JP5846449B2 - 電池用セパレータの製造方法及び電池用セパレータ - Google Patents

電池用セパレータの製造方法及び電池用セパレータ Download PDF

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Description

本発明は、電池用セパレータの製造方法及びその製造方法により製造される電池用セパレータに関する。
近年二次電池は、電気自動車、ハイブリッド自動車、モバイル電子機器などを中心に、広範な分野で使用されている。その中でも、リチウムイオン二次電池は、軽量で高エネルギー密度を有することから、特に開発が活発となっている二次電池の1つである。電池におけるセパレータの役割は非常に重要であり、高性能かつ熱安定性に優れたセパレータが望まれている。現在のところ、ポリオレフィン樹脂からなる微多孔フィルムが一般的に使用されているが、最近では安価な点から、織布または不織布からなる多孔質シートや、それに絶縁性微粒子などを含有させたり、コーティングさせたりしたセパレータも数多く提案されている。
例えば、正極活物質と負極活物質とをセパレータによって電子的に隔離してなる非水系電池において、前記セパレータは繊維径が1μm以下の微細なセルロースを原料として湿紙を製造し、該湿紙に存在する空隙構造を保持したまま乾燥させ、厚さ15〜100μmとした非水系電池に関する技術がある(例えば、特許文献1を参照。)。特許文献1には、繊維径1μm以下のフィブリル化セルロース、バクテリアセルロースが、セパレータを構成するセルロース繊維として記載され、叩解したフィブリル化セルロースの繊維径は0.4μm程度であることが示唆されている。また、湿紙に空隙構造を保持したまま乾燥する方法、つまり透気抵抗度を上げ過ぎない方法として、水を水より表面張力の低い有機溶媒で置換して乾燥させる方法や、凍結乾燥により乾燥させる方法が記載されている。
また、合成樹脂短繊維とフィブリル化したリヨセル繊維とを必須成分として含有した不織布に、板状ベーマイトを含むスラリーを塗工したセパレータに関する技術がある(例えば、特許文献2を参照。)。特許文献2には、この不織布は、表面の平滑性が高く、緻密性に優れており、表面塗工によって、複合化した際の表面のバラつきが小さくなると共に、複合化物の脱落が起こりにくくなると記載されている。
正極と金属リチウムあるいはリチウム合金からなる負極とがセパレータを介して対向配置された非水電解液二次電池であって、該セパレータは最大繊維径が50nmより小さいセルロースナノ繊維から形成されている非水電解液二次電池に関する技術がある(例えば、特許文献3を参照。)。特許文献3には、セルロースナノ繊維はその繊維径が4nm程度であって、これにより形成されたセパレータの引張強度が1000MPa以上であると記載されている。
特開平10−223196号公報 特開2011−187346号公報 特開2010−97700号公報 特開2008−1728号公報
しかし、特許文献1のように、微細なセルロース繊維を用いると、一般的な熱乾燥では透気抵抗度が上がり過ぎてしまい、イオンの透過性を低下させてしまう。透気抵抗度を制御するのに有機溶媒や凍結乾燥を用いることは、環境面、さらには製造コストの面で望ましくない。また、叩解によりフィブリル化したセルロース単独で構成されたセパレータでは強度が低く、さらには、セパレータを構成する繊維の繊維径が不均一であることから、部分的な抵抗の増大によって、内部抵抗が上昇したり、耐電圧性が低下して漏れ電流が増加したりする問題が生じる場合がある。
特許文献2では、不織布の上に微粒子スラリーを塗工してセパレータを得ているが、塗工では透気抵抗度の調整が難しく、制御不良の場合には短絡しやすくなる。また、電池加工性、帯電性など新たな問題が発生する可能性がある。また、粒子を結着するための樹脂バインダーがセパレータの細孔に入り込み、多くの細孔を閉塞してセパレータのイオン透過性が低下する場合がある。セパレータのイオン透過性が低下すると、充放電特性が劣る傾向となりやすい。
特許文献3では、繊維径が4nm程度であるセルロースナノ繊維から形成されたセパレータについて記載しているが、前述の特許文献1のように、微細なセルロース繊維を用いると、一般的な熱乾燥では透気抵抗度が上がり過ぎてしまい、イオンの透過性を低下させてしまう。しかし、特許文献3には透気抵抗度を制御する手段については一切触れられていない。
本発明は、微細なセルロース繊維(セルロースナノファイバー)を用いながら、一般的な熱乾燥で孔径を制御でき、基材である多孔質シートの厚み、表面性などの物性を殆ど変えることなく透気抵抗度の制御が可能な電池用セパレータの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明に係る電池用セパレータの製造方法は、数平均繊維径が1〜50nmのセルロースナノファイバーを分散媒に分散したナノファイバーの分散液を調製する分散液調製工程と、該分散液を平均孔径が5μm以下であり且つシートの厚さが50μm以下の多孔質シートに付着させ、前記分散液を前記多孔質シートの孔内まで浸透させる付着工程と、前記多孔質シートの表面上にある余分な分散液を取り除く工程と、該分散液が付着した多孔質シートを乾燥して前記分散媒を除去する乾燥工程と、を有することを特徴とする。
本発明に係る電池用セパレータの製造方法においては、前記乾燥工程を経ることで、前記多孔質シートの孔内に前記セルロースナノファイバーの網目を形成し、かつ、前記電池用セパレータの透気抵抗度を、前記多孔質シートの透気抵抗度よりも5秒以上高くすることが好ましい。イオン透過性を適切に制御可能な電池用セパレータを得ることができる。
