JP5839510B2 - 波動歯車装置を備えたアクチュエータの位置決め制御システム - Google Patents
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Description
図1は、本発明の制御対象である、波動歯車装置を減速機として含むアクチュエータの概略図である。表1にはアクチュエータの主要諸元を示してある。
本発明では、厳密な線形化手法の適用を考慮して、次のようにしてアクチュエータ1のモデル化を行う。
Jm:モータ軸慣性モーメント
Dm:モータ軸粘性摩擦係数
Jl:負荷軸慣性モーメント
Dl:負荷軸粘性摩擦係数
τg(θtw):減速機の非線形ばね特性
Dg:減速機の粘性摩擦係数
N:減速比
Kt:モータトルク定数
θm:モータ軸位置
ωm:モータ速度
θl:負荷軸位置
ωl:負荷速度
θtw:ねじれ角
θSync(θm):角度伝達誤差の相対回転同期成分
τm(ωm):モータ軸非線形摩擦トルク
τl(ωl):負荷軸非線形摩擦トルク
i:モータトルク電流指令値
e−Ls:演算時間や通信時間による電流指令値から実電流までのむだ時間要素
非線形ばね特性を測定するために、モータ軸をサーボロックした状態で負荷軸にアームと重りを取り付けて重力による負荷トルクを加え、負荷トルクとモータ・負荷軸間のねじれ角度を測定した。その際、負荷トルクを徐々に大きくした後、徐々に逆方向の負荷トルクを与え、さらに無負荷状態とするまでを、一連の非線形ばね特性測定とした。その静的な非線形ばね特性を、図3の実線(Experiment)で示す。この図から、ばね特性がヒステリシスを含む非線形な特性を示すことが明確である。
一般に、角度伝達誤差θTEは、モータ軸位置θm、負荷軸位置θl、減速比Nを用いて次の(2)式で定義される。
ここで、k:モータ回転に対する高調波次数
Ak:各次数成分の振幅
φk:各次数成分の位相
非線形摩擦は、長ストロークの位置決め動作で支配的な速度に依存する静的摩擦と、微小ストロークで支配的な弾性を伴う変位に依存する動的摩擦に大別される。本発明では、モータ・負荷軸共に長ストロークと考えられる位置決めを対象とするため、速度に依存する静的摩擦をモデル化する。一定モータ速度中にモータトルクを測定し、モータトルクを摩擦トルクと見做した一定速度駆動試験による実機摩擦特性を、図5の実線(Experiment)で示す。図から、粘性摩擦と共に約0.4Nmのクーロン摩擦が存在しており、本波動歯車装置の最大負荷トルク3.3Nmと比較して、その影響は無視できない。そこで、速度の正負が切り替わる領域で滑らかに接続するようにtanh関数を用いて非線形ばね特性に対するモデル化と同様に、微分可能な関数としてモータ軸摩擦τm(ωm)、負荷摩擦τl(ωl)を次の(4)式、(5)式でそれぞれ表現する。
Bm:速度が零付近における摩擦力の正負の切り替え速度
Bl:速度が零付近における摩擦力の正負の切り替え速度
図6は厳密な線形化手法による入出力線形化の概念ブロック図であり、非線形要素を含む制御対象「Nonlinear Plant」に対して、その状態量xを引数とする線形化フィードバックα(x)と入力変数β(x)を付加することで、拡大系の入力νから出力yまでの特性をdny/dtnとするものである。
以上のように構築した厳密な線形化手法に基づく非線形補償を行う位置決め制御システムを実機位置決め制御系に実装し、実験によりその補償効果を検証した。
制御対象として取り扱う非線形要素のうち、角度伝達誤差相対回転同期成分は負荷位置の定常偏差や振動励起の原因となるため、実機検証の位置決め送り角度設定に際しては、波動歯車装置の歯車かみ合い条件を考慮する必要がある。そこで、静的な負荷位置定常偏差のばらつき評価に対しては、整定時の相対回転同期成分が位置決め毎に異なる値となるように、歯車のかみ合わせが変化する送り角度で評価する。
静的補償特性
本発明の制御系による静的補償精度を評価すべく、送り角度43.56Load degの連続一方向位置決め動作(240回、送りインターバル1.25s)を行った。図8の上段にモータ位置、中段に負荷位置、下段に負荷加速度の、それぞれ12回分の応答を抽出して重ね描きしたものを示す。図中、左列が従来制御系、右列が本発明の制御系の応答であり、太線は240回の応答の平均値、水平一点鎖線は目標位置を示す。さらに、モータ位置応答の水平破線は、目標整定範囲と設定したモータ軸+−10Motor puls=32.4Load arc−secを示す。
動的補償特性を評価すべく、送り角度43.2Load degで、他の条件は静的補償精度の評価の場合と同様として実験を行った結果を図9に示し、静的補償特性と同じ指標の定評評価を表5に示す。ここで、図の配置および線種は図8と同等である。
Claims (3)
