が血清アルブミンと結合した時に起こる不溶性沈殿物の形成に基づく比濁法アッセイを使って決定した。活性は、可溶性rHuPH20を、ヒアルロン酸ナトリウム(ヒアルロン酸)と共に、設定された時間(10分)インキュベートした後、未消化のヒアルロン酸ナトリウムを酸性化血清アルブミンの添加で沈殿させることによって測定される。得られた試料の濁度を30分間の発現期間後に640nmで測定する。ヒアルロン酸ナトリウム基質に対する酵素活性に起因する濁度の低下が、可溶性rHuPH20酵素活性の尺度になる。この方法は、可溶性rHuPH20アッセイ作業用標準品の希釈液で作成される検量性を使って行われ、試料活性測定はこの検量線との比較でなされる。
酵素希釈溶液中に試料の希釈液を調製した。酵素希釈溶液は、33.0±0.05mgの加水分解ゼラチンを25.0mLの50mMピペス(PIPES)反応バッファー(140mM NaCl、50mMピペス、pH5.5)と25.0mLのSWFIとに溶解し、0.2mLの25%ブミネート(Buminate)溶液をその混合物に希釈し、30秒間ボルテックスすることによって調製した。これは使用前2時間以内に行い、必要になるまで氷上に保存しておいた。試料を推定1〜2U/mLに希釈した。一般に、1ステップあたりの最大希釈度が1:100を超えることはなく、1回目の希釈のための初期試料サイズが20μL未満になることはなかった。アッセイを行うために必要な最小試料体積は以下のとおりだった:工程内試料、FPLC画分:80μL;組織培養上清:1mL;濃縮物質80μL;精製または最終ステップ物質:80μL。希釈液は低タンパク質結合性96穴プレートで3つ一組にして作成し、30μLの各希釈液をOptiluxブラック/クリアーボトムプレート(BD Biosciences)に移した。
標準曲線を作成するために、2.5U/mLの濃度を持つ既知可溶性rHuPH20の希釈液を酵素希釈溶液中に調製し、Optiluxプレートに3つ一組にして加えた。これらの希釈液には、0U/mL、0.25U/mL、0.5U/mL、1.0U/mL、1.5U/mL、2.0U/mL、および2.5U/mLを含めた。60μLの酵素希釈溶液が入っている「試薬ブランク」ウェルを陰性対照としてプレートに含めた。次にプレートにカバーをして、ヒートブロック上、37℃で5分間温めた。カバーを取り除き、プレートを10秒間振とうした。振とう後に、プレートをヒートブロックに戻し、MULTIDROP 384液体ハンドリング装置に温かい0.25mg/mLヒアルロン酸ナトリウム溶液(100mgのヒアルロン酸ナトリウム(LifeCore Biomedical)を20.0mLのSWFIに溶解することによって調製したもの。これを、2〜8℃で2〜4時間、または完全に溶解するまで、穏やかに回転および/または揺動することによって混合した)を装填した。反応プレートをMULTIDROP 384に移し、スタートキーを押して30μLのヒアルロン酸ナトリウムを各ウェルに分注することによって、反応を開始させた。次にプレートをMULTIDROP 384から取り出し、10秒間振とうしてから、プレートカバーを取り替えて、ヒートブロックに移した。そのプレートを37℃で10分間インキュベートした。
反応を停止させるために、血清作業溶液を機械に装填し、体積設定を240μLに変えることによって、MULTIDROP 384を準備した。(500mM酢酸バッファー溶液75mL中の血清保存液[1体積のウマ血清(Sigma)を9体積の500mM酢酸バッファー溶液で希釈し、pHを塩酸で3.1に調節したもの]25mL)。プレートをヒートブロックから取り出してMULTIDROP 384にのせ、240μLの血清作業溶液をウェルに分注した。プレートを取り出し、プレートリーダー上で10秒間、振とうした。さらに15分経過してから、試料の濁度を640nmで測定し、標準曲線へのあてはめによって各試料の酵素活性(単位はU/mL)を決定した。
酵素活性(U/ml)をタンパク質濃度(mg/mL)で割ることによって比活性(単位/mg)を算出した。
[実施例10]
シアル酸および単糖類含有量の決定