本発明に係る電池用セパレータの製造方法においては、前記分散媒が水であることが好ましい。分散媒に水を用いることで、安全面、環境面及び設備面により優れた製造方法とすることができる。
本発明に係る電池用セパレータの製造方法においては、前記分散液が、前記セルロースナノファイバーを前記分散液の全質量に対して、固形分濃度で0.001〜2.000質量%含有させることが好ましい。多孔質シートの孔内にナノファイバーの網目状構造体を効率的に形成することができる。
本発明に係る電池用セパレータの製造方法においては、前記分散液は、界面活性剤を前記分散液の全質量に対して固形分濃度で0.0001〜1.0000質量%含有することが好ましい。ナノファイバーの凝集抑制効果が得られ、乾燥時にセルロースナノファイバー同士の凝集を弱め、多孔質シートの孔内に網目状構造を比較的容易に維持させることが可能となる。
本発明に係る電池用セパレータは、平均孔径が5μm以下であり且つシートの厚さが50μm以下の多孔質シートの表面層又は中層の少なくともいずれか一つに、数平均繊維径が1〜50nmのセルロースナノファイバーが付着しており、該セルロースナノファイバーが網目を形成しており、かつ、前記多孔質シートの表面上に前記セルロースナノファイバーの繊維層が形成されていないことを特徴とする。
本発明に係る電池用セパレータにおいては、前記多孔質シートの孔内に形成されたセルロースナノファイバーの網目の平均孔径が10〜200nmであることが好ましい。このような電池用セパレータを用いることでイオン透過性を制御することが可能となる。
本発明の電池用セパレータの製造方法によれば、微細なセルロース繊維を用いながら、有機溶媒や凍結乾燥などの特別な乾燥方法を用いず、一般的な熱乾燥で孔径を制御でき、多孔質シートの孔内で2次元的にセルロースナノファイバーによる微細な孔を形成することが可能であるから、多孔質シートの強度、厚み、表面性などの物性を殆ど変えることなく電池用セパレータを製造することが可能となる。また、透気抵抗度を比較的容易に制御することが可能となる。
また、本発明の電池用セパレータの製造方法により製造された電池用セパレータを用いることで電池性能に影響を与えるイオン透過性を適切に制御することができる。
実施例5の電池用セパレータのSEMによる観察画像を示す図である。
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
本実施形態に係る電池用セパレータの製造方法は、数平均繊維径が1〜50nmのセルロースナノファイバーを分散媒に分散したナノファイバーの分散液を調製する分散液調製工程と、該分散液を平均孔径が5μm以下であり且つシートの厚さが50μm以下の多孔質シートに付着させ、分散液を多孔質シートの孔内まで浸透させる付着工程と、多孔質シートの表面上にある余分な分散液を取り除く工程と、該分散液が付着した多孔質シートを乾燥して前記分散媒を除去する乾燥工程と、を有するものである。
<セルロースナノファイバー>
本実施形態では、セルロースナノファイバーは、化学処理(改質)したセルロースナノファイバーを包含する。セルロースナノファイバーでは、セルロース分子鎖が2本以上の束を形成している。セルロース分子鎖が2本以上の束を形成しているとは、2本以上のセルロース分子鎖が集合してミクロフィブリルと呼ばれる集合体を形成している状態をいう。本実施形態では、セルロース分子鎖は、分子中のC6位水酸基の一部又は全部がアルデヒド基、カルボキシル基などに酸化されたもの、C6位以外の水酸基を含む水酸基の一部又は全部が硝酸エステル、酢酸エステルなどのようにエステル化されたもの、メチルエーテル、ヒドロキシプロピルエーテル、カルボキシメチルエーテルなどのようにエーテル化されたものなど他の官能基に置換されている形態を含む。
セルロースナノファイバーの数平均繊維径は1〜50nmとする。より好ましくは、2〜30nmであり、特に好ましくは、2〜10nmである。数平均繊維径が1〜50nmのセルロースナノファイバーを用いることによって、多孔質シートの孔内で微細孔が形成されやすくなる。数平均繊維径が1nm未満では、ナノファイバーの単繊維強度が弱く、多孔質体の構造を維持することが困難となる。50nmを超えると、多孔質シートの孔内で微細孔が形成され難い。ここで、数平均繊維径は、次に従って算出する。カーボン膜被覆グリッド上にキャストしたセルロースナノファイバーを透過型電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)を用いて電子顕微鏡画像による観察を行う。得られた観察画像に対し、1枚の画像あたり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交差する繊維を選んでその繊維の繊維径を目視で読み取っていく。このとき、構成する繊維の大きさに応じて5000倍、10000倍、50000倍のいずれかの倍率で行う。なお、試料又は倍率は、20本以上の繊維が軸と交差する条件とする。こうして少なくとも3枚の重なっていない表面部分の画像を電子顕微鏡で撮影し、各々二つの軸に交差する繊維の繊維径の値を読み取る。したがって、少なくとも20本×2×3=120個の繊維情報が得られる。こうして得られた繊維径のデータから数平均繊維径を算出した。なお、枝分かれしている繊維については、枝分かれしている部分の長さが50nm以上であれば1本の繊維として繊維径の算出に組み込む。
