JP5851336B2 - 複合ゴム材料、成形体、複合ゴム材料の製造方法 - Google Patents

複合ゴム材料、成形体、複合ゴム材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、シリコーンゴムとセルロースファイバーとを複合化した複合ゴム材料、該複合ゴム材料を用いた成形体、及び前記複合ゴム材料の製造方法に関する。
従来、ゴムの強度や剛性を高めるために、カーボン、シリカなどの充填剤を配合することが行われている。近年、補強効果の高い充填剤としてセルロースファイバーを用いることが提案されている。しかしセルロースファイバーは、ゴムへの分散性が悪く、補強効果が充分に発揮されない問題があった。
このような問題に対し、例えば、特許文献1には、ゴム成分中にセルロースナノファイバー及びシランカップリング剤を含むゴム組成物が開示されている。また、特許文献2には、ゴム成分中にセルロースナノファイバーを含むゴム組成物において、該セルロースナノファイバーとして、モノマー若しくはポリマーをグラフト重合させた複合化セルロースナノファイバーを用いたゴム組成物が開示されている。これらの方法においては、補強効果が高いセルロースナノファイバーを用いるとともに、セルロースナノファイバーのゴム成分への分散性等を向上させることで、優れた耐久性及び剛性を発揮するゴム組成物が得られるとされている。
特開2009−191198号公報 特開2009−263417号公報
しかし、特許文献1記載のゴム組成物は、ゴム成分が、硫黄加硫可能なジエン系ゴム、シランカップリング剤がポリスルフィド構造を持ったスルフィド系シランカップリング剤ではない場合は、ゴム成分との界面での接着性及び粘着性効果が小さく、引張破断強度等の機械的強度に改良の余地を残している。例えばスルフィド系以外のシランカップリング剤を用いた場合、機械的強度は不充分となる。さらに、セルロースファイバーの耐熱性も充分とはいえず、高温環境下に置かれる部材や高融点をもつ樹脂への補強といった適用は難しい。例えば内視鏡用鉗子栓や、内視鏡のうち体腔内に挿入する挿入部を外装するチューブ、各種処置具用のチューブ等の医療用チューブといった医療用部材の場合、殺菌のために、140℃程度の高温に曝されることもあるため、このような高温環境下においても変形が生じない耐熱性が要求される。
特許文献2記載のゴム組成物は、耐熱性が低く、上記と同様、高温環境下に置かれる部材への適用は難しい。
なお、前述した特許文献1、2はいずれも、タイヤ製品用途における耐久性及び剛性の向上を目的としている。ゴム成分として具体的に開示されているのはジエン系ゴムのみであり、他のゴム、例えばシリコーンゴムは記載されていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、耐熱性及び機械的強度に優れた複合ゴム材料、該複合ゴム材料を用いた成形体、及び前記複合ゴム材料の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は、以下の態様を有する。
[1]シリコーンゴム中にセルロースファイバーを含有し、
前記セルロースファイバーの少なくとも一部が、オルガノシラン化合物により前記シリコーンゴムに連結され複合物を形成している複合ゴム材料。
[2]前記複合物が、セルロースファイバーの水酸基をオルガノシラン化合物で修飾した修飾セルロースファイバーと、シリコーンゴムとの反応生成物である[1]記載の複合ゴム材料。
[3]前記オルガノシラン化合物が、下記一般式(I):
(RO)−Si−Y …(I)
[式中、Rはアルキル基であり、Yは、ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、エポキシ基、アミノ基、スチリル基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基及びメルカプト基からなる群から選ばれる反応性官能基を有する基である。]
で表される化合物である[1]又は[2]記載の複合ゴム材料。
[4]前記セルロースファイバーがセルロースナノファイバーである[1]〜[3]のいずれか一項に記載の複合ゴム材料。
[5]前記セルロースファイバーの平均重合度が600以上30000以下であり、アスペクト比が20〜10000であり、平均直径が1〜800nmである[1]〜[4]のいずれか一項に記載の複合ゴム材料。
[6]前記セルロースファイバーが、θの範囲を0〜30とするX線回折パターンにおいて、14≦θ≦18に1つ又は2つのピークを有し、20≦θ≦24に1つ又は2つのピークを有し、他にはピークを有さないセルロースファイバーである[1]〜[5]のいずれか一項に記載の複合ゴム材料。
[7]前記セルロースファイバー及び前記オルガノシラン化合物の合計量が、1〜50質量%である[1]〜[6]のいずれか一項に記載の複合ゴム材料。
[8][1]〜[6]のいずれか一項に記載の複合ゴム材料で構成される成形体。
[9]医療用部材である[8]記載の成形体。
[10][1]〜[7]のいずれか一項に記載の複合ゴム材料を製造する方法であって、
セルロースファイバーの水酸基の少なくとも一部を、オルガノシラン化合物によりシリコーンゴムに連結する複合化工程を含む複合ゴム材料の製造方法。
[11]前記複合化工程が、セルロースファイバーの水酸基をオルガノシラン化合物で修飾し、得られた修飾セルロースファイバーと、シリコーンゴムとを反応させることにより行われる[10]記載の複合ゴム材料の製造方法。
本発明によれば、耐熱性及び機械的強度に優れた複合ゴム材料、該複合ゴム材料を用いた成形体、及び前記複合ゴム材料の製造方法を提供できる。
X線回折パターンにおいてIβ型の結晶ピークのみを有するセルロースファイバーの粉末X線回折装置による分析結果である。
<複合ゴム材料>
本発明の複合ゴム材料は、シリコーンゴム中にセルロースファイバーを含有し、
