JP2008255372A - アルミニウム合金厚板の製造方法およびアルミニウム合金厚板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Mgを所定量含有し、さらに、Si、Fe、Cu、Mn、Cr、Zn、Ti、Zrのうち少なくとも1種以上を所定量含有し、かつ、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を溶解する溶解工程(S1)と、溶解されたアルミニウム合金から水素ガスを除去する脱水素ガス工程(S2)と、水素ガスを除去したアルミニウム合金から介在物を除去するろ過工程(S3)と、介在物を除去したアルミニウム合金を鋳造して鋳塊を製造する鋳造工程(S4)と、鋳塊を熱処理する熱処理工程(S5)と、熱処理された鋳塊を所定厚さにスライスするスライス工程(S6)と、をこの順に行うことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
このようなアルミニウム合金材は、原料であるアルミニウム合金を溶解、鋳造して鋳塊を製造し、必要に応じて均質化熱処理した後、この鋳塊を所定厚さまで圧延することにより製造するのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
鋳造後に圧延を行う方法では、圧延板の表面状態および平坦度(特に長手方向の平坦度)の制御は圧延ロールのみで行うことになり、また、熱間圧延により圧延板表面に厚い酸化皮膜が形成されるため、表面状態および平坦度の制御が困難であるという問題があった。また、圧延ロールでは、板厚を制御しにくいため、板厚精度の向上を図りにくいという問題、板厚方向中心部で、金属間化合物のサイズが大きくなることにより、アルマイト処理した場合に、板厚方向断面における表面にムラを生じるという問題があった。さらに、鋳塊を圧延する場合には、圧延の回数の増加により作業工程が増えることで、コストが増大するという問題があった。
図1に示すように、アルミニウム合金厚板(以下、適宜「厚板」という)の製造方法は、アルミニウム合金を溶解する溶解工程(S1)と、脱水素ガス工程(S2)と、ろ過工程(S3)と、鋳造工程(S4)と、熱処理工程(S5)と、スライス工程(S6)と、をこの順に行うものである。また、必要に応じて、スライス工程(S6)の後に、表面平滑化処理工程(S7)を含めてもよい。
<溶解工程>
溶解工程(S1)は、5000系のAl−Mg系合金を溶解する工程である。なお、アルミニウム合金は、5000系のAl−Mg系合金の他、3000系のAl−Mn系合金、6000系のAl−Mg−Si系合金、7000系のAl−Zn−Mg系合金であってもよい。
本発明に用いるAl−Mg系合金は、Mg:1.5質量%以上12.0質量%以下を含有し、さらに、Si:0.7質量%以下、Fe:0.8質量%以下、Cu:0.6質量%以下、Mn:1.0質量%以下、Cr:0.5質量%以下、Zn:0.4質量%以下、Ti:0.1質量%以下、Zr:0.3質量%以下のうち少なくとも1種以上を含有し、かつ、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金である。
以下に、各成分の含有量を数値限定した理由について説明する。
Mgは、アルミニウム合金の強度を向上させる効果がある。Mgの含有量が1.5質量%未満であるとこの効果は小さく、一方、Mgの含有量が12.0質量%を超えると、鋳造性が著しく低下し、製品製造が不可能となる。よって、Mgの含有量は、1.5質量%以上12.0質量%以下とする。
[Si:0.7質量%以下]
Siは、アルミニウム合金の強度を向上させる効果がある。Siは、通常、地金不純物としてアルミニウム合金中に混入するものであり、鋳造工程(S4)等において、鋳塊中にMnやFeと相まってAl−(Fe)−(Mn)−Si系金属間化合物を生じさせる。Siの含有量が0.7質量%を超えると、粗大な金属間化合物が鋳塊中に生じ、アルマイト処理後の表面外観にムラが生じ易くなる。よって、Siの含有量は、0.7質量%以下とする。