- モータの回転を波動歯車装置を介して減速して負荷軸に伝達するアクチュエータを駆動制御して、前記負荷軸の位置決め制御を行う位置決めシステムにおいて、
モータ軸位置θmをフィードバックして前記負荷軸の位置決め制御を行うセミクローズドループ型のフィードバック制御器と、
前記アクチュエータの非線形要素である、非線形ばね特性、相対回転同期成分および非線形摩擦のうち、少なくとも、前記相対回転同期成分あるいは前記非線形摩擦に起因する前記負荷軸の位置決め誤差を補償するためのフィードフォワード型線形化補償器とを有し、
補償対象の前記非線形要素は、相対回転同期成分のみの場合、非線形摩擦のみの場合、前記相対回転同期成分および前記非線形摩擦を含む場合、並びに、非線形ばね特性、前記相対回転同期成分および前記非線形摩擦を含む場合のうちのいずれかであり、
前記フィードフォワード型線形化補償器は、厳密な線形化手法に基づくフィードバック型線形化補償器に、制御対象の前記アクチュエータを表す非線形プラントモデルを組み込むことにより、当該フィードバック型線形化補償器をフィードフォワード型に等価変換したものであり、
前記非線形プラントモデルは、状態量をx=[θl,ωl,θm,ωm]Tとして、(6)式で示す非線形状態方程式で規定されるものであり、
ここで、
Jm:モータ軸慣性モーメント
Dm:モータ軸粘性摩擦係数
Jl:負荷軸慣性モーメント
Dl:負荷軸粘性摩擦係数
τg(θtw):減速機の非線形ばね特性
Dg:減速機の粘性摩擦係数
N:減速比
Kt:モータトルク定数
θm:モータ軸位置
ωm:モータ速度
θl:負荷軸位置
ωl:負荷速度
θtw:ねじれ角
ω tw :ねじれ速度
θSync(θm):角度伝達誤差の相対回転同期成分
τm(ωm):モータ軸非線形摩擦トルク
τl(ωl):負荷軸非線形摩擦トルク
i:モータトルク電流指令値
前記フィードバック型線形化補償器は、前記非線形プラントモデルに対して、その状態量xを引数とする線形化フィードバックα(x)と入力変数β(x)を付加することで、拡大系の入力νから出力yまでの特性をd3y/dt3=νとしたものであり、前記線形化フィードバックα(x)は(9)式で規定され、前記入力変数β(x)は(10)式で規定されており、
前記フィードフォワード型線形化補償器は、負荷加加速度指令(ジャーク指令)jrefを前記入力νとし、前記非線形プラントモデルに基づき計算した状態量推定値x*を用いて、前記出力yであるフィードフォワード電流指令i* refを計算すると共に、前記フィードバック制御器への入力となるフィードフォワードモータ位置指令θ* mを計算するものであり、
前記非線形ばね特性は、(1)式により規定される、前記波動歯車装置の負荷トルクに対する非線形ばね特性であり、前記アクチュエータに負荷トルクを加えて負荷トルクとモータ・負荷軸間のねじれ角度の関係を測定して得られる実機非線形ばね特性を再現できるように、(1)式の各次数の係数Kg1、Kg2、Kg3が設定されており、
前記相対回転同期成分は、前記波動歯車装置の角度伝達誤差のうち、モータ軸の回転に同期して発生するモータ軸同期成分θTEMを相対回転同期成分として(3)式により規定される角度伝達誤差成分であり、前記アクチュエータの微小角度送り動作整定時の角度伝達誤差を負荷軸1回転分測定し、モータ位置に対する実機相対回転同期成分をフーリエ変換したスペクトル解析を行い、これに基づき、実機相対回転同期成分を再現できるように、(3)式におけるモータ回転の整数倍高調波成分の振幅Akおよび位相φkが設定されており、
前記非線形摩擦は、前記波動歯車装置の非線形摩擦のうち、速度に依存する静的摩擦であるモータ軸摩擦τm(ωm)および負荷軸摩擦τl(ωl)を、それぞれ(4)式および(5)式で規定したものであり、一定モータ速度中にモータトルクを測定し、モータトルクを摩擦トルクと見做した一定速度駆動試験によって得られる実機摩擦特性を再現できるように、(4)式、(5)式の各パラメータCm、Cl、Bm、Blが設定されていることを特徴とするアクチュエータの位置決め制御システム。
ここで、Cm:モータ軸の非線形摩擦力
Bm:速度が零付近における摩擦力の正負の切り替え速度
ここで、Cl:負荷軸の非線形摩擦力
Bl:速度が零付近における摩擦力の正負の切り替え速度 - 請求項1において、
前記フィードフォワード型線形化補償器は、前記非線形ばね特性、前記相対回転同期成分および前記非線形摩擦に起因する前記負荷軸の位置決め誤差を補償することを特徴とするアクチュエータの位置決め制御システム。 - 請求項1または2において、
前記フィードフォワード型線形化補償器は、スミス法により、前記フィードフォワードモータ位置指令θ* mを、予め設定したむだ時間L分だけ遅らせて、前記フィードバック制御器に供給することを特徴とするアクチュエータの位置決め制御システム。
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