JP5833257B2 - ケイ素含有アルミニウム合金鋳塊の製造方法 - Google Patents

ケイ素含有アルミニウム合金鋳塊の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、不純物のリンの含有の少ないケイ素含有アルミニウム合金鋳塊を製造する製造方法に関する。
ケイ素含有アルミニウム合金の連続鋳造棒等の製造原料として用いられるケイ素塊はリンを含有している。このようなケイ素塊中の不純物リンは、ケイ素塊を製造する過程において、原材料の硅石や、還元に用いる炭素から持ち込まれていると考えられる。
このようなリン含有ケイ素塊を原料の一部に用いてアルミニウム合金溶湯を調整してインゴットを鋳造し、このインゴットを圧延等により加工した場合には、インゴットに含有されているリンにより孔欠陥等を生じるために、所望の強度が得られないし、例えば化学処理を行った場合に均一なエッチングがなされず、製品の品質の低下を来す。
このようなアルミニウム合金中のリンを除去する方法としては、次のような技術が提案されている。特許文献1には、リンを5ppm以上含有するアルミニウム合金溶湯を、溶湯温度750℃以下で濾過処理することによりリンを除去することが記載されている。
また、特許文献2には、不純物としてPを含むAlまたはAl合金溶湯中に、MgOと共に酸素を添加し、不純物Pの酸化物および/またはPとMgとの複合酸化物を形成させてこれを分離することによって、不純物のリンを除去することが記載されている。
特許文献3には、溶湯温度650〜850℃でPを含有するアルミニウム溶湯にMgを添加してPとMgとの化合物を形成するとともに、塩素ガス又は塩化物を吹き込みMgCl2を形成し、前記MgCl2にPとMgとの化合物を吸収させつつ浮上させて溶湯中のPを除去することが記載されている。また、特許文献3には、溶湯温度650〜850℃でPを含有するアルミニウム溶湯にCaを添加してPとCaとの化合物を形成するとともに、塩素ガス又は塩化物を吹き込みCaCl2を形成し、前記CaCl2にPとMgとの化合物を吸収させつつ浮上させて溶湯中のPを除去することも記載されている。
特開平4−276031号公報 特開平7−207366号公報 特許第3524519号公報
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載の技術では、それぞれ次のような問題があった。即ち、特許文献1の技術では、微細なリン化アルミニウム粒子も混在しているので、この微細粒子が濾過フィルターを通過して除去できないリンが存在するという問題や、前記微細粒子が濾過フィルターに目詰まりを発生させるという問題があった。
また、特許文献2の技術では、溶湯中に酸素を吹き込むので、溶湯の酸化ロス(アルミニウムロス)を生じるという問題があった。
また、特許文献3の技術では、溶湯中に塩素ガス又は塩化物を多量に吹き込むので、環境負荷が大きいものとなるし、リンの除去率も十分なものではなかった。
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、鋳造を停止しなければならないようなフィルターの目詰まりを防止することができ、アルミニウムロスを抑制できると共に、得られるケイ素含有アルミニウム合金鋳塊における不純物のリンの含有率を十分に低減することのできる、ケイ素含有アルミニウム合金鋳塊の製造方法を提供することを目的とする。
ケイ素塊としてのケイ素インゴット等には、例えば硅石を炭素で還元してインゴットに形成する段階において、リンがリン化合物等として存在するが、この不純物のリンは、ケイ素インゴット等の最終凝固部に、特に最終凝固部の表面に高濃度に分布していることを本発明者は突きとめ、このような新規な知見をもとに鋭意研究した結果、ケイ素塊を溶解炉に投入する前に水洗処理しておくことにより、得られるケイ素含有アルミニウム合金鋳塊における不純物のリンの含有率を低減できることを見出すに至り、本発明を完成したものである。即ち、前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]不純物としてリンを含有したケイ素塊に水洗処理を行う水洗工程と、
アルミニウム原料及び前記水洗工程を経て得られたケイ素塊を少なくとも含む合金原料を溶解炉に投入して溶融させて溶湯を得る溶湯形成工程と、