可溶性rHuPH20のシアル酸および単糖類含有量は、トリフルオロ酢酸による加水分解後の逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)で評価することができる。一例として、精製ヒアルロニダーゼロット番号HUB0701E(1.2mg/mL;基本的に実施例8に記載したように生産および精製したもの)のシアル酸および単糖類含有量を決定した。簡単に述べると、100μg試料を2つ一組にして40%(v/v)トリフルオロ酢酸により100℃で4時間加水分解した。加水分解後に試料を乾固し、300μLの水に再懸濁した。各再懸濁試料から45μLずつを新しいチューブに移し、乾固し、10μLの10mg/mL酢酸ナトリウム溶液をそれぞれに加えた。放出された単糖類を、30mg/mL 2-アミノ安息香酸、20mg/mLシアノ水素化ホウ素ナトリウム、約40mg/mL酢酸ナトリウムおよび20mg/mLホウ酸を含有するメタノール溶液50μLの添加により、蛍光標識した。その混合物を、暗所、80℃で30分間インキュベートした。440μLの移動相A(0.2%(v/v)n-ブチルアミン、0.5%(v/v)リン酸、1%(v/v)テトラヒドロフラン)を加えることによって、この誘導体化反応をクエンチした。水のマトリックスブランクも、陰性対照として、ヒアルロニダーゼ試料について述べたとおりに、加水分解処理および誘導体化処理に付した。放出された単糖類を、オクタデシル(C18)逆相カラム(4.6×250mm、粒径5μm;J.T.Baker)を用いるRPLCで分離し、、蛍光検出(励起波長360nm、蛍光波長425nm)でモニタリングした。単糖類含有量の定量は、ヒアルロニダーゼ試料から得られたクロマトグラムを、N-D-グルコサミン(GlcN)、N-D-ガラクトサミン(GalN)、ガラクトース、フコースおよびマンノースを含む単糖類標準のクロマトグラムと比較することによって行った。ヒアルロニダーゼ1分子あたりの各単糖類のモル比を表26に示す。
表26.可溶性rHuPH20の単糖類含有量
Figure 0005856261
* GalNの結果は検出限界未満だった。
[実施例11]
3D35M細胞および2B2細胞から得られる可溶性rHuPH20のC末端の不均一性
3D35M細胞から100Lバイオリアクター体積で(ロットHUA0505MA)、および2B2細胞から300Lバイオリアクター体積で(ロットHUB0701EB)、それぞれ生産され精製されたsHuPH20の2つのロットで、C末端配列決定を行った。これらのロットを、アスパラギン酸およびシステイン酸におけるペプチド結合をN末端側で特異的に切断するエンドプロテイナーゼAsp-Nにより、別々に消化した。これにより、可溶性rHuPH20のC末端部分が、配列番号4の位置431のアスパラギン酸で放出される。C末端フラグメントを分離し、特徴づけることにより、ロットHUA0505MAおよびロットHUB0701EB中の各集団の配列および存在量を決定した。
3D35M細胞および2B2細胞から得られる可溶性rHuPH20調製物は不均一性を示し、そのC末端配列が互いに異なるポリペプチドを含有することが観察された(表27および28)。この不均一性はおそらく、発現された447アミノ酸ポリペプチド(配列番号4)が、本生産および精製プロセスにおいて、細胞培養培地中または他の溶液中に存在するペプチダーゼによってC末端切断された結果だろう。可溶性rHuPH20調製物中のポリペプチドは、配列番号4に記載の可溶性rHuPH20配列のアミノ酸1〜447、1〜446、1〜445、1〜444および1〜443に対応するアミノ酸配列を持つ。これらの各ポリペプチドの全アミノ酸配列を配列番号4〜8に記載する。表27および28に示すように、3D35M細胞および2B2細胞から得られる可溶性rHuPH20調製物中の各ポリペプチドの存在量は相違する。
表27.ロットHUA0505MAから得られるC末端フラグメントの分析
Figure 0005856261
表28.ロットHUB0701EBから得られるC末端フラグメントの分析
Figure 0005856261
[実施例12]
2500Lバイオリアクター細胞培養における可溶性rHuPH20の生産および精製