前記セルロースファイバーの少なくとも一部が、オルガノシラン化合物により前記シリコーンゴムに連結され複合物を形成しているものである。
複合ゴム材料のマトリックスを構成するシリコーンゴム中にセルロースファイバーを分散させるとともに、分散させたセルロースファイバーの少なくとも一部をシリコーンゴムに連結することで、界面結合が強化され、セルロースファイバーによる補強効果が充分に発揮され、シリコーンゴムの機械的強度が向上する。また、セルロースファイバー表面の水酸基の少なくとも一部がオルガノシラン化合物により修飾されることで、複合ゴム材料中でのセルロースファイバーの耐熱性が向上する。シリコーンゴム自体の耐熱性は高いが、これらを結合することでさらに耐熱性が向上する。
これらの効果は、前記複合物が、セルロースファイバーの水酸基をオルガノシラン化合物で修飾した修飾セルロースファイバーと、シリコーンゴムとの反応生成物である場合に特に優れたものとなる。
セルロースファイバーの水酸基を予めオルガノシラン化合物で修飾することで、予めシリコーンゴムをオルガノシラン化合物で修飾する場合に比べて、オルガノシラン化合物がセルロースファイバーの水酸基に効率よく結合する。また、水酸基が減少することで、セルロースファイバー間の水素結合による強い密着が抑制され、分散性が向上する。そのため、修飾セルロースファイバーとシリコーンゴムとを混合したときに修飾セルロースファイバーがシリコーンゴム中に均一に分散し、優れた補強効果を発揮する。
(シリコーンゴム)
複合ゴム材料を構成するシリコーンゴムとしては、特に限定されず、成形体等を構成するシリコーンゴムとして公知のものであってよい。
シリコーンゴムとしては、例えば下記一般式(s1)で表される構成単位(以下、構成単位(s1)と略記する)を有するポリオルガノシロキサンを架橋したものが挙げられる。
Figure 0005851336
[式中、R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニルアルキル基及びアルキルカルボニルオキシアルキル基から選ばれる1価の有機基、水素原子又は水酸基である。ただし、該ポリオルガノシロキサン中の全てのR及びRのうち、少なくとも一部は前記有機基である。]
及びRにおけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでも良いが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が1〜5であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
環状のアルキル基は、単環式及び多環式のいずれでも良いが、単環式であることが好ましく、炭素数が5〜7の単環式であることがより好ましい。
及びRにおけるアルケニル基としては、ビニル基又は2−プロペニル基が好ましい。
及びRにおけるアリール基は、単環式及び多環式のいずれでも良いが、単環式であることが好ましく、フェニル基が特に好ましい。
及びRにおけるアルコキシ基は、前記R及びRにおけるアルキル基が酸素原子に結合したものが例示でき、メトキシ基又はエトキシ基であることが好ましく、メトキシ基であることが特に好ましい。
及びRにおけるアルコキシカルボニルアルキル基は、前記R及びRにおけるアルキル基と、前記R及びRにおけるアルキル基から一つの水素原子を除いたアルキレン基とが、オキシカルボニル基(−O−C(=O)−)を介して結合したものが例示できる。
及びRにおけるアルキルカルボニルオキシアルキル基は、前記R及びRにおけるアルコキシカルボニルアルキル基の、オキシカルボニル基(−O−C(=O)−)をカルボニルオキシ基(−C(=O)−O−)で置換したものが例示できる。
前記R及びRにおけるアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニルアルキル基、アルキルカルボニルオキシアルキル基はそれぞれ置換基を有していてもよい。
具体的には、これらの基の少なくとも一つの水素原子が置換基で置換されたものが例示できる。該置換基としては、ハロゲン原子が好ましく、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が例示でき、フッ素原子又は塩素原子であることが好ましく、フッ素原子であることが特に好ましい。置換基で置換される水素原子の数は、一つでも複数でもよく、すべての水素原子が置換基で置換されていてもよい。
また、前記R及びRにおけるアリール基の芳香環を構成する炭素原子の一部が、窒素原子、酸素原子又はイオウ原子等のヘテロ原子で置換されていてもよい。
前記ポリオルガノシロキサンを架橋すると、該ポリオルガノシロキサンが有する構成単位(s1)のうち、少なくとも1つの構成単位(s1)中のR及びRの一方又は両方が、二価の基となった構成単位を有するシリコーンゴムが得られる。すなわち、該二価の基の残りの一つの結合手が、別の構成単位(s1)のケイ素原子に結合する。このようにして、構成単位(s1)同士が結合されることで、鎖状のポリオルガノシロキサンが二価の基で架橋されて三次元状の構造を形成する。
該二価の基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、酸素原子(−O−)等が例示できる。
複合ゴム材料の製造には、通常、前述したポリオルガノシロキサンのような未架橋のシリコーンゴムが用いられ、他の原料(セルロースファイバー等)と混合した後、架橋される。
未架橋のシリコーンゴムは市販品を使用してもよく、公知の方法により製造したものを使用してもよい。未架橋のシリコーンゴムは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