また、セルロースナノファイバーの数平均繊維長は、特に限定するものではないが、0.01〜20μmであることが好ましい。より好ましくは、0.05〜10μmである。数平均繊維長が0.01μm未満では、ナノファイバーが粒子に近くなり、多孔質体の絡み合いが弱くなる場合がある。20μmを超えると、ナノファイバー同士の絡み合いが多くなり、溶媒に分散させたときの液体の流動性が低くなる場合がある。なお、数平均繊維長は、セルロースナノファイバー分散液を基板上に薄くキャストし、凍結乾燥したものを走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いて電子顕微鏡画像による観察から算出する。得られた観察画像に対し、1枚の画像あたり10本ずつ独立した繊維を無作為に選び、その繊維長を目視で読み取っていく。このとき、構成する繊維の長さに応じて5000倍又は10000倍のいずれかの倍率で行う。なお、試料又は倍率は、繊維の始点と終点とが同じ画像内に収まっているものを対象とする。こうして少なくとも12枚の重なっていない表面部分の画像をSEMで撮影し、繊維長を読み取る。したがって、少なくとも10本×12枚=120本の繊維情報が得られる。こうして得られた繊維径のデータから数平均繊維長を算出できる。なお、枝分かれしている繊維については、その繊維の最も長い部分の長さを繊維長とする。
セルロースナノファイバーの種類は、例えば、セルロース繊維を高圧下で剪断して解繊したマイクロフィブリレーテッドセルロース(以降、MFCと略す。)、微生物が産生する微細なバクテリアセルロース(以降、BCと略す。)、天然セルロースを40%以上の濃硫酸で処理して得られるセルロースナノウィスカー(以降、CNWと略す。)又は木材パルプを構成している繊維の最小単位であるミクロフィブリルを常温常圧の温和な化学処理及び軽微な機械処理で水分散体として単離した超極細、かつ、繊維径の均一な微細セルロース繊維、つまりセルロースシングルミクロフィブリル(以降、CSMFと略す。)である。MFCは、セルロース繊維を機械的な処理によって剪断してナノファイバー化するため、繊維径の分布が広いという特徴がある。BCは、比較的均一な繊維径を有するという特徴がある。CNWは、比較的均一な繊維径を有するが、繊維長が0.1〜0.2μmで短いという特徴がある。CSMFは、セルロース原料を、N‐オキシル化合物、臭化物、ヨウ化物又はそれらの混合物の存在下で、酸化剤を用いて酸化し、該酸化されたセルロースを更に湿式微粒化処理して解繊し、ナノファイバー化することによって水分散体として製造され、均一な繊維径を有するという特徴がある(例えば、特許文献4を参照。)。この中で、CSMFが均一な繊維径を有するという点で特に好ましい。
CSMFは、セルロース分子の水酸基の一部がカルボキシル基及びアルデヒド基からなる群から選ばれる少なくとも一つの官能基に酸化されており、かつ、セルロースI型結晶構造を有する。最大繊維径は50nm以下とすることが可能である。このセルロースナノファイバーは、水に分散すると透明な液体となる。
セルロースナノファイバーの原料となるセルロース原料は、特に限定されるものではなく、例えば、広葉樹さらしクラフトパルプ(LBKP)、針葉樹さらしクラフトパルプ(NBKP)などの各種木材由来のクラフトパルプ、サルファイトパルプ、脱墨パルプ(DIP)などの古紙パルプ、グランドパルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナー砕木パルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、ケミグランドパルプ(CGP)などの機械パルプ、それらを高圧ホモジナイザー、ミルなどによって粉砕した粉末状セルロース、それらを酸加水分解などの化学処理によって精製した微結晶セルロース粉末を使用できる。また、ケナフ、麻、イネ、バガス、竹、綿などの植物も使用できる。本実施形態は、ナノファイバーの原料及び製造方法に制限されない。
<多孔質シート>
本実施形態では、多孔質シートは多数の孔が連通した多孔質なものである。ここで、孔とは、規則的に形成された微細孔又は繊維が絡み合って形成した繊維間の空隙のいずれも包含する。孔が連通とは、空隙が一方の面から他方の面に直線的又は曲線的に連続してつながっている状態をいう。多孔質シートは、多数の孔が連通した多孔質で、絶縁性があれば、特に限定されず、例えば、不織布、紙、織物、編物などの繊維をシート状に加工した繊維シート、多孔フィルムなどの多数の空隙が連通したもの、それらの複合体である。繊維シートは、例えば、化学繊維シート、天然繊維、無機繊維シートである。化学繊維シートは、例えば、レーヨン、キュプラ、リヨセルなどのセルロースを原料とした再生繊維シート、アセテートなどの化学処理されたセルロースを原料とした半合成繊維シート、ポリアミド、ビニロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル、ポリオレフィン、アラミドなどの熱可塑性樹脂を原料とした合成繊維シートである。天然繊維シートの原料は、例えば、木材パルプ、綿、麻、リンネルなどである。無機繊維シートの原料は、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維などである。多孔フィルムは、例えば、ポリオレフィン微多孔膜、ポリテトラフルオロエチレン微多孔膜である。
本発明でいう多孔質シートの孔とは、物体間(例えば繊維間)に存在する空間のことである。セルロースナノファイバーによる微細な網目状構造体は、多孔質シートの孔内での薄膜状の分散液が乾燥することにより形成されるので、分散液を薄膜状に形成できるような空間を孔と定義する。この孔についてさらに例示すると、多孔質シートが繊維シートであれば、繊維を枠とする孔であり、シートの表面から内部の至るところに孔が存在することとなり、多孔質シートが筒状孔を有する多孔フィルムであれば、該多孔フィルムを貫通する筒状孔である。