前記得られた溶湯を鋳造加工することによって、ケイ素を含有するアルミニウム合金の鋳塊を得る鋳造工程と、を含むことを特徴とするケイ素含有アルミニウム合金鋳塊の製造方法。
[2]前記水洗工程において、不純物としてリンを含有したケイ素インゴットの表面を水で洗浄する水洗処理を行った後、該ケイ素インゴットを解砕して複数個の解砕物を得、
前記解砕物を、前記溶湯形成工程で溶解炉に投入する前項1に記載のケイ素含有アルミニウム合金鋳塊の製造方法。
[3]前記水洗工程において、不純物としてリンを含有したケイ素インゴットを解砕して複数個の解砕物を得た後、前記解砕物の表面を水で洗浄する水洗処理を行い、
前記水洗処理後の解砕物を、前記溶湯形成工程で溶解炉に投入する前項1に記載のケイ素含有アルミニウム合金鋳塊の製造方法。
[4]前記水洗処理に用いる水の温度が5℃〜90℃である前項1〜3のいずれか1項に記載のケイ素含有アルミニウム合金鋳塊の製造方法。
[5]アルミニウム原料及び水洗されたケイ素塊を少なくとも含む合金原料を溶解炉に投入して溶融させて溶湯を得る溶湯形成工程と、
前記得られた溶湯を鋳造加工することによって、ケイ素を含有するアルミニウム合金の鋳塊を得る鋳造工程と、を含むことを特徴とするケイ素含有アルミニウム合金鋳塊の製造方法。
[6]前記鋳造加工で得られたケイ素含有アルミニウム合金鋳塊におけるリン含有率が5ppm以下である前項1〜5のいずれか1項に記載のケイ素含有アルミニウム合金鋳塊の製造方法。
[1]の発明では、ケイ素含有アルミニウム合金鋳塊の製造に用いられる原料のケイ素塊として、少なくともその一部に、溶解炉に投入する前に水洗処理が施されたケイ素塊を用いるから、ケイ素塊の表面に凝集していることの多いリン(リン化合物を含む)を十分に洗浄除去することができて、不純物のリンの含有率を十分に低減したケイ素含有アルミニウム合金鋳塊を製造できる。ケイ素含有アルミニウム合金鋳塊におけるリン含有率を5ppm以下に抑制することが可能となる。
アルミニウム合金溶湯中に存在しているリンを分離除去する手法である従来技術と比較して、リンを十分に除去できるし、水による洗浄であるからリンの除去操作も容易であって生産性も向上できる。
また、溶解炉に投入する前の段階で(アルミニウム合金溶湯になる前の段階で)のケイ素塊に対する水洗処理でリンを洗浄除去する手法であるので、アルミニウムロスを十分に抑制することができる。
更に、鋳造を停止しなければならないようなフィルターの目詰まりも防止できるので、生産性をより向上させることができる。
[2]の発明では、ケイ素インゴットの状態で水洗処理が行われるので、不純物のリンの含有率を十分に低減したケイ素含有アルミニウム合金鋳塊を製造できる。
[3]の発明では、解砕して得られた解砕物の状態で水洗処理が行われるので、不純物のリンの含有率をより一層低減したケイ素含有アルミニウム合金鋳塊を製造できる。
[4]の発明では、水洗処理に用いる水の温度が5℃〜90℃であるから、水洗によるリンの溶解除去性をより向上させることができる。
[5]の発明では、ケイ素含有アルミニウム合金鋳塊の製造に用いられる原料のケイ素塊として、少なくともその一部に、既に水洗がなされたケイ素塊を用いるから、不純物のリンの含有率を十分に低減したケイ素含有アルミニウム合金鋳塊を製造できる。ケイ素含有アルミニウム合金鋳塊におけるリン含有率を5ppm以下に抑制することが可能となる。また、アルミニウムロスを十分に抑制できると共に、鋳造を停止しなければならないようなフィルターの目詰まりも防止できて生産性を向上させることができる。
[6]の発明では、リン含有率が5ppm以下のケイ素含有アルミニウム合金鋳塊を製造できる。
本発明に係る製造方法の第1実施形態の工程の一部を示す模式図である。 本発明に係る製造方法の第2実施形態の工程の一部を示す模式図である。 本発明に係る製造方法の第3実施形態の工程の一部を示す模式図である。 解砕物の一例を示す解砕物外観写真である。
本発明に係るケイ素含有アルミニウム合金鋳塊の製造方法の一例について説明する。本発明の製造方法は、水洗工程と、溶湯形成工程と、鋳造工程と、を含む。
前記水洗工程において、原料として用いるケイ素塊(不純物としてリンを含有したケイ素塊)を水洗処理する。