未架橋のシリコーンゴムの架橋は、該シリコーンゴムが有する官能基(例えばRやR)の種類に応じ、公知の方法により実施できる。一般的には、有機過酸化物の作用により架橋する方法、付加反応により架橋する方法、縮合反応により架橋する方法等が用いられている。
例えば、R及びRの少なくとも一方がメチル基等のアルキル基である構成単位(s1)同士は、有機過酸化物の作用により架橋させることができる。この場合、エチレン基等のアルキレン基を介してポリオルガノシロキサンが架橋する。
及びRの少なくとも一方がビニル基や2−プロペニル基等のアルケニル基である構成単位(s1)と、R及びRの少なくとも一方が水素原子である構成単位(s1)とは、付加反応により架橋させることができる。この場合、エチレン基やプロピレン基等のアルキレン基を介してポリオルガノシロキサンが架橋する。
及びRの少なくとも一方が水酸基である構成単位(s1)同士は、脱水縮合により架橋させることができる。また、R及びRの少なくとも一方が水酸基である構成単位(s1)と、R及びRの少なくとも一方がメトキシ基等のアルコキシ基である構成単位(s1)とは、脱アルコール縮合により架橋させることができる。これらの場合、酸素原子を介してポリオルガノシロキサンが架橋する。
これらの架橋反応は、いずれも公知の反応であり、有機過酸化物等の硬化剤を使用することで円滑に進行させることができる。有機過酸化物の具体例は後で説明する。
複合ゴム材料を構成するシリコーンゴムとしては、成形体の機械的強度の観点から、有機過酸化物により架橋させたシリコーンゴムが望ましい。
有機過酸化物により架橋可能なシリコーンゴムとしては、前記構成単位(s1)として、R及びRの少なくとも一方がメチル基等のアルキル基である構成単位を有するポリオルガノシロキサンが挙げられる。
前記シリコーンゴムの具体例としては、例えばメチルビニルシリコーンゴム、メチルビニルフェニルシリコーンゴム等が挙げられる。また、複数のシリコーンゴムの混合物であってもよい。
(セルロースファイバー)
セルロースファイバーは、ファイバー状のセルロースであり、例えば粒状のセルロースなどに比べて、シリコーンゴムに対する補強効果に優れる。
セルロースファイバーとしては、特に限定されず、市販のものや、公知の製造方法により製造したものを用いることができる。
セルロースファイバーは、平均直径が小さいほど、表面積が大きくなり、シリコーンゴムに対する補強効果が向上することから、セルロースナノファイバーが好ましい。セルロースナノファイバーは、シリコーンゴム中にナノレベルで均一に分散し、優れた補強効果を発揮する。
セルロースファイバーは、平均重合度が600以上30000以下であることが好ましく、600以上5000以下であることがより好ましく、800以上5000以下であることがさらに好ましい。
平均重合度が600以上であれば充分な補強効果が得られ、30000以下であればセルロースファイバーとシリコーンゴムとの混合時に粘性が高くならず、複合樹脂材料の調製が良好である。
セルロースファイバーは、アスペクト比が20〜10000であることが好ましく、20〜2000であることがより好ましい。
アスペクト比が上記範囲内であれば、分子同士の絡まりや網目構造が強固となり、複合ゴム材料に優れた機械的強度が付与される。また、10000以下であれば成形性が良好である。
本明細書において「アスペクト比」とは、平均繊維長と平均直径の比(平均繊維長/平均直径)を意味する。セルロースファイバーの平均直径及び平均繊維長は、走査電子顕微鏡(SEM)により測定できる。
セルロースファイバーは、平均直径が1〜800nmであることが好ましく、1〜300nmであることがより好ましく、1〜100nmであることがさらに好ましい。
平均直径が1nm以上の場合、製造コストがかからず、800nm以下の場合、アスペクト比が低下しにくい。そのため平均直径が上記範囲内であれば安価で充分な補強効果が得られる。
セルロースファイバーとしては、特に、上記の平均重合度、アスペクト比及び平均直径を全て満たすものが好ましい。すなわち、平均重合度が600以上30000以下であり、アスペクト比が20〜10000であり、平均直径が1〜800nmであるものが好ましい。
セルロースファイバーは、X線回折パターンにおいてIβ型の結晶ピークを有するものが好ましい。
天然の植物細胞壁から得られるセルロースI型は、Iα型結晶とIβ型結晶の複合結晶であり、木材、木綿などの高等植物由来セルロースはIβ型結晶成分が多いが、バクテリアセルロースの場合はIα型結晶成分が多い。
Iβ型の結晶ピークを有するセルロースファイバーは、Iβ型の結晶ピークを有さないセルロースファイバー、例えばIα型の結晶ピークを有するセルロースファイバーに比べて、結晶化度が高く、補強効果に優れる。
Iβ型の結晶ピークを有するセルロースファイバーは、Iβ型の結晶ピークのみを有することが好ましい。すなわち、θの範囲を0〜30とするX線回折パターンが、図1に示すように、14≦θ≦18に1つ又は2つのピークを有し、20≦θ≦24に1つのピークを有し、他にはピークを有さないことが好ましい。
セルロースファイバーのX線回折パターンは、例えば粉末X線回折装置を用いて分析できる。
セルロースファイバーは、イオン液体を用いて得られたものであることが好ましい。セルロースファイバーの製造方法については後で詳細に説明するが、含セルロース原料に解繊処理等を施してセルロースファイバーを製造する際にイオン液体を用いることで、機械的せん断のみにより解繊処理する場合等に比べて、セルロースファイバーにダメージを与えにくい。そのため、解繊処理による平均重合度、アスペクト比、結晶化度などの低下が生じにくく、例えば600以上の平均重合度を有するセルロースファイバーを容易に得ることができる。そのため、得られるセルロースファイバーは補強効果に優れる。