Feは、アルミニウム合金の結晶粒を微細化、安定化させるとともに、強度を向上させる効果がある。Feも、通常、地金不純物としてアルミニウム合金中に混入し、鋳造工程(S4)等において、鋳塊中にMnやSiと相まってAl−Fe−(Mn)−(Si)系金属間化合物を生じさせる。Feの含有量が0.8質量%を超えると、粗大な金属間化合物が鋳塊中に生じ、アルマイト処理後の表面外観にムラが生じ易くなる。よって、Feの含有量は、0.8質量%以下とする。
Cuは、アルミニウム合金の強度を向上させる効果がある。ただし、厚板としての使用に耐えうる強度を確保するためにはCuの含有量が0.6質量%で十分である。よって、Cuの含有量は0.6質量%以下とする。
Mnは、アルミニウム合金中に固溶して強度を向上させる効果がある。Mnの含有量が1.0質量%を超えると粗大な金属間化合物が生じ、アルマイト処理後の表面外観にムラが生じ易くなる。よって、Mn含有量は1.0質量%以下とする。
Crは、鋳造工程(S4)および熱処理工程(S5)において、微細な化合物として析出し、結晶粒成長を抑制する効果がある。Crの含有量が0.5質量%を超えると、初晶として粗大なAl−Cr系金属間化合物が生じ、アルマイト処理後の表面外観にムラが生じ易くなる。よって、Crの含有量は、0.5質量%以下とする。
Znは、アルミニウム合金の強度を向上させる効果がある。ただし、厚板としての使用に耐えうる強度を確保するためにはZnの含有量が0.4質量%で十分である。よって、Znの含有量は0.4質量%以下とする。
Tiは、鋳塊の結晶粒を微細化させる効果がある。Tiの含有量が0.1質量%を超えてもその効果は飽和する。よって、Tiの含有量は0.1質量%以下とする。
Zrは、鋳塊の結晶粒を微細化させる効果がある。Zrの含有量が0.3質量%を超えてもその効果は飽和する。よって、Zrの含有量は0.3質量%以下とする。
アルミニウム合金の成分は前記の他、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものである。なお、不可避的不純物として、例えば、V、B等を含有することが考えられるが、これらの含有量は、それぞれ0.01質量%以下であれば、本発明のアルミニウム合金厚板の特性に影響しない。
本発明に用いるAl−Mn系合金は、Mn:0.3質量%以上1.6質量%以下を含有し、さらに、Si:0.7質量%以下、Fe:0.8質量%以下、Cu:0.5質量%以下、Mg:1.5質量%以下、Cr:0.3質量%以下、Zn:0.4質量%以下、Ti:0.1質量%以下、Zr:0.3質量%以下のうち少なくとも1種以上を含有し、かつ、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金である。
以下に、各成分の含有量を数値限定した理由について説明する。
なお、Si、Fe、Cu、Cr、Zn、Ti、Zrの限定理由および不可避的不純物については、前記Al−Mg系合金と同様であるので、ここでは説明を省略する。
Mnは、アルミニウム合金中に固溶して強度を向上させる効果がある。Mnの含有量が0.3質量%未満であるとこの効果は小さく、一方、Mnの含有量が1.6質量%を超えると粗大な金属間化合物が生じ、アルマイト処理後の表面外観にムラが生じ易くなる。よって、Mn含有量は0.3質量%以上1.6質量%以下とする。
Mgは、アルミニウム合金の強度を向上させる効果がある。ただし、厚板としての使用に耐えうる強度を確保するためにはMgの含有量が1.5質量%で十分である。よって、Mgの含有量は1.5質量%以下とする。