可溶性rHuPH20の生産および精製は、300L流加(batch-fed)バイオリアクタープロセス(実施例8に記載)から2500L流加バイオリアクタープロセスまでスケールアップすることができる。300Lバイオリアクター細胞培養におけるrHuPH20の生産と同様に、2500Lバイオリアクター細胞培養におけるrHuPH20の生産は、まず最初に2B2細胞のバイアルを融解して拡大培養し、バイオリアクター中で培養し、培養物を収集し清澄化し、収集物を濃縮しバッファー交換した後、ウイルス不活化を行うことによって行われる。次に、Q Sepharose、Phenyl Sepharose、アミノフェニルボロネートおよびヒドロキシアパタイトボロネートを利用する一連の精製ステップを使って、rHuPH20を濃縮物から精製した後、ウイルス濾過を行う。
1.細胞培養の拡大
300L培養物と比較して2500Lバイオリアクター細胞培養物への播種に必要になる、より多数の細胞を生成させるために、細胞培養を、125mLシェーカーフラスコ、250mLシェーカー、1Lシェーカーフラスコ、2本の2Lシェーカーフラスコ、6本の2Lシェーカーフラスコ、25L WAVE Bioreactor(商標)(GE Healthcare Life Sciences)、100L WAVE Bioreactor(商標)、および600L撹拌タンクシードバイオリアクター(ABEC,Inc.、ペンシルベニア州ベスレヘム;Stainless Technology部門)まで逐次、拡大する。各拡大培養では、標的播種密度を4×105細胞/mLにする。拡大培養時の温度は、常に、7%CO2(または6〜8%CO2)で37℃(または36℃〜38℃)とする。フラスコ類は約110RPM(または90〜130RPM)で撹拌し、25Lおよび100L WAVE Bioreactor(商標)は20RPM(またはそれぞれ15〜25もしくは18〜22RPM)で揺動し、600Lシードバイオリアクターは90RPM(または85〜95RPM)で撹拌する。
まず最初に、作業細胞バンクから得た2B2細胞のバイアル(1×107細胞)を37℃の水浴で約2分間(好ましくは5分を超えない時間)融解してから培地を加え、細胞を遠心分離する。細胞を、125mLシェーカーフラスコ中、新鮮培地(40mL/L(8mM)GlutaMAX(商標)-Iおよび20μMメトトレキサートを含むCD CHO AGT(商標))で、約25mL(または20〜30mL)になるように再懸濁し、37℃、7%CO2のインキュベータに入れる。細胞密度が約8×105細胞/mLに到達したら、培養物を、250mL振とうフラスコに、50mLの培養体積(または45〜55mL)で移す。インキュベーション後、細胞密度が約1.6×106細胞/mLに到達したら、培養物を1Lフラスコに200mLの培養体積(または190〜210mL)で拡大し、インキュベートする。1Lフラスコ中の細胞密度が約1.6×106細胞/mLに到達したら、培養を、それぞれが約400mL(またはフラスコ1本あたり350〜450mL)の総培養体積を持つ2×2Lフラスコに拡大し、インキュベートする。2Lフラスコ中の細胞密度が約1.2×106細胞/mLに到達したら、培養を、それぞれが約400mL(またはフラスコ1本あたり350〜450mL)の総培養体積を持つ6×2Lフラスコに拡大し、インキュベートする。2Lフラスコ中の細胞密度が約2.5×106細胞/mLに到達したら、培養を25L WAVE Bioreactor(商標)に拡大して、総培養体積を約15L(または14〜16L)とし、1.5L/分の気流と共にインキュベートする。