本発明の複合ゴム材料においては、セルロースファイバーの水酸基の少なくとも一部が、オルガノシラン化合物によりシリコーンゴムに連結され複合物を形成している。つまり、セルロースファイバーの水酸基の少なくとも一部がオルガノシラン化合物で修飾され、かつ該水酸基を修飾するオルガノシラン化合物の少なくとも一部がシリコーンゴムに結合している。
セルロースファイバーは、水酸基の一部が、シリコーンゴムに結合していないオルガノシラン化合物で修飾されていてもよい。例えば前記複合物が、セルロースファイバーの水酸基をオルガノシラン化合物で修飾した修飾セルロースファイバーと、シリコーンゴムとの反応生成物である場合に、水酸基を修飾するオルガノシラン化合物の一部が、シリコーンゴムと反応せずに残留していてもよい。
前記修飾セルロースファイバーのオルガノシラン化合物による修飾率、つまりセルロースファイバー中の全体の水酸基(修飾されている水酸基と、修飾されていない水酸基との合計)のうち、オルガノシラン化合物で修飾されている水酸基の割合は、0.1〜50%であることが好ましく、10〜20%であることがより好ましい。この範囲内であると、分散性、耐熱性等の向上効果に優れる。修飾率が0.1%未満であると、シリコーンゴム中への分散性が低くなり補強効果が低下するおそれがある。50%を超えるとセルロースファイバー間の水素結合がなくなり樹脂への補強効果が低下するおそれがある。
修飾率は、元素分析により得られた炭素、水素、酸素の元素割合から算出できる。
セルロースファイバーは、水酸基の一部が、オルガノシラン化合物以外の修飾剤で修飾されていてもよい。
オルガノシラン化合物以外の修飾剤としては、水酸基と反応し得るものであれば良く、これまで提案されている修飾剤のなかから適宜選択できる。簡便で効率がよい点から、エーテル化剤又はエステル化剤が好ましい。
エーテル化剤としては、例えば、アルキルエーテル化剤、芳香環含有エーテル化剤等が挙げられる。
アルキルエーテル化剤としては、メチルクロライド、エチルクロライド等のハロゲン化アルキル;炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等の炭酸ジアルキル;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等の硫酸ジアルキル;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド等が好ましい。
芳香環含有エーテル化剤としては、例えばベンジルブロマイド等が挙げられる。
エステル化剤としては、例えば、ヘテロ原子を含んでも良いカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物が挙げられ、より具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体等が挙げられる。
エステル化剤としては、アルキルエステル化剤が好ましく、酢酸、無水酢酸、無水酪酸がより好ましい。
これらの修飾剤によるセルロースファイバーの水酸基の修飾は、公知の方法により実施できる。
セルロースファイバーとしては、1種を単独で用いてもよく、結晶化度、結晶構造、修飾基の種類や修飾率等が異なる2種以上を併用してもよい。
複合ゴム材料におけるセルロースファイバーの含有量は、特に限定されないが、セルロースファイバー及びオルガノシラン化合物の合計量が、複合ゴム材料の総質量に対し、1〜50質量%の範囲内となる量が好ましく、3〜30質量%の範囲内となる量がより好ましい。該合計量が1質量%以上であると、線膨張係数や耐熱性等の熱特性、および機械特性の向上効果に優れる。50質量%を超えるとシリコーンゴム中でセルロースファイバーが凝集し、分散が不充分となって複合ゴム材料の機械的強度が低下するおそれがある。
(オルガノシラン化合物)
オルガノシラン化合物は、セルロースファイバーが有する水酸基、シリコーンゴムが有する官能基それぞれに配位し、化学結合の形成などを通じて界面結合を強化する。
オルガノシラン化合物としては、セルロースファイバーが有する水酸基と反応し得る第一の反応性官能基と、シリコーンゴムが有する官能基と反応し得る第二の反応性官能基とを有するものが好ましい。
第一の反応性官能基としては、例えば、−Si(OR)(R’)3−n[式中、Rはアルキル基であり、R’は非加水分解性の有機基であり、nは1〜3の整数である。]が挙げられる。
−Si(OR)(R’)3−nにおいては、加水分解により−Si−ORが−Si−OH(シラノール基)となり、セルロースファイバーの水酸基と反応(脱水縮合)して共有結合を形成する。
Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。
R’の非加水分解性の有機基としては、例えば、アルキル基、芳香族基、有機官能基、またはその組み合わせ等が挙げられるが、これらに制限されない。
シリコーンゴムが有する官能基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニルアルキル基又はアルキルカルボニルオキシアルキル基等の有機基;水酸基等が挙げられる。有機基それぞれの具体例は、前記構成単位(s1)中のR及びRの説明で挙げたものと同様である。
第二の反応性官能基としては、前記有機基と反応し得るものが好ましく、例えばビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、スチリル基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基、メルカプト基等が挙げられる。
第二の反応性官能基としては、得られる複合ゴム材料が医療用部材として有用であることから、スルフィド基以外の反応性官能基、すなわち、ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、エポキシ基、アミノ基、スチリル基、ウレイド基、イソシアネート基及びメルカプト基からなる群から選ばれるものが好ましい。