本実施形態に係る電池用セパレータの製造方法においては、平均孔径が5μm以下である多孔質シートを用いる。より好ましくは、3μm以下の多孔質シートを用いる。平均孔径が5μmを超える多孔質シートを用いると、セルロースナノファイバーが多孔質シートの孔内に網目状の微細孔を均一に形成し難い。ここで、平均孔径とは、ASTM E1294‐89「ハーフドライ法」に従って計測した値である。
また、多孔質シートは、JIS P 8118 :1998「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に従って測定した厚さが、50μm以下であるものを用いる。より好ましくは、30μm以下である。50μmを超えると、得られた電池用セパレータのイオン透過性が低くなる場合がある。
<分散液調製工程>
本発明の電池用セパレータの製造方法においては、まず、セルロースナノファイバーが分散媒に分散したナノファイバーの分散液を調製する。分散液の調製は、セルロースナノファイバー分散液を希釈することで所望の濃度の分散液を得るか、又はセルロースナノファイバーを所望の濃度になるように分散媒に添加して分散液を得てもよい。本実施形態では、セルロースナノファイバー分散液を希釈する方法又はセルロースナノファイバーを分散媒に分散する方法に制限されないが、例えば、スクリュー型ミキサー、パドル型ミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサーなどの公知の分散機で分散液とすることができる。また、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波分散処理、ビーター、ディスク型レファイナー、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、グラインダーなどの強力な叩解能力のある装置を用いることで、より微細化されたナノファイバーの分散液を得ることができる。
本実施形態では、安全面、環境面及び設備面の観点から、分散媒が水であることが好ましい。ただし、必要に応じて、親水性の有機溶媒を水に加えた混合媒、又は、有機溶媒単独でも使用することができる。有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec‐ブタノール、tert‐ブタノール、2‐メトキシエタノール、2‐エトキシエタノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4‐ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイドである。
また、分散液は、ナノファイバーを分散液の全質量に対して、固形分濃度で0.001〜2.000質量%含有することが好ましい。より好ましくは0.010〜1.000質量%であり、特に好ましくは、0.03〜0.300質量%である。0.001質量%未満では、多孔質シートの孔内に網目状構造体が形成されない場合がある。2.000質量%を超えると、乾燥時にナノファイバーが積層されて、イオン透過性の乏しいフィルム状の形成物となる場合がある。
本実施形態では、分散液に、更に界面活性剤を含有させ、界面活性剤を前記分散液の全質量に対して、固形分濃度で0.0001〜1.0000質量%含有することが好ましい。より好ましくは0.0010〜0.1000質量%であり、特に好ましくは、0.0100〜0.0500質量%である。これによって、ナノファイバーの凝集抑制効果が得られ、乾燥時にセルロースナノファイバー同士の凝集を弱め、多孔質シートの孔内に網目状構造を比較的容易に維持させることが可能となる。0.0001質量%未満では、界面活性剤の効果が得られない場合がある。1.0000質量%を超えると、ナノファイバーの形状を維持できなくなり、多孔質シートの孔内に網目状構造体を形成できない場合がある。界面活性剤としては、例えば、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤、又は、両性界面活性剤を使用することができる。本実施形態では、界面活性剤が、カチオン系界面活性剤であることが好ましく、より好ましくは、アルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルアンモニウム塩である。このうちアルキルアンモニウム塩である臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムがさらに好ましい。
<付着工程>
分散液を多孔質シートに付着させる方法は、本実施形態では限定されず、例えば、含浸法、塗布法、噴霧法である。分散液の湿潤付着量は、多孔質シートの厚さ、材質及び平均細孔径に応じて適宜調整できるが、多孔質シートの単位面積あたり1〜200g/mとすることが好ましい。より好ましくは、10〜100g/mである。1g/m未満では、分散液が多孔質シート全体に行き渡らない場合がある。200g/mを超えると、分散液が過剰となり、イオン透過性に劣るセパレータとなる場合がある。
含浸法は、例えば、多孔質シートを分散液に完全に浸漬する方法、多孔質シートの表面だけを浸す方法がある。多孔質シートを分散液に完全に浸漬する方法は、多孔質シートの孔内の奥部まで分散液を効率的に、かつ、確実に浸透することができるため、より均一なナノファイバーの網目状構造体を形成できる点で優れている。また、多孔質シートを分散液に完全に浸漬したまま減圧すると、多孔質シート内のエアーが抜けやすくなるため、分散液を浸透させるにはより効果的である。なお、余分な分散液を多孔質シートの表面から取り除く工程を設けても良く、過剰に付着した分散液は、例えば、ロール脱水機などで絞り出したり、吸水フェルト、吸水紙などで除去したりすることが好ましい。多孔質シートの表面だけを浸す方法は、多孔質シートの厚み方向で、孔内の網目状構造体の密度差を設ける場合に有効である。