本発明に用いるAl−Mg−Si系合金は、Si:0.2質量%以上1.6質量%以下、Mg:0.3質量%以上1.5質量%以下を含有し、さらに、Fe:0.8質量%以下、Cu:1.0質量%以下、Mn:0.6質量%以下、Cr:0.5質量%以下、Zn:0.4質量%以下、Ti:0.1質量%以下、Zr:0.3質量%以下のうち少なくとも1種以上を含有し、かつ、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金である。
以下に、各成分の含有量を数値限定した理由について説明する。
なお、Fe、Mn、Cr、Ti、Zrの限定理由および不可避的不純物については、前記Al−Mg系合金と同様であるので、ここでは説明を省略する。
Siは、アルミニウム合金の強度を向上させる効果がある。Siは、通常、地金不純物としてアルミニウム合金中に混入するものであり、鋳造工程(S4)等において、鋳塊中にAl−(Fe)−Si系とSi系の金属間化合物を生じさせる。Siの含有量が0.2質量%未満であると強度を向上させる効果は小さく、一方、Siの含有量が1.6質量%を超えると、粗大なSi系金属間化合物が鋳塊中に生じ、アルマイト処理後の表面外観にムラが生じ易くなる。よって、Siの含有量は、0.2質量%以上1.6質量%以下とする。
Mgは、Siと共存してMg2Siを形成して、アルミニウム合金の強度を向上させる効果がある。Mgの含有量が0.3質量%未満であるとこの効果は小さく、一方、Mgの含有量が1.5質量%を超えても強度向上の効果は飽和してしまう。よって、Mgの含有量は0.3質量%以上1.5質量%以下とする。
Cuは、アルミニウム合金の強度を向上させる効果がある。Cuの含有量が1.0質量%を超えると、耐食性が低下する。よって、Cuの含有量は1.0質量%以下とする。
Znは、アルミニウム合金の強度を向上させる効果がある。Znの含有量が0.4質量%を超えると、耐食性が低下する。よって、Znの含有量は0.4質量%以下とする。
本発明に用いるAl−Zn−Mg系合金は、Mg:0.4質量%以上4.0質量%以下、Zn:3.0質量%以上9.0質量%以下を含有し、さらに、Si:0.7質量%以下、Fe:0.8質量%以下、Cu:3.0質量%以下、Mn:0.8質量%以下、Cr:0.5質量%以下、Ti:0.1質量%以下、Zr:0.25質量%以下のうち少なくとも1種以上を含有し、かつ、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金である。
以下に、各成分の含有量を数値限定した理由について説明する。
なお、Cr、Ti、Zrの限定理由および不可避的不純物については、前記Al−Mg系合金と同様であるので、ここでは説明を省略する。
Mgは、アルミニウム合金の強度を向上させる効果がある。Mgの含有量が0.4質量%未満であるとこの効果は小さく、一方、Mgの含有量が4.0質量%を超えると、アルマイト処理後の表面外観にムラが生じ易くなる。よって、Mgの含有量は0.4質量%以上4.0質量%以下とする。
Znは、アルミニウム合金の強度を向上させる効果がある。Znの含有量が3.0質量%未満であるとこの効果は小さく、一方、Znの含有量が9.0質量%を超えると、アルマイト処理後の表面外観にムラが生じ易くなる。よって、Znの含有量は3.0質量%以上9.0質量%以下とする。
Siは、通常、地金不純物としてアルミニウム合金中に混入するものであり、鋳造工程(S4)等において、鋳塊中にAl−(Fe)−Si系金属間化合物を生じさせる。Siの含有量が0.7質量%を超えると、粗大なAl−(Fe)−Si系金属間化合物が鋳塊中に生じ、アルマイト処理後の表面外観にムラが生じ易くなる。よって、Siの含有量は、0.7質量%以下とする。
Feも、通常、地金不純物としてアルミニウム合金中に混入し、鋳造工程(S4)等において、鋳塊中にAl−Fe系金属間化合物を生じさせる。Feの含有量が0.8質量%を超えると、粗大なAl−Fe系金属間化合物が鋳塊中に生じ、アルマイト処理後の表面外観にムラが生じ易くなる。よって、Feの含有量は、0.8質量%以下とする。