前記第一の反応性官能基と第二の反応性官能基を有するオルガノシラン化合物としては、特に限定されないが、シランカップリング剤を用いることができる。
シランカップリング剤としては、例えば、下記一般式(I):
(RO)−Si−Y …(I)
[式中、Rはアルキル基であり、Yは、ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、エポキシ基、アミノ基、スチリル基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基及びメルカプト基からなる群から選ばれる反応性官能基を有する基である。]
で表される化合物が挙げられる。
式中、Rは前記と同じである。
Yにおける反応性官能基としては、上述した第二の反応性官能基と同様、スルフィド基以外の反応性官能基が好ましい。
Yにおいて、反応性官能基は、Siに直接結合してもよく、アルキレン基、アリーレン基等の炭化水素基を介して結合してもよい。
前記式(I)で表されるシランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
オルガノシラン化合物の配合量は、セルロースファイバー(100質量%)に対し、0.5〜50質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。0.5質量%以上であると、シリコーンゴムとセルロースファイバーとの界面結合による補強効果が充分に得られる。50質量%より多くても、大幅な補強効果の向上は認められない。
本発明の複合ゴム材料には、必要に応じて、更に、通常の硬化剤(加硫または架橋剤)、硬化促進剤(加硫または架橋促進剤)、各種オイル、老化防止剤、充填剤、可塑化剤、軟化剤、その他当該ゴム用に一般的に配合されている各種配合剤を含有させることができる。これら添加剤の配合量は、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
例えば、複合ゴム材料の製造には、通常、前述したポリオルガノシロキサンのような未架橋のシリコーンゴムが用いられ、セルロースファイバー等の他の原料と混合した後、架橋される。この場合、通常、硬化剤が配合される。硬化剤としては、シリコーンゴムの種類等に応じて公知のものが利用できる。
硬化剤としては、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物により架橋したシリコーンゴムは機械的強度に優れる。また、有機過酸化物は、シリコーンゴムとオルガノシラン化合物との反応の触媒としても機能する。例えばシリコーンゴムが、R及びRの少なくとも一方がアルキル基である構成単位(s1)を有するものであり、オルガノシラン化合物が、前記式(I)で表される化合物である場合、有機過酸化物が触媒として機能してアルキル基とYが結合する。
例えばR及びRがメチル基である構成単位(s1)を有するシリコーンゴムと、Yがビニル基(−CH=CH)であるオルガノシラン化合物で修飾されたセルロースファイバーとは、有機過酸化物の存在下で下記のように反応して複合物を形成する。
Figure 0005851336
式中、「CFi」はセルロースファイバーから水酸基を1つ除いた基であり、CFiに結合する酸素原子はセルロースファイバーの水酸基に由来する。
なお、シリコーンゴムとセルロースファイバーとの間のオルガノシラン化合物による連結箇所は、1箇所でも2箇所以上でもよい。
有機過酸化物としては、過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物に通常使用されるものであればよく、例えばベンゾイルパーオキサイド、モノクロルベンゾイルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ジターシャリーブチルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーベンゾエート、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジミリスチルパーオキシカーボネート、ジシクロドデシルパーオキシジカーボネート、2,5−ビス−(ターシャリーブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ビス−(ターシャリーブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルへキシン、1,6−ビス(ターシャリーブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサン等のビスカーボネート系過酸化物等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
有機過酸化物は、通常、シリコーンゴム100質量部あたり、0.01〜3質量部程度配合される。
<成形体>
本発明の成形体は、前記本発明の複合ゴム材料で構成されるものである。
前記本発明の複合ゴム材料は、耐熱性、機械的強度に優れるほか、マトリックスがシリコーンゴムであることから、柔軟性、密封性等にも優れている。そのため、成形体としては、これらの特性が要求されることから、医療用部材が好適である。
特に好ましい医療用部材として、具体的には、内視鏡用鉗子栓、あるいは内視鏡のうち体腔内に挿入する挿入部を外装するチューブや各種処置具用のチューブ等の医療用チューブが例示できる。
<複合ゴム材料又は成形体の製造方法>
本発明の複合ゴム材料は、セルロースファイバーの水酸基の少なくとも一部を、オルガノシラン化合物によりシリコーンゴムに連結する複合化工程を含む製造方法により製造できる。