25L WAVE Bioreactor(商標)中の細胞密度が約2.2×106細胞/mLに達したら、培養を100L WAVE Bioreactor(商標)に拡大して、3.6g/Lメトトレキサート、40mL/L GlutaMAX(商標)-Iおよび1mL/L 1N NaOHを補足したCD-CHO AGT(商標)培地を使って総培養体積を約80L(または75〜85L)にし、1.5L/分の気流と共にインキュベートする。100L WAVE Bioreactor(商標)中の細胞密度が約2.6×106細胞/mLに到達したら、培養を600Lシードバイオリアクター(ABEC,Inc.、ペンシルベニア州ベスレヘム;Stainless Technology部門)に拡大して、40mL/L GlutaMAX(商標)-Iを補足したCD-CHO AGT(商標)培地を使って総培養体積を約480L(または440〜520L)にし、600Lバイオリアクター中の細胞密度が約1.6×106細胞/mLに達するまでインキュベートする。
2.rHuPH20生産
3523Lの総体積と500〜2500Lの作業体積を持つ3500Lバイオリアクター(ABEC,Inc、ペンシルベニア州ベスレヘム)をrHuPH20の高収量生産に使用する。滅菌後に、40mL/L GlutaMAX(商標)-Iおよび5mg/L rHuインスリンを補足した24.3g/L粉末CD-CHO AGT(商標)を含有する約1800〜2000LのCD-CHO AGT(商標)培地を、バイオリアクターに投入する。パラメータは次のように設定する:温度設定値、37℃;インペラー速度75RPM;容器圧:5psi;空気散布量18L/分;溶存酸素:25%;pH≦7.2。使用前にリアクターを汚染についてチェックする。600Lシードバイオリアクター培養から得られる約300〜500Lの細胞(細胞数に依存)を、3500Lバイオリアクター中の細胞培養培地に、1mlあたり4.0×105生細胞の接種密度で接種し、総体積を2100Lにする。14日間の細胞インキュベーション中は、細胞生存度、細胞密度、pH確認、および酵素活性を調べるために、バイオリアクターから毎日試料を採取する。温度および溶存酸素も細かくモニタリングする。
14日間のバイオリアクター運転時間中は、それぞれ約4%v/vの体積で、栄養素フィードを加える。5日目に、約84L(または4%v/v)の第1フィード培地(81g/L粉末CD-CHO AGT(商標)+33g/Lグルコース+13.3mL/L GlutaMAX(商標)-I+83.3g/Lイーストレート+33mg/L rHuインスリン)を加える。7日目に、約87L(または4%v/v)の第2フィード(40.5g/L粉末CD-CHO AGT(商標)+33g/Lグルコース+66.7mL/L GlutaMAX(商標)-I+166.7g/Lイーストレート+0.92g/L酪酸ナトリウム)を加え、培養温度を36.5℃に変える。9日目に、約91L(または4%v/v)の第3フィード(20.3g/L粉末CD-CHO AGT(商標)+50g/Lグルコース+50mL/L GlutaMAX(商標)-I+250g/Lイーストレート+1.8g/L酪酸ナトリウム)を加え、培養温度を36℃に変える。11日目に約94L(または4%v/v)の第4フィード(20.3g/L粉末CD-CHO AGT(商標)+33.3g/Lグルコース+33.3mL/L GlutaMAX(商標)-I+250g/Lイーストレート+0.92g/L酪酸ナトリウム)を加え、培養温度を35.5℃に変える。14日の時点でリアクターを収集して、2400〜2600Lの収集物(典型的には約2500L)を得る。
培養物を、それぞれが4〜8μmに分級された珪藻土の層と1.4〜1.1μmに分級された珪藻土の層を含み、その後ろにセルロースメンブレンが設けられている、20個の並列Millistak濾過システムモジュール(Millipore)を通して加圧輸送し、次に、それぞれが0.4〜0.11μmに分級された珪藻土の層と<0.1μmに分級された珪藻土の層とを持ち、その後ろにセルロースメンブレンが設けられている、10個のモジュールを含む第2のMillistak濾過システム(Millipore)を通して加圧輸送した後、0.22μm最終フィルタを通して、350Lの容量を持つ滅菌使い捨てフレキシブルバッグに入れる。収集された細胞培養液に、10mM EDTAおよび10mMトリス、pH8.4を補足して、7.5の標的pHにする。18〜21m2のSartoslice TFF 30kDa分子量分画(MWCO)ポリエーテルスルホン(PES)フィルタ(Sartorius)を使ったタンジェンシャルフロー濾過(TFF)装置(Pall)で、培養物を10倍濃縮した後、10mMトリス、20mM Na2SO4、pH7.5で10回バッファー交換し、0.22μm最終フィルタを通して350L滅菌保存バッグ中に濾過した。