Cuは、アルミニウム合金の強度を向上させる効果がある。Cuの含有量が3.0質量%を超えると、耐食性が低下する。よって、Cuの含有量は3.0質量%以下とする。
Mnは、結晶組織を微細化させる効果がある。Mnの含有量が0.8質量%を超えると粗大な金属間化合物が生じ、アルマイト処理後の表面外観にムラが生じ易くなる。よって、Mn含有量は0.8質量%以下とする。
脱水素ガス工程(S2)は、溶解工程(S1)で溶解されたアルミニウム合金から水素ガスを除去する工程である。
水素ガスは、燃料中の水素や地金等に付着している水分、その他有機物等から発生する。水素ガスが多く含まれていると、ピンホールの原因となったり、製品の強度が弱くなったりする。また、鋳塊の表面近傍の粒界に水素が集積、濃化し、鋳塊のフクレ、およびフクレに起因するアルミニウム合金厚板のメクレが発生するとともに、厚板の表面欠陥として現れる厚板表面の潜在的欠陥が生じる。
脱水素ガス工程における水素ガスの除去は、溶湯をフラクシング、塩素精錬、またはインライン精錬等を行うことによって好適に行うことができるが、脱水素ガス装置にスニフやポーラスプラグ(特開2002−146447号公報参照)を用いて行うと、より好適に除去することができる。
ろ過工程(S3)は、ろ過装置により、アルミニウム合金から主として酸化物や非金属の介在物を除去する工程である。
ろ過装置には、例えば1mm程度の粒子のアルミナが用いられたセラミックチューブが設けられており、これに溶湯を通すことによって前記の酸化物や介在物を除去することができる。
これらの脱水素ガスやろ過により、鋳造工程(S4)において、高度に品質を確保したアルミニウム合金を鋳塊とすることができる。また酸化物の堆積物(ドロス)の堆積を抑制できるので、ドロス除去の手間を低減することができる。
鋳造工程(S4)は、例えば、水冷鋳型を含んで構成されている鋳造装置で、アルミニウム合金の溶湯を直方体形状等の所定の形状に形成して固化することで鋳塊を製造するための工程である。
鋳造方法としては、半連続鋳造法を用いることができる。
半連続鋳造法は、底部が開放された金属製の水冷鋳型に、上方より金属の溶湯を注入し、水冷鋳型の底部より凝固した金属を連続的に取り出し、所定厚さの鋳塊を得るものである。なお、半連続鋳造法は、縦向き、横向きのどちらで行ってもよい。
熱処理を施すことにより、平坦度・板厚精度やアルマイト処理後の外観性状が向上する。
<熱処理工程>
熱処理工程(S5)は、鋳造工程(S4)で製造された鋳塊を熱処理する工程である。
熱処理は、常法にしたがって、前記Al−Mg系合金、前記Al−Mn系合金、前記Al−Mg−Si系合金の場合は、処理温度200℃以上400℃未満、前記Al−Zn−Mg系合金の場合は、処理温度200℃以上350℃未満の温度で1時間以上保持することにより行う。
スライス工程(S6)は、熱処理工程(S5)で熱処理されたアルミニウム合金厚板を所定厚さにスライスする工程である。
スライス方法としては、スラブスライス法を用いることができる。
スラブスライス法は、前記した半連続鋳造法で製造した鋳塊を、帯鋸切断機等によってスライスすることにより、鋳塊を鋳造方向に切り出す方法であり、これにより所定厚さのアルミニウム合金厚板が製造される。ここで、アルミニウム合金厚板の厚さは、15〜200mmが好ましいが、特に限定されるものではなく、アルミニウム合金厚板の用途により、適宜変更することができる。
このように、鋳塊をスライスすることにより、圧延材に比較して、表面状態、平坦度、板厚精度等に優れたアルミニウム合金厚板、例えば、平坦性の評価において、鋳造方向1m当たりの平坦度(反り量)を、0.4mm以下/1m長さ、板厚精度を±100μm以下とする厚板を得ることができる。
<表面平滑化処理工程>
表面平滑化処理工程(S7)は、スライス工程(S6)でスライスされたアルミニウム合金厚板の表面を平滑化する工程である。