複合化工程は、例えば、セルロースファイバーの水酸基をオルガノシラン化合物で修飾し、得られた修飾セルロースファイバーと、シリコーンゴムとを反応させる方法により行うことができる。
セルロースファイバーの水酸基を先にオルガノシラン化合物で修飾することで、オルガノシラン化合物がセルロースファイバーの水酸基に効率よく結合する。また、得られる修飾セルロースファイバーは、未修飾のセルロースに比べて、水酸基が減少しているため、セルロースファイバー間の水素結合による強い密着が抑制され、分散性に優れる。そのため、修飾セルロースファイバーとシリコーンゴムとを混合したときに修飾セルロースファイバーがシリコーンゴム中に均一に分散し、優れた補強効果を発揮する。
オルガノシラン化合物によるセルロースファイバーの水酸基の修飾は、例えばシランカップリング剤を用いて、公知の修飾方法により実施できる。具体例として、例えば、前記オルガノシラン化合物を溶解した水溶液に、セルロースファイバーを浸漬した後、取り出し、加熱処理する方法が挙げられる。加熱処理により、セルロースファイバーに付着した水溶液中でのオルガノシラン化合物の加水分解と、該加水分解により生じたシラノール基とセルロースファイバーの水酸基との反応(脱水縮合)が促進される。
このときオルガノシラン化合物で修飾するセルロースファイバーは、未修飾の水酸基を有するものであればよく、市販品を用いても公知の製造方法により製造したものを用いてもよい。セルロースファイバーの好ましい製造方法については後で詳細に説明する。
オルガノシラン化合物は、一般的に市販されているものを使用できる。
得られた修飾セルロースファイバー、シリコーンゴムおよび各種配合剤を、二本ロールミル、バンバリーミキサー、ダウミキサー(ニーダー)等の混合装置を用いて均一に混合し、得られた組成物を加熱することにより、修飾セルロースファイバーの水酸基を修飾しているオルガノシラン化合物とシリコーンゴムとが反応して複合ゴム材料が得られる。
複合ゴム材料の製造時に成形を行って本発明の成形体としてもよい。例えば、上記のように各成分を混合して得られた組成物を、一般の有機合成ゴムと同じく、プレス成形、押出し成形、カレンダー成形、インジェクション成形等により成形することで成形体を得ることができる。成形後、必要に応じて、更に150〜250℃で1〜10時間程度の加熱を行って二次加硫してもよい。
[セルロースファイバーの製造方法]
セルロースファイバーは、公知の方法により製造できる。例えば、含セルロース原料に、機械的せん断、化学的処理等の解繊処理、及び必要に応じて修飾を施すことにより製造できる。
含セルロース原料としては、特に限定されないが、リンター、綿、麻などの天然セルロース原料;クラフトパルプ、サルファイトパルプなどの木材化学処理パルプ;セミケミカルパルプ;古紙またはその再生パルプ等が挙げられる。コスト面、品質面、環境面から、木材化学処理パルプ、木材化学処理パルプが好ましく、平均重合度の高いリンターがより好ましい。含セルロース原料の形状は特に限定されないが、機械的せん断の容易さ、化学的処理における溶媒の浸透促進の観点から、含セルロース原料を適宜粉砕してから用いることが好ましい。
解繊処理には、機械的せん断、化学的処理のいずれも利用できる。化学的処理としては、N−メチルモルフォリン−N−オキシド(NMMO)法、銅アンモニア溶液法、イオン液体法等が挙げられる。
セルロースファイバーの製造方法としては、イオン液体を用いる方法が好ましい。この方法によれば、結晶化度が高く、アスペクト比の大きいセルロースナノファイバーの作製が可能となる。かかるセルロースナノファイバーは補強効果が高く、シリコーンゴムの強度向上効果に優れる。例えばアスペクト比が大きいセルロースファイバーは、分子同士の絡まりや網目構造が強固となるため、シリコーンゴムに優れた機械的強度を付与する。
イオン液体を用いたセルロースファイバーの製造方法は、イオン液体を含む溶液(以下、処理液)中で含セルロース原料を解繊処理する工程を含む。
具体的には、処理液に含セルロース原料を添加し、撹拌すると、含セルロース原料が膨潤、溶解してセルロースファイバーが得られる。このときの処理液中のイオン液体の種類や濃度、撹拌条件、処理時間等を調節することで、セルロースファイバーの解繊度、結晶化度等を調節することができる。解繊度が高いほど、処理液中に含まれるセルロースファイバーの直径が小さくなる。
処理液に用いるイオン液体としては、例えば、下記一般式(i)で表されるものが挙げられる。
Figure 0005851336
[式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基またはアリル基であり、Xはハロゲン、擬ハロゲン、炭素数1〜4のカルボキシレート、またはチオシアネートである。]
前記式(i)で表されるイオン液体としては、塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、臭化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、塩化1−アリル−3−メチルイミダゾリウム、臭化1−アリル−3−メチルイミダゾリウム、臭化1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム等が挙げられる。
イオン液体のみで含セルロース原料を解繊処理することも出来るが、溶解力が高すぎで微細繊維まで溶解してしまうおそれがある場合、処理液としては、イオン液体と有機溶剤を含有する溶液を使用することが好ましい。
イオン液体に添加する有機溶剤は、イオン液体との相溶性、セルロースとの親和性、イオン液体との混合後のセルロースファイバーの溶解性、粘度などを考慮し適宜選択すればよいが、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルフォキサイド、アセトニトリル、メタノール、エタノールから選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの有機溶剤の共存により、セルロースの微細繊維間へのイオン液体の浸透が促進される。またイオン液体による微細繊維の結晶構造の破壊を防ぐことが出来る。
