JP5825484B2 - 白金族金属の回収方法 - Google Patents

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Description

本発明は、白金族金属を含む原料から、高純度の白金族金属を効率よく回収する方法に関する。
白金族金属は工業的には非鉄金属製錬の副産物や使用済み触媒などから回収されている。例えば、銅やニッケルの精練工程で生じる陽極スライムあるいはニッケルの精練工程で生じる抽出残渣には、金、銀、白金、パラジウムなどが含まれており、従来、これらの製錬残渣から白金や金などの貴金属が回収されている。例えば、脱銅スライムを塩化浸出し、浸出滓から銀や鉛を回収し、浸出液からは溶媒抽出によって金を回収し、また金抽出後液には白金族金属やセレン等が含まれているので、金抽出後液から白金族金属を回収している。
従来の溶媒抽出による白金族金属の回収方法は、アルカリ土類や重金属が十分に分離されないため、回収される白金族金属の純度が低いと云う問題があり、この対策として、アルカリ土類および重金属を最初に溶媒抽出によって取り除いた後に、Pd、Pt、Irを順に溶媒抽出によって回収し、その後、溶液を中和してRh沈澱物を回収する方法が知られている(特許文献1:特開2004−332041号公報)。
さらに、不純物元素を含む原料から高純度の白金族金属を回収する方法として、白金族金属含有物を浸出する第一工程、浸出生成液から不純物元素を溶媒抽出する第二工程、抽出残液からパラジウムを溶媒抽出する第三工程、抽出残液から陽イオン型不純物元素を溶媒抽出する第四工程、抽出残液を加水分解して白金を分離する第五工程、沈澱からルテニウムを浸出分離する第六工程、イリジウムを溶媒抽出し、イリジウムを含む逆抽出生成液とロジウムを含む抽出残液を得る第七工程の各工程を有する白金族金属の相互分離方法が知られている(特許文献2:特開2005−97695号公報)。
しかし、特許文献1の方法は、Pd濃度が高い原料では、Ru蒸留のときにPdの沈殿が生じ、蒸留残液の回収が困難になるため適用し難いと云う問題がある。また、特許文献2の方法は、白金が複数の工程に分散するため、白金の一次実収率が低く、白金回収工程の繰返しが多くなるという問題がある。
特開2004−332041号公報 特開2005−97695号公報
本発明の白金族金属の回収方法は、従来の回収方法における上記問題を解決したものであり、Pd濃度が高い原料からでもRu蒸留のときにPdが沈殿化せず、白金回収工程の繰返しが少なく、高純度の白金族金属を効率よく回収することができる方法を提供する。
本発明は以下の構成を有する白金族金属の回収方法に関する。
〔1〕白金族金属を含有する溶液からパラジウムを溶媒抽出した後に、抽出残液にヒドラジンを添加して還元滓を生成させ、該還元滓を回収し、該還元滓に含まれる白金族金属を塩化溶出し、この溶解液に酸化剤を加えてルテニウムを蒸留させて回収し、この蒸留残液から他の白金族金属を回収することを特徴とする白金族金属の回収方法。
〔2〕白金族金属を含有する原料を塩酸と過酸化水素で溶解して得た白金族金属含有溶液にDBC(ジブチルカルビトール)を混合して金および鉄を溶媒抽出した抽出残液に苛性ソーダを添加して塩酸濃度を3mol/L以下に調整した後に、DHS(ジヘキシルスルフィド)を加えてパラジウムを抽出する上記[1]に記載する白金族金属の回収方法。
〔3〕パラジウムを溶媒抽出した抽出残液のpHを10〜13に調整し、該抽出残液にヒドラジンを添加して還元滓を生成させる上記[1]または上記[2]に記載する白金族金属の回収方法。
〔4〕パラジウム抽出残液から回収した還元滓に塩酸と酸化剤を加えて還元滓に含まれる白金族金属を塩化溶出し、溶出した白金族金属を含む溶解液の塩酸濃度を1〜6mol/Lに調整し、該溶解液に臭素酸塩を加えてルテニウムを酸化し蒸留する上記[1]〜上記[3]の何れかに記載する白金族金属の回収方法。
〔5〕ルテニウムの蒸留残液に還元剤を添加して残留する酸化剤を分解した後に、白金を溶媒抽出する上記[1]〜上記[4]の何れかに記載する白金族金属の回収方法。