濃縮しダイアフィルトレーションに付した収集物を、ウイルスに関して不活化する。ウイルス不活化に先だって、10%Triton X-100、3%リン酸トリ(n-ブチル)(TNBP)の溶液を調製した。濃縮しダイアフィルトレーションに付した収集物を、Qカラムで精製する直前に、500Lステンレス鋼反応容器中で、1%Triton X-100、0.3%TNBPに2時間まで曝露した。
B.第2世代rHuPH20の精製
Q Sepharose(Pharmacia)イオン交換カラム(樹脂81L、H=26cm、D=63cm)を調製する。カラムを5カラム体積の10mMトリス、20mM Na2SO4、pH7.5で平衡化する。濃縮しダイアフィルトレーションに付しウイルス不活化した約250Lの収集物を、ウイルス不活化後に、150cm/時間の流速でQカラムに負荷する。カラムを、5カラム体積の10mMトリス、20mM Na2SO4、pH7.5および10mMヘペス、50mM NaCl、pH7.0で洗浄する。タンパク質を10mMヘペス、400mM NaCl、pH7.0で溶出させ、0.22μm最終フィルタを通して滅菌バッグに濾過する。溶出液試料を生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性について調べる。この交換の最初と最後にA280吸光度を読み取った。
次にPhenyl-Sepharose(Pharmacia)疎水性相互作用クロマトグラフィーを行う。Phenyl-Sepharose(PS)カラム(樹脂176L、H=35cm、D=80cm)を調製する。カラムを5カラム体積の5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、0.1mM CaCl2、pH7.0で平衡化する。上で得たタンパク質溶出液に2M硫酸アンモニウム、1Mリン酸カリウムおよび1M CaCl2保存液を補足して、最終濃度をそれぞれ5mM、0.5Mおよび0.1mMにする。タンパク質を100cm/時間の流速でPSカラムに負荷する。5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムおよび0.1mM CaCl2 pH7.0を100cm/時間の速度で加える。素通り画分を0.22μm最終フィルタを通して滅菌バッグに入れる。生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性を調べるために素通り画分の試料を採取する。
次に、アミノフェニルボロネートカラム(ProMedics;樹脂176L、H=35cm、D=80cm)を調製する。カラムを5カラム体積の5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムで平衡化する。PSで精製したタンパク質を50cm/時間の流速でアミノフェニルボロネートカラムに負荷する。このプロセスの残りの部分では流速を100cm/時間に増加させた。カラムをまず最初に、5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、pH7.0で洗浄し、次に、20mMビシン、0.5M硫酸アンモニウム、pH9.0で洗浄し、次に20mMビシン、100mM塩化ナトリウム、pH9.0で洗浄した。タンパク質を50mMヘペス、100mM NaCl、pH6.9で溶出させ、滅菌フィルタを通して滅菌バッグに入れる。溶出した試料を生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性について調べる。