前記処理液中のイオン液体の含有量は、含セルロース原料、イオン液体、有機溶剤の種類に依存するため適宜調整すればよいが、膨潤、溶解能力の観点から、20質量%以上が好ましい。特に、含セルロース原料に対する溶解力の高い有機溶剤を用いる場合には30質量%以上がより好ましい。メタノールなどのアルコール溶媒では、含セルロース原料に対する溶解力は低いため、イオン液体の含有量は50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上である。
前記処理液に対する含セルロース原料の添加量は、添加前の処理液の質量を100質量%とした場合、0.5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。経済的な効率の観点から0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。解繊度の均一性の観点から30質量%以下が好ましく、20質量%がより好ましい。
解繊処理の処理温度は特に限定するものではなく、含セルロース原料を膨潤し微細繊維間の結合物を軟化・溶解できるための適切な温度を選択すればよいが、通常は20〜120℃がよい。20℃未満であると、処理速度が低い、処理液の粘度が高い等により解繊効果が低くなるおそれがある。そのため、解繊の工程が別途必要になってくる。120℃を超えると、ナノファイバーまで溶解してしまい、ナノファイバーにダメージを与える、ナノファイバーの収率が低くなる等のおそれがある。
前記複合化工程で、水酸基の一部が、オルガノシラン化合物以外の修飾剤で修飾されたセルロースファイバーを用いる場合、前記処理液中で、解繊処理と並行して、又は解繊処理後、セルロースファイバーの修飾を行ってもよい。
セルロースファイバーの修飾は、セルロースファイバーを含む処理液中に修飾剤を添加し、反応させることにより実施できる。
修飾剤としては、上述したように、エーテル化剤又はエステル化剤が好ましい。
修飾剤の使用量は、セルロースファイバーの所望の修飾率に応じて設定される。
セルロースファイバーと修飾剤との反応条件は、特に限定するものではなく、解繊処理の処理温度と同様であってよい。
上記のようにして解繊処理、及び任意に修飾を行った後の処理液をろ過することにより、処理液中のセルロースファイバーを回収できる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
各実施例及び各比較例で用いた測定方法を以下に示す。
(1)セルロースファイバーの平均直径、平均アスペクト比の測定方法:
セルロースファイバーの平均直径(数平均繊維径)及び平均繊維長(数平均繊維長)は、SEM解析により評価した。詳細には、セルロースファイバー分散液をウェーハ上にキャストしてSEM観察し、得られた1枚の画像当たり20本以上の繊維について繊維径と繊維長の値を読み取り、これを少なくとも3枚の重複しない領域の画像について行い、最低30本の繊維径と繊維長の情報を得た。得られた繊維径のデータから平均直径を算出した。また、繊維長のデータから平均長さを算出し、平均繊維長と平均直径との比から平均アスペクト比(平均繊維長/平均直径)を算出した。
(2)セルロースファイバーの平均重合度:
セルロースファイバーの平均重合度は、粘度法(参考文献:Macromolecules,18,2394−2401,1985)により求めた。
(3)セルロースファイバーの結晶構造解析(XRD):
セルロースファイバーの結晶構造は、粉末X線回折装置Rigaku Ultima IV(株式会社リガク社製)を用いて分析した。
分析結果から、θの範囲を0〜30とするX線回折パターンが、14≦θ≦18に1つ又は2つのピークと、21≦θ≦24に1つのピークとを有し、他にはピークを有さない場合にはIβ型、そうでない場合にはIα型とした。
(4)引張破断応力の測定:
各実施例及び各比較例で得た複合ゴム材料(成形体)の機械的強度を評価するため、JIS K6251に準拠して引張破断応力(MPa)を測定した。試験片として2mm厚プレスシートを3号ダンベル型に打ち抜いたものを使用した。
(5)熱変形温度の測定:
各実施例及び各比較例で得た複合ゴム材料(成形体)の耐熱性を評価するため、JIS K7191に準拠して熱変形温度(℃)を測定した。テストサンプルのサイズは20mm(長)×5mm(幅)とした。
[実施例1]
ナタデココ(株式会社フジッコ社製、平均重合度:3000以上、平均アスペクト比:1000以上、平均直径:100nm)を乾燥し、セルロースファイバーを得た。結晶構造はIα型であった。
該セルロースファイバーを、シランカップリング剤(信越シリコーン社製、製品名:KBM−403、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)の水溶液に浸漬し、乾燥させた。これにより、シランカップリング剤で水酸基が修飾された修飾セルロースファイバーを得た。
次に、シリコーンゴム(信越シリコーン社製、製品名:KE−931−U)100質量部に、修飾セルロースナノファイバー10質量部、硬化剤としてベンゾイルパーオキサイド(信越化学社製、製品名:C−8)2質量部を、バンバリーミキサーを用い分散させた。得られた組成物を、120℃に設定した熱プレスによりシート状(100×100×1mm)に加工し、圧力4MPaで10分保持することにより、複合ゴム材料からなる成形体を得た。
[実施例2]