塗布法は、公知の塗布機で分散液を多孔質シート表面に塗布する方法である。公知の塗布機は、例えば、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、コンマコーター、ブレードコーター、カーテンコーターである。塗布法は、多孔質シートへの分散液の付着量の制御が容易な点で優れている。
噴霧法は、霧吹き、スプレーなどの公知の噴霧器を用いて分散液を多孔質シート表面に噴霧する方法である。噴霧法は、例えば、孔のうち、多孔質シートの表面近傍にだけナノファイバーの網目状構造体を形成する場合、網目状構造体の厚さを薄くしたい場合に有効である。
噴霧法、塗布法又含浸法の各種付着方法を採用させることによって、多孔質シートの表面層又は中層の少なくともいずれか一つに、セルロースナノファイバーを付着させることができる。具体的には、表面層への付着、中層への付着、又は、表面層及び中層への付着の各種形態がある。このうち、表面層及び中層への付着の形態が透気抵抗度を制御する観点から好ましい。ここで、表面層、中層とは、多孔質シートを厚さ方向に3等分し、上下の層を表面層、中央の層を中層と定義する。また、表面層への付着とは、例えば、多孔質シートが繊維シートの場合には、その表面層にのみセルロースナノファイバーが付着することである。なお、噴霧法、又は、塗布法を用いると、表面層にのみ分散液を付着させることが可能であり、表面層への付着の形態にすることができる。
<乾燥工程>
乾燥方法としては、熱、減圧などによる強制乾燥、大気中に放置することによる自然乾燥を選択することが好ましい。熱乾燥する場合の温度としては、多孔質シート及びナノファイバーが分解、変形などを受けない温度でなければならない。乾燥温度は、多孔質シート及びナノファイバーの種類によって異なるが、例えば、多孔質シートとしてポリオレフィン微多孔膜を用い、ナノファイバーとして特許文献1に記載のナノファイバーを用いた場合には、20〜100℃とすることが好ましい。20℃未満であると、乾燥に時間が掛かるため効率的でない。100℃を超えると、多孔質シートの軟化点を越えて変形してしまうおそれがある。本実施形態では、多孔質シートを用いることで、分散液の乾燥時にナノファイバーに対して生じる凝集力を分散し、更には多数の微小薄膜を多孔質シートの各孔内で形成してから乾燥することによって、微小薄膜中に分散していたナノファイバーは水が蒸発しても網目状構造を維持したまま残っているものと考えられる。
本実施形態に係る電池用セパレータの製造方法においては、前記多孔質シートの孔内にセルロースナノファイバーの網目を形成させることにより、電池用セパレータの透気抵抗度を、前記多孔質シートの透気抵抗度よりも5秒以上高くすることが好ましい。より好ましくは10秒以上とする。透気抵抗度の差が5秒未満であると、セルロースナノファイバーの網目が十分に形成されていない場合がある。ここで、透気抵抗度とは、JIS P 8117:2009「紙及び板紙−透気抵抗度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法」に従って測定した値をいう。透気抵抗度の差の上限は、例えば1000秒以下が好ましく、500秒以下がより好ましい。多孔質シートの透気抵抗度は、セルロースナノファイバーの網目を形成する前に測定することができる他、電池用セパレータについてセルロースナノファイバーの網目を除去することで、多孔質シートの透気抵抗度を求めることもできる。セルロースナノファイバーの網目を除去する方法としては、例えば、蒸留水で満たした容器に多孔質シートを浸して超音波洗浄する方法、さらには、ブフナー漏斗のろ紙として多孔質シートを用い、多孔質シート10cm当り蒸留水1Lを通し、次に多孔質シートの下面を上にして同じ操作を繰り返す方法、などがある。これらの操作によりセルロースナノファイバーの網目を除去すること可能であり、除去できたかどうかはSEMで観察することにより確認できる。
本実施形態に係る電池用セパレータは、多孔質シートの孔内に、その孔の内部でクモの巣状にセルロースナノファイバーが二次元の網目状構造体を形成している。そして、多孔質シートへのセルロースナノファイバーの付着量によっては、その二次元の網目状構造体が、多孔質シートの厚さ方向で、幾層にも積層されるように形成される。
本実施形態に係る電池用セパレータにおいては、多孔質シートの孔内に形成されたセルロースナノファイバーの網目の平均孔径が10〜200nmであることが好ましい。より好ましくは、20〜150nmである。10nm未満では、開孔部分の面積が小さくなり、イオン透過性に劣る場合がある。200nmを超えると、セルロースナノファイバー同士の絡み合いが少なくなり、網目構造が形成され難い。さらに、開孔部分が大きいとリチウム析出によるデンドライト、および金属不純物の溶解析出による正・負極板間の内部短絡防止が十分にできなくなる場合がある。セルロースナノファイバーの網目の平均孔径は、セルロースナノファイバー分散液を多孔質シートに付着させる際の付着量とナノファイバー濃度の両方で制御することができる。分散液の付着量を多くすること、または、ナノファイバー濃度を高くすることで網目の平均孔径を小さくすることができる。ここで、網目形状構造体の数平均孔径は、セパレータ表面のSEMを用いて得た電子顕微鏡画像から、網目状構造体部分を選び、網目状構造体の孔の面積を真円換算して算出した。この操作は任意の5箇所について実施し、各箇所20個以上の孔を選び、その平均値を求めた。