〔6〕ルテニウムの蒸留残液に還元剤を添加して残留する酸化剤を分解した後に塩酸を添加し、さらに塩化アンモニウムを加えて白金イエローを析出させて回収する上記[1]〜上記[4]の何れかに記載する白金族金属の回収方法。
〔7〕白金を回収した残液に、亜硝酸ナトリウムを加えて加熱し、冷却後、塩化アンモニウムを加えてロジウムを沈澱させて回収する上記[5]〜上記[6]の何れかに記載する白金族金属の回収方法。
〔8〕白金を回収した残液に、チオ硫酸イオンもしくは硫化物イオンを含む塩類を添加して残液中のロジウムを硫化物もしくはCuRh硫化物の混合物として沈殿させて回収する上記[5]〜上記[6]の何れかに記載する白金族金属の回収方法。
〔9〕白金を回収した残液に、水酸化物イオンを含む塩類を添加してロジウムを水酸化物として沈澱させて回収する上記[5]〜上記[6]の何れかに記載する白金族金属の回収方法。
本発明の回収方法によれば、製錬残渣などの白金族金属を含有する原料から高純度の白金族金属を回収することができる。具体的には、純度99.9%以上のパラジウムおよび白金を回収することができる。また、本発明の方法は白金族金属の回収率が高く、例えば、白金およびパラジウムの回収率はおのおの99%以上であり、ルテニウムおよびロジウムの回収率をおのおの90%以上である。
また、本発明の回収方法は、ロジウムの回収工程において、白金回収残液に含まれるロジウムを沈澱化し、これを回収して溶解した液に亜硝酸塩と塩化アンモニウムを加えてロジウムを再び沈澱させて回収する方法によれば、亜硝酸廃液量を大幅に低減することができる。
本発明の回収方法は、製錬残渣の浸出後液や白金族金属のスクラップ溶解液を原料として高い回収率で白金族金属を回収することができ、これらの産業分野において好適に利用することができる。
本発明の回収方法を示す処理工程図 本発明の回収方法においてRh硫化物を形成する例を示す処理工程図 本発明の回収方法においてRh水酸化物を形成する例を示す処理工程図
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
本発明の処理方法は、白金族金属を含有する溶液からパラジウムを溶媒抽出した後に、抽出残液にヒドラジンを添加して還元滓を生成させ、該還元滓を回収して塩酸と酸化剤で溶解し、この溶解液を酸化蒸留してルテニウムを回収し、この蒸留残液から溶媒抽出によって白金を回収し、白金抽出残液からロジウムを回収することを特徴とする白金族金属の回収方法である。本発明の白金族金属回収方法の一例を図1に示す。
〔白金族金属含有溶液〕
本発明に係る白金族金属の回収方法は、製錬残渣などの白金族金属を含有する原料から白金族金属を浸出させた溶液を原料として用いることができる。製錬残渣などを塩酸と酸化剤(過酸化水素など)を用いて塩化溶解すれば白金族金属を含有する溶液が得られる。例えば、脱銅スライムや製錬スクラップなどの製錬残渣を塩化溶解した液には、パラジウム(Pd)が約60000mg/l前後、金(Au)が約15000mg/l前後、白金(Pt)が約10000mg/l前後、ルテニウム(Ru)が約3000mg/l前後、ロジウム(Rh)が約500mg/l前後含まれている。
〔金の溶媒抽出工程〕
本発明の白金族金属の回収方法は、好ましくは、白金族金属含有溶液から先ず金(Au)を溶媒抽出する。最初にAuを分離回収することによって、その後のパラジウム(Pd)等の回収を容易に進めることができる。Auの抽出溶媒としてはDBC(ジブチルカルビトール)を用いることができる。白金族金属含有溶液に塩酸を添加して塩酸濃度が4mol/L以上になるように調整した後にDBCを混合すると良い。DBCにはAuと共にFeが抽出される。DBCに抽出したAuは通常の方法で逆抽出して回収すれば良い。
〔パラジウムの溶媒抽出工程〕
Au抽出残液に含まれるPdを溶媒抽出する。Pdの抽出溶媒としてはDHS(ジヘキシルスルフィド)を用いることできる。Au抽出残液に苛性ソーダを添加して塩酸濃度が3mol/L以下になるまで中和した後にDHSを混合するのが好ましい。Au抽出後液の塩酸濃度を3mol/L以下に調整することによって、Pd逆抽出における溶媒の変性や沈殿の発生を抑制することができる。