ろ紙をハサミで3mm角に切断したもの2gを200mLのフラスコビーカーに入れ、さらにN,N−ジメチルアセトアミド50mLと塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(イオン液体)60gを加え、攪拌して解繊処理を行った。その後、フラスコビーカー内の処理液をろ過してセルロースファイバーを回収した。このとき得られたセルロースファイバーの平均重合度は800、平均アスペクト比は10、平均直径は10μm、結晶構造はIβ型であった。
このセルロースファイバーを用いた以外は実施例1と同様の手順により成形体を得た。
[実施例3]
解繊処理条件を変更した以外は実施例2と同様にしてセルロースファイバーを得た。該セルロースファイバーの平均重合度は800、平均アスペクト比は100、平均直径は100nm、結晶構造はIβ型であった。
このセルロースファイバーを用いた以外は実施例1と同様の手順により成形体を得た。
[実施例4]
シリコーンゴム100質量部に対し、修飾セルロースファイバーを110質量部入れた以外は、実施例3と同様の手順により成形体を得た。
[実施例5]
シランカップリング剤(信越シリコーン社製、製品名:KBE−846、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)を変更した以外は、実施例3と同様の手順により成形体を得た。
[比較例1]
シリコーンゴムのみを、120℃に設定した熱プレスによりシート状(100×100×1mm)に加工し、圧力4MPaで10分保持して成形体を得た。
[比較例2]
セルロースファイバーに修飾を施さなかった以外は、実施例3と同様の手順で成形体を得た。
[比較例3]
エチレンプロピレンゴム(JSR社製、製品名:EP51)100質量部に、実施例3で作製した修飾セルロースファイバー10質量部、硬化剤としてジクミルパーオキサイド(日本油脂社製、製品名:パークミルD)1質量部を、バンバリーミキサーを用い分散させた。得られた組成物を、150℃に設定した熱プレスによりシート状(100×100×1mm)に加工し、圧力4MPaで10分保持することにより成形体を得た。
各実施例及び各比較例の成形体について、前記の測定方法により引張破断強度と熱変形温度を測定した。結果を表1に示した。
Figure 0005851336
上記結果に示すとおり、実施例1〜5の成形体は、機械的強度が高く、かつ耐熱性に優れていた。
一方、シリコーンゴムのみを成形した比較例1の成形体は、耐熱性が実施例1〜5よりも劣っていた。
修飾していないセルロースファイバーを用いた比較例2の成形体は、比較例1よりもさらに機械的強度と耐熱性が低下し、特に機械的強度が低かった。
修飾セルロースファイバーにエチレンプロピレンゴムを組み合わせた比較例3の成形体は、機械的強度、耐熱性ともに実施例1〜5よりも劣っており、特に耐熱性が低かった。

Claims (11)

  1. シリコーンゴム中にセルロースファイバーを含有し、
    前記セルロースファイバーの水酸基の少なくとも一部が、オルガノシラン化合物により前記シリコーンゴムに連結され複合物を形成している複合ゴム材料。
  2. 前記複合物が、セルロースファイバーの水酸基をオルガノシラン化合物で修飾した修飾セルロースファイバーと、シリコーンゴムとの反応生成物である請求項1記載の複合ゴム材料。
  3. 前記オルガノシラン化合物が、下記一般式(I):
    (RO)−Si−Y …(I)
    [式中、Rはアルキル基であり、Yは、ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、エポキシ基、アミノ基、スチリル基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基及びメルカプト基からなる群から選ばれる反応性官能基を有する基である。]
    で表される化合物である請求項1又は2記載の複合ゴム材料。
  4. 前記セルロースファイバーがセルロースナノファイバーである請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合ゴム材料。
  5. 前記セルロースファイバーの平均重合度が600以上30000以下であり、アスペクト比が20〜10000であり、平均直径が1〜800nmである請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合ゴム材料。
  6. 前記セルロースファイバーが、θの範囲を0〜30とするX線回折パターンにおいて、14≦θ≦18に1つ又は2つのピークを有し、20≦θ≦24に1つ又は2つのピークを有し、他にはピークを有さないセルロースファイバーである請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合ゴム材料。
  7. 前記セルロースファイバー及び前記オルガノシラン化合物の合計量が、1〜50質量%である請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合ゴム材料。
  8. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合ゴム材料で構成される成形体。
  9. 医療用部材である請求項8記載の成形体。
  10. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合ゴム材料を製造する方法であって、
    セルロースファイバーの水酸基の少なくとも一部を、オルガノシラン化合物によりシリコーンゴムに連結する複合化工程を含む複合ゴム材料の製造方法。
  11. 前記複合化工程が、セルロースファイバーの水酸基をオルガノシラン化合物で修飾し、得られた修飾セルロースファイバーと、シリコーンゴムとを反応させることにより行われる請求項10記載の複合ゴム材料の製造方法。
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