表面平滑化処理法としては、エンドミル切削やダイヤモンドバイト切削等の切削法、表面を砥石等で削る研削法、バフ研磨等の研磨法等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
したがって、アルミニウム合金厚板をチャンバー用とする場合には、表面平滑化処理を行うことは特に有効である。
≪アルミニウム合金厚板≫
アルミニウム合金厚板は、前記したアルミニウム合金厚板の製造方法により製造されたものであり、平均結晶粒径を400μm以下としたものである。
厚板の平均結晶粒径を400μm以下とすることにより、アルマイト処理後の外観性に優れた厚板を得ることができ、また、ロット内のバラツキを少なくすることができる。
初めに、表1に示す組成を有するアルミニウム合金を溶解し、脱水素ガス処理、ろ過を行った後、鋳造して板厚500mmの鋳塊を作製した。次に、作製した鋳塊を350℃で4時間加熱して熱処理した。この鋳塊をスライスまたは熱間圧延して、厚さ20mm×幅1000mm×丈2000mmのアルミニウム合金厚板(スライス材、熱間圧延材)を作製した。
このスライス材および熱間圧延材について、以下の試験を行った。
平坦性評価は、スライス材については、鋳造方向1mあたりの反り量(平坦度)、熱間圧延材については、圧延方向1mあたりの反り量(平坦度)を測定した。平坦度が0.4mm/1m長さ以下のものを合格(○)、0.4mm/1m長さを超えるものを不合格(×)とした。
板厚精度評価は、厚板の4隅並びに長辺の丈方向(長手方向)の半分の長さの部位の辺から、幅方向への内側20mmの部位の計6点の厚さを、マイクロメータを用いて測定した。6点共19.94mm以上20.06mm以下のものを良好(◎)、19.90mm以上20.10mm以下のものを合格(○)とした。
強度は、アルミニウム合金厚板より、JIS5号試験片を作製して引張試験を行い、引張強さ、0.2%耐力を測定することにより行った。
引張強さが180N/mm2以上のものを合格(○)、引張強さが180N/mm2未満のものを不合格(×)とした。
アルマイト性評価は、アルミニウム合金厚板の表面および断面の外観を観察することにより行った。
アルミニウム合金厚板(スライス材、熱間圧延材)の表面および断面に、硫酸アルマイト処理(15%硫酸、20℃、電流密度2A/dm2)にて厚さ10μmのアルマイト皮膜を形成した。この厚板の表面および断面の外観を観察し、外観にムラが無いものを合格(○)、ムラがあるものを不合格(×)とした。
平均結晶粒径の測定方法としては、鋳塊の厚さをTとしたときに、片側表面からもう一方の片側表面に向かう、T/5、2T/5、3T/5、4T/5の4箇所の厚さ断面における測定値の平均を求めることにより行った。なお、ここでは、アルミニウム合金厚板の断面をバーカー法によりエッチングし、光学顕微鏡観察により切断法にて行った。
これらの結果を表2、3に示す。
合金成分14では、Mgが上限を超えるため、鋳造割れが発生し、製造が不可能であった。
合金成分13では、Mgの含有量が下限値未満のため、強度が不足した。
合金成分1〜13、17、20〜22は、アルミニウム合金厚板のアルマイト処理後の表面の外観にムラを生じなかった。
合金成分15、16、18、19は、それぞれ、Si、Fe、Mn、Crの含有量が上限値を超えるため、粗大な金属間化合物が生じ、アルマイト処理後の表面の外観にムラを生じた。
合金成分1〜13、15〜22については、アルミニウム合金厚板のアルマイト処理後の断面の外観にムラを生じなかった。
合金成分14では、Mgが上限を超えるため、鋳造割れが発生し、製造が不可能であった。
合金成分13では、Mgの含有量が下限値未満のため、強度が不足した。
合金成分15、16、18、19は、それぞれ、Si、Fe、Mn、Crの含有量が上限値を超えるため、粗大な金属間化合物が生じ、アルマイト処理後の表面の外観にムラを生じた。