ケイ素塊としてのケイ素インゴット等には、例えば硅石を炭素で還元してインゴットに形成する段階において、リンがリン化合物等として存在するが、前述したとおり、この不純物のリンは、ケイ素インゴットの最終凝固部に、特に最終凝固部の表面に高濃度に分布していることを本発明者は突きとめた。前記最終凝固部とは、溶融したケイ素を鋳型10に流し込むと、溶融ケイ素は、冷却されて、鋳型の壁面の近傍から凝固していき、最終的に鋳型10上部の開口面にある溶融ケイ素の上面部が最後に凝固するが、この最後に凝固する凝固部を意味する。たとえば、鋳型内の溶融ケイ素の体積の95%以上が凝固した後において、残された溶融ケイ素が最終的に凝固した部分を「最終凝固部」(上面凝固部)と定義できる。
前記水洗工程において、例えば、ケイ素インゴット11の少なくとも最終凝固部の表面(インゴット11の上面)を水13で洗浄する(図1参照)。前記洗浄を経たケイ素インゴット11を乾燥させた後、ケイ素インゴット11を解砕して(砕いて)複数個の解砕物12を得、これら解砕物12を次工程で溶解炉に投入する。
或いは、前記水洗工程において、ケイ素インゴット11を解砕して複数個の解砕物12を得、これら解砕物12の表面を水13で洗浄する水洗処理を行う(図2、3参照)。前記洗浄を経たケイ素解砕物12の付着水を、乾燥や拭き取り等により除去した後、これら複数個の解砕物12を次工程で溶解炉に投入する。
前記解砕物の大きさは、長径の平均値で30cm以下とする(粉末状も含む)のが好ましい。中でも、前記解砕物の大きさは、長径の平均値で1cm〜30cmの範囲とするのが好ましい。なお、この場合、解砕時に生じた粉末状のものも、のちの溶湯形成工程において前記1cm〜30cmの解砕物と一緒に、溶解炉に投入してもよい。
前記水洗処理とは、前記最終凝固部の表面の少なくとも一部が水で洗浄されればよく、前記最終凝固部の表面において水で洗浄されない部分があってもよい。
前記水洗処理は、ケイ素インゴットや解砕物等に水13を噴霧して行ってもよいし(図1、2参照)、ケイ素インゴットや解砕物等を水13に浸漬して行ってもよく(図3参照)、その手法は特に限定されない。
前記ケイ素インゴットに水を噴霧して水洗処理する場合には、ケイ素インゴットをその最終凝固部の面を上側に向けて配置した状態で上方側から水を噴霧するのが好ましい。また、解砕物に水を噴霧して水洗処理する場合には、上方側からの噴霧に加えて、横方向(水平方向)からの噴霧も行うのが好ましい。
前記水洗処理を行う際には、ケイ素インゴット又は解砕物100質量部当たり、100質量部〜1000質量部の水(浸漬のための水又は噴霧水)を使用して水洗するのが好ましい。また、水洗時間は、10分間〜30分間に設定するのが好ましい。
前記水洗処理を行う際の水の温度は5℃〜90℃であるのが好ましい。5℃〜90℃の水を用いることにより、水洗によるリンの溶解除去性をより向上させることができる。なお、後の工程でケイ素塊を搬送、移動させることを伴う等の場合には、水の温度は40℃〜60℃であるのがより好ましい。40℃〜60℃とすることで、作業の安全性を向上させることができる。
上記のような水洗処理を行うことにより、ケイ素塊(ケイ素インゴット等)の表面に凝集していることの多いリン(リン化合物を含む)を十分に洗浄除去することができる。
前記溶湯形成工程では、アルミニウム原料及び前記水洗工程を経て得られたケイ素塊を少なくとも含む合金原料を溶解炉に投入して溶融させて溶湯を得る。前記溶融のための溶湯温度は、通常、770℃〜870℃の範囲である。
前記アルミニウム原料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム地金等が挙げられる。
前記「水洗工程を経て得られたケイ素塊」としては、前記水洗工程を経たケイ素インゴット、前記水洗工程を経たケイ素解砕物等が挙げられる。
前記2つの原料以外に、必要に応じて、他の金属材料(銅、マグネシウム等)を溶解炉に投入してもよい。また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、前記「水洗工程を経て得られたケイ素塊」と共に水洗処理を行っていないケイ素塊を溶解炉に投入することは目的とする合金仕様によっては排除しないが、このような水洗処理を行っていないケイ素塊は、不純物リン含有率低減効果を十分に得る目的の合金仕様においては、極力投入しない方が望ましいことは言うまでもない。
前記鋳造工程では、前記溶湯形成工程で得られた溶湯を鋳造加工することによって、ケイ素を含有するアルミニウム合金の鋳塊(ケイ素含有アルミニウム合金鋳塊)を得る。前記鋳造により、ケイ素含有アルミニウム合金インゴットに加工してもよいし、ケイ素含有アルミニウム合金の連続鋳造棒に加工してもよく、鋳造加工して得られる鋳塊の形状は特に限定されない。