本実施形態に係る電池用セパレータにおいては、透気抵抗度が20〜1000秒であることが好ましい。より好ましくは、50〜500秒である。電池用セパレータの透気抵抗度は、用いる多孔質シートを選択や、多孔質シートへのセルロースナノファイバーの付着量によって制御することができる。電池用セパレータの透気抵抗度が20秒未満であると、リチウム析出によるデンドライト、および金属不純物の溶解析出による正・負極板間の内部短絡防止が十分にできなくなる場合がある。1000秒を超えると、セパレータのイオン透過性が低くなる場合がある。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。
<ナノファイバー分散液1の調製>
乾燥重量で2.00g相当分のNBKP(主に1000nmを超える繊維径の繊維から成るもの)と、0.025gのTEMPO(2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン‐1‐オキシラジカル)と、0.25gの臭化ナトリウムと、を水150mlに分散した後、13%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、パルプ1.00gに対して、次亜塩素酸ナトリウムの量が5.00mmolとなるように次亜塩素酸ナトリウムを加えて反応を開始した。反応中は、0.50mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10に保った。2時間反応した後、反応物をろ過し、十分水洗することで酸化セルローススラリーを得た。このとき、水を分散媒として0.15質量%の酸化セルローススラリーを調整した。この酸化セルローススラリー100mlを、バイオミキサー(BM−2、日本精機製作所社製)を用いて、10000回転/分で5分間解繊処理し、続いて超音波ホモジナイザー(型式US‐300E、チップ径26mm、日本精機製作所社製)で出力レベル75%にて4分間解繊処理を行った。更に遠心分離によって粗大繊維の除去を行った後、透明なセルロースナノファイバー分散液1を得た。このナノファイバー分散液1を、TEMを用いて倍率50000倍で観察した観察画像から解析した結果、数平均繊維直径は6nmであり、数平均繊維長は0.8μmであった。ナノファイバー分散液1中のセルロースナノファイバーの固形分濃度は、ロータリーエバポレーターで濃縮することや、水で希釈することで調整した。具体的な濃度は、各実施例において記載する。
<ナノファイバー分散液2の調製>
ナノファイバー分散液2として、セルロースナノファイバーがバクテリアセルロース(BC)であるものを用いた。ナタデココ(フジッコ社製、約1cm角)をカッターナイフで2mm角程度に細かく刻み、ナタデココ内に含まれるシロップを水に置換した。固形分濃度を約0.3%に調整し、このスラリー100mlをバイオミキサー(BM−2、日本精機製作所社製)を用いて、10000回転/分にて10分間解繊し、続いて超音波ホモジナイザー(型式US‐300E、チップ径26mm、日本精機製作所社製)で出力レベル75%にて4分間解繊処理を行った。更に80メッシュのフィルターにより凝集繊維の除去を行った後、セルロースナノファイバー分散液2を得た。得られたBCの水分散液を、TEMを用いて倍率50000倍で観察した観察画像から解析した結果、数平均繊維直径は、26nmであった。ナノファイバー分散液2中のセルロースナノファイバーの固形分濃度は、0.2%に調整した。
<不織布1の調製>
湿式不織布用主体ポリエステル繊維(テピルスTM04PN 帝人ファイバー製、繊度0.1dtex、繊維長5mm)55部、湿式不織布用バインダーポリエステル繊維(テピルスTK08PN 帝人ファイバー製、繊度0.2dtex、繊維長3mm)30部、ナイアガラビーターによりカナダ標準フリーネスで100ccまで叩解した針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)15部を混合し、ミキサーにて離解させて原料スラリーを得た。次に得られたスラリーを、手抄筒を用いて抄紙し、湿紙を110℃のシリンダードライヤーによって乾燥させつつ、バインダー繊維を接着させて目付が18g/mの湿式不織布を得た。次に、ロール温度230℃にて熱カレンダー処理を行い、厚さが25μmとなるよう線圧を調整した。得られた不織布1は、目付19g/m(湿式不織布の目付よりも熱収縮により上昇)、厚さ25μm、透気抵抗度24秒、平均孔径1.1μmであった。この不織布1を、セルロースナノファイバーを付着させるための多孔質シートとした。
<不織布2の調製>
湿式不織布用主体ポリエステル繊維(テピルスTM04PN 帝人ファイバー製、繊度0.1dtex、繊維長5mm)40部、湿式不織布用バインダーポリエステル繊維(テピルスTK08PN 帝人ファイバー製、繊度0.2dtex、繊維長3mm)30部、ナイアガラビーターによりカナダ標準フリーネスで100ccまで叩解した針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)30部を混合し、ミキサーにて離解させて原料スラリーを得た。次に得られたスラリーを、手抄筒を用いて抄紙し、湿紙を110℃のシリンダードライヤーによって乾燥させつつ、バインダー繊維を接着させて目付が18g/mの湿式不織布を得た。次に、ロール温度230℃にて熱カレンダー処理を行い、厚さが25μmとなるよう線圧を調整した。得られた不織布2は、目付18.5g/m(湿式不織布の目付よりも熱収縮により上昇)、厚さ25μm、透気抵抗度62秒、平均孔径0.5μmであった。この不織布2を、セルロースナノファイバーを付着させるための多孔質シートとした。
<不織布3の調製>