合金成分1〜13、15〜22については、アルミニウム合金厚板のアルマイト処理後の断面の外観にムラを生じた。
初めに、表1に示す番号3の組成を有するアルミニウム合金(合金成分3)を溶解し、脱水素ガス処理、ろ過を行った後、鋳造して板厚500mmの鋳塊を作製した。次に、作製した鋳塊を表4に示す条件で、熱処理した。この鋳塊をスライスして、厚さ20mm×幅1000mm×丈2000mmのアルミニウム合金厚板(スライス材)を作製した。
このスライス材について、平坦性評価試験、板厚精度評価試験および切削性評価試験を行った。
平坦性評価は、鋳造方向1mあたりの反り量(平坦度)を測定した。平坦度が0.4mm/1m長さ以下のものを合格(○)、0.4mm/1m長さを超えるものを不合格(×)とした。
板厚精度評価試験の方法、評価基準については、前記第1実施例と同様である。
切削性、すなわち切り屑分断性の評価は、ドリルで孔あけ加工を行った時の切り屑の単位質量当たりの個数を測定した。直径5mmφのドリルを用いて、回転数7000rpm、送り速度300mm/分にて孔加工を行い、発生した切り屑10g当たりの個数を測定し、1000個/10g以上のものを合格(○)、1000個/10g未満のものを不合格(×)とした。
これらの結果を表4に示す。
次に、3000系合金を使用して試験を行った。
試験材の作製方法は、表5に示す組成を有するアルミニウム合金を溶解し、脱水素ガス処理、ろ過を行った後、鋳造して板厚500mmの鋳塊を作製した。次に、作製した鋳塊を350℃で4時間加熱して熱処理した。この鋳塊をスライスまたは熱間圧延して、厚さ20mm×幅1000mm×丈2000mmのアルミニウム合金厚板(スライス材、熱間圧延材)を作製した。
このスライス材および熱間圧延材について、平坦性評価試験、板厚精度評価試験、強度試験、アルマイト性評価試験を行った。
各試験の評価方法および評価基準は、前記第1実施例と同様である。ただし、合金種により、厚板の特性が異なるため、強度の評価基準は、以下のとおりとした。
合金組成およびこれらの結果を表5、6に示す。
合金成分25は、Mnの含有量が下限値未満のため、強度が不足した。
合金成分26は、Mnの含有量が上限値を超えるため、粗大な金属間化合物が生じ、アルマイト処理後の表面の外観にムラを生じた。
合金成分23〜26については、アルミニウム合金厚板のアルマイト処理後の断面の外観にムラを生じなかった。
合金成分25は、Mnの含有量が下限値未満のため、他の熱間圧延材に比べ、強度がやや劣った。
合金成分26は、Mnの含有量が上限値を超えるため、粗大な金属間化合物が生じ、アルマイト処理後の表面の外観にムラを生じた。
合金成分23〜26については、アルミニウム合金厚板のアルマイト処理後の断面の外観にムラを生じた。
次に、6000系合金を使用して試験を行った。
試験材の作製方法は、表7に示す組成を有するアルミニウム合金を溶解し、脱水素ガス処理、ろ過を行った後、鋳造して板厚500mmの鋳塊を作製した。次に、作製した鋳塊を350℃で4時間加熱して熱処理した。この鋳塊をスライスまたは熱間圧延して、厚さ20mm×幅1000mm×丈2000mmのアルミニウム合金厚板(スライス材、熱間圧延材)を作製した。更に、得られた厚板を520℃で溶体化処理し、175℃で8時間の時効処理を施した。
このスライス材および熱間圧延材について、強度試験、アルマイト性評価試験を行った。
各試験の評価方法および評価基準は、前記第1実施例と同様である。ただし、合金種により、厚板の特性が異なるため、強度の評価基準は、以下のとおりとした。
合金組成およびこれらの結果を表7、8に示す。
合金成分30は、Siの含有量が上限値を超えるため、粗大な金属間化合物が生じ、アルマイト処理後の表面の外観にムラを生じた。
合金成分32は、Mgの含有量が上限値を超え、その効果が飽和したものであり、経済性に劣るものである。