本発明の製造方法によれば、リン含有率が5ppm以下(0ppmを含む)のケイ素含有アルミニウム合金鋳塊の製造が可能となる(後述する実施例1、2参照)。
前記鋳造加工の手法としては、特に限定されるものではないが、例えば、半連続鋳造法、水平連続鋳造法、ストリップ鋳造法、重力鋳造法等が挙げられるが、いかなる鋳造方法も使用できる。
本発明の製造方法は、ケイ素含有アルミニウム合金鋳塊(ケイ素含有アルミニウム合金鋳造品)を製造するものであり、Al、Si以外の他の含有成分に特に制限はないが、アルミニウム合金組成としては、2000系合金、3000系合金、4000系合金、5000系合金、6000系合金とするのが好適である。特にSiを多く配合する合金系、例えば4000系合金とする場合の効果(本発明の効果)が大きく、好ましい。
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
<実施例1>
硅石を還元処理することにより得られたケイ素塊(リン含有率230ppm)を加熱溶融させたものを鋳型10に流し込んで自然冷却させて直方体形状のケイ素インゴット11を得た。この自然冷却により、溶融ケイ素の凝固は、鋳型外周枠部の近傍から進行し上側露出面で凝固が完了した。図1に示すようにケイ素インゴット11を鋳型10内に留めた状態で該インゴット11の上面(最終凝固部)に20℃の水13を30分間噴霧する水洗処理を行った。
次いで、鋳型10から直方体形状のケイ素インゴット11を取り出し、乾燥により付着水を除去した後、このケイ素インゴットを解砕して多数個の解砕物12を得、これら解砕物12を溶解炉に投入し、さらにアルミニウム含有率が99.7質量%のアルミニウム地金、銅含有率が99.9質量%の銅地金、マグネシウム含有率が99.9質量%のマグネシウム地金を溶解炉に投入して、850℃に加熱することによってアルミニウム合金溶湯を調製した。前記アルミニウム合金溶湯におけるケイ素含有率が11質量%、銅含有率が4質量%、マグネシウム含有率が0.5質量%、アルミニウム含有率が84.5質量%になるように前記各材料を投入した。前記解砕物の大きさは、長径の平均値が10cmである。
前記アルミニウム合金溶湯を鋳造加工することによって、ケイ素含有アルミニウム合金インゴット(ケイ素含有アルミニウム合金鋳塊)を得た。
<実施例2>
硅石を還元処理することにより得られたケイ素塊(リン含有率は実施例1で用いたケイ素塊のリン含有率と同一)を加熱溶融させたものを鋳型10に流し込んで自然冷却させて直方体形状のケイ素インゴット11を得た。この自然冷却により、溶融ケイ素の凝固は、鋳型外周枠部の近傍から進行し上側露出面で凝固が完了した。
次いで、図3に示すように、鋳型10から直方体形状のケイ素インゴット11を取り出し、このケイ素インゴットを解砕して多数個の解砕物12を得た。しかる後、これら多数個の解砕物12を90℃の水13に10分間浸漬する水洗処理を行った。次いで、取り出した解砕物12から乾燥により付着水を除去した後、これら解砕物12を溶解炉に投入し、さらにアルミニウム含有率が99.7質量%のアルミニウム地金、銅含有率が99.9質量%の銅地金、マグネシウム含有率が99.9質量%のマグネシウム地金を溶解炉に投入して、850℃に加熱することによってアルミニウム合金溶湯を調製した。前記アルミニウム合金溶湯におけるケイ素含有率が11質量%、銅含有率が4質量%、マグネシウム含有率が0.5質量%、アルミニウム含有率が84.5質量%になるように前記各材料を投入した。前記解砕物の大きさは、長径の平均値が15cmである。
前記アルミニウム合金溶湯を鋳造加工することによって、ケイ素含有アルミニウム合金インゴット(ケイ素含有アルミニウム合金鋳塊)を得た。
<比較例1>
硅石を還元処理することにより得られたケイ素塊(リン含有率は実施例1で用いたケイ素塊のリン含有率と同一)を加熱溶融させたものを鋳型に流し込んで自然冷却させた。この自然冷却により、溶融ケイ素の凝固は、鋳型外周枠部の近傍から進行し上側露出面で凝固が完了した。