DHS溶媒に抽出したPdは通常の方法で逆抽出して回収すれば良い。例えば、抽出したPdを含むDHS溶媒を塩酸洗浄した後に、アンモニアと塩化アンモニウムの水溶液を混合してPdを逆抽出し、この逆抽出液に塩酸を加えてPdイエローを沈澱させる。回収したPdイエローをアンモニア水溶液で溶解し、この溶液にヒドラジンを加えてPdを還元析出させることによって、高純度のPdメタルを回収することができる。例えば、このPdイエローから収率99%で純度99.95%のPdメタルを回収することができる。
〔還元工程〕
Pd抽出残液にヒドラジンを添加して還元滓を生成させる。ヒドラジン添加前に、Pd抽出残液に苛性ソーダを添加してpH10〜13に調整した後にヒドラジンを加えるのが良い。抽出残液のpHが10を下回ると還元反応が不十分にしか進行しない。pHが13を上回ると反応が急激に進行し発泡などの危険があり好ましくない。この還元はヒドラジンを用いるのが好ましい。ヒドラジンを用いて生成させた還元滓は、亜鉛粉末など他の還元剤を用いた還元滓よりも溶解しやすい。
Pd抽出後液に含まれる白金族金属はヒドラジンによって還元され、そのほぼ全量が析出して還元滓に含まれる。Pd抽出後液に含まれる白金族金属を還元滓にして回収することによって、Pd抽出後液に含まれるDHS溶媒の有機物を取り除き、次工程のルテニウム蒸留に有機物が混入するのを防止する。さらに白金族金属(Ru、Pt、Rh)が還元滓に濃縮されることによってルテニウム(Ru)の蒸留効率を高めることができる。
〔還元滓の溶解工程〕
上記還元滓を回収し、塩酸と酸化剤(過酸化水素など)を加えて還元滓を溶解し、該還元滓に含まれる白金族金属を塩化溶出(クロリネーション)させる。この塩化溶出によって還元滓に含まれている白金族金属のほぼ全量が溶出する。例えば、Pt、Rh、Ruの何れも99%以上が溶出する。溶解液(クロリネーション液)の塩酸濃度は1〜6mol/Lが好ましい。還元滓を低い塩酸濃度(1〜6mol/L)で溶解することによって、次工程のルテニウム蒸留の直前で行う中和作業に使用する苛性ソーダ量を低減することができる。
〔ルテニウムの蒸留工程〕
上記溶解液(クロリネーション液)に苛性ソーダを加えてpH1〜5にしてから酸化剤を加えてルテニウム(Ru)を蒸留する。pHが1より低い溶液に酸化剤を加えると、酸化反応が急激に進行しCl2ガス等が大量に発生するので危険である。一方、pHが5より高い溶液に酸化剤を加えると、ルテニウムはルテニウム酸イオン(HRuO5 -)を形成するので、ルテニウムを効率よく蒸留することができない。酸化剤は臭素酸塩、例えば臭素酸ナトリウム(NaBrO3)などを用いると良い。
上記溶解液に含まれるルテニウムは酸化されると揮発性の酸化ルテニウム(RuO4)になるので容易に蒸留することができる。蒸留温度は約75℃〜約100℃、好ましくは約80℃であれば良い。蒸留した酸化ルテニウムガス(RuO4)を、例えば塩酸に吸収させ、塩化ルテニウム酸として回収することができる。
〔残留酸化剤の分解〕
ルテニウム蒸留の後に、この蒸留残液に還元剤を加え、残留している酸化剤を分解する。例えば、蒸留残液に塩酸ヒドロキシアミンを加えて、残留している臭素酸ナトリウムを分解する。蒸留残液に酸化剤が残留していると次工程の白金抽出において抽出溶媒が劣化する。還元剤を加えて残留している酸化剤を分解した後に、塩酸を加えて塩酸濃度を3〜6mol/Lに調整する。塩酸濃度が上記範囲を外れると、次工程で白金の抽出率が低下するので好ましくない。
〔白金の回収工程〕
ルテニウム蒸留の残液に含まれている白金は溶媒抽出や化学的分離方法によって回収することができる。