合金成分27〜32については、アルミニウム合金厚板のアルマイト処理後の断面の外観にムラを生じなかった。
合金成分30は、Siの含有量が上限値を超えるため、粗大な金属間化合物が生じ、アルマイト処理後の表面の外観にムラを生じた。
合金成分32は、Mgの含有量が上限値を超え、その効果が飽和したものであり、経済性に劣るものである。
合金成分27〜32については、アルミニウム合金厚板のアルマイト処理後の断面の外観にムラを生じた。
次に、7000系合金を使用して試験を行った。
試験材の作製方法は、表9に示す組成を有するアルミニウム合金を溶解し、脱水素ガス処理、ろ過を行った後、鋳造して板厚500mmの鋳塊を作製した。次に、作製した鋳塊を300℃で4時間加熱して熱処理した。この鋳塊をスライスまたは熱間圧延して、厚さ20mm×幅1000mm×丈2000mmのアルミニウム合金厚板(スライス材、熱間圧延材)を作製した。更に、得られた厚板を470℃で溶体化処理し、120℃で48時間の時効処理を施した。
このスライス材および熱間圧延材について、強度試験、アルマイト性評価試験を行った。
各試験の評価方法および評価基準は、前記第1実施例と同様である。ただし、合金種により、厚板の特性が異なるため、強度の評価基準は、以下のとおりとした。
合金組成およびこれらの結果を表9、10に示す。
合金成分36、38は、それぞれ、Mg、Znの含有量が上限値を超えるため、アルマイト処理後の表面の外観にムラを生じた。
合金成分33〜38については、アルミニウム合金厚板のアルマイト処理後の断面の外観にムラを生じなかった。
合金成分36、38は、それぞれ、Mg、Znの含有量が上限値を超えるため、アルマイト処理後の表面の外観にムラを生じた。
合金成分33〜38については、アルミニウム合金厚板のアルマイト処理後の断面の外観にムラを生じた。
S2 脱水素ガス工程
S3 ろ過工程
S4 鋳造工程
S5 熱処理工程
S6 スライス工程
S7 表面平滑化処理工程
A 鋳塊の厚さ方向中央部
B 鋳塊の中央部分
T 鋳塊の厚さ
1 鋳塊
Claims (8)
- Mg:1.5質量%以上12.0質量%以下を含有し、さらに、Si:0.7質量%以下、Fe:0.8質量%以下、Cu:0.6質量%以下、Mn:1.0質量%以下、Cr:0.5質量%以下、Zn:0.4質量%以下、Ti:0.1質量%以下、Zr:0.3質量%以下のうち少なくとも1種以上を含有し、かつ、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を溶解する溶解工程と、
前記溶解工程で溶解されたアルミニウム合金から水素ガスを除去する脱水素ガス工程と、
前記脱水素ガス工程で水素ガスを除去したアルミニウム合金から介在物を除去するろ過工程と、
前記ろ過工程で介在物を除去したアルミニウム合金を鋳造して鋳塊を製造する鋳造工程と、
前記鋳造工程で製造された鋳塊を200℃以上400℃未満の温度で1時間以上保持して熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理工程で熱処理された鋳塊を所定厚さにスライスするスライス工程と、をこの順に行うことを特徴とするアルミニウム合金厚板の製造方法。 - Mn:0.3質量%以上1.6質量%以下を含有し、さらに、Si:0.7質量%以下、Fe:0.8質量%以下、Cu:0.5質量%以下、Mg:1.5質量%以下、Cr:0.3質量%以下、Zn:0.4質量%以下、Ti:0.1質量%以下、Zr:0.3質量%以下のうち少なくとも1種以上を含有し、かつ、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を溶解する溶解工程と、
前記溶解工程で溶解されたアルミニウム合金から水素ガスを除去する脱水素ガス工程と、
前記脱水素ガス工程で水素ガスを除去したアルミニウム合金から介在物を除去するろ過工程と、
前記ろ過工程で介在物を除去したアルミニウム合金を鋳造して鋳塊を製造する鋳造工程と、