次いで、鋳型から直方体形状のケイ素インゴットを取り出し、このケイ素インゴットを解砕して得た多数個の解砕物を溶解炉に投入し、さらにアルミニウム含有率が99.7質量%のアルミニウム地金、銅含有率が99.9質量%の銅地金、マグネシウム含有率が99.9質量%のマグネシウム地金を溶解炉に投入して、850℃に加熱することによってアルミニウム合金溶湯を調製した。前記アルミニウム合金溶湯におけるケイ素含有率が11質量%、銅含有率が4質量%、マグネシウム含有率が0.5質量%、アルミニウム含有率が84.5質量%になるように前記各材料を投入した。前記解砕物の大きさは、長径の平均値が10cmである。
前記アルミニウム合金溶湯を鋳造加工することによって、ケイ素含有アルミニウム合金インゴット(ケイ素含有アルミニウム合金鋳塊)を得た。
Figure 0005833257
上記のようにして得られた各ケイ素含有アルミニウム合金鋳塊について下記測定法に基づいてリンの含有率を測定した。測定結果を表1に示す。
<リン含有率の測定方法>
ケイ素含有アルミニウム合金鋳塊におけるリンの定量分析は、発光分析装置(島津製作所製「PDA 5500II」)を用いて行った。
表から明らかなように、本発明の製造方法で製造された実施例1、2のケイ素含有アルミニウム合金鋳塊は、リン含有率が十分に低く抑制されていた。
これに対し、本発明の製造方法を用いずに製造された比較例1のケイ素含有アルミニウム合金鋳塊は、リン含有率が25ppmであり、リン含有率が高かった。
本発明の製造方法で製造されたケイ素含有アルミニウム合金鋳塊は、不純物のリンの含有率が低く抑制されているので、例えば、
1)不純物のリンの含有率が高いものであると外部応力が加わった際にリンの凝集部が割れの起点になる恐れのある製品、部品(具体的には、例えば、自動車鋳物部品など)
2)化学エッチング等の化学反応を伴う工程を経て製造される素材及び外部応力を加えて加工して(圧延、押出、鍛造等)得る製品、部品(具体的には、例えば、電解コンデンサー用箔、板素材、自動車部品など)
として好適に用いられるが、特にこれら例示の用途に限定されるものではない。
本出願は、2012年12月10日付で出願された日本国特許出願特願2012−269082号の優先権主張を伴うものであり、その開示内容は、そのまま本願の一部を構成するものである。
ここで用いられた用語及び説明は、本発明に係る実施形態を説明するために用いられたものであって、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、請求の範囲内であれば、その精神を逸脱するものでない限りいかなる設計的変更をも許容するものである。
11…ケイ素インゴット(ケイ素塊)
12…解砕物(ケイ素塊)
13…水

Claims (5)

  1. 不純物としてリンを含有したケイ素塊に水洗処理を行う水洗工程と、
    アルミニウム原料及び前記水洗工程を経て得られたケイ素塊を少なくとも含む合金原料を溶解炉に投入して溶融させて溶湯を得る溶湯形成工程と、
    前記得られた溶湯を鋳造加工することによって、ケイ素を含有するアルミニウム合金の鋳塊を得る鋳造工程と、を含み、
    前記鋳造加工で得られたケイ素含有アルミニウム合金鋳塊におけるリン含有率が5ppm以下であることを特徴とするケイ素含有アルミニウム合金鋳塊の製造方法。
  2. 前記水洗工程において、不純物としてリンを含有したケイ素インゴットの表面を水で洗浄する水洗処理を行った後、該ケイ素インゴットを解砕して複数個の解砕物を得、
    前記解砕物を、前記溶湯形成工程で溶解炉に投入する請求項1に記載のケイ素含有アルミニウム合金鋳塊の製造方法。
  3. 前記水洗工程において、不純物としてリンを含有したケイ素インゴットを解砕して複数個の解砕物を得た後、前記解砕物の表面を水で洗浄する水洗処理を行い、
    前記水洗処理後の解砕物を、前記溶湯形成工程で溶解炉に投入する請求項1に記載のケイ素含有アルミニウム合金鋳塊の製造方法。
  4. 前記水洗処理に用いる水の温度が5℃〜90℃である請求項1〜3のいずれか1項に記載のケイ素含有アルミニウム合金鋳塊の製造方法。
  5. アルミニウム原料及び水洗されたケイ素塊を少なくとも含む合金原料を溶解炉に投入して溶融させて溶湯を得る溶湯形成工程と、
    前記得られた溶湯を鋳造加工することによって、ケイ素を含有するアルミニウム合金の鋳塊を得る鋳造工程と、を含み、
    前記鋳造加工で得られたケイ素含有アルミニウム合金鋳塊におけるリン含有率が5ppm以下であることを特徴とするケイ素含有アルミニウム合金鋳塊の製造方法。
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