(イ)白金の溶媒抽出は、残留している臭素酸ナトリウムなどの酸化剤を分解し、さらに塩酸濃度を上記範囲に調整した蒸留残液に、抽出溶媒のTBP(リン酸トリブチル)を混合して該残液に含まれる白金を溶媒に抽出する。TBPに抽出した白金は逆抽出して回収すれば良い。例えば、抽出した白金を含むTBPを塩酸洗浄した後に、塩酸を加えて白金を塩酸に逆抽出し、この白金を抽出した塩酸に塩化アンモニウムを加えて白金イエローを析出させる。この白金イエローから高純度の白金メタルを回収することができる。例えば、この白金イエローから収率98%で純度99.95%の白金メタルを回収することができる。
(ロ)白金の化学的分離は、残留している臭素酸ナトリウムなどの酸化剤を分解した蒸留残液に塩酸を添加し、さらに塩化アンモニウムを加えて白金イエローを析出させて回収する方法であり、この方法によって蒸留残液に含まれる白金のほぼ全量を白金イエローとして回収することができる。
〔ロジウムの回収工程〕
白金を回収した残液に含まれるロジウム(Rh)は沈澱化して回収することができる。
(イ)白金回収残液に含まれるロジウムを亜硝酸化し、アンモニウム塩にして沈澱させることができる。具体的には、白金抽出残液に亜硝酸ナトリウムを加えて約80℃に加熱し、該抽出残液に含まれるロジウムを亜硝化する。これを室温まで冷却した後に、塩化アンモニウムを加えてロジウムを沈澱させる。ロジウムはNa(NH4)2Rh(NO2)6の沈澱を生成するので、これを回収する。この方法によって、ロジウムを90%以上の高収率で回収することができる。また該沈澱から高純度のロジウムを得ることができる。
(ロ)白金回収残液に含まれるロジウムを硫化物沈殿にして回収することができる。
ロジウムを亜硝酸化して沈澱させる上記方法(イ)では、ロジウム濃度が100mg/L以下では亜硝酸イオンを含む多量の廃液が生じる。この場合には、白金回収残液にチオ硫酸イオンもしくは硫化物イオンを含む塩類を添加して残液中のロジウムを硫化物沈澱にして回収することができる。例えば、白金回収残液に水硫化ソーダを添加すると水硫化ソーダが上記残液に含まれているロジウムと反応してRh23が沈澱し、上記残液にロウジウムと共に銅が残留しているとRh23とCuSの混合物が沈殿する。この沈殿を回収して溶解した溶液に亜硝酸ナトリウムを加えて加熱し、冷却後、塩化アンモニウムを加えてNa(NH4)2Rh(NO2)6を沈殿させて回収する。図2の処理工程を参照。
(ハ)残液に含まれるロジウムは水酸化物沈殿にして回収することができる。
白金回収残液に水酸化物イオンを含む塩類を添加してロジウムを水酸化物あるいは含水酸化物として沈澱させて回収する。例えば、白金回収残液に水酸化ナトリウムを加えると、水酸化ナトリウムが上記残液に含まれるロジウムと反応してRh23・nH2Oが沈澱し、上記残液中にロジウムと共に銅が残留しているとRh23・nH2OとCu(OH)2の混合物が沈澱する。この沈殿を塩酸や過酸化水素で溶解した溶液に亜硝酸ナトリウムを加えて加熱し、冷却後、塩化アンモニウムを加えてNa(NH4)2Rh(NO2)6を沈殿させて回収する。図3の処理工程を参照。
上記(ロ)(ハ)のように、白金回収残液からロジウムを沈澱化し、この沈澱を再び溶解した溶液を亜硝酸化する方法によれば、溶液中のロジウムが濃縮されるので、上記(イ)のように白金回収残液を直に亜硝酸化する方法に比べて、亜硝酸廃液の量を10分の1以下に低減することがでる。
以下、本発明の実施例を示す。なお、金属元素の濃度はICP−MSによって測定した。
〔実施例1〕
図1に示す処理工程に従い、以下の手順に従って白金族金属を順次分離して回収した。
(I)製錬残渣を塩酸と過酸化水素で塩化溶解(クロリネーション)し、クロリネーション液(A)3Lを得た。この溶液のフリー塩酸濃度が4mol/L以上になるように塩酸の添加量を調整した。クロリネーション液(A)の、白金族金属(Ru、Rh、Pd、Pt)および金(Au)の濃度を表1に示す。
(II)上記白金族金属含有液(クロリネーション液A)をDBC(ジブチルカルビトール)1Lと30分間混合して、金(Au)を抽出した。Au抽出残液に含まれる白金族金属の濃度を表1に示す。
(III)Au抽出残液に苛性ソーダを添加して、フリー塩酸濃度が2mol/Lになるまで中和した。この中和液(Au抽出残液)3LとDHS(ジヘキシルスルフィド)3Lを3時間混合して、パラジウム(Pd)を抽出した。Pd抽出残液に含まれる白金族金属の濃度を表1に示す。