ヒドロキシアパタイト(HAP)カラム(BioRad;樹脂116L、H=23cm、D=80cm)を調製する。カラムを5mMリン酸カリウム、100mM NaCl、0.1mM CaCl2、pH7.0で平衡化する。アミノフェニルボロネートで精製したタンパク質を、最終濃度が5mMリン酸カリウムおよび0.1mM CaCl2になるように補足し、100cm/時間の流速でHAPカラムに負荷する。カラムをまず最初に5mMリン酸カリウム、pH7、100mM NaCl、0.1mM CaCl2で洗浄し、次に10mMリン酸カリウム、pH7、100mM NaCl、0.1mM CaCl2で洗浄する。タンパク質を70mMリン酸カリウム、pH7.0で溶出させ、0.22μm滅菌フィルタを通して滅菌バッグに入れる。溶出した試料を生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性について調べる。
次に、HAPで精製したタンパク質をウイルス除去フィルタに通す。滅菌したVirosartフィルタ(Sartorius)を、まず、2Lの70mMリン酸カリウム、pH7.0で洗浄することによって調製する。HAPで精製したタンパク質を蠕動ポンプで20nMウイルス除去フィルタに通す。次に、70mMリン酸カリウム、pH7.0中の濾過されたタンパク質を0.22μm最終フィルタを通して滅菌バッグに入れた。ウイルス濾過された試料をタンパク質濃度、酵素活性、オリゴ糖、単糖およびシアル酸プロファイリングについて調べる(下記実施例9〜10に記載のとおり)。
次に、それぞれが0.7m2のフィルタ表面積を持ち、総表面積が2.1m2である、3つの10kD分子量分画(MWCO)Sartocon PESカセットを使って、濾液中のタンパク質を8〜12倍濃縮した。濃縮後に、濃縮タンパク質を試料採取して、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。次に、濃縮タンパク質に対して、10回のダイアフィルトレーションを行う。これは、次に挙げる2つの方法のうち、どちらか一方で行うことができる:1)20mMヒスチジン、130mM NaCl、pH6.5バッファーおよび1%ポリソルベート80を使用する方法;または2)10mMヒスチジン、130mM NaCl、pH6.5バッファーを使用する方法。濃縮しダイアフィルトレーションに付したバルクタンパク質は約10mg/mLの濃度である。バッファー交換後に、0.22μmフィルタを通して濃縮タンパク質を20L滅菌保存バッグに入れる。
次に、滅菌濾過したバルクタンパク質を、1L滅菌PFA Nalgeneボトルに、400mLずつ、無菌的に分注する。次にボトルを液体窒素浴で急速冷凍し、ポリソルベート80を含有しないバルクタンパク質については-20℃未満の温度で、また、ポリソルベート80を含有するバルクタンパク質については、-70℃未満の温度で保存する。
表29に、300Lと2500Lのバイオリアクター培養でのrHuPH20の生産における典型的相違点を示す。
表29.300Lと2500Lのバイオリアクター培養でのrHuPH20の生産における典型的相違点
Figure 0005856261
Figure 0005856261
Figure 0005856261
Figure 0005856261
変更態様は当業者には明白であるだろうから、本発明は本願請求項の範囲によってのみ限定されるものとする。

Claims (2)

  1. 収集時に5000単位/mLより高い酵素活性を持つ可溶性組み換えヒトPH20(rHuPH20)を含む収集細胞培養液であって、ここに、
    該収集細胞培養液は、さらに精製または濃縮することなく細胞、細胞片および凝集塊から分離された液であり、
    該細胞が可溶性rHuPH20をコードする核酸分子を含み、
    該細胞によってコードされる該rHuPH20のアミノ酸配列が、配列番号4〜9のいずれかに示される配列のポリペプチドあるいは配列番号4〜9のいずれかと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するその変異型を含む、
    収集細胞培養液。
  2. 酵素活性が10,000、12,000、14,000、16,000、18,000、20,000、22,000もしくは24,000単位/mLまでである、請求項1に記載の収集細胞培養液。
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