前記鋳造工程で製造された鋳塊を200℃以上400℃未満の温度で1時間以上保持して熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理工程で熱処理された鋳塊を所定厚さにスライスするスライス工程と、をこの順に行うことを特徴とするアルミニウム合金厚板の製造方法。 - Si:0.2質量%以上1.6質量%以下、Mg:0.3質量%以上1.5質量%以下を含有し、さらに、Fe:0.8質量%以下、Cu:1.0質量%以下、Mn:0.6質量%以下、Cr:0.5質量%以下、Zn:0.4質量%以下、Ti:0.1質量%以下、Zr:0.3質量%以下のうち少なくとも1種以上を含有し、かつ、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を溶解する溶解工程と、
前記溶解工程で溶解されたアルミニウム合金から水素ガスを除去する脱水素ガス工程と、
前記脱水素ガス工程で水素ガスを除去したアルミニウム合金から介在物を除去するろ過工程と、
前記ろ過工程で介在物を除去したアルミニウム合金を鋳造して鋳塊を製造する鋳造工程と、
前記鋳造工程で製造された鋳塊を200℃以上400℃未満の温度で1時間以上保持して熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理工程で熱処理された鋳塊を所定厚さにスライスするスライス工程と、をこの順に行うことを特徴とするアルミニウム合金厚板の製造方法。 - Mg:0.4質量%以上4.0質量%以下、Zn:3.0質量%以上9.0質量%以下を含有し、さらに、Si:0.7質量%以下、Fe:0.8質量%以下、Cu:3.0質量%以下、Mn:0.8質量%以下、Cr:0.5質量%以下、Ti:0.1質量%以下、Zr:0.25質量%以下のうち少なくとも1種以上を含有し、かつ、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を溶解する溶解工程と、
前記溶解工程で溶解されたアルミニウム合金から水素ガスを除去する脱水素ガス工程と、
前記脱水素ガス工程で水素ガスを除去したアルミニウム合金から介在物を除去するろ過工程と、
前記ろ過工程で介在物を除去したアルミニウム合金を鋳造して鋳塊を製造する鋳造工程と、
前記鋳造工程で製造された鋳塊を200℃以上350℃未満の温度で1時間以上保持して熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理工程で熱処理された鋳塊を所定厚さにスライスするスライス工程と、をこの順に行うことを特徴とするアルミニウム合金厚板の製造方法。 - 前記スライス工程の後に、スライスされた所定厚さのアルミニウム合金厚板の表面に、さらに表面平滑化処理を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のアルミニウム合金厚板の製造方法。
- 前記表面平滑化処理を、切削法、研削法および研磨法から選択された1種以上の方法で行うことを特徴とする請求項5に記載のアルミニウム合金厚板の製造方法。
- 前記スライス工程において、前記鋳塊の厚さをTとしたときに、厚さ方向中央部から、厚さ方向のそれぞれの表面に向かい、均等の厚さで、合計T/30〜T/5厚さを除去することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のアルミニウム合金厚板の製造方法。
- 請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のアルミニウム合金厚板の製造方法により製造されたアルミニウム合金厚板であって、平均結晶粒径が400μm以下であることを特徴とするアルミニウム合金厚板。
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