(IV)上記工程(III)で得たPd含有DHSを塩酸3L(濃度1mol/L)で洗浄した後、アンモニアと塩化アンモニウムの水溶液3L(濃度:3M NH3/1M NH4Cl)を加えてPdを逆抽出した。このPdを逆抽出した水溶液にpH1未満になるまで塩酸を加え、Pdイエローを回収した。このPdイエローをアンモニア水で溶解し、この溶解液にヒドラジンを加えて還元した。その結果、純度99.95%のPdメタルを得た。収率は99%であった。Pdメタルの不純物濃度を表2に示す。
Figure 0005825484
Figure 0005825484
(V)Pd抽出残液に苛性ソーダを添加してpH12に調整した。次いで、水和ヒドラジンを添加して30分間混合し、これを濾過して45gの還元滓を得た。この濾液(還元残液)を分析したところ、白金族金属の濃度は何れも10mg/L未満であり、白金族金属はほぼ全量が還元されていた。還元残液に含まれる白金族金属の濃度を表1に示す。
(VI)上記還元滓を塩酸および過酸化水素を用いて溶解し(クロリネーション)、クロリネーション液(B)0.6Lを得た。この溶解液の塩酸濃度は2mol/Lであり、白金族金属の浸出率は何れも99%以上であった。クロリネーション液(B)に含まれる白金族金属の濃度を表3に示す。
(VII)上記溶解液(クロリネーション液B)に苛性ソーダを添加してpH1になるまで中和した。苛性ソーダの添加量は46gであった。この中和液を蒸留装置に入れ、臭素酸ナトリウムを添加してから80℃に加熱してルテニウム(Ru)を蒸留した。
(VIII)上記蒸留残液0.6Lに塩酸ヒドロキシルアミン水溶液0.2Lを添加し、蒸留残液に残留する臭素酸ナトリウムを分解した。臭素酸ナトリウムを分解したRu蒸留残液の白金族金属の濃度を表3に示す。
(IX)臭素酸ナトリウムを分解した蒸留残液0.8Lに塩酸を0.6L添加し、塩酸濃度5mol/Lに調整して白金(Pt)抽出元液とした。この白金抽出元液に含まれる白金族金属の濃度を表3に示す。
(X)上記白金抽出元液1.4LにTBP1.4Lを加えて30分間混合して白金を抽出した。白金抽出残液に含まれる白金族金属の濃度を表3に示す。
(XI)上記工程(X)で得た白金含有TBPを1.4Lの塩酸(濃度1mol/L)で洗浄した後に1.4Lの塩酸(濃度0.05M)を加えて白金を逆抽出した。白金を逆抽出した塩酸にNH4Clを加えて白金イエローを回収した。白金イエローから白金メタルを得た。この白金メタルの純度は99.95%であり、収率は98%であった。白金メタルの不純物濃度を表4に示す。
Figure 0005825484
Figure 0005825484
(XII)白金を抽出した残液1.4L(Rh濃度1130mg/L)に亜硝酸ナトリウム(NaNO2)を200g添加して80℃に加熱した。室温になるまで放冷した後、塩化アンモニウム(NH4Cl)を80g添加した。30分間混合した後に濾過し、Rh含有沈澱(Na(NH4)2[Rh(NO2)6])を7g回収した。Rhの回収率は99%であった。亜硝酸廃液量は1.4Lであった。
〔実施例2〕
実施例1のPt抽出残液1.4Lに苛性ソーダを加えてpH3に中和した。このPt抽出残液に硫化ナトリウム9水和物455gを添加して残液中のRhを沈澱させた。このRh含有沈澱を濾過して回収し、塩酸30mlと水70mlと過酸化水素10ml加えて80℃に加熱し、Rh含有沈殿を溶解した。この溶解液(Rh濃度15000mg/L)に亜硝酸ナトリウム(NaNO2)15gを加えて80℃に加熱し、放冷した後に、塩化アンモニウム(NH4Cl)5.8gを加えてRh含有沈澱(Na(NH4)2[Rh(NO2)6])を7g回収した。亜硝酸廃液量は0.11Lであった。
〔実施例3〕