湿式不織布用主体ポリエステル繊維(テピルスTA04N 帝人ファイバー製、繊度0.6dtex、繊維長3mm)70部、湿式不織布用バインダーポリエステル繊維(テピルスTK08PN 帝人ファイバー製、繊度0.2dtex、繊維長3mm)30部を混合し、ミキサーにて離解させて原料スラリーを得た。次に得られたスラリーを、手抄筒を用いて抄紙し、湿紙を110℃のシリンダードライヤーによって乾燥させつつ、バインダー繊維を接着させて目付が18g/mの湿式不織布を得た。次に、ロール温度230℃にて熱カレンダー処理を行い、厚さが25μmとなるよう線圧を調整した。得られた不織布1は、目付19g/m(湿式不織布の目付よりも熱収縮により上昇)、厚さ25μm、透気抵抗度3秒、平均孔径4.5μmであった。この不織布3を、セルロースナノファイバーを付着させるための多孔質シートとした。
<不織布4の調製>
湿式不織布用主体ポリエステル繊維(テピルスTA04N 帝人ファイバー製、繊度0.6dtex、繊維長3mm)70部、湿式不織布用バインダーポリエステル繊維(テピルスTA07N 帝人ファイバー製、繊度1.2dtex、繊維長5mm)30部を混合し、ミキサーにて離解させて原料スラリーを得た。次に得られたスラリーを、手抄筒を用いて抄紙し、湿紙を110℃のシリンダードライヤーによって乾燥させつつ、バインダー繊維を接着させて目付が18g/mの湿式不織布を得た。次に、ロール温度230℃にて熱カレンダー処理を行い、厚さが25μmとなるよう線圧を調整した。得られた不織布1は、目付19g/m(湿式不織布の目付よりも熱収縮により上昇)、厚さ25μm、透気抵抗度1秒、平均孔径7.1μmであった。この不織布4を、セルロースナノファイバーを付着させるための多孔質シートとした。
(実施例1)
ナノファイバー分散液1を、ナノファイバーの固形分濃度が、分散液の全質量に対して0.02%となるよう希釈し、次いでカチオン性界面活性剤として臭化ドデシルトリメチルアンモニウム(和光純薬工業社製)をナノファイバーの質量に対して20%となるように添加し、ナノファイバーの分散液を得た。得られたナノファイバーの分散液に、多孔質シートである不織布1を浸漬した。浸漬後、ナノファイバーの分散液から多孔質シートを取り出し、多孔質シート表面に付着した余分な分散液を吸水紙で除いた。ナノファイバーの分散液に浸漬前後の多孔質シート質量の差分を付着量として算出したところ、ナノファイバーの分散液の付着量は25g/mであった。ナノファイバーの分散液が付着した多孔質シートを、乾燥温度90℃及び乾燥時間5分の乾燥条件で乾燥機を用いて乾燥して、電池用セパレータを得た。
(実施例2)
ナノファイバーの分散液中のナノファイバーの固形分濃度を0.10%、多孔質シートへのナノファイバーの分散液の付着量を15g/mとした以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
(実施例3)
ナノファイバーの分散液中のナノファイバーの固形分濃度を0.50%、多孔質シートへのナノファイバーの分散液の付着量を5g/mとした以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
(実施例4)
ナノファイバー分散液1をナノファイバー分散液2に変更し、ナノファイバーの分散液中のナノファイバーの固形分濃度を0.20%、多孔質シートへのナノファイバーの分散液の付着量を20g/mとした以外は実施例1と同様にしてセパレータを得た。
(実施例5)
不織布1を不織布2に変更した以外は実施例2と同様にして電池用セパレータを得た。
(実施例6)
不織布1を不織布3に変更し、多孔質シートへのナノファイバーの分散液の付着量を20g/mとした以外は実施例2と同様にして電池用セパレータを得た。
(実施例7)
不織布1をポリオレフィン微多孔膜に変更した以外は実施例2と同様にして電池用セパレータを得た。
(実施例8)
セルロースナノファイバー分散液1を100ml採り、さらに10分間超音波ホモジナイザー処理した(出力レベル75%)。次いでカチオン性界面活性剤として臭化ドデシルトリメチルアンモニウムをナノファイバーの質量に対して10%となるように添加し、この分散液をナノファイバーの固形分濃度が1.90%となるよう濃縮した。得られたナノファイバーの分散液を、多孔質シートである不織布1にスプレーを用いて塗工した。なお、ナノファイバーの付着の形態としては、表面層への付着であった。ナノファイバーの分散液塗工前後の多孔質シート質量の差分を付着量として算出したところ、ナノファイバーの分散液の付着量は2g/mであった。ナノファイバーの分散液が付着した多孔質シートを、乾燥温度90℃及び乾燥時間5分の乾燥条件で乾燥機を用いて乾燥して、電池用セパレータを得た。
(比較例1)
ナノファイバー分散液1に代えて、ナノファイバーとしてスラリー状のMFC(セリッシュKY‐100G、ダイセル化学工業社製)を用いた。ここで、MFCはミキサーで離解した後、遠心分離によって微細繊維を除いた沈殿物を用いた。電子顕微鏡を用いて倍率5000倍で観察した観察画像から解析した結果、ナノファイバーの数平均繊維径は、430nmであった。ナノファイバーの数平均繊維長は、20μmを超えるのが確認できたが、観察画像からは全長は確認できなかった。このMFCスラリーを用いた以外は実施例2と同様にして電池用セパレータを得た。
(比較例2)
実施例7で得られたナノファイバーの分散液をさらに濃縮して、ナノファイバーの固形分濃度が4.00%となるように調整した。しかし、ここで得られたナノファイバーの分散液は粘度が上がり過ぎて流動性に乏しく、多孔質シートに付着させることができなかった。すなわち、付着工程以降の工程を行うことができなかった。
(比較例3)
不織布1を不織布4に変更した以外は実施例2と同様にして電池用セパレータを得た。
得られた実施例及び比較例のセパレータについて、次に示す方法によって評価を行った。評価結果を表1に示す。