実施例1のPt抽出残液1.4Lに苛性ソーダを加えてpH5に中和し、残液中のRhを沈澱させた。このRh含有沈澱を濾過して回収し、塩酸30mlと水80mlを加え、80℃に加熱してRh含有沈殿を溶解した。この溶解液(Rh濃度15000mg/L)に亜硝酸ナトリウム(NaNO2)15gを加えて80℃に加熱し、放冷した後に、塩化アンモニウム(NH4Cl)5.8gを加えてRh含有沈澱(Na(NH4)2[Rh(NO2)6])を7g回収した。亜硝酸廃液量は0.11Lであった。
〔比較例1〕
実施例1の工程(V)において、ヒドラジンに代えてZn粉末を用い、Au抽出残液にZn粉末を添加し、ORP電位を−200mV未満(vs AgCl)に保ちながら30分混合した。これを濾過したところ、48gの還元滓が得られた。この濾液を分析したところ、表6に示すように白金族金属の濃度は10mg/L未満であり、ほぼ全量還元されていた。この還元滓を、塩酸濃度2mol/Lになるように、塩酸と過酸化水素を用いて溶解し、クロリネーション(C)液を0.6L得た。このクロリネーション(C)液の白金族金属の濃度および浸出率を表5に示した。Zn還元滓はPt、Rh、Ruの浸出率が大幅に低い。
Figure 0005825484
〔比較例2〕
比較例1と同様のZn還元滓48gを、塩酸濃度7mol/Lの条件で、塩酸と過酸化水素を用いて溶解し、クロリネーション(D)液0.6Lを得た。クロリネーション(D)液のPt、Rh、Ruの浸出率はいずれの99%以上であった。クロリネーション(D)液のPt、Rh、Ruの各濃度を表7に示す。このクロリネーション(D)液に苛性ソーダを添加してpH1になるまで中和したところ、苛性ソーダの添加量は166gを必要とし、中和処理の負担が大きかった。
Figure 0005825484

Claims (9)

  1. 白金族金属を含有する溶液からパラジウムを溶媒抽出した後に、抽出残液にヒドラジンを添加して還元滓を生成させ、該還元滓を回収し、該還元滓に含まれる白金族金属を塩化溶出し、この溶解液に酸化剤を加えてルテニウムを蒸留させて回収し、この蒸留残液から他の白金族金属を回収することを特徴とする白金族金属の回収方法。
  2. 白金族金属を含有する原料を塩酸と過酸化水素で溶解して得た白金族金属含有溶液にDBC(ジブチルカルビトール)を混合して金および鉄を溶媒抽出した抽出残液に苛性ソーダを添加して塩酸濃度を3mol/L以下に調整した後に、DHS(ジヘキシルスルフィド)を加えてパラジウムを抽出する請求項1に記載する白金族金属の回収方法。
  3. パラジウムを溶媒抽出した抽出残液のpHを10〜13に調整し、該抽出残液にヒドラジンを添加して還元滓を生成させる請求項1または請求項2に記載する白金族金属の回収方法。
  4. パラジウム抽出残液から回収した還元滓に塩酸と酸化剤を加えて還元滓に含まれる白金族金属を塩化溶出し、溶出した白金族金属を含む溶解液の塩酸濃度を1〜6mol/Lに調整し、該溶解液に臭素酸塩を加えてルテニウムを酸化し蒸留する請求項1〜請求項3の何れかに記載する白金族金属の回収方法。
  5. ルテニウムの蒸留残液に還元剤を添加して残留する酸化剤を分解した後に、白金を溶媒抽出する請求項1〜請求項4の何れかに記載する白金族金属の回収方法。
  6. ルテニウムの蒸留残液に還元剤を添加して残留する酸化剤を分解した後に塩酸を添加し、さらに塩化アンモニウムを加えて白金イエローを析出させて回収する請求項1〜請求項4の何れかに記載する白金族金属の回収方法。
  7. 白金を回収した残液に、亜硝酸ナトリウムを加えて加熱し、冷却後、塩化アンモニウムを加えてロジウムを沈澱させて回収する請求項5〜請求項6の何れかに記載する白金族金属の回収方法。
  8. 白金を回収した残液に、チオ硫酸イオンもしくは硫化物イオンを含む塩類を添加して残液中のロジウムを硫化物もしくはCuRh硫化物の混合物として沈殿させて回収する請求項5〜請求項6の何れかに記載する白金族金属の回収方法。
  9. 白金を回収した残液に、水酸化物イオンを含む塩類を添加してロジウムを水酸化物として沈澱させて回収する請求項5〜請求項6の何れかに記載する白金族金属の回収方法。
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