「多孔質シート平均孔径」
多孔質シート(不織布1〜4、ポリオレフィン微多孔膜)の平均孔径は、PMI社製パームポロメーターを用いて、ASTM E1294‐89「ハーフドライ法」に従い測定した。
「厚さ」
多孔質シート(不織布1〜4、ポリオレフィン微多孔膜)及び電池用セパレータの厚さを、JIS P 8118 :1998「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に従って測定した。
「透気抵抗度」
JIS P 8117 :2009「紙及び板紙−透気抵抗度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法」に従い、ガーレー式デンソメータ(G−B2C、東洋精機社製)を用いて測定した。多孔質シート(不織布1〜4、ポリオレフィン微多孔膜)の透気抵抗度(A)と、多孔質シートにセルロースナノファイバーを付着させた電池用セパレータの透気抵抗度(B)とをそれぞれ求め、さらに、(A)と(B)との透気抵抗度差を算出した。
「ナノファイバー網目構造の観察及び数平均孔径の測定」
得られた実施例のセパレータ及び比較例のシート及びセパレータを、SEM(SU8010、日立ハイテク社製)を用いて観察した。なお、観察前の導電性コーティングでは、被覆膜の厚さが2.5nm以下になるように調整し、孔径に与える影響が最小限になるよう考慮した。得られたSEM画像から、セルロースナノファイバーから構成された網目状構造体部分を選び、画像処理ソフトImageJにて解析した。解析では、網目状構造体の孔の部分の面積をピクセル数で求め、これを真円換算して直径を算出した。この操作は任意の5箇所について実施し、各箇所20個以上の孔を選び、全体の平均値を求めた。尚、直径にして5nm以下となる孔は、分解能の限界により不明瞭となるため、測定の対象外とした。
各実施例では、多孔質シートとして平均孔径が5μm以下、且つ厚さが50μm以下のものを用い、数平均繊維径が1〜50nmであるセルロースナノファイバーの分散液を付着させることで、透気抵抗度を制御し、目的とする電池用セパレータを得ることができた。また、多孔質シートの孔内にセルロースナノファイバーが2次元網目状に絡み合って数平均孔径が10〜200nmである微細孔を形成することで、透気抵抗度を上昇させていることも確認できた。このように孔径を制御することにより、正・負極板間の内部短絡防止と、イオン透過性を両立させることが期待できる。
一方、比較例1では、セルロースナノファイバーの数平均繊維径が大きいため、多孔質シートの孔内で2次元網目状の構造を形成させることができず、透気抵抗度の上昇が僅かとなり、透気抵抗度の制御ができなかった。また、セルロースナノファイバーが多孔質シートの表面に載ってしまい、厚さも上昇させてしまった。比較例2では、セルロースナノファイバー分散液の固形分濃度を高くしすぎたため、多孔質シートに容易に付着するような流動性が無くなってしまった。比較例3では、多孔質シートの平均孔径が大きすぎたため、多孔質シート孔内でのセルロースナノファイバーの網目形成が部分的であったため、透気抵抗度が殆ど上昇しなかった。
本発明に係るセパレータは、微細なセルロース繊維を用いながら、一般的な熱乾燥で孔径が制御でき、基材である多孔質シートの厚み、表面性などの物性を殆ど変えることなく透気抵抗度の制御が可能なセパレータを提供できる。

Claims (7)

  1. 数平均繊維径が1〜50nmのセルロースナノファイバーを分散媒に分散したナノファイバーの分散液を調製する分散液調製工程と、
    該分散液を平均孔径が5μm以下であり且つシートの厚さが50μm以下の多孔質シートに付着させ、前記分散液を前記多孔質シートの孔内まで浸透させる付着工程と、
    前記多孔質シートの表面上にある余分な分散液を取り除く工程と、
    該分散液が付着した多孔質シートを乾燥して前記分散媒を除去する乾燥工程と、
    を有することを特徴とする電池用セパレータの製造方法。
  2. 前記乾燥工程を経ることで、前記多孔質シートの孔内に前記セルロースナノファイバーの網目を形成し、かつ、前記電池用セパレータの透気抵抗度を、前記多孔質シートの透気抵抗度よりも5秒以上高くすることを特徴とする請求項1に記載の電池用セパレータの製造方法。
  3. 前記分散媒が水であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電池用セパレータの製造方法。
  4. 前記分散液が、前記セルロースナノファイバーを前記分散液の全質量に対して、固形分濃度で0.001〜2.000質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の電池用セパレータの製造方法。
  5. 前記分散液は、界面活性剤を前記分散液の全質量に対して固形分濃度で0.0001〜1.0000質量%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の電池用セパレータの製造方法。
  6. 平均孔径が5μm以下であり且つシートの厚さが50μm以下の多孔質シートの表面層又は中層の少なくともいずれか一つに、数平均繊維径が1〜50nmのセルロースナノファイバーが付着しており、該セルロースナノファイバーが網目を形成しており、かつ、前記多孔質シートの表面上に前記セルロースナノファイバーの繊維層が形成されていないことを特徴とする電池用セパレータ。
  7. 前記多孔質シートの孔内に形成されたセルロースナノファイバーの網目の平均孔径が10〜200nmであることを特徴とする請求項6記載の電池用セパレータ。
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